特許第6386212号(P6386212)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6386212
(24)【登録日】2018年8月17日
(45)【発行日】2018年9月5日
(54)【発明の名称】乳幼児用歯ブラシ
(51)【国際特許分類】
   A46B 15/00 20060101AFI20180827BHJP
   A46B 5/02 20060101ALI20180827BHJP
【FI】
   A46B15/00 K
   A46B5/02
【請求項の数】7
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2013-96047(P2013-96047)
(22)【出願日】2013年4月30日
(65)【公開番号】特開2014-217400(P2014-217400A)
(43)【公開日】2014年11月20日
【審査請求日】2016年3月1日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000918
【氏名又は名称】花王株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002170
【氏名又は名称】特許業務法人翔和国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100101292
【弁理士】
【氏名又は名称】松嶋 善之
(74)【代理人】
【識別番号】100107205
【弁理士】
【氏名又は名称】前田 秀一
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 明
(72)【発明者】
【氏名】吉井 圭二
【審査官】 一ノ瀬 薫
(56)【参考文献】
【文献】 特開2007−160073(JP,A)
【文献】 特開2007−300986(JP,A)
【文献】 実公昭61−35066(JP,Y2)
【文献】 特開2014−217401(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A46B 1/00 − 17/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ブラシ部と、把持部と、これらの間に位置する首部とを備える歯ブラシ本体と、該歯ブラシ本体に着脱可能に装着される鍔状プレートとからなる乳幼児用歯ブラシであって、
前記歯ブラシ本体は、前記ブラシ部の植毛台と、前記把持部と、前記首部とが、ロックウェル硬度が80〜120の硬い材質の樹脂材料を用いた一体成形品となっており、前記把持部と前記首部との境界部分に、断面形状の外径が4〜7mmの前記首部の径方向外側に張り出して一体として成形された、20〜35mmの外径を有し、且つ前記首部の軸方向の厚さが3〜8mmで形成されている重合せ張出し部を有していると共に、該重合せ張出し部の前記ブラシ部側の表面からブラシ部の先端までの長さが30〜45mmであり、該重合せ張出し部は、前記ブラシ部側の面の前記首部周りの中央領域に重合せ密着面を備えており、
前記鍔状プレートは、ゴム硬度が50〜95の軟らかい材質の樹脂材料を用いた成形品であり、厚さが1〜5mmの板状部材となっており、これの中央部分に、前記ブラシ部及び前記首部を挿通させる挿通穴が開口形成されていると共に、前記鍔状プレートには、前記歯ブラシ本体に装着された状態の前記把持部側の面から前記把持部側に突出して、前記重合せ張出し部の外周形状と同様の内周形状を備える環状嵌込みリブが形成されており、該環状嵌込みリブの内側の部分の前記把持部側の面に、前記重合せ張出し部と重ね合される密着当接面を備えており、
前記鍔状プレートは、前記環状嵌込みリブの内側に前記重合せ張出し部を嵌め込むことで、前記歯ブラシ本体の前記ブラシ部側から前記歯ブラシ本体に装着された状態で、前記環状嵌込みリブの内側の部分の前記密着当接面が前記重合せ張出し部のブラシ部側の表面の重合せ密着面に重ね合わせられており、周縁部分を前記重合せ張出し部の外縁よりも外側に5〜20mの幅で全周に亘って張り出させた状態で、前記歯ブラシ本体に一体として係止されている乳幼児用歯ブラシ。
【請求項2】
環状嵌込みリブの内側の突出基端部には、周方向に間隔をおいて、前記重合せ張出し部の円弧状に面取りした周端面の湾曲形状に倣って湾曲傾斜する湾曲端面を備える、複数の湾曲傾斜リブが設けられている請求項1記載の乳幼児用歯ブラシ。
【請求項3】
前記鍔状プレートは、前記歯ブラシ本体に装着された状態で、周縁部分が前記重合せ張出し部の周縁よりも外側に5〜20mmの幅で全周に亘って張り出している請求項1又は2記載の乳幼児用歯ブラシ。
【請求項4】
前記硬い材質の樹脂材料は、ポリプロピレン、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン共重合体、アクリロニトリル・スチレン、又は飽和ポリエステルから選ばれる樹脂であり、前記軟らかい材質の樹脂材料は、ニトリルゴム、シリコーンゴム、ウレタンゴム、エチレンプロピレンゴム、イソプレンゴム、スチレンブタジエンゴム、ブタジエンゴム、又は熱可塑性エラストマーから選ばれる樹脂である請求項1〜3のいずれか1項記載の乳幼児用歯ブラシ。
【請求項5】
前記重合せ張出し部における前記首部の基端部周囲の部分に、前記鍔状プレートに形成された挿通穴と同様の形状で突出する、嵌込み段差部が設けられている請求項1〜4のいずれか1項記載の乳幼児用歯ブラシ。
【請求項6】
前記鍔状プレートは、前記歯ブラシ本体への装着状態において前記ブラシ部側に凸となったドーム状に湾曲する形状を有する請求項1〜5のいずれか1項記載の乳幼児用歯ブラシ。
【請求項7】
前記鍔状プレートは、前記歯ブラシ本体への装着状態において、前記重合せ張出し部の外縁よりも外側に張り出した部分に、空気流通穴又は空気流通溝が形成されている請求項1〜6のいずれか1項記載の乳幼児用歯ブラシ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、乳幼児用歯ブラシに関する。
【背景技術】
【0002】
歯が生え始めた乳児期から幼児期にかけて、歯磨きの習慣を身に着けることが大切であることから、乳児や幼児(以下「乳幼児」とする。)が歯磨きを行うのに適した、サイズの小さな種々の乳幼児用歯ブラシが開発されている。また特に、発達段階にある乳幼児は、歯ブラシをおしゃぶりやおもちゃや食材等と誤認して、口の中にくわえ込む傾向があるため、歯ブラシをくわえ込んだ場合でも、先端のブラシ部が喉の奥まで届かないようにした乳幼児用歯ブラシも開発されている(例えば、特許文献1、特許文献2参照)。
【0003】
これらの特許文献に記載の歯ブラシは、ブラシ部と把持部とこれらを連結する首部とを備える歯ブラシ本体の、把持部と首部との境界部分から外側に張り出して、鍔状プレートを設けておき、この鍔状プレートが乳幼児の唇部分に押し当てられることによって、ブラシ部が喉の奥まで届かないように規制している。
【0004】
また、これらの特許文献に記載の歯ブラシでは、把持部よりも相当程度大きな外形を有する鍔状プレートを、歯ブラシ本体と一体として成形することは困難であることから、別体に成形した鍔状のプレートを、歯ブラシ本体に着脱可能に一体として装着して乳幼児用歯ブラシを形成するようになっている。さらに、特許文献2は、鍔状のプレートが、歯ブラシ本体よりも柔らかい材質の樹脂材料を配置することが好ましいことも記載されている。
【0005】
また、特許文献2に記載の歯ブラシでは、装着された規制プレート(鍔状プレート)を係止させる装着部が、把持部と首部との境界部分から外側にある程度張り出して設けられているので、規制プレートによってブラシ部が喉の奥まで届かないように規制した使用形態から、乳幼児が歯ブラシの使用に慣れてきて、喉の奥の方を突いてしまう恐れが無くなってきた際に、介助者が規制プレートを外してあげることで、乳幼児は、唇部分に規制プレートを当てることなく、より口腔内の奥側における操作を行うことが可能になりながらも、装着部を唇に対する位置決め部として機能させて、乳幼児がブラシ部の挿入量を把握しながら歯磨きを行えるようにする使用形態に、変更することが可能になる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】実公昭57−162732号公報
【特許文献2】特開2007−300986号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記従来のブラシ部が喉の奥まで届かないように規制する乳幼児用歯ブラシでは、鍔状プレートは、これの中央部分に開口形成されたブラシ部等を挿通させるための挿通穴の内周面に設けた係合部を、把持部と首部との境界部分の外周部や装着部の外周部に設けた被係合部に係合させることによって、歯ブラシ本体に一体として装着されているため、特に鍔状プレートが弾性に富んだ軟らかい材質の材料によって形成されている場合には、例えば乳幼児が転倒等することによって、歯ブラシ本体が鍔状プレートの挿通穴から抜ける方向の衝撃荷重を受けると、ブラシ部が飛び出す方向に、歯ブラシ本体が鍔状プレートから脱けやすくなる。また、鍔状プレートが弾性に富んだ軟らかい材質の材料によって形成されている場合には、鍔状プレートを乳幼児の唇部分に押し当てた際の安定感に劣ることになると共に、歯ブラシ本体への着脱操作を行い難くなる。
【0008】
本発明は、歯ブラシ本体が鍔状プレートの挿通穴から抜ける方向の衝撃荷重を受けた場合でも、ブラシ部が飛び出す方向に、歯ブラシ本体が鍔状プレートから脱けるのを確実に回避することができ、また鍔状プレートが弾性に富んだ軟らかい材質の材料によって形成されている場合でも、鍔状プレートを乳幼児の唇部分に安定した状態で押し当てることができると共に、歯ブラシ本体への着脱操作を行い易くすることのできる乳幼児用歯ブラシに関する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、ブラシ部と、把持部と、これらの間に位置する首部とを備える歯ブラシ本体と、該歯ブラシ本体に着脱可能に装着される鍔状プレートとからなる乳幼児用歯ブラシであって、前記歯ブラシ本体は、前記ブラシ部の植毛台と、前記把持部と、前記首部とが、ロックウェル硬度が80〜120の硬い材質の樹脂材料を用いた一体成形品となっており、前記把持部と前記首部との境界部分に、断面形状の外径が4〜7mmの前記首部の径方向外側に張り出して一体として成形された、20〜35mmの外径を有し、且つ前記首部の軸方向の厚さが3〜8mmで形成されている重合せ張出し部を有していると共に、該重合せ張出し部の前記ブラシ部側の表面からブラシ部の先端までの長さが30〜45mmであり、該重合せ張出し部は、前記ブラシ部側の面の前記首部周りの中央領域に重合せ密着面を備えており、前記鍔状プレートは、ゴム硬度が50〜95の軟らかい材質の樹脂材料を用いた成形品であり、厚さが1〜5mmの板状部材となっており、これの中央部分に、前記ブラシ部及び前記首部を挿通させる挿通穴が開口形成されていると共に、前記鍔状プレートには、前記歯ブラシ本体に装着された状態の前記把持部側の面から前記把持部側に突出して、前記重合せ張出し部の外周形状と同様の内周形状を備える環状嵌込みリブが形成されており、該環状嵌込みリブの内側の部分の前記把持部側の面に、前記重合せ張出し部と重ね合される密着当接面を備えており、前記鍔状プレートは、前記環状嵌込みリブの内側に前記重合せ張出し部を嵌め込むことで、前記歯ブラシ本体の前記ブラシ部側から前記歯ブラシ本体に装着された状態で、前記環状嵌込みリブの内側の部分の前記密着当接面が前記重合せ張出し部の前記重合せ密着面に重ね合わせられており、周縁部分を前記重合せ張出し部の外縁よりも外側に5〜20mの幅で全周に亘って張り出させた状態で、前記歯ブラシ本体に一体として係止されている乳幼児用歯ブラシに関するものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明の乳幼児用歯ブラシによれば、歯ブラシ本体が鍔状プレートの挿通穴から抜ける方向の衝撃荷重を受けた場合でも、ブラシ部が飛び出す方向に、歯ブラシ本体が鍔状プレートから脱けるのを確実に回避することができ、また鍔状プレートが弾性に富んだ軟らかい材質の材料によって形成されている場合でも、鍔状プレートを乳幼児の唇部分に安定した状態で押し当てることができると共に、歯ブラシ本体への着脱操作を行い易くすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の好ましい一実施形態に係る乳幼児用歯ブラシの、(a)は斜め前方から見た斜視図、(b)は分解斜視図である。
図2】本発明の好ましい一実施形態に係る乳幼児用歯ブラシを説明する斜め後方から見た斜視図である。
図3】本発明の好ましい一実施形態に係る乳幼児用歯ブラシの、(a)は斜め側面図、(b)は上面図である。
図4】歯ブラシ本体の上面図である。
図5】鍔状プレートの(a)は正面図、(b)は背面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
図1図3に示す本発明の好ましい一実施形態に係る乳幼児用歯ブラシ10は、例えば歯が生え始めてから間もない0.5歳〜2歳の乳幼児が、介助者による介助を適宜得ながら、歯磨きを行うのに適した歯ブラシとして形成されたものである。本実施形態の乳幼児用歯ブラシ10は、歯ブラシ本体11の把持部13と首部14との境界部分から外側に張り出して設けた鍔状プレート16が、唇部分に押し当てられることによって、ブラシ部12が乳幼児の喉の奥まで届かないようにする機能を備えると共に、衝撃等によって歯ブラシ本体11が鍔状プレート16の挿通穴17から抜ける方向の荷重を受けても、ブラシ部12が喉の奥の方に飛び出さないようにする機能を備えている。
【0013】
そして、本実施形態の乳幼児用歯ブラシ10は、図1図3に示すように、ブラシ部12と、把持部13と、これらの間に位置する首部14とを備える歯ブラシ本体11と、歯ブラシ本体11に着脱可能に装着される鍔状プレート16とからなる歯ブラシであって、歯ブラシ本体11は、ブラシ部12の植毛台12aと、把持部13と、首部14とが、ロックウェル硬度が80〜120の硬い材質の樹脂材料を用いた一体成形品となっており、把持部13と首部14との境界部分に、断面形状の外径が4〜7mmの首部14の径方向外側に張り出して一体として成形された、20〜35mmの外径を有し、且つ首部14の軸方向の厚さが3〜8mmで形成されている重合せ張出し部15を有していると共に、重合せ張出し部15のブラシ部12側の表面からブラシ部12の先端までの長さL1が30〜45mmとなっている。重合せ張出し部15は、ブラシ部12側の面の首部14周りの中央領域に重合せ密着面15bを備えており、鍔状プレート16は、ゴム硬度が50〜95の軟らかい材質の樹脂材料を用いた成形品であり、厚さが好ましくは1〜5mmであり、より好ましくは1〜3.5mmである板状部材となっている。鍔状プレート16は、中央部分に、ブラシ部12及び首部14を挿通させる挿通穴17が開口形成されていると共に、鍔状プレート16には、歯ブラシ本体11に装着された状態の把持部13側の面から把持部13側に突出して、重合せ張出し部15の外周形状と同様の内周形状を備える環状嵌込みリブ18が形成されており、環状嵌込みリブ18の内側の部分の把持部13側の面に、重合せ張出し部15と重ね合される密着当接面16a(図2参照)を備えている。鍔状プレート16は、環状嵌込みリブ18の内側に重合せ張出し部15を嵌め込むことで、歯ブラシ本体11のブラシ部12側から歯ブラシ本体11に装着された状態で、環状嵌込みリブ18の内側の部分の密着当接面16aが重合せ張出し部15の重合せ密着面15bに重ね合わせられており、周縁部分16bを重合せ張出し部15の外縁よりも外側に5〜20mの幅で全周に亘って張り出させた状態で、歯ブラシ本体11に一体として係止されている。
【0014】
また、本実施形態では、鍔状プレート16には、歯ブラシ本体11に装着された状態で把持部13側に位置する面(背面)から突出する環状嵌込みリブ18が形成されている。環状嵌込みリブ18は、重合せ張出し部15の外周形状と同様の内周形状を備えており、この環状嵌込みリブ18の内側に重合せ張出し部15を嵌め込むことで、鍔状プレート16が歯ブラシ本体11に一体として係止される。
【0015】
本実施形態では、歯ブラシ本体11は、好ましくはロックウェル硬度が80〜120の硬い材質の樹脂材料として、例えばポリプロピレン、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン共重合体、アクリロニトリル・スチレン、飽和ポリエステルから選ばれる樹脂材料を用いて、ブラシ部12の植毛台12aと、把持部13と、首部14と、重合せ張出し部15とが一体となった一体成形品として形成される。上記のロックウェル硬度は、Rスケールで測定した数値であり、硬度の測定方法はJIS K7202−2に基づくものである。
【0016】
ブラシ部12の植毛台12aは、平面形状が例えば短径が10〜13mm程度、長径が13〜16mm程度の大きさの円形又は略楕円形に形成されており(図3(b)参照)、また側方から見た高さが例えば4〜6mm程度に形成されている(図3(a)参照)。ブラシ部12の植毛台12aの平坦な植毛面には、複数本のブリッスルを束ねてなるタフト(毛束)12bが、縦横に複数分散配置されて、例えば植毛台12aの表面からの高さが5〜8mm程度の毛丈で植設されている。
【0017】
ブラシ部12の植毛台12aと把持部13との間に連なる首部14は、本実施形態では、断面形状が例えば長径(横幅)が5〜7mm程度、短径(高さ)が4〜6mm程度の大きさで円形、好ましくは楕円の断面形状を有するように形成されると共に、重合せ張出し部15のブラシ部12側の表面からブラシ部12の植毛台12aの首部14との境界までの長さが20〜35mmに形成されている。これによって、乳幼児用歯ブラシ10は、重合せ張出し部15のブラシ部12側の表面からブラシ部12の先端(端縁)までの長さL1が、装着された鍔状プレート16を乳幼児の唇部分に押し当てた状態で、先端のブラシ部12が乳幼児の喉の奥まで届かない長さである、30〜45mmとなっている。
【0018】
把持部13は、本実施形態では、首部14との間に重合せ張出し部15を介在させて、重合せ張出し部15の後方に例えば60〜80mmの長さで延設する部分となっている。把持部13は、乳幼児が把持し易い太さ及び形状として、例えば長径(横幅)が14〜18mm程度、短径(高さ)が8〜12mm程度の大きさの横長扁平な略楕円の断面形状を有すると共に、軸方向中央部分が最も太く、軸方向の端部及びブラシ部側の両側に向けてその断面形状を徐々に縮径させた形状を備えている。把持部13における、植毛台12aにタフト12bが植設された側の、重合せ張出し部15と近接する面領域には、乳幼児の親指や人差指の腹部を位置決めさせる、滑り止め用の環状エンボス模様が形成された位置決め凹部13aが、楕円形状に浅く窪んだ状態で設けられている。把持部13のブラシ部12とは反対側の後端部には、高さ方向に貫通して、吊下げ部材を係止させる係止孔13bが形成されている。
【0019】
重合せ張出し部15は、本実施形態では、把持部13と首部14との境界部分に首部の径方向外側に張り出して、好ましくは把持部13の軸方向の厚さが3〜8mmで厚板形状に形成されている。重合せ張出し部15は、20〜35mmの外径として、例えば長径(横幅)が25〜35mm程度、短径(高さ)が20〜30mm程度の大きさの、円形又は横長扁平な楕円の正面形状を有するように形成されている。重合せ張出し部15は、把持部13の径方向外周の側面である周端面15aを円弧状に湾曲させて面取りした形状で形成されていると共に、ブラシ部12側の面(前面)の首部14周りの中央領域に、平坦な又は僅かに湾曲する重合せ密着面15bを備えている。また重合せ密着面15bにおける首部14の基端部周囲の部分には、後述する鍔状プレート16に形成された挿通穴17と同様の形状で突出させることにより、嵌込み段差部15cが設けられている。嵌込み段差部15cは、鍔状プレート16が歯ブラシ本体11に装着された際に、鍔状プレート16の中央部分に開口形成された挿通穴17に嵌め込まれる。
【0020】
本実施形態では、鍔状プレート16は、JIS K6253−3(2012年版)に基づき測定されたゴム硬度が50〜95の、軟らかい材質の樹脂材料を用いて形成されることが好ましく、例えばニトリルゴム、シリコンゴム、ウレタンゴム、エチレンプロピレンゴム、イソプレンゴム、スチレンブタジエンゴム、ブタジエンゴム、熱可塑性エラストマーから選ばれる樹脂材料を用いて、厚さが1〜5mmの板状部材として形成されている。鍔状プレート16は、図5(a)、(b)にも示すように、例えば長径(横幅)が45〜60mm程度、短径(高さ)が40〜55mm程度の大きさの、重合せ張出し部15と概ね相似の円形又は横長扁平な楕円の正面形状を有するように形成されている。これによって鍔状プレート16は、周縁部分16bを重合せ張出し部15の外縁よりも外側に、好ましくは5〜20mの幅で全周に亘って張り出させた状態で、歯ブラシ本体11に装着されることになる。なお、JIS K6253−3(2012年版)によるゴム硬度は、デュロメータで測定することが可能であり、デュロメータとしては、テクロック・デュロメータGS-719N(株式会社テクロック社製)、アスカーゴム硬度計C2L型(タイプAデュロメータ 高分子計器株式会社製)が挙げられる。
【0021】
また、本実施形態では、鍔状プレート16は、歯ブラシ本体11への装着状態において、ブラシ部12側(正面側)に凸となった、ドーム状に緩やかに湾曲する形状に形成されていると共に、周端部16cを円弧状に湾曲させて面取りした状態で形成されている。これらによって、乳幼児や介助者による乳幼児用歯ブラシ10の使い易さを向上させている。
【0022】
さらに、本実施形態では、鍔状プレート16の中央部分に、歯ブラシ本体11への装着時にブラシ部12や首部14を挿通させることが可能な大きさの挿通穴17が、対向する長辺部を各々弧状に切り欠いた略矩形形状に開口して形成されている。また、鍔状プレート16は、歯ブラシ本体11への装着状態で把持部13側に位置する面(背面)の中央部分を含む領域には、重合せ張出し部15の外周形状と同様の横長扁平な楕円の内周形状を備える環状嵌込みリブ18が、好ましくは重合せ張出し部15の厚さに相当する5〜12mmの高さで突出して形成されている。
【0023】
鍔状プレート16を歯ブラシ本体11に装着する際に、この環状嵌込みリブ18の内側に重合せ張出し部15を嵌め込むと共に、環状嵌込みリブ18の内側の部分を密着当接面16aとして、重合せ張出し部15の表面の重合せ密着面15bに重ね合せて密着させることにより、鍔状プレート16は、重合せ張出し部15に支持されて、強固に且つ安定した状態で歯ブラシ本体11に一体として取り付けられる。この際に、重合せ張出し部15の重合せ密着面15bに形成された嵌込み段差部15cが、鍔状プレート16の挿通穴17に嵌め込まれることで、より安定した状態で鍔状プレート16を歯ブラシ本体11に取り付けることが可能になる。また、環状嵌込みリブ18の内側の突出基端部には、周方向に間隔をおいて、複数の湾曲傾斜リブ18aが設けられている(図2参照)。これらの湾曲傾斜リブ18aは、重合せ張出し部15の円弧状に面取りした周端面15a(図4参照)の湾曲形状に倣って湾曲傾斜する湾曲端面を備えており、これらの湾曲端面を、重合せ張出し部15の円弧状に面取りした周端面15aに当接させることで、一層安定した状態で鍔状プレート16を歯ブラシ本体11に取り付けることが可能になる。
【0024】
さらにまた、本実施形態では、歯ブラシ本体11への装着状態において、鍔状プレート16の重合せ張出し部15から外側に張り出した周縁部分に、複数の空気流通穴19が開口形成されている。鍔状プレート16の周縁部分に空気流通穴19が形成されていることにより、乳幼児が、乳幼児用歯ブラシ10を、誤って鍔状プレート16の部分まで口の中に入れてしまった場合でも、空気流通穴19を介して空気を流通させて、乳幼児が呼吸できなくなるのを効果的に回避することが可能になる。本実施形態では、複数の空気流通穴19を設けたが、鍔状プレート16の側縁に切欠きを設けたり、鍔状プレート16の周縁に溝を設けることによって、切欠き周縁の溝や切欠きを空気流通溝や空気流通切欠きとして機能させることが可能になる。
【0025】
本実施形態の乳幼児用歯ブラシ10によれば、通常の使用時には、鍔状プレート16を歯ブラシ本体11に一体として取り付けて、鍔状プレート16が乳幼児の唇部分に押し当てられることによって、ブラシ部12が喉の奥まで届かないように規制した状態で、乳幼児に歯磨きを行わせることができる。また鍔状プレート16によってブラシ部12が喉の奥まで届かないように規制した使用形態から、乳幼児が歯ブラシ10の使用に慣れてきて、喉の奥の方を突いてしまう恐れが無くなってきた際に、介助者が鍔状プレート16を外してあげることで、乳幼児は、唇部分に鍔状プレート16を当てることなく、より口腔内の奥側における操作を行うことが可能になりながらも、重合せ張出し部15を唇に対する位置決め部として機能させて、乳幼児がブラシ部12の挿入量を把握しながら歯磨きを行えるようにする使用形態に、変更することができる。
【0026】
そして、上述の構成を備える本実施形態の乳幼児用歯ブラシ10によれば、歯ブラシ本体11が鍔状プレート16の挿通穴17から抜ける方向の衝撃荷重を受けた場合でも、ブラシ部12が飛び出す方向に、歯ブラシ本体11が鍔状プレート16から脱けるのを確実に回避することが可能になる。また鍔状プレート16が弾性に富んだ軟らかい材質の材料によって形成されている場合でも、鍔状プレート16を乳幼児の唇部分に安定した状態で押し当てることが可能になると共に、歯ブラシ本体11への着脱操作を行い易くすることが可能になる。
【0027】
すなわち、本実施形態の乳幼児用歯ブラシ10によれは、歯ブラシ本体11は、把持部13と首部14との境界部分から首部14の径方向外側に張り出す重合せ張出し部15を有しており、鍔状プレート16は、これの中央部分に挿通穴17が開口形成されていると共に、重合せ張出し部15と重ね合される密着当接面16aを備えており、鍔状プレート16は、歯ブラシ本体11のブラシ部12側から歯ブラシ本体11に装着されて、把持部13側の密着当接面16aを重合せ張出し部15に重ね合わせることで、周縁部分16bが重合せ張出し部15よりも外側に張り出した状態で、歯ブラシ本体11に一体として係止されている。
【0028】
したがって、本実施形態の乳幼児用歯ブラシ10によれは、歯ブラシ10をくわえた乳幼児が転倒等することによって、歯ブラシ本体11が鍔状プレート16の挿通穴17から前方に抜ける方向の衝撃荷重を受けた場合でも、重合せ張出し部15の重合せ密着面15bが、相当の大きさの当接面積で背面側から鍔状プレート16の密着当接面16aに当接していることで、ブラシ部12が前方に飛び出す方向に歯ブラシ本体11が鍔状プレート16から脱けるのを強固に阻止することが可能になる。
【0029】
また、本実施形態によれば、鍔状プレート16は、密着当接面16aを重合せ張出し部15に重ね合わせて、周縁部分16bを重合せ張出し部15から外側に張り出させた状態で、歯ブラシ本体11に装着されているので、鍔状プレート16が、弾性に富んで肌当たりが良好な軟らかい材質の材料によって形成されている場合でも、周縁部分16bよりも内側の中央領域を、背面側から重合せ張出し部15によって支持させることで、乳幼児の唇部分に安定した状態で押し当てることが可能になると共に、重合せ張出し部15よりも外側に張り出した周縁部分16bを摘んで着脱する際に、周縁部分16bが撓みすぎて着脱応力を分散させることを防止し、歯ブラシ本体11への着脱操作をスムーズに行うことが可能になる。
【0030】
なお、本発明は上記実施形態に限定されることなく種々の変更が可能である。例えば、鍔状プレートは、環状嵌込みリブに重合せ張出し部を嵌め込むこと以外の手段によって、密着当接面を重合せ張出し部に重ね合わせた状態で、歯ブラシ本体に一体として係止することもできる。また、鍔状プレートや環状嵌込みリブや重合せ張出し部は、楕円の正面形状を備えている必要は必ずしも無く、円形や長円形等の、その他の種々の正面形状を備えていても良い。さらに、ブラシ部は、植毛台にタフト12bが植設されたものである必要は必ずしも無く、軟質材料からなる多数密集するブラシ要素を含んで形成されていても良い。
【符号の説明】
【0031】
10 乳幼児用歯ブラシ
11 歯ブラシ本体
12 ブラシ部
13 把持部
14 首部
15 重合せ張出し部
15a 周端面
15b 重合せ密着面
15c 嵌込み段差部
16 鍔状プレート
16a 密着当接面
16b 周縁部分
16c 周端部
17 挿通穴
18 環状嵌込みリブ
18a 湾曲傾斜リブ
19 空気流通穴
L1 重合せ張出し部からブラシ部の先端までの長さ
図1
図2
図3
図4
図5