特許第6386221号(P6386221)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6386221
(24)【登録日】2018年8月17日
(45)【発行日】2018年9月5日
(54)【発明の名称】毛髪処理剤
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/73 20060101AFI20180827BHJP
   A61K 8/44 20060101ALI20180827BHJP
   A61K 8/40 20060101ALI20180827BHJP
   A61K 8/34 20060101ALI20180827BHJP
   A61Q 5/00 20060101ALI20180827BHJP
   A61Q 5/12 20060101ALI20180827BHJP
【FI】
   A61K8/73
   A61K8/44
   A61K8/40
   A61K8/34
   A61Q5/00
   A61Q5/12
【請求項の数】5
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2013-220897(P2013-220897)
(22)【出願日】2013年10月24日
(65)【公開番号】特開2015-81247(P2015-81247A)
(43)【公開日】2015年4月27日
【審査請求日】2016年9月28日
(73)【特許権者】
【識別番号】592255176
【氏名又は名称】株式会社ミルボン
(74)【代理人】
【識別番号】100111187
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 秀忠
(74)【代理人】
【識別番号】100142882
【弁理士】
【氏名又は名称】合路 裕介
(74)【代理人】
【識別番号】100120329
【弁理士】
【氏名又は名称】天野 一規
(74)【代理人】
【識別番号】100159499
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 義典
(74)【代理人】
【識別番号】100158540
【弁理士】
【氏名又は名称】小川 博生
(74)【代理人】
【識別番号】100106264
【弁理士】
【氏名又は名称】石田 耕治
(74)【代理人】
【識別番号】100176876
【弁理士】
【氏名又は名称】各務 幸樹
(74)【代理人】
【識別番号】100177976
【弁理士】
【氏名又は名称】根木 義明
(74)【代理人】
【識別番号】100184697
【弁理士】
【氏名又は名称】川端 和也
(74)【代理人】
【識別番号】100117167
【弁理士】
【氏名又は名称】塩谷 隆嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100187768
【弁理士】
【氏名又は名称】藤中 賢一
(72)【発明者】
【氏名】濱野 璃青
(72)【発明者】
【氏名】竹中 梢美
【審査官】 ▲高▼ 美葉子
(56)【参考文献】
【文献】 特開平04−173721(JP,A)
【文献】 特開2013−199443(JP,A)
【文献】 特開2004−067572(JP,A)
【文献】 特開2002−087943(JP,A)
【文献】 特開2014−024801(JP,A)
【文献】 特開2000−063229(JP,A)
【文献】 特開2003−113044(JP,A)
【文献】 特開2001−064126(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8/00− 8/99
A61Q 1/00−90/00
Mintel GNPD
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
毛髪への塗布後に洗い流して使用する毛髪処理剤であって、
カチオン界面活性剤、高級アルコール及び体原料が配合され、
上記体原料として、オクテニルコハク酸トウモロコシデンプンAlが配合されたことを特徴とするクリーム状毛髪処理剤。
【請求項2】
上記体原料として、カオリン又はラウロイルリシンが更に配合された請求項1に記載の毛髪処理剤。
【請求項3】
上記体原料の配合量が0.1質量%以上である請求項2に記載の毛髪処理剤。
【請求項4】
上記体原料の配合量が0.1質量%未満である請求項2に記載の毛髪処理剤。
【請求項5】
ヘアケア剤である請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の毛髪処理剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、毛髪処理剤に関する。
【背景技術】
【0002】
毛髪をシャンプー等で洗浄した後は、毛髪表面の保護層が失われてしまい、指通りが悪くなることがある。そのため、毛髪にすべり性を付与して指通りを良くするために、第4級アンモニウム塩等のカチオン界面活性剤を含む毛髪処理剤が広く用いられている(特開2013−170163号公報)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2013−170163号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
毛髪のすべり性を向上させるべく検討していたところ、紛体原料を配合することで、高分子化合物では得られない毛先までのすべる感触が得られる。しかし、紛体原料を毛髪処理剤に配合すると、処理後の毛髪に触れたときに粉体が手に移る感触を伴うことがある。
【0005】
本発明は、上記した事情に鑑みてなされたものであり、毛髪の根元から毛先までの指がすべる感触が良く、紛体原料が手移りする感触を抑制できる毛髪処理剤の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するためになされた発明は、毛髪への塗布後に洗い流して使用する毛髪処理剤であって、カチオン界面活性剤、高級アルコール及び紛体原料が配合され、上記紛体原料として、オクテニルコハク酸トウモロコシデンプンAl、カオリン又はラウロイルリシンが配合されたことを特徴とする。当該毛髪処理剤は、ヘアケア剤であるとよい。
【0007】
当該毛髪処理剤によれば、特定の紛体原料を配合することで、毛髪の根元から毛先までの指通りが良く、毛先で指が引っ掛かることを抑制できるため、毛髪の根元から毛先までの指がすべる感触の均一化を図ることができる。また、当該毛髪処理剤によれば、特定の紛体原料を配合することで、処理した後の毛髪に触れたときに紛体原料が手に移る感触を抑制できる。
【0008】
上記紛体原料としては、オクテニルコハク酸トウモロコシデンプンAlが好ましい。このようにオクテニルコハク酸トウモロコシデンプンAlが配合されることで、当該毛髪処理剤の低温安定性を向上させることができる。
【0009】
オクテニルコハク酸トウモロコシデンプンAlの配合量が0.1質量%以上であれば、0.1質量%未満よりも、当該毛髪処理剤の粘性が低く、処理後の毛髪の仕上がり感が軽くなる傾向がある。この傾向から、処理後の毛髪の仕上がり感を軽くしたい場合には、当該毛髪処理剤におけるオクテニルコハク酸トウモロコシデンプンAlの配合量を0.1質量%以上にすると良く、処理後の毛髪の仕上がり感を重くしたい場合には、その配合量を0.1質量%未満にすると良い。
【発明の効果】
【0010】
本発明の毛髪処理剤により処理した毛髪は、根元から毛先までの指がすべる感触が良く、毛髪に触れたときの紛体原料の手移り感を抑制できる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の毛髪処理剤は、毛髪への塗布後に洗い流して使用されるものである。当該毛髪処理剤は、カチオン界面活性剤、高級アルコール及び紛体原料が水と配合されたものである(水の配合量は、例えば60質量%以上)。当該毛髪処理剤は、本発明の効果を損なわない範囲で、その他の任意成分を含んでいてもよい。以下、これらの成分について詳説する。
【0012】
[カチオン界面活性剤]
カチオン界面活性剤は、高級アルコールと共に配合することで、当該毛髪処理剤の剤型をクリーム状又はクリーム状に近づける。カチオン界面活性剤としては、例えばジステアリルジメチルアンモニウムクロリド、ジセチルジメチルアンモニウムクロリド、ジココイルジメチルアンモニウムクロリド等のジ長鎖アルキルジメチルアンモニウム塩;ベヘニルトリメチルアンモニウムクロリド、ベヘニルトリメチルアンモニウムメトサルフェート、ステアリルトリメチルアンモニウムクロリド、ステアリルトリメチルアンモニウムブロミド、セチルトリメチルアンモニウムブロミド等のモノ長鎖アルキルトリメチルアンモニウム塩;ステアロキシプロピルトリメチルアンモニウムクロリド等の長鎖アルコキシアルキルトリメチルアンモニウム塩;エチル硫酸ラノリン脂肪酸アミノプロピルエチルジメチルアンモニウムなどが挙げられる(上記ジ長鎖アルキルジメチルアンモニウム塩及びモノ長鎖アルキルトリメチルアンモニウム塩における「長鎖アルキル」の炭素数は、例えば12以上22以下である。)。これらのカチオン界面活性剤は、一種を単独で配合しても二種以上を配合してもよい。当該毛髪処理剤におけるカチオン界面活性剤の配合量としては、適宜設定されるものであるが、例えば1質量%以上7質量%以下である。
【0013】
[高級アルコール]
高級アルコールとしては、例えばセタノール、イソセチルアルコール、セトステアリルアルコール、ステアリルアルコール、イソステアリルアルコール、ベヘニルアルコール、オクチルドデカノール、ミリスチルアルコールが挙げられ、炭素数16〜22の直鎖状飽和アルコールが好ましい。これらの高級アルコールは、一種を単独で配合しても二種以上を配合してもよい。当該毛髪処理剤における高級アルコールの配合量としては、適宜設定されるものであるが、例えば3質量%以上15質量%以下である。
【0014】
[粉体原料]
粉体原料は、毛髪の根元から毛先まですべる感触(毛髪のすべり感)を向上させるものである。この粉体原料には、オクテニルコハク酸トウモロコシデンプンAl、カオリン又はラウロイルリシンが含まれる。これら特定の粉体原料を配合することで、毛髪に触れたときの粉体原料の手移り感を抑制できる。これらの粉体原料は、一種を単独で配合しても二種以上を配合してもよいが、当該毛髪処理剤の低温保存性の観点からは、オクテニルコハク酸トウモロコシデンプンAlを配合することが好ましい。ここで、オクテニルコハク酸トウモロコシデンプンAlは、コーンスターチと無水オクテニルコハク酸とを反応させて得られるもののアルミニウム塩である。
【0015】
当該毛髪処理剤における紛体原料の配合量により、当該毛髪処理剤の粘性及び毛髪の軽さに関する傾向がある。すなわち、紛体原料の配合を増量させると、当該毛髪処理剤の粘性が低下すると共に、軽い毛髪となる。ここで、紛体原料の配合量を0.1質量%を基準をした場合、0.1質量%以上であると毛髪の感触が軽くなり、0.1質量%未満であると毛髪の感触が重くなる。なお、紛体原料の配合量の下限は、例えば0.03質量%である。また、上限は、例えば1質量%であり、紛体原料の手移り感の抑制の観点からは、0.5質量%である。
【0016】
[任意原料]
カチオン界面活性剤、高級アルコール及び粉体原料以外の任意原料は、公知の毛髪処理剤原料から適宜選択される。この任意原料としては、例えばノニオン界面活性剤、両性界面活性剤、低級アルコール、多価アルコール、糖類、エステル油、油脂、脂肪酸、炭化水素、ロウ、シリコーン、高分子化合物、アミノ酸、動植物抽出物、微生物由来物、無機化合物、香料、防腐剤、金属イオン封鎖剤、紫外線吸収剤等が挙げられる。
【0017】
これらの任意原料の中でも、シリコーンは、公知の毛髪処理剤と同様に汎用性が高い。油脂及びエステル油は、毛髪への油分補給や毛髪の柔軟性を高めたいとき等に有用である。低級アルコールは、界面活性剤の水に対する溶解度を高めたいときに有用である。ノニオン界面活性剤は、安定したエマルションを形成させたいときに有用である。
【0018】
(シリコーン)
シリコーンとしては、例えばオクタメチルシクロテトラシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン等のシクロメチコン;ジメチコノール;メチルポリシロキサン、高重合メチルポリシロキサン等のジメチコン;アミノエチルアミノプロピルシロキサン・ジメチルシロキサン共重合体、アミノエチルアミノプロピルメチルシロキサン・ジメチルシロキサン共重合体等のアモジメチコンなどが挙げられる。これらのシリコーンは、一種を単独で配合しても二種以上を配合してもよい。当該毛髪処理剤におけるシリコーンの配合量として、適宜設定されるものであるが、例えば1質量%以上10質量%以下である。
【0019】
(油脂)
油脂としては、例えばアーモンド油、アボガド油、オリーブ油、シア脂油、月見草油、ツバキ油、ピーナッツ油、ローズヒップ油、マカデミアナッツ油が挙げられる。これらの油脂は、一種を単独で配合しても二種以上を配合してもよい。当該毛髪処理剤における油脂の配合量としては、適宜設定されるものであるが、例えば0.5質量%以上5質量%以下である。
【0020】
(エステル油)
エステル油としては、例えばオレイン酸エチル、ミリスチン酸イソプロピル、パルミチン酸イソプロピル、ステアリン酸ブチル、パルミチン酸セチル、ミリスチン酸ミリスチル、ミリスチン酸オクチルドデシル、イソステアリン酸イソプロピル、イソステアリン酸エチル、2−エチルヘキサン酸セチル、イソステアリン酸ヘキシル、ジ2−エチルヘキサン酸エチレングリコール、ジオレイン酸エチレングリコール、ジ(カプリル・カプリン酸)プロピレングリコール、ジオレイン酸プロピレングリコール、トリイソステアリン酸トリメチロールプロパン、テトラ2−エチルヘキサン酸ペンタエリスリトール、イソステアリン酸イソセチル、ジメチルオクタン酸2−オクチルドデシル、乳酸ミリスチル、クエン酸トリオクチルドデシル、リンゴ酸ジイソステアリル、コハク酸ジ2−エチルヘキシル、アジピン酸ジイソブチル、ステアリン酸コレステリル、イソノナン酸イソノニル、N−ラウロイル−L−グルタミン酸ジ2−ヘキシルデシルが挙げられる。これらのエステル油は、一種を単独で配合しても二種以上を配合してもよい。当該毛髪処理剤におけるエステル油の配合量としては、適宜設定されるものであるが、例えば0.5質量%以上7質量%以下である。
【0021】
(低級アルコール)
低級アルコールとしては、例えばエタノール、イソプロピルアルコールが挙げられる。これらの低級アルコールは、一種を単独で配合しても二種以上を配合してもよい。当該毛髪処理剤における低級アルコールの配合量としては、適宜設定されるものであるが、例えば0.5質量%以上3質量%以下である。
【0022】
(ノニオン界面活性剤)
ノニオン界面活性剤としては、例えばポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビトールテトラ脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステルが挙げられる。これらのノニオン界面活性剤は、一種を単独で配合しても二種以上を配合してもよい。当該毛髪処理剤におけるノニオン界面活性剤の配合量としては、適宜設定されるものであるが、例えば0.1質量%以上5質量%以下である。
【0023】
(pH)
当該毛髪処理剤のpHとしては、特に限定されないが、中性又は酸性であると良い。25℃におけるpHは、例えば3以上7以下であり、好ましくは4以上6以下である。当該毛髪処理剤のpHが7以下であると、毛髪の膨潤抑制に好適である。
【0024】
(剤型、粘度)
当該毛髪処理剤の使用時の剤型としては、特に限定されないが、濡れた頭髪に塗布することが容易なクリーム状であると良い。当該毛髪処理剤をクリーム状の剤型とする場合の粘度としては、例えば4,000mPa・s以上50,000mPa・s以下であり、5,000mPa・s以上20,000mPa・s以下が良い。なお、粘度は、B型粘度計を使用して25℃、12rpmで計測した60秒後の値である。
【0025】
(用途)
当該毛髪処理剤は、毛髪に塗布した後に洗い流す態様で用いられるものであり、ヘアケア剤、パーマ剤、カラーリング剤、ブリーチ剤等として使用可能なものである。「ヘアケア剤」とは、毛髪の手入れ、手当て等を行うために用いられる毛髪処理剤である。ヘアケア剤としては、例えばコンディショナー、トリートメント(例えば、シャンプー後に使用するトリートメント、パーマの後処理のためのトリートメント、カラーリングの後処理のためのトリートメント、ブリーチの後処理のためのトリートメント)が挙げられる。
【実施例】
【0026】
以下、当該毛髪処理剤を実施例により説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0027】
[実施例1a]
下記表1に示す原料を水に配合し、剤型がクリーム状の実施例1aの毛髪処理剤を調製した。この実施例1aの毛髪処理剤には、粉体原料としてオクテニルコハク酸トウモロコシデンプンアルミニウム0.2質量%、カチオン界面活性剤としてステアリルトリメチルアンモニウムブロミド3質量%及びエチル硫酸ラノリン脂肪酸アミノプロピルエチルジメチルアンモニウム0.2質量%、並びに高級アルコールとしてセタノール5質量%及びステアリルアルコール2質量%を配合した。かかる毛髪処理剤について、以下に説明する毛髪の根元から毛先までのすべりの均一感、粉体原料の手移り感、及び低温安定性を評価した。
【0028】
[実施例1b]
粉体原料として、オクテニルコハク酸トウモロコシデンプンアルミニウムに代えて、カオリンを使用した以外は実施例1aと同様にして実施例1bの毛髪処理剤を調製した。
【0029】
[実施例1c]
粉体原料として、オクテニルコハク酸トウモロコシデンプンアルミニウムに代えて、ラウロイルリシンを使用した以外は実施例1aと同様にして実施例1cの毛髪処理剤を調製した。
【0030】
[比較例1a]
粉体原料として、オクテニルコハク酸トウモロコシデンプンアルミニウムに代えて、シリコーンレジン被覆パウダー(信越シリコーン社の「KSP-101」)を使用した以外は実施例1a同様にして比較例1aの毛髪処理剤を調製した。
【0031】
[比較例1b]
粉体原料として、オクテニルコハク酸トウモロコシデンプンアルミニウムに代えて、架橋ポリアクリル酸アルキル微粒子(松本油脂製薬社の「マツモトマイクロスフェアー S−100」)を使用した以外は実施例1aと同様にして比較例1bの毛髪処理剤を調製した。
【0032】
[比較例1c]
粉体原料として、オクテニルコハク酸トウモロコシデンプンアルミニウムに代えて、シリコーンレジンパウダー(旭化成ワッカー社の「BELSIL TMS 803」)を使用した以外は実施例1a同様にして比較例1cの毛髪処理剤を調製した。
【0033】
<毛先までのすべり均一感の評価>
シャンプー後の濡れた毛髪の半分に実施例1cの毛髪処理剤を塗布する一方で、残りの半分の毛髪に実施例1a,1b、比較例1a〜1cのいずれかの毛髪処理剤を塗布し、さらに水洗、乾燥させた後に、毛髪の根元から毛先までのすべり均一感を以下の基準で評価した。毛先までのすべり均一感は、毛髪の根元から毛先まで手櫛により毛髪表面に指を滑らせたとき、根元から毛先までのすべり感が均一であるか(特に毛先での引っ掛かりがないか)により評価した。評価結果は表1に示した。なお、評価者の人数は3名とした。
【0034】
〇:評価者3名の全てが毛先までのすべり均一感が基準と同等と評価
△:評価者3名の全てが毛先までのすべる均一感が基準よりもやや劣ると評価
×:評価者3名の全てが毛先までのすべる均一感が基準よりも劣ると評価
【0035】
<手移り感の評価>
手移り感は、上述のすべり均一感の評価の際の手櫛後に、評価者の手に粉体原料が移っているか、及び移っている感触があるかを確認することで行った。評価結果は表1に示した。なお、評価者の人数は3名とした。
〇:評価者3名の全てが粉体下原料の手移り感が基準と同等(手移り感がない)と評価
△:評価者3名の全てが粉体下原料の手移り感が基準よりもやや劣ると評価
×:評価者3名の全てが粉体下原料の手移り感が基準よりも劣ると評価
【0036】
<低温安定性>
低温安定性は、設定温度を−2℃とした冷風循環槽内に、プラスチックカップ内に毛髪処理剤を封入して放置し、毛髪処理剤が凍結するか否かを確認することで評価した。
【0037】
【表1】
【0038】
表1から明らかなように、実施例1a及び実施例1bの毛髪処理剤は、評価者3名の全てが毛先までのすべり均一感が基準(実施例1cの毛髪処理剤)と同等であり、粉体原料の手移り感がなかったと評価した。これに対して、比較例1aの毛髪処理剤は基準と比べて粉体原料の手移り感が劣り(手移り感があり)、比較例1bの毛髪処理剤は毛先までのすべり均一感が基準よりもやや劣り、比較例1cの毛髪処理剤は毛先までのすべり均一感が劣っていた。この結果から、毛髪処理剤に粉体原料としてオクテニルコハク酸トウモロコシデンプンアルミニウム、カオリン又はラウロイルリシンを配合することで、毛先までのすべり均一感及び粉体原料の手移り感が改善されることが確認された。
【0039】
また、低温安定性の評価において、実施例1aの毛髪処理剤は2か月後も凍結せず、実施例1b及び実施例1cの毛髪処理剤は20日以内で凍結した。この結果から、粉体原料としてオクテニルコハク酸トウモロコシデンプンアルミニウムを配合することで、低温安定性が改善されることが確認された。
【0040】
[実施例2a]
下記表2に示す原料を水に配合し、クリーム状の剤型に実施例2aの毛髪処理剤を調製した。なお、実施例2aの毛髪処理剤は、実施例1aの毛髪処理剤と同一組成である。かかる実施例2aの毛髪処理剤について、上述した毛先までのすべり均一感の評価、及び仕上がりの重さを評価した。評価結果は表2に示した。
【0041】
[実施例2b]
粉体原料としてのオクテニルコハク酸トウモロコシデンプンアルミニウムの配合量を0.1質量%とした以外は実施例2aと同様にして実施例2bの毛髪処理剤を調製し、毛先までのすべり均一感の評価及び仕上がりの重さを評価した。評価結果は表2に示した。
【0042】
<仕上がりの重さを評価>
仕上がりの重さは、すべりの均一感の評価の後に、毛髪の重さの感触を相対比較した。
【0043】
【表2】
【0044】
表2から明らかなように、実施例2bの毛髪処理剤は、毛先までのすべり均一感が実施例2a(実施例1a)の毛髪処理剤と同等(良好)であった。すなわち、粉体原料としてのオクテニルコハク酸トウモロコシデンプンアルミニウムの配合量を0.1質量%に減らした場合でも、毛先までのすべり均一感が改善されていた。
【0045】
実施例2a(実施例1a)では、実施例2bに比べて毛髪の仕上がりの重さがないと評価された。すなわち、粉体原料としてオクテニルコハク酸トウモロコシデンプンアルミニウムを配合する場合、配合量を増やすことで仕上がりが軽くなる傾向が確認された。