(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
請求項1に記載の微多孔プラスチックフィルムの製造装置において、一対の前記可動フレームが前記第一の駆動手段により左右一対の水平な円弧状ガイドレールに沿って回動させられることを特徴とする微多孔プラスチックフィルムの製造装置。
【背景技術】
【0002】
従来からパン類、菓子類、野菜類、納豆やキムチ等の発酵食品等は、紙製又はプラスチックフィルム製の袋に入れて販売されている。紙製の袋は高い通気性及び透湿性を有するが、内容物が見えないという問題がある。またプラスチックフィルム製の袋は、内容物が見えるが、十分な通気性及び透湿性を有さないので、食品の風味及び食感を著しく損ねることが問題である。
【0003】
内容物がよく見えるとともに高い通気性及び透湿性を有するプラスチックフィルムを得るために、プラスチックフィルムに多数の微細孔を形成する装置が知られている。例えば、特許文献1は、長尺プラスチックフィルムを供給するための供給手段と、鋭い角部を有するモース硬度が5以上の多数の高硬度微粒子がロール面に固着したパターンロールと、パターンロールに対して逆方向に回転可能な平坦なロール面を有するアンビルロール(金属ロール)と、長尺プラスチックフィルムへの押圧力を調節するためにいずれか一方のロールの両端部付近に設けられた圧力調節手段と、パターンロールに高電圧を供給する手段とを具備し、パターンロール及びアンビルロールのいずれか一方又は両者が配列方向に移動自在である微多孔フィルムの製造装置を開示している。パターンロール及びアンビルロールは平行に配置され、その間を長尺プラスチックフィルムが通過する間に、パターンロールの多数の高硬度微粒子により多数の微細孔が形成される。
【0004】
しかし、
図13に示すように、パターンロール10及びアンビルロール20の隙間を通る8〜100μm程度の厚さのプラスチックフィルム(図示せず)に多数の微細孔を形成する際、パターンロール10及びアンビルロール20に大きな負荷をかけるので、両ロール10、20は撓み、幅方向中央部の方が両側縁部より隙間Gが広くなる傾向がある。不均一な隙間Gで形成される微細孔の性状(開口径、深さ、面密度等)はフィルムの幅方向中央部と両側縁部とで異なり、幅方向に通気度が均一な微多孔プラスチックフィルムが得られない。
【0005】
このため、パターンロール10の上部及び/又はアンビルロール20の下部にバックアップロールを配置し、パターンロール10及びアンビルロール20の撓みを低減することが考えられる。しかし、パターンロール10のロール面に多数の高硬度微粒子が固着しているので、バックアップロールとして表面が硬くないゴムロール等を使用しなければならず、パターンロール10及びアンビルロール20の撓みを十分に防止することはできなかった。
【0006】
特許文献2は、ほぼ平行に配置された6つのロールによってゴム又は熱可塑性ポリマーのフィルムをカレンダー加工する装置であって、第一〜第五のロールの真下に第六のロールが配置されており、第五のロールを微小角度だけ傾斜させるクロス手段を具備するカレンダー加工装置を開示している。しかし、クロス手段による第五のロールの傾斜角は一定であり、カレンダー加工装置は所望の傾斜角が得られる駆動手段を具備していない。そのため、このカレンダー加工装置をプラスチックフィルムに微細孔を形成するために用いても、種々のサイズ及び分布を有する微細孔を幅方向に均一に形成することができない。
【0007】
上記問題点を解消するために、本発明者は先に特許文献3により、微多孔プラスチックフィルムの製造装置であって、左右一対の固定フレームに回転自在に支持されたパターンロールと、前記パターンロールとプラスチックフィルムを介して接するように、左右一対の可動フレームに沿って昇降自在なアンビルロールと、前記パターンロールと前記アンビルロールとの隙間に前記プラスチックフィルムを通過させる搬送手段と、一対の前記可動フレームを回動させる第一の駆動手段と、前記アンビルロールを昇降させるために前記可動フレームの各々に取り付けられた第二の駆動手段と、前記パターンロールを回転させる第三の駆動手段と、前記アンビルロールを回転させる第四の駆動手段とを具備し、前記第一の駆動手段の作動により前記パターンロールの中心軸線に対して前記アンビルロールの中心軸線を水平面内で傾斜させた状態で、前記パターンロールと前記アンビルロールとの隙間に前記プラスチックフィルムを通過させ、前記高硬度微粒子により前記プラスチックフィルムに多数の微細孔を形成する微多孔プラスチックフィルムの製造装置を提案した。
【0008】
上記装置により、種々のサイズ及び分布を有する微細孔を幅方向に均一に形成することができるようになったが、実際の製造工程では、(a) アンビルロールの傾斜角を僅かに変更した後微細孔の形成を行い、微細孔の幅方向の分布を測定し、微細孔が幅方向に最も均一化することにより、パターンロールに対するアンビルロールの最適な傾斜角を求めるか、(b) パターンロールの中心軸線に対してアンビルロールの中心軸線の傾斜角をごく僅かに変更しながら、アンビルロールの最適な傾斜角を求めるので、アンビルロールの傾斜角の最適化までに、廃棄すべき微多孔プラスチックフィルム(微細孔の幅方向分布が抑制された)を長く製造しなければならないという問題があることが分った。従って、微細孔の幅方向分布の抑制を素早く行うことができる装置が望まれる。
【0009】
また、
図14に示すように鉄鋼シートSの圧延では、一対のワークロール210,220を傾斜させ、両ワークロール210,220にバックアップロール211,221を設けることが行われているが、ワークロール210とバックアップロール211との間に傾斜角を設けている訳ではない。そのため、
図14に示すような構造では、シートに斜めの力がかかる。鉄鋼シートSは十分な強度を有するので、斜めの力に対して十分に耐えられるが、プラスチックフィルムの場合には皺がよったり、破断したりする問題が生じるおそれがある。そのため、やはりワークロール210,220の傾斜を素早く行うことはできない。このように、単に傾斜させたパターンロールとアンビルロールの外側にバックアップロールを設けただけでは、一方のワークロールの傾斜角の最適化を素早く行うことはできないので、微多孔プラスチックフィルムを効率良く製造することができない。
【0010】
また、インスタントコーヒー、粉ミルク、お茶等の乾燥食品は、酸素や湿気から防ぐためにシール性の良いアルミニウム蒸着フィルム等で包装されている。アルミニウム蒸着フィルムは、高強度のポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムと、印刷層と、アルミニウム蒸着層と、ヒートシール層とからなる。アルミニウム蒸着フィルムの袋には引き裂き開始用のノッチが形成されていることが多い。
【0011】
しかし、PETフィルムに設けられたアルミニウム蒸着層、ヒートシール層及び印刷層のために、ノッチがあってもアルミニウム蒸着フィルムを引き裂くのは容易でないことが多い。特に、ヒートシール部では厚さが二倍であるので、ヒートシール部の外側に設けられたノッチからの引き裂きはヒートシール部で止められることが多い。
【0012】
以上のような事情に鑑み、ノッチなしでもどこからでも容易に引き裂くことができるフィルムとして、本発明者は先に特許文献4により、平均開口径が0.5〜100μmの貫通孔または未貫通孔が1000個/cm
2以上の密度で全面に形成されたポリエステル、ナイロンまたは配向性ポリプロピレンからなる多孔質フィルムの片面に、熱融着性高分子フィルムを積層した易裂性プラスチック積層フィルムを提案した。しかし、この易裂性プラスチックフィルムは貫通孔を有するので、酸素や湿気の透過を完全に遮断しなければならないような用途には利用できないという問題がある。
【0013】
微細な未貫通孔のみを形成したプラスチックフィルムとして、特許文献5は、無機フィラーを配合したポリオレフィン系樹脂組成物からなる厚さ5〜150μmのチューブラーフィルムであって、その内面及び外面のいずれか一方又は両方にコロナ放電処理を施し、かつその少なくとも一部にエンボス加工を施したチューブラーフィルムを開示している。エンボス深さ(JIS B0601に準拠して測定)はフィルム厚さの1/2〜1/10であり、エンボスの紋の大きさは通常0.5〜300 mmである。しかし、このエンボスは大きすぎるので、チューブラーフィルムの外観を損ねる。また、微細なエンボスを形成しようとすると、微細な突起を多数有する非常に高価なエンボスロールを使用しなければならないので、形成されるエンボスフィルムは高価にならざるを得ない。
【0014】
このように、プラスチックフィルムに微細な未貫通孔のみを形成する場合にも、未貫通孔の性状の分布が生じるという問題はある。この問題を解決するためには、パターンロール及びアンビルロールがプラスチックフィルムにかける押圧力を幅方向に均一化する必要があるが、特許文献3に示す構造では、押圧力の幅方向均一化を素早く行うことはできない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
従って本発明の目的は、多数の微細孔の幅方向分布を素早く均一化することにより、微多孔プラスチックフィルムを効率良く製造することができる装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0017】
上記目的に鑑み鋭意研究の結果、本発明者は、
図1に示すように、プラスチックフィルムに微細孔を形成するためのパターンロール10及びアンビルロール20に、下方バックアップロール30を組合せるとともに、(a) パターンロール10及びアンビルロール20を平行に維持したまま、(b) 下方バックアップロール30をアンビルロール20に対して水平面内で微小な角度θだけ傾斜させると、プラスチックフィルムに皺や破断等の問題を生じさせることなく、微細孔の形成の際の応力により僅かに湾曲したパターンロール10及びアンビルロール20の撓みを素早く取り除くことができ、もって幅広のプラスチックフィルムに対しても、多数の微細孔の幅方向分布を素早く均一化できることを発見し、本発明に想到した。
【0018】
すなわち、本発明の微多孔プラスチックフィルムの製造装置は、
左右一対の縦フレームと、
前記縦フレームの内側に位置するように各縦フレームに固定された左右一対の固定フレームと、
前記固定フレームの一方の側の面に設けられた第一の垂直ガイドレールと、
前記固定フレームの下方に位置する回動自在な左右一対の可動フレームと、
多数の高硬度微粒子をロール面にランダムに有し、前記固定フレームの定位置に回転自在に支持されたパターンロールと、
前記パターンロールの下方で前記固定フレームの前記第一の垂直ガイドレールに沿って昇降自在なアンビルロールと、
前記アンビルロールを下方から押圧するように、前記可動フレーム
の一方の側の面に設けられた第二の垂直ガイドレールに沿って昇降自在な下方バックアップロールと、
前記パターンロールと前記アンビルロールとの隙間に前記プラスチックフィルムを通過させる搬送手段と、
前記可動フレームを回動させる第一の駆動手段と、
前記下方バックアップロールを昇降させるために前記可動フレームの各々に取り付けられた第二の駆動手段と、
前記パターンロール及び前記アンビルロールを同時に回転させる第三の駆動手段と、
前記下方バックアップロールを回転させる第四の駆動手段とを具備し、
前記パターンロールの中心軸線と前記アンビルロールの中心軸線は平行であり、
回動する前記可動フレーム、及びそれに伴って回動する前記下方バックアップロール及び前記第四の駆動手段が前記縦フレームと干渉しないように、前記第一及び第二の垂直ガイドレールは前記縦フレームから一方の側に離隔しており、
前記アンビルロールを前記下方バックアップロールの押圧により上昇させるとともに、前記第一の駆動手段の作動により前記アンビルロールの中心軸線に対して前記下方バックアップロールの中心軸線を水平面内で傾斜させた状態で、前記パターンロールと前記アンビルロールとの隙間に前記プラスチックフィルムを通過させ、前記高硬度微粒子により前記プラスチックフィルムに多数の微細孔を形成することを特徴とする。
【0019】
一対の前記可動フレームは前記第一の駆動手段により左右一対の水平な円弧状ガイドレールに沿って回動させられるのが好ましい。
【0020】
前記可動フレームが固定された可動プレートは、第一の駆動手段に連結した水平プレートの両端に固定されており、前記可動プレートの各々の底面のガイド溝は前記円弧状ガイドレールの各々と係合しているのが好ましい。
【0021】
本発明の微多孔プラスチックフィルムの製造装置はさらに、
前記パターンロールと前記アンビルロールの隙間より下流に、製造された微多孔プラスチックフィルムにおける微細孔の性状(開口径、深さ、面密度等)を観察するセンサを具備するとともに、
前記センサの出力信号を受けて、所望の微細孔の性状が得られるように、前記アンビルロールの中心軸線に対する前記下方バックアップロールの中心軸線の水平方向傾斜角を調節する信号を生成する手段を具備するのが好ましい。
【0022】
前記アンビルロールの中心軸線に対する前記下方バックアップロールの中心軸線の水平方向傾斜角が0°の状態で、前記プラスチックフィルムの穿孔を開始した後、前記センサの出力信号に応じて前記第一の駆動手段を作動させるのが好ましい。
【0023】
前記パターンロールの高硬度微粒子は鋭い角部を有するとともに、5以上のモース硬度を有し、前記パターンロールのロール面における前記高硬度微粒子の面積率は10〜70%であるのが好ましい。
【0024】
本発明の微多孔プラスチックフィルムの製造装置はさらに、前記パターンロールを押圧する上方バックアップロールを具備するのが好ましい。
【発明の効果】
【0025】
本発明の装置は、固定フレームに回転自在に支持されたパターンロール及びアンビルロールと、可動フレームに沿って昇降自在な下方バックアップロールとを具備し、下方バックアップロールがアンビルロールを下から押圧することにより、パターンロールとアンビルロールの隙間を通過するプラスチックフィルムに多数の微細孔を形成する構造を有し、可動フレームの回動によりアンビルロールに対する下方バックアップロールの水平方向傾斜角を素早く変更することができる。そのため、微細孔の性状(開口径、深さ、面密度等)に応じて下方バックアップロールの最適な水平方向傾斜角を素早く設定することができる。下方バックアップロールが水平方向に回動する間パターンロール及びアンビルロールは平行に維持されているので、プラスチックフィルムに斜めの力がかかることがなく、下方バックアップロールの水平方向回動を素早く行っても、プラスチックフィルムに歪みや破断が生じるおそれがない。
【0026】
本発明の装置は、プラスチックフィルムに貫通孔を形成する場合だけでなく、未貫通孔だけを形成する場合にも使用することができる。貫通孔を形成した微多孔プラスチックフィルムは、適度の通気性及び透湿性が要求されるパン類、菓子類、野菜類、納豆やキムチ等の発酵食品等の包装用フィルムに好適である。また、未貫通孔だけを形成した微多孔プラスチックフィルムは、酸素や湿気等の透過を完全に遮断しつつ、任意の箇所から容易に引き裂くことができる易裂性プラスチックフィルムとして、インスタントコーヒー、粉ミルク、お茶等の乾燥食品の包装用フィルムに好適である。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【
図1】パターンロール及びアンビルロールに対して傾斜した下方バックアップロールを示す平面図である。
【
図2(a)】本発明の微多孔プラスチックフィルムの製造装置(ロールが開放された状態)を示す正面図である。
【
図2(b)】本発明の微多孔プラスチックフィルムの製造装置(ロールが閉じられた状態)を示す正面図である。
【
図3】本発明の微多孔プラスチックフィルムの製造装置のフレーム構造を示す正面図である。
【
図4】本発明の微多孔プラスチックフィルムの製造装置のフレーム構造を示す背面図である。
【
図5】本発明の微多孔プラスチックフィルムの製造装置のフレーム構造を示す平面図である。
【
図6】本発明の微多孔プラスチックフィルムの製造装置の右側面図である。
【
図7】土台に固定した円弧状ガイドレールを示す平面図である。
【
図8】円弧状ガイドレールと左右一対の可動フレームとの関係を示す部分省略平面図である。
【
図9】円弧状ガイドレールに沿って移動自在な可動フレームの構造を示す分解側面図である。
【
図10】パターンロールとアンビルロールによりプラスチックフィルムに微細孔を形成する様子を示す断面図である。
【
図11(a)】第三の駆動手段における歯車の関係を示す拡大正面図である。
【
図11(b)】第三の駆動手段における歯車の関係を示す拡大側面図である。
【
図12(a)】下方バックアップロールがアンビルロールに平行なときの左右一対の可動フレームと一対の円弧状ガイドレールとの関係を示す平面図である。
【
図12(b)】下方バックアップロールがアンビルロールに対して水平面内で反時計方向に傾斜したときの左右一対の可動フレームと一対の円弧状ガイドレールとの関係を示す平面図である。
【
図12(c)】下方バックアップロールがアンビルロールに対して水平面内で時計方向に傾斜したときの左右一対の可動フレームと一対の円弧状ガイドレールとの関係を示す平面図である。
【
図13】プラスチックフィルムに微細孔を形成する際に、平行に配置されたパターンロールとアンビルロールとが撓む様子を誇張して示す概略図である。
【
図14】鉄鋼シートを圧延するために相互に傾斜したパターンロール及びアンビルロールにそれぞれバックアップロールを設けた様子を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
本発明の実施形態を添付図面を参照して詳細に説明するが、特に断りがなければ一つの実施形態に関する説明は他の実施形態にも適用される。また下記説明は限定的ではなく、本発明の技術的思想の範囲内で種々の変更を施しても良い。
【0029】
[1] 微多孔プラスチックフィルムの製造装置の構成
図2(a)、
図2(b)、及び
図3〜
図6に示すように、本発明の微多孔プラスチックフィルムの製造装置は、左右一対の固定フレーム40,40と、固定フレーム40,40の下方に位置する回動自在な左右一対の可動フレーム50,50と、プラスチックフィルムFに微細孔を形成するために左右一対の固定フレーム40,40に対向して設けられたパターンロール10及びアンビルロール20と、可動フレーム50,50に昇降自在に支持された下方バックアップロール30と、可動フレーム50,50を回転させるために土台60の上面に固定された第一の駆動手段70と、各可動フレーム50,50に沿って下方バックアップロール30を上下動させる第二の駆動手段80,80と、パターンロール10及びアンビルロール20を同時に回転させるための第三の駆動手段90と、下方バックアップロール30を回転させるための第四の駆動手段100と、プラスチックフィルムFが巻回された第一のリール151と、製造された微多孔プラスチックフィルムFaを巻回するための第二のリール152と、プラスチックフィルムF及び微多孔プラスチックフィルムFaを案内する複数のガイドロール及びニップロールとを具備する。
【0030】
(1) 固定フレーム
図3〜
図5に示すように、一対の縦フレーム111,111
は土台60に固定されており、
縦フレーム111,111の各々
の内側に固定フレーム40
が固定されている。
一対の固定フレーム40,40の上端部に横フレーム112が固定されている。図3に示すように、各固定フレーム40の定位置にパターンロール10の各軸受11が回転自在に支持されており、パターンロール10は固定フレーム40に対して昇降することなく、所定の位置で回転する。
【0031】
図7に示すように、土台60の上面に左右一対の平板61,61が固定されており、各平板61の上面に各円弧状ガイドレール62がボルトで固定されている。土台60の中央部の平板77に、第一の駆動手段70を支持するフレーム74が固定されている。
【0032】
(2) 可動フレーム
図3、
図4及び
図8から明らかなように、各可動プレート55の上面に固定された各可動フレーム50は、各固定フレーム40の下方に位置している。
図9に示すように、各可動プレート55の底面に、円弧状ガイドレール62が摺動自在に係合するガイド溝57aを有するガイドブロック57がボルトで固定されている。各可動フレーム50,50に各可動プレート55,55が固定されており、両可動プレート55,55は水平プレート56の両端に固定されている。
【0033】
(3) パターンロール
図10に示すように、パターンロール10は、金属製ロール本体10aの表面に多数の高硬度微粒子10bをニッケルめっき等のめっき層10cによりランダムに固着したロールが好ましい。このようなパターンロール10の具体例は、例えば特開平5-131557号、特開平9-57860号及び特開2002-59487号に記載されている。
【0034】
高硬度微粒子10bは鋭い角部(コーナー部)を有するとともに、5以上のモース硬度を有するのが好ましい。高硬度微粒子10bはダイヤモンド微粒子であるのが好ましく、特にダイヤモンドの粉砕微粒子が好ましい。
【0035】
形成する微細孔の性状(開口径、深さ、面密度等)に応じて、高硬度微粒子10bは10〜500μmの範囲内の粒径分布を有するのが好ましい。高硬度微粒子10bの粒径が10μm未満であると、プラスチックフィルムFに十分な微細孔を形成できない。一方、高硬度微粒子10bの粒径が500μm超であると、プラスチックフィルムFに形成される微細孔が大きすぎる。高硬度微粒子10bの粒径の下限は20μmがより好ましく、30μmが最も好ましい。また、高硬度微粒子10bの粒径の上限は400μmがより好ましく、300μmが最も好ましい。
【0036】
(i) 使用するプラスチックフィルムFの材質及び厚さ、及び(ii) 形成する微細孔の開口径、深さ、面密度等に応じて、パターンロール10のロール面に固着させる高硬度微粒子10bの粒径分布は異なるので、上記範囲内で、高硬度微粒子10bの粒径分布を適宜選択するのが好ましい。
【0037】
高硬度微粒子10bは3以下のアスペクト比を有するのが好ましい。アスペクト比が3以下であることにより、高硬度微粒子10bは球体に近い多角体形状を有する。高硬度微粒子10bのアスペクト比は2以下がより好ましく、1.5以下が最も好ましい。
【0038】
高硬度微粒子10bの約1/2〜2/3はめっき層10cに埋設されており、めっき層10cの表面から突出する高硬度微粒子10bの高さ分布は10〜400μmの範囲であるのが好ましい。高硬度微粒子10bの高さが10μm未満であると、十分な微細孔が形成されない。一方、高硬度微粒子10bの高さが400μm超であると、プラスチックフィルムFに形成される微細孔が大きすぎる。高硬度微粒子10bの高さ分布の下限は20μmがより好ましく、30μmが最も好ましい。また、高硬度微粒子10bの高さ分布の上限は300μmがより好ましく、200μmが最も好ましい。
【0039】
パターンロール10のロール面における高硬度微粒子10bの面積率(高硬度微粒子10bがパターンロール10の表面を占める割合)は10〜70%が好ましい。高硬度微粒子10bの面積率が10%未満であると、プラスチックフィルムFに十分な密度で微細孔を形成することができない。一方、パターンロール10のロール面に高硬度微粒子10bを70%超の面積率で固着させることは事実上困難である。高硬度微粒子10bの面積率の下限は20%がより好ましく、上限は60%がより好ましい。
【0040】
プラスチックフィルムFの穿孔中にパターンロール10が撓むのを防止するために、パターンロール10のロール本体10aは硬質金属により形成するのが好ましい。硬質金属としては、SKD11のようなダイス鋼が挙げられる。
【0041】
プラスチックフィルムFに形成する微細孔には、貫通孔を有する場合と、未貫通孔のみからなる場合とがある。未貫通孔のみからなる微細孔を形成する場合、めっき層10cの表面(ロール面)から突出する高硬度微粒子10bは、プラスチックフィルムFの厚さの30〜80%に相当する平均深さDav及び90%以下に相当する最大深さDmaxの微細な未貫通孔をプラスチックフィルムFに形成し得る平均高さ及び最大高さを有する必要がある。ロール面から突出する高硬度微粒子10bの平均高さはプラスチックフィルムFの厚さの30〜80%であるのが好ましく、35〜70%であるのがより好ましく、40〜60%であるのが最も好ましい。また、ロール面から突出する高硬度微粒子10bの最大高さはプラスチックフィルムFの厚さの90%以下が好ましく、85%以下がより好ましく、80%以下が最も好ましい。パターンロール10のロール面における高硬度微粒子10bの平均粒径は20〜100μmであるのが好ましく、25〜80μmであるのがより好ましく、30〜60μmであるのが最も好ましい。
【0042】
(4) アンビルロール
パターンロール10と組合せるアンビルロール20は、プラスチックフィルムFにパターンロール10の高硬度微粒子10bが十分に進入できるとともに、穿孔工程での負荷に対して十分な耐変形性を発揮するために、高強度で硬質の金属により形成するのが好ましい。そのため、アンビルロール20を高強度の耐食性ステンレススチール(SUS440C,SUS304等)により形成するのが好ましい。また、アンビルロール20を、ダイス鋼のような硬質金属の内層と、SUS304のような高強度の耐食性ステンレススチールからなる外層との二層構造にしても良い。外層の厚さは実用的には20〜60 mm程度で良い。
【0043】
(5) 下方バックアップロール
図2(a) 及び
図3に示すように、下方バックアップロール30の一対の軸受31,31は左右一対の可動フレーム50,50の垂直ガイドレール54,54に沿って昇降自在である。下方バックアップロール30はアンビルロール20の真下に位置するので、下方バックアップロール30が上昇すると、アンビルロール20は下方からパターンロール10に押し付けられる。
【0044】
(6) 第一の駆動手段
水平プレート56に連結している第一の駆動手段70は、モータ71と、モータ71の軸72に連結した減速機73と、減速機73を支持するフレーム74と、軸72に固定されたコネクタプレート75とを具備する。フレーム74は土台60上の平板77に固定されている。また、コネクタプレート75はボルト76で水平プレート56に固定されている。
【0045】
(7) 第二の駆動手段
各可動フレーム50のブラケット51に各第二の駆動手段80が固定されている。各第二の駆動手段80は、可動フレーム50に固定されたブラケット51に支持された歯車装置81と、歯車装置81に減速機82を介して連結したモータ83と、歯車装置81に取り付けられたスクリュージャッキ84と、スクリュージャッキ84から突出する雄ねじ部材85とを有する。下方バックアップロール30の各軸受31は、緩衝装置86を介してスクリュージャッキ84の雄ねじ部材85に支持されている。緩衝装置86はコイルバネ等の弾性部材及びロードセンサを具備し、下方バックアップロール30の軸受31に過大な衝撃がかかるのを防止する。
図3及び
図6に示すように、各可動フレーム50の前面に下方バックアップロール30の各軸受31の背面のガイド部材32が係合する垂直ガイドレール54が設けられており、第二の駆動手段80の作動により、下方バックアップロール30軸受31は可動フレーム50の垂直ガイドレール44に沿って昇降する。
【0046】
(8) 第三の駆動手段
図2(a) 及び
図2(b) に示すように、パターンロール10及びアンビルロール20を同時に回転させるための第三の駆動手段90は、モータ91と、モータ91の第一の回転軸93aに連結した減速機92及びカップリング装置94を具備する。第一の回転軸93aはパターンロール10の一方の軸受11が連結している。
【0047】
図11(a) に示すように、第一の回転軸93aに固定された第一の歯車95aは、チェーン96を介して第二の回転軸93bに固定された第二の歯車95bに係合し、第二の回転軸93bに固定された第三の歯車95cは、アンビルロール20の一方の軸受21に連結した第三の回転軸93cに固定された第四の歯車95dに係合している。このため、第一の歯車95aと第四の歯車95dは逆方向に回転する。
図11(b) に示すように、チェーン96は第五の歯車95eにも係合し、第五の歯車95eはバネ(図示せず)により常にチェーン96を引っ張るように偏圧されているので、パターンロール10とアンビルロール20との間隔の変化により第一の回転軸93aと第二の回転軸93bとの距離が変化しても、チェーン96は緩むことがなく、モータ91の動力をパターンロール10及びアンビルロール20の両方に伝達することができる。
【0048】
また、第一の歯車95aの歯数と第四の歯車95dの歯数が同じで、第二の歯車95bの歯数と第三の歯車95cの歯数も同じであるので、第一の歯車95aに連結したパターンロール10と第四の歯車95dに連結したアンビルロール20とは、逆方向に同じ回転数で回転する。
【0049】
(9) 第四の駆動手段
図2(a) 及び
図2(b) に示すように、下方バックアップロール30を回転させる第四の駆動手段100はモータ101及び減速機102を具備し、その回転軸は下方バックアップロール30の一方の軸受31に連結している。このように下方バックアップロール30はパターンロール10及びアンビルロール20と独立に駆動されるので、下方バックアップロール30を昇降自在に支持する可動フレーム50の回動が容易になる。
【0050】
(10) センサ
パターンロール10とアンビルロール20との隙間Gより下流の位置に、隙間Gから出る微多孔プラスチックフィルムFaにおける微細孔の性状(開口径、深さ、面密度等)を観察するためのセンサ145を設けるのが好ましい。本発明の装置はまた、センサ145の出力信号を入力する制御装置(図示せず)を具備する。制御装置は、センサ145の出力信号に応じて、所望の微細孔の性状を得るためのパターンロール10とアンビルロール20との隙間、及びアンビルロール20の中心軸線に対する下方バックアップロール30の中心軸線の水平方向傾斜角θを調節する信号を生成する。
【0051】
(11) 上方バックアップロール
穿孔工程中のパターンロール10の変形量を低減するために、本発明の装置は、
図2(a) 及び
図2(b) に示すように、パターンロール10の上に上方バックアップロール160を具備するのが好ましい。バックアップロール160はパターンロール10に接触するので、ゴムロール等のようにロール面が比較的柔軟なロールであるのが好ましい。バックアップロール160は、一対の固定フレーム40,40の垂直ガイドレール44,44に沿って昇降自在である。
【0052】
バックアップロール160の両軸受161,161は、一対の固定フレーム40,40のブラケット46,46に固定された一対の第五の駆動手段170,170により駆動される。各第五の駆動手段170は、モータ171と、モータ171に連結した減速機172と、減速機172に連結するとともに固定フレーム40のブラケット46に取り付けられたスクリュージャッキ173と、スクリュージャッキ173から突出する雄ねじ部材174と、雄ねじ部材174の下端に設けられた緩衝装置175とを有する。緩衝装置175はコイルバネ等の弾性部材及びロードセンサを具備し、バックアップロール160の軸受161に過大な衝撃がかかるのを防止する。
【0053】
図2(a) 及び
図2(b) に示すように、モータ171の駆動によりスクリュージャッキ173の雄ねじ部材174を下降させると、緩衝装置175を介してバックアップロール160の軸受161は下方に押圧される。その結果、バックアップロール160はパターンロール10を下方に押圧し、穿孔工程中のパターンロール10の変形量を低減する。パターンロール10の変形量が低減すると、アンビルロール20と下方バックアップロール30との相対的な傾斜角を小さくできるので、傾斜角の調整時間を短縮できるという利点がある。
【0054】
[2] 微多孔プラスチックフィルムの製造
(1) プラスチックフィルム
本発明の装置により微細孔を形成するプラスチックフィルムFは、パターンロール10の高硬度微粒子10bにより微細孔を形成し得る柔軟性と、微細孔を形成する際に破断や皺等の不具合が生じるおそれがない程度に高い強度及び硬さを有する必要がある。このようなプラスチックとして、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)等のポリエステル類、延伸ポリプロピレン(OPP)等のポリオレフィン類、ナイロン(Ny)等のポリアミド類、ポリ塩化ビニル類、ポリ塩化ビニリデン類、ポリスチレン類等の熱可塑性可撓性ポリマーが好ましい。
【0055】
貫通孔又は未貫通孔の微細孔を形成するプラスチックフィルムFの厚さは8〜100μmの範囲内であるのが好ましい。プラスチックフィルムFの厚さが8μm未満であると、微細孔を形成するのに強度が不十分である。一方、プラスチックフィルムFの厚さが100μm超であると、包装用フィルムとして硬すぎる。プラスチックフィルムFの厚さはより好ましくは10〜80μmであり、最も好ましくは12〜60μmである。
【0056】
プラスチックフィルムFは、単層フィルムに限らず、積層フィルムでも良い。特にヒートシールを行う場合、内層にLLDPEやEVAcのような低融点樹脂からなるシーラント層を設けた積層フィルムを用いるのが好ましい。シーラント層の厚さは20〜60μm程度で良い。未貫通孔のみを形成する場合、プラスチックフィルムFに未貫通孔を形成した後でシーラント層を積層するのが好ましい。
【0057】
(2) プラスチックフィルムの穿孔
下方バックアップロール30が下降位置でアンビルロール20と平行の状態にある(アンビルロール20の中心軸線に対する下方バックアップロール30の中心軸線の水平方向傾斜角θが0°である)ときに、パターンロール10及びアンビルロール20を回転させる第三の駆動手段90を作動させながら、第一のリール151から巻き戻されたプラスチックフィルムFを、パターンロール10とアンビルロール20との大きな隙間Gに通し、ガイドロール140、及び複数のガイドロール及びニップロールを経て、第二のリール152に巻き取る。
【0058】
第二の駆動手段80,80を作動させると、下方バックアップロール30は上昇し、アンビルロール20を押し上げる。プラスチックフィルムFは隙間Gで次第にパターンロール10及びアンビルロール20に接触し、押圧されるようになる。
【0059】
点Oを中心として第一の駆動手段70を作動(回転)させると、水平プレート56に連結した一対の可動プレート55,55は円弧状ガイドレール62,62に沿って左右に回転し、可動フレーム50,50に両軸受31,31が昇降自在に支持された下方バックアップロール30は、水平面内でアンビルロール20と平行な状態[
図12(a)]から反時計方向[
図12(b)]又は時計方向[
図12(c)]に傾斜する。アンビルロール20に対する下方バックアップロール30の水平面内での時計方向又は反時計方向の傾斜角θが増大すると、アンビルロール20の中央部に対する下方バックアップロール30の押圧力は益々大きくなる。そのため、アンビルロール20の撓みが是正され、パターンロール10とアンビルロール20の隙間Gを通るプラスチックフィルムFにかかる応力は横手方向に均一化される。
【0060】
図6及び
図10に示すように、隙間Gから出るプラスチックフィルムF(穿孔開始後は微多孔プラスチックフィルムFa)における微細孔F
1の性状(開口径、深さ、面密度等)をセンサ145により観察し、センサ145の出力信号を制御装置(図示せず)に入力し、制御装置で、所望の微細孔の性状を得るために、パターンロール10とアンビルロール20との隙間を調節(最適化)する第一の信号、及びアンビルロール20の中心軸線に対する下方バックアップロール30の中心軸線の水平方向傾斜角θを調節(最適化)する第二の信号を生成する。この状態で、プラスチックフィルムFを穿孔して、所望の微多孔プラスチックフィルムFaを形成し、最終的に第二のリール152に巻き取る。
【0061】
[3] 微多孔プラスチックフィルム
(1) 貫通孔を有する微多孔プラスチックフィルム
本発明の装置により製造された貫通孔を有する微多孔プラスチックフィルムは、パターンロール10とアンビルロール20との押圧力及び傾斜角θを調整することにより、100〜7000 g/m
2・24hr・40℃90%RHの透湿度を有することができる。透湿度はJIS Z 0208の「防湿包装材料の透過湿度試験方法」に基づき測定する。透湿度が100 g/m
2・24hr・40℃90%RH未満であると、微多孔プラスチックフィルムはパン、野菜等の食品等に必要な透湿性を有さない。一方、透湿度が7000 g/m
2・24hr・40℃90%RH超であると、透湿性が高すぎる。微多孔プラスチックフィルムの透湿度は好ましくは200〜6000 g/m
2・24hr・40℃90%RHであり、より好ましくは300〜6000 g/m
2・24hr・40℃90%RHである。微多孔プラスチックフィルムの透湿度は、包装すべき内容物に応じて上記範囲内で適宜設定することができる。
【0062】
(2) 未貫通孔のみを有する微多孔プラスチックフィルム
本発明の装置により製造された未貫通孔のみを有する微多孔プラスチックフィルムでは、未貫通孔はプラスチックフィルムFの厚さの30〜80%に相当する平均深さDav及び90%以下に相当する最大深さDmaxを有する。また、微細な未貫通孔の平均孔径Pavは20〜100μmであり、分布密度Dsは500〜40,000個/cm
2である。
【0063】
後述するように、微細な未貫通孔は、パターンロール表面にランダムに付着した種々の大きさ及び高さを有する多数の高硬度微粒子により形成されるので、種々の大きさ及び深さを有する。しかし、酸素や湿気等の透過を完全に遮断しつつ、任意の箇所から容易に引き裂くことができるためには、微細な未貫通孔の平均深さDavはプラスチックフィルムFの厚さの30〜80%であり、最大深さDmaxはプラスチックフィルムFの厚さの90%以下でなければならない。
【0064】
微細な未貫通孔の平均深さDavが30%未満では、プラスチックフィルムFに十分な易裂性を付与することができない。一方、平均深さDavが80%超では、形成される全ての微細孔を微細な未貫通孔とすることができない。微細な未貫通孔の平均深さDavは好ましくはプラスチックフィルムFの厚さの35〜70%であり、より好ましくは40〜60%である。
【0065】
微細な未貫通孔の最大深さDmaxが90%超では、形成される全ての微細孔を微細な未貫通孔とすることができない。微細な未貫通孔の最大深さDmaxは好ましくはプラスチックフィルムFの厚さの85%以下であり、より好ましくは80%以下である。
【0066】
微細な未貫通孔の平均孔径Pavが20μm未満であると、プラスチックフィルムFに十分な易裂性を付与することができない。一方、微細な未貫通孔の平均孔径Pavが100μmを超えると、プラスチックフィルムFの強度が不十分になるだけでなく、表面の美観が低下する。微細な未貫通孔の平均孔径Pavは好ましくは25〜80μmであり、より好ましくは30〜60μmである。
【0067】
上記平均深さDav、最大深さDmax及び平均孔径Pavを有する微細な未貫通孔の深さ分布及び孔径分布はできるだけ狭い方が好ましい。そのためには、パターンロール10の高硬度微粒子10bの粒径分布をできるだけ狭くするのが好ましい。
【0068】
微細な未貫通孔の分布密度Dsが500個/cm
2未満であると、プラスチックフィルムFに十分な易裂性を付与することができない。一方、分布密度Dsが40,000個/cm
2を超えると、微多孔プラスチックフィルムの強度が不十分になる。微細な未貫通孔の分布密度Dsは好ましくは1000〜20,000個/cm
2であり、より好ましくは2000〜10,000個/cm
2である。
【0069】
貫通孔を有する微多孔プラスチックフィルムを易裂性プラスチックフィルムとして乾燥食品等の包装用フィルムに使用する場合、微多孔プラスチックフィルムの背面(微細な未貫通孔が形成されていない側)に印刷層、ガスバリア層及びヒートシール層を形成するのが好ましい。ガスバリア層はアルミニウム箔、アルミニウム蒸着層又は透明無機酸化物蒸着層で良い。透明無機酸化物蒸着層として、酸化珪素又はアルミナの蒸着層が挙げられる。高度のガスバリア性が要求されない場合、ガスバリア層を省略しても良い。ヒートシール層は、微多孔プラスチックフィルムからなる袋を密封するのに必要であり、低密度ポリエチレン(LDPE)、無延伸ポリプロピレン(CPP)、エチレン酢酸ビニル共重合体(EVA)等により形成することができる。ヒートシール層の厚さは20〜60μm程度で良い。
【解決手段】 左右一対の固定フレーム40と、固定フレーム40の下方に位置する回動自在な左右一対の可動フレーム50と、固定フレーム40の定位置に回転自在に支持されたパターンロール10と、パターンロール10の下方で固定フレーム40に沿って昇降自在なアンビルロール20と、可動フレーム50に沿って昇降自在な下方バックアップロール30とを具備し、パターンロール10とアンビルロール20は平行であり、アンビルロール20を下方バックアップロール30の押圧により上昇させるとともに、アンビルロール20に対して下方バックアップロール30を水平面内で傾斜させた状態で、プラスチックフィルムに多数の微細孔を形成する微多孔プラスチックフィルムの製造装置。