特許第6386243号(P6386243)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6386243
(24)【登録日】2018年8月17日
(45)【発行日】2018年9月5日
(54)【発明の名称】湿分分離加熱器
(51)【国際特許分類】
   F22G 3/00 20060101AFI20180827BHJP
   F01K 7/22 20060101ALI20180827BHJP
   G21D 1/00 20060101ALI20180827BHJP
【FI】
   F22G3/00 B
   F01K7/22 D
   G21D1/00 Z
【請求項の数】6
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2014-65477(P2014-65477)
(22)【出願日】2014年3月27日
(65)【公開番号】特開2015-187436(P2015-187436A)
(43)【公開日】2015年10月29日
【審査請求日】2016年11月28日
(73)【特許権者】
【識別番号】514030104
【氏名又は名称】三菱日立パワーシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000785
【氏名又は名称】誠真IP特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】藤田 一作
(72)【発明者】
【氏名】平岡 賢
【審査官】 藤原 弘
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許第03593500(US,A)
【文献】 特開昭50−004401(JP,A)
【文献】 特開2002−122303(JP,A)
【文献】 特開2002−161714(JP,A)
【文献】 特開昭54−138906(JP,A)
【文献】 特開昭54−057001(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F22G 3/00
F01K 7/22
G21D 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水平方向に延びて両端部が閉塞された筒状のケーシングと、
前記両端部のうちの少なくとも一方側の端部に設けられた流入口であって、蒸気を流入させるための流入口と、
前記ケーシング内に設けられ、前記流入口から流入させた蒸気を該ケーシングの軸方向に通流するマニホールド室と、
前記ケーシング内に設けられ、前記マニホールド室に沿って前記ケーシングの長手方向に配置されて蒸気の湿分を除去するセパレータと、
前記マニホールド室を形成する仕切板であって、前記ケーシングの軸方向に所定間隔を有して設けられた複数のスリットを有し、前記マニホールド室に流入した蒸気が前記スリットを介して前記セパレータ側に流出するように構成される仕切板と、
前記ケーシング内に設けられ、前記セパレータから流出する蒸気の下流側に配置される加熱管群と、
前記ケーシングの軸方向に所定間隔を有して複数設けられた排出口であって、前記加熱管群を通過した蒸気を排出させるための排出口と、を備え、
前記加熱管群は、側面視において多角形状に形成され、該加熱管群の長手方向片が前記ケーシングの軸方向に沿って延びるとともに、前記加熱管群の短手方向片が垂直方向に延びて立設しているとともに、
前記仕切板、前記セパレータ、及び前記加熱管群は、前記ケーシングの軸方向視において水平方向に並んで配置され、
前記加熱管群の垂直方向の高さは、前記セパレータの垂直方向の高さよりも大きい、
ことを特徴とする湿分分離加熱器。
【請求項2】
前記セパレータは、板状に形成されて上下方向に延び、前記加熱管群の側面に対向して配置されている
ことを特徴とする請求項1に記載の湿分分離加熱器。
【請求項3】
前記セパレータは、蒸気が流入する側の側面の一部を覆って前記セパレータに流入する前記蒸気の流入量を調整する流入調整部を含む
ことを特徴とする請求項2に記載の湿分分離加熱器。
【請求項4】
前記流入調整部は、上下方向に延びて前記セパレータの前記側面を覆う複数の流入調整部材と、複数の前記流入調整部材を支持する枠体部と、を含み、
複数の前記流入調整部材は、前記ケーシングの軸方向に沿って通流する蒸気の上流側から下流側に向かって隣接する流入調整部材の設置間隔が狭くなるように配置されている
ことを特徴とする請求項3に記載の湿分分離加熱器。
【請求項5】
前記流入調整部材には、前記ケーシングの軸方向に沿って通流する蒸気の湿分を除去可能な湿分除去手段が設けられている
ことを特徴とする請求項4に記載の湿分分離加熱器。
【請求項6】
前記湿分除去手段は、前記マニホールド室から流出した蒸気を渦状に流す湿分除去流路を含む
ことを特徴とする請求項5に記載の湿分分離加熱器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、蒸気から湿分を除去する湿分分離加熱器に関するものであり、特に、原子力発電プラントなどに適用される湿分分離加熱器に係る。
【背景技術】
【0002】
従来の原子力発電プラントなどに適用される湿分分離加熱器は、例えば、特許文献1に記載されているように、水平方向に延びる円筒状のケーシング内の幅方向両側に設けられて、ケーシングの長手方向に延びる一対のマニホールドと、各マニホールドの下方に配置され、ケーシングの長手方向に延びるとともに上下方向に立設された一対のセパレータと、一対のセパレータ間に形成され、一対のセパレータを通過した蒸気が集まる蒸気集合部と、蒸気集合部の上方に配置され、セパレータを通過した蒸気を加熱する加熱器と、を備えている。
【0003】
この従来の湿分分離加熱器は、高圧タービンからの湿り蒸気がケーシングに流入すると、この湿り蒸気は、マニホールド内を流れるとともに、マニホールドに設けられたスリットを介してセパレータ側へ流出する。セパレータ側に流出した湿り蒸気は、セパレータの通過時に湿分を除去して蒸気集合部に合流する。蒸気集合部に合流した蒸気は加熱器の通流時に加熱されて昇温し、ケーシングに設けられた排気口から排出される。
【0004】
加熱器には、加熱管がケーシングの軸方向に延びるとともに、上下に複数段を有して構成された加熱管群を備えている。この加熱管群は、隣接する加熱管の間に蒸気が通流可能な隙間が設けられているが、蒸気が隙間を通過する際に、圧力損失が大きいと、原子力発電プラントのサイクル効率が低下する。このため、加熱器の圧力損失を低減する必要が生じる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第3944227号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そこで、加熱管群の幅を広げると、加熱管群を通過する面積が広がって圧力損失を低減することができる。しかしながら、加熱管群の幅を広げると、加熱管群の両側に設けられたマニホールドの空間が狭くなり、また、セパレータケーシングの内面を超えたケーシングの外側にはみ出した位置に設置する必要が生じ、このセパレータの設置が困難になる。このため、ケーシングを大型化したり、従来の湿分分離加熱器の台数を増やしたりする提案が出されたが、この提案では、コストの増大を招く。
【0007】
また、我が国は地震の発生が多い地域であるので、地震の発生時に損傷しにくい構造の湿分分離加熱器の開発が望まれている。
【0008】
上述の事情に鑑みて、本発明の少なくとも幾つかの実施形態は、コストの増大を抑え、地震の発生時に損傷する虞が少なく、加熱器の圧力損失を低減可能な湿分分離加熱器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の幾つかの実施形態に係わる湿分分離加熱器は、
水平方向に延びて両端部が閉塞された筒状のケーシングと、
前記ケーシング内に設けられ、該ケーシングの軸方向に蒸気を通流するマニホールド室と、
前記ケーシング内に設けられ、前記マニホールド室に沿って前記ケーシングの長手方向に配置されて蒸気の湿分を除去するセパレータと、
前記ケーシング内に設けられ、前記セパレータから流出する蒸気の下流側に配置される加熱管群と、を備え、
前記加熱管群は、側面視において多角形状に形成され、該加熱管群の長手方向片が前記ケーシングの軸方向に沿って延びるとともに、前記加熱管群の短手方向片が垂直方向に延びているように構成される。
【0010】
上記湿分分離加熱器によれば、加熱管群の長手方向片は、ケーシングの軸方向に延びるとともに、加熱管群の短手方向片が垂直方向に延びる。マニホールド室はケーシングの軸方向に蒸気を通流するように構成され、セパレータはマニホールド室に沿ってケーシング側方の長手方向に配置されているので、セパレータから流出する蒸気を加熱管群の横方向から流入させることで、ケーシングを大型化する必要がない、また加熱管群の圧力損失を低減することができる。またケーシングは水平方向に延びるので、垂直方向に延びるのと比べ、湿分分離加熱器の重心位置を低くすることができ、地震発生時の湿分分離加熱器の損傷を抑制することができる。よって、コストの増大を抑え、地震の発生時に損傷する虞が少なく、加熱器の圧力損失を低減可能な湿分分離加熱器を実現できる。
【0011】
幾つかの実施形態では、
前記セパレータは、板状に形成されて上下方向に延び、前記加熱管群の側面に対向して配置されているように構成される。
【0012】
この場合、セパレータは、板状に形成されて上下方向に延び、加熱管群の側面に対向配置されるので、セパレータを加熱管群の側方に近接配置することができる。このため、ケーシングを大型化する必要性が無くなり、コストの増大を抑えることができる。また、セパレータから流出する蒸気を加熱管群の側方から流入させることができるので、加熱管群の圧力損失を確実に低減することができる。
【0013】
一実施形態において、
前記セパレータは、蒸気が流入する側の側面の一部を覆って該セパレータに流入する前記蒸気の流入量を調整する流入調整部を含むように構成される。
【0014】
この場合、セパレータは、蒸気が流入する側の側面の一部を覆ってセパレータに流入する蒸気の流入量を調整する流入調整部を含むことで、マニホールド室からセパレータ側に供給される蒸気がマニホールド室の長手方向奥側が大きくなる静圧分布があった場合に、セパレータ側に均一流量の蒸気を供給することができる。
【0015】
一実施形態において、
前記流入調整部は、上下方向に延びて前記セパレータの前記側面を覆う複数の流入調整部材と、複数の前記流入調整部材を支持する枠体部と、を含み、
複数の前記流入調整部材は、前記ケーシングの軸方向に沿って通流する蒸気の上流側から下流側に向かって隣接する流入調整部材の設置間隔が狭くなるように配置されるように構成される。
【0016】
この場合、流入調整部の複数の流入調整部材は、ケーシングの軸方向に沿って通流する蒸気の上流側から下流側に向かって隣接する流入調整部材の設置間隔が狭くなるように配置されているので、マニホールド室からセパレータ側に供給される蒸気がマニホールド室の長手方向奥側が大きくなる静圧分布があった場合、セパレータ側に均一流量の蒸気を確実に供給することができる。また、流入調整部は、枠体部と流入調整部材とを有した簡易な構造であるので、コストの増大を抑制することができる。
【0017】
一実施形態において、
前記流入調整部材には、前記ケーシングの軸方向に沿って通流する蒸気の湿分を除去可能な湿分除去手段が設けられているように構成される。
【0018】
この場合、湿分除去手段は、セパレータの上流側に配置されるので、セパレータによる湿分除去作業の負担を軽減することができる。
【0019】
一実施形態において、
前記湿分除去手段は、前記マニホールド室から流出した蒸気を渦状に流す湿分除去流路を含むように構成される。
【0020】
この場合、湿分除去手段に蒸気が流入すると、蒸気は湿分除去流路内を渦状に流れる。蒸気が渦状に移動すると、遠心力が蒸気中の湿分に作用して湿分を除去することができる。
【発明の効果】
【0021】
本発明の幾つかの実施形態によれば、コストの増大を抑え、地震の発生時に損傷する虞が少なく、加熱器の圧力損失を低減可能な湿分分離加熱器を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】湿分分離加熱器を備える原子力発電所の発電プラントの概略構成図である。
図2】同図(a)は湿分分離加熱器の構成例を示す平面視における内部構造図であり、同図(b)は同図(a)のII−II矢視に相当する湿分分離加熱器の断面図である。
図3】長手方向両側から湿り蒸気を吸入可能な湿分分離加熱器の構成例を示す平面視における内部構造図である。
図4】長手方向中央部から湿り蒸気を吸入可能な湿分分離加熱器の構成例を示す平面視における内部構造図である。
図5図2(a)のA矢視に相当するセパレータの正面図である。
図6図5のV−V矢視に相当するセパレータの断面図である。
図7】同図(a)は一実施形態に係わる湿分除去手段の斜視図であり、同図(b)は湿分除去手段の作用を説明するための説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、添付図面に従って本発明の湿分分離加熱器の実施形態について説明する。本実施形態は、原子力発電所の発電プラントに設置される湿分分離加熱器を例にして以下説明する。先ず、湿分分離加熱器を説明する前に、湿分分離加熱器が設置された原子力発電所の発電プラントを概説する。なお、この実施形態に記載されている構成部品の材質、形状、その相対的配置等は、本発明の範囲をこれに限定する趣旨ではなく、単なる説明例にすぎない。
【0024】
原子力発電所の発電プラント1は、図1(概略構成図)に示すように、蒸気発生器2で発生した主蒸気3、高圧タービン4で仕事をした後、湿り蒸気5となって高圧タービン4から出て、湿り蒸気5として湿分分離加熱器20に入るように構成されている。この湿り蒸気5は、蒸気中に含まれている湿分が湿分分離加熱器20で分離除去された後に、加熱・昇温された蒸気6となって低圧タービン7の入口から流入し、低圧タービン7で仕事をした後、復水器8で水となり、その後、ポンプ9により、給水ヒータ10を経て、蒸気発生器2に給水される。
【0025】
この原子力発電所の発電プラント1に設置された湿分分離加熱器20は、図2(a)(平面視内部構造図)に示すように、水平方向に延びて両端部が閉塞された筒状のケーシング21と、ケーシング21内に設けられ、ケーシング21の軸方向に蒸気が通流するマニホールド室30と、ケーシング21内に設けられ、マニホールド室30に沿ってケーシングの長手方向に配置されて蒸気の湿分を分離するセパレータ40と、ケーシング21内に設けられ、セパレータ40から流出する蒸気の下流側に配置された加熱管群50と、を備えている。
【0026】
幾つかの実施形態では、ケーシング21は、図2(a)及び図2(b)に示すように、円筒状に形成されて水平方向に延びる本体胴部22と、本体胴部22の軸方向両端部に接続された一対の側板部左24L及び側板部右24Rとを有してなる。本体胴部22の軸方向両端部に接続された側板部左24L及び側板部右24Rによって、本体胴部22の両端部が閉塞され、ケーシング21内の空間部21aが気密状態になっている。本体胴部22の上側の側壁22aには、蒸気を排出するための排出口22bが本体胴部22の軸方向に所定間隔を有して複数(本実施形態では3箇所)設けられている。
【0027】
側板部左24L及び側板部右24Rは内部が中空な半球殻状に形成され、頂部側がケーシング21の軸方向外側へ向くようにして本体胴部22に接続されている。側板部右24Rの頂部には、蒸気を流入させるための流入口24R1が設けられている。
【0028】
幾つかの実施形態では、マニホールド室30は、本体胴部22の手前側の空間部21aにおいてケーシング21の軸方向一端から他端側へ延びている。マニホールド室30は、本体胴部22の手前側を構成する側壁22aと、本体胴部22内に設けられた仕切板31と、本体胴部22の軸方向両端部に設けられた一対の端板左32L及び端板右32Rとを有して形成されている。
【0029】
仕切板31は、側面視において矩形状に形成され、本体胴部22内の手前側に配置されて、本体胴部22の長手方向一端から他端に延びるとともに、垂直方向に延びて上下両端部が本体胴部22の内面に固着されている。端板左32L及び端板右32Rは、側面視において半円状に形成され、本体胴部22の一端部及び他端部の側壁22aの内面に接続されてケーシング21の径方向内側へ延びる。端板左32Lによってマニホールド室30の他端部が閉塞されている。また、端板右32Rには開口部が形成され、この開口部を介して側板部右24R内の空間部21a及び流入口24R1に連通している。
【0030】
マニホールド室30を形成する仕切板31には、ケーシング21の軸方向に所定間隔を有して複数のスリットが設けられている。このため、マニホールド室30に流入した蒸気はスリットを介してセパレータ40側に流出する。
【0031】
幾つかの実施形態では、セパレータ40は、マニホールド室30の仕切板31に沿って配置されるとともに、本体胴部22の軸方向(長手方向)全長に亘って配置されている。セパレータ40は、蒸気の通過時に、湿分を分離して除去する。例えば、セパレータ40は、慣性を利用して蒸気の湿分を分離するものでもよい。セパレータ40は、板状であって側面視において本体胴部22の軸方向に沿って延在する多角形状、図示した実施形態では長方形状に形成されている。セパレータ40は、その長手方向片40aがマニホールド室30の仕切板31に沿って延び、短手方向片40bが垂直方向に延びた状態で本体胴部22内に固定保持されている。
【0032】
セパレータ40によって湿分が除去された蒸気は、セパレータ40から流出する。分離された湿分は、本体胴部22の底部に設けられたドレン26を介して外部に排出される。
【0033】
幾つかの実施形態では、加熱管群50は加熱管51を備えている。この加熱管51に加熱源となる加熱媒体が流れ、加熱管51外に被加熱蒸気、即ち、セパレータ40で湿分が除去された蒸気が流れる。この蒸気は、加熱管51で熱交換されて昇温して排出口22bから排出される。加熱管群50は、加熱管51がケーシング21の軸方向に延びるとともに、上下に複数段を有して配列される。また加熱管51は加熱管群50のケーシング21の軸方向に対して直交する方向(以下、「幅方向」と記す。)に対して千鳥状に配列されている。
【0034】
加熱管群50の幅B図2(a)参照)は、加熱管群50のケーシング21の軸方向長さLの1/5以下である。このため、加熱管群50の幅Bは軸方向長さLに対して薄くなっている。
【0035】
このように、加熱管群50は、ケーシング21の軸方向長さに対して幅が薄いので、板状の長方形に形成されている。また、加熱管群50は、ケーシング21の軸方向に延びる長手方向片50aがセパレータ40に沿って本体胴部22の長手方向全長に亘って延び、ケーシング21の幅方向に延びる短手方向片50bが垂直方向に延びて、本体胴部22内に固定保持されている。このため、加熱管群50の短手方向一方側の側面50cに沿って、セパレータ40が配置されている。このように、加熱管群50は、長手方向片50aが本体胴部22の長手方向全長に亘って延びているので、加熱管群50を通過する蒸気の接触面積を増加させることができ、加熱管51において蒸気の熱交換を効果的に行うことができる。
【0036】
以上説明したように、幾つかの実施形態に係わる湿分分離加熱器20によれば、図1図2(a)、図2(b)に示すように、高圧タービン4で仕事をした湿り蒸気5(例えば、350℃)が湿分分離加熱器20の流入口24R1に入ると、この湿り蒸気5は、ケーシング21内の空間部21aを通ってマニホールド室30に入る。マニホールド室30に入った湿り蒸気5は、ケーシング21の軸方向に沿って流れるとともに、マニホールド室30のスリットを介してセパレータ40側へ流出する。
【0037】
セパレータ40側に流出した湿り蒸気5は、セパレータ40を通過する際に湿分が除去されて、セパレータ40から加熱管群50側へ流出する。湿分が除去された蒸気は、加熱管群50の通過時に加熱されて昇温し、排出口22bから排出される。加熱された蒸気は低圧タービン7に供給される。
【0038】
ここで、湿分分離加熱器20の加熱管群50は、側面視において本体胴部22の軸方向に沿って延在する多角形状、図示した実施形態では長方形状に形成され、水平方向に延びるケーシング21内において、加熱管群50の長手方向片50aがケーシング21の軸方向に沿って延びるとともに、加熱管群50の短手方向片50bが垂直方向に延びて配置されている。また、加熱管群50の幅は軸方向長さに対して薄い。このため、蒸気が加熱管群50を通過する際の圧力損失を大幅に低減することができる。
【0039】
さらに、加熱管群50及びセパレータ40は、ケーシング21の軸方向に延びるとともに垂直方向に立設され、マニホールド室30をケーシング21の本体胴部22の幅方向の一方側に配置することで、ケーシング21の胴径を大きくする必要がない。よって、ケーシング21を横向きに設置した状態で、本体胴部22の形状を大きくすることなく、加熱管群50を流れる蒸気の圧力損失を低減可能な湿分分離加熱器20を実現できる。
【0040】
また、加熱管群50及びセパレータ40を収容するケーシング21は,横方向に延びているので、湿分分離加熱器20の重心位置を低くすることができる。よって、湿分分離加熱器20は設置状態において安定化し、地震時において損傷する虞を抑制することができる。
【0041】
なお、前述した実施形態では、湿り蒸気をケーシング21内に流入させる流入口24R1をケーシング21の長手方向一端部に設けた場合を示したが、流入口24R1の位置はケーシング21の長手方向一端部に限るものではなく、長手方向他端部や長手方向両側(図3参照)や長手方向中央(図4参照)に設けてもよい。流入口をケーシング21の長手方向両側に設ける場合には、図3に示すように、流入口24L1をケーシング21の長手方向他端部に設ける。その他の構造については、図2(a)に記載のものと同様であるので、説明は省略する。また、流入口をケーシング21の長手方向中央に設ける場合には、図4に示すように、流入口23をケーシング21の長手方向中央であってマニホールド室30に連通する位置に設ける。その他の構造については、図2(a)に記載のものと同様であるので、説明は省略する。
【0042】
次に、例示的な実施形態の個別的内容について図2(a)、図2(b)、図3図4図5を参照しながら説明する。図3に示す例示的な実施形態では、セパレータ40のマニホールド室30側に対向する面に、流入調整部60が設けられている。
【0043】
セパレータ40に供給される蒸気は、図2(a)に示すように、マニホールド室30から供給されるが、マニホールド室30はケーシング21の軸方向(長手方向)に延びている。このため、マニホールド室30は長手方向に静圧分布があり、この静圧分布はマニホールド室30の長手方向奥側が手前側よりも大きくなる。従って、セパレータ40に供給される蒸気の流量を均一にする必要がある。そこで、セパレータ40のマニホールド室30側に対向する面に沿って流入調整部60が設けられている。
【0044】
流入調整部60は、図(正面図)に示すように、格子状に形成された枠体部61と、枠体部61に取り付けられた流入調整部材67a、67b、67cと、を含む。枠体部61は、セパレータ40のマニホールド室30側に対向する面40cに面するように保持されている。枠体部61は、上下方向に段状に配置されて水平方向に延びる複数(本実施形態では4本)の横部材62と、複数の横部材62間を上下方向に接続するように延びて、幅方向に所定間隔を有して配置された複数(本実施形態では6本)の縦部材63とを含む。
【0045】
複数の横部材62は、同一長さを有して同一平面上に配置されている。複数の縦部材63は、横部材62の長手方向中間部に所定距離を有して配置されている。複数の縦部材63は複数の横部材62と同一平面上に配置されるとともに、横部材62と交差する部分において一体的に接続されている。これら横部材62及び縦部材63によって、略同一の開口面積を有した開口部64a、64b、64cが複数形成されている。本実施形態では、9つの開口部64a、64b、64cが格子状に形成されている。
【0046】
マニホールド室30を流れる湿り蒸気5の上流側に配置された上中下3個の開口部64aには、これらの開口部64aの一部を塞ぐようにして上下方向に延びた複数(本実施例では2本)の流入調整部材67aが配設されている。また、流入調整部60の中央部側に配置された上中下3個の開口部64bには、これらの開口部64bの一部を塞ぐようにして上下方向に延びた複数(本実施例では3本)の流入調整部材67bが配設されている。さらに、マニホールド室30を流れる湿り蒸気5の下流側に配置された上中下3個の開口部64cには、これらの開口部64の一部を塞ぐようにして上下方向に延びた複数(本実施例では4本)の流入調整部材67cが配設されている。流入調整部材67a、67b、67cは、横部材62と交差する位置において接続されている。
【0047】
マニホールド室30を流れる湿り蒸気5の上流側に配置された流入調整部材67aの幅方向の設置間隔に対して、流入調整部60の中央部側に配置された流入調整部材67bの幅方向の設置間隔は狭くなっている。また、流入調整部60の中央部側に配置された流入調整部材67bの設置間隔に対して、マニホールド室30を流れる湿り蒸気5の下流側に配置された流入調整部材67cの設置間隔は狭くなっている。このため、開口部64a、64b、64cの開口面積は、マニホールド室30を流れる蒸気の上流側から下流側に向かって狭くなっている。
【0048】
よって、マニホールド室30からセパレータ40側に供給される湿り蒸気5がマニホールド室30の長手方向奥側が大きくなる分布があっても、セパレータ40側に均一流量の蒸気をセパレータ40に供給することができる。
【0049】
次に、図(断面図)、図(a)(斜視図)、図(b)(説明図)に示す例示的な実施形態について説明する。図6に示す実施形態では、流入調整部60のセパレータ40側と反対側の面67dに湿分除去手段70が設けられている。この湿分除去手段70は流入調整部材67a、67b、67cの長手方向に沿って設けられている。湿分除去手段70は、図(a)(斜視図)に示すように、板金等を多段に折り曲げて内部に渦状の湿分除去流路70aが形成されている。この湿分除去流路70aは、湿分除去手段70の短手方向一方側の面において矩形状に開口した開口部70bを有している。
【0050】
この湿分除去手段70は、図(b)(説明図)に示すように、マニホールド室30(図2(a)参照)から湿り蒸気5が供給されると、この湿り蒸気5の一部は湿分除去手段70間を通ってセパレータ40(図2(a)参照)に供給る。また残りの湿り蒸気5は湿分除去手段70の開口部70bを通って渦状の湿分除去流路70a内に流入する。湿り蒸気5が開口部70bから湿分除去流路70aに流入すると、特に、湿分除去手段70の折れ曲がった部分で遠心力が作用して湿り蒸気5の湿分が捕捉される。このため、湿り蒸気5の湿分を除去することができ、セパレータ40による湿分除去作業の負担を軽減することができる。なお、湿分除去手段70に流入して湿分が除去された蒸気は、湿分除去手段70の長手方向両端部の開口から排出される。
【0051】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上記の形態に限定されるものではなく、本発明の目的を逸脱しない範囲での種々の変更が可能である。例えば、上述した各種実施形態を適宜組み合わせてもよい。
【符号の説明】
【0052】
1 発電プラ
2 蒸気発生器
3 主蒸気
4 高圧タービン
5 湿り蒸気
6 蒸気
7 低圧タービン
8 復水器
9 ポンプ
10 給水ヒータ
20 湿分分離加熱器
21 ケーシング
21a、70a 空間部
22 本体胴部
22a 側壁
24L 側板部左
24R 側板部右
24R1 流入口
26 ドレン
30 マニホールド室
31 仕切板
32L 端板左
32R 端板右
40 セパレータ
40a、50a 長手方向片
40b、50b 短手方向片
40c 対向する面
50 加熱管群
51 加熱管
60 流入調整部
61 枠体部
62 横部材
63 縦部材
64 開口部
67a、67b、67c 流入調整部材
67d 面
70 湿分除去手段
70a 湿分除去流路
70b 開口部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7