(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0010】
つぎに、本発明の一実施形態のプリント配線板が、図面を参照しながら説明される。本発明の一実施形態のプリント配線板10(以下、プリント配線板は単に配線板とも称される)は、
図1に示されるように、第1面F1と第1面F1と反対側の第2面F2とを有する第1層間樹脂絶縁層20と、第1面F1側の第1層間樹脂絶縁層20内に埋め込まれ、最上面が露出される第1導体層30と、第1層間樹脂絶縁層20の第2面F2上に形成されている第2導体層50と、第1層間樹脂絶縁層20の第2面F2上および第2導体層50上に積層される第2層間樹脂絶縁層40と、第2層間樹脂絶縁層40上に形成されている第3導体層60とを備えている。また、本実施形態の配線板10は、第1層間樹脂絶縁層20を貫通して設けられ、第1導体層30と第2導体層50とを電気的に接続する第1ビア導体25aと、第2層間樹脂絶縁層40を貫通して設けられ、第2導体層50と第3導体層60とを電気的に接続する第2ビア導体45aとを備えている。
【0011】
本実施形態の配線板10では、第1層間樹脂絶縁層20の熱膨張率が第2層間樹脂絶縁層40の熱膨張率より大きくなるように構成される点に特徴がある。その作用が以下に説明される。
図6Aには、従来技術のコアレス基板の構造に形成されたプリント配線板90が示されている。一方の側に導体層92aが埋め込まれている絶縁層91aの他方の側に、導体層92b、絶縁層91bおよび導体層92cが順次積層されて形成され、導体層92a、92cの表面上にソルダーレジスト94a、94bがそれぞれ形成されている。絶縁層91aおよび絶縁層91bは、それぞれ、ガラス繊維のような無機繊維911および無機繊維911に含浸される絶縁性樹脂912からなる同じ材料で、略同じ厚さに形成されている。なお、ビア導体93aは導体層92aと導体層92bとを接続し、ビア導体93bは導体層92bと導体層92cとを接続している。
【0012】
図6Aに示されるプリント配線板90は、導体層92a、92cが絶縁層91a、91b内に埋め込まれているか否かの違いなどにより、プリント配線板の両側が非対称な構造になり易く、製造中の熱によるひずみも蓄積され易い。たとえば、後の記載に詳述するように、導体層92aが絶縁層91a内に埋め込まれているのに対して、導体層92cは絶縁層91bの表面上に形成されているので、ソルダーレジスト94bは、ソルダーレジスト94aよりも厚く形成される。さらに、導体層92aのような絶縁層内に埋め込まれた導体層の露出面には、一般的に狭ピッチで大型の電子部品(たとえば、半導体装置など)が接続されることが多くあり、そのような電子部品が実装される部分のソルダーレジスト94aには、
図6Aに示されるような大きな開口部95が設けられるため、ソルダーレジスト94aの面積は、ソルダーレジスト94bの面積よりも小さくされ易い。このため、ソルダーレジスト94aの体積が、ソルダーレジスト94bの体積よりも小さくなる傾向にある。このため、プリント配線板90が加熱または冷却されるときの熱膨張または熱収縮は、導体層92a側よりも導体層92c側の方が大きくなり、導体層92c側の膨張/収縮の方がプリント配線板90の屈曲に対して強く作用することになる。このため、たとえば、プリント配線板90が電子部品の実装時などに加熱されると、
図6Bに示されるように、導体層92c側に凸となる反りが生じ易い。
【0013】
プリント配線板90に反りが生じると、
図6Bに示されるように、プリント配線板90に実装される電子部品100の電極110と、電極110が接続される導体層92aの導体パターン921との間の一部が、はんだ120などの接合材を介しても、接触しないことがある。また、プリント配線板90が冷却されると、逆向きの、すなわち、導体層92a側に凸となる反りが生じるため、使用時の温度変化により電子部品100とプリント配線板90との接続部に応力が反復的に生じ、その結果、接続信頼性が低下することがある。
【0014】
本実施形態の配線板10では、前述のように、第1層間樹脂絶縁層20の熱膨張率が第2層間樹脂絶縁層40の熱膨張率より大きくなるように構成されるので、周囲の温度変化により生じる配線板10の反りが抑制される。すなわち、本実施形態の配線板10では、前述のように、加熱または冷却されるときに第
1導体層
30側の伸縮よりも第
3導体層
60側の伸縮の方が配線板10の屈曲に強く作用する構造であっても、第1層間樹脂絶縁層20の熱膨張率が第2層間樹脂絶縁層40の熱膨張率より大きいため、第3導体層60側よりも第1導体層30側において、加熱時または冷却時の伸び縮みの量そのものが大きくなり、第1導体層30側と第3導体層60側との配線板10の反りに対する作用の不均衡が緩和される。その結果、温度変化による配線板10の反りが抑制される。そして、その結果、配線板10と電子部品88(
図5H参照)との接続不良が抑制されると共に、電子部品88との接続信頼性が高まる。
【0015】
図1に示されるように、本実施形態の配線板10には、第1導体層30の一部である第1パターン30aの表面上、および、第1導体層30が埋め込まれている側の第1層間樹脂絶縁層20の一部の表面上に第1ソルダーレジスト35が形成されている。また、第3導体層60の表面上、および、第2層間樹脂絶縁層40の表面の第3導体層60が形成されていない部分上に第2ソルダーレジスト55が形成されている。
【0016】
一般的に、ソルダーレジストは、絶縁層の表面上に露出する導体層の表面の絶縁性の確保などを目的として設けられる。このため、
図1に示される配線板10では、第1ソルダーレジスト35は第1導体層30の表面上において、また、第2ソルダーレジスト55は第3導体層60の表面上において、それぞれ所定の厚さになるように形成される。その結果、
図1に示されるように、第1導体層30が埋め込まれている第1層間樹脂絶縁層20の表面上に設けられる第1ソルダーレジスト35の方が、第3導体層60が表面上に形成される第2層間樹脂絶縁層40の表面上に形成される第2ソルダーレジスト55よりも薄くなっている。このため、配線板10の周囲の温度が変化すると、第1ソルダーレジスト35の伸縮よりも第2ソルダーレジスト55の伸縮の方が配線板10の屈曲に対して強く作用する。また、
図1に示されるように、本実施形態では、第1導体層30の第2パターン30bの表面上および第2パターン30bの周囲の第1層間樹脂絶縁層20の表面上は、電子部品88(
図5H参照)の実装領域にあたるため、第1ソルダーレジスト35が形成されていない。このため、配線板10の周囲の温度が変化すると、第2ソルダーレジスト55の方が、第1ソルダーレジスト35よりも多く伸び縮みする。しかしながら、本実施形態では、第1層間樹脂絶縁層20の熱膨張率が第2層間樹脂絶縁層40の熱膨張率より大きいため、前述の緩和作用と同様に、第1および第2ソルダーレジスト35、55の伸縮による配線板10の反りに対する作用の不均衡が緩和されると共に、両者の伸縮量の相違も相殺され得る。その結果、温度変化による配線板10の反りが抑制される。そして、その結果、配線板10と電子部品88(
図5H参照)との接続不良が抑制されると共に、電子部品88との接続信頼性が高まる。
【0017】
本実施形態では、第1層間樹脂絶縁層20は、
図1に示されるように、無機繊維21と無機繊維21に含浸される絶縁性樹脂22とを含んでいる。同様に、第2層間樹脂絶縁層40は、無機繊維41と無機繊維41に含浸される絶縁性樹脂42とを含んでいる。無機繊維21、41の材料は特に限定されないが、絶縁性樹脂22、42よりも熱膨張率の小さい材料が好ましく、たとえばガラスクロスが用いられる。また、絶縁性樹脂22、42の材料も特に限定されず、たとえば、エポキシ樹脂、ポリエステル樹脂、ビスマレイミドトリアジン樹脂(BT樹脂)、イミド樹脂(ポリイミド)、フェノール樹脂、およびアリル化フェニレンエーテル樹脂(A−PPE樹脂)などから選択され、好ましくはエポキシ樹脂が用いられる。
【0018】
絶縁性樹脂22、42には、前述のような樹脂材料による主材の他に粒子状のフィラーなどの副材(図示せず)が添加されていてもよい。フィラーの材料は、たとえば、シリカ、アルミナおよび窒化ケイ素などから選択され、好ましくは、シリカが用いられる。しかしながら、フィラーの材料はこれらに限定されず、他の材料が用いられてもよい。このようにフィラーが添加され、その添加量が調整されることにより、第1および第2層間樹脂絶縁層20、40の熱膨張率が調整されてもよい。
【0019】
また、第1および第2層間樹脂絶縁層20、40は、無機繊維21、41を含んでいなくてもよい。
【0020】
図1に示される本実施形態の一実施例では、第1層間樹脂絶縁層20に含まれる絶縁性樹脂22の量が、第2層間樹脂絶縁層40に含まれる絶縁性樹脂42の量よりも多くされている。すなわち、第1層間樹脂絶縁層20全体に対する無機繊維21の重量比が、第2層間樹脂絶縁層40全体に対する無機繊維41の重量比よりも小さくされている。また、その結果、第1層間樹脂絶縁層20が第2層間樹脂絶縁層40よりも厚くされている。無機繊維21、41が絶縁性樹脂22、42よりも熱膨張率の低い材料から形成されていると、このように、無機繊維21の第1層間樹脂絶縁層20全体に対する重量比が無機繊維41の第2層間樹脂絶縁層40全体に対する重量比よりも小さくされることにより、第1層間樹脂絶縁層20の熱膨張率が第2層間樹脂絶縁層40の熱膨張率より大きくなり得る。
【0021】
図1に示される例では、第1層間樹脂絶縁層20を構成する無機繊維21と第2層間樹脂絶縁層40を構成する無機繊維41とは、同じ材料で構成されてもよく、異なる材料で構成されてもよい。同様に絶縁性樹脂22と絶縁性樹脂42とは、同じ材料で構成されてもよく、異なる材料で構成されてもよい。たとえば、絶縁性樹脂42の材料よりも熱膨張率の小さい材料で絶縁性樹脂22が構成される場合でも、無機繊維21の第1層間樹脂絶縁層20全体に対する重量比が、無機繊維41の第2層間樹脂絶縁層40全体に対する重量比よりも、なおいっそう小さくされて、第1層間樹脂絶縁層20の熱膨張率が第2層間樹脂絶縁層40の熱膨張率よりも大きくなるように構成されればよい。
【0022】
無機繊維21、41に含浸される絶縁性樹脂22、42の量は、第1および第2層間樹脂絶縁層20、40の製造時に、たとえば、無機繊維21、41が、絶縁性樹脂22、42の溶液が入れられた槽に浸漬される時間により調整され得る。無機繊維21、41が、絶縁性樹脂22、42の溶液が入れられた槽に長く浸漬されるほど、無機繊維21、41に含浸される絶縁性樹脂22、42の量が増加する。無機繊維21、41への絶縁性樹脂22、42の含浸方法および含浸量の調整方法は、これに限定されず、他の方法が用いられてもよい。たとえば、絶縁性樹脂22、42が無機繊維21、41に含浸された後に一次乾燥され、その後、さらに1回または複数回、絶縁性樹脂が含浸されることにより、含浸量を多くされてもよい。
【0023】
第1層間樹脂絶縁層20の熱膨張率が第2層間樹脂絶縁層40の熱膨張率よりも大きくされる方法としては、前述のように、単に無機繊維21、41に含浸される絶縁性樹脂22、42の量が調整される方法が、第1および第2層間樹脂絶縁層20、40の構成材料として多種の無機繊維および絶縁性樹脂材料を準備することが必要とされない点で好ましい。しかしながら、このような方法に限定されず、あらゆる方法を用いて、第1層間樹脂絶縁層20および/または第2層間樹脂絶縁層40の熱膨張率が調整されてもよい。以下に、幾つかの例が示される。
【0024】
図2には、本実施形態の他の実施例の配線板10が示されている。
図2に示される配線板10では、第1層間樹脂絶縁層20の無機繊維21が、第2層間樹脂絶縁層40の無機繊維41と同じ材料で、しかしながら、無機繊維41よりも少ない量で形成されている。また、
図2に示される例では、第1層間樹脂絶縁層20と第2層間樹脂絶縁層40の厚さが同じ厚さに形成されている。こうすることにより、
図1に示される例と同様に、第1層間樹脂絶縁層20全体に対する無機繊維21の重量比が、第2層間樹脂絶縁層40全体に対する無機繊維41の重量比よりも小さくなる。このため、無機繊維21、41が絶縁性樹脂22、42よりも熱膨張率の低い材料から形成されていると、第1層間樹脂絶縁層20の熱膨張率が第2層間樹脂絶縁層40の熱膨張率よりも大きくなる。
【0025】
また、無機繊維21の量と無機繊維41の量との差が適切に調整されることにより、第1層間樹脂絶縁層20が、
図2に示されるように第2層間樹脂絶縁層40と同じ厚さにされることも可能である。さらに、第1層間樹脂絶縁層20が第2層間樹脂絶縁層40よりも薄くされながら、第1層間樹脂絶縁層20の熱膨張率が第2層間樹脂絶縁層40よりも大きくされることも可能である。なお、第1層間樹脂絶縁層20の方が第2層間樹脂絶縁層40よりも厚く形成されてもよいことはいうまでもない。
【0026】
図2に示される本実施形態の配線板10の他の実施例の説明では、第1層間樹脂絶縁層20の無機繊維21が、第2層間樹脂絶縁層40の無機繊維41と同じ材料であることが前提とされたが、第1および第2層間樹脂絶縁層20、40を構成する材料は、このような条件に限定されず、あらゆる材料が用いられてよい。たとえば、無機繊維41の材料よりも熱膨張率の小さい材料で無機繊維21が構成される場合でも、無機繊維21の量が無機繊維41の量よりも、なおいっそう少なくされて、第1層間樹脂絶縁層20の熱膨張率が第2層間樹脂絶縁層40の熱膨張率よりも大きくなるように構成されればよい。
【0027】
図3には、本実施形態のさらに別の実施例の配線板10が示されている。
図3に示される配線板10では、第1層間樹脂絶縁層20の絶縁性樹脂22aが、第2層間樹脂絶縁層40の絶縁性樹脂42aよりも熱膨張率の大きい材料で構成されている。このため、第1層間樹脂絶縁層20の熱膨張率が、第2層間樹脂絶縁層40の熱膨張率よりも大きくなり得る。
図3に示される配線板10では、第1層間樹脂絶縁層20と第2層間樹脂絶縁層40とが同じ厚さに形成されているが、第1層間樹脂絶縁層20と第2層間樹脂絶縁層40とは、異なる厚さに形成されていてもよい。
【0028】
なお、
図3に示される例では、第1層間樹脂絶縁層20の絶縁性樹脂22aが第2層間樹脂絶縁層40の絶縁性樹脂42aよりも熱膨張率が大きい材料で構成されているが、絶縁性樹脂22a、42aに代えて、または、これらに加えて、第1層間樹脂絶縁層20の無機繊維21が第2層間樹脂絶縁層40の無機繊維41の材料よりも熱膨張率の高い材料で構成されてもよい。
【0029】
第1層間樹脂絶縁層20の熱膨張率が第2層間樹脂絶縁層40の熱膨張率よりも大きくされる方法は、前述の
図1〜
図3に例示される方法に限定されず、あらゆる方法が用いられ得る。
【0030】
本実施形態の配線板10の第1導体層30は、あらゆる導電性材料から形成され得る。好ましくは、短い時間で厚い膜が形成され得る電気めっきにより形成される銅電気めっき膜である。また、第2および第3導体層50、60も、同様に、あらゆる導電性材料から形成され得る。好ましくは、第2および第3導体層50、60は銅から形成され、銅箔、無電解めっきにより形成される無電解めっき膜、および、電気めっきにより形成される電気めっき膜(いずれも図示せず)の3層から構成される。しかしながら、第2および第3導体層50、60は、このような構成に限定されず、単層もしくは4層以上で構成されてもよく、めっき以外の方法、たとえば、スパッタリング法などにより形成されるスパッタ膜が含まれていてもよく、ニッケル箔などが含まれていてもよい。
【0031】
本実施形態では、
図1に示されるように、第1および第2ビア導体25a、45aは、それぞれ、第1および第2層間樹脂絶縁層20、40にそれぞれ設けられる導通用孔25b、45bの内面に形成される金属膜により構成されている。
図1に示される例では、導通用孔25b、45bが金属膜により完全に埋められているが、これに限定されず、導通用孔25b、45bは完全に埋められていなくてもよい。
【0032】
本実施形態では、
図1に示されるように、第1および第2ビア導体25a、45aは、それぞれ、第3導体層60側から第1導体層30側に向かってビア径が小さくなっており、このため、第1および第2ビア導体25a、45aの配線板10の積層方向に直交する断面の大きさが、第1層間樹脂絶縁層20の第1面F1に向って小さくなっている。配線板10が、たとえば、コアレス基板の場合、第1層間樹脂絶縁層20の第1導体層30が埋め込まれる側と反対側の面だけに導体層と絶縁層とが順次積層され、第3導体層60が形成される側から、たとえば、CO
2レーザーなどが照射されることにより導通用孔25b、45bが設けられるため、第1および第2ビア導体25a、45aは、
図1に示される形状になり易い。しかしながら、第1および第2ビア導体25a、45aの形状は、これに限定されず、たとえば、第1導体層30側と第3導体層60側で同じ大きさであってもよく、または、第3導体層60側から第1導体層30側に向かって拡径していてもよい。
【0033】
本実施形態では、
図1に示されるように、第3導体層60の表面は、第2ビア導体45a上の部分を除いて第2ソルダーレジスト55に覆われている。しかしながら、これに限定されず、第3導体層60のより多くの部分が第2ソルダーレジスト55に覆われないで露出していてもよい。同様に、第1導体層30側においても、第2パターン30bだけでなく、第1パターン30aを含む全ての第1導体層30の表面が、第1ソルダーレジスト35から露出していてもよい。
【0034】
第1および第2ソルダーレジスト35、55の材料は、はんだ耐熱性や絶縁性が良好なものであれば特に限定されないが、好ましくは、エポキシ樹脂やアクリル樹脂などにより形成され、たとえば、エポキシ樹脂に40〜70重量%の無機フィラー、たとえばSiO
2などが含有された材料により形成される。なお、第1ソルダーレジスト35と第2ソルダーレジスト55とは、異なる材料で形成されてもよい。
【0035】
つぎに、本発明の他の実施形態のプリント配線板が、
図4を参照しながら説明される。なお、前述の本発明の一実施形態と同じ構成要素には、
図1に付したものと同一の符号を付し、その詳細な説明は省略する。本発明の他の実施形態のプリント配線板11は、
図4に示されるように、第2導体層50と第2層間樹脂絶縁層40との間に、第3層間樹脂絶縁層70および第4導体層75が設けられる点で、前述の
図1に示される一実施形態の配線板10と異なる。本実施形態の配線板11には、第3層間樹脂絶縁層70を貫通し、第1および第2ビア導体25a、45aと協働して第1導体層30と第3導体層60とを電気的に接続する第3ビア導体78も備えられている。
【0036】
本実施形態の配線板11のその他の部分は、前述の一実施形態の配線板10と同様に構成される。すなわち、本実施形態の配線板11においても、第1層間樹脂絶縁層20は第2層間樹脂絶縁層40よりも熱膨張率が大きくなるように構成される。そのため、一実施形態の配線板10と同様に、周囲温度が変化した時の第1導体層30側と第3導体層60側との配線板11の反りに対する作用の不均衡が緩和される。その結果、温度変化による配線板11の反りが抑制される。そして、その結果、配線板11と電子部品88(
図5H参照)との接続不良が抑制されると共に、電子部品88との接続信頼性が高まる。
【0037】
本実施形態の配線板11の第1および第2層間樹脂絶縁層20、40の熱膨張率を調整する方法は、前述の一実施例と同様に、あらゆる方法が用いられ得る。すなわち、
図1〜3に示されるように、絶縁性樹脂22、42の無機繊維21、41への含浸量が調整されてもよく、無機繊維21、41の量が加減されてもよい。或いは、無機繊維21と無機繊維41とが熱膨張率の異なる材料で形成されてもよく、および/または、絶縁性樹脂22と絶縁性樹脂42とが熱膨張率の異なる材料で形成されてもよい。従って、第1層間樹脂絶縁層20の厚さと第2層間樹脂絶縁層40の厚さが同じでも、いずれか一方が他方より厚くてもよい。
【0038】
第3層間樹脂絶縁層70の熱膨張率、厚さ、および、無機繊維71や絶縁性樹脂72などの構成材料は特に限定されない。要は、周囲温度の変化による配線板11の反りが、第1層間樹脂絶縁層20の熱膨張率が第2層間樹脂絶縁層40の熱膨張率よりも大きくされることにより抑制されるものであればよい。しかしながら、第1層間樹脂絶縁層20の熱膨張率と第2層間樹脂絶縁層40の熱膨張率との違いが、配線板11の反りの抑制に効果的に寄与し得る点で、第3層間樹脂絶縁層70の熱膨張率は、第1層間樹脂絶縁層20の熱膨張率と第2層間樹脂絶縁層40の熱膨張率との間の大きさであることが好ましい。なお、第4導体層75の材料は、第2および第3導体層50、60と同様の材料および方法で形成され得る。
【0039】
なお、
図4には、第3層間樹脂絶縁層70および第4導体層75が、第2導体層50と第2層間樹脂絶縁層40との間に、第2導体層50側から順に積層されるように示されている。しかしながら、第3層間樹脂絶縁層70および第4導体層75は、第1層間樹脂絶縁層20と第2導体層50との間に、第1層間樹脂絶縁層20側から第4導体層75、次いで第3層間樹脂絶縁層70の順に積層されてもよい。また、第3層間樹脂絶縁層70および第4導体層75に加えて、さらに一組または複数組の層間樹脂絶縁層と導体層との組が、第2導体層50と第2層間樹脂絶縁層40との間、および/または、第1層間樹脂絶縁層20と第2導体層50との間に設けられてもよい。
【0040】
つぎに、本発明の一実施形態の配線板10の製造方法が、
図5A〜5Hを参照して説明される。なお、
図5A〜5Hでは、配線板10の製造工程が理解され易いように、
図1に示される向きから図面に垂直な方向の回転軸で180°回転された向きで、配線板10の製造工程途上の状態が示されている。
【0041】
一実施形態の配線板10の製造方法では、まず、
図5Aに示されるように、出発材料として、キャリア80とキャリア銅箔80a付き第1金属箔81とが用意され、キャリア80の両面に、キャリア銅箔80a付き第1金属箔81がキャリア銅箔80a側をキャリア80側に向けて積層され、加圧および加熱されて接合される。キャリア80には、好ましくは、ガラス繊維などの芯材にエポキシなどの絶縁性樹脂を含浸させた材料などからなる半硬化状態のプリプレグ材などが用いられるが、これに限定されず、他の材料が用いられてもよい。第1金属箔81の材料は、表面上に、後述の第1導体層30(
図5B参照)が形成され得るものであれば特に限定されないが、好ましくは銅箔またはニッケル箔が用いられる。また、第1金属箔81は、たとえば、2〜6μm、好ましくは5μmの厚さの金属箔が用いられる。また、キャリア銅箔80aは、たとえば、15〜30μm、好ましくは18μmの厚さの銅箔が用いられる。しかしながら、第1金属箔81およびキャリア銅箔80aの厚さは、これらに限定されず、他の厚さにされてもよい。
【0042】
キャリア銅箔80aと第1金属箔81とは、たとえば、貼り付け面の略全面において図示されない熱可塑性の接着剤により接着されている。しかしながら、これに限定されず、キャリア銅箔80aと第1金属箔81とは、後述の第1導体層30(
図5B参照)の導体パターンが設けられない外周付近の余白部において、接着剤または超音波接続により接合されてもよい。
【0043】
図5Aに示される例では、既にキャリア銅箔80aが接着された第1金属箔81が、単独のプリプレグ材からなるキャリア80に接合される例が示されているが、このような構成に限定されず、たとえば、キャリア80に両面銅張積層板が用いられ、両面に接合されている銅箔それぞれの上に単体の第1金属箔81が接着材などで接合されてもよい。
【0044】
なお、
図5A〜5Dには、キャリア80の両側の面に第1金属箔81が接着され、それぞれの面において配線板10が形成される製造方法の例が示されている。このようにキャリア80の両側で配線板10が形成されれば、一度に2つの配線板10が作製されるという点で好ましい。しかしながら、キャリア80の一方の面だけに配線板10が形成されてもよく、また、両側で互いに異なる回路パターンの配線板が形成されてもよい。配線板10の製造方法についての以下の説明は、両面に同じ回路パターンが形成される例が示される
図5A〜5Fを参照して説明されるため、一方の面だけについて説明され、他面側に関しての説明、および、各図面における他面側の符号は省略される。
【0045】
つぎに、
図5Bに示されるように、第1金属箔81上に第1導体層30が形成される。第1導体層30の形成方法は特に限定されないが、たとえば、電気めっき法が用いられる。具体的には、まず、第1金属箔81上に、後述の第1および第2パターン30a、30b(
図5H参照)が形成される部分以外の所定の領域にめっきレジスト膜(図示せず)が形成される。続いて、めっきレジスト膜が形成されていない第1金属箔81上に、たとえば、第1金属箔81をシード層として電気めっきにより、電気めっき膜が形成される。その後、めっきレジスト膜が除去される。その結果、
図5Bに示されるように、第1金属箔81上に第1導体層30が形成される。第1導体層30は、好ましくは銅からなる電気めっき膜である。
【0046】
つぎに、
図5Cに示されるように、第1金属箔81上および第1導体層30上に、半硬化状態の第1層間樹脂絶縁層20が積層され、さらに第1層間樹脂絶縁層20上に第2金属箔501が積層される。その後、第2金属箔501および第1層間樹脂絶縁層20は、キャリア80側に向かってプレスされ、さらに加熱される。この結果、第1層間樹脂絶縁層20が完全に硬化され、同時に、第1金属箔81および第1導体層30、ならびに第2金属箔501と接合される。なお、
図5Cにおいて、第1層間樹脂絶縁層20は、無機繊維21と絶縁性樹脂22とで構成されているが、第1層間樹脂絶縁層20は、無機繊維21を含まずに絶縁性樹脂22だけで構成されていてもよい。
【0047】
つぎに、
図5Dに示されるように、第2金属箔501および第1層間樹脂絶縁層20を貫通し、第1導体層30を露出させる導通用孔25bが形成される。具体的には、第2金属箔501の表面側から、第2金属箔501上の所定の位置にCO
2レーザーを用いてレーザー光が照射される。この結果、
図5Dに示されるように導通用孔25bが形成される。導通用孔25bの形成後、好ましくは、導通用孔25bについてデスミアが行われる。また、レーザー光の吸収効率が高まるように、レーザー光の照射の前に第2金属箔501の表面が黒化処理されてもよい。
【0048】
つぎに、
図5Eに示されるように、第2金属箔501上および導通用孔25b内に第1金属膜502が形成される。第1金属膜502は、好ましくは、無電解めっきにより形成される。無電解めっきにより形成される場合、第1金属膜502は、好ましくは0.3〜1μmの厚さに形成される。第1金属膜502は、他の好ましい例において、スパッタリング法により形成される。スパッタリング法により形成される場合、第1金属膜502は、好ましくは、0.05〜0.2μmの厚さに形成される。第1金属膜502の材料は特に限定されないが、好ましくは銅からなる。しかしながら、第1金属膜502の形成方法および材料は、これらに限定されず、他の方法および材料が用いられてもよい。
【0049】
続いて、第1金属膜502上に第2金属膜503が形成される。第2金属膜503の形成方法は特に限定されないが、短い時間で厚い膜が形成され得る点で、電気めっき法により形成されるのが好ましい。電気めっき法により形成される場合、まず、第1金属膜502にめっきレジスト膜82が形成される。めっきレジスト膜82は、導通用孔25bと第2導体層50(
図5F参照)の所定のパターンが設けられる部分とを少なくとも除く領域の第1金属膜502上に形成される。続いて、めっきレジスト膜82に覆われていない第1金属膜502上に、電気めっきにより第2金属膜503が形成される。その結果、導通用孔25bに、
図5Eに示されるように、第2金属膜503が充填され、第1および第2金属膜502、503からなる第1ビア導体25aが形成される。
【0050】
つぎに、めっきレジスト膜82に覆われている第1金属膜502、および第2金属箔501の一部が除去される。具体的には、まず、めっきレジスト膜82が剥離される。続いて、めっきレジスト膜82の剥離により露出する第1金属膜502、および、その下方の第2金属箔501が除去される。この結果、
図5Fに示されるように、第1導体層30が埋め込まれていない側の第1層間樹脂絶縁層20の表面に、第2金属箔501、第1金属膜502、第2金属膜503からなるパターン50aを有する第2導体層50が形成される。
【0051】
つぎに、
図5Gに示されるように、第2導体層50上および第1層間樹脂絶縁層20上に、第2層間樹脂絶縁層40と第3導体層60とが順に形成され、さらに第2ビア導体45aが第2層間樹脂絶縁層40に形成される。第2層間樹脂絶縁層40、第3導体層60および第2ビア導体45aは、
図5C〜
図5Fに示される工程を繰り返すことにより、第1層間樹脂絶縁層20、第2導体層50および第1ビア導体25aと同様に、それぞれ形成され得る。
【0052】
続いて、キャリア80、キャリア銅箔80aおよび第1金属箔81が除去される。具体的には、まず、たとえば、途中工程の配線板10が加熱され、キャリア銅箔80aと第1金属箔81とを接合している図示しない熱可塑性接着剤が軟化している状態で、両者が分離される。或いは、前述のように、両者が外周付近の余白部において接着剤または超音波接続により接合されている場合は、接合箇所よりも内周側で、キャリア銅箔80a、第1金属箔81、およびキャリア80が第1層間樹脂絶縁層20などと共に切断され、接合箇所が切除されることによりキャリア銅箔80aおよびキャリア80と第1金属箔81とが分離されてもよい。その後、第1金属箔81は、たとえばエッチングなどにより除去される。
【0053】
なお、
図5C〜
図5Fに示される工程をさらに1回または複数回繰り返すことにより、
図4に示される他の実施形態の配線板11のような、3個以上の層間樹脂絶縁層と4個以上の導体層と各層間樹脂絶縁層を貫通するビア導体とを有する配線板が形成され得る。
【0054】
つぎに、
図5Hに示されるように、第1導体層30の一部の表面上、および、第1導体層30側の第1層間樹脂絶縁層20の表面の一部の上に、第1ソルダーレジスト35が形成される。また、第3導体層60の表面上、および、第2層間樹脂絶縁層40の表面の第3導体層60が形成されていない部分上に第2ソルダーレジスト55が形成される。なお、
図5Hには、完成状態を示す
図1と整合するように、
図5Gに示される配線板10の工程途上品が図面に垂直な軸で180°回転された状態で、完成状態の配線板10が示されている。
【0055】
第1および第2ソルダーレジスト35、55は、たとえば、感光性のエポキシ材などからなる層が第1層間樹脂絶縁層20の第1導体層30側の全面、および第2層間樹脂絶縁層40の第3導体層60側の全面に形成された後、第1および第2ソルダーレジスト35、55が設けられる所定の箇所の上部のエポキシ材などからなる層が露光され、露光されない部分のエポキシ材が現像により除去されて形成される。しかしながら、これに限定されず、第1および第2ソルダーレジスト35、55は、第1および第2ソルダーレジスト35、55が設けられる箇所に対応する部分が開口されたマスクを用いるスクリーン印刷などの他の方法で設けられてもよい。また、第1および第2ソルダーレジスト35、55は、たとえば、非感光性のエポキシ材などからなる層が、第1層間樹脂絶縁層20の第1導体層30側の全面、および第2層間樹脂絶縁層40の第3導体層60側の全面に形成された後、ソルダーレジストの形成が不要な部分がレーザーで除去されることにより形成されてもよい。
【0056】
図5Hに示されるように、第1導体層30に形成されるパターンのうち、配線板10に実装される電子部品88の電極が接続される第2パターン30bが、第1ソルダーレジスト35に覆われず、第1ソルダーレジスト35に形成された開口部に露出している。一方、第3導体層60の表面は、第2ビア導体45a上の部分を除いて第2ソルダーレジスト55に覆われている。しかしながら、第2パターン30b以外の第1導体層30のパターン、たとえば第1パターン30a、および、第1パターン30aの周囲の第1層間樹脂絶縁層20の表面などが第1ソルダーレジスト35に覆われずに露出していてもよい。また、第3導体層60の表面のより多くの部分が第2ソルダーレジスト55に覆われずに露出していてもよい。
【0057】
また、ソルダーレジスト35および第2ソルダーレジスト55に覆われないで露出している第1および第3導体層30、60の表面上に、たとえばNi/Au、Ni/Pd/AuまたはSnなどからなる耐食層(図示せず)が形成されてもよい。また、液状の保護材料内への浸漬や保護材料の吹付けなどにより有機保護膜(OSP)からなる耐食層が形成されてもよく、或いは、はんだコート層(図示せず)が形成されてもよい。
【0058】
図5A〜
図5Hに示される工程を経ることにより、
図1に示される一実施形態の配線板10が完成する。完成した配線板10には、
図5Hに示されるように、たとえば、第1層間樹脂絶縁層20の第1面F1側に埋め込まれている第1導体層30に電子部品88が搭載されてもよい。
【0059】
一実施形態の配線板10の製造方法は、
図5A〜5Hを参照して説明された方法に限定されず、その条件や順序などは任意に変更され得る。また、特定の工程が省略されてもよく、別の工程が追加されてもよい。