(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
孔部を有する絶縁性基板の孔部に導電性充填材を充填して導電ビア部を形成する充填工程と、導電ビア部が形成された絶縁性基板の表面に導電材をメッキし、前記導電ビア部と通電可能な表面導電膜を形成するメッキ工程と、導電ビア部及び表面導電膜が形成された絶縁性基板を沸点150℃以上の溶媒中で100℃以上の温度で加熱処理して前記導電ビア部から表面に揮発性液状物を滲み出させる溶媒熱処理工程とを含む孔充填基板の製造方法。
孔部を有する絶縁性基板と、前記孔部に充填された導電性充填材で形成された導電ビア部と、前記絶縁性基板の上にメッキにより積層され、かつ前記導電ビア部と通電可能に形成された表面導電膜とを含む孔充填基板を沸点150℃以上の溶媒中に浸漬して100℃以上の温度で加熱処理することにより、前記導電ビア部から表面に揮発性液状物を滲み出させ、前記表面導電膜の加熱による変色又は滲みを抑制する方法。
【背景技術】
【0002】
従来から、電子基板は、機能部品の配置や配線回路の形成に使用されている。近年、電子機器又は部品の小型化、高機能化及び集積化のために、絶縁性基板に貫通孔(ビア)を形成し、貫通孔内に導電材料を設けて基板両面を電気的に導通させる用途が増加している。さらには、貫通孔内に導電材料(金属)で完全に充填することにより、基板の厚み方向の熱伝導率を向上する機能、いわゆるサーマルビア機能を持たせるニーズも増えている。
【0003】
基板両面を電気的に導通する方法としては、特開平5−308182号公報(特許文献1)には、絶縁性基板の貫通孔の内壁部に金属層としてAuメッキ層を形成する方法が開示されており、特開2006−203112号公報(特許文献2)には、絶縁性基板の所定位置に形成された略鼓状の透孔をメッキ金属で完全に充填する方法が開示されている。
【0004】
しかし、これらの方法では、メッキ金属を形成する前段階として、基板表面に導電膜を形成する必要があり、工程が複雑となり、経済性が低下する。また、メッキ金属で透孔を完全に充填するとメッキに長時間を要するため経済性はさらに低下する。
【0005】
また、貫通孔に導電性ペーストを充填する方法も提案されており、例えば、貫通孔に金属粉及び硬化性樹脂で構成されたペーストを充填し、硬化して導電性の充填ビア(導電材料が充填された貫通孔)を得る方法も知られている。しかし、この方法では、導電材料に樹脂成分が含まれているため、導電性が低く、耐熱性の低い樹脂成分を含むため、基板の耐熱性も制限される。
【0006】
そこで、特開2010−108917号公報(特許文献3)には、貫通孔に金属粉末、ガラス粉末及び有機バインダーで構成されたペーストを充填し、金属の焼結温度以上に加熱して金属粉末を焼結して導電性の充填ビアを得る方法が提案されている。この方法では、簡便性に優れるとともに、樹脂成分は焼成により蒸発、分解されるため、導電性、熱伝導性、及び耐熱性も高い。
【0007】
このような方法で得られたビア充填基板は、通常、充填ビア部に接続した表面導電膜を基板の表面に積層して電極又は配線パターンを形成する。前記表面導電膜は、充填ビアと導通(接続)を得るため、充填部とオーバーラップさせる必要があるが、形成工程の便宜上、充填部(開口部)を完全に覆う形態で基板表面に積層される。このようなパターンが形成されたビア充填基板は、通常、ハンダ付けなどの後工程において、例えば、300℃以上の高温に晒されるが、充填ビア部において、表面が変色したり、異物の滲み出し(通常、「滲み」又は「シミ」と称される)が発生することがあった。変色や滲みが発生すると、半田濡れ性やワイヤボンディング性が低下する虞があるとともに、導電ビア部や表面導電膜が腐食し易くなる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
[孔充填基板の製造方法]
本発明の孔充填基板の製造方法は、孔部を有する絶縁性基板の孔部に導電性充填材を充填して導電ビア部を形成する充填工程と、導電ビア部が形成された絶縁性基板の表面に導電材をメッキし、前記導電ビア部と通電可能な表面導電膜を形成するメッキ工程と、導電ビア部及び表面導電膜が形成された絶縁性基板を溶媒中で加熱処理する溶媒熱処理工程とを含む。本発明の製造方法は、充填工程で形成された導電ビア部及び絶縁性基板の表面を平滑に調整する整面工程をさらに含んでいてもよい。
【0018】
(充填工程)
充填工程において、絶縁性基板を構成する材質は、焼成工程を経るため、耐熱性が要求され、エンジニアリングプラスチックなどの有機材料であってもよいが、通常、無機材料(無機素材)である。
【0019】
無機材料としては、例えば、ガラス類(ソーダガラス、ホウケイ酸ガラス、クラウンガラス、バリウム含有ガラス、ストロンチウム含有ガラス、ホウ素含有ガラス、低アルカリガラス、無アルカリガラス、結晶化透明ガラス、シリカガラス、石英ガラス、耐熱ガラスなど)、セラミックス{金属酸化物(酸化珪素、石英、アルミナ又は酸化アルミニウム、ジルコニア、サファイア、フェライト、チタニア又は酸化チタン、酸化亜鉛、酸化ニオブ、ムライト、ベリリアなど)、金属窒化物(窒化アルミニウム、窒化ケイ素、窒化ホウ素、窒化炭素、窒化チタンなど)、金属炭化物(炭化ケイ素、炭化ホウ素、炭化チタン、炭化タングステンなど)、金属ホウ化物(ホウ化チタン、ホウ化ジルコニウムなど)、金属複酸化物[チタン酸金属塩(チタン酸バリウム、チタン酸ストロンチウム、チタン酸鉛、チタン酸ニオブ、チタン酸カルシウム、チタン酸マグネシウムなど)、ジルコン酸金属塩(ジルコン酸バリウム、ジルコン酸カルシウム、ジルコン酸鉛など)など]など}が挙げられる。これらのうち、耐熱性、放熱性、機械特性などの点から、アルミナ、窒化アルミニウム、窒化ケイ素、炭化ケイ素などのセラミックスが好ましい。
【0020】
絶縁性基板の表面は、酸化処理[表面酸化処理、例えば、放電処理(コロナ放電処理、グロー放電など)、酸処理(クロム酸処理など)、紫外線照射処理、焔処理など]、表面凹凸処理(溶剤処理、サンドブラスト処理など)などの表面処理がされていてもよい。
【0021】
絶縁性基板の表面粗さRaは、特に限定するものではないが、要求される配線寸法および配線精度により当業者の一般的な技術常識に基づいて選定すればよい。表面粗さRaは、例えば、0.5μm以下(例えば、0.01〜0.5μm)、好ましくは0.01〜0.1μm、さらに好ましくは0.01〜0.05μm程度である。なお、表面粗さRaは、JIS B0651−1976に準じて測定でき、詳細には、後述する実施例に記載の方法で測定できる。
【0022】
絶縁性基板の厚みは、用途に応じて適宜選択すればよく、例えば、0.01〜5mm、好ましくは0.05〜2mm、さらに好ましくは0.1〜1mm(特に0.2〜0.8mm)程度であってもよい。
【0023】
絶縁性基板には、導電ビア部を充填するための孔部が形成されている。前記孔部は、非貫通孔であってもよいが、通常、貫通孔である。
【0024】
孔部の基板面方向に平行な断面形状は、特に限定されず、多角形状(三角形状、四角形状や六角形状など)などであってもよいが、通常、円形状又は楕円形状であり、円形状が好ましい。
【0025】
孔部の平均孔径は、例えば、0.02〜1mm、好ましくは0.05〜0.8mm、さらに好ましくは0.1〜0.5mm程度である。
【0026】
導電性充填材としては、通常、導電性金属を含んでいる。導電性金属としては、例えば、遷移金属(例えば、チタンなどの周期表第4A族金属;バナジウム、ニオブなどの周期表第5A族金属;モリブデン、タングステンなどの周期表第6A族金属;周期表第7A族金属;ニッケル、鉄、コバルト、ロジウム、パラジウム、イリジウム、白金などの周期表第8族金属;銅、銀、金などの周期表第1B族金属など)、周期表第2B族金属、周期表第3B族金属(例えば、インジウム、アルミニウム、ガリウムなど)、周期表第4B族金属(例えば、スズ、鉛など)、周期表第5B族金属などが挙げられる。これらの導電性金属は、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。これらのうち、導電性が高い金属、例えば、パラジウム、白金などの周期表第8族金属、銅、銀、金などの周期表第1B族金属、アルミニウムなどの周期表第3B族金属が好ましく、銅、銀などの周期表第1B族金属が特に好ましい。
【0027】
導電性充填材は、前記金属を含んでいればよく、金属単独で形成された充填材であってもよいが、バインダー成分を含む導電性ペーストを用いて得られた充填材が好ましい。さらに、導電性ペーストを用いて得られた充填材は、硬化性樹脂を含むペーストを硬化した充填材であってもよいが、導電性や耐熱性が優れる上に、残存メッキ液などの液状物が滞留するボイドが生じやすく、本願発明の効果が発現し易い点から、導電性ペーストの焼成物で形成された充填材が好ましく、貫通孔を有する絶縁性基板の貫通孔に導電性ペーストを充填した後、焼成して導電ビア部を形成するのが特に好ましい。
【0028】
焼成前の導電性金属は、通常、粒状であり、平均粒径は、例えば、0.01〜50μm、好ましくは0.1〜20μm、さらに好ましくは0.2〜10μm程度である。粒径が小さすぎると、取り扱い性が低下し、大きすぎると、孔部への緊密な充填が困難となる。なお、特許文献3に記載されているように、異なる粒径の粒子を組み合わせてもよい。
【0029】
導電性ペーストの焼成物には、通常、基板との密着性を向上させるために、前記導電性金属に加えて、無機バインダーが含まれる。無機バインダーとしては、例えば、ホウケイ酸系ガラス、ホウケイ酸亜鉛系ガラス、ビスマス系ガラス、鉛系ガラスなどの低融点ガラスなどが挙げられる。これらのガラスは、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。これらの無機バインダーのうち、メッキ処理に対する耐久性などの点から、ホウケイ酸系ガラス又はホウケイ酸亜鉛系ガラスが好ましい。
【0030】
焼成前の導電性ペースト中の無機バインダーも、通常、粒状であり、平均粒径は、例えば、0.1〜10μm、好ましくは0.5〜8μm、さらに好ましくは1〜5μm程度である。
【0031】
無機バインダーの割合は、導電性金属100質量部に対して、例えば、0.1〜10質量部、好ましくは0.5〜8質量部、さらに好ましくは1〜6質量部程度である。無機バインダーの割合が多すぎると、導電性が低下したり、焼成時に収縮したり膨れなどが発生し、少なすぎると、基板に対する密着性が低下する。
【0032】
導電性ペーストには、焼結収縮を低減するために、金属の酸化物(例えば、酸化銅など)が含まれていてもよい。金属酸化物の割合は、導電性金属100質量部に対して、15質量部以下であってもよく、例えば、0.1〜15質量部、好ましくは0.5〜10質量部、さらに好ましくは1〜8質量部程度である。
【0033】
導電性ペーストには、導電性金属及び無機バインダー(必要に応じて金属酸化物)に加えて、有機バインダーや分散媒などを含んでいてもよい。
【0034】
有機バインダーとしては、例えば、熱可塑性樹脂(オレフィン系樹脂、ビニル系樹脂、アクリル系樹脂、スチレン系樹脂、ポリエーテル系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、セルロース誘導体など)、熱硬化性樹脂(熱硬化性アクリル系樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、不飽和ポリエステル系樹脂、ポリウレタン系樹脂など)などが挙げられる。これらの有機バインダーは、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。これらの有機バインダーのうち、アクリル系樹脂(ポリメチルメタクリレート、ポリブチルメタクリレートなど)、セルロース誘導体(ニトロセルロース、エチルセルロース、ブチルセルロース、酢酸セルロースなど)、ポリエーテル類(ポリオキシメチレンなど)、ポリビニル類(ポリブタジエン、ポリイソプレンなど)などが汎用され、熱分解性などの点から、ポリ(メタ)アクリル酸メチルやポリ(メタ)アクリル酸ブチルなどのポリ(メタ)アクリル酸C
1−10アルキルエステルが好ましい。
【0035】
有機バインダーの割合は、導電性金属100質量部に対して、例えば、0.1〜20質量部、好ましくは0.5〜15質量部、さらに好ましくは1〜10質量部程度である。
【0036】
分散媒としては、例えば、芳香族炭化水素(パラキシレンなど)、エステル類(乳酸エチルなど)、ケトン類(イソホロンなど)、アミド類(ジメチルホルムアミドなど)、脂肪族アルコール(オクタノール、デカノール、ジアセトンアルコールなど)、セロソルブ類(メチルセロソルブ、エチルセロソルブなど)、セロソルブアセテート類(エチルセロソルブアセテート、ブチルセロソルブアセテートなど)、カルビトール類(カルビトール、メチルカルビトール、エチルカルビトールなど)、カルビトールアセテート類(エチルカルビトールアセテート、ブチルカルビトールアセテート)、脂肪族多価アルコール類(エチレングリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ブタンジオール、トリエチレングリコール、グリセリンなど)、脂環族アルコール類[例えば、シクロヘキサノールなどのシクロアルカノール類;テルピネオール、ジヒドロテルピネオールなどのテルペンアルコール類(モノテルペンアルコールなど)など]、芳香族アルコール類(メタクレゾールなど)、芳香族カルボン酸エステル類(ジブチルフタレート、ジオクチルフタレートなど)、窒素含有複素環化合物(ジメチルイミダゾール、ジメチルイミダゾリジノンなど)などが挙げられる。これらの分散媒は、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。これらの分散媒のうち、ペーストの流動性や充填性など点から、テルピネオールなどの脂環族アルコールが好ましい。
【0037】
分散媒の割合は、導電性金属100質量部に対して、例えば、1〜20質量部、好ましくは2〜15質量部、さらに好ましくは3〜10質量部程度である。
【0038】
導電性ペーストの孔部への充填方法は、慣用の印刷方法、例えば、スクリーン印刷法、インクジェット印刷法、凹版印刷法(例えば、グラビア印刷法など)、オフセット印刷法、凹版オフセット印刷法、フレキソ印刷法などの印刷方法や、ロール圧入法、スギージ圧入法、プレス圧入法などの直接圧入法などが挙げられる。これらの方法のうち、スクリーン印刷法などが好ましい。
【0039】
充填後は、自然乾燥してもよいが、加熱して乾燥してもよい。加熱温度は、溶媒の種類に応じて選択でき、例えば、50〜300℃、好ましくは80〜250℃、さらに好ましくは100〜200℃程度である。加熱時間は、例えば、1〜60分、好ましくは3〜40分、さらに好ましくは5〜30分程度である。
【0040】
焼成温度は、導電性ペースト中の金属粉の焼結温度以上であればよい。焼成温度は、例えば、500℃以上であってもよく、例えば、500〜1500℃、好ましくは600〜1200℃、さらに好ましくは700〜1000℃程度である。焼成時間は、例えば、2分〜3時間、好ましくは5分〜2時間、さらに好ましくは10分〜1時間程度である。なお、焼成は、導電性金属粉は銀、金などの貴金属ではない場合、通常、不活性ガス(例えば、窒素ガス、アルゴンガス、ヘリウムガスなど)雰囲気中で行われるが、特許文献3に記載されているように、空気中での加熱と組み合わせてもよい。
【0041】
得られた導電ビア部は、絶縁性基板に比べて表面の平滑性は低く、メッキ液などの液状物が滞留し易いボイドや隙間が存在し、特に、導電ビア部が導電性ペーストの焼成物の場合には、有機バインダーの蒸発や分解などに起因したポーラス又はボイドの存在頻度が大きい。また、焼成時の充填ペーストの焼結収縮により充填材(焼成導体)と基板(孔部の壁面)との間に隙間が形成することもある。そのため、導電ビア部の表面粗さRaは5μm以下(特に3μm以下)であってもよく、例えば、1〜3μm程度であってもよい。導電ビア部表面又は内部にあるポーラス又はボイド部のサイズは、通常、孔径5μm以下(ポーラス部)が好ましいが、10μm以上の大孔径のサイズ(ボイド部)が存在してもよい。ポーラス又はボイド部の平均孔径は、例えば、0.1〜10μm、好ましくは0.2〜8μm、さらに好ましくは0.5〜5μm程度であり、最大孔径は、例えば、30μm以下、好ましくは20μm以下、さらに好ましくは10μm以下である。平均孔径及び最大孔径の測定方法は、例えば、電子顕微鏡により撮影した充填部の断面画像から測定できる。また、導電ビア部における空隙率(ボイドの体積割合)は、例えば、10〜50%、好ましくは20〜40%である。空隙率は充填に用いる導電性ペーストに含まれる無機成分の体積分率から、以下の式に基づいて算出できる。
【0042】
空隙率=[1−(導電性ペースト中の無機成分体積分率)]×100(%)。
【0043】
(整面工程)
本発明では、メッキ工程の前に、絶縁性基板の表面を前述の表面粗さRaに調整し、表面導電膜の密着性、平坦性を向上させると共に、表面導電膜の寸法精度を高めるため、通常、充填工程で形成された導電ビア部及び基板の表面を平滑に調整する整面工程が設けられる。
【0044】
表面を平滑に調整する方法としては、慣用の研磨方法、例えば、ラップ研磨、バフ研磨、円筒研磨、平面研磨、CMP研磨、グラインダーによる研磨、ハンドポリシャーなどを利用できるが、精密な研磨ができる点から、ラップ研磨が好ましい。
【0045】
なお、導電ビア部は、整面工程を経た後であっても、通常、製造過程における有機物の分解やペーストの焼結収縮などに由来するボイドや隙間に起因する凹部を有している。そのため、絶縁性基板の表面において、このボイドに起因した凹部にメッキ液が滞留し易い状態となっている。
【0046】
(メッキ工程)
メッキ工程では、導電ビア部が形成された絶縁性基板の表面に導電材をメッキし、前記導電ビア部と通電可能な表面導電膜を形成する。化学メッキとしては、例えば、電気メッキ法、無電解メッキ法などが挙げられる。
【0047】
電気メッキ法としては、特に限定されず、メッキ種に応じて従来のメッキ薬品メーカの推奨条件で行なえばよい。例えば、銅メッキの場合は、硫酸銅水溶液中で基板を陰極にし、銅版を陽極にして、直流を流し、陽極の銅を電気分解して金属銅イオンとし、電解液中を通って陰極、即ち基板の表面に付着させる。
【0048】
電気メッキの代わりに無電解メッキによりメッキ層を形成してもよい。無電解メッキの方法としては、特に限定されず、メッキ種に応じて慣用の条件で行なえばよい。
【0049】
導電材としては、前記充填工程の項で例示の導電性金属が含まれている。前記導電性金属のうち、チタンなどの周期表第4A族金属、ニッケル、パラジウム、白金などの周期表第8族金属、銅、銀、金などの周期表第1B族金属、アルミニウムなどの周期表第3B族金属が好ましく、金などの周期表第1B族金属が特に好ましい。
【0050】
メッキにより形成された表面導電膜は、電極や回路パターンを形成し、前記導電ビア部と通電可能となるように、導電ビア部が形成された絶縁性基板の表面において、前記導電ビア部を含む領域に形成されていればよいが、通常、導電性を向上させる点から、導電ビア部の全表面を覆う領域に形成されている。パターンの形成方法としては、慣用の方法によりレジスト膜を用いて形成してもよい。
【0051】
無電解メッキ法では、前記絶縁性基板の上に直接メッキ層を形成させる方法もあるが、電気メッキ法又は通常の無電解メッキ法では、メッキ工程の前にメッキ膜を析出させるためのメッキ用下地層形成工程をさらに含み、通常、導電ビア部が形成された絶縁性基板の表面にメッキ用下地層を形成した後、前記下地層の上にメッキ層(表面導電膜)を形成する。メッキ用下地層の金属種や形成方法は、特に限定されず、慣用の方法を利用できる。メッキ用下地層の形成方法は、例えば、スパッタリング、蒸着、化学的気相成長法、導電ペースト法などが挙げられる。これらの方法のうち、形成される表面導電膜の寸法精度や表面導電膜の基板への密着力の面から、スパッタリング法が好ましい。スパッタリング法でメッキ用下地層を形成する場合、セラミックス基板との密着力を高めるために、チタン、クロムなどの活性金属を使用してもよい。
【0052】
メッキ用下地層の総厚み(平均厚み)は、上記の機能を達成できれば特に制限がなく、通常0.01〜5μm程度の範囲であり、好ましくは0.02〜2.0μm、さらに好ましくは0.05〜1.0μm程度である。下地層の厚みが薄すぎると、導電性や密着性の付与に不十分であり、厚すぎると、コスト高となる。
【0053】
メッキ液などの揮発性液状物は、導電ビア部のポーラス、ボイド、隙間に起因する凹部に滞留しており、導電ビア部の表面に無電解メッキ又は電気メッキ層が形成された後、メッキ層により閉じ込められる。
【0054】
(溶媒熱処理工程)
溶媒熱処理工程では、導電ビア部及び表面導電膜が形成された絶縁性基板を溶媒中で加熱処理する。本発明では、溶媒熱処理工程を経ることにより、導電ビア部における表面導電膜の変色又は滲みの発生を抑制できるが、溶媒熱処理工程では、導電ビア部表面の凹部(又はこの凹部に起因するメッキ用下地層の凹部)と表面導電膜との界面に滞留している残存メッキ液が熱膨張により表面導電膜を通過して表面に滲み出すとともに、溶媒中に拡散又は溶解するためであると推定できる。
【0055】
溶媒は、残存メッキ液を大きく膨張させるために、高温で加熱できる点から、高沸点を有するのが好ましい。溶媒の大気圧下における沸点は100℃以上であればよいが、例えば、150℃以上(例えば、150〜330℃)、好ましくは200℃以上(例えば、200〜300℃)、さらに好ましくは220〜280℃程度であってもよい。沸点が低すぎると、高温で加熱するのが困難となり、変色又は滲みの発生を有効に抑制できない。
【0056】
このような溶媒としては、極性溶媒が好ましく、例えば、水、脂肪族アルコール[例えば、1−ブタノール(117℃)、1−ヘキサノール(158℃)、1−オクタノール(195℃)、1−デカノール(229℃)、1−ウンデカノール(243.5℃)、1−テトラデカノール(295℃)などのC
4−20アルコールなど]、脂肪族ジオール[例えば、エチレングリコール(198℃)、プロピレングリコール(188℃)、1,4−ブタンジオール(229℃)、1,5−ペンタンジオール(242℃)、2−エチル−1,3−ヘキサンジオール(244℃)などのC
2−10アルカンジオールなど]、オキシアルキレングリコール類[例えば、ジエチレングリコール(245℃)、トリエチレングリコール(179℃)、テトラエチレングリコール(327.3℃)、ポリエチレングリコールなど]、脂肪族ポリオール[例えば、グリセリン(290℃)などのアルカントリオールなど]、セロソルブ類[例えば、エチレングリコールモノメチルエーテル(124.5℃)、エチレングリコールモノエチルエーテル(135.1℃)、エチレングリコールモノブチルエーテル(171.2℃)、エチレングリコールモノt−ブチルエーテル(別名:2−t−ブトキシエタノール)(152℃)、エチレングリコールモノフェニルエーテル(244.7℃)、メチルカルビトール(194℃)、エチルカルビトール(200℃)、ブチルカルビトール(230.4℃)、トリエチレングリコールモノメチルエーテル(249℃)、トリエチレングリコールモノブチルエーテル(271℃)など]、セロソルブアセテート類[例えば、ブチルカルビトールアセテート(247℃)など]、芳香族ジオール[例えば、m−キシレン−4,6−ジオール(276〜279℃)、p−キシレン−2,6−ジオール(277〜280℃)、3,4−トルエンジオール(251℃)、3,4−キシレノール(225℃)など]、ケトン類[例えば、アセトフェノン(202℃)、ウンデカノン(228.5℃)など]、カルボン酸[例えば、ヘキサン酸(205.8℃)など]、アミン類[例えば、イソインドリン(213℃)、エチルアニリン(216℃)、イソプロピルアニリン(226℃)、イソペンチルアニリン(254.5℃)、o−アミノベンゼンチオール(234℃)など]などが挙げられる(括弧内の温度は沸点を示す)。これらの溶媒は、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。
【0057】
これらの溶媒のうち、メッキに使用される成分との相溶性の点から極性溶媒、例えば、プロトン性溶媒、特に、ヒドロキシル基を有する化合物、例えば、脂肪族ジオール類、セロソルブ類などが特に好ましい。無電解メッキ又は電気メッキにおいても、メッキに使用される物質は水溶性であるため、溶媒熱処理に極性溶媒を使用すると、加熱により追い出される物質は容易に溶媒中に拡散・溶解し、基板表面への沈積が抑制される。なお、非水溶性溶媒であっても攪拌などの手段を利用して基板表面への沈積を抑制できるが、極性溶媒を用いることにより容易に抑制できる。
【0058】
前記絶縁性基板は、予め加熱した溶媒中に浸漬してもよいが、取り扱い性などの点から、通常、未加熱の溶媒中に投入した後、加熱処理される。
【0059】
加熱温度としては、加熱時間などに応じて適宜選択できるが、主要な液状成分として水を含む残存メッキ液が熱膨張(気化)してメッキ層を通過し易い点から、水の沸点である100℃以上に加熱するのが好ましい。さらに、メッキ層の通過効率及び残存メッキ液の溶媒中への拡散又は溶解速度を向上できる点から、加熱温度は高い方がより好ましい。加熱温度が低すぎると、残存メッキ液の膨張の程度が小さくなり、メッキ層を通過して溶媒中に拡散又は溶解するのが困難となる。具体的には、加熱温度は120℃以上、好ましくは150℃以上(例えば、160℃以上)、さらに好ましくは180℃以上(特に200℃以上)であってもよく、例えば、150〜500℃(例えば、180〜500℃)、好ましくは200〜450℃、さらに好ましくは220〜400℃(特に250〜350℃)程度であってもよい。さらに、効率よく残存メッキ液を溶媒中に拡散又は溶解できる点から、溶媒の沸点(又は沸点近傍)で加熱することにより、溶媒を沸騰(煮沸)させてもよい。開放系では、通常、加熱手段の設定温度を沸点以上の温度に調整することにより容易に溶媒を沸騰できる。
【0060】
また、溶媒熱処理は、密閉系(圧力容器中)において、高温高圧の状態で行ってもよい。溶媒を入れた密閉容器を加熱することで高温高圧の状態が得られると、溶媒の沸点(大気圧下での沸点)を超える温度で加熱することができ、溶媒の選択肢及び加熱温度の選択肢を広げることができる。
【0061】
加熱方法としては、特に限定されず、ホットプレートなどのヒーターなどを用いて加熱してもよい。さらに、メッキ層を通過した残存メッキ液を効率的に溶媒中に拡散又は溶解させるために、溶媒を攪拌したり、沸騰させてもよく、例えば、溶媒を還流下で沸騰させてもよい。還流下で沸騰させると、簡便な方法で、効率的に残存メッキ液を溶媒中に拡散又は溶解できる。
【0062】
加熱処理した孔充填基板は、慣用の方法で洗浄及び乾燥してもよく、例えば、水で洗浄した後、乾燥器を用いて加熱乾燥してもよい。
【0063】
本発明の製造方法で得られた孔充填基板は、メッキにより表面導電膜が形成されているにも拘わらず、変色や滲みがなく、耐熱性及び信頼性の高い基板である。
【実施例】
【0064】
以下に、実施例に基づいて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。なお、溶媒処理後外観及び耐熱試験の評価方法を以下に示す。
【0065】
[溶媒熱処理後外観]
乾燥後のビア充填基板のAuメッキ層表面を顕微鏡により観察し、シミ、変色の有無を確認した。
【0066】
○:シミ、変色がない
△:少しシミ又は変色箇所がある
×:著しくシミ又は変色がある。
【0067】
[耐熱試験]
乾燥後のビア充填基板を、350℃のホットプレート上に載置し、ホットプレートを5分間加熱した。加熱後のビア充填基板のAuメッキ層表面を顕微鏡により観察し、シミ、変色の有無を確認した。
【0068】
○:シミ、変色がない
△:少しシミ又は変色箇所がある
×:著しくシミ又は変色がある。
【0069】
実施例1〜8
(充填工程)
孔径φ0.3mmの貫通孔を多数有する2インチ×2インチ×0.635mm厚みの99.5%のアルミナ基板に、ビア充填用銅導体ペースト(特許文献3の実施例1に記載の方法で調整したペースト)を用いてスクリーン印刷により貫通孔を充填し、120℃の送風乾燥機で20分間乾燥した。充填した基板を900℃の窒素雰囲気中で60分間焼成し、銅導体ビア充填基板を作製した。作製したビア充填基板を、ラップ研磨により厚み0.4mmt、表面粗さRa0.02μm未満に調整した。ラップ研磨により、焼成後に微細な凹凸を有する導電ビア部(銅ペースト充填部)を基板表面と同一平面に調整できる(充填部の表面と絶縁基板表面との段差(凹凸量)が±2μm以下)と共に、基板表面が微細パターン形成に適する高い表面平滑性が得られた(Ra<0.02μm)。導電ビア部の平均孔径は、5μm、最大孔径は15μm、空隙率は38%であった。
【0070】
(メッキ工程)
研磨後の基板の両面全面にスパッタリング法により100nmのTi膜、150nmのPd膜をこの順序で積層し、金属下地膜を形成した。さらに、電気メッキ(メッキ液:シアンタイプAuメッキ液、Au濃度6g/L、液温60〜80℃)により両面に厚み5μmのAuメッキ膜を形成した。
【0071】
(溶媒熱処理工程)
500mlのセパラブルフラスコに、表1に示す溶媒を350ml入れ、メッキ工程で得られたビア充填基板を浸漬し、還流冷却管をセットした上で350℃に設定したホットプレート上に30分間煮沸還流した。すなわち、溶媒熱処理工程の加熱温度は、表1に示す溶媒の沸点(又は沸点近傍)である。その後、溶媒から基板を取り出して、蒸留水により洗浄した後、送風乾燥機を用いて125℃で30分間乾燥した。
【0072】
実施例9
実施例1〜8と同じ方法にて充填工程及びメッキ工程を経て、表面導電膜(Auメッキ膜)を有するビア充填基板を得た。得られたビア充填基板を、500mlのビーカーに入れた350mlのn−ブタノールに浸漬した後、ビーカーをオートクレーブに入れ、密閉状態下で250℃、30分間加熱した。その後、温度を下げてからオートクレーブから基板を取り出して、蒸留水により洗浄した後、送風乾燥機を用いて125℃で30分間乾燥した。
【0073】
実施例10及び11
実施例10は、メッキ工程において電気メッキの代わりに、以下の無電解メッキにより表面導電膜を形成した以外は、実施例2と同じ方法で表面導電膜を有するビア充填基板を得た。実施例11は、メッキ工程において電気メッキの代わりに、以下の無電解メッキにより表面導電膜を形成した以外は、実施例5と同じ方法で表面導電膜を有するビア充填基板を得た。
【0074】
(メッキ工程)
研磨後の基板の両面全面にスパッタリング法により100nmのTi膜、150nmのPd膜をこの順序で積層し、金属下地膜を形成した。次に、この基板を80℃の無電解ニッケルメッキ液(上村工業(株)製「NPR−4」)に30分間浸漬し、厚み6μmのNiメッキ膜を形成した。この後、無電解Auメッキにより厚み0.2μmのAuメッキ膜をNiメッキ膜の表面に形成した。
【0075】
比較例1
実施例1〜8と同じ方法にて充填工程及びメッキ工程を経て、表面導電膜(Auメッキ膜)を有するビア充填基板を得たが、溶媒熱処理は実施しなかった。
【0076】
実施例1〜11で得られたビア充填基板について、溶媒処理後外観及び耐熱試験を評価した結果を表1に示す。比較例1については、耐熱試験後の外観を評価した。
【0077】
【表1】
【0078】
表1の結果から明らかなように、溶媒熱処理を実施しない比較例1と比べ、実施例のビア充填基板は耐熱試験後に変色、シミが全くないか、又は少しある程度であった。溶媒が非水溶性の実施例1及び4の場合は、溶媒処理後のAuメッキ膜表面に少しの変色が見られた。変色の理由は、加熱により排出された残留物が速やかに溶媒中に溶解できず、Auメッキ膜の表面を付着しているためであると考えられる。実施例1及び4で得られたビア充填基板は、耐熱試験後にも同じ部位に少しの変色が存在している。また、溶媒の沸点の低い実施例6〜8(200℃未満)は、溶媒熱処理後にはシミ、変色はなかったが、耐熱試験後に少しシミ、変色が発生した。耐熱試験後にシミ、変色が発生した理由は、溶媒の沸点が低いため溶媒熱処理温度が溶媒の沸点に拘束され、メッキ膜に閉じこまれた揮発成分が完全に排出されていなかったためであると考えられる。溶媒の沸点が200℃以上であり、かつ水溶性溶媒である実施例2,3及び5は、耐熱試験後もシミ、変色の発生はなかった。また、実施例9では、実施例7で使用された沸点117℃のn−ブタノールを用いて、オートクレーブで250℃まで加熱することにより、良好な結果が得られた。これは、溶媒を入れた密閉容器内が高温高圧となることで、加熱温度が250℃と高くなったため、実施例7において排出できなかったメッキ残液が排出できたためであると考えられる。また、実施例10,11は表面導電膜(Auメッキ膜)を無電解メッキにより形成したが、電気メッキにより形成した実施例2,5と同等の結果が得られた。
【0079】
一方、比較例1で得られたビア充填基板は、変色、シミが観察できた。
【0080】
図1に、実施例2で得られたビア充填基板の導電ビア部の表面の顕微鏡写真を示し、
図2に、比較例1で得られたビア充填基板の導電ビア部の表面の顕微鏡写真を示す。写真中の円形部が導電ビア部であり、実施例2では、変色、シミは発生していないが、比較例1では、変色、シミ(写真中の黒色部分)が観察された。