(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
難水溶性ポリオキシアルキレン誘導体と、吸着性無機物及び加水分解酵素からなる群から選ばれる少なくとも1種類の物質と、ポリビニルピロリドンと、ポリビニルアルコールとを含み、
前記加水分解酵素が、ペプチド鎖において、Argと任意のアミノ酸残基との結合と、Lysと任意のアミノ酸残基との結合のうち少なくとも一方を加水分解し得る酵素であり、
前記ポリビニルアルコールのけん化度が、98モル%より大きく、100モル%以下である、血液凝固促進剤。
請求項1〜3のいずれか1項に記載の血液凝固促進剤が収容されている血液採取容器内に血液を採取し、血液内における甲状腺刺激ホルモンの含有量を測定する、甲状腺刺激ホルモンの測定方法。
【発明を実施するための形態】
【0017】
(血液凝固促進剤)
本発明に係る血液凝固促進剤は、難水溶性ポリオキシアルキレン誘導体と、(a)吸着性無機物及び(b)加水分解酵素からなる群から選ばれる少なくとも1種類の物質と、ポリビニルピロリドンと、ポリビニルアルコールとを含む。
【0018】
(b)加水分解酵素は、ペプチド鎖において、Argと任意のアミノ酸残基との結合と、Lysと任意のアミノ酸残基との結合のうち少なくとも一方を加水分解し得る酵素である。
【0019】
本発明に係る血液凝固促進剤は、上記のようにポリビニルアルコールを含んでいるため、血餅剥離効果に優れている。
【0020】
また、本発明においては、上記ポリビニルアルコールのけん化度が、98モル%より大きく、100モル%以下である。
【0021】
従って、本発明に係る血液凝固促進剤が塗布された血液採取容器で血液を採取し、甲状腺刺激ホルモンを測定した場合、測定値が安定している。すなわち、本発明に係る血液凝固促進剤を用いて、甲状腺刺激ホルモンの検査を行った場合、信頼性の高い検査値を得ることができる。
【0022】
以下、本発明に係る血液凝固促進剤の各構成成分についてさらに詳細に説明する。
【0023】
<難水溶性ポリオキシアルキレン誘導体>
本発明の血液凝固促進剤に含有される難水溶性ポリオキシアルキレン誘導体は、血餅付着防止成分として用いられる。
【0024】
難水溶性ポリオキシアルキレン誘導体としては、特に限定されず、公知のポリオキシアルキレンに種々の化合物を誘導した誘導体を用いることができる。例えば、ポリオキシアルキレンのブタノール誘導体や、ポリオキシアルキレンのグリセリン誘導体等が挙げられる。
【0025】
上記難水溶性ポリオキシアルキレン誘導体は、水や血液に対して溶解性が低いことが好ましく、水や血液に対して溶解しないことがより好ましい。
【0026】
また、難水溶性ポリオキシアルキレン誘導体は、血餅付着防止成分として作用するので、凝固した後の血餅成分が血液採取容器の内壁に付着することを防止することができる。また、遠心分離時においても血餅の移動が制限されることもないため、血餅と血清とを良好に分離することができる。
【0027】
血液凝固促進剤中に含まれる上記難水溶性ポリオキシアルキレン誘導体の含有量としては、特に限定されないが、1×10
−4重量%〜2重量%であることが好ましく、1×10
−3重量%〜1重量%であることがより好ましい。
【0028】
上記難水溶性ポリオキシアルキレン誘導体の含有量が上記範囲内にある場合、より一層凝固した後の血餅成分が血液採取容器の内壁に付着することを防止することができる。
【0029】
<ポリビニルアルコール>
上述したように、本発明における、ポリビニルアルコールのけん化度は、98モル%より大きく、100モル%以下である。
【0030】
ポリビニルアルコールのけん化度が98モル%以下である場合、ポリビニルアルコールの血液中の溶解度や界面活性作用が高くなる。従って、検査値に悪影響を及ぼすおそれがある。
【0031】
また、界面活性作用のある水溶性高分子であるポリビニルアルコールを含む薬剤を採血管壁にスプレー塗布すると、該ポリビニルアルコールは血液採取容器の内壁面への濡れ性が高いことから、薬剤が垂れやすい。従って、血液採取容器の内壁面上の薬剤に塗布むらができる。薬剤が厚く塗布された部分は、血液中に薬剤が均一に溶けにくいため、血液凝固性能にバラつきが発生するおそれがある。
【0032】
ポリビニルアルコールとしては、公知の化合物を使用することができ、例えば、ポリ酢酸ビニルを水酸化ナトリウムによってけん化された化合物等が挙げられる。
【0033】
また、完全けん化ポリビニルアルコールの重合度は、300〜3500であることが好ましく、500〜2500であることがより好ましい。
【0034】
ポリビニルアルコールの重合度が300未満であると、溶解性が高くなりすぎて血餅剥離性が低下することがある。また、重合度が3500を超えると、粘度が高くなり、容器内壁に均一に塗布することが困難になることがある。
【0035】
本発明のポリビニルアルコールの配合量は、本発明の血液凝固促進剤100重量部に対して、0.02〜2.0重量部である。好ましくは、0.03〜1.5重量部で、更に好ましくは、0.05〜1.0重量部である。
【0036】
本発明のポリビニルアルコールの配合量が、0.02重量部よりも少ないと血餅付着防止効果が小さくなる場合があり、血液採取容器の内壁管面への血餅付着が多くなることがある。また、本発明のポリビニルアルコールの配合量が、2.0重量部よりも多いとポリビニルアルコールの溶解性が悪くなり、溶け残りが増えることがある。従って、血液凝固促進剤の分散性が悪くなり、血液採取容器の内壁面に薬剤を均一に塗布できない場合がある。
【0037】
本発明で用いるポリビニルアルコールは、けん化度が高いため難水溶性である。そのため、該ポリビニルアルコールを約95℃の熱水で溶解した後、室温で析出する場合は、配合量を上記の範囲に減らしてもよい。
【0038】
<吸着性無機物>
上述したように、本発明に係る血液凝固促進剤は、(a)吸着性無機物及び後述する(b)加水分解酵素のうち少なくとも一方を含んでいる。上記吸着性無機物は、血液凝固成分として用いることができる。
【0039】
吸着性無機物は水に不溶性であることが好ましい。吸着性無機物が水に不溶性であることによって、より一層検査結果に与える影響を小さくすることができる。
【0040】
また、吸着性無機物は粉末状であることが好ましい。吸着性無機物が粉末状である場合、吸着性無機物の比表面積が増大するので、本発明の血液凝固促進剤はより一層短時間で血液を凝固させることができる。
【0041】
吸着性無機物の比表面積は、10〜1000m
2/gであることが好ましく、50〜500m
2/gであることがより好ましい。
【0042】
吸着性無機物の平均粒径は、50μm以下であることが好ましく、10μm以下であることがより好ましい。吸着性無機物の平均粒径が50μmを超えると、短時間で血液を凝固させることが困難になることがある。
【0043】
具体的な吸着性無機物としては、例えば、シリカ、ガラス、カオリン、セライト又はベントナイト等が挙げられる。これらの吸着性無機物質は単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
【0044】
これらの吸着性無機物質のうち、シリカが好適に用いられる。このシリカは粉末状であることが好ましく、無定形成分を20重量%以上含有する多孔質状であることがより好ましい。
【0045】
また、このようなシリカは疎水性であることが好ましい。シリカが疎水性であることによって、血液中への溶解度がより一層低下して溶血を防ぐことができるとともに、血液中への分散性が向上してより一層短時間で血液を凝固させることができる。
【0046】
また、吸着性無機物は、血液中での分散性が高いことが好ましい。血液中での分散性が高い場合、より一層短時間で血液を凝固させることができる。
【0047】
上記吸着性無機物の量が少なくなると、血液凝固の時間が長くなったり、凝固が不完全になったりすることがあり、上記吸着性無機物の量が多くなると検査値に悪影響を及ぼす恐れがあるので、血液1mLあたり1×10
−6〜1×10
−3gが好ましく、1×10
−5〜1×10
−4gがより好ましい。
【0048】
<加水分解酵素>
本発明における加水分解酵素とは、ペプチド鎖において、Argと任意のアミノ酸残基との結合と、Lysと任意のアミノ酸残基との結合のうち少なくとも一方を加水分解し得る酵素である。
【0049】
本発明における加水分解酵素の具体的な例としては、例えば、トリプシン、トロンビン、蛇毒トロンビン様酵素等のセリンプロテアーゼ;カテプシンB、フィシン等のチオールプロテアーゼ;キニナーゼI等の金属プロテアーゼ等の加水分解酵素が挙げられる。なかでも、血液凝固効率がより一層高められるため、好適にはセリンプロテアーゼが用いられ、セリンプロテアーゼとしては、トロンビンが好ましい。
【0050】
上記血液凝固促進剤に含有される加水分解酵素の量は、少なすぎると血液凝固が不完全になることがあり、多すぎると、検査値に悪影響を及ぼす恐れがある。よって、上記加水分解酵素の使用量は血液1mLあたり0.1〜100単位が好ましく、0.5〜50単位がより好ましい。
【0051】
<水溶性シリコーンオイル>
本発明の血液凝固促進剤は、血餅付着防止成分として水溶性シリコーンオイルを含んでもよい。
【0052】
水溶性シリコーンオイルを用いることによって、栓体を有する採血管においては、管の内壁に対してより一層優れた血餅剥離性が発揮されるとともに、栓体に対してもより一層優れた血餅剥離性を発揮することができる。
【0053】
上記水溶性シリコーンオイルとしては、親水性が高いシリコーンオイルであれば特に限定されず、例えば、極性基の導入によって親水性に変性されたシリコーンオイル等が用いられる。このような極性基としては、例えば、水酸基、アミノ基、カルボキシル基、エポキシ基又はエーテル基等が挙げられる。
【0054】
変性前のシリコーンオイルとしては、例えば、ジメチルポリシロキサン、メチルハイドロジエンポリシロキサン等の脂肪族シリコーンオイル又はメチルフェノルポリシロキサン等の芳香族シリコーンオイル等が用いられる。これらのうち、エーテル基によって変性されたジメチルポリシロキサンが好適に用いられる。上記水溶性シリコーンオイルは、単独で用いられてもよく、2種以上が混合されて用いられてもよい。
【0055】
また、本発明の血液凝固促進剤が水溶性シリコーンオイルを含有する場合、水溶性シリコーンオイルの配合量は、上記難水溶性ポリオキシアルキレン誘導体と、上記吸着性無機物及び加水分解酵素からなる群から選ばれる少なくとも1種類の物質と、上記ポリビニルピロリドンと、上記ポリビニルアルコールとの合計重量100重量部に対して、3.0×10
−3〜7重量部の範囲にあることがより好ましい。
【0056】
上記水溶性シリコーンオイルの配合量が、7重量部を超えると検査値に悪影響を及ぼす場合がある。また、配合量が3.0×10
−3重量部未満であると、採血管の栓体に対して十分な血餅剥離性を発揮することが困難となる場合がある。
【0057】
<安定化剤・防腐剤>
本発明の血液凝固促進剤は、上記物質の他に血液凝固促進剤の品質保持に必要な範囲で安定化剤、防腐剤といった種々の物質を含んでもよい。
【0058】
上記安定化剤としては、公知のタンパク質、アミノ酸、糖類などで、安定性向上に効果があるものを添加することができる。例えば、上記放射線照射により加水分解酵素を失活させた酵素失活物とβ―アラニンとを用いることもできる。放射線照射における放射線とは、例えばガンマ線、電子線などが挙げられる。上記酵素失活物は単独で用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0059】
本発明に係る血液凝固促進剤に好適に用いられるアミノ酸としては、例えばグリシン、β−アラニン、L−セリン又はL−トリプトファン等が挙げられる。アミノ酸の量が少なくなると、加水分解酵素の安定性を保つ効果が不十分となるおそれがあり、多くなると検査値に悪影響を及ぼすおそれがある。従って、加水分解酵素1単位あたり0.01〜10mgが好ましく、0.05〜5mgがより好ましい。
【0060】
本発明に係る血液凝固促進剤は、さらにアミン塩と、第4級窒素を有する有機化合物とのうち少なくとも一方を含有していてもよい。上記アミン塩及び第4級窒素を有する有機化合物は、ヘパリンを吸着、中和して不活性化するヘパリン中和剤として作用することができる。
【0061】
上記アミン塩を構成するアミンは、第1級、第2級又は第3級アミンのいずれでもよく、アミン塩を構成する酸も無機酸又は有機酸のいずれでもよい。無機酸としては、例えば、塩酸等のハロゲン化水素酸、硫酸又は亜硫酸等が挙げられ、有機酸としては、例えば、ギ酸又は酢酸等が挙げられる。アミン塩の有機残基は通常アルキル基であるが、イミノ基やエーテル基等の異種元素を含む炭化水素基であってもよい。アミン塩は、分子内塩でもよい。好ましいアミン塩の具体例としては、例えば、ヘキサデシルジメチルアミン塩酸塩や、テトラデシル(アミノエチル)グリシン等が挙げられる。
【0062】
上記第4級窒素を有する有機化合物としては、例えば、テトラアルキルアンモニウムが挙げられるが、アルキル基の代わりにアリール基を有する化合物や、イミノ基もしくはエーテル基等の異種元素を含む炭化水素基を有する化合物でもよい。好ましい第4級窒素を有する有機化合物としては、ドデシルトリメチルアンモニウムクロライドが挙げられるが、第4級窒素を有するポリカチオン等の有機重合体を用いてもよい。上記第4級窒素を有する有機化合物の量が少なくなると、ヘパリンが中和され難くなるためヘパリンを含む血液が凝固しなくなることがあり、多くなると検査値に悪影響を及ぼすおそれがある。従って、上記第4級窒素を有する有機化合物の量は、血液1mLあたり0.005〜10mgが好ましく、0.01〜5mgがより好ましい。
【0063】
本発明の血液凝固促進剤には、さらに抗線溶剤と、抗プラスミン剤のうち少なくとも一方が含有されていてもよい。これらにより、血液の凝固反応過程で拮抗的に生成してくるプラスミンのフィブリン分解作用が阻害される。そのため血液の凝固がより一層促進され、さらに凝固においても凝固状態をより一層安定に保つことができる。
【0064】
上記抗線溶剤及び抗プラスミン剤としては、例えば、アプロチニン、大豆トリプシンインヒビター、ε−アミノカプロン酸、p−アミノメチル安息香酸、アミノメチルシクロヘキサンカルボン酸等が、単独であるいは組み合わされて用いられる。
【0065】
これらは、得られる血清を用いた臨床検査に影響を及ぼさない程度の量で血液凝固促進剤中に含有される。例えば、アプロチニンは、血液1mLあたり100〜600KIU(単位)の割合で、大豆トリプシンインヒビターは、血液1mLあたり500〜4000FU(単位)の割合で、ε−アミノカプロン酸、p−アミノメチル安息香酸、アミノメチルシクロヘキサンカルボン酸は、いずれも血液1mLあたり1×10
−8〜1×10
−2gの割合で用いられることが好ましい。
【0066】
防腐剤としては、例えばp−ヒドロキシ安息香酸n−プロピルなど、公知の物質を用いることができる。
【0067】
(血液採取容器)
本発明に係る血液採取容器は、有底の管状容器である。上記血液採取容器には、上述した本発明に係る血液凝固促進剤が、収容されている。従って、本発明に係る血液採取容器は、血餅剥離効果に優れており、かつ甲状腺刺激ホルモン測定に用いた場合、信頼性の高い検査値を得ることを可能とする。
【0068】
<血液凝固促進剤の血液採取容器への収容方法>
上記血液凝固促進剤の血液採取容器への収容方法に関しては、血液採取容器内部に導入された血液に確実に触れることができれば形態は問わず、例えばフィルム状等の担体に担持させる方法、顆粒等の固形状にして血液採取容器内部に収容する方法、該血液凝固促進剤の水溶液又は水分散液に容器を浸漬する方法又は液状にして血液採取容器内部にスプレー塗布する方法等が挙げられる。
【0069】
なかでも、血液採取容器に対して血餅付着防止の機能を発揮させるために、液状にして血液採取容器内部にスプレーなどの公知の方法で薬剤を塗布する方法がより好適に用いられる。
【0070】
<血清分離剤・栓体>
本発明の血液採取容器は、必要に応じて血清分離剤を収容されていてもよい。血清分離剤の収容方法については公知の方法を用いることができるが、好ましくは該血液採取容器の底部に配置される。
【0071】
また、本発明の血液採取容器は、栓体を有するものであってもよい。血液採取容器が栓体を有している場合は、栓体の少なくとも血液と接触し得る部位にも血液凝固促進剤が塗布されていることが好ましい。
【0072】
<血液採取容器の製造>
血液採取容器の製造方法としては特に限定されないが、例えば、管状容器の内面に液状にした上記血液凝固促進剤をスプレー塗布、浸漬塗布するなどし、管状容器の開口に栓体を気密的に取り付けることにより得られる。血液採取容器の内部は減圧されていることが好ましく、この場合、血液採取容器を真空採血管として用いることができ、血液凝固促進、血餅付着防止等の機能を果たすことができる。
【0073】
(甲状腺刺激ホルモンの測定方法)
本発明に係る甲状腺刺激ホルモンの測定方法では、血液凝固促進剤が収容されている血液採取容器内に血液を採取し、血液内における甲状腺刺激ホルモンの含有量を測定する。上記甲状腺刺激ホルモンの含有量の測定は、例えば、電気化学発光免疫測定法(ECLIA法)により測定することができる。
【0074】
上記甲状腺刺激ホルモンの測定方法では、本発明に係る血液凝固促進剤が用いられるため、安定した検査値を得ることができる。すなわち、本発明に係る甲状腺刺激ホルモンの測定方法によると、信頼性の高い検査値を得ることができる。
【0075】
次に、具体的な実施例につき説明する。なお、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0076】
(実施例1,2及び比較例1)
<血液凝固促進剤の調製>
ポリビニルアルコール(PVA)として、けん化度99.0〜99.6%のPVA(クラレ社製、商品名「HR−3010」)を用いたものを実施例1、けん化度99.3%のPVA(日本酢ビ・ポバール社製、商品名「V」)を用いたものを実施例2とした。また、けん化度85.0%のPVA(クラレ社製、商品名「PVA210」)を用いたものを比較例1とした。各実施例、比較例にて用いたPVAの詳細を表1に示す。
【0078】
また、表2に示す組成となるように各化合物を混合し、血液凝固促進剤を調製した。なお、PVA以外に各実施例及び比較例で血液凝固促進剤の成分として用いた化合物は以下の通りである。
【0079】
・難水溶性ポリオキシアルキレン誘導体
(ADEKA社製、商品名「アデカポリエーテルG4000」)
・水溶性シリコーンオイル
(東レ・ダウコーニング社製、商品名「SF8410」)
・ポリビニルピロリドン
(和光純薬工業社製、商品名「K−30」)
・p−ヒドロキシ安息香酸−n−プロピル
・吸着性無機物
(微粉末シリカ)
・水
【0081】
<血液採取容器の作製>
それぞれの実施例及び比較例によって得られた血液凝固促進剤を、内容量7mLのポリエチレンテレフタラート製血液分離用管状容器の内壁にスプレー法によって均一に塗布し、風乾することによって試験用血液採取容器を作製した。
【0082】
得られた各試験用血液採取容器について、二人の被験者(以下、被験者1、被験者2とする)の血液を用いて以下の評価を行った。
【0083】
なお、参考例1として、本発明の血液凝固促進剤が塗布されていない7mL採血用のガラス製採血管(ベクトン・ディッキンソン社製、商品名「REF369619」)を用意し、同様の評価を行った。
【0084】
<血餅付着の評価>
上記で得られた各試験用血液採取容器及び参考例1のガラス製採血管について1.2mLのヒト新鮮血を投入してゴム栓で密封した後、転倒混和を5回行い、3000rpmの回転数で10分間遠心分離を行った。その後、遠心分離後の試験用血液採取容器及び参考例1のガラス製採血管の内壁やゴム栓に血餅が付着しているかどうかを目視にて判定した。血餅付着が確認された場合は「×」と判定し、確認されなかった場合は「○」と判定した。
【0085】
<甲状腺刺激ホルモン(TSH)の検査値の評価>
上記で得られた遠心分離後の試験用血液採取容器について、得られた血清を電気化学発光免疫測定法(ECLIA法)を用い、甲状腺刺激ホルモン(TSH)についての値、すなわちTSHの検査値を測定した。
【0086】
各実施例及び比較例においては、参考例1のガラス製採血管のTSHの検査値を基準として、対ガラス製採血管検査値を算出した際に、95%以上の正確性が得られていれば検査値の評価を「○」、得られていない場合は検査値の評価を「×」と判定した。
【0087】
血餅付着及びTSHの検査値の評価結果を下記表3に示す。
【0089】
当評価結果によれば、実施例1,2で開示されている血液凝固促進剤は、TSH測定において、良好な検査値を得られた。また、血餅付着の評価においても、本発明の血液凝固促進剤が塗布されていない参考例1において血餅付着が確認されたのに対し、実施例1,2の血液凝固促進剤では、けん化度が低いものと変わらない血餅剥離効果を発揮するという良好な結果が得られた。