(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。
図1は、本実施の形態にかかる心肺蘇生アシスト装置1の外観構成を示す斜視図である。なお本明細書における図面は視認しやすくするため、適宜図示を簡略化したり、一部の部材の縮尺や位置を実際の仕様とは異なる場合がある。
【0020】
心肺蘇生アシスト装置1は、被救助者の胸部(好適には胸骨の直上)と救助者の手の間に配置されて胸骨圧迫をアシストする装置である。なお被救助者とは、人間の傷病者(または患者とも表現される。)に加えてマネキン等も含む概念である。すなわち心肺蘇生アシスト装置1は、実際の心肺蘇生の場面で用いられてもよく、心肺蘇生のトレーニング時に用いられてもよい。心肺蘇生アシスト装置1は、押圧された場合と押圧解放された場合にセンサが検出する変位を用いて胸骨圧迫の圧迫深度や回数を検出する。そのため心肺蘇生アシスト装置1は、押圧時に変位が生じるばね的性質を有する必要がある。このばね的性質の実現方法は、
図2等を参照して詳細に説明する。
【0021】
心肺蘇生アシスト装置1の筐体は、第1筐体部材10(
図1には図示せず)と第2筐体部材20から構成される。第1筐体部材10と第2筐体部材20は、互いに嵌め合わせるようにして心肺蘇生アシスト装置1の筐体を構成する。なお、
図1においては第1筐体部材10を覆う弾性体カバー30が取り付けられ、第2筐体部材20に電池カバー40が取り付けられている形状を示している。
【0022】
以降の説明において、
図1に示すように方向軸(X軸、Y軸、Z軸)を定める。また、Z軸の正方向(+Z方向)は、救助者と心肺蘇生アシスト装置1が接触する面であるため、「救助者側」とも呼称する。同様にZ軸の負方向(−Z方向)は、被救助者と心肺蘇生アシスト装置1が接触する面であるため、「被救助者側」とも呼称する。
【0023】
心肺蘇生アシスト装置1は、被救助者の胸部(好適には胸骨の直上)に対して第1筐体部材10が下側となるように載置される。救助者は、第2筐体部材20の平面箇所(
図1の例では電池カバー40付近)を押圧するようにして胸骨圧迫を行う。救助者が押圧を行った場合、第1筐体部材10の底面方向から圧力が被救助者の胸部に伝わる。心肺蘇生アシスト装置1は、主に成人の救助者が手で固定して押圧を行うため、成人の手のひらの大きさに合わせた大きさであることが好ましい。例えば第2筐体部材20を救助者側(+Z方向)から見た場合の形状は、長径が10〜15cm、短径が5〜10cm程度の楕円形状であればよい。この程度のサイズにすることにより救助者の手にフィットするため、救助者は心肺蘇生アシスト装置1を被救助者の胸骨付近に固定したまま継続的に胸骨圧迫を行うことができる。
【0024】
ここで胸骨圧迫について簡単に説明する。胸骨圧迫は、(1)回数、(2)深さ(圧迫深度)、(3)もどり、の適切さがその救助効果に大きな影響を与える。胸骨圧迫の回数は約100回/分以上であることが好ましいとされている。また胸骨圧迫の圧迫深度は、被救助者が成人の場合には5cm以上が良いとされている。この胸骨圧迫の圧迫強度は、力に換算すると訓練用人形では400N以上の荷重が良いとされている。圧迫深度が小さすぎると心臓へのマッサージ効果が十分ではなく、圧迫深度が大きすぎると胸骨等を損傷する可能性がある。また救助者の手技による圧迫の直後毎に、胸部を十分開放する必要がある。この解放が十分でない場合、血液の循環が不十分となる。心肺蘇生アシスト装置1は、実際の圧迫深度や圧迫回数(圧迫速度)を測定し、これらの値と指標(5cm以上、100回/分)との比較を行う。
【0025】
心肺蘇生アシスト装置1の内部構造について、
図2の断面図を参照して更に説明する。
図2は、
図1におけるA−A断面図を示す。
図2では、弾性体カバー30及び電池カバー40の記載は省略している。また各部材を接続するネジ等の記載や基板60上に実装された電子部品等の記載についても省略している。
【0026】
第2筐体部材20は、救助者の手技により直接圧力が加えられる部材であり、非反発性の部材(ばね的性質を有さない部材)である。第2筐体部材20は、第1筐体部材10及びプリント基板60と物理的に接続している。例えば第2筐体部材20は、図示しないネジ穴やネジを用いて第1筐体部材10及びプリント基板60と螺合されている。また第2筐体部材20は、複数の凸部21を有する。この複数の凸部21は、第1筐体部材10の内縁と概ね接触して第1筐体部材10を支持する。この凸部21の形状は、
図6を参照して更に後述する。
【0027】
救助者は、第2筐体部材20の上面から圧力を加える(救助者側(+Z方向)から被救助者側(−Z方向)に圧力を加える)ことにより胸骨圧迫を行う。
【0028】
プリント基板60には、救助者による胸骨圧迫の強さやスピード(圧迫回数)を検出、測定する各種の回路やソフトウェアが実装されている。
【0029】
第1筐体部材10は、第2筐体部材20とともに心肺蘇生アシスト装置1の装置筐体を構成する。第1筐体部材10は、ばね的性質を有する部材(反発部材)である。換言すると第1筐体部材10は、胸骨圧迫の押圧時に+Z方向(救助者側)にたわみ、押圧の解除時に−Z方向(被救助者側)に向かって復元する。第1筐体部材10は、例えば板ばねである。心肺蘇生アシスト装置1は、第1筐体部材10が反発部材として作用するため、筐体内部に反発部材を有さない。
【0030】
第1筐体部材10には、中央部に−Z方向(被救助者側)に凸となるエンボス部11が構成されている。−Z方向(被救助者側)に凸となるエンボス部11を有することにより、エンボス部11内側に生じる変位が均一となり、かつたわみ角をごく小さくすることができる。エンボス部11の内側のたわみ角を小さくすることにより、エンボス部11が平面的に平行移動する(換言すると上下に移動する)。
図3に胸骨押圧時のCPRアシスト装置1の状態を示す。
図3に示すようにエンボス部11の外側の第1筐体部材10のたわみは大きくなる。しかしながら
図3に示すように、エンボス部11の平面部分については、上下方向への移動のみとなる。これにより、CPRアシスト装置1のエンボス部11に設置されたセンサ101にかかる歪みが抑制できる。
【0031】
なおエンボス部11を設けることによりばね定数が非線形となる場合には、エンボス部11の形状を鋭角的な形状にすることにより、ばね定数を所望のものに近づけることができる。
【0032】
第1筐体部材10は、非磁性体の素材、例えばステンレスで構成されている。これにより第1筐体部材10は、プリント基板60上に設けられたコイル101及びコイル102に影響を与えることがなくなる。第1筐体部材10をステンレスで構成することにより、水濡れした場合であっても錆びづらい等の効果も奏する。
【0033】
なお、第1筐体部材10のばね定数は、例えば200N/mm〜1000N/mm程度であればよい。
【0034】
第1筐体部材10の略中央部にあるエンボス部11には、接触部材50が取り付けられている。接触部材50は、被救助者の胸部(好適には胸骨直上)と直接(または
図1に示す弾性体カバー30を介して)接触する部材である。本明細書では、接触部材50が被救助者の胸部と直接接すること、または弾性体カバー30(ひいては緩衝部材)を介して接触することを「接触部材50が被救助者と接する」と表現する。接触部材50の詳細は、
図5及び
図6を参照して後述する。
【0035】
コイル101は、第1筐体部材10内側のエンボス部11付近にネジ止め等の手法で固定されている。一方、コイル102は、プリント基板60上であって、コイル101と対向する位置にネジ止め等の手法により固定されている。コイル101及びコイル102は、胸骨圧迫によって生じた変位を電気的に検出するセンサの一態様である。変位を検出するセンサは、この他のものであってもよい。また変位は、電気的な変化でなくてもよい。例えば光センサを用いて変位を検出するものであってもよい。あるいは第1筐体部材10の内側に張り付けた歪みセンサから歪みを検出し、当該歪みを変位に変換したものであってもよい。
【0036】
続いて
図4を参照して、第1筐体部材10の構造について更に説明する。
図4(A)は、第1筐体部材10の楕円形上の短径を縦方向に配置した場合の平面図である。
図4(B)は、−Z方向(被救助者側)から第1筐体部材10を見た場合の平面図である。
図4(C)は、第1筐体部材10の楕円形上の長径を横方向に配置した場合の平面図である。
【0037】
図4(A)〜
図4(C)に示すように、第1筐体部材10は、略中央部に−Z方向(被救助者側)に凸となるエンボス部11を有する。エンボス部11を設ける場合、第1筐体部材10の最大歪みは、エンボス部11の外側にある外縁部12に生じる(
図3参照)。前述の
図2に示すように、このエンボス部11に対し、接触部材50が取り付けられる。そのためエンボス部11には、図示しないネジ穴等の接触形状が設けられている。
【0038】
また第1筐体10の−Z方向(被救助者側)の角部13は、
図4(A)や
図4(C)に示すように湾曲形状を有することが好ましい。これは、当該角部13が被救助者の胸部に接触する可能性があるため、湾曲形状にすることにより救助者の体表面を傷つけないようにすることができるためである。
【0039】
次に
図5を参照して、接触部材50の構造を説明する。接触部材50は、被救助者の胸骨に接する部材である。
図5(A)は、−Z方向(被救助者側)から接触部材50を見た場合の平面図である。
図5(B)は、接触部材50の長径方向を横に配置した場合の平面図である。
【0040】
接触部材50は、+Z方向(救助者側)に凸となる接続部51を有する。接続部51は、第1筐体部材10のエンボス部11と接続する。例えば接続部51とエンボス部11は、ネジ止めにより接続する。
【0041】
接触部材50の表面(被救助者との接触面であり、
図5(A)の実線で囲まれた楕円形状の面積)は、被救助者の胸骨に沿うような大きさの楕円形状であり、概ね以下のとおりの大きさである。接触部材50の高さ(X軸方向の長さであり、楕円形の長径)は、7〜10cm程度である。また接触部材50の幅(Y軸方向の長さであり、楕円形の短径)は、3〜4.5cm程度である。これらの大きさは、一般的な胸骨の幅等を基に定められている。接触部材50の平面形状の高さ方向は、被救助者の胸骨の延設方向と合致する。
【0042】
接触部材50の平面形状の幅が胸骨幅に沿った長さ(3〜4.5cm)であるため、接触部材50が胸骨に沿うように固定される。これにより胸骨圧迫時の心肺蘇生アシスト装置1の位置ずれを防止することができる。
【0043】
また接触部材50の平面形状の高さが7〜10cm程度であることにより、接触部材50と被救助者との接触面積が一定以上担保される。これにより救助者は、安定して胸骨圧迫を継続することができる。
【0044】
図6を参照して接触部材50及び第1筐体部材10の構造を更に説明する。
図6は、接触部材50が第1筐体部材10に取り付けられている状態において、−Z方向(被救助者側)から接触部材50及び第1筐体部材10を見た場合の平面図である。
【0045】
図示するように接触部材50は、第1筐体部材10の略中央部分に取り付けられている。また接触部材50の投影面積(接触部材50を−Z方向(被救助者側)から見た際の表面の面積)は、図示するように第1筐体部材10の投影面積(第1筐体部材10を−Z方向(被救助者側)から見た際の表面の面積)よりも小さい。
【0046】
このように接触部材50の投影面積が第1筐体部材10の投影面積よりも小さいことにより、救助者の与えた圧力(胸骨圧迫のための圧力)が接触部材50の投影面積の大きさに集約されて必要な力が無駄なく被救助者の胸部に伝わる。
【0047】
また、接触部材50は、上述のように第1筐体部材10の略中央部分(すなわちエンボス部11)に固定されている。これにより救助者が第2筐体部材20の中央以外の箇所を押圧した場合であっても、与えられた圧力を接触部材50に集約させて被救助者の胸部に伝えることができる。換言すると救助者は、押圧する箇所がずれた状態で処置を行った場合であっても適切に胸骨を圧迫することができる。
【0048】
なお接触部材50の平面形状が楕円形であることはあくまでも一例である。接触部材50は、幅と高さを持つ平面形状であって、当該幅と当該高さが異なる平面形状を持てばよい。詳細には接触部材50は、胸骨の延設方向(身長方向)に配置される高さと、胸骨の幅方向に配置される幅と、を有する平面形状を有すればよい。上述の楕円形上の場合、短径が幅に該当し、長径が高さに該当する。接触部材50の平面形状は、角を丸めた長方形、六角形、いわゆる瓢箪型、等であってもよい。接触部材50が長方形等の場合であっても平面形状の幅方向を胸骨の幅方向に合わせるため、上述のように適切な胸骨圧迫を行うことができるという効果を奏する。
【0049】
次に
図7を参照して第2筐体部材20の構成を説明する。
図7(A)は、第2筐体部材20の長径方向を横に配置した場合の平面図である。
図7(B)は、−Z方向(被救助者側)から第2筐体部材20を見た場合の平面図である。
【0050】
図示するように、第2筐体部材20には、複数の凸部21(
図6の例では6つの凸部21)が設けられている。この凸部21は、それぞれ第1筐体部材10の内縁(外周)と概ね接触するように設けられている。これにより第2筐体部材20は、第1筐体部材10を支持する。
【0051】
第1筐体部材10の内縁(外周)は、変形が小さい箇所である。複数の凸部21は、この変形が小さい箇所である第1筐体部材10の内縁(外周)にかかる力を分散して支持している。換言すると複数の凸部21を有することにより、第1筐体部材10を自由支持することができる。
【0052】
なお、第2筐体部材20に設けられる凸部21の数は、2つ以上であればいくつであってもよく、奇数個の凸部21が設けられていてもよい。また図において凸部21の各々は、外周に沿って設けられた2つの部材に対して設けられているが、外周に沿って環状に設けられた部材(外周に沿って連続した形の部材)に設けられてもよい。
【0053】
続いて心肺蘇生アシスト装置1の電気的な処理について
図8及び
図9を参照して説明する。心肺蘇生アシスト装置1は、救助者が手技により与えた加圧力をセンサで検出し、当該加圧力を基に救助者の手技が適切なスピード・強さで行われているかを救助者に報知する。なお
図8及び
図9は、心肺蘇生アシスト装置1の電気的な構成に着目した図であり、装置の大きさ等(被救助者と比較した心肺蘇生アシスト装置1の大きさ等)は実際と異なる点がある。
【0054】
図8は、心肺蘇生アシスト装置1において、救助者の手技により与えられた加圧力を電圧として検出する測定部100を示すブロック図である。検出した電圧値は、後述する圧迫深度算出部200(
図9)に供給される。
【0055】
コイル101は、上述したように、第1筐体部材10内側のエンボス部11付近に固定される。またコイル102は、上述したように、コイル101と対向するプリント基板60に固定される。なお、以降の説明では特に断らない限り、各処理部及び各処理回路はプリント基板60上に実装されているものとする。
【0056】
交流発信源103は、特定の周波数(例えば20kHz)を持つ交流電圧を生成する。アンプ104は、交流発信源103が生成した交流電圧を交流電流に変換し、変換した交流電流をコイル102に供給する。コイル102を流れる交流電流によって生じた磁場は、コイル101に誘起起電力を発生させる。
【0057】
誘起起電力によってコイル101に生じた交流電流(周波数は交流発信源103によって生成された交流電圧の周波数と同じ。)は、プリアンプ105によって増幅される。プリアンプ105によって増幅された増幅信号は検波回路106に入力される。検波回路106は、交流発信源103によって生成された特定周波数又は2倍周波数によって増幅信号の検波を行う。そのため、交流発信源103の出力は、参照信号として検波回路106の参照信号入力端子に入力される。なお、検波回路106や参照信号を用いずに全波整流回路を用いて電圧を検出することも可能である。
【0058】
検波回路106(または全波整流回路)からの電圧情報(出力信号)は、ローパスフィルタ107を通過した後に圧迫深度算出部200内の駆動回路201(
図9)に入力される。加速度センサ108は、検出した加速度情報を圧迫深度算出部200に供給する。
【0059】
続いて
図9を参照して圧迫深度算出部200の構成について説明する。圧迫深度算出部200は、駆動回路201、駆動回路202、処理部203、記憶部204、音声発生部205、及び表示部206を有する。
【0060】
駆動装置201は、ローパスフィルタ107(
図8)から受信した電圧情報を処理部203に供給する。駆動回路202は、加速度センサ108から受信した加速度情報を電圧に変換して処理部203に供給する。
【0061】
処理部203は、例えばCPU(Central Processing Unit)によって実現される。処理部203は、2階微分波形作成部211、波形比較部212、計算部213、及び判定部214を備える。2階微分波形作成部211は、駆動回路201から取得した電圧情報に基づいて2階微分波形を作成する。波形比較部212は、2階微分波形作成部211が作成した2階微分波形と、加速度センサ108から受信した加速度情報と、を比較する。計算部213は、波形比較部212の比較結果に基づいて変換係数αを算出する。次に判定部214は、変換係数αが以下の不等式を満たすか否かを判定する。なお式(1)の第1係数及び第2係数は、記憶部204に記憶されているものとする。
第1係数<変換係数α<第2係数 ――式(1)
【0062】
判定部214は、式(1)を満たす場合には変換係数αをそのまま使用することとし、満たさない場合には記憶部204に記憶されている変換係数初期値を変換係数αとして使用することとする。
【0063】
計算部213は、各コイル(コイル101、コイル102)による出力波形と変換係数αを用いて波形Dmを作成する。計算部213は、波形Dmに基づいて、救助者の圧迫深度とインターバルを従来の手法を用いて算出する。判定部214は、記憶部204を参照し、算出した圧迫深度やインターバルが適切であるかを判定する。判定部214は、圧迫深度やインターバルが適切であるか否かを示す判定結果を音声発生部205及び表示部206に通知する。
【0064】
記憶手段204は、各種の情報(前述の第1係数、第2係数、変換係数初期値等)を記憶する手段であり、例えばROM(Read Only Memory)、HDD(Hard Disk Drive)、USB(Universal Serial Bus)メモリ等により実現される。
【0065】
音声発生部205は、判定部214による圧迫深度やインターバルの判定結果を基に、救助者に対して報知を行う。音声発生部205は、例えばスピーカである。音声発生部205は、圧迫深度が十分ではない場合に「もっと強く押してください」という音声ガイダンスを出力する。同様に音声発生部205は、判定結果に応じて「もっと弱く押してください」、「もっとゆっくり押してください」、「もっと速く押してください」等の音声ガイダンスを出力する。
【0066】
表示部206は、各種の表示を行う手段であり、例えばLCD(Liquid Crystal Display)やCRT(Cathode Ray Tube)ディスプレイによって実現される。表示部206は、胸骨圧迫の実施を示す波形、胸骨圧迫の回数、圧迫深度等を画面上に表示する。
【0067】
なお心肺蘇生アシスト装置1の胸骨圧迫深度及び速度の検出処理は、特許文献3に記載の手法と略同一であるため、適宜参照されたい。
【0068】
続いて本実施の形態にかかる心肺蘇生アシスト装置1の効果について改めて説明する。上述のように心肺蘇生アシスト装置1では、装置の筐体を構成する第1筐体部材10がばね的性質を有している。そして心肺蘇生アシスト装置1は、装置筐体内部に反発部材(圧縮ばね、ゴム、プラスチック)を有さない構成である。これにより心肺蘇生アシスト装置1は、部品点数を削減しつつ適切なCPRアシストを行うことができる。
【0069】
上述の特許文献1記載の装置は、圧縮ばねを筐体内部に有する構成である。この場合には、この圧縮ばねを一方向にスライドさせるためのガイドや保持機構が必要となってしまう。これにより、装置内部のスペースを確保することができず、装置の小型化を実現することが難しいという問題があった。同様に特許文献2に記載の装置は、反発部材としてゴムやプラスチックを筐体内部に有しているため、装置内部のスペースを十分に確保することが難しかった。一方、本実施の形態にかかる心肺蘇生アシスト装置1は、筐体を構成する第1筐体部材10自体がばね的性質を有する。そのため心肺蘇生アシスト装置1は、必要な反発性を確保しつつ、装置内部の空間を十分に確保することができる。装置内部の空間を確保できることにより、心肺蘇生アシスト装置1の全体的な小型化を実現することができる。
【0070】
また上述の特許文献2記載の装置は、反発部材としてゴムやプラスチックを用いている。上述のように胸骨圧迫の訓練時には約400N以上の大きな加圧力が装置に加わり、実際の患者に対する胸骨圧迫時にもこの程度の加圧力が加わる。そのため、装置を使用するにつれて当該反発部材の反発性が下がってしまう可能性がある。すなわち使用に応じて特性の変化が生じてしまう恐れがある。特性の変化が生じてしまう場合、救助者の加えた圧力を正確に検出できない恐れがある。一方、本実施の形態にかかる心肺蘇生アシスト装置1は、板ばねにより反発性を実現しているために特性の変化が生じる恐れが非常に少ない。これにより心肺蘇生アシスト装置1は、精度良く救助者の胸骨圧迫の圧迫深度等を検出することができる。
【0071】
また第1筐体部材10は、薄い板ばねであることが望ましい。第1筐体部材10を板ばねとすることにより、心肺蘇生アシスト装置1の筐体内のスペースを十分確保することができる。
【0072】
上述のように第1筐体部材10は、被救助者の方向に凸となるエンボス部11を有する。これにより内部にあるセンサ101にかかる歪みが抑制でき、心肺蘇生アシスト装置1は救助者の行っている胸骨圧迫の強さを精度良く算出することができる。
【0073】
また複数の凸部21を有することにより、第1筐体部材10を自由支持することができる。
【0074】
心肺蘇生アシスト装置10は、
図2や
図6に示すように被救助者と接する接触部材50を有する。そして
図6に示すように接触部材50の投影面積は、第1筐体部材10の投影面積よりも小さい。これにより、救助者の与えた圧力(胸骨圧迫のための圧力)がこの小さな投影面積(接触部材50の投影面積)に集約されて被救助者の胸部に伝わる。これにより効率的な胸骨圧迫を行うことができる。
【0075】
更に接触部材50は、第1筐体部材10の略中央部(
図6の例ではエンボス部11)に固定されている。これにより、救助者は押圧する箇所がずれた場合であっても適切に胸骨圧迫を行うことができる。
【0076】
また接触部材50は、被救助者の胸骨に沿う形状(長さの異なる幅と高さを有する形状であり、例えば
図6に示すように楕円形)を有する。これにより接触部材50が胸骨に沿うように固定され、胸骨圧迫時の心肺蘇生アシスト装置1の位置ずれを防止することができる。
【0077】
具体的な接触部材50の表面の大きさは、例えば高さが7〜10cm、幅が3〜4.5cm程度である。当該大きさは、一般的な胸骨の大きさ等を考慮したものである。幅が上述のサイズであることにより、接触部材50が被救助者の胸部(胸骨)に確実に固定され、胸骨圧迫時の心肺蘇生アシスト装置1の位置ずれを防止することができる。また高さが上述のサイズであることにより、被救助者と心肺蘇生アシスト装置1との接触面積を一定以上保ったまま安定して胸骨圧迫を行うことが出来る。
【0078】
以上、本発明者によってなされた発明を実施の形態に基づき具体的に説明したが、本発明は既に述べた実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の変更が可能であることはいうまでもない。例えば第1筐体部材10を皿ばね等の他の反発部材によって構成した場合であってもスペースの削減を実現することができる。
【0079】
上述の
図2等を用いた説明では−Z方向(被救助者側)に配置された第1筐体部材10が反発性を有し、+Z方向(救助者側)に配置された第2筐体部材20が非反発性の部材であると説明したが、必ずしもこれに限られない。すなわち反発性を有する装置筐体部材が+Z方向(救助者側)に配置されてもよい。また理論上、第1筐体部材10と第2筐体部材20が一体化され、この一体化された筐体部材がばね的性質を有する構成としても部品点数の削減を実現することができる。
【0080】
第1筐体部材10及び第2筐体部材20の双方がばね的性質を有する構成とした場合であっても、部品点数の削減や装置筐体内のスペースを確保するという効果を奏することができる。しかしながら筐体部材の一方(上述の説明では第2筐体部材20)を非反発性部材とし、当該非反発性部材に安定して支持したい部材(例えば電池等)を固定することにより、電池はずれ等の故障や誤操作を回避することができる。
【0081】
また装置の部品点数を少なくするという観点では装置筐体部材がばね的性質を有することが必要であるが、接触部材50を用いて効率的に胸骨圧迫を行うという観点では第1筐体部材10の性質は特に限られない。すなわち、特許文献1や2のように筐体内部に反発部材(圧縮ばね、ゴム、プラスチック)を設けた心肺蘇生アシスト装置に対しても、第1筐体部材10よりも投影面積の小さな接続部材50を設けることができる。この構成であっても救助者の与えた圧力を適切に接続部材50に集約して被救助者の胸部に伝えることができる。
【0082】
上述の説明において接触部材50は、第1筐体部材10の略中央部分に固定されていると説明した。ここで固定とは、接触部材50の表面が第1筐体部材10のエンボス部11に接触部50の表面が第1筐体部材10のエンボス部11に完全に密着されるように固定されていてもよい(
図2の形態)。また固定とは、接触部材50の外側が回転可能に構成されるもの(すなわち回転可能に支持するもの)も含まれる。この形状にかかる接触部材50と第1筐体部材10の一例を
図10に示す。この形状であっても救助者は、第2筐体部材20の押圧する箇所がずれた状態で処置を行った場合であっても適切に胸骨を圧迫することができる。なお、
図2及び
図10の例ではエンボス部10を−Z方向(被救助者側)に凸となるように構成していたが、エンボス部10を+Z方向(救助者側)に凸となるように構成してもよい。