(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6386232
(24)【登録日】2018年8月17日
(45)【発行日】2018年9月5日
(54)【発明の名称】表面改質無機繊維及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
D06M 11/00 20060101AFI20180827BHJP
D01F 9/08 20060101ALI20180827BHJP
D06M 11/36 20060101ALI20180827BHJP
D06M 11/44 20060101ALI20180827BHJP
D06M 11/45 20060101ALI20180827BHJP
D06M 11/46 20060101ALI20180827BHJP
D06M 11/48 20060101ALI20180827BHJP
D06M 11/70 20060101ALI20180827BHJP
D06M 11/79 20060101ALI20180827BHJP
D06M 11/83 20060101ALI20180827BHJP
【FI】
D06M11/00
D01F9/08 A
D06M11/36
D06M11/44
D06M11/45
D06M11/46
D06M11/48
D06M11/70
D06M11/79
D06M11/83
【請求項の数】19
【全頁数】20
(21)【出願番号】特願2014-23507(P2014-23507)
(22)【出願日】2014年2月10日
(65)【公開番号】特開2015-151629(P2015-151629A)
(43)【公開日】2015年8月24日
【審査請求日】2016年8月4日
(73)【特許権者】
【識別番号】000110804
【氏名又は名称】ニチアス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002354
【氏名又は名称】特許業務法人平和国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】岩田 耕治
(72)【発明者】
【氏名】北原 英樹
(72)【発明者】
【氏名】持田 貴仁
(72)【発明者】
【氏名】米内山 賢
(72)【発明者】
【氏名】添田 一喜
(72)【発明者】
【氏名】三木 達郎
【審査官】
斎藤 克也
(56)【参考文献】
【文献】
国際公開第2012/132271(WO,A1)
【文献】
国際公開第2013/096471(WO,A1)
【文献】
特表2000−502151(JP,A)
【文献】
特開昭57−047972(JP,A)
【文献】
国際公開第2013/080458(WO,A1)
【文献】
特公昭57−033394(JP,B2)
【文献】
特開昭61−028072(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D01F 9/08 − 9/32
D06M 10/00 − 11/84
D06M 16/00
D06M 19/00 − 23/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
生体溶解性無機繊維の表面に、ケイ素及びその化合物、アルミニウム及びその化合物、カルシウム及びその化合物、マグネシウム及びその化合物、ジルコニウム及びその化合物、チタン及びその化合物、鉄及びその化合物、モリブデン及びその化合物、並びにタングステン及びその化合物から選択される1以上の改質剤が、付着している表面改質無機繊維(ただし、コロイダルシリカを含む溶液又は分散液を付着させたブランケットに含まれる表面改質無機繊維は除く)。
【請求項2】
前記生体溶解性無機繊維が以下の組成を有する請求項1記載の表面改質無機繊維。
SiO2とZrO2とAl2O3とTiO2との合計 50重量%〜82重量%
アルカリ金属酸化物とアルカリ土類金属酸化物との合計 18重量%〜50重量%
【請求項3】
前記生体溶解性無機繊維が、
シリカ、アルミナから選択される1以上と、
マグネシア、カルシア、ジルコニアから選択される1以上を、主成分として含む無機繊維である請求項1記載の表面改質無機繊維。
【請求項4】
前記生体溶解性無機繊維が、以下の組成を有する請求項3記載の表面改質無機繊維。
シリカ、アルミナから選択される1以上 0.3重量%〜90重量%
マグネシア、カルシア、ジルコニアから選択される1以上 10重量%〜60重量%
【請求項5】
前記生体溶解性無機繊維が、
シリカ、アルミナ、マグネシア、カルシアを、主成分として含む請求項1又は2記載の表面改質無機繊維。
【請求項6】
生体溶解性無機繊維の表面に、ケイ素及びその化合物、アルミニウム及びその化合物、カルシウム及びその化合物、マグネシウム及びその化合物、ジルコニウム及びその化合物、チタン及びその化合物、リン及びその化合物、鉄及びその化合物、モリブデン及びその化合物、並びにタングステン及びその化合物から選択される1以上の改質剤が、付着していて、
前記生体溶解性無機繊維が、
シリカ、マグネシア、ジルコニアを、主成分として含む表面改質無機繊維(ただし、コロイダルシリカを含む溶液又は分散液を付着させたブランケットに含まれる表面改質無機繊維は除く)。
【請求項7】
前記生体溶解性無機繊維が、
シリカ、アルミナ、及びカルシア又はマグネシアを、主成分として含む請求項1又は2記載の表面改質無機繊維。
【請求項8】
前記生体溶解性無機繊維が、
シリカ、マグネシアを、主成分として含む請求項1又は2記載の表面改質無機繊維。
【請求項9】
前記生体溶解性無機繊維が、
シリカ、カルシアを、主成分として含む請求項1又は2記載の表面改質無機繊維。
【請求項10】
前記生体溶解性無機繊維が、
シリカ、マグネシア、カルシアを、主成分として含む請求項1又は2記載の表面改質無機繊維。
【請求項11】
前記生体溶解性無機繊維が、
ロックウール及びガラス繊維ではない請求項1又は2記載の表面改質無機繊維。
【請求項12】
前記生体溶解性無機繊維の平均繊維長が、10mm〜100mmである請求項1〜11のいずれか記載の表面改質無機繊維。
【請求項13】
前記改質剤が、シリカ、アルミナ、カルシア、マグネシア、ジルコニア、チタニア、酸化鉄、酸化モリブデン、酸化タングステン、モリブデン、及びタングステンから選択される1以上のみからなる請求項1〜5及び請求項7〜12のいずれか記載の表面改質無機繊維。
【請求項14】
前記改質剤の量が、0.1質量%〜50質量%である請求項1〜13のいずれか記載の表面改質無機繊維。
【請求項15】
前記改質剤が、アルミナ、マグネシア又はその両方を含む請求項1〜14のいずれか記載の表面改質無機繊維。
【請求項16】
前記改質剤が、モリブデン、モリブデン化合物又はその両方を含む請求項1〜14のいずれか記載の表面改質無機繊維。
【請求項17】
請求項1〜16のいずれか記載の表面改質無機繊維の製造方法であって、
生体溶解性無機繊維を、前記改質剤を含む溶液又は分散液に浸し、
前記生体溶解性無機繊維の表面に、前記改質剤を付着させる表面改質無機繊維の製造方法。
【請求項18】
請求項1〜16のいずれか記載の表面改質無機繊維の製造方法であって、
溶融した無機繊維原料に、空気を吹き付けて、生体溶解性無機繊維を製造する方法において、
前記改質剤を、共に吹きつけて、前記生体溶解性無機繊維の表面に、前記改質剤を付着させる表面改質無機繊維の製造方法。
【請求項19】
請求項1〜16のいずれか記載の表面改質無機繊維を用いて製造された二次製品又は複合材料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、耐熱性に優れる表面改質無機繊維及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
アスベストは、軽量で扱いやすく且つ耐熱性に優れるため、例えば、耐熱性のシール材として使用されていた。しかしアスベストは人体に吸入されて肺に疾患を引き起こすため使用が禁止され、これに代わりにセラミック繊維等が使用されている。セラミック繊維等は、耐熱性がアスベストに匹敵する程高く、適切な取り扱いをすれば健康上の問題は無いと考えられているが、より安全性を求められる風潮がある。そこで、人体に吸入されても問題を起こさない又は起こしにくい生体溶解性無機繊維を目指して、様々な生体溶解性繊維が開発されている(例えば、特許文献1,2,3)。
【0003】
一方、無機繊維は、アスベストと同様に、様々なバインダーや添加物とともに、定形物、不定形物に二次加工されて、熱処理装置、工業窯炉や焼却炉等の炉における目地材、耐火タイル、断熱レンガ、鉄皮、モルタル耐火物等の隙間を埋める目地材、シール材、パッキング材、断熱材等として用いられている。使用の際は高温に晒されることが多く、耐熱性を有することが求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許公報第3753416号
【特許文献2】特表2005−514318
【特許文献3】特表2010−511105
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、耐熱性の高い生体溶解性無機繊維を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らが鋭意研究した結果、特定の改質剤で表面改質すると、加熱された際に繊維の表面結晶化が促進され、繊維の粘性流動、軟化、焼結等を抑制することで、耐熱性が改善されることを見出し本発明を完成された。
本発明によれば、以下の表面改質無機繊維等が提供される。
1.生体溶解性無機繊維の表面に、ケイ素及びその化合物、アルミニウム及びその化合物、カルシウム及びその化合物、マグネシウム及びその化合物、ジルコニウム及びその化合物、チタン及びその化合物、リン及びその化合物、鉄及びその化合物、シリカ及びその化合物、モリブデン及びその化合物、タングステン及びその化合物から選択される1以上の改質剤が、付着している表面改質無機繊維。
2.前記生体溶解性無機繊維が以下の組成を有する1記載の表面改質無機繊維。
SiO
2とZrO
2とAl
2O
3とTiO
2との合計 50重量%〜82重量%
アルカリ金属酸化物とアルカリ土類金属酸化物との合計 18重量%〜50重量%
3.前記生体溶解性無機繊維が、
シリカ、アルミナから選択される1以上と、
マグネシア、カルシア、ジルコニアから選択される1以上を、主成分として含む無機繊維である1記載の表面改質無機繊維。
4.前記生体溶解性無機繊維が、以下の組成を有する3記載の表面改質無機繊維。
シリカ、アルミナから選択される1以上 0.3重量%〜90重量%
マグネシア、カルシア、ジルコニアから選択される1以上 10重量%〜60重量%
5.前記生体溶解性無機繊維が、
シリカ、アルミナ、マグネシア、カルシアを、主成分として含む1又は2記載の表面改質無機繊維。
6.前記生体溶解性無機繊維が、
シリカ、マグネシア、ジルコニアを、主成分として含む1又は2記載の表面改質無機繊維。
7.前記生体溶解性無機繊維が、
シリカ、アルミナ、及びカルシア又はマグネシアを、主成分として含む1又は2記載の表面改質無機繊維。
8.前記生体溶解性無機繊維が、
シリカ、マグネシアを、主成分として含む1又は2記載の表面改質無機繊維。
9.前記生体溶解性無機繊維が、
シリカ、カルシアを、主成分として含む1又は2記載の表面改質無機繊維。
10.前記生体溶解性無機繊維が、
シリカ、マグネシア、カルシアを、主成分として含む1又は2記載の表面改質無機繊維。
11.前記生体溶解性無機繊維が、
ロックウール及びガラス繊維ではない1又は2記載の表面改質無機繊維。
12.前記生体溶解性無機繊維の平均繊維長が、10mm〜100mmである1〜11のいずれか記載の表面改質無機繊維。
13.前記改質剤が、シリカ、アルミナ、カルシア、マグネシア、ジルコニア、チタニア、酸化鉄、酸化リン、酸化モリブデン、酸化タングステン、モリブデン、及びタングステンから選択される1以上のみからなる1〜12のいずれか記載の表面改質無機繊維。
14.前記改質剤の量が、0.1質量%〜50質量%である1〜13のいずれか記載の表面改質無機繊維。
15.前記改質剤が、アルミナ、マグネシア又はその両方を含む1〜14のいずれか記載の表面改質無機繊維。
16.前記改質剤が、モリブデン、モリブデン化合物又はその両方を含む1〜14のいずれか記載の表面改質無機繊維。
17.1〜16のいずれか記載の表面改質無機繊維の製造方法であって、
生体溶解性無機繊維を、前記改質剤を含む溶液又は分散液に浸し、
前記生体溶解性無機繊維の表面に、前記改質剤を付着させる表面改質無機繊維の製造方法。
18.1〜16のいずれか記載の表面改質無機繊維の製造方法であって、
溶融した無機繊維原料に、空気を吹き付けて、生体溶解性無機繊維を製造する方法において、
前記改質剤を、共に吹きつけて、前記生体溶解性無機繊維の表面に、前記改質剤を付着させる表面改質無機繊維の製造方法。
19.1〜16のいずれか記載の表面改質無機繊維を用いて製造された二次製品又は複合材料。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、耐熱性の高い生体溶解性無機繊維を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明の表面改質無機繊維は、生体溶解性無機繊維の表面に、特定の改質剤が付着している。改質剤で、表面の一部又は全部が、被覆されている。改質剤で表面処理すると、耐熱性が改善され、例えば、加熱された際の繊維収縮を低下させたり、炉材との反応性を低下させたりする。
【0009】
本発明において生体溶解性とは、実施例に記載の測定方法でpH7.4又はpH4.5の生理食塩水に対する溶解速度定数が、10ng/cm
2・h以上であることである。
【0010】
本発明で用いる無機繊維は以下の組成を有することができる。
SiO
2とZrO
2とAl
2O
3とTiO
2との合計 50重量%〜82重量%
アルカリ金属酸化物とアルカリ土類金属酸化物との合計 18重量%〜50重量%
【0011】
また、本発明で用いる無機繊維は、シリカ、アルミナから選択される1以上と、マグネシア、カルシア、ジルコニアから選択される1以上を、主成分として含む繊維であってよい。
【0012】
また、本発明で用いる無機繊維は、以下の組成を有することができる。
シリカ、アルミナから選択される1以上 0.3重量%〜90重量%
マグネシア、カルシア、ジルコニアから選択される1以上 10重量%〜60重量%
【0013】
具体的には、以下の組成の無機繊維が例示できる。
(1)シリカ、アルミナ、マグネシア、カルシアを、主成分として含む無機繊維
(2)シリカ、アルミナ、カルシアを、主成分として含む無機繊維
(3)シリカ、アルミナ、マグネシアを、主成分として含む無機繊維
(4)シリカ、マグネシア、ジルコニアを、主成分として含む無機繊維
(5)シリカ、マグネシアを、主成分として含む無機繊維
(6)シリカ、カルシアを、主成分として含む無機繊維
(7)シリカ、マグネシア、カルシアを、主成分として含む無機繊維
(8)シリカ、マグネシア、ジルコニア、酸化モリブデンを、主成分として含む無機繊維
【0014】
主成分とは、無機繊維が含む全ての成分のうち含有量(重量%)の高い成分のことを意味する。
上記の繊維において、それぞれの主成分の合計が、繊維の総重量の85重量%以上、90重量%以上、95重量%以上、98重量%以上、99重量%以上、又は99.5重量%以上を占めてもよい。
例えば、「シリカ、アルミナ、マグネシア、カルシアを、主成分として含む無機繊維」では、シリカ、アルミナ、マグネシア、カルシアが、無機繊維が含む全ての成分のうち含有量(重量%)の高い1番目から4番目の成分である。そして、シリカ、アルミナ、マグネシア、カルシアの含有量の合計が、例えば、繊維の総重量の95重量%以上を占めてもよい。
【0015】
上記無機繊維(1),(2)は、例えば、
シリカの含有量が0.3重量%〜72重量%、
アルミナの含有量が17重量%〜90重量%、
マグネシアの含有量が0重量%〜38重量%、
カルシアの含有量が0.2重量%〜60重量%である。
【0016】
上記無機繊維(1)は、例えば、
シリカの含有量が0.4重量%〜62重量%、
アルミナの含有量が22重量%〜80重量%、
マグネシアの含有量が1重量%〜28重量%、
カルシアの含有量が0.3重量%〜50重量%である。
【0017】
上記無機繊維(1)は、例えば、
シリカの含有量が0.9重量%〜52重量%、
アルミナの含有量が32重量%〜70重量%、
マグネシアの含有量が3重量%〜18重量%、
カルシアの含有量が0.4重量%〜40重量%である。
【0018】
上記無機繊維(3)は、例えば、
シリカの含有量が12重量%〜51重量%、
アルミナの含有量が34重量%〜72重量%、
マグネシアの含有量が0.5重量%〜42重量%である。
【0019】
上記無機繊維(3)は、例えば、
シリカの含有量が17重量%〜41重量%、
アルミナの含有量が39重量%〜62重量%、
マグネシアの含有量が2重量%〜32重量%である。
【0020】
上記無機繊維(3)は、例えば、
シリカの含有量が27重量%〜31重量%、
アルミナの含有量が49重量%〜52重量%、
マグネシアの含有量が12重量%〜22重量%である。
【0021】
上記無機繊維(4)は、例えば、
シリカの含有量が35重量%〜75重量%、
マグネシアの含有量が15重量%〜55重量%、
ジルコニアの含有量が0.5重量%〜27重量%である。
【0022】
上記無機繊維(4)は、例えば、
シリカの含有量が45重量%〜65重量%、
マグネシアの含有量が25重量%〜45重量%、
ジルコニアの含有量が1重量%〜17重量%である。
【0023】
上記無機繊維(5)は、例えば、
シリカの含有量が50重量%〜90重量%、
マグネシアの含有量が10重量%〜50重量%である。
【0024】
上記無機繊維(5)は、例えば、
シリカの含有量が60重量%〜80重量%、
マグネシアの含有量が20重量%〜40重量%である。
【0025】
上記無機繊維(6)は、例えば、
シリカの含有量が20重量%〜85重量%、
カルシアの含有量が15重量%〜80重量%である。
【0026】
上記無機繊維(6)は、例えば、
シリカの含有量が50重量%〜85重量%、
カルシアの含有量が15重量%〜50重量%である。
【0027】
上記無機繊維(7)は、例えば、
シリカの含有量が20重量%〜90重量%、
マグネシアの含有量が5重量%〜40重量%、
カルシアの含有量が5重量%〜40重量%である。
【0028】
上記無機繊維(7)は、例えば、
シリカの含有量が50重量%〜90重量%、
マグネシアの含有量が5重量%〜25重量%、
カルシアの含有量が5重量%〜25重量%である。
【0029】
上記無機繊維(8)は、例えば、
シリカの含有量が35重量%〜71重量%、
マグネシアの含有量が14重量%〜51重量%、
ジルコニアの含有量が0.5重量%〜26重量%、
酸化モリブデンの含有量が0.5重量%〜23重量%である。
【0030】
上記無機繊維(8)は、例えば、
シリカの含有量が40重量%〜66重量%、
マグネシアの含有量が19重量%〜46重量%、
ジルコニアの含有量が1重量%〜21重量%、
酸化モリブデンの含有量が1重量%〜18重量%である。
【0031】
シリカの含有量を15重量%超、18重量%以上又は20重量%以上としてもよい。
アルカリ金属酸化物(Na
2O、Li
2O等)、酸化Moの各々は含まれても含まれなくてもよい。これらはそれぞれ又は合計で、5重量%以下、3重量%以下、2重量%以下、1重量%以下又は0.5重量%以下とすることができる。
【0032】
ZnO、B
2O
3、P
2O
5、SrO、BaO、Cr
2O
3、Fe
2O
3、MoO
3の各々は含まれても含まれなくてもよい。これらはそれぞれ5重量%以下、3重量%以下、2重量%以下、1重量%以下又は0.5重量%以下とすることができる。
【0033】
生体溶解性無機繊維は、ロックウール及びガラス繊維以外の無機繊維とすることができる。
【0034】
また、本発明で用いる生体溶解性無機繊維は通常短繊維であり、平均繊維長は10mm〜100mmである。長繊維や連続繊維ではないとすることができる。
【0035】
また、表面改質無機繊維は、好ましくは加熱処理されている。
加熱処理により、無機繊維を用いて製造する二次製品の収縮を抑制できる。
加熱処理により無機繊維は非晶質から結晶質へ変化するが、非晶質、結晶質のどちらの状態でもよく、非晶質、結晶質部分がそれぞれが混在している状態でもよい。
加熱温度は、例えば100℃以上、300℃以上、好ましくは、600℃以上、800℃以上、さらに好ましくは1000℃以上、1200℃以上、1300℃以上、1400℃以上でよく、600℃〜1400℃、さらに好ましくは、800℃〜1200℃、800℃〜1000℃である。
【0036】
本発明に用いる改質剤は、ケイ素及びその化合物、アルミニウム及びその化合物、カルシウム及びその化合物、マグネシウム及びその化合物、ジルコニウム及びその化合物、チタン及びその化合物、リン及びその化合物、鉄及びその化合物、シリカ及びその化合物、モリブデン及びその化合物、タングステン及びその化合物である。単独物質又は混合物として使用できる。
【0037】
ケイ素系改質剤として、ケイ素及びその化合物を用いることができ、例えばケイ素、コロイダルシリカ、ヒュームドシリカ等のシリカ、ケイ酸塩等を挙げられる。
【0038】
アルミニウム系改質剤として、アルミニウム及びその化合物を用いることができ、例えば、アルミニウム、アルミナゾル、ヒュームドアルミナ、アルミナ粉末等のアルミナ、塩化アルミニウム、硫酸アルミニウム、硝酸アルミニウム、乳酸アルミニウム等のアルミニウム塩、水酸化アルミニウム等を挙げられる。
【0039】
マグネシウム系改質剤として、マグネシウム及びその化合物を用いることができ、例えば、マグネシウム、マグネシア、塩化マグネシウム、硝酸マグネシウム等のマグネシウム塩、水酸化マグネシウム等を挙げられる。
【0040】
カルシウム系改質剤として、カルシウム及びその化合物を用いることができ、例えば、カルシウム、カルシア、塩化カルシウム、硫酸カルシウム、硝酸カルシウム等のカルシウム塩、水酸化カルシウム等を挙げられる。
【0041】
ジルコニウム系改質剤として、ジルコニウム及びその化合物を用いることができ、例えば、ジルコニウム、ジルコニア、塩化ジルコニウム、硫酸ジルコニウム、硝酸ジルコニウム等のジルコニウム塩、水酸化ジルコニウム、ジルコン酸塩等を挙げられる。
【0042】
チタン系改質剤として、チタン及びその化合物を用いることができ、例えば、チタニア、塩化チタン、硫酸チタン、硝酸チタン等のチタン塩、水酸化チタン、チタン酸塩等を挙げられる。
【0043】
鉄系改質剤として、鉄及びその化合物を用いることができ、例えば、鉄、酸化鉄、塩化鉄、硝酸鉄、硫酸鉄などの鉄塩等を挙げられる。
【0044】
リン系改質剤として、リン及びその化合物を用いることができ、例えば、リン、酸化リン、リン酸塩等を挙げられる。
【0045】
モリブデン系改質剤として、モリブデン及びその化合物を用いることができ、例えば、モリブデン、酸化モリブデン、二硫化モリブデン、二珪化モリブデン、モリブデン酸アンモニウム等のモリブデン酸塩等を挙げられる。
【0046】
タングステン系改質剤として、タングステン及びその化合物を用いることができ、例えば、タングステン、酸化タングステン、二硫化タングステン、タングステン酸塩等を挙げられる。
【0047】
好ましい改質剤は、アルミナ、アルミニウム塩、マグネシウム塩、モリブデン、タングステン、酸化モリブデンである。
アルミナ又はアルミニウム塩と、マグネシウム塩の組み合わせが好ましい。
モリブデン、タングステン、又は酸化モリブデンが好ましい。
【0048】
改質剤の無機繊維表面への付着量は、本発明の効果が得られれば特に限定されないが、通常、表面改質無機繊維100重量%に対し、0.1重量%〜50重量%である。好ましくは0.5重量%〜40重量%、より好ましくは0.8重量%〜30重量%、さらに好ましくは1重量%〜20重量%である。10重量%以下とすることもできる。
【0049】
本発明の表面改質無機繊維は、無機繊維を製造する際又は製造した後に、改質剤を付着させて製造できる。例えば、以下の方法を例示できる。
無機繊維からなる
フリースに、改質剤を含む溶液又は分散液を付着させる。例えば、溶液又は分散液を塗布、スプレーするか、溶液又は分散液に浸漬する。
溶融した原料に、空気を吹き付けて、製糸する際、改質剤を空気と共に吹き付けて、無機繊維の表面に、前記改質剤を付着させる。
また、繊維を、開繊し、改質剤を添加する。その後、成形する。
加熱してもよいし、しなくてもよい。
【0050】
本発明の表面改質無機繊維から得られる成形体(ブランケット、ボード等)は、表面改質しない無機繊維からなる成形体に比べて、加熱収縮率が小さい。
【0051】
成形体の加熱収縮率は、実施例記載の方法で測定したとき、各温度(1000℃、1400℃)において、好ましくは30%以下、20%以下、さらに好ましくは10%以下、最も好ましくは5%以下である。
【0052】
本発明の繊維から、様々な二次製品が得られる。例えば、バルク、ブランケット、ブロック、ロープ、ヤーン、紡織品、界面活性剤を塗布した繊維、ショット(未繊維化物)を低減または取り除いたショットレスバルクや、水等の溶媒を使用し製造するボード、モールド、ペーパー、フェルト、ウェットフェルト等の定形品が得られる。また、それら定形品をコロイド等で処理した定形品が得られる。また、水等の溶媒を使用し製造する不定形材料(マスチック、キャスター、コーティング材等)も得られる。また、これら定形品、不定形品と各種発熱体を組み合わせた構造体も得られる。
【0053】
本発明の繊維の具体的な用途として、熱処理装置、工業窯炉や焼却炉等の炉における目地材、耐火タイル、断熱レンガ、鉄皮、モルタル耐火物等の隙間を埋める目地材、シール材、パッキング材、クッション材、断熱材、耐火材、防火材、保温材、保護材、被覆材、ろ過材、フィルター材、絶縁材、目地材、充填材、補修材、耐熱材、不燃材、防音材、吸音材、摩擦材(例えばブレーキパット用添加材)、ガラス板・鋼板搬送用ロール、自動車触媒担体保持材、各種繊維強化複合材料(例えば繊維強化セメント、繊維強化プラスチック等の補強用繊維、耐熱材、耐火材の補強繊維、接着剤、コート材等の補強繊維)等が例示される。
【実施例】
【0054】
実施例1〜73,比較例1〜15
表1〜7に示す組成を有する繊維からなるフリースを製造し、表1〜7に示す改質剤を含む液に浸し、その後乾燥し、表中、付着率は表面改質無機繊維における改質剤の量(重量%)である。改質剤の量は、改質剤に含まれる各元素を酸化物換算して示した。
比較例では、改質剤を含む液に浸さなかった。
得られたフリースについて、以下の方法で加熱収縮率を評価した。結果を表1〜7に示す。
【0055】
フリースからサンプル(140mm×50mm×10mm)を切り出し、1000℃又は1400℃で8時間焼成した。
サンプル表面に白金ピンを2点以上打ち込み、その白金ピン間の距離を加熱前後で測定し、その寸法変化率を加熱収縮率とした。
【0056】
【表1】
【0057】
【表2】
【0058】
【表3】
【0059】
【表4】
【0060】
【表5】
【0061】
【表6】
【0062】
【表7】
【0063】
実施例74〜87,比較例16〜22
表8〜10に示す組成を有する繊維を、水中で開繊し、表8〜10に示す改質剤を所定量添加した。凝集剤でフロックを形成した後、脱水し、成形し、乾燥してサンプル(150mm×120mm×25mm)を得た。
比較例では、改質剤は添加しなかった。
得られたサンプルについて、実施例1と同様にして評価した。結果を表8〜10に示す。
【0064】
【表8】
【0065】
【表9】
【0066】
【表10】
【0067】
実施例88〜102,比較例23〜31
表11〜15に示す組成を有する繊維からなるフリースを製造した。その際、ノズルから、製繊と同時に、表11〜15に示す改質剤を含む液をスプレー噴霧した。
比較例では、改質剤は吹き付けなかった。
得られたフリースについて、実施例1と同様にして評価した。結果を表11〜15に示す。
【0068】
さらに、得られた繊維について、以下の方法で溶解速度定数を求めた。
繊維を、メンブレンフィルター上に置き、繊維上にマイクロポンプによりpH4.5及びpH7.5の生理食塩水を滴下させ、繊維、フィルターを通った濾液を容器内に貯めた。貯めた濾液を24時間経過後に取り出し、溶出成分をICP発光分析装置により定量した。測定元素は主要元素であるSi、Al、Mg、Caとした。繊維径を測定して単位表面積・単位時間当たりの溶出量である溶解速度定数k(単位:ng/cm
2・h)に換算した。
【0069】
【表11】
【0070】
【表12】
【0071】
【表13】
【0072】
【表14】
【0073】
【表15】
【産業上の利用可能性】
【0074】
本発明の無機繊維は、断熱材、またアスベストの代替品として、様々な用途に用いることができる。