特許第6386207号(P6386207)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6386207太陽光発電の出力制御システム、それに用いるパワーコンディショナ
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6386207
(24)【登録日】2018年8月17日
(45)【発行日】2018年9月5日
(54)【発明の名称】太陽光発電の出力制御システム、それに用いるパワーコンディショナ
(51)【国際特許分類】
   H02J 3/38 20060101AFI20180827BHJP
   H02J 7/35 20060101ALI20180827BHJP
【FI】
   H02J3/38 130
   H02J7/35 K
【請求項の数】9
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2018-115364(P2018-115364)
(22)【出願日】2018年6月18日
【審査請求日】2018年6月18日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】508069512
【氏名又は名称】デルタ電子株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100194456
【弁理士】
【氏名又は名称】大森 勇
(72)【発明者】
【氏名】宮崎 偉生
(72)【発明者】
【氏名】中谷 一志
(72)【発明者】
【氏名】田中 誠二
(72)【発明者】
【氏名】岩井 博
【審査官】 坂本 聡生
(56)【参考文献】
【文献】 特開2016−129441(JP,A)
【文献】 特開2002−171769(JP,A)
【文献】 特開2010−22122(JP,A)
【文献】 特開平10−210685(JP,A)
【文献】 特開2014−241721(JP,A)
【文献】 特開昭60−16176(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02J3/00−5/00
H02J7/35
H02M7/48
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
1以上のソーラー発電器と、
複数のパワーコンディショナと、
蓄電池と、
前記1以上のソーラー発電器の出力端、前記複数のパワーコンディショナの入力端、及び前記蓄電池の入出力端に接続されているDC母線と、
前記蓄電池の入出力端に流れる電流の方向及び電流量の内、1以上の値に基づいて、前記複数のパワーコンディショナのオン/オフ制御を行う制御部と、を備え、
前記複数のパワーコンディショナの各々は出力端子が系統側の出力端子に接続されており、前記制御部によってオンに切り替えられたときに前記系統側の出力端子に流れる電力の変動率を所望値未満とする予め定めた変化量で出力を0kWから予定の出力まで増加させ、前記制御部によってオフに切り替えられたときに前記変化量で出力を0kWまで減少させる出力増減回路を備えていることを特徴とする太陽光発電の出力制御システム。
【請求項2】
前記制御部は、前記蓄電池の入出力端に流れる電流が、前記DC母線へ出力されている場合、オフにするパワーコンディショナの数を増やし、前記DC母線から入力されている場合又は入力停止している場合、オンにするパワーコンディショナの数を増やす、請求項1に記載の太陽光発電の出力制御システム。
【請求項3】
前記出力増減回路は、前記変化量を設定する変化量設定部を有しており、
前記変化量設定部は、各パワーコンディショナの入力端及び出力端から電気絶縁されている、前記変化量を定める物理スイッチを備えている、請求項1又は請求項2に記載の太陽光発電の出力制御システム。
【請求項4】
前記出力増減回路は、前記変化量を設定する変化量設定部を有しており、
前記変化量設定部は、変化量の記憶部と、各パワーコンディショナの入力端及び出力端から電気絶縁されており、当該記憶部に変化量を設定及び記録させる設定回路とを備えている、請求項1又は請求項2に記載の太陽光発電の出力制御システム。
【請求項5】
前記記憶部と前記設定回路の間に、前記設定回路を前記記憶部に、着脱可能に電気接続する接続部を備えている、請求項4に記載の太陽光発電の出力制御システム。
【請求項6】
1以上のソーラー発電器の出力端、及び、複数のパワーコンディショナの入力端、及び、蓄電池の入出力端に接続されているDC母線と、前記蓄電池の入出力端に流れる電流の方向及び電流量の内、1以上の値に基づいて、前記複数のパワーコンディショナのオン/オフ制御を行う制御部とを備えている、太陽光発電の出力制御システムで用いられるパワーコンディショナであって、
前記パワーコンディショナは出力端子が系統側の出力端子に接続されており、前記制御部によってオンに切り替えられたときに前記系統側の出力端子に流れる電力の変動率を所望値未満とする予め定めた変化量で出力を0kWから予定の出力まで増加させ、前記制御部によってオフに切り替えられたときに前記変化量で出力を0kWまで減少させる出力増減回路を備えていることを特徴とする、太陽光発電の出力制御システムで用いられるパワーコンディショナ。
【請求項7】
前記出力増減回路は、前記変化量を設定する変化量設定部を有しており、
前記変化量設定部は、各パワーコンディショナの入力端及び出力端から電気絶縁されている、前記変化量を定める物理スイッチを備えている、請求項6に記載のパワーコンディショナ。
【請求項8】
前記出力増減回路は、前記変化量を設定する変化量設定部を有しており、
前記変化量設定部は、変化量の記憶部と、各パワーコンディショナの入力端及び出力端から電気絶縁されており、当該記憶部に変化量を設定及び記憶させる設定回路とを備えている、請求項6に記載のパワーコンディショナ。
【請求項9】
前記記憶部と前記設定回路の間に、前記設定回路を前記記憶部に、着脱可能に電気接続する接続部を備えている、請求項8に記載のパワーコンディショナ。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ソーラー発電器のDC出力を、AC出力に変換して電力系統に出力する太陽光発電の出力制御システム、それに用いるパワーコンディショナに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、図10に示すように、1台のセントラル型の大型パワーコンディショナ101と、1組以上、例えば10組のソーラー発電器102a〜102jと、蓄電池103と、ソーラー発電器の出力端、パワーコンディショナの入力端子、及び蓄電池の入出力端に接続されているDC母線104と、を備えている太陽光発電の出力制御システム100が知られている。ソーラー発電器102a~102jは、複数の太陽電池パネルを有している太陽電池と、MPPT制御又はPWM制御機能を有するDC/DCコンバータとを含むDC出力部を構成している。
【0003】
例えば特許文献1には、1台のパワーコンディショナを用いて、太陽光発電による発電電力制御を行うシステムが開示されている(特許文献1の図1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2017−195667号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
セントラル型の大型パワーコンディショナは、物理サイズが大きいだけでなく、システムの拡張及び縮小に柔軟に対処するのが難しい。接続する太陽電池パネルの枚数を増やす場合、より大型のパワーコンディショナに交換するか、または、増加分専用に、別のパワーコンディショナを用意する必要があった。別のパワーコンディショナを用意する場合、電力系統への出力変動を抑えるための制御が必要になり、システムの複雑化を招来する。
【0006】
一方、接続する太陽電池パネルの枚数を少なくする場合、より小型のパワーコンディショナに交換しない限り、物理サイズは小さくならない。
【0007】
本発明は、上記従来例の問題を解決するためになされたものであり、容易にシステムの拡張及び縮小を行うことができる太陽光発電の出力制御システム、それに用いるパワーコンディショナを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために本発明の太陽光発電の出力制御システムは、1以上のソーラー発電器と、複数のパワーコンディショナと、蓄電池と、前記1以上のソーラー発電器の出力端、前記複数のパワーコンディショナの入力端、及び前記蓄電池の入出力端に接続されているDC母線と、前記蓄電池の入出力端に流れる電流の方向及び電流量の内、1以上の値に基づいて、前記複数のパワーコンディショナのオン/オフ制御を行う制御部と、を備え、前記複数のパワーコンディショナの各々は出力端子が系統側の出力端子に接続されており、前記制御部によってオンに切り替えられたときに前記系統側の出力端子に流れる電力の変動率を所望値未満とする予め定めた変化量で出力を0kWから予定の出力まで増加させ、前記制御部によってオフに切り替えられたときに前記変化量で出力を0kWまで減少させる出力増減回路を備えていることを特徴とする。
【0009】
また、前記制御部は、前記蓄電池の入出力端に流れる電流が、前記DC母線へ出力されている場合、オフにするパワーコンディショナの数を増やし、前記DC母線から入力されている場合又は入力停止している場合、オンにするパワーコンディショナの数を増やす、のが好ましい。
【0010】
また、前記出力増減回路は、前記変化量を設定する変化量設定部を有しており、前記変化量設定部は、各パワーコンディショナの入力端及び出力端から電気絶縁されている、前記変化量を定める物理スイッチを備えているのが好ましい。
【0011】
また、前記出力増減回路は、前記変化量を設定する変化量設定部を有しており、前記変化量設定部は、変化量の記憶部と、各パワーコンディショナの入力端及び出力端から電気絶縁されており、当該記憶部に変化量を設定及び記録させる設定回路とを備えているのが好ましい。
【0012】
また、前記記憶部と前記設定回路の間に、前記設定回路を前記記憶部に、着脱可能に電気接続する接続部を備えている、のが好ましい。
【0013】
また、本発明のパワーコンディショナは、1以上のソーラー発電器の出力端、及び、複数のパワーコンディショナの入力端、及び、蓄電池の入出力端に接続されているDC母線と、前記蓄電池の入出力端に流れる電流の方向及び電流量の内、1以上の値に基づいて、前記複数のパワーコンディショナのオン/オフ制御を行う制御部とを備えている、太陽光発電の出力制御システムで用いられるパワーコンディショナであって、前記パワーコンディショナは出力端子が系統側の出力端子に接続されており、前記制御部によってオンに切り替えられたときに前記系統側の出力端子に流れる電力の変動率を所望値未満とする予め定めた変化量で出力を0kWから予定の出力まで増加させ、前記制御部によってオフに切り替えられたときに前記変化量で出力を0kWまで減少させる出力増減回路を備えていることを特徴とする。
【0014】
また、前記出力増減回路は、前記変化量を設定する変化量設定部を有しており、前記変化量設定部は、各パワーコンディショナの入力端及び出力端から電気絶縁されている、前記変化量を定める物理スイッチを備えているのが好ましい。
【0015】
また、前記出力増減回路は、前記変化量を設定する変化量設定部を有しており、前記変化量設定部は、変化量の記憶部と、各パワーコンディショナの入力端及び出力端から電気絶縁されており、当該記憶部に変化量を設定及び記憶させる設定回路とを備えているのが好ましい。
【0016】
また、前記記憶部と前記設定回路の間に、前記設定回路を前記記憶部に、着脱可能に電気接続する接続部を備えている、のが好ましい。
【発明の効果】
【0017】
本発明のパワーコンディショナは、オンまたはオフに切り替えられた時に、系統側の出力端子に流れる電力の変動率を所望値未満とする予め定めた変化量で、出力を0kWから予定の出力まで増加させ、またはオフに切り替えられた時の出力から0kWまで減少させる出力増減回路を備えている。このため、当該パワーコンディショナを用いた太陽光発電の出力制御システムは、制御部は出力制御を行う際に、電力系統への出力変動を考慮せずに、パワーコンディショナのオン/オフ制御を行うだけでよく、結果、パワーコンディショナの数を変更するだけでシステムの拡張及び縮小を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明の一実施の形態に係る太陽光発電の出力制御システムの構成図。
図2】制御部の実行する処理フローチャート。
図3】パワーコンディショナの正面図。
図4】パワーコンディショナの側面図。
図5】パワーコンディショナの裏面図。
図6】パワーコンディショナのブロック構成図。
図7】出力増減処理のフローチャート。
図8】(a)は電源オン時のインバータ回路出力制御のグラフで、(b)は電源オフ時のインバータ回路出力制御のグラフ。
図9】パワーコンディショナの変形例の正面図。
図10】従来の太陽光発電の出力制御システムの構成図。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明の太陽光発電の出力制御システムは、電源オン後、予定の出力を安定的に出力する小出力型パワーコンディショナ(以下、PCS(Power Conditioning Subsystemの略)という)であって、オン/オフ時に出力系統に要求されている変化量で、出力を0kWから予定の出力(単位はkW、以下同じ)まで増加させるソフトスタート機能と、オフに切り替えられた時の出力から0kWまで減少させるソフトストップ機能とを有するPCSを複数使用する。この複数のPCSと、蓄電池とをDC母線に接続しておき、蓄電池の充放電状態に応じて、オンにするPCSの数を制御する。当該構成を採用することで、大型のセントラル型PCSを不要にし、省スペース化を図ると共にPCSの数を増減するだけでシステムの拡張及び縮小を可能にする。出力変化量は、使用するPCSの総数によって変わる。本発明のPCSは、DC母線と電気絶縁された回路又はスイッチで前記ソフトスタート及びソフトストップの変化量の設定を行う構成を採用する。これにより、雷等に対する高いノイズ耐性を有し、より柔軟なシステムの拡張及び縮小を可能にする。
【0020】
以下、添付の図面を参照しつつ、実施の形態に係る太陽光発電の出力制御システム1について説明する。図1は、太陽光発電の出力制御システム1の全体構成を示す。システム1は、1以上、本実施形態では10個のソーラー発電器2a〜2jと、複数、本実施形態では10個のPCS3a〜3jと、蓄電池4と、DC母線5と、PCS3a〜3jのオン/オフ制御を行う制御部6とで構成されている。ソーラー発電器2a〜2jは、複数の太陽電池パネルを有している太陽電池と、太陽電池パネルによって発電された電気を直流変換して出力するMPPT制御機能付きDC/DCコンバータを含むDC出力部を構成している。PCS3a〜3jの各出力端子は、系統側の出力端子に接続されている。DC母線5は、ソーラー発電器2a〜2jの出力端と、PCS3a〜3jの入力端と、蓄電池4の入出力端と、に接続されている。制御部6は、計測装置6aから、蓄電池4の入出力端に流れる電流の方向及び電流量の情報を受け取る。制御部6は、蓄電池4の入出力端に流れる電流の方向及び電流量の内、1以上の値に基づいて、PCS3a〜3jに電源オン信号又は電源オフ信号を出力する。
【0021】
制御部6は、蓄電池4の入出力端に流れる電流の方向及び/又は電流量の情報から、DC母線5へ出力されている場合、オフにするPCSの数を増やし、DC母線5から入力されている場合又は入力停止している場合、オンにするPCSの数を増やす制御を行う。
【0022】
図2は、制御部6の実行する発電所運転に係る処理フローチャートを示す。運転開始時、蓄電池4の電圧が予め定めた値以上か、または、充電電流の所定時間T1の移動平均値が予め定めた値以上となるのを待ち(ステップS1でNo)、何れかの条件を満たした場合に(ステップS1でYes)、以降のフローに示すPCS起動数制御を行う。所定時間T1は、制御部6がソーラー発電器2a〜2jの天候によって変化する発電傾向を確認するのに要する時間を意味し、本実施形態ではT1=3〜10分である。
【0023】
まず、制御部6は、PCSをn台(但し、n=(蓄電池充電電流÷PCS1台分の定格DC電流))起動する(ステップS2)。蓄電池4の充電電流の所定時間T1の移動平均値が放電状態にあり(ステップS3でYes)、その値がPCS1台分の定格DC電流値を超えている場合(ステップS4でYes)、時間T2経過後にPCS1台分を電源オフにする(ステップS5)。時間T2は、系のチャタリングを防止するための時間で、例えば30秒〜1分程の時間を意味する。全てのPCSが電源オフとなっていなければ(ステップS6でNo)、ステップS3に戻る。全てのPCSが電源オフとなった場合(ステップS6でYes)、発電所運転停止処理を行い(ステップS7)、ステップS1に戻る。
【0024】
蓄電池4の電流の移動平均値が放電状態で無い場合、即ち、停止又は充電状態にあるが(ステップS3でNo)、その値がPCS1台分の定格DC電流値以下の場合(ステップS8でNo)、ステップS3に戻る。蓄電池4の電流の移動平均値が停止又は充電状態にあり(ステップS3でNo)、その値がPCS1台分の定格DC電流値を超えている場合(ステップS8でYes)、時間T2経過後にPCS1台分を電源オンにする(ステップS9)。全てのPCSが電源オンとなっていない間は(ステップS10でNo)、このステップS9の処理の後にステップS3に戻る。全てのPCSが電源オンとなっており(ステップS10でYes)、蓄電池4の電圧、または、SOC(残量)が予め定めた規定値に満たない場合には(ステップS11でNo)、ステップ3に戻る。一方、蓄電池4の電圧、または、SOC(残量)が予め定めた規定値以上となった場合には(ステップS11でYes)、過充電状態と判断し、発電所異常停止を行い、処理を終了する。
【0025】
図3は、PCS3a〜3jの正面図、図4は側面図、図5は底面図を示す。各図には、PCSの実寸(mm)を示している。従来のセントラル型PCSは、盤収納型となる大きさのものであったが、PCS3a〜3jは、比較的小型で場所を取らないので、太陽電池パネルの近くに容易に配置できる利点を有している。
【0026】
図3に示すように、PCS3a〜3jは、制御部6によってオンに切り替えられたときに、系統側の出力端子に流れる電力の変動率を所望値未満とする変化量で、出力を0kWから予定の出力、例えば定格出力まで増加し、制御部6によってオフに切り替えられたときに、前記変化量で、オフに切り替えられた時の出力から0kWまで減少させる出力増減回路7a〜7jを備えている。出力増減回路7a〜7jは、それぞれ、変化量を設定するための変化量設定部11a〜11j(図6を参照)を備えている。変化量設定部11aは、変化量の設定回路13a(図6を参照)を有している。この設定回路13aは、図3に示すように、変化量を表示するディスプレイ部131と、変化量設定開始ボタン132と、数値増減ボタン133と、変化量設定ボタン134と、これらを制御するプログラマブルロジックデバイス(以下、PLD(programmable logic deviceの略)という)135(図6を参照)とを備えている。変化量の設定は、変化量設定開始ボタン132を押下した後に、数値増減ボタン133を操作し、ディスプレイ部131に表示される変化量が所望値となった場合に、変化量設定ボタン134を押下して値を設定する。
【0027】
図6は、一例として、PCS3aの構成を示す。PCS3a〜3jは同一の構成であり、説明の便宜上、PCS3aの各構成要素には“a”の字を付して示す。PCS3aは、出力増減回路7aと、インバータ回路8aとで構成されている。インバータ回路8aは、出力増減回路7aから出力されるインバータ出力制御信号に基づいて、出力を0kWから予定の出力、例えば定格出力の間で増加又は減少させる。前記予定の出力は、定格出力よりもさらに、数kW少ない値に設定しても良い(以下の説明において同じ)。この場合、PCSのより長期安定した運転が期待される。インバータ出力制御は、周知の技術、例えば、PWM制御によって実現する。出力増減回路7aとインバータ回路8aは、蓄電池4に繋がっているDC母線5から直接給電を受ける。このため、制御部6からの電源オフ信号が入力された場合、インバータ回路8aを直ちに停止させず、出力増減回路7aからの出力制御信号に基づいて、系統の出力変化率が所望値に収まるように、その出力を前記オフ信号の入力時の出力、例えば、定格出力から0kWへと予め定めた変化量で減少させることができる。また、制御部6から電源オン信号が入力された場合、出力増減回路7aからの出力制御信号に基づいて、インバータ回路8aの出力を、系統の出力変化率が所望値に収まるように、0kWから定格出力へと予め定めた変化量で増加させる。
【0028】
出力増減回路7aは、DC母線からの給電によって駆動される、CPU9a、ROM10a、変化量設定部11aで構成されている。変化量設定部11aは、電源を切った後も書き込まれたデータを記憶した状態を保つ記憶部12aと、DC母線5に接続されているPCSの数に基づいて定まる変化量を記憶部12aに設定及び記録させる設定回路13aとで構成されている。記憶部12aは、例えばSRAM(不揮発性メモリ)を用いる。設定回路13aは、点線で囲んで示すように、PLD135を中心に、ディスプレイ部131と、変化量設定開始ボタン132と、数値増減ボタン133と、変化量設定ボタン134と、電池136とを備えている。設定回路13aは、各PCSの入力端及び出力端、DC母線5から電気絶縁された、電池136によって駆動される。当該構成を採用することによって、落雷等の不意のノイズによって、所望しない変化量でPCSが誤作動することを防ぐことができる。
【0029】
変化量設定部11aの定める変化量は、記憶部12a及び設定回路13aの代わりに、ディップスイッチ、ジャンパスイッチ等の物理スイッチによって、電気抵抗値を設定し、CPU9aが前記電気抵抗値から決まる変化量を設定する構成を採用しても良い。当該構成を採用することによって、落雷等の不意のノイズによって、所望しない変化量でPCSが誤作動することを防ぐことができる。
【0030】
図7は、CPU9aの実行する出力増減処理のフローチャートである。制御部6から電源オン信号が入力された場合(ステップS20でYes)、記憶部12aに記録されている1分当たりの変化量(kW)で、出力を0kWから定格出力にまで増加するように、インバータ回路8aへ制御信号を出力する(ステップS21)。一方、電源オフ信号が入力された場合(ステップS20でNo、ステップS22でYes)、記憶部12aに記録されている1分当たりの変化量(kW)で、出力を定格出力から0kWにまで減少するように、インバータ回路8aへ制御信号を出力する(ステップS23)。ステップS21又はステップS23の処理後、ステップS20に戻り、次の電源オフ又はオン信号入力を待機する。
【0031】
図8(a)は、制御部6から出力増減回路7aへの電源オンの信号入力に応じて、1分間隔で、0kWから定格出力に至るまで段階的にΔP毎増加するインバータ回路8aの出力波形を示す。本グラフは、10分で、0kWから定格出力に至る場合について示す。図8(b)は、制御部6から出力増減回路7aへの電源オフの信号入力に応じて、1分間隔で、定格出力から0kWに至るまで段階的にΔP毎減少するインバータ回路8aの出力波形を示す。本グラフは、10分で、定格出力から0kWに至る場合について示す。
【0032】
地域により電気事業者は、1分当たりの発電所出力の変化率が1%又は2%以下となるように求めている。例えば、定格出力1,000kWの発電所で、1分当たりの出力の変化が1%に収まることを要求されている場合、1台のセントラル型PCSで0kW〜1,000kWに増加又は減少させるには、1分当たりの変化を10kW以下にすることが要求される。しかし、本実施形態のように、10個のPCS3a〜3jでこれを分担すれば、それぞれが100kWの定格出力で1分当たりの変化を10kW以下にすればよい。即ち、個々のPCSは、1分当たりの出力変化が10%以下となるように制御すればよく、制御精度が使用するPCSの数分だけ緩くなる、といった利点がある。本例の場合、図8(a)(b)のグラフにおいて、ΔPは10kWとなる。
【0033】
図9は、PCS3aの変形例に係るPCS3’aを示す。PCS3aと同じ構成物は、同じ参照番号を用いて説明する。PCS3’aは、本体部分20と、この本体部分に電気的に着脱可能な設定回路13’aとで構成されている。本体部分20には、内部で記憶部12aに接続されているコンセント21を備えている。設定回路13’aの構成は、設定回路13aと同じであるが、コンセント21に電気接続可能なプラグ22を備えており、このプラグ22をコンセント21に接続することによって、変化量設定部11aが構成されるようになっている。コンセント21とプラグ22とは、設定回路13’aを記憶部12aに、着脱可能に電気接続する接続部23として機能する。
【0034】
なお、本発明は、上記各種実施形態の構成に限られず、発明の趣旨を変更しない範囲で種々の変形が可能である。例えば、ソーラー発電器は、MPPT制御機能を有するDC/DCコンバータを含むものに限定されず、PWM制御機能を有するDC/DCコンバータ等を含むものを用いても良い。各PCSで行う出力制御は、インバータ回路のPWM制御に限定されず、例えば、インバータ回路8aに出力トランジスタを備え、当該出力トランジスタのゲートに印加する出力信号のデューティ比率を制御する方法等によって実現しても良い。
【0035】
また、出力増減回路7a〜7jは、DC母線からの給電だけでなく、又は、その代わりに、サブバッテリを有しており、当該サブバッテリによって制御部6からの電源オフの信号入力後、ソフトストップ完了するまでの間、動作可能とする構成を採用しても良い。
【0036】
また、変化量設定部11aの定める変化量は、設定回路13aにDC母線に接続されているPCSの台数入力部を設け、入力された接続台数と変化量の対応テーブルに基づいて変化量を設定する、ルックアップテーブル形式の構成を採用しても良い。PCS3aの場合、変化量の設定は、変化量設定開始ボタン132を押下した後に、数値増減ボタン133を操作し、ディスプレイ部131に表示される接続台数が所望値となった場合に、変化量設定ボタン134を押下して行う。この変化量設定ボタン134の押下に応じて、PLD135は、予め記憶部12a又はPLD135内部に記憶しておいた接続台数-変化量のルックアップテーブルを参照して、記憶部12aに変化量を記録する。PCS3’aの場合も同様である。
【産業上の利用可能性】
【0037】
本発明の太陽光発電の出力制御システムは、ソーラー発電器の増減により容易にシステムを拡張及び縮小することができ、メインシステムとして実施する他に、既存の大型のセントラル型PCSを用いているシステムを補うサブシステムとしても実施可能である。
【符号の説明】
【0038】
1 太陽光発電の出力制御システム
2a〜2j ソーラー発電器
3a〜3j パワーコンディショナ(PCS)
4 蓄電池
5 DC母線
6 制御部
6a 計測装置
7a 出力増減回路
8a インバータ回路
9a CPU
10a ROM
11a 変化量設定部
12a 記憶部
13a 設定回路
21 コンセント
22 プラグ
23 接続部
【要約】
【課題】容易に拡張及び縮小可能な太陽光発電の出力制御システムを提供する。
【解決手段】本発明の太陽光発電の出力制御システムは、1以上のソーラー発電器2aと、複数のパワーコンディショナ3aと、蓄電池4と、ソーラー発電器の出力端、パワーコンディショナの入力端、及び蓄電池の入出力端に接続されているDC母線と、蓄電池の入出力端に流れる電流の方向及び/又は電流量に基づいて、パワーコンディショナのオン/オフ制御を行う制御部とを備え、パワーコンディショナの各々は、出力端子が系統側の出力端子に接続されており、制御部によってオンまたはオフに切り替えられたときに、系統側の出力端子に流れる電力の変動率を所望値未満とする変化量で、出力を増加または減少させる出力増減回路を備えている。制御部は出力制御をパワーコンディショナのオン/オフ制御で行うことができるので、容易にシステムの拡張及び縮小を行うことができる。
【選択図】図1
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図10