【実施例1】
【0013】
実施例1に係る管継手につき、
図1から
図5を参照して説明する。先ず
図1の符号1は、本発明が適用された管継手である。
【0014】
図1に示されるように、河川などを越えて農業用水等の流体を運ぶために複数の流体管を接続した流体管路100が用いられる。本実施例の流体管路100は、河川などを越えるように架設される例えばステンレス鋼あるいは鋼製の管橋部100aと、管橋部100aに伸縮または可撓管101等を介して接続される例えばステンレス鋼あるいは鋼製の接続部100bと、接続部100bに図示しない伸縮または可撓管101等を介して接続される地中に埋設されて延びる例えばダクタイル鋳鉄製の埋設部100cと、から主に構成されている。管橋部100aと接続部100bとは、伸縮または可撓管101により管橋部100aと接続部100bとにかかる温度変化等による伸縮等や屈曲や捻じれなどの相対移動を生じさせる外力を吸収するようになっている。埋設部100cにおいて、特に図示しないが、伸縮または可撓管101が任意の箇所に設けられている。前記した伸縮または可撓管101は、例えばベローズタイプ、ゴム製、金属製などからなる。尚、本実施例では流体管路内の流体は農業用水であるが、流体管の内部を流れる流体は必ずしも農業用水に限らず、例えば工業用水や上水、下水等の他、ガスやガスと液体との気液混合体であっても構わない。更に尚、流体管路は、必ずしも管橋部100a、接続部100b及び埋設部100cから構成されるものに限らない。
【0015】
本実施例における管継手1は、管橋部100aの橋台となるコンクリート製のアバットメント12に支持された接続部100bに対して埋設部100cを敷設するにあたって、埋設部100cの端部に配置される受口管部2と、接続部100bから延びる挿口管部3と、を接続する際に用いられる態様について説明する。この管継手1は、
図2に示されるように、受口管部2、挿口管部3、押輪5、ロッキング部材6及びシール部材4から主に構成されている。
【0016】
次に、受口管部2、挿口管部3、押輪5、ロッキング部材6及びシール部材4について説明する。
図2ないし
図4に示されるように、受口管部2は、流体管部2p、受口部2a及び受口部2aの開口端部に設けられるフランジ2bから主に構成される。また、受口管部2は、フランジ端面2cに連なり、漸次縮径するように形成されるテーパ面2d、テーパ面2dに連なり受口管部2の管軸B−Bに略平行に形成された円筒面2e、円筒面に連なり受口管部2の管軸B−Bに略垂直に形成された環状端面2f、環状端面2fに連なり受口管部2の管軸B−Bに略平行に形成された円筒面2g、円筒面2gに連なり受口管部2の管軸B−Bに略垂直に形成された環状端面2h、環状端面2hに連なり受口管部2の管軸B−Bに略平行に形成された内周面2jを備えている。また、フランジ2bには、複数のボルト孔21、21、…が設けられている。このボルト孔21は、ボルト8よりも若干大径に形成されている。さらに、受口管部2は、ダクタイル鋳鉄製であり、塗装やゴムライニングにより防錆あるいは絶縁処理されている。特に、受口管部2の円筒面2g及び環状端面2hは絶縁部材2kにより絶縁処理されている。絶縁部材2kを設けることにより、受口管部2と挿口管部3とが異なる種類の金属により形成される場合の電気的な接触を防ぎ、異種金属同士が水等の流体を介して接触することにより発生するガルバニック腐食を防止することができる。また、外力により挿口管部3が受口管部2の環状端面2h側に移動したときに、絶縁部材2kが緩衝部材として機能する。尚、絶縁部材2kは、樹脂またはゴム等を成形した絶縁体を圧入、接着するほか、ナイロンコーティング、ゴムライニング、プラスチック塗装、エポキシ樹脂粉体塗装等の絶縁処理により形成することができる。尚、ボルト8、ナット9は、鋼製であるが、ステンレス鋼であることが望ましい。
【0017】
次に、挿口管部3について、
図2ないし
図4を参照して説明する。挿口管部3は、管状部材で、開口端部3cを有し、受口管部2の受口部2aに挿入可能な挿口部3aと、挿口部3aの外周部に設けられた本発明の係合部としての凸部3bと、凸部3bよりも開口端部3cの反対側に伸びる流体管部3dを備えている。この挿口管部3は、鋼、ステンレス等の金属により形成されている。鋼の場合、表面が防錆あるいは絶縁処理されることは言うまでもない。尚、挿口管部3は、例えば直管状や曲管状の流体管の一端若しくは両端に形成されてもよいし、あるいは管路に接続される流体弁等の接続部材の一端若しくは両端に形成されてもよい。
【0018】
押輪5について、
図2ないし
図4を参照して説明する。押輪5は、一体形成された例えばダクタイル鋳鉄製の環状の部材から構成される。また、押輪5は、内周面5fに連なり漸次拡径するテーパ面5b、テーパ面5bに連なり管軸B−Bに略平行に形成された内周面5c、内周面5cに連なりフランジ端面2cに当接する端面5d、端面5dの反対側からナット9及び座金10により押圧される端面5eを備えている。押輪5の内周面5fの内径寸法は、凸部3bの外径寸法より大きく形成され、押輪5は、挿口部3a、凸部3b及び流体管部3dの外周に遊嵌できるようになっている。また、押輪5の延出部5aには、複数のボルト孔22、22、…が設けられている。このボルト孔22は、ボルト8よりも若干大径に形成されている。この場合、押輪5は、ナイロンコーティング、ゴムライニング、プラスチック塗装、エポキシ樹脂粉体塗装等の絶縁処理により形成することができる。
【0019】
次に、ロッキング部材6について
図2ないし
図4を参照して説明する。ロッキング部材6は、環状の部材であり、例えばステンレス鋼製で、周方向に複数に分割又は一体に構成されている。また、ロッキング部材6は、外周面6a、外周面6aに連なり漸次拡径するテーパ面6b、テーパ面6bに連なり管軸B−Bに略平行に形成された外周面6c、外周面6cに連なる逃げ面6d、逃げ面6dに連なりシール部材を押圧する押圧面6e、押圧面6eに連なる溝6f、溝6fに連なり凸部3bに当接する当り面6g及び当り面6gに連なる内周面6hを備えている。テーパ面6bは、少なくとも押輪5のテーパ面5bと後述の絶縁部材6jを介して接触している。尚、ロッキング部材6が、周方向に複数に分割して構成される場合には、凸部3bとロッキング部材6の当り面6gとの引掛り高さが所定の高さとなるように、凸部3bの外径寸法と内周面6hの内径寸法とを調整することによって、受口管部2と挿口管部3との離脱を防止できる引掛り高さとすることができる。一方、一体構成される場合には、挿口管部3の凸部3bを溶接する前に、押輪5及びロッキング部材6をルースフランジのように挿口管部3に予め挿入してから、凸部3bを溶接して組立てられる。また、挿入可能な場合には、挿口管部3の開口端部3cの反対側から押輪5及びロッキング部材6を凸部3bに向け挿入することで組立てもよい。さらに、凸部3bの外径寸法と略同一に形成して、剛性の高いロッキング部材6によって、凸部3bを保持できるようにしてもよい。
【0020】
図2及び
図4に示すように、ロッキング部材6の外周面6a、テーパ面6b及び外周面6cには、絶縁部材6jが設けられ、ロッキング部材6は、少なくとも押輪5のテーパ面5bに絶縁部材6jを介して接するように、押輪5に嵌合されている。尚、押輪5にロッキング部材6を嵌合する作業を容易にするために、絶縁部材6jに凸部6mが形成されている。絶縁部材6jに凸部6mが形成されていると、押輪5の内周面5cにロッキング部材6を嵌合する際に、絶縁部材6jは押輪5の内周面5cとほとんど接触せず、主に凸部6mが押輪5の内周面5cと接触して嵌合するので、絶縁部材6jの損傷を防止できる。逆に、凸部6mが形成されていないと、外周面6cに形成された絶縁部材6j全体が押輪5の内周面5cに接触しながら押込まれるので、絶縁部材6jが損傷してしまうことがあり、絶縁の健全性を維持できないことがある。尚、絶縁部材6jを設けることにより、受口管部2、挿口管部3、押輪5及びロッキング部材が異なる金属により形成される場合の電気的な接触を防ぎ、異種金属同士が水等の流体を介して接触することにより発生するガルバニック腐食を防止することができる。尚、絶縁部材6jは、樹脂またはゴム等を成形した絶縁体を圧入、接着するほか、ナイロンコーティング、ゴムライニング、プラスチック塗装、エポキシ樹脂粉体塗装等の絶縁処理により形成することができる。
【0021】
次に、シール部材4について説明する。
図2及び
図4に示されるように、シール部材4は、ゴムなどから形成されており、挿口管部3の挿口部3aの外径よりも若干小さい内径を有する環状を成している。シール部材4は、ロッキング部材6の押圧面6e、挿口部3aの外周面、受口部2aのテーパ面2d、円筒面2e、環状端面2fと囲まれる空間内に収納され、受口管部2と挿口管部3との間を密封する。
【0022】
以上の受口管部2、挿口管部3、押輪5、ロッキング部材6及びシール部材4を備えた管継手1の組立て手順について説明する。
図4に示すように、最初に押輪5を挿口管部3に挿入し、流体管部3dの外周に遊嵌させる。この際、押輪5の内周面5fの内径寸法は、凸部3bの外径寸法より大きく形成されているので、押輪5は挿口部3a側から流体管部3d側へ移動できる。
【0023】
次に、ロッキング部材が分割構造の場合には、ロッキング部材6を凸部3bよりも挿口管部3の流体管部3d側に配置して、ロッキング部材6を押輪5に嵌合することで、凸部3bの高さ寸法に関わらず、径方向外側よりロッキング部材6を挿口管部3の流体管部3d側に配置できる。一方、ロッキング部材が一体構造の場合には、前述したように、予め押輪5とロッキング部材6を凸部3bよりも流体管部3d側に配置しておく。
【0024】
次に、ロッキング部材6を押輪5に嵌合して一体化する。ロッキング部材6と押輪5とを一体化することで、分割構成されたロッキング部材6であっても、一体の押輪5によって保持されるので、剛性を高めることができ、管継手1の挿口管部3が受口管部2から離脱する方向の力を保持できる十分な剛性を発揮できるようになる。
【0025】
続いて、挿口部3aの外周面にシール部材4を外挿したのち、挿口管部3を受口管部2に挿入する。この際、必要に応じて、滑材を利用するようにしてもよい。
【0026】
次に、押輪5の延出部5aのボルト孔22及び受口管部2のフランジ2bのボルト孔21にボルト8を通し、座金10及びナット9により締付けることによって、受口管部2と挿口管部3とを管軸線方向に徐々に引き寄せると、シール部材の押圧面4aは、ロッキング部材6と押輪5とを一体化した部材の押圧面6eによって押圧され、受口管部2のテーパ面2dと挿口部3aの外周面の間に押込まれながら圧縮される。
【0027】
最後に、押輪5の端面5dと受口管部2のフランジ端面2cとが接触するまで締付けを行う。通常、ボルト8、ナット9の締付け管理は、締付けトルクを管理することによって行われる。しかし、実施例1の管継手1は、押輪5の端面5dとフランジ端面2cとが、接触すれば、締付けトルクが急激に大きくなるので、トルク管理による締め付けを行わなくても、締付けの感触で容易に締付け完了を判断できる。また、押輪5の端面5dとフランジ端面2cとが、接触していることを、目視で確認することもできる。尚、押輪5の端面5dとフランジ端面2cとを密着、一体化することで、押輪5の端面5dとフランジ端面2cとの相対変位を抑えることができるので、ボルトに発生する曲げ応力を小さくできるとともに、挿口管部3の受口管部2からの離脱を強力に防止できる。
【0028】
以下、実施例1の作用効果について、
図1−
図4を参照して説明する。地震、不等沈下等に起因する力又は地上を走る車両のからの振動荷重などの外力が、挿口管部3を受口管部2から離脱させる方向に作用すると、挿口管部3の凸部3bは、ロッキング部材6の当り面6gに接触し、ロッキング部材6のテーパ面6bが押輪5のテーパ面5bに当接して、外力は、押輪5の延出部5aと受口管部2のフランジ2bとを締結するボルト8、ナット9により保持される。さらに、挿口管部3を受口管部2から離脱させる方向に力が作用すると、ロッキング部材6のテーパ面6bが、押輪5のテーパ面5bに当接され、ロッキング部材6は、テーパ面5bより縮径される方向に力を受け、ロッキング部材6の内周面6hは縮径して、ロッキング部材6と凸部3bとの引掛り高さが大きくなり、管継手1の受口管部2と挿口管部3との離脱を強力に防止できる。
【0029】
尚、ロッキング部材6が、周方向に分割される構成の場合には、径方向外側から凸部3bに係合させることができるので、凸部3bとロッキング部材6の当り面6gとの引掛り高さが所定の高さとなるように、凸部3bの外径寸法と内周面6hの内径寸法とを調整することができ、延いては受口管部2と挿口管部3との離脱を防止することができる。さらに、ロッキング部材6のテーパ面6bが、押輪5のテーパ面5bに当接して、ロッキング部材6はテーパ面5bより縮径される方向に力が働くと、分割構成のロッキング部材6の内周面6hは、一体構成のロッキング部材6に比較して大きく縮径するので、ロッキング部材6と凸部3bとの引掛り高さがさらに大きくなるので、管継手1の受口管部2と挿口管部3との離脱をさらに強力に防止できる。
【0030】
一方、ロッキング部材を一体構成とすると剛性が高いので、ロッキング部材6のテーパ面6bが押輪5のテーパ面5bに当接すると、ロッキング部材6の内周面6hの押圧面6e側が縮径して、管継手1の受口管部2と挿口管部3との離脱をさらに防止する力が働く。
【0031】
さらに、押輪5は、環状一体に形成されるので剛性が高く、分割構成のロッキング部材6を剛性の高い押輪5に嵌合して一体化することによって、ロッキング部材6の剛性を高めることができ、管継手1の受口管部2と挿口管部3との離脱防止機能を向上できる。また、押輪5及びロッキング部材6がともに一体に構成される場合にはさらに剛性が高くなり、管継手1の受口管部2と挿口管部3との離脱を防止する機能をさらに高めることができる。
【0032】
また、押輪5とロッキング部材6とは、少なくともテーパ面5b、6bにて絶縁部材を介して接触するので、押輪5とロッキング部材6との間の絶縁部材に無理な力を加えることなく、ロッキング部材6に対し縮径方向に均等に力を加えることができ、延いては、絶縁性を確保しつつ、管継手1の受口管部2と挿口管部3との離脱を防止することができる。
【0033】
以上、本発明の実施例を図面により説明してきたが、具体的な構成はこれら実施例に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲における変更や追加があっても本発明に含まれる。
【0034】
例えば、前記実施例においては、
図2及び
図4に示すように、受口管部2は、ダクタイル鋳鉄製であり、挿口管部3は、鋼又はステンレス等の異種金属で構成されるため、電蝕防止のため、押輪5とロッキング部材6との間には絶縁部材6jを設けている。しかし、ロッキング部材6がシール部材4を押圧する押圧面6eには、絶縁部材を設けていないので、押圧面6eが受口管部2のフランジ端面2cに接触しないように、ロッキング部材6には、逃げ面6dが設けられている。
【0035】
これに対し、
図5(a)に示すように、ロッキング部材6に逃げ面を設ける代わりに、シール部材4をフランジ端面2cより突出するようにして、ロッキング部材6の押圧面6nと受口管部2のフランジ端面2cとの接触を防止して、電蝕を確実に防止することもできる。
【0036】
また、
図5(b)に示すように、絶縁部材6jをロッキング部材6が押輪5と接触する面だけでなく、ロッキング部材6が受口管部2のフランジ端面2c及びシール部材4と接触する押圧面6pにも設けることによって、さらに確実に電蝕を防止することもできる。
【0037】
尚、
図5(a)においては、ロッキング部材6は、挿口管部3が受口管部2から離脱する方向の動きを防止するように凸部3bを保持しているが、
図5(b)に示すように、ロッキング部材6の内周に環状の溝を設け、受口管部2と挿口管部3とが離脱する方向だけでなく、押込まれる方向の動きを防止するように凸部3bを保持させることもできる。
【0038】
図6は、さらに別の変形例を示すものである。これまでの実施例は、締結部材のボルト8として、T頭ボルトを使用していたが、これに代えて、絶縁ボルト8’を使用したものである。ここで、絶縁ボルト8’の頭部8’aを締付けるための工具を使用するためのスペースを確保するため、フランジ2’b、押輪5’の外径を大きくしている。
【0039】
前述のように、
図6の実施例においても、受口管部2’及び押輪5’の材質は、ダクタイル鋳鉄であり、一方、挿口3、絶縁ボルト8’の材質は、ステンレス鋼であり、さらに、ロッキング部材6の材質は、ステンレス鋼またはステンレス鋳鋼であるので、異種金属同士の直接接触あるいは水等の流体を介して電気的に接続して発生するガルバニック腐食を防止するため、絶縁処理する必要がある。
【0040】
そこで、ガルバニック腐食を防止するため、絶縁ボルト8’のボルト軸部8’bの外周面は、絶縁部材8’cにより絶縁被覆され、押輪5’の外周面、内周面、端面、ボルト孔22’は、絶縁部材5’gにより絶縁被覆され、ロッキング部材6の挿口3に面する側を除く面は絶縁部材6jにより絶縁被覆される。さらに、ボルト頭部8’aとフランジ2’bとの間及び押輪5’とナット9との間は、座金10bの両側に絶縁ワッシャー10aを配置して絶縁している。ここで、絶縁部材8’cは、スリーブ状で、PTFE、FET等のフッ素樹脂、ポリ塩化ビニル、エポキシ、ナイロン、合成ゴム等の材料からなり、絶縁部材5’g及び絶縁部材6jは、樹脂等を成形した絶縁体を圧入、接着するほか、ナイロンコーティング、ゴムライニング、プラスチック塗装、エポキシ樹脂粉体塗装等の絶縁処理を施してもよく、また、絶縁ワッシャー10aは、ガラスクロス入りエポキシ、ガラスクロス入り樹脂等の絶縁材料により形成することができる。尚、
図6においては、座金10bの両側に絶縁ワッシャー10aを配置しているが、絶縁ワッシャー10aの両側に座金10bを配置して絶縁してもよく、座金10bは、鋼、ステンレス鋼等の金属あるいは塩ビ、PP、PC等の樹脂から成るものでもよい。
【0041】
また、
図6の実施例においては、
図5(b)と同じように、受口管部2’と挿口管部3とが離脱する方向だけでなく、所定の位置以上に押込まれる方向の動きを防止するように凸部3bをロッキング部材6によって保持されるので、外力が作用しても、挿口管部3の開口端部3cが、受口管部2’の環状端面2’hに接触することを防止できる。したがって、受口管部2’は円筒面2’gのみを絶縁部材2’kにより絶縁処理されている。尚、受口管部2’の円筒面2’g及び環状端面2’hの両方が、絶縁部材2’kにより絶縁されてもよいことは言うまでもない。
【0042】
尚、
図6において、押輪5’とフランジ2’bとの間には、樹脂製のスペーサ23を設け、押輪5’とフランジ2’bとの擦れによる絶縁部材5’gの傷つき、はがれ等を防止している。ただし、傷つきの恐れがないようなときには、金属製のスペーサ23を使用してもよいし、スペーサ23を省いてもよい。
【0043】
また、受口管部2,2’、挿口管部3、押輪5,5’及びロッキング部材6は、異なる種類の金属によりそれぞれ形成されていたが、前記した全ての部材あるいは任意の複数の部材が同一種類の金属で構成されてもよく、同一種類の金属で構成された場合、必ずしも絶縁処理されなくてもよい。尚、前記した全ての部材あるいは任意の部材は、必ずしも金属製に限らず、樹脂からなるものでもよい。
【実施例2】
【0044】
実施例2に係る管継手につき、
図7から
図9を参照して説明する。実施例1に係る管継手においては、本発明の係合部としての凸部3bにロッキング部材6の溝6fが係合しているのに対し、実施例2に係る管継手においては、本発明の係合部としての凹部3’bにロッキング部材6’の凸部6’fが係合している点で相違している。しかし、その他の構成は実施例1の管継手と同じであり、重複する説明は省略する。
【0045】
図7に示すように、実施例2に係る管継手も、流体管部の受口管部2’に流体管部の挿口管部3’を挿入して密封接続する管継手1’であり、受口管部2’に形成されたフランジ2’bと、受口管部2’と挿口管部3’との間に介装されるシール部材4と、挿口管部3’の外周面に形成された本発明の係合部としての凹部3’bと、押輪5’と、フランジ2’bと押輪5’とをスペーサ23を介して締結する締結部材としての絶縁ボルト8’と、凹部3’bに係合可能なロッキング部材6’の凸部6’fを備えている。実施例1と同じく、受口管部2’と挿口管部3’とが離脱する方向に力が作用してロッキング部材6’と押輪5’とが当接したとき、ロッキング部材6’は、押輪5’より縮径される方向に力を受け、ロッキング部材6’は縮径して、ロッキング部材6’の凸部6’fと挿口管部3’の凹部3’bとの引掛り高さが大きくなり、管継手1’の受口管部2’と挿口管部3’との離脱を強力に防止できる。さらに、受口管部2’と挿口管部3’とが、所定の位置以上に押込まれる方向の動きを防止されるように、凹部3’bはロッキング部材6’の凸部6’fによって保持される。
【0046】
図7においても、受口管部2’及び押輪5’の材質は、ダクタイル鋳鉄であり、一方、挿口管部3’、絶縁ボルト8’のボルト頭部8a及びボルト軸部8bの材質は、ステンレス鋼であり、さらに、ロッキング部材6’の材質は、ステンレス鋼またはステンレス鋳鋼であるので、異種金属同士の直接接触あるいは水等の流体を介して電気的に接続して発生するガルバニック腐食を防止するため、同様に絶縁処理されている。
【0047】
また、実施例2における変形例として、
図8に示すように、受口管部2’の他端は、管継手の挿口管部25として形成されたものでもよい。挿口管部25は、一般に、受口にゴム輪、ロックリング、ロックリングホルダ等を組み込んだ耐震管継手及び管路に対応できるように、挿口管部25の端部付近に、離脱防止用の突起を設けることもできる。
【0048】
さらに、実施例2における他の変形例として、
図9に示すように、受口管部2’の他端は、可撓管側ケース31として形成し、伸縮可撓管継手30として構成することもできる。受口管部2’の他端に形成された可撓管側ケース31と座32とは、可撓管側ケース31の端部に形成されたバヨネット爪31aと、座32に形成されたバヨネット爪32aによりバヨネット係合されている。また、球面部材34が、可撓管側ケース31と挿口管部41との間に配置され、シール部材35により可撓管側ケース31と球面部材34との間が密封され、シール部材36により球面部材34と挿口管部41との間が密封されている。また、挿口管部41の外周には溝41aが設けられ、該溝41aには、可撓管側ケース31と挿口管部41との一定の伸縮を許容しつつ離脱を防止するため、ロッキング部材42が設けられている。さらに、伸縮可撓管継手30内に夾雑物等が侵入しないようにダストカバー33及びダストリング37が設けられている。
【0049】
このような伸縮可撓管継手30を設けることで、可撓管側ケース31と挿口管部41とは、密封性を保持しつつ、可撓管側ケース31の内部で挿口管部41は、軸方向に移動することができるとともに回転することができ、伸縮性と可撓性とを備えた管継手とすることができる。
【0050】
尚、実施例2のロッキング部材がシール部材を押圧する態様として、
図6に示すように、ロッキング部材6とシール部材4とが接触する面を、フランジ2’bの端面2’cから受口管部2’の外部に突出させてもよいし、
図7に示すように、ロッキング部材6’とシール部材4とが接触する面を、フランジ2’bの端面2’cから受口管部2’の内部に侵入させ、ロッキング部材6’の角部が受口管部2’のテーパ面2’dと接触するようにしてもよい。さらに、ロッキング部材6’の端面をフランジ2’bの端面2’cに接触させるようにすることもできる(
図5(b)参照)。また、ロッキング部材6の押圧面6nとフランジの端面2cとの間に、圧縮され変形したシール部材4の逃げ代となる空隙を形成してもよく(
図5(a)参照)、ロッキング部材6の押圧面をフランジの端面2cに接触させるようにして、前記した空隙を形成する切り欠き部を設けてもよい(
図5(b)参照)。また、ロッキング部材6の押圧面、スペーサ23の内周面、及び押輪5’の端面の内周部とで形成される空隙を、圧縮され変形したシール部材4の逃げ代となる空隙として利用してもよい(
図6参照)。
【0051】
また、実施例1及び2の管継手は、直管の管継手に適用する例を示したが、これに限らず、短管、異径管、弁の管接続部等を密封接続する管継手としても使用することができる。また、ロッキング部材は、一体又は分割にて構成したが、これに限らず、例えば周方向に一部切欠かれた略C字状に形成されてもよい。尚、押輪は、必ずしも一体環状の構造に限られず、2以上の所定数の分割構造であっても構わない。またロッキング部材は、必ずしも2分割構造に限られず、3以上の所定数の分割構造であっても構わない。