(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明を好適な実施の形態をもとに図面を参照しながら説明する。各図面に示される同一または同等の構成要素、部材、処理には、同一の符号を付するものとし、適宜重複した説明は省略する。また、実施の形態は、発明を限定するものではなく例示であって、実施の形態に記述されるすべての特徴やその組合せは、必ずしも発明の本質的なものであるとは限らない。
【0011】
[第1の実施の形態]
(培養装置の概略構成)
図1は、実施の形態に係る培養装置の概略構成を示す斜視図である。
図1では、培養装置の断熱扉を開いた状態を示している。
図2は、実施の形態に係る培養装置の断面図である。
【0012】
培養装置1は、
図1および
図2に示すように、左開き式の扉(詳しくは外扉と内扉)及び観音開き式の小扉を備える。また、培養装置1は、前面に開口2Aを有する断熱箱本体2と、この開口2Aを開閉自在に閉塞する内扉としての透明扉3とで囲まれる空間により培養器4を形成している。この透明扉3は、その左側をヒンジにより断熱箱本体2に開閉自在に保持されており、培養器4の間口部分に設けられたシール部材としてのガスケット2Bによって気密的に開口2Aを閉塞している。
【0013】
培養器4の内部は、複数の棚5により上下に(ここでは4枚の棚で5つに)区画されている。なお、培養装置1は、例えば、CO
2インキュベータとして用いる場合、CO
2の濃度を5%程度に設定・維持するケースが多く、CO
2の濃度制御のために扉の閉塞後にCO
2ガスを培養器4内に供給するようにしている。このため、透明扉3を開放しても複数に区画された培養器4全体に外気が進入しないように、透明扉3よりも器内側に、観音開き式の小扉6A,6Bを各区画に対応して複数(ここでは5対)設けている。断熱扉7は、断熱箱本体2にヒンジによって開閉自在に支持され、培養器4の開口2Aからの熱進入を防止する外扉として機能し、その裏面周囲に磁石入りのガスケット8が設けられている。
【0014】
培養器4は、その背面及び底面に、それぞれ気体通路Kを形成するための間隔を有して、背面ダクト11A及び底面ダクト11Bからなるダクト11が配置されている。また、培養器4は、背面ダクト11Aの上部に形成した吸込口12から培養器4内の気体を吸い込み、底面ダクト11Bの前部及び側面に設けた吹出口13から培養器4内に吹き出す気体の強制循環を行う。ダクト11内(
図2の上部)には、この気体の強制循環のために循環用送風機14が配置されている。循環用送風機14は、ファンとモータと軸とで構成されており、モータは後述する培養器4の外側背面の機械室19に配置され、軸はこの機械室19のモータから断熱箱本体2の背面を貫通して気体通路Kまで延びてファンに接続されている。
【0015】
培養器4の底面で且つダクト11内には、加湿用の水(即ち加湿水)16を貯溜する加湿皿15が配置され、金属例えばステンレス製の内箱22の底面外側に配置されたヒータにより加熱されて水を蒸発させる。なお、加湿皿15をダクト11内で且つ培養器4の底部に配置することにより、循環用送風機14及びダクト11にて形成される培養器4への気体通路Kから加湿された気体を効率よく吹き出すことが可能となる。
【0016】
断熱箱本体2の外箱21の背面には、循環用送風機14の駆動手段たるモータや、培養器4にCO
2ガスを供給するためのガス供給手段17、及び図示しない制御基板等の電装部品を配置するための機械室19が形成される。
【0017】
ガス供給手段17は、ガス供給管17Aと、開閉弁17Bと、フィルタ17C等で構成され、ガス供給管17Aの先端部分は、気体通路Kに臨むようになっている。培養器4のガス濃度を制御するためにガス供給管17Aから供給されるCO
2ガスを噴射させることができる。
【0018】
断熱箱本体2は、金属製の外箱21と、ステンレス製の内箱22と、外箱21と内箱22の間で外箱21の内側に配置される断熱材24と、前記断熱材24よりも内側に配置される空気層(所謂エアージャケット)25とを備える。培養器4を形成する内箱22の左右両側面、底面、天面及び背面には、培養器を加熱するための加熱部としてのヒータ(後述する)が配置されている。また、培養器4の開口2Aを覆う透明扉3や断熱扉7にヒータを設けてもよい。
【0019】
(加熱部の構成)
図3は、培養装置における加熱部を説明するための模式図である。なお、説明に不要な部材については図示を適宜省略している。上述の培養装置1における培養器4は、6つの内面で囲まれた直方体の培養空間を有する。そして、培養装置1は、6つの内面のそれぞれを加熱する加熱部として、6つのヒータ26A〜26Fが設けられている。
【0020】
ヒータ26Aは、断熱扉7の内面の外表面に貼付されて設けられている。ヒータ26Bは
、天板の外表面に貼付されて設けられている。ヒータ26Cは
、右側面の外表面に貼付されて設けられている。ヒータ26Dは
、底面の外表面に貼付されて設けられている。ヒータ26Eは、左側面の外表面に貼付されて設けられている。ヒータ26Fは
、背面の外表面に貼付されて設けられている。
【0021】
図4は、加熱部を制御する制御部の構成を示すブロック図である。
図5は、第1の実施の形態に係る各加熱部における供給電力の大きさの変化を示すタイミングチャートである。
【0022】
第1の実施の形態に培養装置1は、複数の内面に囲まれた培養空間としての培養器4を有する断熱箱本体2と、培養器4内部を加湿する加湿部としての加湿皿15と、培養器4の複数の内面のそれぞれを、供給される電力によって加熱するヒータ26A〜26Fと、電力を供給する電源部28と、各ヒータに供給する電力の大きさを制御する制御部30と、を備える。
【0023】
制御部30は、ヒータ26Aに供給する電力の大きさをタイミングt1で繰り返し(周期T)で変化させ、ヒータ26Bに供給する電力の大きさをタイミングt2で繰り返し(周期T)で変化させ、ヒータ26Cに供給する電力の大きさをタイミングt3で繰り返し(周期T)で変化させ、ヒータ26Dに供給する電力の大きさをタイミングt4で繰り返し(周期T)で変化させ、ヒータ26Eに供給する電力の大きさをタイミングt5で繰り返し(周期T)で変化させ、ヒータ26Fに供給する電力の大きさをタイミングt6で繰り返し(周期T)で変化させる。
【0024】
ここで、タイミングt1〜t6は、それぞれ異なるタイミングである。また、電力変化の繰り返しの周期Tは、全ヒータで同じでなくてもよい。例えば、一部のヒータの周期T’を他のヒータの周期Tと異ならせてもよい。また、同じヒータにおいて周期Tが常に同じでなくてもよい。例えば、周期T1で電力を変化させた後、周期T2(T2≠T1で電力を変化させ、再度周期T1で電力を変化させてもよい。
【0025】
第1の実施の形態において、電力の大きさを変化させるとは、電力を供給していない状態(OFF)と、所定の値の電力を供給した状態(ON)との間で変化させる場合をいうが、必ずしもこのような変化に限られない。例えば、第1の量(0より大きい値)で電力が供給されている状態と、第1の量より多い第2の量で電力が供給されている状態との間で変化させる場合であってもよい。
【0026】
センサ等の検出によって培養器4のある領域の温湿度が所望の範囲に含まれる値を示し、各ヒータ26A〜26Fに供給される電力が安定していたとしても、培養器4を形成する複数の内面の温度が完全に均一になっているとは限らない。そのため、複数の内面のうち相対的に温度の低い箇所が特定の領域に長時間発生すると、その領域に結露が発生する要因となる。そこで、本実施の形態に係る培養装置1は、培養空間を形成する培養器4の複数の内面において、各ヒータによる加熱状態をタイミングをずらして繰り返し変化させることができるため、相対的に温度の低い箇所が特定の領域に長時間連続して発生することを抑制できる。その結果、結露の発生が抑制される。
【0027】
[第2の実施の形態]
図6は、第2の実施の形態に係る各加熱部における供給電力の大きさの変化を示すタイミングチャートである。
【0028】
第2の実施の形態に係る制御部30は、ヒータ26Aおよびヒータ26Fに供給する電力の大きさをタイミングt1で繰り返し(周期T)で変化させ、ヒータ26Bおよびヒータ26Dに供給する電力の大きさをタイミングt2で繰り返し(周期T)で変化させ、ヒータ26Cおよびヒータ26Eに供給する電力の大きさをタイミングt3で繰り返し(周期T)で変化させる。なお、同じタイミングで供給電力の大きさを繰り返し変化させる複数のヒータを1つのヒータで構成してもよい。例えば、ヒータ26Bおよびヒータ26D、又は、ヒータ26Cおよびヒータ26E、を1つのヒータで構成してもよい。
【0029】
[第3の実施の形態]
図7は、第3の実施の形態に係る各加熱部における供給電力の大きさの変化を示すタイミングチャートである。
【0030】
第3の実施の形態に係る制御部30は、ヒータ26A、ヒータ26Dおよびヒータ26Fに供給する電力の大きさをタイミングt1で繰り返し(周期T)で変化させ、ヒータ26B、ヒータ26Cおよびヒータ26
Eに供給する電力の大きさをタイミングt2で繰り返し(周期T)で変化させる。なお、同じタイミングで供給電力の大きさを繰り返し変化させる複数のヒータを1つのヒータで構成してもよい。例えば、ヒータ26Dおよびヒータ26F、又は、ヒータ26B、ヒータ26Cおよびヒータ26
E、を1つのヒータで構成してもよい。
【0031】
[第4の実施の形態]
図8は、第4の実施の形態に係る各加熱部における供給電力の大きさの変化を示すタイミングチャートである。
【0032】
図2に示すように、培養器4の底面の近傍には加湿皿15が配置されている。そこで、第4の実施の形態に係る制御部30は、ヒータ26Aに供給する電力の大きさをタイミングt1で繰り返し(周期T)で変化させ、ヒータ26Bに供給する電力の大きさをタイミングt2で繰り返し(周期T)で変化させ、ヒータ26Cに供給する電力の大きさをタイミングt3で繰り返し(周期T)で変化させ、ヒータ26Dに供給する電力の大きさをタイミングt41〜t43で繰り返し(周期T
/2)で変化させ、ヒータ26Eに供給する電力の大きさをタイミングt5で繰り返し(周期T)で変化させ、ヒータ26Fに供給する電力の大きさをタイミングt6で繰り返し(周期T)で変化させる。
【0033】
つまり、制御部は、ヒータ26Dに供給する単位時間あたりの電力が、その他のヒータに供給する単位時間あたりの電力よりも多くなるように制御している。これにより、加湿皿15での水の気化による熱の消費や、自然の温度勾配によって温度低下が生じやすい底面を他の内面よりも加熱することで、底面近傍での結露を防止できる。
【0034】
[第5の実施の形態]
図9は、第5の実施の形態に係る各加熱部における供給電力の大きさの変化を示すタイミングチャートである。
【0035】
第5の実施の形態に係る制御部30は、ヒータ26Bに供給する単位時間あたりの電力が、他のヒータに供給する単位時間あたりの電力よりも少なくなるように制御している。これにより、温度が高くなりがちな天板近傍の加熱を抑制し、培養空間の温度をより均一にできる。
【0036】
上述の培養装置を換言すると、以下のように表現することもできる。つまり、培養装置1は、複数の内面に囲まれた培養器4を有する断熱箱本体2と、培養器4を加湿する加湿皿15と、複数の内面を加熱する複数のヒータ26A〜26Fと、複数のヒータ26A〜26Fのそれぞれに供給する電力の大きさを制御する制御部30と、を備える。制御部30は、複数の内面における温度分布を所定のタイミングで繰り返し変化させるように複数のヒータ26A〜26Fのそれぞれに供給する電力を制御する。
【0037】
つまり、上述の各実施の形態に係る培養装置1は、培養器4を形成する複数の内面における温度分布を所定のタイミングで繰り返し変化させるようにすることで、相対的に温度の低い箇所が特定の領域に長時間連続して発生することを抑制できる。その結果、結露の発生が抑制される。
【0038】
なお、培養装置1はアイソレータ等の他の装置に接続される培養装置であってよいし、アイソレータを備えたシステムとして構成してもよい。また、培養装置1は、所定のタイミングで繰り返し変化するように制御される加熱部として、培養空間を囲む6つの内面のそれぞれを加熱するヒータ26A〜26Fが設けられているが、ヒータの数量又は配置はこれに限られない。ヒータの数量は少なくとも2つあればよく、ヒータの配置は必ずしも6面を平面ごとに区分される必要もないため、例えば、内箱22を左右又は上下に区分して、それぞれの領域を加熱するヒータが2つ設けられる構成であってもよい。また、内箱22のコーナーを含む領域ごとに区分してもよい。このように、所定のタイミングで繰り返し変化するように制御される加熱部は、培養空間を囲む複数の内面を少なくとも2つの領域に区分し、それぞれの領域を加熱するように設ければよい。
【0039】
以上、本発明を上述の各実施の形態を参照して説明したが、本発明は上述の実施の形態に限定されるものではなく、実施の形態の構成を適宜組み合わせたものや置換したものについても本発明に含まれるものである。また、当業者の知識に基づいて実施の形態における組合せや処理の順番を適宜組み替えることや各種の設計変更等の変形を実施の形態に対して加えることも可能であり、そのような変形が加えられた実施の形態も本発明の範囲に含まれうる。