(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
シート状部材を、搬送装置を用いて前記シート状部材の幅方向に対して垂直な方向に移動させ、前記シート状部材を裁断して平面視略矩形形状に区画するシート状部材の裁断方法であって、
前記シート状部材は、無機繊維、有機バインダ及び無機バインダを含むシート状部材であり、
前記平面視略矩形形状は、一方の辺と、向かい合う辺とで、互いに対応する凸部及び凹部を有し、
前記搬送装置の上方に配置される縦切断部材を用いて、前記シート状部材を前記シート状部材の前記幅方向に対して平行な方向、かつ、前記シート状部材の厚さ方向に対して傾斜させた方向に完全に切断して縦切断部を形成する縦切断工程と、
前記搬送装置の上方に、前記シート状部材の移動方向に対して垂直な方向に沿って複数個配置された横切断部材を用いて、前記複数個の横切断部材を前記シート状部材と接触させ、前記シート状部材を、前記シート状部材の移動方向に平行な方向に切断して複数の横切断部を形成する横切断工程とを備え、
前記シート状部材を前記縦切断部と前記横切断部とによって前記平面視略矩形形状に区画することを特徴とするシート状部材の裁断方法。
前記搬送装置がベルト状の真空コンベアであって、前記縦切断工程において、前記シート状部材における前記縦切断部材が接近する側の面と反対側の面を前記真空コンベアで吸着することで、前記シート状部材を前記搬送装置上に固定する請求項1〜5のいずれかに記載のシート状部材の裁断方法。
前記縦切断部材が、板刃、回転刃、ギロチン刃、レーザー切断装置及びウォータージェット切断装置からなる群から選択される少なくとも1種である請求項1〜6のいずれかに記載のシート状部材の裁断方法。
前記搬送装置がベルト状の真空コンベアであって、前記横切断工程において、前記シート状部材における前記横切断部材が接近する側と反対側の面を前記真空コンベアで吸着することで、前記シート状部材を前記搬送装置上に固定する請求項1〜7のいずれかに記載のシート状部材の裁断方法。
前記複数の横切断部材を、前記シート状部材の幅方向に沿って移動させることで、前記横切断部材同士の距離を変更可能である請求項1〜10のいずれかに記載のシート状部材の裁断方法。
前記縦切断工程では、前の前記縦切断工程において形成された前記縦切断部と前記シート状部材の厚さ方向とのなす角と、次の前記縦切断工程において形成された前記縦切断部と前記シート状部材の厚さ方向とのなす角とが、常に略同一となるように前記縦切断工程を行うことで前記平面視略矩形形状のマットの前記長手方向に切断した断面図における断面形状を略平行四辺形とする請求項2〜4のいずれかに記載のシート状部材の裁断方法。
前記縦切断工程では、前の前記縦切断工程において形成された前記縦切断部と前記シート状部材の厚さ方向とのなす角と、次の前記縦切断工程において形成された前記縦切断部と前記シート状部材の厚さ方向とのなす角とが、前記シート状部材の厚さ方向に対して順次略反転するように前記縦切断工程を行うことで、前記平面視略矩形形状のマットの前記長手方向に切断した断面図における断面形状を略台形とする請求項2〜4のいずれかに記載のシート状部材の裁断方法。
ケーシングと、前記ケーシングに収容された排ガス処理体と、前記排ガス処理体の周囲に巻き付けられ、前記排ガス処理体及び前記ケーシングの間に配設された保持シール材とを備える排ガス浄化装置の製造方法であって、
前記排ガス処理体の周囲に、請求項15に記載のシート状部材の裁断方法により得られた平面視略矩形形状のマットを前記保持シール材として巻き付けた巻付体を準備する巻付体準備工程と、
前記巻付体を、前記ケーシングに圧入する圧入工程とを備え、
前記巻付体準備工程では、前記排ガス処理体と接する側の主面において、前記主面と前記縦切断部とのなす角が鋭角である側から巻き付けを開始することを特徴とする排ガス浄化装置の製造方法。
ケーシングと、前記ケーシングに収容された排ガス処理体と、前記排ガス処理体の周囲に巻き付けられ、前記排ガス処理体及び前記ケーシングの間に配設された保持シール材とを備える排ガス浄化装置の製造方法であって、
前記排ガス処理体の周囲に、請求項16に記載のシート状部材の裁断方法により得られた平面視略矩形形状のマットを前記保持シール材として巻き付けた巻付体を準備する巻付体準備工程と、
前記巻付体を、前記ケーシングに圧入する圧入工程とを備え、
前記巻付体準備工程では、前記マットの長手方向の長さが短い方の主面が前記排ガス処理体と接するように巻き付けることを特徴とする排ガス浄化装置の製造方法。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【
図1】
図1(a)は、本発明のシート状部材の裁断方法によって区画されるシート状部材の一例を模式的に示した俯瞰図であり、
図1(b)は、
図1(a)におけるA−A線断面図である。
【
図2】
図2(a)は、本発明のシート状部材の裁断方法を構成する縦切断工程の一例を模式的に示した俯瞰図であり、
図2(b)は、
図2(a)におけるB−B線断面図である。
【
図3】
図3は、本発明のシート状部材の裁断方法を構成する横切断工程の一例を模式的に示した俯瞰図である。
【
図4】
図4は、本発明のシート状部材の裁断方法のうち、最初に縦切断工程を行い、最後に横切断工程を行うシート状部材の裁断方法の一例を模式的に示した俯瞰図である。
【
図5】
図5は、本発明のシート状部材の裁断方法のうち、最初に横切断工程を行い、続いて縦切断工程を行うシート状部材の裁断方法の一例を模式的に示した俯瞰図である。
【
図6】
図6(a)は、横切断工程において形成される横切断部の一例を模式的に示したシート状部材の断面図であり、
図6(b)は、横切断工程において形成される横切断部の別の一例を模式的に示したシート状部材の断面図であり、
図6(c)は、横切断工程において形成される横切断部のさらに別の一例を模式的に示したシート状部材の断面図である。
【
図7】
図7(a)は、縦切断工程において用いられる縦切断部材の一例を模式的に示した斜視図であり、
図7(b)は、
図7(a)におけるE−E線断面図である。
【
図8】
図8は、縦切断工程において用いられる縦切断部材の別の一例を模式的に示した断面図である。
【
図9】
図9(a)は、横切断工程において用いられる横切断部材の一例を模式的に示した斜視図であり、
図9(b)は、
図9(a)におけるF−F線断面図であり、
図9(c)は、横切断工程において用いられる横切断部材の別の一例を模式的に示した平面図であり、
図9(d)は、横切断工程において用いられる横切断部材のさらに別の一例を模式的に示した斜視図であり、
図9(e)は、
図9(d)におけるH−H線断面図である。
【
図10】
図10は、安全ケースを用いた縦切断工程の一例を模式的に示した斜視図である。
【
図11】
図11(a)は、
図10において、縦切断工程が行われる瞬間の一例を模式的に示したI−I線断面図であり、
図11(b)は、
図10において、縦切断部材がシート状部材を切断し、シート状部材から離れる瞬間の一例を模式的に示したI−I線断面図であり、
図11(c)は、
図10において、縦切断部材がシート状部材を切断し、安全ケース内に収納される瞬間の一例を模式的に示したI−I線断面図である。
【
図12】
図12(a)は、本発明のマットの一の態様の一例を模式的に示した斜視図であり、
図12(b)は、
図12(a)におけるJ−J線断面図である。
【
図13】
図13(a)は、本発明のマットの一の態様を排ガス処理体に巻きつけた巻付体の一例を模式的に示す斜視図であり、
図13(b)は、
図13(a)におけるK−K線断面図であり、
図13(c)は、
図13(a)に示す巻付体を製造する方法の一例を模式的に示す断面図である。
【
図14】
図14(a)は、本発明のマットの一の態様を排ガス処理体に巻き付けた際に、排ガス処理体の周方向の長さよりもマットの長手方向の長さが長かった場合の巻付体の一例を模式的に示す部分拡大断面図であり、
図14(b)は、本発明のマットの一の態様を排ガス処理体に巻き付けた際に、排ガス処理体の周方向の長さよりもマットの長手方向の長さが短かった場合の巻付体の一例を模式的に示す部分拡大断面図である。
【
図15】
図15(a)は、本発明のマットの別の態様の一例を模式的に示した斜視図であり、
図15(b)は、
図15(a)におけるO−O線断面図である。
【
図16】
図16(a)は、本発明のマットの別の態様を排ガス処理体に巻きつけた巻付体の一例を模式的に示す斜視図であり、
図16(b)は、
図16(a)におけるP−P線断面図である。
【
図17】
図17は、本発明の排ガス浄化装置の製造方法の一例を模式的に示した斜視図である。
【
図18】
図18は、本発明の排ガス浄化装置の一例を模式的に示した断面図である。
【
図19】
図19は、本発明の排ガス浄化装置を構成する排ガス処理体の一例を模式的に示した斜視図である。
【
図20】
図20(a)は、従来のマットを排ガス処理体に巻き付けた際に、排ガス処理体の周方向の長さよりもマットの長手方向の長さが長かった場合の巻付体の一例を模式的に示す部分拡大断面図であり、
図20(b)は、従来のマットを排ガス処理体に巻き付けた際に、排ガス処理体の周方向の長さよりもマットの長手方向の長さが短かった場合の巻付体の一例を模式的に示す部分拡大断面図である。
【
図21】
図21は、従来のマットを排ガス処理体に巻き付けた際に発生する内外周差の一例を模式的に示す巻付体の部分拡大断面図である。
【0042】
(発明の詳細な説明)
以下、本発明のシート状部材の裁断方法について具体的に説明する。しかしながら、本発明は、以下の構成に限定されるものではなく、本発明の要旨を変更しない範囲において適宜変更して適用することができる。なお、以下において記載する本発明の個々の望ましい構成を2つ以上組み合わせたものもまた本発明である。
【0043】
以下、本発明のシート状部材の裁断方法について説明する。
本発明のシート状部材の裁断方法は、シート状部材を、搬送装置を用いて上記シート状部材の幅方向に対して垂直な方向に移動させ、上記シート状部材を裁断して平面視略矩形形状に区画するシート状部材の裁断方法であって、上記搬送装置の上方に配置される縦切断部材を用いて、上記シート状部材を上記シート状部材の上記幅方向に対して平行な方向、かつ、上記シート状部材の厚さ方向に対して傾斜させた方向に完全に切断して縦切断部を形成する縦切断工程と、上記搬送装置の上方に、上記シート状部材の移動方向に対して垂直な方向に沿って複数個配置された横切断部材を用いて、上記複数個の横切断部材を上記シート状部材と接触させ、上記シート状部材を、上記シート状部材の移動方向に平行な方向に切断して複数の横切断部を形成する横切断工程とを備え、上記シート状部材を上記縦切断部と上記横切断部とによって平面視略矩形形状に区画することを特徴とする。
【0044】
まず、本発明のシート状部材の裁断方法により区画されるシート状部材について説明する。
図1(a)は、本発明のシート状部材の裁断方法によって区画されるシート状部材の一例を模式的に示した俯瞰図であり、
図1(b)は、
図1(a)におけるA−A線断面図である。
図1(a)に示すように、シート状部材100は、縦切断部30(30a、30b、30c)と横切断部40(40a、40b、40c)とによって平面視略矩形形状に区画されている。さらに、
図1(b)に示すように、縦切断部30はシート状部材の厚さ方向(
図1(b)中、両矢印T
1で示される方向)に対して所定の角度(
図1(b)中、θ
1で示される角度)傾斜している。
【0045】
図1(a)に示したシート状部材は、本発明のシート状部材の裁断方法を構成する縦切断工程及び横切断工程の両方を経ることにより区画される。以下に、縦切断工程及び横切断工程をそれぞれ説明する。
【0046】
まず、本発明のシート状部材の裁断方法を構成する縦切断工程について説明する。
図2(a)は、本発明のシート状部材の裁断方法を構成する縦切断工程の一例を模式的に示した俯瞰図であり、
図2(b)は、
図2(a)におけるB−B線断面図である。
図2(a)及び
図2(b)に示すように、本発明のシート状部材の裁断方法を構成する縦切断工程では、幅(
図2(a)中、両矢印W
1で示される長さ)を有するシート状部材101を、搬送装置1を用いてシート状部材の幅方向に対して垂直な方向(
図2(a)中、矢印Cで示される方向)に向かって移動させる。そして、搬送装置1の上方に配置される縦切断部材10を用いて、シート状部材101を幅方向(
図2(a)中、両矢印W
1で示される方向)に対して平行な方向、かつ、シート状部材101の厚さ方向(
図2(b)中、両矢印T
2で示される方向)に対して所定の角度(
図2(b)中、θ
2で示される角度)傾斜させた方向に完全に切断して縦切断部31(31a、31b、31c)を形成する。
なお、縦切断工程においては、シート状部材を幅方向に完全に切断する必要はなく、幅方向の一部、例えば両端部を残して切断してもよい。
また、
図2(a)でのシート状部材101は搬送装置1の進行方向に長い連続体となっているが、シート状部材101の長さに特に制約はなく、マット200を決められた形状で1つ以上裁断できれば良い。
【0047】
縦切断工程におけるシート状部材の厚さ方向と縦切断部とのなす角度は、5〜60°であることが望ましく、10〜50°がより望ましく、15〜45°がさらに望ましい。
シート状部材の厚さ方向と縦切断部とのなす角度が5°未満であると、傾斜が小さすぎて、シート状部材を厚さ方向から傾斜させることによる効果が発揮されにくい。また、角度が60°以上であると、傾斜が大きすぎて、切断時にシート状部材がずれて、切断自体が困難になることがある。
【0048】
次に、本発明のシート状部材の裁断方法を構成する横切断工程について説明する。
図3は、本発明のシート状部材の裁断方法を構成する横切断工程の一例を模式的に示した俯瞰図である。
図3に示すように、本発明のシート状部材102の裁断方法を構成する横切断工程では、幅(
図3中、両矢印W
2で示される長さ)を有するシート状部材102を、搬送装置1を用いてシート状部材102の幅方向に対して垂直な方向(
図3中、矢印Dで示される方向)に向かって移動させ、搬送装置1の上方に、シート状部材102の移動方向に対して垂直な方向に沿って複数個配置された横切断部材20(20a、20b、20c)を用いて、複数個の横切断部材20をシート状部材102と接触させ、シート状部材102を、シート状部材102の移動方向に平行な方向に切断して複数の横切断部41(41a、41b、41c)を形成する。
また、横切断工程においては、複数個の横切断部材20を、シート状部材102の幅方向に沿って移動させることで、横切断部材20同士の距離(
図3中、両矢印W
3及びW
4で示される長さ)を変更可能であることが望ましい。横切断部同士の距離を変更可能であると、横切断部材の位置を変えることによって、シート状部材の裁断寸法を容易に変更することができる。
【0049】
上記縦切断工程と横切断工程を行うことにより、シート状部材は縦切断工程により形成された縦切断部と、横切断工程により形成された横切断部とによって平面視略矩形形状に区画されることとなる。さらに、縦切断工程においては、シート状部材をシート状部材の幅方向に対して平行な方向、かつ、シート状部材の厚さ方向に対して傾斜させた方向に完全に切断する。そのため、本発明のシート状部材の裁断方法を経て得られることとなる平面視略矩形形状のマットは、シート状部材の厚さ方向に対して傾斜した端面を有することとなる。シート状部材の厚さ方向に対して傾斜した端面を有するマットは、所定の条件下において特徴的な効果を有する。
なお、本明細書において、シート状部材を平面視略矩形形状に区画するとは、シート状部材が平面視略矩形形状のマットとして分離された状態のみを指すものではなく、横切断部がシート状部材の一部を切断しており、そのままでは平面視略矩形形状のマットとして分離可能ではないが、続く分離工程により容易に分離可能となる状態も含む。
【0050】
図4は、本発明のシート状部材の裁断方法のうち、最初に縦切断工程を行い、最後に横切断工程を行うシート状部材の裁断方法の一例を模式的に示した俯瞰図である。
図4では、最初に行われる縦切断工程において、縦切断部材11を用いて、シート状部材103を、シート状部材の幅方向(
図4中、両矢印W
5で示される方向)に対して平行な方向に切断して、縦切断部32を形成するが、この際には、シート状部材103の幅方向における両端部111及び112を切断しない。さらに、続く横切断工程では、横切断部材21(21a、21b、21c)によって形成される複数の横切断部42(42a、42b、42c)のうち、シート状部材103の幅方向における一方の端部111に最も近い横切断部42aから、他方の端部112に最も近い横切断部42cまでが、縦切断部32によって切断されるように横切断部42が形成される。そのため、縦切断工程及び横切断工程によって、シート状部材103が平面視略矩形形状のマット200として裁断される。
最初に行われる縦切断工程において、シート状部材103の幅方向の両端部111、112を切断しないことにより、縦切断工程による衝撃や搬送装置1の振動等によって、シート状部材103がずれることを抑制し、続く横切断工程における寸法のずれを抑制することができる。
さらに、上記縦切断工程によって形成された縦切断部が、続く横切断工程によって形成される複数の横切断部のうち、シート状部材の幅方向における一方の端部に最も近い横切断部から、他方の端部に最も近い横切断部までを切断するように形成されていることで、縦切断工程と横切断工程の両方を終えたシート状部材は、縦切断部と横切断部によって裁断され、平面視略矩形形状のマットとなる。
このように、本発明のシート状部材の裁断方法において、縦切断工程の後に横切断工程を行う場合、縦切断工程では、シート状部材の幅方向における両端部を切断せずに、続く横切断工程において形成される複数の横切断部のうち、シート状部材の幅方向における一方の端部に最も近い横切断部から、シート状部材の幅方向における他方の端部に最も近い横切断部までを切断することが望ましい。
【0051】
図5は、本発明のシート状部材の裁断方法のうち、最初に横切断工程を行い、続いて縦切断工程を行うシート状部材の裁断方法の一例を模式的に示した俯瞰図である。
図5に示すように、最初に横切断工程を行う場合、複数の横切断部材22(22a、22b、22c)を用いて、シート状部材104を厚さ方向に完全に切断する工程と、シート状部材104を厚さ方向に切断しない又は厚さ方向に一部だけ切断する工程とを、シート状部材104の移動に合わせて交互に繰り返すことにより、シート状部材104にミシン目状の横切断部43を複数形成することが望ましい。
横切断工程において、ミシン目状の横切断部43(43a、43b、43c)が形成されると、横切断工程によってシート状部材104が複数の部位に分離することがない。そのため、横切断工程による衝撃や搬送装置1の振動等によって、シート状部材104がずれることを抑制し、続く縦切断工程における寸法のずれを抑制することができる。
さらに、続く縦切断工程においては、シート状部材104の幅方向(
図5中、両矢印W
6で示される方向)における両端部を切断せずに、横切断工程において形成された複数の横切断部43(43a、43b、43c)のうち、シート状部材104の幅方向における一方の端部113に最も近い横切断部43aから、シート状部材の幅方向における他方の端部114に最も近い横切断部43cまでを、縦切断部材12によって形成される縦切断部33が切断している。
上述した横切断工程及び縦切断工程を経たシート状部材104には、縦切断部及び横切断部によって平面視略矩形形状の領域が形成されることとなるが、横切断部は完全には切断されておらず、また、縦切断部はシート状部材104の両端部を切断していない。従って、横切断工程及び縦切断工程を終えた後においても、シート状部材104は自然に分離しないように構成されている。
そのため、本発明のシート状部材の裁断方法において、最初に横切断工程を行い、続いて縦切断工程を行った場合、最後に、横切断部43を境界としてシート状部材104を分離部材60により分離して、シート状部材104を平面視略矩形形状のマット201とする分離工程を行うことが望ましい。
分離工程を行うことで、任意のタイミングでシート状部材104から平面視略矩形形状のマット201を成形することができる。
分離工程を行うまでは、シート状部材は1つの部位からなっているため、取り扱い性の面で優れている。
【0052】
図5に示した本発明のシート状部材の製造方法において、ミシン目状の横切断部を形成する工程に代わって、溝状の横切断部を形成してもよい。上記溝状の横切断部を形成する方法としては、例えば、シート状部材を厚さ方向に一部だけ切断する工程を連続して行う方法等があげられる。
【0053】
図4及び
図5に示したように、本発明のシート状部材の裁断方法においては、縦切断工程及び横切断工程の順番は特に限定されない。
【0054】
次に分離工程について説明する。
図5に示すように、横切断工程に続き縦切断工程が行われたシート状部材104は、分離部材60を用いることで横切断部43(43a、43b、43c)を境界として分離され、平面視略矩形形状のマット201となる。
図5では、分離工程を搬送装置1上で行っているが、本発明のシート状部材の裁断方法では、分離工程を行う場所は搬送装置1上に限定されず、例えば、搬送装置1上から別の場所に設置してある水平台上にシート状部材を移動させ、例えば手によって切り込み部を引き裂くことにより分離工程を行っても良い。
【0055】
分離部材としては、横切断部を境界としてシート状部材を分離可能であれば特に限定されないが、たとえば、カッター等の切断手段が挙げられる。カッター等の切断手段を分離部材として搬送装置上に配置しておき、この切断手段によって横切断部を完全に切断することによりシート状部材を分離してもよい。また、分離部材は刃等の直接的な切断手段を備えている必要はなく、例えば、略三角形状のブロックを用い、このブロックの鋭角部分が楔となってシート状部材を割るように分離してもよい。
【0056】
次に、横切断部について説明する。
図6(a)は、横切断工程において形成される横切断部の一例を模式的に示したシート状部材の断面図であり、
図6(b)は、横切断工程において形成される横切断部の別の一例を模式的に示したシート状部材の断面図であり、
図6(c)は、横切断工程において形成される横切断部のさらに別の一例を模式的に示したシート状部材の断面図である。
図6(a)に示す横切断部44は、シート状部材が厚さ(
図6(a)中、両矢印T
3で表される長さ)方向に全く切断されていない非切断領域51と完全に切断されている切断領域52が交互に形成されたミシン目状の横切断部であってもよい。
図6(a)に示す横切断部44は、例えば、シート状部材を厚さ方向に完全に切断して切断領域52を形成する工程と、厚さ方向に全く切断しないことで非切断領域51を形成する工程とを、シート状部材の移動に合わせて交互に繰り返すことにより形成することができる。
図6(b)に示す横切断部45は、シート状部材が厚さ(
図6(b)中、両矢印T
4で表される長さ)方向に両矢印で示す厚さT
5だけ切断されている半切断領域53と完全に切断されている切断領域54が交互に形成されたミシン目状の横切断部であってもよい。
図6(b)に示す横切断部45は、例えば、シート状部材を厚さ方向に完全に切断して切断領域54を形成する工程と、厚さ方向に一定の深さを有する切り込みを入れることで半切断領域53を形成する工程とを、シート状部材の移動に合わせて交互に繰り返すことにより形成することができる。
図6(c)に示す横切断部46は、シート状部材が厚さ(
図6(c)中、両矢印T
6で表される長さ)方向に両矢印で示す厚さT
7だけ切断された半切断領域55のみからなる溝状の横切断部であってもよい。
図6(c)に示す横切断部46は、例えば、シート状部材の厚さ方向に一定の深さを有する切り込みを入れることで半切断領域55を形成する工程を連続して行うことにより形成することができる。
【0057】
上記横切断部における切断領域、非切断領域及び半切断領域の割合や、半切断領域の厚さ方向の切断距離は、既に説明した分離工程において分離可能であれば特に限定されないが、例えば、ミシン目状の横切断部44においては、非切断領域51の長さ(
図6(a)中、両矢印L
1で示される長さ)と切断領域52の長さ(
図6(a)中、両矢印L
2で示される長さ)との割合は、4:6〜2:8であることが望ましい。
また、ミシン目状の横切断部45においては、半切断領域53の長さ(
図6(b)中、両矢印L
3で示される長さ)と、切断領域54の長さ(
図6(b)中、両矢印L
4で示される長さ)との割合は、半切断領域53の厚さ方向の切断距離(
図6(b)中、両矢印T
5で示される長さ)にもよるが、例えば、半切断領域53の厚さ方向の切断距離がシート状部材の厚さの30〜80%であって、半切断領域53の長さと切断領域54の長さの割合が、2:8〜6:4であることが望ましい。
さらに、横切断部が半切断領域55のみからなる溝状の横切断部46である場合には、半切断領域55の厚さ方向の切断距離(
図6(c)中、両矢印T
7で示される長さ)は、シート状部材の厚さの50〜80%であることが望ましい。
なお、
図6(a)及び
図6(b)における切断領域52及び54の長さは、シート状部材の移動方向に平行な方向における縦切断部の間隔よりも短い。切断領域52及び54の長さが、シート状部材の移動方向に平行な方向における切断部の間隔以上であると、切断工程において形成される複数の切断部同士を上記切断領域52又は54が接続することで、シート状部材が完全に切断されてしまうことがある。そのため、切断したシート状部材がばらけたり、ずれたりすることがある。
【0058】
次に、縦切断工程において用いられる縦切断部材について説明する。
図7(a)は、縦切断工程において用いられる縦切断部材の一例を模式的に示した斜視図であり、
図7(b)は、
図7(a)におけるE−E線断面図である。
図7(a)に示すように、縦切断部材80としては、胴体部81と刃部82とを有する板状金属を所望の形状に折り曲げた板刃を用いることができる。また、縦切断部材80は切断対象であるシート状部材の厚さ方向に対してθ
11だけ傾斜するように構成されている。
【0059】
縦切断工程において用いられる縦切断部材の形状については、特に限定されないが、縦切断工程においてシート状部材を一直線に切断しない場合、すなわち、嵌合部等を設ける目的で、縦切断部材によってシート状部材の一部を長手方向に切断する場合には、
図7(b)に示すように、刃部の先端82aが全て、切断対象となるシート状部材の表面と略平行な同一平面上に存在するように構成されていることが望ましい。刃部の先端82aが全て、切断対象となるシート状部材の表面と略平行な平面上に存在する場合、縦切断工程においてシート状部材を厚さ方向に、同時に切断することができる。
【0060】
縦切断部材を構成する刃部の先端の全てが、切断対象となるシート状部材の表面と略平行な同一平面上に存在しない場合について説明する。
縦切断部材を構成する刃部の先端の全てが、切断対象となるシート状部材の表面と略平行な同一平面上に存在しなかった場合には、縦切断工程において、縦切断部材の一部だけが先にシート状部材及び搬送装置に接触する。換言すると、縦切断部を完全に形成しようとした場合、縦切断部の一部がシート状部材を貫通して、搬送装置と過剰に接触する。このような場合には、縦切断部材や搬送装置を破損させることがある。また、上記破損を防止しようとすると、シート状部材の切断が不完全なものとなることがある。
【0061】
ただし、縦切断部材を構成する刃部の先端の全てが切断対象となるシート状部材の表面と略平行な同一平面上に存在しなかった場合であっても、シート状部材側で対策をすることで、上記の問題を防ぐこともできる。例えば、シート状部材と搬送装置との間に板状部材を設置し、上記板状部材上に、縦切断部材と搬送装置との緩衝帯として、縦切断部材の一部がめり込む為の溝を形成しておくこと等が挙げられる。板状部材上に縦切断部材と搬送装置との緩衝帯として、シート状部材を貫通した縦切断部材が収まる溝を形成しておくと、シート状部材を完全に切断するために縦切断部材をシート状部材に深く埋入した場合であっても、縦切断部材の一部は上記板状部材状に形成された溝に収まり、縦切断部材と搬送装置とが直接接触することがない。そのため、縦切断部材及び搬送装置の破損を防止することができる。また、搬送装置の表面に上記溝を形成して、搬送装置と縦切断部材との過剰な接触による破損を防止してもよい。
【0062】
上記板状部材を構成する材料としては、上記の問題を防ぐことができれば特に限定されないが、例えば、木材、金属、硬質ゴム等が挙げられる。また、シート状部材が滑らないよう、板状部材の表面に摩擦係数を増加させるための粗化処理が施されていてもよく、シート状部材が無機繊維等の集合体である場合には、シート状部材を固定するためのニードルが突出していてもよい。
【0063】
縦切断部材80の長さ(
図7(b)中、両矢印L
5で示される長さ)は、特に限定されないが、シート状部材を圧縮することなく厚さ方向に完全に切断するために、切断するシート状部材の厚さの1/cosθ
11倍以上であることが望ましい。
【0064】
縦切断部材80を構成する胴体部81の厚さ(
図7(b)中、両矢印Mで示される長さ)は特に限定されないが、0.5〜1.5mmであることが望ましく、0.8〜1.2mmであることがより望ましく、0.95〜1.05mmであることが特に望ましい。胴体部81の厚さが0.5mmよりも薄いと縦切断部材80の強度が低下しやすく、1.5mmよりも厚いと折り曲げ加工が困難になるとともに、切断するシート状部材の形状に影響を与えることがある。
【0065】
図7(b)に示すように、縦切断部材80は、胴体部81から所定の切り込み角度(
図7(b)中、θ
3及びθ
4で表される角度)で切り込まれることにより刃部82が形成されている。θ
3及びθ
4の角度差は、10°以内が望ましく、より望ましくは5°以内、さらに望ましくは0°である。θ
3及びθ
4の角度差が10°を超える場合、縦切断部材80をシート状部材に押圧したときに、刃部82が切り込み角度の小さい側に折れ曲がり、縦切断部材10の耐久性が低下することや、切断するシート状部材の寸法がずれることがある。
また、縦切断部材のシート状部材に対する傾斜を考慮し、縦切断部材のシート状部材と面する側の刃部の切り込み角度(
図7(a)においてはθ
4)を小さくすることも望ましい。
【0066】
θ
3及びθ
4はそれぞれ10〜30°であることが望ましく、15〜25°であることがより望ましく、17〜22°であることがさらに望ましい。
θ
3又はθ
4の角度が10°未満の場合には刃部82の強度が不足して刃部82が刃こぼれを起こすことがあり、θ
3又はθ
4の角度が30°を超える場合には、切断に要する圧力が大きくなるため、縦切断部材80の耐久性が低下することがある。
θ
3及びθ
4はそれぞれ異なっていてもよく、同一であってもよいが、シート状部材を切断する際の抵抗を低減する観点から、θ
3とθ
4とが同一(θ
3とθ
4との角度差が0°)であることが望ましい。
【0067】
また、縦切断部材80は両刃であってもよい。縦切断部材80が両刃であるとは、θ
3及びθ
4がいずれも0°を超えている状態を指す。縦切断部材80が両刃であると、シート状部材を切断する際の抵抗を低減することができる。
【0068】
縦切断部材80を構成する金属材料としては炭素鋼、ステンレス鋼、モリブデン鋼、特殊鋼(合金鋼)等の鋼類、コバルト合金(ステライト)、チタン合金等の合金類、ジルコニア、アルミナ等のファインセラミックス類が挙げられる。これらの中で、焼入れ処理により硬度を上昇させることができる鋼類が好ましく使用できる。さらに、硬度、耐久性が比較的高く、入手が容易であり、また、炭素の含有量を変化させることにより目的に応じ機械的特性を容易に変化させることができる炭素鋼がより好ましく使用される。炭素鋼は、炭素(C)含有量が2%以下の鉄と炭素の合金であり、通常、微量のケイ素、マンガン、リン、硫黄を含有する。炭素鋼は、炭素の含有量により、0.12%以下:極軟鋼、0.12〜0.2%:低炭素鋼(軟鋼)、0.2〜0.45%:中炭素鋼(半軟鋼、半硬鋼)、0.45〜0.8%:高炭素鋼(硬鋼)、0.8〜1.7%:最硬鋼(至硬鋼)に分けられる。炭素の含有量が多いほど焼き入れ硬化処理を施した際、硬さが上昇する。逆に、炭素の含有量が少ないほど防錆性が向上する。炭素鋼中の炭素の量は切断するシート状部材の材質、目的等に応じ適宜設定される。また、複数の金属材料が接合されるグラット材として使用しても良い。例えば、刃部82を硬くするために先端部に炭素含有量の高い炭素鋼を使用しても良い。また、表面の防錆性を向上させるために炭素含有量の低い炭素鋼を両面に積層させる三層構造の複層構造として構成してもよい。また、折り曲げ加工性を向上させるために屈曲部においては炭素含有量の低い炭素鋼を使用してもよい。シート状部材としてアルミナファイバを使用する場合、炭素含有率の高い炭素鋼を使用することが望ましい。
【0069】
縦切断部材80の表面には、低摩擦処理が施されていることが望ましい。低摩擦処理としては、特に限定されないが、例えば、フッ素樹脂によるコーティング等が挙げられる。加えて、ナノオーダーの酸化アルミニウム砥粒などの、非常に粒子径が小さい砥粒を用いて縦切断部材80の表面を研磨することにより低摩擦化する方法も有効である。
縦切断部材80の表面に低摩擦処理が施されていると、縦切断部を形成する際に、シート状部材と縦切断部材とが滑りやすく、縦切断部工程におけるシート状部材へのダメージを最小限に抑えることができる。
【0070】
図8は、縦切断工程において用いられる縦切断部材の別の一例を模式的に示した断面図である。
図8に示すように、縦切断部材85は、胴体部86の厚さが刃部87から遠ざかるにつれて順次厚くなっていてもよい。胴体部86の厚さが刃部87から遠ざかるに連れて順次厚くなっていると、縦切断部材85の強度を向上させることができ、さらに、シート状部材を裁断した際の刃の倒れを抑制することができる。
なお、このような構成の縦切断部材85における刃部87の切り込み角度は、
図8に示すように、刃部87の先端から胴体部86に向かって伸ばした線と刃部87を構成する面とのなす角で表される(
図8中、θ
5及びθ
6で示される)。
また、胴体部86(
図8中、両矢印L
6で示される部分)の厚さの平均値を胴体部86の厚さとする。
【0071】
縦切断部材としては、上記の板刃のほかにも、回転刃やギロチン刃等も用いることもでき、さらに、ウォータージェットやレーザーによる従来公知の切断方法を用いることもできる。このような切断部材を用いる場合、搬送装置を一旦停止させて、静止したシート状部材に対して縦切断工程を行ってもよい。また、切断部材の種類に応じて、搬送装置の種類を変更してもよい。
【0072】
次に、横切断工程において用いられる横切断部材について説明する。
図9(a)は、横切断工程において用いられる横切断部材の一例を模式的に示した斜視図であり、
図9(b)は、
図9(a)におけるF−F線断面図であり、
図9(c)は、横切断工程において用いられる横切断部材の別の一例を模式的に示した平面図であり、
図9(d)は、横切断工程において用いられる横切断部材のさらに別の一例を模式的に示した斜視図であり、
図9(e)は、
図9(d)におけるH−H線断面図である。
横切断部材としては、
図9(a)に示すような回転刃91や、
図9(c)に示すような回転ミシン刃94や、
図9(d)に示すようなギロチン刃97を用いることができる。
【0073】
図9(b)に示すように、回転刃91は、円盤部92から所定の切り込み角度(
図9(b)中、θ
7及びθ
8で表される角度)で切り込まれることにより刃部93が形成されている。回転刃91を構成する材料、切り込み角度等の望ましい範囲は、縦切断部材と同様であり、縦切断部材と同様の低摩擦処理が施されることも望ましい。また、円盤部92の厚さ(
図9(b)中、両矢印N
1で示される長さ)は、特に限定されないが、縦切断部材の胴体部の厚さと同様であることが望ましい。
【0074】
続いて、回転刃91を用いて、横切断部を形成する場合について、
図6(a)〜
図6(c)を参照して説明する。
【0075】
回転刃91を用いて
図6(a)に記載の横切断部44を形成する場合、例えば、回転刃91をシート状部材に対して上下に移動させながら、シート状部材を移動させる方法が挙げられる。上記方法によってシート状部材を厚さ方向に完全に切断して切断領域52を形成する工程と、回転刃91をシート状部材に接触させずに非切断領域51を形成する工程とが交互に繰り返されることとなり、横切断部44を形成することができる。
また、回転刃91を用いて、横切断部45を形成する場合について、
図6(b)を参照して説明する。回転刃91を用いて横切断部45を形成する場合、例えば、回転刃91をシート状部材に対して上下に移動させながら、シート状部材を移動させる方法が挙げられる。横切断部44を形成する方法との違いは、回転刃91の上下方向における移動領域をシート状部材を完全に切断し切断領域54を形成できる位置から、シート状部材を厚さ方向に一部切断して半切断領域53を形成できる位置までに設定する点にある。上記方法によって、シート状部材に切断領域54を形成する工程と半切断領域53を形成する工程とが交互に繰り返されることとなり、横切断部45を形成することができる。
さらに、回転刃91を用いて横切断部46を形成する場合について、
図6(c)を参照して説明する。回転刃91を用いて横切断部46を形成する場合、例えば、回転刃91をシート状部材を一部切断して半切断領域55を形成できる位置に固定しながら、シート状部材を移動させる方法が挙げられる。上記方法によって、シート状部材に半切断領域55を形成する工程が連続的に行われることとなり、横切断部46を形成することができる。
【0076】
図9(c)に示す回転ミシン刃94は、刃先が凸状部96と凹状部95とから構成されている。凸状部96と凹状部95との距離は特に限定されないが、凸状部96と凹状部95との距離がシート状部材の厚さよりも長い場合には、
図6(a)に示したような横切断部44を形成することができる。また、凸状部96と凹状部95との距離が切断対象となるシート状部材の厚さよりも短い場合には、
図6(b)に示したような横切断部45を形成することができる。
なお、凸状部96と凹状部95の距離とは、凸状部96の先端から回転ミシン刃94の中心までの距離と、凹状部95の先端から回転ミシン刃94の中心までの距離の差に相当する。
【0077】
凸状部96と凹状部95との距離が切断対象となるシート状部材の厚さよりも長い場合、凹状部95の先端はシート状部材と接触することがない。従って、凹状部95がシート状部材に対して最も接近する瞬間には、シート状部材が切断されず、非切断領域が形成されることとなる。そのため、
図6(a)に示すミシン目状の横切断部44が形成される。
また、凸状部96と凹状部95との距離が切断対象となるシート状部材の厚さよりも短い場合には、凹状部95の先端がシート状部材と接触することとなる。そのため、凸状部96と接触したシート状部材には切断領域が形成され、凹状部95と接触したシート状部材には半切断領域が形成される。そのため、
図6(b)に示すミシン目状の横切断部45が形成される。
【0078】
図9(e)に示すように、ギロチン刃97は、胴体部98から所定の切り込み角度(
図9(e)中、θ
9及びθ
10で表される角度)で切り込まれることにより刃部99が形成されている。ギロチン刃97を構成する材料、切り込み角度等の望ましい範囲は、縦切断部材と同様であり、縦切断部材と同様の低摩擦処理が施されることも望ましい。また、胴体部98の厚さ(
図9(e)中、両矢印N
2で示される長さ)は、特に限定されないが、縦切断部材の胴体部の厚さと同様であることが望ましい。
【0079】
次に、ギロチン刃97を用いて横切断部を形成する場合について、
図6(a)及び
図6(b)を参照して説明する。
ギロチン刃97を用いて横切断部44を形成する場合、ギロチン刃97をシート状部材に対して上下に移動させながら、シート状部材を移動させる方法が挙げられる。ギロチン刃97をシート状部材に対して上下に移動させながらシート状部材を移動させることによって、ギロチン刃97によってシート状部材を厚さ方向に完全に切断する切断領域52を形成する工程と、ギロチン刃97をシート状部材に接触させずに非切断領域51を形成する工程とが交互に繰り返されることとなり、横切断部44を形成することができる。なお、上記工程のうち、ギロチン刃97をシート状部材に接触させずに非接触領域51を形成する工程を、ギロチン刃97をシート状部材に接触させ、シート状部材を厚さ方向に一部だけ切断して切断領域53を形成する工程に変更することによって、
図6(b)に示される横切断部45を形成することもできる。
【0080】
また、横切断部材としては、ウォータージェットやレーザーによる従来公知の切断装置を用いることもできる。このような切断装置を用いる場合、搬送装置を一旦停止させて、静止したシート状部材に対して横切断工程を行ってもよい。また、横切断部材の種類に応じて、搬送装置の種類を変更してもよい。
【0081】
搬送装置としては、シート状部材を安定的に移動させることができるものであれば特に限定されず、例えば、ゴムベルトコンベア、スチールベルトコンベア、金網ベルトコンベア、真空コンベア等のベルトコンベアや、ローラーコンベア等であってもよく、複数の搬送装置を隣接させて用いてもよい。真空コンベアは、シート状部材を搬送装置上に安定的に保持することができるため、シート状部材のズレ等を抑制できる点で望ましい。
縦切断工程において、シート状部材における縦切断部材が接近する側の面と反対側の面を真空コンベアで吸着することで、シート状部材を真空コンベア上に固定することができるため、縦切断工程におけるシート状部材のずれをさらに抑制することができる。
同様の理由で、横切断工程において真空コンベアを用いると、シート状部材をより正確な寸法で裁断することができる。
また、シート状部材を固定する方法として、真空コンベアでの吸着の他にも、円筒状のローラや板状の押さえ部材によりシート状部材を挟むようにして固定する方法でも良い。
【0082】
次に、本発明のシート状部材の裁断方法を構成する縦切断工程及び横切断工程において、任意で用いることのできる安全ケースについて説明する。
図10は、安全ケースを用いた縦切断工程の一例を模式的に示した斜視図である。
図10に示すように、安全ケース70は、縦切断部材80を収納するようになっており、縦切断部材80が通過可能なスリット72を有する底板71と、壁部73から構成されている。
縦切断工程においては、シート状部材を切断した後の縦切断部材に、シート状部材が付着することがある。このような場合、切断したシート状部材が縦切断部材と共に搬送装置上から持ち上げられ、シート状部材がたわんだり、シワが発生したりすることがあるため、これを防ぐために、シート状部材と縦切断部材との間に、安全ケースをさらに備えていてもよい。
同様の理由から、シート状部材と横切断部材との間に、安全ケースをさらに備えていてもよい。
【0083】
図11(a)は、
図10において、縦切断工程が行われる瞬間の一例を模式的に示したI−I線断面図であり、
図11(b)は、
図10において、縦切断部材がシート状部材を切断し、シート状部材から離れる瞬間の一例を模式的に示したI−I線断面図であり、
図11(c)は、
図10において、縦切断部材がシート状部材を切断し、安全ケース内に収納される瞬間の一例を模式的に示したI−I線断面図である。
図11(a)に示すように、縦切断部材80は、切断工程が行われる瞬間だけ、安全ケース70に形成されたスリット72を通過してシート状部材105に接触する。
また、
図11(b)に示すように、縦切断部材80が切断工程においてシート状部材105を切断した時に、シート状部材105が縦切断部材80に付着し、シート状部材105が搬送装置1上から持ち上げられてしまうことがある。
シート状部材105が搬送装置1上から持ち上げられてしまったとしても、
図11(c)に示すように、縦切断部材80は安全ケース70に設けられたスリット72を通過可能であるが、シート状部材105はスリット72を通過できないため、縦切断部材80が安全ケース70内に収納されると、縦切断部材80とシート状部材105とが分離されることとなり、縦切断部34が形成される。安全ケース70内に収納された縦切断部材80は、次の縦切断工程までは安全ケース70内に収納されているため、作業者が縦切断部材80に接触する危険性を低減することができる。そのため、安全ケースを用いることで、作業者が縦切断部材に接触する危険性を低減することができ、かつ、シート状部材が縦切断部材に付着した場合に、シート状部材がたわんだり、シワが発生したりすることを抑制することができる。
【0084】
安全ケースを構成する材料としては、特に限定されないが、例えば、金属、プラスチック、木材等が挙げられ、成形性及び取り扱い性の観点から、プラスチック製であることが望ましい。
【0085】
次に、シート状部材について説明する。
シート状部材を構成する材料としては、無機質繊維集合体や有機化合物からなる発泡性緩衝材が挙げられる。これらは、従来の裁断方法によってシート状部材を構成する無機繊維や泡等の三次元構造が破壊されるため、保持力、緩衝力等の低下が問題となっていた。これに対して、本発明のシート状部材の裁断方法では、シート状部材を圧縮する工程がないため、シート状部材の構造に与えるダメージを最小限とすることができ、保持力、緩衝力の高いシート状部材を得ることができる。
【0086】
シート状の無機質繊維集合体は、主に無機繊維から構成されており、従来公知のものを好適に用いることができる。
【0087】
無機繊維は、特に限定されないが、アルミナ繊維、シリカ繊維、アルミナシリカ繊維、ムライト繊維、生体溶解性繊維及びガラス繊維からなる群から選択される少なくとも1種から構成されていることが望ましく、アルミナ繊維及び生体溶解性繊維からなる群から選択される少なくとも1種を含むことがより望ましい。
無機繊維がアルミナ繊維である場合には、耐熱性に優れているので、高温に晒された場合であっても、変質等が発生することがないため、排ガス処理体とケーシングとの間に配設される保持シール材として特に好適である。
また、無機繊維が生体溶解性繊維である場合には、保持シール材を用いて排ガス浄化装置を作製する際に、飛散した無機繊維を吸入等しても、生体内で溶解するため、作業員の健康に害を及ぼすことがない。そして、ガラス繊維についても同様に、健康に害を及ぼすことはない。
【0088】
アルミナ繊維には、アルミナ以外に、例えば、カルシア、マグネシア、ジルコニア等の添
加剤が含まれていてもよい。
アルミナシリカ繊維の組成比としては、重量比でAl
2O
3:SiO
2=60:40〜80:20であることが望ましく、Al
2O
3:SiO
2=70:30〜74:26であることがより望ましい。
また、アルミナ繊維のムライト結晶化率は繊維100重量部に対して5重量部以下が望ましいが、さらには3重量部以下が望ましく、1重量部以下が最も望ましい。ムライト結晶化率は蛍光X線装置にて測定でき、5重量部以下であると繊維は脆くなく、弾力性を有するため、保持力及び緩衝性に優れた無機質繊維集合体となる。
【0089】
無機繊維の平均繊維長は、特に限定されないが、望ましくは0.05〜150mm、より望ましくは0.35〜100mmである。
無機繊維の平均繊維径は、特に限定されないが、マットの強度及び柔軟性の観点から、望ましくは1〜20μm、より望ましくは1〜10μmである。
無機質繊維集合体は湿式法で作られることが望ましく、その際の望ましい平均繊維長は0.05〜5mmであり、さらには0.5〜3mmが望ましい。湿式法により、容易に広範囲の坪量の無機質繊維集合体を製造することが可能であり、特に坪量は限定されないが、望ましい坪量は2000g/m
2〜6000g/m
2であり、より望ましくは3000〜5000g/m
2である。
【0090】
無機質繊維集合体は、無機繊維の他に、有機バインダ及び無機バインダを含んでいても良い。無機質繊維集合体が有機バインダ及び無機バインダを含んでいると、無機質繊維集合体を構成する無機繊維同士の絡み合いが強固となり、面圧の高い無機質繊維集合体となる。
【0091】
有機バインダとしては、特に限定されず、アクリル系樹脂、アクリレート系ラテックス、ゴム系ラテックス、カルボキシメチルセルロース又はポリビニルアルコール等の水溶性有機重合体、スチレン樹脂等の熱可塑性樹脂、エポキシ樹脂等の熱硬化性樹脂等が挙げられる。
有機バインダの含有量は、無機質繊維集合体100重量%に対して0.5〜2%であることが望ましい。
無機質繊維集合体中の有機バインダの含有量は、無機質繊維集合体を600℃/1時間加熱した前後での重量減少率として求めることができる。
また、無機バインダとしては、無機ゾル分散溶液等の無機粒子溶液から溶媒を取り除いた固形成分としての無機粒子が挙げられる。
上記無機ゾル分散溶液(無機粒子溶液)としては特に限定されず、アルミナゾル、シリカゾル等が挙げられる。
上記無機粒子としては、アルミナゾルに由来するアルミナ粒子、シリカゾルに由来するシリカ粒子が好ましい。
無機バインダの添着量は、無機質繊維集合体100重量部に対して0.5〜2重量部であることが好ましい。
乾燥処理としては、通気乾燥、熱板による圧縮乾燥等の方法を用いることができる。
もし、熱板による乾燥を行うと無機質繊維集合体内に含浸されたバインダの分布が厚み方向に均一となるため、厚みの成形性が悪い抄造法の無機質繊維集合体には有利となる。
【0092】
無機質繊維集合体の厚さは、15mm以上であることが望ましく、20mm以上であることがより望ましく、25mm以上であることがさらに望ましい。また、50mm以下であることが望ましく、40mm以下であることがより望ましい。厚さが上記範囲内である無機質繊維集合体は、本発明の裁断方法によって、無機質繊維集合体にダメージを与えずに裁断することができるため、高い面圧を有するマットとなる。
【0093】
有機化合物からなる発泡性緩衝材を構成する材料としては、例えば、ポリウレタン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン等が挙げられる。
【0094】
本発明のマットは、上述した本発明のシート状部材の裁断方法により、シート状部材を裁断することにより得られる。以下、本発明のマットについて説明する。
【0095】
まず、本発明のシート状部材の裁断方法により得られる本発明のマットの一の態様について説明する。
図12(a)は、本発明のマットの一の態様の一例を模式的に示した斜視図であり、
図12(b)は
図12(a)におけるJ−J線断面図である。
図12(a)に示すマット300は、長手方向の長さ(以下単に全長ともいう。
図12(a)中、両矢印L
8で示す)、幅(
図12(a)中、両矢印W
8で示す)及び厚さ(
図12(a)中、両矢印T
8で示す)を有している。マット300は平面視略矩形形状であって、第1の主面301と第1の主面301と対向する第2の主面302と、長手方向に沿った側面である第1の長側面305と第1の長側面305に対向する第2の長側面306と、長手方向に垂直な幅方向に沿った短側面であり、凸部303aが形成された第1の短側面303と、凹部304aが形成された第2の短側面304とを有している。凸部303aと凹部304aとは、互いに対応しており、マット300を円筒形状の物品に巻き付けた際には、ちょうど互いに嵌合するような形状である。
マット300は、
図12(b)に示すように、長手方向に平行な断面における断面形状が略平行四辺形となっている。すなわち、マット300は、第1の短側面303と第2の短側面304とが、マット300の厚さ方向に対して角度θ
12だけ傾いている。
このようなマットは、前の縦切断工程において形成された縦切断部とシート状部材の厚さ方向とのなす角と、次の縦切断工程において形成された縦切断部とシート状部材の厚さ方向とのなす角とが、常に略同一となるように縦切断工程を行うことにより得ることができる。
【0096】
次に、本発明のマットの一の態様を排ガス処理体に巻き付けた巻付体について説明する。
図13(a)は、本発明のマットの一の態様を排ガス処理体に巻きつけた巻付体の一例を模式的に示す斜視図であり、
図13(b)は、
図13(a)におけるK−K線断面図であり、
図13(c)は、
図13(a)に示す巻付体を製造する方法の一例を模式的に示す断面図である。
図13(a)及び
図13(b)に示すように、巻付体670は、排ガス処理体620と第2の主面302とが接するように、マット300が排ガス処理体620に巻き付けられている。第1の短側面303及び第2の短側面304はいずれも、マット300の厚さ方向に対して傾斜している。本発明のマットの一の態様を排ガス処理体620に巻き付ける際には、
図13(c)に示すように、排ガス処理体620と接する側の主面である第2の主面302と、巻き付けを開始する側のマット300の短側面とのなす角(
図13(b)中、第2の短側面304と第2の主面302とのなす角、θ
13によって示される角度)が鋭角である側から巻き付けを開始することが望ましい。このような手順でマットを巻き付けることで、巻き終わりの際にマットの短側面同士が衝突し、マットが破損することを防止することができる。
【0097】
続いて、本発明のマットの一の態様を排ガス処理体に巻き付けた際の効果について説明する。
【0098】
まず、従来のマットを排ガス処理体に巻きつけた際の問題点について、
図20(a)及び
図20(b)を用いて説明する。
まず、マットと組み合わされる排ガス処理体について説明する。排ガス処理体は一般的に焼成したセラミックから形成されるが、セラミックは焼成時の収縮を完全に制御することが難しく、焼成後の寸法がばらつくことがある。そのため、マットを正確な寸法に裁断したとしても、組み合わせる排ガス処理体の寸法がずれてしまうことがある。従って、排ガス処理体に巻き付けるマットとしては、排ガス処理体とマットの寸法が多少ずれたとしても問題なく巻きつけることのできるものが望ましい。
図20(a)は、従来のマットを排ガス処理体に巻き付けた際に、排ガス処理体の周方向の長さよりもマットの長手方向の長さが長かった場合の巻付体の一例を模式的に示す部分拡大断面図であり、
図20(b)は、従来のマットを排ガス処理体に巻き付けた際に、排ガス処理体の周方向の長さよりもマットの長手方向の長さが短かった場合の巻付体の一例を模式的に示す部分拡大断面図である。
図20(a)には、長手方向の長さが排ガス処理体620の周方向の長さよりも長くなっているマット300’を排ガス処理体620に巻き付けた様子を模式的に示している。マット300’の短側面303’及び304’はマット300’の厚さ方向に対して平行になるよう形成されている。
図20(a)に示すように、排ガス処理体620の周方向の長さよりもマット300’の長手方向の長さが長かった場合、マット300’の長さが余ることとなり、マット300’の一部が2重に重なる箇所が発生する。このような巻付体を排ガス浄化装置に配設した場合、一部の箇所だけマット300’の嵩密度が高い領域が発生することとなり、マット300’が破損しやすくなる。
また、
図20(b)には、長手方向の長さが排ガス処理体620の周方向の長さよりも短くなっているマット300’’を排ガス処理体620に巻き付けた様子を模式的に示している。マット300’’の短側面303’’及び304’’はマット300’’の厚さ方向に対して平行になるよう形成されている。
図20(b)に示すように、排ガス処理体620の周方向の長さよりもマット300’’の長手方向の長さが短かった場合、マット300’’の長さが足りず、隙間310’’が発生することとなる。このような巻付体を排ガス浄化装置に配設した場合、排ガス処理体を保持する能力が不足するだけでなく、上記隙間から排ガスが漏洩し、排ガスを充分に浄化できないことがある。
本発明のマットの一の態様ではこのような問題を容易に解決することができる。
【0099】
図14(a)は、本発明のマットの一の態様を排ガス処理体に巻き付けた際に、排ガス処理体の周方向の長さよりもマットの長手方向の長さが長かった場合の巻付体の一例を模式的に示す部分拡大断面図であり、
図14(b)は、本発明のマットの一の態様を排ガス処理体に巻き付けた際に、排ガス処理体の周方向の長さよりもマットの長手方向の長さが短かった場合の巻付体の一例を模式的に示す部分拡大断面図である。
図14(a)に示すように、排ガス処理体620の周方向の長さよりも長手方向の長さが長いマット310の場合、マット310の長さが余ることになる。しかし、第1の短側面313及び第2の短側面314はマットの厚さ方向に対して傾斜しているために、第1の短側面313と第2の短側面314とが完全に重なる箇所(マット310の厚さが2倍となっている箇所)が存在しない。すなわち、本発明のマットの一の態様を排ガス処理体に巻き付けた巻付体においては、排ガス処理体の周方向の長さよりもマットの長手方向の長さが長かった場合に、マット同士が重なる領域を分散させることができる。
【0100】
また、
図14(b)に示すように、排ガス処理体620の周方向の長さより長手方向の長さが短いマット320の場合、マット320の長さが足りないこととなるが、第1の短側面323と第2の短側面324はマットの厚さ方向に対して傾斜しているために、第1の短側面323と第2の短側面324によって、マット320が全く存在しない領域が形成されないように巻付体を構成することができる。すなわち、本発明のマットの一の態様を排ガス処理体に巻きつけた巻付体においては、排ガス処理体の周方向の長さよりもマットの長手方向の長さが短かった場合に、マットが存在しない領域が形成されることを抑制し、保持力の偏りを分散させることができる。
【0101】
すなわち、本発明のマットの一の態様は、マットの長手方向の長さと排ガス処理体の周方向の長さとが完全に一致しない場合において、マットの接合部付近で発生する面圧のバラツキを分散させることができるため、排ガスの漏洩やマットの破壊を抑制することができる。
【0102】
次に、本発明のシート状部材の裁断方法により得られる本発明のマットの別の態様について説明する。
図15(a)は、本発明のマットの別の態様の一例を模式的に示した斜視図であり、
図15(b)は
図15(a)におけるO−O線断面図である。
図15(a)に示すマット400は、長手方向の長さ(以下単に全長ともいう。
図15(a)中、両矢印L
9で示す)、幅(
図15(a)中、両矢印W
9で示す)及び厚さ(
図15(a)中、両矢印T
9で示す)を有している。マット400は平面視略矩形形状であって、第1の主面401と第1の主面401と対向する第2の主面402と、長手方向に沿い、かつ、厚さ方向に対して傾斜した長側面である第1の長側面405と第1の長側面405に対向する第2の長側面406と、長手方向に垂直な幅方向に沿った短側面であり、凸部403aが形成された第1の短側面403と、凹部404aが形成された第2の短側面404とを有している。凸部403aと凹部404aとは、互いに対応しており、マット400を円筒形状の物品に巻き付けた際には、ちょうど互いに嵌合するような形状である。
マット400は、
図15(b)に示すように、長手方向に平行な断面における断面形状が略台形となっている。すなわち、マット400は、第1の短側面403と第2の短側面404とが、マット400の厚さ方向に対して角度θ
14だけ傾いており、第1の短側面のマット400の厚さ方向に対する傾きに対して、第2の短側面のマットの厚さ方向に対する傾きは、マットの厚さ方向に対して反転した角度となっている。さらに、第1の主面401の長手方向における長さは、第2の主面402の長手方向における長さよりも短くなっている。なお、
図15(a)及び
図15(b)に示すような、長手方向に平行な断面における断面形状が略台形となっているマットにおいては、長手方向の長さが短い側の主面の長さを、マットの長手方向の長さとする。
このようなマットは、縦切断工程を、前の縦切断工程において形成された縦切断部とシート状部材の厚さ方向とのなす角と、次の縦切断工程において形成された縦切断部とシート状部材の厚さ方向とのなす角とが、シート状部材の厚さ方向に対して順次略反転するように行うことで得られる。
【0103】
本発明のマットの別の態様を用いた巻付体について、従来のマットと比較して説明する。
まず、従来のマットの問題点を説明する。
図21は、従来のマットを排ガス処理体に巻き付けた際に発生する内外周差の一例を模式的に示す巻付体の部分拡大断面図である。
図21に示すように、マット400’が巻き付けられた排ガス処理体620において、マット400’の短側面403’及び404’がマット400’の厚さ方向に対して平行である場合、マット400’を構成する2つの主面の長手方向における長さはいずれも同じとなる。そのため、マット400’の排ガス処理体と接しない側の主面において、長手方向の長さが不足し、マット400’に隙間410’が発生することとなる。このような巻付体を用いた場合、隙間により排ガス処理体を安定的に保持できないばかりか、排ガスが内外周差による隙間を通じて漏洩してしまい、排ガス浄化性能が低下することもある。
これに対して、本発明のマットの別の態様ではこのような問題を容易に解決できることを以下に説明する。
【0104】
図16(a)は、本発明のマットの別の態様を排ガス処理体に巻きつけた巻付体の一例を模式的に示す斜視図であり、
図16(b)は
図16(a)におけるP−P線断面図である。
図16(a)及び
図16(b)に示すように、本発明のマット400は、長手方向の距離が短い方の主面である第1の主面401が排ガス処理体620と接するように巻き付けられ、巻付体680を構成している。第1の主面401の長手方向の長さは、第2の主面402の長手方向の長さよりも短い。このような手順でマットを巻き付けることで、マットの厚さによって発生する内外周差を抑制することができ、排ガスシール性能の向上及び面圧の向上を図ることができる。従って、本発明のマットの別の態様を用いた巻付体は、排ガス処理体を安定的に保持し、排ガスの漏洩を抑制することができる。
【0105】
次に、本発明のマットを用いた排ガス浄化装置の製造方法について説明する。
図17は、本発明の排ガス浄化装置の製造方法の一例を模式的に示した斜視図である。
図17には、マット300を巻き付けた巻付体670を用いた場合を示している。
図17に示すように、排ガス処理体620の周囲に沿ってマット300を巻き付け、巻付体670とする。次に、この巻付体670をケーシング610に収容することで、本発明の排ガス浄化装置を製造する。
上記製造方法において、巻付体670を巻付体680に変更したものも、本発明の排ガス浄化装置の製造方法である。以降、排ガス浄化装置の製造方法及び排ガス浄化装置の説明において、主に巻付体670を用いて説明するが、巻付体680を用いてもよい。
【0106】
巻付体を製造する方法は既に説明したので省略する。
巻付体670をケーシング610に収容する方法としては、例えば、ケーシング610内部の所定の位置まで周囲にマット300が配設された排ガス処理体620(巻付体670)を圧入する圧入方式(スタッフィング方式)、ケーシングの内径を縮めるように外周側から圧縮するサイジング方式(スウェージング方式)、並びに、ケーシングを第1のケーシング及び第2のケーシングの部品に分離可能な形状としておき、巻付体670を第1のケーシング上に載置した後に第2のケーシングをかぶせて密封するクラムシェル方式等が挙げられる。
圧入方式によって巻付体をケーシングに収容する場合、ケーシングの内径(排ガス処理体を収容する部分の内径)は、上記巻付体の外径より若干小さくなっていることが望ましい。これらの工程を経て、本発明の排ガス浄化装置が製造される。
【0107】
続いて、本発明の排ガス浄化装置について説明する。
図18は、本発明の排ガス浄化装置の一例を模式的に示した断面図である。
図18に示すように、本発明の排ガス浄化装置600は、ケーシング610と、ケーシング610に収容された排ガス処理体620と、排ガス処理体620及びケーシング610の間に配設されたマット300とを備えている。
排ガス処理体620は、多数のセル625がセル壁626を隔てて長手方向に併設された柱状のものであり、セル625のいずれか一方の端部は、封止材628によって封止されている。なお、ケーシング610の端部には、必要に応じて、内燃機関から排出された排ガスを導入する導入管と、排ガス浄化装置を通過した排ガスが外部に排出される排出管とが接続されることとなる。
マット300として本発明のマットの一の態様を用いた場合には、既に説明したように、マットの長手方向の長さと排ガス処理体の周方向の長さとが完全に一致しない場合において、マットの接合部付近で発生する面圧のバラツキを分散させることができるため、排ガスの漏洩やマットの破壊を抑制することができる。
また、マット300として本発明のマットの別の態様を用いた場合には、既に説明したように、マットの厚さによって発生する内外周差を抑制することができ、排ガスシール性能の向上及び面圧の向上を図ることができる。
【0108】
上述した構成を有する排ガス浄化装置600を排ガスが通過する場合について、
図18を参照して以下に説明する。
図18に示すように、内燃機関から排出され、排ガス浄化装置600に流入した排ガス(
図18中、排ガスをGで示し、排ガスの流れを矢印で示す)は、排ガス処理体620(ハニカムフィルタ)の排ガス流入側端面620aに開口した一のセル625に流入し、セル625を隔てるセル壁626を通過する。この際、排ガス中のPMがセル壁626で捕集され、排ガスが浄化されることとなる。浄化された排ガスは、排ガス処理側端面620bに開口した他のセル625から流出し、外部に排出される。
排ガスが排ガス処理体を通過する際には、排ガス処理体を保持するマットにも排ガスが衝突することとなる。本発明の排ガス浄化装置600において、マット300は排ガス処理体620との寸法のずれによる面圧のバラツキを分散し、排ガスが通過可能となる隙間が生成されないよう構成されている。従って、排ガス処理体が安定的に保持され、排ガスの漏洩による排ガス浄化効率の低下が抑制される。従って、本発明の排ガス浄化装置においては、排ガス処理体を安定的に保持し、排ガス浄化性能の低下を抑制することができる。
【0109】
次に、本発明の排ガス浄化装置を構成するケーシング及び排ガス処理体(ハニカムフィルタ)について説明する。
なお、排ガス浄化装置を構成するマットの構成については、本発明のマットとしてすでに説明しているので省略する。
【0110】
本発明の排ガス浄化装置を構成するケーシングの材質は、耐熱性を有する金属であれば特に限定されず、具体的には、ステンレス、アルミニウム、鉄等の金属類が挙げられる。
【0111】
本発明の排ガス浄化装置を構成するケーシングの形状は、略円筒型形状の他、クラムシェル型形状や、断面形状が略楕円型形状の筒形、断面形状が略多角形形状の筒形等を好適に用いることができる。
【0112】
続いて、本発明の排ガス浄化装置を構成する排ガス処理体について説明する。
【0113】
図19は、本発明の排ガス浄化装置を構成する排ガス処理体の一例を模式的に示した斜視図である。
図19に示す排ガス処理体620は、多数のセル625がセル壁626を隔てて長手方向に併設される柱状のセラミック質からなるハニカム構造体である。また、セル625のいずれか一方の端部は、封止材628で封止されている。また、ハニカム構造体の外周には、ハニカム構造体の外周部を補強したり、形状を整えたり、ハニカム構造体の断熱性を向上させたりする目的で、外周コート層627が設けられている。
【0114】
セル625のいずれか一方の端部が封止されている場合、排ガス処理体620の一方の端部からみたときに、端部が封止されたセルと封止されていないセルとが交互に配置されていることが望ましい。
【0115】
排ガス処理体620を長手方向に垂直な方向に切断した断面形状は、特に限定されず、略円形、略楕円形でもよく、略三角形、略四角形、略五角形、略六角形等の略多角形であってもよい。
【0116】
排ガス処理体620を構成するセル625の断面形状は、略三角形、略四角形、略五角形、略六角形等の略多角形でもよく、また、略円形、略楕円形であってもよい。また、排ガス処理体620は、複数の断面形状のセルが組み合わされたものであってもよい。
【0117】
排ガス処理体620を構成する素材は特に限定されないが、炭化ケイ素質及び窒化ケイ素質等の非酸化物、並びに、コージェライト及びチタン酸アルミニウム等の酸化物を用いることができる。これらのうち、特に、炭化ケイ素質又は窒化ケイ素質等の非酸化物多孔質焼成体であることが望ましい。
これら多孔質焼成体は、脆性材料であるので、機械的な衝撃等により破壊されやすい。しかし、本発明の排ガス浄化装置では、排ガス処理体の側面の周囲にはマットが介在し、衝撃を吸収するので、機械的な衝撃や熱衝撃により排ガス処理体にクラック等が発生するのを防止することができる。特に、本発明のマットは既に説明したように、保持力に優れており、排ガス処理体を安定的に保持することができる。
【0118】
本発明の排ガス浄化装置を構成する排ガス処理体には、排ガスを浄化するための触媒を担持させてもよく、担持させる触媒としては、例えば、白金、パラジウム、ロジウム等の貴金属が望ましく、この中では、白金がより望ましい。また、その他の触媒として、例えば、カリウム、ナトリウム等のアルカリ金属、バリウム等のアルカリ土類金属を用いる事もできる。これらの触媒は、単独で用いても良いし、2種以上併用しても良い。これら触媒が担持されていると、PMを燃焼除去しやすくなり、有毒な排ガスの浄化も可能になる。
【0119】
本発明の排ガス浄化装置を構成する排ガス処理体としては、コージェライト等からなり、一体的に形成された一体型ハニカム構造体であってもよく、あるいは、炭化ケイ素等からなり、多数の貫通孔が隔壁を隔てて長手方向に並設された柱状のハニカム焼成体を主にセラミックを含むペーストを介して複数個結束してなる集合型ハニカム構造体であってもよい。
【0120】
本発明の排ガス浄化装置を構成する排ガス処理体は、セルに封止材が設けられずに、セルの端部が封止されていなくてもよい。この場合、排ガス処理体は、白金等の触媒を担持させることによって、排ガス中に含まれるCO、HC又はNOx等の有害なガス成分を浄化する触媒担体として機能する。
【0121】
以下に、本発明のシート状部材の裁断方法、マット、排ガス浄化装置の製造方法及び排ガス浄化装置の作用について説明する。
(1)本発明のシート状部材の裁断方法では、縦切断工程及び横切断工程において、シート状部材を圧縮することがないため、圧縮に伴いシート状部材の構造が破壊されることがない。そのため、物体を保持する能力の高いマットが得られる。
(2)本発明のシート状部材の裁断方法では、縦切断工程において、シート状部材をシート状部材の幅方向に対して平行な方向、かつ、シート状部材の厚さ方向に対して傾斜させた方向に完全に切断する。そのため、本発明のシート状部材の裁断方法を経て得られることとなる平面視略矩形形状のマットは、シート状部材の厚さ方向に対して傾斜した端面を有する。このようなマットは、所定の条件下において特徴的な効果を有する。
(3)本発明のマットの一の態様では、長手方向に平行な断面における断面形状が略平行四辺形となっている。そのため、本発明のマットの一の態様を所定の方法によって巻き付けた巻付体は、マットの長手方向の長さと排ガス処理体の周方向の長さとが完全に一致しない場合において、マットの接合部付近で発生する面圧のバラツキを分散させることができるため、排ガスの漏洩やマットの破壊を抑制することができる。
(4)本発明のマットの別の態様では、長手方向に平行な断面における断面形状が略台形となっている。そのため、本発明のマットの別の態様を所定の方法によって排ガス処理体に巻きつけた巻付体は、マットの厚さによって発生する内外周差を抑制することができ、排ガスシール性能の向上及び面圧の向上を図ることができる。
(5)本発明の排ガス浄化装置では、排ガス処理体とケーシングの間に保持シール材として本発明のシート状部材の裁断方法により得られた平面視略矩形形状のマットが配設されているため、排ガス処理体の保持能力に優れている。
(6)本発明の排ガス浄化装置の一の態様では、排ガス処理体とケーシングとの間に保持シール材として本発明のシート状部材の裁断方法により得られた平面視略矩形形状かつ長手方向に切断した断面図における断面形状が略平行四辺形であるマットが配設されている。そのため、排ガス処理体とマットとの寸法のずれによる面圧の偏りを分散することができ、排ガスの漏洩やマットの破壊といった問題を抑制することができる。
(7)本発明の排ガス浄化装置の別の態様では、排ガス処理体とケーシングとの間に保持シール材として本発明のシート状部材の裁断方法により得られた平面視略矩形形状かつ長手方向に切断した断面図における断面形状が略台形であるマットが配設されている。そのため、内外周差に伴うマットの隙間の発生を防止することができ、排ガス処理体の安定的な保持及び排ガスシール性能に優れる。
【0122】
(実施例)
以下、本発明をより具体的に開示した実施例を示す。なお、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。
【0123】
(製造例1)
(a)無機質繊維集合体製造工程
三菱樹脂(株)製のアルミナシリカ繊維337.5gを、その繊維長が0.1〜5.0mmとなるように、ミキサーを用いて湿式解繊した。
上記解繊繊維に水90Lを加え、攪拌機を用いて攪拌した。続いて、有機バインダとしてLx−852(日本ゼオン社製)を23.625gと、無機バインダとしてDISPERAL P2(サソールジャパン株式会社)を4.05g加え、さらに撹拌した。その後、凝集剤としてPERCOL47(BASF社製)0.5重量%溶液を112.5g加えて攪拌することにより、混合液を調製した。
次に、底面にろ過用のメッシュ(メッシュ寸法:30メッシュ)が形成された成形器に混合液を流し込んだ後、メッシュを介して混合液中の水を脱水することにより、長さ375mm×幅300mmの大きさの原料シートを作製した。
続いて、得られた原料シートを成形器から取り出し、プレス機を用いて厚さが16.5mmとなるように圧縮すると同時に、150℃で加熱乾燥させることにより、抄造シートからなる無機質繊維集合体を作製した。
製造した無機質繊維集合体は、坪量が3000g/m
2であり、厚さは16.5mmであった。
【0124】
(製造例2)
製造例1におけるアルミナシリカ繊維、有機バインダ、無機バインダ、凝集剤の添加量を1.5倍とし、坪量が4500g/m
2、厚さが24.8mmとなるよう変更したほかは、製造例1と同様の方法で製造例2に係る無機質繊維集合体を製造した。
【0125】
(実施例1)
製造例1で製造した無機質繊維集合体を、無機質繊維集合体を圧縮することなく、全長251mm×幅140mmであって、一端に、長さが40mm、幅が40mmの凸部が形成され、他端にこの凸部と嵌合する凹部が成形されるように裁断した。
裁断方法としては、製造例1で製造した無機質繊維集合体を搬送装置上に配置し、無機質繊維集合体の長手方向に対して平行な方向に移動させながら、最初に縦切断工程を行い、続いて横切断工程を行った。
縦切断工程では、無機繊維集合体の厚さ方向に対して30°傾斜させて板刃を接触させて無機質繊維集合体に縦切断部を形成した。縦切断工程は2回行い、縦切断部が無機質繊維集合体の長手方向に251mm離れた位置に形成されるようにした。なお、上記縦切断工程においては、無機質繊維集合体の幅方向における両端部10mmが切断されないようにした。
横切断工程は、縦切断工程を行った搬送装置の下流で行い、縦切断工程を終えた無機質繊維集合体に対して、無機質繊維集合体の幅方向における一方の端部から他方の端部に向かって10mm、150mm、290mmの位置にそれぞれ回転刃を配置して、それぞれの回転刃を無機質繊維集合体に接触させることで横切断部を形成した。実施例1のマットは、長手方向に切断した断面図における断面形状が略平行四辺形となっており、長手方向の長さが251mmであった。
以上の工程によって実施例1に係るマットを製造した。板刃及び回転刃は炭素鋼から構成されており、刃部の角度は両面ともに20°であった。
【0126】
(実施例2)
2回目の縦切断工程のタイミングをずらして、長手方向の全長を5mm短くしたほかは、実施例1と同様の手順で実施例2に係るマットを製造した。
【0127】
(実施例3)
2回目の縦切断工程のタイミングをずらして、長手方向の全長を5mm長くしたほかは、実施例1と同様の手順で実施例3に係るマットを製造した。
【0128】
(実施例4)
縦切断工程における無機質繊維集合体の厚さ方向に対する傾斜を15°に変更したほかは、実施例1と同様の手順で実施例4に係るマットを製造した。
【0129】
(実施例5)
縦切断工程における無機質繊維集合体の厚さ方向に対する傾斜を45°に変更したほかは、実施例1と同様の手順で実施例5に係るマットを製造した。
【0130】
(実施例6)
1回目の縦切断工程と2回目の縦切断工程とで、無機質繊維集合体の厚さ方向に対する板刃の傾斜方向を、無機質繊維集合体の厚さ方向を軸として反転させたほかは、実施例1と同様の手順で、実施例6に係るマットを製造した。実施例6に係るマットは、長手方向に切断した断面図における断面形状が略台形となっており、長手方向の長さ(長手方向の長さが短い側の長さ)は251mmであった。
【0131】
(実施例7)
縦切断工程における無機質繊維集合体の厚さ方向に対する傾斜を15°に変更したほかは、実施例6と同様の手順で実施例7に係るマットを製造した。
【0132】
(実施例8)
縦切断工程における無機質繊維集合体の厚さ方向に対する傾斜を45°に変更したほかは、実施例6と同様の手順で実施例8に係るマットを製造した。
【0133】
(実施例9)
製造例1に係る無機質繊維集合体に代わって製造例2に係る無機質繊維集合体を用いたほかは、実施例1と同様の手順で実施例9に係るマットを製造した。
【0134】
(比較例1)
厚さが18mmであるベニヤ板に対して、全長251mm×幅140mmであって、一端に、長さが40mm、幅が40mmの凸部が形成され、他端にこの凸部と嵌合する凹部が成形されるように厚さ1mmの板状の炭素鋼を埋め込んだ。続いて、板状金属が埋め込まれているベニヤ板の表面に厚さ35mmのN−145ゴムスポンジ((株)イノアックコーポレーション製)を添着した打ち抜き型を製造した。打ち抜き型から突出する板状金属の長さは30mmで、刃部の角度は、両面ともに20°であった。上記打ち抜き型を用いて製造例1に係る無機質繊維集合体を打ち抜くことで比較例1に係るマットを製造した。
比較例1によって製造されたマットの側面は全て、マットの厚み方向に対して平行な面(傾斜0°)となっていた。
【0135】
(比較例2)
全長を5mm短くして246mmとした打ち抜き型を用いたほかは、比較例1と同様の手順で比較例2に係るマットを製造した。
【0136】
(比較例3)
全長を5mm長くして256mmとした打ち抜き型を用いたほかは、比較例1と同様の手順で比較例3に係るマットを製造した。
【0137】
(比較例4)
比較例1で用いた打ち抜き型を用いて、製造例2に係る無機質繊維集合体を打ち抜くことで、比較例4に係るマットを製造した。
【0138】
(面圧の測定)
万能試験機で圧縮復元サイクル試験を行うため、実施例1、9及び比較例1、4に係るマットを試験機にセッティングし、室温状態で、1mm/minの速度でマットの嵩密度(GBD)が所定の値(0.2g/cm
3、0.25g/cm
3、0.3g/cm
3)となるまで圧縮し、このときの荷重を各GBDにおける面圧として測定した。
なお、評価サンプルの嵩密度(GBD:Gap Bulk Density)は、「嵩密度=評価サンプルの重量/(評価サンプルの面積×評価サンプルの厚さ)」で求められる値である。
【0139】
実施例1に係るマットの各GBD(0.2g/cm
3、0.25g/cm
3、0.3g/cm
3)における面圧を100%とした場合に、比較例1に係るマットの各GBDにおける面圧は、それぞれ、66%、82%、92%であった。
また、実施例9に係るマットの各GBDにおける面圧を100%とした場合に、比較例4に係るマットの各GBDにおける面圧は、それぞれ、48%、65%、83%であった。
このことから、無機質繊維集合体は裁断時に圧縮されることにより面圧が低下してしまうこと、及び、本発明のシート状部材の裁断方法を用いることで、面圧の高いマットを製造できることがわかった。
【0140】
(巻付体の評価)
マットを排ガス処理体に巻きつける際の巻き付け性や巻き付け後の隙間の有無を確認するため、実施例1〜8及び比較例1〜3に係るマットを、直径80mmの排ガス処理体に巻き付けて、内径100mmのケーシング内部に収容し、各マットの様子を観察した。
実施例1〜8に係るマットには巻き付け時にマットが完全に重なる箇所がなく、マットを巻き付ける際にマットの短側面同士が衝突して破損することもなかった。さらに、実施例1〜8に係るマットにおいては、ケーシングに収容した際にも、隙間がみられなかった。比較例1に係るマットは、マットを巻き付ける際にマットの短側面同士が衝突しそうであり、ケーシング内に収容した際には、内外周差に伴う隙間が確認できた。比較例2に係るマットは、長手方向の長さが短いため、巻き付け時にマットの短側面同士が衝突することはなかったが、ケーシング内に収容した際には、マット同士の接続部分に隙間がみられた。比較例3に係るマットは、マットを巻き付ける際に、マットの短側面同士が衝突した。さらに、ケーシング内に収容した際には、重なったマットの一部が収容に伴って潰れ、構造が破壊されている箇所がみられた。
【0141】
以上のことから、本発明のシート状部材の裁断方法を経ることにより製造されたマットは、面圧が高く保持性能に優れており、さらに、排ガス処理体を保持する保持シール材として用いた際には、排ガス処理体との寸法のずれに伴う面圧の偏りを抑制したり、内外周差に伴う隙間の発生を抑制したりすることができ、排ガスシール性能の低下及び排ガス処理体への巻き付け時のマットの破損を抑制することができることがわかった。