特許第6386253号(P6386253)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6386253吸音性天井材及びそれを用いた吸音性天井の構築方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6386253
(24)【登録日】2018年8月17日
(45)【発行日】2018年9月5日
(54)【発明の名称】吸音性天井材及びそれを用いた吸音性天井の構築方法
(51)【国際特許分類】
   E04B 1/86 20060101AFI20180827BHJP
   G10K 11/16 20060101ALI20180827BHJP
【FI】
   E04B1/86 F
   G10K11/16 110
   G10K11/16 130
【請求項の数】10
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2014-96655(P2014-96655)
(22)【出願日】2014年5月8日
(65)【公開番号】特開2015-214800(P2015-214800A)
(43)【公開日】2015年12月3日
【審査請求日】2016年1月8日
【審判番号】不服2017-12598(P2017-12598/J1)
【審判請求日】2017年8月25日
(73)【特許権者】
【識別番号】592144766
【氏名又は名称】株式会社セラ−ズ
(74)【代理人】
【識別番号】100081558
【弁理士】
【氏名又は名称】齋藤 晴男
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 高士
【合議体】
【審判長】 小野 忠悦
【審判官】 前川 慎喜
【審判官】 大塚 裕一
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭52−121083(JP,A)
【文献】 実開昭52−97807(JP,U)
【文献】 特開平5−230931(JP,A)
【文献】 実開昭60−133011(JP,U)
【文献】 実開昭61−25418(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04B 1/62 - 1/99
E04B 9/00 - 9/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
任意の模様や色柄を印刷した樹脂製化粧フィルムと薄手のメタルプレートとを積層した基板を設け、前記基板の少なくとも両側辺を立ち上げて側壁を形成し、前記側壁の内側に、前記側壁と同じかそれ以上の高さの断熱・吸音材を装填して成り、前記化粧フィルムと前記メタルプレートには、互いに連通するピンホールが全面に亘って透設されており、前記ピンホールの孔径は、0.5〜1mmであり、前記メタルプレートは、0.6±0.2mmの厚さのアルミニウム合金板であることを特徴とする吸音性天井材。
【請求項2】
前記側壁を前記基板の四辺に形成した、請求項1に記載の吸音性天井材。
【請求項3】
前記側壁の上端部に外向きのフランジを形成した、請求項1又は2に記載の
吸音性天井材。
【請求項4】
前記基板をスパンドレル形状に成形した、請求項1に記載の吸音性天井材。
【請求項5】
請求項1又は2に記載の吸音性天井材を用いた吸音性天井の構築方法であって、前記吸音性天井材を多数、その断熱・吸音材の上面を先行設置したボードに直接、室内側から接着固定していくことを特徴とする吸音性天井の構築方法。
【請求項6】
前記ボードに前記吸音性天井材を多数、隙間なく接着していく、請求項5に記載の吸音性天井の構築方法。
【請求項7】
前記ボードに前記吸音性天井材を多数、適宜隙間を設けて接着していく、請求項5に記載の吸音性天井の構築方法。
【請求項8】
前記隙間にジョイナーを挟み込む、請求項7に記載の吸音性天井の構築方法。
【請求項9】
請求項3に記載の吸音性天井材を用いた吸音性天井の構築方法であって、前記吸音性天井材を多数、前記フランジをライン状に配した受け材上に載せ置くことで配置していくことを特徴とする吸音性天井の構築方法。
【請求項10】
請求項3に記載の吸音性天井材を用いた吸音性天井の構築方法であって、前記吸音性天井材を多数、前記フランジを格子状に配した受け材上に載せ置くことで配置していくことを特徴とする吸音性天井の構築方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は吸音性天井材及びそれを用いた吸音性天井の構築方法に関するものであり、より詳細には、コンサートホール、公共施設、学校、病院、図書館、会社の会議室、一般住宅等の天井用のパネルであって、見栄えがよく且つ吸音性能に優れた吸音性天井材及びそれを用いた吸音性天井の構築方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、オフィスビルのホール、コンサートホール、公共施設、学校、病院、図書館等の天井には、留め付けビスが隠れるように成形された金属化粧板であるスパンドレルや、システム天井が多く用いられている。一般にシステム天井には、格子に組んだスチール製Tバー上に、正方形に形成したロックウール製等のボードを載置するタイプと、同一方向にライン状に組んだスチール製Tバー上に、長尺に形成したロックウール製等のボードを載置するタイプとがある。
【0003】
上記従来の天井材のうち、スパンドレルは比較的見栄え良く、高級感を醸し出すことが可能であるが、吸音性についての配慮に欠けるため、特に静粛が要求される上記建物の天井材としては適さない。一方、システム天井の場合は、ある程度の吸音性能があるものの、決して十分なものではなく、また、デザインが単調なものとなるため、見栄の良い、高級感のある外観を創出することは困難である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001−132132号公報
【特許文献2】特開2001−65077号公報
【特許文献3】実開昭54−98014号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述したように、従来の天井材のうち、スパンドレルの場合は吸音性に欠けるため、特に静粛が要求される建物の天井材には適さないという欠点があり、システム天井の場合は、吸音性能が不十分で、デザインが単調なため、見栄の良い、高級感のある外観を創出することが困難という問題があった。
【0006】
そこで本発明は、見栄の良い、高級感のある外観を創出することができ、しかも、優れた吸音性能を有し、特に、オフィスビルのホール、コンサートホール、公共施設、学校、病院、図書館等の静粛性が要求される建物の天井に用いるのに好適で、不燃性を有する吸音性天井材及びそれを用いた吸音性天井の構築方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するための請求項1に記載の発明は、任意の模様や色柄を印刷した樹脂製化粧フィルムと薄手のメタルプレートとを積層した基板を設け、前記基板の少なくとも両側辺を立ち上げて側壁を形成し、前記側壁の内側に、前記側壁と同じかそれ以上の高さの断熱・吸音材を装填して成り、前記化粧フィルムと前記メタルプレートには、互いに連通するピンホールが全面に亘って透設されており、前記ピンホールの孔径は、0.5〜1mmであり、前記メタルプレートは、0.6±0.2mmの厚さのアルミニウム合金板であることを特徴とする吸音性天井材である。
【0009】
一実施形態においては、前記側壁は前記基板の四辺に形成され、また、前記側壁の上端部に外向きのフランジが形成される。また、他の実施形態においては、前記基板がスパンドレル形状に成形される。
【0010】
上記課題を解決するための請求項5に記載の発明は、請求項1又は2に記載の吸音性天井材を用いた吸音性天井の構築方法であって、前記吸音性天井材を多数、その断熱・吸音材の上面を先行設置したボードに直接、室内側から接着固定していくことを特徴とする吸音性天井の構築方法である。
【0011】
上記課題を解決するための請求項に記載の発明は、請求項に記載の吸音性天井材を用いた吸音性天井の構築方法であって、前記吸音性天井材を多数、前記フランジをライン状に配した受け材上に載せ置くことで配置していくことを特徴とする吸音性天井の構築方法である。
【0012】
上記課題を解決するための請求項10に記載の発明は、請求項に記載の吸音性天井材を用いた吸音性天井の構築方法であって、前記吸音性天井材を多数、前記フランジを格子状に配した受け材上に載せ置くことで配置していくことを特徴とする吸音性天井の構築方法である。
【発明の効果】
【0013】
上述したように本発明に係る吸音性天井材は、必要に応じて任意の模様や色柄を印刷した樹脂製化粧フィルムと薄手のメタルプレートとを積層し、化粧フィルムからメタルプレートにかけて互いに連通するピンホールを全面に亘って透設した基板を設け、その基板の少なくとも両側辺を立ち上げて側壁を形成し、側壁の内側に、側壁と同じかそれ以上の高さの断熱・吸音材を装填して成るので、化粧フィルムとして、木目その他任意の模様や色柄等を表現したものを用いることで、従来にない見栄えの良い天井を構築することができ、また、化粧フィルムは、メタルプレートに裏打ちされるために十分な表面強度が得られ、且つ、十分な保形力が確保される効果がある。
【0014】
また、化粧フィルムに穿設されるピンホールは、孔径が0.5〜1mmであって、天井に配置された場合には視認不可状態となるので、ピンホールの存在によって見た目が損なわれることは皆無となり、また、室内の騒音、雑音は無数のピンホールから吸収され、その上の断熱・吸音材に取り込まれて消音されるので、本発明に係る吸音性天井材は、特にコンサートホール、公共施設、学校、病院、図書館、会社の会議室その他、消音が必要な室内の天井材として好適であり、更に、その構成素材からして不燃性を具備するという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明に係る吸音性天井材の第1の実施形態の中間省略斜視図である。
図2】本発明に係る吸音性天井材の第2の実施形態の中間省略斜視図である。
図3】本発明に係る吸音性天井材の第1の実施形態の施工例を示す部分省略斜視図である。
図4】本発明に係る吸音性天井材の第1の実施形態の別の施工例を示す縦断面図である。
図5】本発明に係る吸音性天井材の第3の実施形態の正面図である。
図6】本発明に係る吸音性天井材の構造を示す縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下に、本発明を実施するための種々の形態につき、添付図面に依拠して説明する。本発明に係る吸音性天井材Aは、任意の模様や色柄を印刷した樹脂製化粧フィルム2と薄手のメタルプレート3とを積層し、化粧フィルム2からメタルプレート3にかけて互いに連通するピンホール4、4aを全面に亘って透設した基板1を設け、その基板1の少なくとも両側辺を立ち上げて側壁5、5aを形成し、側壁5、5aの内側に、側壁5、5aと同じかそれ以上の高さの断熱・吸音材7を装填して成るものである。図示した例では、断熱・吸音材7は、側壁5、5aよりも高いものとされている。
【0017】
表層となる、換言すれば、人目に晒されることになる化粧フィルム2は、木目模様その他種々多様の任意の模様や色柄表現等の印刷が可能なものである。この化粧フィルム2としては、例えば、グラビア印刷可能な、厚さ0.17mm以下の塩化ビニル樹脂系フィルムが用いられる。この化粧フィルム2が、アクリル樹脂系粘着剤等の粘着層10を介してメタルプレート3に合着される(図6参照)。メタルプレート3としては、例えば、厚さ0.6mm前後、即ち、0.6±0.2mmの薄手のアルミニウム合金板が用いられる。
【0018】
化粧フィルム2とメタルプレート3には、互いに連通し合うピンホール4、4aがその全面に亘って透設される。各ピンホール4、4aは、化粧フィルム2とメタルプレート3の合着前にそれぞれに透設しておき、ピンホール4とピンホール4aを合わせて合着することとしてもよいが、合着後に化粧フィルム2からメタルプレート3にかけて穿孔する方法の方が効率的である。
【0019】
なお、ピンホール4、4aは、目立たないサイズ、即ち、0.5〜1mm程度の微小孔であって、定間隔(例えば、4mm)置きに又はランダムに穿設される。孔径がこのレベルであると、天井面に配設された場合、その表面に施される模様や色柄表現等に関係なく、ほとんど視認することができないものとなる(図面上は、その存在を明確にするために実際よりも大きく表示してある。)。
【0020】
側壁5、5aは必ずしも垂直である必要はなく、その一方又は双方を外方に傾けて形成することで、両側壁5、5aが上方において拡開する形状とすることもできる。また、第2の実施形態においては、側壁5、5aの上端部を外方に折曲延長して、外向きのフランジ6が形成される(図2参照)。
【0021】
断熱・吸音材7は、側壁5、5a間に密に収まる、グラスウール(ロックウール)、発泡樹脂等の厚みが25mm程度の断面四角形(あるいは台形)の長尺成型体で、側壁5、5aの内側に接着固定される。
【0022】
第3の実施形態においては、基板1がスパンドレル形状に成形される(図5)。即ち、一方の側の側壁5上端に、水平方向に伸びる差し込み板8が形成され、他方の側の側壁5aに、差し込み板8を受け入れて係止する係止部9が形成される。この第3の実施形態の場合は、1つの基板1の差し込み板8を隣の基板1の係止部9に差し込んで係止させる方法で、横に連結していく。
【0023】
次いで、上記のような構成の吸音性天井材Aを用いた本発明に係る吸音性天井の構築方法について説明する。先ず、図1に示される第1の実施形態の吸音性天井材Aを用いる場合は、その断熱・吸音材7の上面を、常法により先行設置したプラスターボード等のボード11に直接、室内側から接着固定するという方法で、次々と固定していく。その場合、隣接する吸音性天井材間は、隙間なく密に固定していく方法(図3参照)と、適宜隙間を設けて固定していく方法(図4参照)とがある。
【0024】
但し、第1の実施形態における吸音性天井材Aを隙間を設けて固定していくと、ボード11が露見して見た目が悪くなるおそれがある。そこで、例えば、断面T字型のジョイナー13を用意し、これを吸音性天井材A間に挟み込むようにすることが好ましい(図4参照)。そのようにすることにより、ジョイナー13によって隙間が閉塞されるため、ボード11が露見して見た目を悪くすることがなくなる。
【0025】
また、第2の実施形態の吸音性天井材Aを用いてこの方法を実施する場合は、必然的にフランジ6の幅分の間隔が開くことになってフランジ6が露見することになるが、フランジ6は吸音性天井材Aの一部であるため、何ら外観を損ねることにはならない。なお、フランジ6を設ける第2の実施形態の吸音性天井材Aを用いる場合は、隣接する吸音性天井材Aのフランジ6同士を重ね合わせることとする。
【0026】
更に、第2の実施形態の吸音性天井材Aを用いる場合は、そのフランジ6を、ライン状に並設した受け材12上に載置していく方法で、多数の吸音性天井材Aを次々と設置していくことができる。受け材12は、一般に行われている、所謂Tバーを用いる方法で吊り下げて組んでいくことができる。また、受け材12は格子状に組むこともあり、その場合は、吸音性天井材Aとして、四辺に側壁5、5aを設け、且つ、フランジ6を設けたものを用いることになる。なお、図5に示すスパンドレル形状とした吸音性天井材Aの場合の施工方法は、上述したとおりである。
【0027】
以上いずれの実施形態の場合においても、人目に晒される表層を構成する化粧フィルム2は、木目その他任意の模様や色柄等を表現し、場合によっては天井画を表現することも可能であり、予め種々のものを用意しておいて用途に合わせて選択することができるだけでなく、その都度所望の模様や色柄に印刷して用いることも可能であるため、多品種小ロット施工に適するものとなる。
【0028】
また、化粧フィルム2に穿設されるピンホール4は、孔径が0.5〜1mm程度の微小孔であって、近距離においても熟視しないと視認できず、ましてや、かなり上方に位置することになる天井に配置された場合には視認不可状態となる。従って、ピンホール4の存在によって見た目が損なわれることは皆無となる。更に、ピンホール5は、微小孔であるために埃が溜まりにくく、衛生的なものとなる。
【0029】
そして、この化粧フィルム2はメタルプレート3に張着されるため、十分な表面強度が得られ、且つ、十分な保形力が確保される。また、室内の騒音、雑音は無数のピンホール4、4aから吸収され、その上の断熱・吸音材7に取り込まれて消音される。従って、本発明に係る吸音性天井材Aは、特にコンサートホール、公共施設、学校、病院、図書館、会社の会議室その他、消音が必要な室内の天井用パネルとして好適なものとなり、更に、その構成素材からして不燃性を具備したものとなる。
【0030】
なお、吸音孔が、本発明におけるピンホール4、4aのように孔径が1mm以下の微小孔である場合は、それよりも孔径の大きい吸音孔の場合に比較して、より広い帯域において消音効果を発揮することが知られているところからして、本発明に係る吸音性壁面材は、非常に優れた消音効果を発揮するであろうことを容易に窺い知ることができよう。
【0031】
この発明をある程度詳細にその最も好ましい実施形態について説明してきたが、この発明の精神と範囲に反することなしに更に異なる実施形態を構成することができることは言うまでもない。従って、この発明は、添付請求の範囲において限定した以外はその特定の実施形態に制約されるものではない。
【符号の説明】
【0032】
A 吸音性天井材
1 基板
2 化粧フィルム
3 メタルプレート
4、4a ピンホール
5、5a 側壁
6 フランジ
7 断熱・吸音材
8 差し込み板
9 係止部
10 粘着層
11 ボード
12 受け材
13 ジョイナー
図1
図2
図3
図4
図5
図6