【課題を解決するための手段】
【0007】
(1)本発明の少なくとも一実施形態に係る回転機械の羽根車は、
回転機械の羽根車であって、
Al又はAl合金によって構成される前記羽根車の基材と、
前記基材を覆うように設けられて前記羽根車の表面層を形成する無電解めっき皮膜と、を備え、
前記無電解めっき皮膜は、アモルファス構造を有し、且つ、前記無電解めっき皮膜中におけるP含有率が5重量%以上11重量%以下であるNi−P系合金である。
【0008】
前記構成(1)によれば、前記無電解めっき皮膜は、アモルファス構造を有するため、高強度となり、耐エロージョン性を向上できる。また、前記無電解めっき皮膜のP含有率が5重量%以上11重量%以下としたことで、高いビッカース硬さを有しつつ、良好な耐き裂性(疲労強度)を実現でき、これにより、羽根車のき裂の発生を抑制できる。
また、前記無電解めっき皮膜は、膜厚など均一な皮膜形成が可能となるため、広範囲にわたってめっき皮膜の前記特性を均一に発揮できる。
【0009】
(2)幾つかの実施形態では、前記構成(1)において、
前記無電解めっき皮膜は、15μm以上60μm以下の膜厚を有する。
前記無電解めっき皮膜の膜厚が15μm未満では、耐エロージョン性及び耐き裂性を十分に発揮することが難しい。他方、60μmを超える膜厚としても耐エロージョン性や耐き裂性の向上効果は限定的であるし、逆に、めっき処理に要する時間が長くなり、高コストとなる。
前記構成(9)によれば、前記無電解めっき皮膜の膜厚を15μm以上とすることで、耐エロージョン性及び耐き裂性を発揮でき、かつ60μm以下とすることで、めっき処理を低コスト化できる。
【0010】
(3)幾つかの実施形態では、前記構成(1)又は(2)において、
前記無電解めっき皮膜は、500HV以上700HV以下のビッカース硬さを有する。
前記構成(3)によれば、前記無電解めっき皮膜は、500HV以上のビッカース硬さを有するため、耐エロージョン性を発揮でき、他方、700HV以下のビッカース硬さであるため、優れた耐き裂性を実現できる。
【0011】
(4)幾つかの実施形態では、前記構成(1)〜(3)の何れかにおいて、
前記無電解めっき皮膜の破断延性(繰り返しではなく1回)が歪み0.5%以上である。
前記構成(4)によれば、歪み0.5%以上の破断特性を有すれば、耐疲労破断性の高いめっき皮膜を形成でき、低サイクル疲労試験で許容繰返し数を満足することができる。これにより、羽根車のき裂の発生を抑制でき、羽根車を長寿命化できる。
【0012】
(5)幾つかの実施形態では、前記構成(1)〜(4)の何れかにおいて、
前記羽根車は、過給機のコンプレッサ羽根車である。
前記構成(5)によれば、前記構成の羽根車を高速回転する過給機のコンプレッサ羽根車として用いることで、該コンプレッサ羽根車の耐エロージョン性及び耐き裂性(疲労強度)を向上できる。これによって、長寿命のコンプレッサ羽根車を実現できる。
【0013】
(6)本発明の少なくとも一実施形態に係るコンプレッサは、
前記構成(1)〜(5)の何れかの羽根車によって形成されるコンプレッサ羽根車を有する。
前記構成(6)によれば、高い耐エロージョン性及び耐き裂性(疲労強度)を有するコンプレッサ羽根車を備えることで、コンプレッサの長寿命化が可能になる。
【0014】
(7)本発明の少なくとも一実施形態に係る過給機は、
前記構成(6)のコンプレッサと、
前記コンプレッサを駆動するためのタービンと、
を備えている。
前記構成(7)によれば、高い耐エロージョン性及び耐き裂性(疲労強度)を有するコンプレッサ羽根車を有するコンプレッサを備えることで、高速回転に長期間耐え得る長寿命の過給機を実現できる。
【0015】
(8)幾つかの実施形態では、前記構成(7)において、
前記コンプレッサは、内燃機関の吸気路に設けられ、
前記タービンは、前記内燃機関からの排気によって駆動されるように構成され、
前記コンプレッサの上流側において、前記排気の一部が前記吸気路に循環されるように構成される。
前記構成(8)のように、例えば、EGRシステムを採用した内燃機関に設けられる過給機では、過給機のコンプレッサに液滴を含みエロージョン性が高い排気を含む吸気が導入される。
これに対し、前記構成(8)によれば、前記構成(7)を有する過給機は、前記構成(6)を有し、耐エロージョン性及び耐き裂性(疲労強度)が向上したコンプレッサを備えているので、高速回転に長期間耐え得る長寿命な過給機を実現できる。
【0016】
(9)本発明の少なくとも一実施形態に係る回転機械の羽根車の製造方法は、
回転機械の羽根車の製造方法であって、
Al又はAl合金によって構成される前記羽根車の基材を覆うように、前記羽根車の表面層として無電解めっき皮膜を形成するステップを備え、
前記無電解めっき皮膜は、アモルファス構造を有し、且つ、前記無電解めっき皮膜中におけるP含有率が5重量%以上11重量%以下であるNi−P系合金である。
【0017】
前記(9)の方法により製造された羽根車は、表面に前記無電解めっき皮膜が形成される。該無電解めっき皮膜は、アモルファス構造を有するため、高強度となり、良好な耐エロージョン性を有する。また、前記無電解めっき皮膜のP含有率が5重量%以上11重量%以下であるため、高いビッカース硬さを有しつつ、良好な耐き裂性(疲労強度)を実現できる。
また、前記無電解めっき皮膜は、膜厚など均一な皮膜形成が可能となるため、広範囲にわたってめっき皮膜の前記特性を均一に発揮できる。
【0018】
(10)幾つかの実施形態では、前記(9)の方法において、
前記無電解めっき皮膜が形成された前記羽根車から試験片を切り出し、該試験片を用いて前記無電解めっき皮膜の破断延性を評価するステップをさらに備える。
めっき処理条件、例えば、めっき処理時におけるめっき処理液に対する被めっき処理物の総面積や、めっき処理液の流れと被めっき処理物との相対速度等によって、めっき皮膜の硬さや延性が変化する。
前記(10)の方法によれば、無電解めっき皮膜が形成された羽根車から切り出した試験片を使って評価するので、実物の羽根車における無電解めっき皮膜の破断延性を正確に評価できる。
【0019】
(11)幾つかの実施形態では、前記(10)の方法において、
前記試験片は前記羽根車のハブのブレード根元部を前記ハブの背面側に投影した領域を前記ハブの背面から採取する。
羽根車には、回転によって発生する遠心力などに起因した応力が発生するが、
図14にも示すように、羽根車のブレード根元部は最も大きな応力が発生する場所である。
前記構成(11)によれば、試験片を前記ハブのブレード根元部を前記ハブの背面側に投影した領域をハブの背面側から採取することで、最も厳しい応力条件下での破断延性を把握できる。
【0020】
(12)幾つかの実施形態では、前記(10)又は(11)の方法において、
前記破断延性が閾値を下回る場合、前記無電解めっき皮膜のめっき条件を変更するステップをさらに備える。
前記(12)の方法によれば、前記破断延性の結果に基き、前記めっき皮膜のめっき条件を変更することで、前記無電解めっき皮膜の破断延性を閾値以上とすることができる。