特許第6386270号(P6386270)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6386270時刻情報伝送システム、送信装置、及び受信装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6386270
(24)【登録日】2018年8月17日
(45)【発行日】2018年9月5日
(54)【発明の名称】時刻情報伝送システム、送信装置、及び受信装置
(51)【国際特許分類】
   G04G 5/00 20130101AFI20180827BHJP
   G04G 7/00 20060101ALI20180827BHJP
   H04L 7/00 20060101ALI20180827BHJP
   H04L 7/02 20060101ALI20180827BHJP
【FI】
   G04G5/00 J
   G04G7/00
   H04L7/00
   H04L7/02
【請求項の数】12
【全頁数】28
(21)【出願番号】特願2014-136144(P2014-136144)
(22)【出願日】2014年7月1日
(65)【公開番号】特開2016-14571(P2016-14571A)
(43)【公開日】2016年1月28日
【審査請求日】2017年4月4日
(73)【特許権者】
【識別番号】592018113
【氏名又は名称】株式会社リンク
(74)【代理人】
【識別番号】110000350
【氏名又は名称】ポレール特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】山本 薫
(72)【発明者】
【氏名】西浦 俊和
【審査官】 菅藤 政明
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−80885(JP,A)
【文献】 特開2009−128174(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G04G 5/00−5/04
G04G 7/00
H04L 7/00−7/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
外部から、時刻情報を所定の周期Tで受信するとともに、前記時刻情報が示す実タイミングを示す正秒信号を前記時刻情報よりも遅れて前記周期Tで受信し、前記時刻情報を含む情報信号を前記周期Tで送信する送信装置と、伝送路を介して前記送信装置から前記情報信号を受信する受信装置とを備える時刻情報伝送システムであって、
前記送信装置は、
前記伝送路による信号遅延時間t1を取得する遅延時間取得部と、
前記信号遅延時間t1を用いて遅延時間t2を算出し、前記遅延時間t2を含む遅延時間指定情報を生成する演算部と、
前記時刻情報と前記遅延時間指定情報とを含むフレーム情報を生成して前記情報信号として送信するフレーム情報送信部と、を備え、
前記受信装置は、
前記送信装置から受信した前記フレーム情報から、前記正秒信号のタイミングと同じタイミングの正秒タイミングを取出す基準となる基準タイミングを取出すとともに、前記時刻情報と前記遅延時間指定情報とを復元する復号部と、
前記基準タイミングと前記遅延時間指定情報に含まれる前記遅延時間t2とに基づき、前記正秒タイミングを取出し、前記正秒タイミングで前記時刻情報を時計回路に設定し、該時計回路から実時刻情報を出力する時計部と、
を備えることを特徴とする時刻情報伝送システム。
【請求項2】
請求項1に記載された時刻情報伝送システムであって、
前記送信装置は、処理用クロック信号を生成する処理用クロック信号生成部を備え、
前記フレーム情報送信部は、前記フレーム情報を、前記処理用クロック信号を用いて符号化し、前記時刻情報と前記遅延時間指定情報と前記処理用クロック信号を分周した基準クロック信号とを含む情報信号として送信し、
前記復号部は、前記送信装置から受信した前記情報信号から、前記基準クロック信号を取出し、該取出した前記基準クロック信号に基づき前記処理用クロック信号を復元することを特徴とする時刻情報伝送システム。
【請求項3】
請求項1に記載された時刻情報伝送システムであって、
前記送信装置は、
第1の情報信号を前記受信装置へ送信し、前記受信装置から折り返された前記第1の情報信号を受信することにより、前記信号遅延時間t1を取得し、前記フレーム情報を生成して、第2の情報信号として前記信装置へ送信し、
前記受信装置は、
前記第2の情報信号を受信して、該第2の情報信号から前記基準タイミングを取出すとともに、前記時刻情報と前記遅延時間指定情報とを復元し、前記基準タイミングと前記遅延時間t2とに基づき、前記正秒タイミングを取出すことを特徴とする時刻情報伝送システム。
【請求項4】
請求項1に記載された時刻情報伝送システムであって、
前記演算部は、前記受信装置が前記フレーム情報を受信開始した後、前記基準タイミングを取出すまでの時間をt3とし、前記送信装置が前記正秒信号を外部から受信した後、前記フレーム情報を送信開始するまでの時間をt0とするとき、前記Tと前記t0と前記t1と前記t3とを用いて前記t2を算出することを特徴とする時刻情報伝送システム。
【請求項5】
請求項1に記載された時刻情報伝送システムであって、
前記送信装置は、前記時刻情報を前記周期Tで受信する毎に、前記信号遅延時間t1を取得して前記遅延時間指定情報を生成し、前記生成した遅延時間指定情報を含む前記フレーム情報を生成して送信し、
前記受信装置は、前記フレーム情報を受信する毎に、前記基準タイミングを取出すとともに前記時刻情報及び前記遅延時間指定情報を復元し、前記基準タイミングと前記遅延時間t2とに基づき、前記正秒タイミングを取出すことを特徴とする時刻情報伝送システム。
【請求項6】
請求項1に記載された時刻情報伝送システムであって、
前記受信装置を第1の受信装置とし、前記受信装置の構成を有する第2の受信装置を含み、前記送信装置と前記第1の受信装置と前記第2の受信装置とが、この順に、芋づる形式で信号接続され、
前記第1の受信装置は、前記送信装置からの信号を折り返して前記送信装置へ送信する折り返し状態と、前記送信装置からの信号を折り返さず前記第2の受信装置からの信号を前記送信装置へ送信する非折り返し状態との間で切り替える第1のスイッチを備え、
前記第2の受信装置は、前記第1の受信装置からの信号を折り返して前記第1の受信装置へ送信する折り返し状態と、前記第1の受信装置からの信号を折り返さない非折り返し状態との間で切り替える第2のスイッチを備え、
前記送信装置は、
前記第1の受信装置を折り返し状態に設定する第1の情報信号を、前記第1の受信装置へ送信し、その後、第2の情報信号を前記第1の受信装置へ送信し、前記第1の受信装置から折り返された前記第2の情報信号を受信することにより、前記送信装置と前記第1の受信装置との間の伝送路による第1の信号遅延時間t1(1)を取得し、該第1の信号遅延時間t1(1)を用いて遅延時間t2(1)を算出し、前記遅延時間t2(1)を含む第1の遅延時間指定情報を生成し、前記第1の遅延時間指定情報を含み前記第1の受信装置を非折り返し状態に設定する第3の情報信号を前記第1の受信装置へ送信し、
前記第1の受信装置は、
前記第1の情報信号を受信すると前記第1のスイッチを折り返し状態にし、前記第2の情報信号を受信すると該受信した第2の情報信号を前記送信装置へ折り返して送信し、前記第3の情報信号を受信すると、前記第1のスイッチを非折り返し状態にし、前記第3の情報信号から前記基準タイミングを取出すとともに前記第1の遅延時間指定情報を復元し、前記基準タイミングと前記遅延時間t2(1)とに基づき、前記正秒タイミングを取出し、
前記送信装置は、
前記第2の受信装置を折り返し状態に設定する第4の情報信号を、前記第1の受信装置を介して前記第2の受信装置へ送信し、その後、第5の情報信号を前記第1の受信装置を介して前記第2の受信装置へ送信し、前記第2の受信装置から折り返された前記第5の情報信号を前記第1の受信装置を介して受信することにより、前記送信装置と前記第2の受信装置との間の伝送路による第2の信号遅延時間t1(2)を取得し、該第2の信号遅延時間t1(2)を用いて遅延時間t2(2)を算出し、前記遅延時間t2(2)を含む第2の遅延時間指定情報を生成し、前記第2の遅延時間指定情報を含み前記第2の受信装置を非折り返し状態に設定する第6の情報信号を、前記第1の受信装置を介して前記第2の受信装置へ送信し、
前記第2の受信装置は、
前記第1の受信装置を介して前記第4の情報信号を受信すると前記第2のスイッチを折り返し状態にし、前記第1の受信装置を介して前記第5の情報信号を受信すると該受信した第5の情報信号を、前記第1の受信装置を介して前記送信装置へ折り返して送信し、前記第1の受信装置を介して前記第6の情報信号を受信すると、前記第2のスイッチを非折り返し状態にし、前記第6の情報信号から前記基準タイミングを取出すとともに前記第2の遅延時間指定情報を復元し、前記基準タイミングと前記遅延時間t2(2)とに基づき、前記正秒タイミングを取出すことを特徴とする時刻情報伝送システム。
【請求項7】
請求項6に記載された時刻情報伝送システムであって、
前記送信装置は、前記送信装置で生成された電気信号を光信号に変換して前記第1の受信装置へ出力し、前記第1の受信装置からの光信号を電気信号に変換する第1の電気/光変換器を備え、
前記第1の受信装置は、前記第1の受信装置で生成された電気信号を光信号に変換して前記送信装置へ出力し、前記送信装置からの光信号を電気信号に変換する第2の電気/光変換器と、前記第1の受信装置で生成された電気信号を光信号に変換して前記第2の受信装置へ出力し、前記第2の受信装置からの光信号を電気信号に変換する第3の電気/光変換器とを備え、
前記第2の受信装置は、前記第2の受信装置で生成された電気信号を光信号に変換して前記第1の受信装置へ出力し、前記第1の受信装置からの光信号を電気信号に変換する第4の電気/光変換器を備え、
前記送信装置と前記第1の受信装置との間、前記第1の受信装置と前記第2の受信装置との間が、それぞれ、1本の光通信ケーブルで接続されることを特徴とする時刻情報伝送システム。
【請求項8】
請求項1に記載された時刻情報伝送システムであって、
前記受信装置は、さらに、観測情報を前記送信装置へ送出する観測情報送出部と、前記送信装置からの信号を折り返して前記送信装置へ送信する折り返し状態と、前記送信装置からの信号を折り返さない非折り返し状態との間で切り替えるスイッチとを備え、前記送信装置から前記情報信号を受信する時間帯は、前記スイッチを前記折り返し状態にし、前記送信装置から前記情報信号を受信しない時間帯は、前記スイッチを前記非折り返し状態にし、前記非折り返し状態の時間帯において、前記観測情報送出部からの前記観測情報を前記送信装置へ送信することを特徴とする時刻情報伝送システム。
【請求項9】
請求項2に記載された時刻情報伝送システムであって、
前記受信装置は、前記基準クロック信号を取出す際に、前記送信装置から受信した前記情報信号をサンプリングすることなく、ゲートで取出すことを特徴とする時刻情報伝送システム。
【請求項10】
請求項1に記載された時刻情報伝送システムであって、
前記フレーム情報送信部は、同期パターンと前記時刻情報と前記遅延時間指定情報とを含むフレーム情報を生成し、
前記復号部は、前記送信装置から受信した前記フレーム情報から、同期パターンを検出したときの同期タイミングを、前記基準タイミングとして取出し、
前記時計部は、前記同期タイミングと前記遅延時間t2とに基づく前記正秒タイミングで、前記時刻情報を時計回路に設定することを特徴とする時刻情報伝送システム。
【請求項11】
外部から、時刻情報を所定の周期Tで受信するとともに、前記時刻情報が示す実タイミングを示す正秒信号を前記時刻情報よりも遅れて前記周期Tで受信し、前記時刻情報を含む情報信号を前記周期Tで伝送路を介して受信装置に送信する送信装置であって、
処理用クロック信号を生成する処理用クロック信号生成部と、
前記伝送路による信号遅延時間t1を取得する遅延時間取得部と、
前記信号遅延時間t1を用いて遅延時間t2を算出し、前記遅延時間t2を含む遅延時間指定情報を生成する演算部と、
前記時刻情報と前記遅延時間指定情報とを含むフレーム情報を生成し、前記フレーム情報を前記処理用クロック信号を用いて符号化し、前記時刻情報と前記遅延時間指定情報と
前記処理用クロック信号を分周した基準クロック信号とを含む情報信号として送信するフレーム情報送信部と、
を備えることを特徴とする送信装置。
【請求項12】
外部から、時刻情報を所定の周期Tで受信するとともに、前記時刻情報が示す実タイミングを示す正秒信号を前記時刻情報よりも遅れて前記周期Tで受信し、伝送路による信号遅延時間に基づいて算出された遅延時間t2を含む遅延時間指定情報を生成する送信装置から、前記伝送路を介して、前記時刻情報と前記遅延時間指定情報とを含むフレーム情報を、前記周期Tで受信する受信装置であって、
前記送信装置から受信した前記フレーム情報から、基準タイミングを取出すとともに、前記時刻情報と前記遅延時間指定情報とを復元する復号部と、
前記基準タイミングと前記遅延時間t2とに基づき、前記正秒信号のタイミングと同じタイミングの正秒タイミングを取出し、前記正秒タイミングで前記時刻情報を時計回路に設定し、該時計回路から実時刻情報を出力する時計部と、
を備えることを特徴とする受信装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、GPS(Global Positioning System:全地球測位網)受信機等からの正確な時刻情報を伝送する時刻情報伝送技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば、地震や津波の観測システムにおいては、観測地点に設置された観測装置で収集したデータに対し、正確な時刻情報を付与することが求められる。そのため、GPS受信機から取得した正確な時刻情報を、観測データのタイムスタンプとして使用している。しかし、観測装置が海底等に設置された場合、観測装置においてGPS時刻情報を直接取得することは困難である。そこで、陸上の解析装置において、観測装置から送信された観測データを解析する際に、観測装置で付与された時刻情報を、正確なGPS時刻情報に変換している。そのため、観測データをリアルタイムに解析することが困難である。
【0003】
また、地震や津波の観測システムにおいては、観測装置で測定に使用するクロック信号の精度が、測定結果の品質を大きく左右する。そのため、観測装置において恒温槽タイプの発振器を使用し周波数精度の向上を図っているが、消費電力が大きいため、観測点が数千mという深海の場合は電力供給が困難である。
【0004】
下記の特許文献1には、陸上局でGPS電波から時刻情報を生成し、該時刻情報を通信ケーブルを介して、観測装置を有する海底局へ送信する観測システムにおいて、通信ケーブルに起因する遅延情報を、陸上局から海底局へ送信し、該遅延情報に基づき時刻情報を補正することが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2011-80885公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、送信装置から、精度のよい時刻情報又はクロック信号を、受信装置へ送信することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するための、本願発明の時刻情報伝送システムの代表的な構成は、次のとおりである。すなわち、
外部から、時刻情報を所定の周期Tで受信するとともに、前記時刻情報が示す実タイミングを示す正秒信号を前記時刻情報よりも遅れて前記周期Tで受信し、前記時刻情報を含む情報信号を前記周期Tで送信する送信装置と、伝送路を介して前記送信装置から前記情報信号を受信する受信装置とを備える時刻情報伝送システムであって、
前記送信装置は、
前記伝送路による信号遅延時間t1を取得する遅延時間取得部と、
前記信号遅延時間t1を用いて遅延時間t2を算出し、前記遅延時間t2を含む遅延時間指定情報を生成する演算部と、
前記時刻情報と前記遅延時間指定情報とを含むフレーム情報を生成して前記情報信号として送信するフレーム情報送信部と、を備え、
前記受信装置は、
前記送信装置から受信した前記フレーム情報から、前記正秒信号のタイミングと同じタイミングの正秒タイミングを取出す基準となる基準タイミングを取出すとともに、前記時刻情報と前記遅延時間指定情報とを復元する復号部と、
前記基準タイミングと前記遅延時間指定情報に含まれる前記遅延時間t2とに基づき、前記正秒タイミングを取出し、前記正秒タイミングで前記時刻情報を時計回路に設定し、該時計回路から実時刻情報を出力する時計部と、
を備えることを特徴とする時刻情報伝送システム。
【0008】
上記課題を解決するための、本願発明の送信装置の代表的な構成は、次のとおりである。すなわち、
外部から、時刻情報を所定の周期Tで受信するとともに、前記時刻情報が示す実タイミングを示す正秒信号を前記時刻情報よりも遅れて前記周期Tで受信し、前記時刻情報を含む情報信号を前記周期Tで送信する送信装置であって、
処理用クロック信号を生成する処理用クロック信号生成部と、
前記伝送路による信号遅延時間t1を取得する遅延時間取得部と、
前記信号遅延時間t1を用いて遅延時間t2を算出し、前記遅延時間t2を含む遅延時間指定情報を生成する演算部と、
前記時刻情報と前記遅延時間指定情報とを含むフレーム情報を生成し、前記フレーム情報を前記処理用クロック信号を用いて符号化し、前記時刻情報と前記遅延時間指定情報と前記処理用クロック信号を分周した基準クロック信号とを含む情報信号として送信するフレーム情報送信部と、
を備えることを特徴とする送信装置。
【0009】
上記課題を解決するための、本願発明の受信装置の代表的な構成は、次のとおりである。すなわち、
外部から、時刻情報を所定の周期Tで受信するとともに、前記時刻情報が示す実タイミングを示す正秒信号を前記時刻情報よりも遅れて前記周期Tで受信する送信装置から、伝送路を介して、前記時刻情報を含む第1のフレーム情報又は前記時刻情報と遅延時間指定情報とを含む第2のフレーム情報を、前記周期Tで受信する受信装置であって、
前記送信装置から受信した前記第2のフレーム情報から、基準タイミングを取出すとともに、前記時刻情報と前記遅延時間指定情報とを復元する復号部と、
前記基準タイミングと前記遅延時間指定情報に含まれる遅延時間t2とに基づき、前記正秒信号のタイミングと同じタイミングの正秒タイミングを取出し、前記正秒タイミングで前記時刻情報を時計回路に設定し、該時計回路から実時刻情報を出力する時計部と、
を備えることを特徴とする受信装置。
【発明の効果】
【0010】
上記構成によれば、送信装置から、精度のよい時刻情報又はクロック信号を、受信装置へ送信することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の第1実施形態に係る時刻情報伝送システムの構成を示す図である。
図2】本発明の第1実施形態に係る動作タイミングを示す図である。
図3】本発明の第1実施形態に係る時刻情報用伝送フレーム等の説明図である。
図4】本発明の第2実施形態に係る時刻情報伝送システムの構成を示す図である。
図5】本発明の第3実施形態に係る時刻情報伝送システムの構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
(第1実施形態)
本発明の第1実施形態に係る時刻情報伝送システムについて、図1図3を用いて説明する。図1は、本発明の第1実施形態に係る時刻情報伝送システムの構成を示す図であり、該システムの機能を実現するためのブロック図である。図2は、第1実施形態に係る動作タイミングを示す図である。図3は、第1実施形態に係る時刻情報用伝送フレーム等の説明図である。
【0013】
図1に示すように、この時刻情報伝送システムは、時刻情報を送信する送信装置10と、時刻情報を受信する受信装置20と、送信装置10と受信装置20とを通信接続する伝送路である通信ケーブル51とを含むように構成される。例えば、送信装置10は、陸上に設置される陸上局装置に含まれ、受信装置20は、海底に設置される海底局装置に含まれる。陸上局装置は、GPS受信機を含み、海底局装置は、地震や津波の観測装置を含む。通信ケーブル51の長さは、例えば、数十メートル〜数百キロメートルである。
【0014】
まず、この時刻情報伝送システムの動作概要を説明する。
送信装置10は、GPS受信機から、正確な時刻情報d0と正秒信号s0とを周期的に受信、本実施形態では、毎秒受信する(周期T=1秒間)。時刻情報d0は、年月日時秒の情報を含む。正秒信号s0は、GPS受信機から1秒間隔で送信されるパルス(本例では500ms幅)であり、時刻情報d0が示す時刻の実タイミング(実際のタイミング)を示す。したがって、正秒信号s0は、その正秒信号s0が示すタイミングの時刻を示す時刻情報d0よりも、所定時間遅れて受信される。
【0015】
また、送信装置10は、GPS受信機から、周波数精度の高いクロック信号である精密クロック信号c0を受信する。精密クロック信号c0は、処理用クロック信号c2を生成するためのクロック信号である。処理用クロック信号c2は、送信装置10や受信装置20が各種処理動作を行うために用いるクロック信号である。
【0016】
送信装置10は、時刻情報d0と正秒信号s0をGPS受信機から受信するごとに(つまり1秒ごとに)、フレーム情報d1を生成する。そして、フレーム情報d1を処理用クロック信号c2で符号化し、符号化されたシンボル信号d3を、通信ケーブル51を介して、受信装置20へ伝送する。このシンボル信号d3には、処理用クロック信号c2を分周した基準クロック信号c1が含まれる。なお、シンボル信号d3は、フレーム情報d1が送信されない期間(後述のアイドル状態32)においても生成され伝送される。
【0017】
受信装置20は、フレーム情報d1を含むシンボル信号d3を、送信装置10におけるシンボル信号d3の送信時刻よりも、信号遅延時間t1だけ遅延した時刻で、シンボル信号d3bとして受信する。この信号遅延時間t1は、通信ケーブル51の長さにより変わる。受信装置20は、受信したシンボル信号d3bから、規準クロック信号c1を取出す。そして、規準クロック信号c1から、送信装置10の処理用クロック信号c2と同じ周波数の処理用クロック信号c2を生成、つまり復元する。また、受信装置20は、受信したシンボル信号d3bを折り返し、通信ケーブル51を介して送信装置10へ伝送する。
【0018】
送信装置10は、受信装置20が折り返し送出したシンボル信号d3bを、シンボル信号d3cとして受信し、シンボル信号d3とシンボル信号d3cとの時間差に基づき、送信装置10から受信装置20へ伝送する際の遅延時間である信号遅延時間t1を取得する。そして、送信装置10は、信号遅延時間t1に基づき、遅延時間t2を算出し、次のフレーム情報d1の送信時に、時刻情報d0と遅延時間t2を含む遅延時間指定情報とを、シンボル信号d3として受信装置20へ伝送する。受信装置20は、受信した遅延時間指定情報が示す遅延時間t2に基づき、次の正秒信号と同タイミングの正秒タイミング信号s0cを生成し、正秒タイミング信号s0cにより、時刻情報d0を時計回路25に設定する。こうして、時計回路25は正確な時刻情報を出力するようになる。
【0019】
次に、送信装置10の構成を説明する。
送信装置10は、送信フレーム生成器11と、並列/直列変換器12と、送信制御器13と、シンボル符号器14と、遅延時間計測器15と、位相同期回路16と、演算部17とを含むように構成される。
【0020】
位相同期回路16は、精密クロック信号c0をリファレンスとしたPLL(Phase Locked Loop)回路であり、GPS受信機から受信した精密クロック信号c0を逓倍し、精密クロック信号c0に同期した処理用クロック信号c2を生成して、位相同期回路16で用いるとともに、位相同期回路16を除く送信装置10の構成の全て(上記構成11〜15,17)へ出力する。つまり、位相同期回路16は、送信装置10において処理に用いる処理用クロック信号c2を生成する処理用クロック信号生成部である。第1実施形態の例では、精密クロック信号c0の周波数は10MHz、処理用クロック信号c2の周波数は32.768MHzである。
【0021】
送信フレーム生成器11は、GPS受信機から受信した時刻情報d0や、遅延時間t2を示す遅延時間指定情報を含む伝送フレームd1を生成し、並列/直列変換器12へ出力する。伝送フレームd1は、図3に示す伝送フレームd2(直列伝送データ)と同じ構成であり、本実施形態では、フレーム同期を行うためのパターンである同期パターン33(32ビット)、時刻情報d0が含まれる時刻情報34(56ビット)、遅延時間t2を含む遅延時間指定情報が含まれるその他情報35(128ビット)を含むように構成される。なお、伝送フレームd2の構成やビット数は、上記に限られるものではなく、適宜、変更可能である。
【0022】
並列/直列変換器12は、送信フレーム生成器11からの伝送フレームd1を、送信制御器13からの送信開始信号s1によりロードし、伝送フレームd1をパラレルデータからシリアルデータに変換し、送信制御器13からのシンボルタイミング信号s2に同期して、直列伝送データd2として出力する。
【0023】
また、並列/直列変換器12には、論理値1が入力されており、ロードされたフレーム情報d1が全て出力された後は、論理値1が出力されることになる。
【0024】
送信制御器13は、GPS受信機から受信した正秒信号s0に基づき、正秒信号s0に同期した送信開始信号s1とシンボルタイミング信号s2とを生成し、並列/直列変換器12からの直列伝送データd2の出力制御を行う。すなわち、直列伝送データd2は、送信開始信号s1により送信開始され、シンボルタイミング信号s2により1ビットずつ出力される。
【0025】
送信開始信号s1は、正秒信号s0の先頭(立ち下がり)から時間t0後にパルス出力される(図2参照)。この送信開始時間t0は、正秒信号s0を受信した後、時刻情報を送信装置10から送信開始するまでの時間であり、送信開始時間t0と信号遅延時間t1と時刻情報を送信完了するのに要する時間t6(詳しくは、受信装置20で受信された時刻情報が受信装置20の時計回路25に入力されるまでの時間)とが、1秒間(つまり、正秒信号s0の周期)以内に収まる範囲内で、任意に設定できる。送信制御器13は、処理用クロック信号c2を正秒信号s0の先頭から所定数カウントすることにより、送信開始時間t0を算出する。シンボルタイミング信号s2は、1シンボル(つまり伝送データ1ビット)につき1つ出力される。
【0026】
シンボル符号器14は、図3に示すように、直列伝送データd2を、シンボルタイミング信号s2に同期して処理用クロック信号c2を用いて符号化し、シンボル信号d3を生成し、受信装置20と遅延時間計測器15へ出力する。前述したように、シンボル信号d3には、規準クロック信号c1が含まれている。
【0027】
規準クロック信号c1は、受信装置20において、処理用クロック信号c2を生成(復元)するためのクロック信号である。規準クロック信号c1の周波数は、図3の例では、処理用クロック信号c2の1/64の512kHzである。
【0028】
シンボル信号d3の詳細を、図3の41a,42a,43aに示す。図3(a)は、伝送データがある場合(つまり、送信フレーム生成器11で生成した伝送データが並列/直列変換器12から出力されている場合)を示し、図3(b)は、伝送データがない場合(つまり、論理値1が並列/直列変換器12から出力されている場合)を示す。図3(a)の例は、同期パターン33を構成するデータのうち1ビットについて示す。
【0029】
シンボル信号d3は、図3の41aに示すように、各データビットがセル1〜セル4で構成される。セル1は直列伝送データd2の伝送用、セル3は基準クロック信号c1の伝送用、セル2とセル4は基準クロック信号c1のガードタイムである。
【0030】
セル1には、直列伝送データd2のうち1ビットのデータが重畳されている。図3の42aは、該1ビットのデータが1の場合であり、43aは、該1ビットのデータが0の場合である。このように、セル1は、直列伝送データd2に従い変化する。一方、セル2〜セル4は、直列伝送データd2に従い変化することはなく、1と0を周期的に繰り返す。この周期は、処理用クロック信号c2の16クロック分の長さである。つまり、42aに示す36と37は、それぞれ、処理用クロック信号c2の8クロック分の長さである。
【0031】
送信フレーム生成器11と、並列/直列変換器12と、送信制御器13と、シンボル符号器14とを含むように、同期パターンと時刻情報と遅延時間指定情報とを含むフレーム情報を生成し、処理用クロック信号c2を用いて符号化し、フレーム情報と基準クロック信号c1とを含む情報信号として送信するフレーム情報送信部が構成される。
【0032】
遅延時間計測器15は、送信装置10から出力したシンボル信号d3が、受信装置20で折り返され、送信装置10に戻るまでの往復時間を計測する。そして、この計測時間に基づき、送信装置10から出力された信号が受信装置20に届くまでの遅延時間、つまり、送信装置10と受信装置20との間の伝送路による信号遅延時間である信号遅延時間t1を取得する。例えば、信号遅延時間t1は、上記計測時間(往復時間)を等分することで取得される。このように、遅延時間計測器15は、送信装置10と受信装置20の間の伝送路による信号遅延時間t1を計測して取得する遅延時間取得部である。
【0033】
詳しくは、遅延時間計測器15は、受信装置20のシンボル復号器21、直列/並列変換器22、受信制御器23等のような受信回路として必要な構成を備えており、例えば、送信装置10から出力したシンボル信号d3の同期パターン33と、受信装置20で折り返されたシンボル信号d3cの同期パターン33とを比較し、上記計測時間を取得する。
【0034】
演算部17は、信号遅延時間t1を用いて遅延時間t2を算出し、遅延時間t2を含む遅延時間指定情報を生成する。この遅延時間指定情報は、受信装置20が正秒タイミング信号s0cを生成するために用いる情報である。遅延時間t2の詳細は後述する。なお、遅延時間計測器15で計測した上記計測時間(往復時間)に基づき、演算部17で信号遅延時間t1を取得するように構成してもよい。
【0035】
次に、受信装置20の構成を説明する。
受信装置20は、シンボル復号器21と、直列/並列変換器22と、受信制御器23と、ANDゲート24と、時計回路25と、遅延器26と、位相同期回路27とを含むように構成される。
【0036】
シンボル復号器21は、送信装置10から出力された直列のシンボル信号d3bを復号し、直列伝送データd2bと、データ取込タイミング信号s3と、基準クロック取出し信号s4とを生成する。直列伝送データd2bの内容は、送信装置10内の直列伝送データd2の内容に相当する。データ取込タイミング信号s3は、直列伝送データd2bの1ビットにつき1回生成され、直列伝送データd2bから伝送データを取込むタイミングを示す。基準クロック取出し信号s4は、直列伝送データd2bの1ビットにつき1回生成され、規準クロック信号c1を取出すための信号である(図3参照)。
【0037】
詳しくは、図3に示すように、シンボル復号器21は、受信したシンボル信号d3bのセル1〜セル4のうち、直列伝送データd2が重畳されているセル1のみが変化することに着目し、セル1、セル2、セル3、セル4を識別する。そして、セル1から直列伝送データd2bを生成し、セル1内の所定の時間位置(タイミング)で、データ取込タイミング信号s3を生成する。図3の例では、セル1内の約3/4のタイミングで、データ取込タイミング信号s3を生成している。
【0038】
また、シンボル復号器21は、セル2からセル3に亘る所定の時間位置(タイミング)で、基準クロック信号c1を生成するための基準クロック取出し信号s4を生成する。図3の例では、セル2内の約3/4の時間位置から、セル3内の約3/4の時間位置に亘り、基準クロック取出し信号s4を生成している。
【0039】
受信制御器23は、シンボル復号器21からのデータ取込タイミング信号s3により、直列伝送データd2bをサンプリングし、フレーム同期をとるための同期パターン33(図3参照)を検索する。そして、同期パターン33を検出した際に(つまり、同期パターン33を検出した直後に)、同期タイミング信号s0bを生成し遅延器26へ出力する(図2参照)。
【0040】
また、受信制御器23は、同期パターン33を検出した際に、所定長さの直列/並列変換期間信号s5を生成し出力する。直列/並列変換期間信号s5は、直列/並列変換器22が直列伝送データd2bからフレーム情報d1bを取出す期間を示す。この期間は、直列伝送データd2bから同期パターン33を除いた長さの期間である。
【0041】
直列/並列変換器22は、直列/並列変換期間信号s5の間、シンボル復号器21からの直列伝送データd2bを、データ取込タイミング信号s3を用いて、1ビットずつ取り込む。取り込んだ後、直列伝送データd2bをシリアルデータからパラレルデータに変換し、フレーム情報d1bを生成して保持する。フレーム情報d1bの内容は、同期パターン33が欠けていることを除き、送信装置10内のフレーム情報d1の内容と同じである。
【0042】
こうして直列/並列変換器22は、時刻情報d0bを含むフレーム情報d1bを、時計回路25へ出力する。時刻情報d0bは、図3に示す時刻情報34に含まれる。
また、直列/並列変換器22は、フレーム情報d1b(詳しくは、その他情報35)中の遅延時間指定情報から遅延時間t2を取得し、遅延器26へ出力する。なお、直列/並列変換器22から遅延器26へフレーム情報d1bを出力し、遅延器26において、フレーム情報d1bから遅延時間t2を取得するよう構成してもよい。
このように、直列/並列変換器22は、復元されたフレーム情報d1bを保持し、該復元されたフレーム情報d1bから、時刻情報と遅延時間t2とを取出して出力する。
【0043】
遅延器26は、受信制御器23からの同期タイミング信号s0bと、直列/並列変換器22からの遅延時間t2とに基づき、GPS受信機からの正秒信号s0と同じタイミングに合わせた正秒タイミング信号s0cを生成し、時計回路25へ出力する。本実施形態では、遅延器26は、同期タイミング信号s0bから遅延時間t2後に、正秒タイミング信号s0cを出力する。
【0044】
なお、本実施形態では、送信装置10において遅延時間t2を生成し、受信装置20において、同期タイミング信号s0bから遅延時間t2後に、正秒タイミング信号s0cを出力するよう構成したが、次のように構成してもよい。すなわち、送信装置10及び受信装置20において既知である時間t5を用い、送信装置10において遅延時間t4(例えば、t4=t2−t5)を生成し、受信装置20において、同期タイミング信号s0bと遅延時間t4とに基づき正秒タイミング信号s0cを出力する、つまり、同期タイミング信号s0bから遅延時間(t4+t5)後に、正秒タイミング信号s0cを出力するよう構成してもよい。
【0045】
時計回路25は、刻々と時刻情報d0bを出力する。本例では、時計回路25を処理用クロック信号c2で作動させるので、約30(nsec)毎に時刻情報d0bを出力する。そして、時計回路25は、フレーム情報d1bに含まれる時刻情報d0を、正秒タイミング信号s0cにより設定する。これにより、時計回路25は、正確な時刻を時刻情報d0bとして出力することができる。この時刻情報d0bは、観測装置において、観測データに対するタイムスタンプとして使用される。
【0046】
遅延器26と、時計回路25とを含むように、同期タイミング信号s0bと遅延時間t2とに基づき正秒タイミング信号s0cを取出し、該正秒タイミングs0cで、すなわち、同期タイミング信号s0bから遅延時間t2が経過したタイミングで、時刻情報を時計回路25に設定し、該時計回路25から正確な実時刻情報d0bを出力する時計部が構成される。
【0047】
ANDゲート24は、シンボル信号d3bとシンボル復号器21からの基準クロック取出し信号s4とを論理積することにより、基準クロック信号c1を取り出す。このように、基準クロック信号c1を、受信装置20のクロック信号でサンプリングすることなく、ゲートのみで取出すよう構成したので、基準クロック信号c1を、ジッタの無い安定したクロックとすることができ、延いては、精密クロック信号c0と同等の周波数偏差を有し、ジッタの少ない安定した処理用クロック信号c2を生成できる。
【0048】
位相同期回路27は、基準クロック信号c1をリファレンスとしたPLL回路であり、基準クロック信号c1の周波数を逓倍することにより、基準クロック信号c1に同期した処理用クロック信号c2を生成して、位相同期回路27で用いるとともに、位相同期回路27を除く受信装置20の構成の全て(上記構成21〜26)へ出力する。この処理用クロック信号c2の周波数は、送信装置10の処理用クロック信号c2と同じであり、32.768MHzである。
【0049】
シンボル復号器21と、直列/並列変換器22と、受信制御器23と、ANDゲート24と、位相同期回路27とを含むように、送信装置10から受信したフレーム情報から、同期タイミング信号s0bを取出すとともに、送信装置10からの時刻情報d0と遅延時間指定情報t2とを復元し、送信装置10から受信した情報信号から基準クロック信号c1を取出し、基準クロック信号c1に基づき処理用クロック信号c2を復元する復号部が構成される。この同期タイミング信号s0bは、正秒信号s0のタイミングと同じタイミングの正秒タイミング信号s0cを取出す基準となる基準タイミング信号である。
【0050】
次に、この時刻情報伝送システムの動作の詳細を、図2を用いて説明する。図2を理解し易くするため、図2における各信号の時間的関係は厳密ではなく模式的に示されている。
図2に示すように、送信装置10は、GPS受信機から、時刻情報d0と正秒信号s0を、それぞれ1秒毎に受信する。時刻情報d0は、次に受信する正秒信号s0が示すタイミングにおける時刻を示す。つまり、正秒信号s0は、当該正秒信号s0よりも前に受信した時刻情報d0が示す時刻の実タイミングを示す。
【0051】
図2の例では、正秒信号s0(2)の立ち下がりは、時刻情報d0(1)が示す時刻の実タイミングを示す。例えば、時刻情報d0(1)が15時45分30秒である場合、正秒信号s0(2)は、15時45分30秒に受信される。
【0052】
また、送信装置10は、GPS受信機から、正秒信号s0に同期した精密クロック信号c0を継続的に受信する。なお、精密クロック信号c0は、本例ではGPS受信機から受信しているが、必ずしもGPS受信機から受信する必要はなく、例えば、恒温槽タイプの発振器を用いて送信装置10で生成するよう構成してもよい。
【0053】
送信装置10は、送信フレーム生成器11において、受信した時刻情報d0(1)を含む伝送フレームd1(1)を生成する。前述したように、伝送フレームd1(1)には、同期パターン33、時刻情報34、その他情報35が含まれる(図3参照)。時刻情報d0(1)は、時刻情報34に含まれる。
【0054】
次に、正秒信号s0(1)の先頭(立ち下がり)から送信開始時間t0後、並列/直列変換器12において、伝送フレームd1(1)を、送信制御器13からの送信開始信号s1によりロードし、シリアルデータに変換する。そのシリアルデータは、直列伝送データd2(図2の31)として出力される。このとき、直列伝送データd2は、1ビットずつ、送信制御器13からのシンボルタイミング信号s2に同期して出力される。直列伝送データd2が全て出力された後は、前述したように、並列/直列変換器12から論理値1が出力され、データ伝送のされないアイドル状態(図2の32)となる。
【0055】
直列伝送データd2は、シンボル符号器14において、処理用クロック信号c2を用いて符号化され、シンボル信号d3として出力される。このとき、直列伝送データd2は、シンボルタイミング信号s2ごとに、1ビットずつ出力される。前述したように、シンボル信号d3には、基準クロック信号c1が含まれる。
【0056】
シンボル信号d3は、通信ケーブル51を介して伝送され、シンボル信号d3bとして受信装置20で受信される。シンボル信号d3bは、受信装置20から折り返され、シンボル信号d3cとして、送信装置10の遅延時間計測器15で受信される。遅延時間計測器15は、送信装置10から送信したシンボル信号d3と、シンボル信号d3cとの時間差に基づき、送信装置10から受信装置20へ伝送する際の信号遅延時間t1を取得する。
【0057】
この信号遅延時間t1に基づき、演算部17で、遅延時間t2が算出され、遅延時間t2を含む遅延時間指定情報が生成される。遅延時間t2を含む遅延時間指定情報は、次の時刻情報d0(2)の受信後に、フレーム情報d1(2)に含まれて受信装置20へ伝送される。
【0058】
遅延時間t2の算出方法は次のとおりである。
送信装置10は、遅延時間計測器15で取得した信号遅延時間t1と、送信開始時間t0と、同期パターン検出時間t3とを用いて、遅延時間t2を、次のように計算する。なお、t2の計算は、例えばマイクロコンピュータを用いて行われる。
t2(秒)=1(秒)−(t0+t1+t3)
【0059】
ここで、送信開始時間t0は、GPS受信機からの正秒信号s0の受信タイミングから、フレーム情報d1が直列伝送データd2として送出開始されるまでの時間である。同期パターン検出時間t3は、受信制御器23における同期パターン検出時間(同期パターンの検出に要する時間)であり、同期パターンのビット数から決定される。
【0060】
受信装置20で受信されたシンボル信号d3bは、シンボル復号器21において復号され、図3に示すように、直列伝送データd2bと、データ取込タイミング信号s3と、基準クロック取出し信号s4(図3の44a)とが生成される。前述したように、データ取込タイミング信号s3は、伝送データd2bからデータを取込むタイミングを示す。基準クロック取出し信号s4は、規準クロック信号c1を取出すための信号である。
【0061】
次に、受信制御器23において、アイドル状態32検出後に同期パターン33を検出する。このとき、伝送データd2bの先頭検出から同期パターン検出時間t3後に、直列伝送データd2b中の同期パターン33を検出し、同期パターン33を検出した直後に、同期タイミング信号s0bと直列/並列変換期間信号s5とが生成される。
【0062】
次に、直列/並列変換器22において、直列/並列変換期間信号s5の間、直列伝送データd2bから、フレーム情報d1bが生成され、時計回路25へ出力される。このフレーム情報d1bには、時刻情報d0(1)が含まれている。また、直列/並列変換器22において、フレーム情報d1bから遅延時間t2が取出され、遅延器26へ出力される。
【0063】
そして、遅延器26において、同期タイミング信号s0bから遅延時間t2後に、正秒タイミング信号s0cが生成される。
【0064】
正秒タイミング信号s0cは、前述したように、GPS受信機からの正秒信号s0(2)と同じタイミングに合わせた信号である。そして、時計回路25において、フレーム情報d1bに含まれる時刻情報d0(1)が、正秒タイミング信号s0cにより設定される。これにより、正確な時刻を示す時刻情報d0bが、時計回路25から出力されるようになる。
【0065】
また、ANDゲート24において、図3に示すように、シンボル信号d3b(図3の42a,43a)と基準クロック取出し信号s4(図3の44a)とにより、基準クロック信号c1(図3の45a)が取り出される。そして、位相同期回路27において、基準クロック信号c1に基づき、処理用クロック信号c2が生成される。
【0066】
なお、上述した実施形態では、送信装置10は、GPS受信機から、時刻情報d0と正秒信号s0とを周期的に受信するように構成したが、本発明は、これに限られるものではなく、GPS受信機以外の外部から、時刻情報d0と正秒信号s0とを周期的に受信するように構成してもよい。
【0067】
また、上述した実施形態では、送信装置10から受信装置20へ時刻情報を伝送するごとに(つまり、1秒ごとに)、信号遅延時間t1を求め遅延時間t2を算出し直すように構成したが、本発明は、これに限られるものではない。例えば、1回目の時刻情報伝送時に取得した遅延時間t2を、2回目の時刻情報伝送時だけでなく、3回目以降の時刻情報伝送時に用いるよう構成してもよい。
【0068】
また、上述した実施形態では、受信装置20は、受信したフレーム情報から同期パターン33を検出し、フレーム情報の先頭検出から同期パターン検出時間t3後に、正秒信号s0のタイミングと同じタイミングの正秒タイミング信号s0cを取出す基準となる同期タイミング信号d0bを取出すように構成したが、本発明は、これに限られるものではなく、同期タイミング信号d0b以外のタイミングで、基準タイミング信号を取出すように構成してもよい。例えば、フレーム情報を受信完了したタイミングで、基準タイミング信号を取出すように構成してもよい。この場合、遅延時間t2は、時刻情報d0の受信周期Tと、送信開始時間t0と、信号遅延時間t1と、基準タイミングを取出すまでの時間t3(つまり、フレーム情報のビット数)とを用いて算出されることになる。例えば、t2=T−(t0+t1+t3)で算出される。
【0069】
また、上述した実施形態では、送信装置10から受信装置20へ、時刻情報と基準クロック信号とを送信するように構成したが、本発明は、これに限られるものではない。例えば、基準クロック信号を送信せずに時刻情報のみを送信する場合や、時刻情報を送信せずに基準クロック信号のみを送信する場合にも適用することができる。
【0070】
第1実施形態によれば、少なくとも次の効果を得ることができる。
(A1)外部から、時刻情報を所定の周期Tで受信するとともに、時刻情報が示す実タイミングを示す正秒信号を時刻情報よりも遅れて周期Tで受信し、時刻情報を含む情報信号を周期Tで送信する送信装置と、伝送路を介して送信装置から情報信号を受信する受信装置とを備える時刻情報伝送システムにおいて、送信装置は、伝送路による信号遅延時間t1を取得し、信号遅延時間t1を用いて遅延時間t2を算出し、遅延時間t2を含む遅延時間指定情報を生成し、時刻情報と遅延時間指定情報とを含むフレーム情報を生成して送信し、受信装置は、送信装置から受信したフレーム情報から、正秒信号のタイミングと同じタイミングの正秒タイミングを取出すための基準タイミングを取出すとともに、時刻情報と遅延時間指定情報とを復元し、基準タイミングと遅延時間t2とに基づき正秒タイミングを取出し、正秒タイミングで時刻情報を時計回路に設定し、該時計回路から実時刻情報を出力するよう構成したので、外部(例えばGPS受信機)からの時刻情報と正秒信号を、小さい誤差(例えば数十ナノ秒の誤差)で観測地点に送ることが可能となり、時刻精度とリアルタイム性を向上することができる。
(A2)送信装置は、処理用クロック信号を生成し、フレーム情報を、処理用クロック信号を用いて符号化し、時刻情報と遅延時間指定情報と基準クロック信号とを含む情報信号として送信し、受信装置は、受信した情報信号から基準クロック信号を取出し、基準クロック信号に基づき処理用クロック信号を復元するよう構成したので、送信装置で生成した処理用クロック信号を、受信装置側で復元することができる。よって、受信側において省電力で高精度の処理用クロック信号を得ることが容易にできる。
(A3)送信装置は、第1の情報信号を受信装置へ送信し、受信装置から折り返された第1の情報信号を受信することにより、信号遅延時間t1を取得し、時刻情報と遅延時間指定情報とを含むフレーム情報を生成して、第2の情報信号として送信装置へ送信し、受信装置は、第2の情報信号を受信して、基準タイミングを取出すとともに、時刻情報と遅延時間指定情報とを復元し、基準タイミングと遅延時間t2とに基づき正秒タイミングを取出すよう構成したので、外部(例えばGPS受信機)からの時刻情報と正秒信号を小さい誤差で観測地点に送ることを、容易に実現できる。
(A4)受信装置がフレーム情報を受信開始した後、基準タイミングを取出すまでの時間をt3とし、送信装置が正秒信号を外部から受信した後、フレーム情報を送信開始するまでの時間をt0とするとき、周期Tとt0と信号遅延時間t1とt3とを用いて遅延時間t2を算出するよう構成したので、遅延時間t2を容易に算出できる。
(A5)送信装置から受信装置へ時刻情報を伝送するごとに、遅延時間t2を算出し直すように構成したので、送信装置から受信装置への伝送信号遅延時間t1が変化するような場合(例えば、海水温度や潮流等により通信ケーブル51の長さが変動するような場合や、通信ケーブル51の浮遊容量が変動するような場合など)も、受信装置において正確な時刻情報を生成することができる。
(A6)GPS受信機からの時刻情報と、GPS受信機からの正秒信号と、GPS受信機の精密クロックから生成した基準クロックとを、1本の同じ信号線により伝送するよう構成したので、伝送ケーブルを簡素化することができる。
(A7)基準クロック信号c1を、受信装置20のクロック信号でサンプリングすることなく、ゲートのみで取出すよう構成したので、基準クロック信号c1を、ジッタの無い安定したクロックとすることができ、延いては、精密クロック信号c0と同等の周波数偏差を有し、ジッタの少ない安定した処理用クロック信号c2を生成できる。
(A8)送信装置は、同期パターンと時刻情報と遅延時間指定情報とを含むフレーム情報を生成し、受信装置は、送信装置から受信したフレーム情報から、同期パターンを検出したときの同期タイミングを基準タイミングとして取出し、同期タイミングと遅延時間t2とに基づく正秒タイミングで、時刻情報を時計回路に設定するように構成したので、基準タイミングを容易に取出すことができる。
【0071】
(第2実施形態)
本発明の第2実施形態に係る時刻情報伝送システムについて、図4を用いて説明する。
図4は、本発明の第2実施形態に係る時刻情報伝送システムの構成を示す図であり、本発明を海底地震観測システムに適用した実施例である。図4において、図1と同じ動作を行う構成には同符号を付し、説明を省略する。また、図2図3に示す第1実施形態における動作タイミングは、第2実施形態においても同様である。つまり、図2図3は、第2実施形態に係る動作タイミングを示す図でもある。
【0072】
第2実施形態の時刻情報伝送システムにおいては、送信装置としての陸上装置110が、受信装置としての複数の観測装置120に、光ファイバ(光通信ケーブル)151により芋づる形式で信号接続されている。つまり、陸上装置110が1段目の光ファイバ151(1)により1段目の観測装置120(1)に接続され、観測装置120(1)が2段目の光ファイバ151(2)により2段目の観測装置120(2)に接続され、(n-1)段目の観測装置120(n-1)がn段目の光ファイバ151(n)によりn段目の観測装置120(n)に接続されている。
【0073】
各観測装置120において遅延時間t2が正しく設定されていない場合、例えば、各観測装置120を設置した直後のような場合、陸上装置110は、順次、各観測装置120へ信号を配信し、各観測装置120における信号遅延時間t1の取得を行った後、信号遅延時間t1に基づき遅延時間t2を算出し、遅延時間t2を含む遅延時間指定情報を、各観測装置120へ配信する。各観測装置120は、受信した遅延時間t2を保持し、陸上装置110から受信した時刻情報d0と遅延時間t2とを用いて、自身の時計情報d0bを正確な時刻に合わせる。このとき、第1実施形態と同様、陸上装置110から受信する時刻情報d0は、実際の時刻よりも早めたタイミングで配信される。つまり、図2に示すタイミングで配信される。
【0074】
例えば、陸上装置110は、1段目の観測装置120(1)へ信号を配信し、観測装置120(1)における信号遅延時間t1(1)の取得を行った後、遅延時間t2(1)を算出し、遅延時間t2(1)を含む遅延時間指定情報を、観測装置120(1)へ配信する。観測装置120(1)は、受信した遅延時間t2(1)を保持し、陸上装置110から受信した時刻情報d0と遅延時間t2(1)とを用いて、自身の時計情報d0bを正確な時刻に合わせる。
【0075】
次に、陸上装置110は、観測装置120(1)を介して、2段目の観測装置120(2)へ信号を配信し、観測装置120(2)における信号遅延時間t1(2)の取得を行った後、遅延時間t2(2)を算出する。そして、遅延時間t2(2)を含む遅延時間指定情報を、観測装置120(1)を介して観測装置120(2)へ配信する。観測装置120(2)は、受信した遅延時間t2(2)を保持し、観測装置120(1)を介して陸上装置110から受信した時刻情報d0と遅延時間t2(2)とを用いて、自身の時計情報d0bを正確な時刻に合わせる。
【0076】
陸上装置110の構成を説明する。
陸上装置110は、送信フレーム生成器111と、並列/直列変換器12と、送信制御器13と、シンボル符号器14と、遅延時間計測器15と、位相同期回路16と、演算部17と、電気/光変換器117とを含むように構成される。図1の構成と異なるのは、送信フレーム生成器111と電気/光変換器117であり、他の構成は、図1の構成と同じである。
【0077】
陸上装置110において、位相同期回路16で生成された処理用クロック信号c2は、位相同期回路16で用いられるとともに、位相同期回路16と電気/光変換器117とを除き、陸上装置110の構成の全てへ出力される。
【0078】
送信フレーム生成器111は、伝送フレームd1を生成し、並列/直列変換器12へ出力する。伝送フレームd1は、第1実施形態と同様、図3に示す伝送フレームd2(直列伝送データ)と同じ構成であり、同期パターン33、時刻情報34、その他情報35を含むように構成される。時刻情報34には、GPS受信機から受信した時刻情報d0が含まれる。その他情報35には、遅延時間t2を含む遅延時間指定情報や、設定要求情報d01や、観測装置指定情報d02や、折り返し指定情報d03が含まれる。設定要求情報d01や、観測装置指定情報d02や、折り返し指定情報d03は、例えば、陸上装置110の操作入力部(不図示)から、操作員により入力される。
【0079】
観測装置指定情報d02は、陸上装置110が情報伝送相手の観測装置120を指定するための情報であり、例えば、観測装置120の装置番号が用いられる。
設定要求情報d01は、陸上装置110から送信された情報を、観測装置指定情報d02で指定された観測装置120の受信情報として受け取ることを、観測装置120へ要求するための情報であり、例えば、1(有効:設定要求あり)又は0(無効:設定要求なし)で表される。
【0080】
折り返し指定情報d03は、観測装置指定情報d02で指定された観測装置120に対し、陸上装置110から送信された情報を折り返すよう指定するための情報であり、例えば、1(有効:折り返し指定あり)又は0(無効:折り返し指定なし)で表される。
【0081】
電気/光変換器117は、陸上装置110で生成された電気信号を光信号に変換し、観測装置120(1)へ出力する。また、観測装置120(1)から受信した光信号を電気信号に変換する。電気/光変換器117は、その光信号出力と、観測装置120(1)から受信した光信号とを、1芯の光ファイバ151(1)により伝送可能な1芯双方向の電気/光変換器である。
【0082】
なお、電気/光変換器117と光ファイバ151(1)を用いるのではなく、図1と同様に、双方向通信可能な通信ケーブル51を用いるよう構成することも可能である。
【0083】
次に、観測装置120の構成を説明する。
観測装置120は、シンボル復号器21と、直列/並列変換器122と、受信制御器23と、ANDゲート24と、時計回路25と、遅延器26と、位相同期回路27と、電気/光変換器127,128と、スイッチ129と、を含むように構成される。図1の構成と異なるのは、直列/並列変換器122と電気/光変換器127,128とスイッチ129であり、他の構成は、図1の構成と同じである。
【0084】
観測装置120において、位相同期回路27で生成された処理用クロック信号c2は、位相同期回路27で用いられるとともに、位相同期回路27と電気/光変換器127,128とを除き、観測装置120の構成の全てへ出力される。
【0085】
電気/光変換器127は、観測装置120で生成された電気信号を光信号に変換し、陸上装置110又は上位の観測装置120へ出力する。また、陸上装置110又は上位の観測装置120から受信した光信号を電気信号に変換する。上位の観測装置120とは、芋づる形式の接続において、その観測装置120よりも陸上装置110に近い観測装置120のことである。電気/光変換器127は、その光信号出力と、陸上装置110から受信する光信号とを、1芯の光ファイバ151により伝送可能な1芯双方向の電気/光変換器である。
【0086】
電気/光変換器128は、当該観測装置120(1)で生成された電気信号を光信号に変換し、次段(下位)の観測装置120(2)へ出力する。また、観測装置120(2)から受信した光信号を電気信号に変換する。なお、最終段の観測装置120(n)では、電気/光変換器128を省略してもよい。
【0087】
直列/並列変換器122は、直列/並列変換期間信号s5の間、シンボル復号器21からの直列伝送データd2bを、データ取込タイミング信号s3を用いて、1ビットずつ取り込む。取り込んだ後、直列伝送データd2bをシリアルデータからパラレルデータに変換し、フレーム情報d1bを生成して保持する。フレーム情報d1bの内容は、フレーム同期パターン33が欠けていることを除き、陸上装置110内のフレーム情報d1の内容と同じである。
【0088】
詳しくは、直列/並列変換器122は、シフレジスタと該シフトレジスタの値を保持する保持用レジスタHRとを含むように構成され、直列伝送データd2bが、データ取込タイミング信号s3により、上記シフトレジスタに1ビットずつ入力される。そして、直列/並列変換期間信号s5で示される期間内の最終データが上記シフレジスタに入力された後に、直列/並列変換器122は、上記シフトレジスタ内のデータを、受信したフレーム情報d1bとして出力する。
【0089】
こうして直列/並列変換器122は、時刻情報d0bを含むフレーム情報d1bを、時計回路25へ出力する。時刻情報d0bは、図3に示す時刻情報34に含まれる。
また、直列/並列変換器122は、上記シフトレジスタ内の観測装置指定情報d02が観測装置120(1)の装置番号で、かつ設定要求情報d01が有効であるという条件Cを満足するか否かを判定し、条件Cを満足する場合に、上記シフトレジスタ内のデータを保持用レジスタHRに書き込み、保持用レジスタHR(詳しくは、その他情報35)から遅延時間t2を取得し、遅延器26へ出力する。
【0090】
また、直列/並列変換器122は、保持用レジスタHR(詳しくは、その他情報35)から折り返し指定情報d03を取得し、当該観測装置120を、折り返し状態、又は非折り返し状態に設定する制御信号を、スイッチ129へ出力する。保持用レジスタHRの内容は、次に直列/並列変換器122に入力された直列伝送データd2bが上記条件Cを満足するまで保持される。
【0091】
こうして、直列/並列変換器122は、上記条件Cを満足する場合に、保持用レジスタHRに保持されたデータ内の折り返し指定情報d03に基づき、折り返し用スイッチ129の状態を制御する。すなわち、直列/並列変換器122は、折り返し指定情報d03が有効の場合は、スイッチ129が折り返し状態となるよう制御し、折り返し指定情報d03が無効の場合は、スイッチ129が非折り返し状態となるよう制御する。
【0092】
スイッチ129は、当該観測装置120を、折り返し状態と、非折り返し状態との間で切り替える。折り返し状態とは、陸上装置110から信号が送信され、観測装置120で折り返されて陸上装置110へ戻る状態である。非折り返し状態とは、折り返し状態でない状態である。電源投入時等の初期状態においては、スイッチ129は、観測装置120が非折り返し状態になるよう設定されている。
【0093】
スイッチ129は、折り返し指定情報d03が折り返し有り指定の場合、直列/並列変換器122からの制御信号に従い、電気/光変換器127からの電気信号であるシンボル信号d3bを、電気/光変換器127へ折り返す。つまり、スイッチ129の接点bと、電気/光変換器127の電気信号入力cとが接続される。
【0094】
また、スイッチ129は、折り返し指定情報d03が折り返しなし指定の場合、直列/並列変換器122からの制御信号に従い、電気/光変換器128からの電気信号を、電気/光変換器127へ出力する。つまり、スイッチ129の接点aと、電気/光変換器127の電気信号入力cとが接続される。
【0095】
次に、観測装置120(1)内の遅延器26への遅延時間t2(1)の設定、観測装置120(1)における時刻情報d0b、正秒タイミング信号s0c、および処理用クロック信号c2の生成について、図2を参照して説明する。
【0096】
まず、陸上装置110は、GPS受信機からの正秒信号s0(1)と時刻情報d0(1)を受信後、送信フレーム生成器111において、観測装置指定情報d02を観測装置120(1)の装置番号に設定し、折り返し指定情報d03を有効にし、設定要求情報d01を有効にしたフレーム情報d1(1)を生成する。このフレーム情報d1(1)には、GPS受信機からの時刻情報d0(1)が含まれる。
【0097】
フレーム情報d1(1)は、送信制御器13からの制御信号に従い、並列/直列変換器12を経て、シンボル符号器14からシンボル信号d3として出力される。シンボル信号d3は、電気/光変換器117で光信号に変換され、伝送路である光ファイバ151(1)へ出力される。
【0098】
なお、第1実施形態で述べたように、シンボル符合器14からのフレーム情報の出力開始は、GPS受信機の正秒信号s0から時間t0後になるよう、送信制御器13により制御されている(図2参照)。
【0099】
観測装置120(1)は、光ファイバ151(1)経由で送られてきた陸上装置110からの光信号を、電気/光変換器127により、電気信号であるシンボル信号d3bに変換する。芋づる形式で接続された次の観測装置120(2)への中継のため、電気信号d3bは、電気/光変換器128により再度光信号に変換され、伝送路である光ファイバ151(2)に出力される。このとき、観測装置120(1)は非折り返し状態であり、スイッチ129の接点aと、電気/光変換器127の電気信号入力cとが接続されている。
【0100】
また、第1実施形態と同様に、シンボル復号器21において、シンボル信号d3bから、受信データである直列伝送データd2b、データ取込タイミング信号s3、基準クロック取出し信号s4が生成される。
【0101】
受信制御器23は、第1実施形態と同様に、受信データd2bとデータ取込タイミング信号s3とを用いて、アイドル状態を検出する。そして、アイドル状態検出後に受信データd2bの同期パターン33を検索し、直列/並列変換期間信号s5、同期タイミング信号s0bを生成する。なお、本実施形態では、アイドル状態は、受信データd2bの最大長、つまり伝送フレームの最大長を想定して、32768ビットの期間において1が連続した場合とし、また、伝送フレームの開始パターンである同期パターン33は、自己相関関係の大きい(AAAA09B7)16とした。
【0102】
直列/並列変換器122は、上述したように、時刻情報d0(1)が含まれるフレーム情報d1bを出力する。フレーム情報d1bに含まれる時刻情報d0(1)は、正秒タイミング信号s0cにより時計回路25に設定されるが、この段階では遅延時間t2が正しく設定されていないので、正秒タイミング信号s0cの出力タイミングも正しくなく、したがって、時計回路25の出力する時刻情報d0bも正しいものではない。
【0103】
また、直列/並列変換器122は、受信データd2b内の観測装置指定情報d02が観測装置120(1)の装置番号で、かつ設定要求情報d01が有効であるという条件Cを満足するか否かを判定する。この場合、上記条件Cを満足するので、受信データd2b内の折り返し指定情報d03(有効)を保持用レジスタHRに保持するとともに、この折り返し指定情報d03(有効)に基づき、折り返し用スイッチ129が折り返し状態になるよう制御する。これにより、スイッチ129の接点bと、電気/光変換器127の電気信号入力cとが接続される。
【0104】
なお、観測装置120(2)〜観測装置120(n)においても、観測装置120(1)と同様に、前段の観測装置120から送られてきた光信号を、電気信号であるシンボル信号d3bに変換するとともに、次段の観測装置120への中継のため、電気信号d3bは、再度光信号に変換され、光ファイバ151に出力される。そして、第1実施形態と同様に、それぞれのシンボル復号器21において、シンボル信号d3bから、受信データである直列伝送データd2b、データ取込タイミング信号s3、基準クロック取出し信号s4が生成される。また、それぞれの直列/並列変換器122においてフレーム情報d1b(1)が取出され、時刻情報d0(1)としてそれぞれの時計回路25に設定されるが、遅延時間t2が正しく設定されていないので、時計回路25の出力する時刻情報d0bは正しいものではない。
【0105】
次に、陸上装置110は、次の正秒信号s0(2)と時刻情報d0(2)を受信後、送信フレーム生成器111において次のフレーム情報d1(2)を生成し、並列/直列変換器12、シンボル符号器14の処理を経た後、電気/光変換器117から出力する。このフレーム情報d1(2)において、観測装置指定情報d02は観測装置120(1)の装置番号とされるが、設定要求情報d01と折り返し指定情報d03は、有効又は無効のどちらに設定されていても構わない。このフレーム情報d1(2)には、GPS受信機からの時刻情報d0(2)が含まれる。
【0106】
この時刻情報d0(2)も、時刻情報d0(1)と同様に、観測装置120(1)〜観測装置120(n)の時計回路25にそれぞれ設定されるが、遅延時間t2が正しく設定されていないので、各時計回路25の出力する時刻情報d0bは正しいものではない。
【0107】
陸上装置110は、フレーム情報d1(2)が送信された後、観測装置120(1)から折り返され戻るまでの往復時間を遅延時間計測器15で計測する。そして、第1実施形態と同様に、上記往復時間から算出した信号遅延時間t1(1)と、送信開始時間t0と、同期パターン検出時間t3とに基づき、観測装置120(1)へ伝送する遅延時間t2(1)を算出する。
【0108】
遅延時間t2(1)を含む遅延時間指定情報は、次の正秒信号s0(3)と時刻情報d0(3)を受信後、フレーム生成器111により生成される次のフレーム情報d1(3)に含まれて、並列/直列変換器12、シンボル符号器14の処理を経た後、電気/光変換器117から出力される。このフレーム情報d1(3)において、観測装置指定情報d02は観測装置120(1)の装置番号とされ、設定要求情報d01は有効とされ、折り返し指定情報d03は無効とされる。このフレーム情報d1(3)には、GPS受信機からの時刻情報d0(3)が含まれる。
【0109】
フレーム情報d1(3)は、観測装置120(1)へ伝送され、直列/並列変換器122において、時刻情報d0(3)を含むフレーム情報d1bを出力する。また、直列/並列変換器122は、受信データd2b内の観測装置指定情報d02が観測装置120(1)の装置番号で、かつ設定要求情報d01が有効であるという条件Cを満足するか否かを判定する。この場合、上記条件Cを満足するので、受信データd2b内の遅延時間t2を保持用レジスタHRに保持するとともに遅延器26へ出力する。
【0110】
また、直列/並列変換器122は、上記条件Cを満足するので、受信データd2b内の折り返し指定情報d03(無効)を保持用レジスタHRに保持するとともに、折り返し指定情報d03(無効)により、折り返し用スイッチ129が非折り返し状態になるよう制御する。
【0111】
そして、第1実施形態の受信装置20と同様に、観測装置120(1)は、遅延器26を用いて、予め設定された遅延時間t2(1)の間、同期タイミング信号s0bを遅延させることで、GPS受信機の正秒信号s0と同一タイミングの正秒タイミング信号s0cを生成する。また、観測装置120(1)は、正秒タイミング信号s0cに同期してフレーム情報d1bを時計回路25に設定することで、GPS時刻と同一の時刻情報d0bを生成する。
【0112】
また、第1実施形態の受信装置20と同様に、観測装置120(1)は、陸上装置110から受信した情報信号から、シンボル復号器21により、基準クロック取出し信号s4を生成する。そして、ANDゲート24により、シンボル信号d3bと基準クロック取出し信号s4とから、基準クロックc1信号を生成し、さらに、位相同期回路27により、処理用クロック信号c2を生成する。
【0113】
なお、時刻情報d0(3)も、観測装置120(2)〜観測装置120(n)の各時計回路25にそれぞれ設定されるが、観測装置120(2)〜観測装置120(n)において遅延時間t2が正しく設定されていないので、観測装置120(2)〜観測装置120(n)の各時計回路25の出力する時刻情報d0bは正しいものではない。
【0114】
次に、観測装置120(2)内の遅延器26への遅延時間t2(2)の設定、観測装置120(2)における時刻情報d0b、正秒タイミング信号s0c、および処理用クロック信号c2の生成について説明する。
【0115】
観測装置120(1)への遅延時間t2(1)の設定が終了した後、陸上装置110は、送信フレーム生成器111において、観測装置指定情報d02を観測装置120(2)の装置番号に設定し、折り返し指定情報d03を有効にし、設定要求情報d01を有効にしたフレーム情報d1(4)を生成する。このフレーム情報d1(4)には、GPS受信機からの時刻情報d0(4)が含まれる。
【0116】
フレーム情報d1(4)は、送信制御器13からの制御信号に従い、並列/直列変換器12、シンボル符号器14の処理を経た後、電気/光変換器117で光信号に変換され、伝送路である光ファイバ151(1)へ出力された後、観測装置120(1)内の電気/光変換器127で電気信号d3bに変換され、さらに電気/光変換器128で光信号に変換され、光ファイバ151(2)へ出力される。
【0117】
光ファイバ151(2)へ出力された光信号は、観測装置120(2)において、電気/光変換器127により、電気信号であるシンボル信号d3bに変換される。芋づる形式で接続された次段の観測装置120(3)への中継のため、電気信号d3bは、観測装置120(2)の電気/光変換器128により再度光信号に変換され、伝送路である光ファイバ151(3)に出力される。
【0118】
こうして、上述した観測装置120(1)内の遅延器26への遅延時間t2(1)の設定処理と同様にして、フレーム情報d1(4)により、観測装置120(2)が折り返し状態に設定される。次に、上記フレーム情報d1(2)における処理と同様に、フレーム情報d1(5)により、陸上装置110が信号遅延時間t1(2)を取得し、信号遅延時間t1(2)を用いて遅延時間t2(2)を算出する。次に、上記フレーム情報d1(3)における処理と同様に、フレーム情報d1(6)により、遅延時間t2(2)が観測装置120(2)内の遅延器26へ設定され、時刻情報d0(6)が時計回路25に設定される。
【0119】
なお、観測装置120(1)、及び観測装置120(3)〜観測装置120(n)の各時計回路25においては、時刻情報d0(4)を含むフレーム情報d1(4)により、時刻情報d0(4)が設定され、時刻情報d0(5)を含むフレーム情報d1(5)により、時刻情報d0(5)が設定され、時刻情報d0(6)を含むフレーム情報d1(6)により、時刻情報d0(6)が設定される。このとき、観測装置120(1)は正確な遅延時間t2が設定されているので、観測装置120(1)の時計回路25の出力する時刻情報d0bは正しい。しかし、観測装置120(3)〜観測装置120(n)は正確な遅延時間t2が設定されていないので、それらの時計回路25の出力する時刻情報d0bは正しいものではない。
【0120】
このように、観測装置120(1)内の遅延器26への遅延時間t2(1)の設定処理と同様な処理を、観測装置120(2)以降に対し行うことで、芋づる式に接続された全ての観測装置120に対し、各観測装置120ごとに異なる遅延時間t2を設定する。そして、全ての観測装置120に正しい遅延時間t2が設定された後、陸上装置110からフレーム情報d1が送出される毎に、全ての観測装置120の時計回路25において、それぞれ、正しいタイミングで時刻情報d0が設定され、正しい時刻情報d0bが出力される。なお、本実施形態の例では、観測システムの全長、観測装置数、時刻情報用の伝送フレームの伝送時間を考慮して、送信開始時間t0を998(msec)とした。
【0121】
なお、前述したように、送信開始時間t0は、信号遅延時間t1と時刻情報を送信完了するのに要する時間t6とが、1秒間(つまり、正秒信号s0の周期)以内に収まる範囲内で、任意に設定できる。もし、t0=1−(t1+t6)と設定した場合は、t2が既知の固定値(t2=t6−t3)となるので、遅延時間t2を含む遅延時間指定情報を送信する必要はない。
【0122】
しかし、本実施形態のように、複数の観測装置120を芋づる式に接続した場合は、信号遅延時間t1が観測装置120毎に異なるので、各観測装置120においてt2を固定値とするためには、陸上装置110における送信開始時間t0を、各観測装置120毎に異ならせる必要がある。このように、各観測装置120においてt2を固定値とすると、各観測装置120に対する送信開始時間t0が異なることになり、送信開始時間t0の設定が煩雑で間違いを起こし易いものとなる。
【0123】
これに対し、本実施形態では、各観測装置120に対し、同一の送信開始時間t0を設定し、複数の観測装置120全てにおいて遅延時間t2を変動値に設定できるようにする。これにより、陸上装置110において送信開始時間t0の設定が簡単になり使い易さが向上する。また、各観測装置120に対する送信開始時間t0を同一とすることにより、各観測装置120へ毎周期、時刻情報を、芋づる式に接続された1本の信号線で送信することができる。
【0124】
観測装置120(2)における時刻情報d0b、正秒タイミング信号s0c、および処理用クロック信号c2の生成についても、観測装置120(1)と同様に行われる。また、観測装置120(3)以降の遅延器26への遅延時間t2の設定、観測装置120(3)以降における時刻情報d0b、正秒タイミング信号s0c、および処理用クロック信号c2の生成についても、観測装置120(2)と同様に行われる。
【0125】
本実施形態では、遅延器26の遅延制御は、位相同期回路27で生成した処理用クロック信号c2で行われる、そして、処理用クロック信号c2の周波数を32.768MHzとしているので、時刻情報d0bを、GPS受信機における時刻に対し±50nsecの精度で合わせる事が可能である。
【0126】
なお、上記説明では、観測装置指定情報d02で指定された観測装置120においては、設定要求情報d01が常に有効であった。したがって、観測装置指定情報d02で指定された観測装置120において、設定要求情報d01が有効な場合と同じ状態とすることにより、陸上装置110からの設定要求情報d01を省略する構成とすることもできる。
【0127】
また、上記説明では、陸上装置110に近い観測装置120(1)から順に遅延時間t2を設定するようにしたが、この逆、つまり、陸上装置110から最も遠い観測装置120(n)から順に遅延時間t2を設定するようにしてもよい。
【0128】
また、上記説明では、全ての観測装置120に対し、順次、正しい遅延時間t2を設定するようにしたが、必要に応じて一部の観測装置120に対してのみ、正しい遅延時間t2を設定することも可能である。このとき、一部の観測装置120に対して遅延時間t2を設定するときにおいても、他の観測装置120は、陸上装置110が送信した時刻情報を受信することができるので、時計回路25から出力される時刻情報の精度を高めることができる。
【0129】
第2実施形態によれば、少なくとも次の効果を得ることができる。
(B1)複数の観測装置120を芋づる形式で接続するよう構成したので、複数の観測装置120における時刻情報d0b、正秒タイミング信号s0c、処理用クロック信号c2を、GPS受信機における時刻情報d0、正秒信号s0、精密クロック信号c0に近い精度とすることが容易に実現できる。
(B2)1番目の伝送フレームにより観測装置を折り返し状態に設定し、2番目の伝送フレームにより信号遅延時間t1を取得し、3番目の伝送フレームにより観測装置に対し遅延時間t2を設定するように構成したので、複数の観測装置120において、正確な時刻情報d0bと正秒タイミング信号s0cを得ることを容易に実現できる。
(B3)複数の観測装置120に対し、同一の送信開始時間t0を設定し、複数の観測装置120全てにおいて遅延時間t2を変動値に設定できるように構成したので、陸上装置110において送信開始時間t0の設定が簡単になり使い易さが向上し、また、陸上装置と全観測装置との間を一本の伝送路で接続することができる。
(B4)陸上装置と観測装置との間、観測装置と観測装置との間を、一本の伝送路で接続するよう構成したので、伝送路の構築を容易に行うことができる。
(B5)陸上装置110が送信した時刻情報を、常に全ての観測装置120で受信することができ、該受信した時刻情報を時計回路25に設定できるよう構成したので、一部の観測装置120に対し遅延時間t2を設定処理しているときにも、他の観測装置120は、正確な時刻情報を時計回路25に設定することができ、時計回路25から出力される時刻情報の精度を高めることができる。
【0130】
(第3実施形態)
本発明の第3実施形態に係る時刻情報伝送システムについて、図5を用いて説明する。
図5は、本発明の第3実施形態に係る時刻情報伝送システムの構成を示す図であり、本発明を海底地震観測システムに適用した実施例である。第3実施形態では、観測装置220に観測情報送出器228が搭載され、陸上装置210に観測情報受信器218が搭載されている。これにより、観測情報を観測装置220から陸上装置210へ、光ファイバ151を介して送信できるように構成されている。
【0131】
図5において、図1及び図4と同じ動作を行う構成には同符号を付し、説明を省略する。また、図2図3に示す第1実施形態における動作タイミングは、第3実施形態においても同様である。つまり、図2図3は、第2実施形態に係る動作タイミングを示す図でもある。
【0132】
第3実施形態の時刻情報伝送システムにおいては、時刻情報の送信装置としての陸上装置210と、時刻情報の受信装置としての観測装置220との間が、1芯双方向の電気/光変換器117,127を介して、1本の光ファイバ151により信号接続されている。
【0133】
そして、時刻情報フレームの折り返し期間以外の時間において、スイッチ229を観測情報伝送データd5の系統に切り替えることで、観測情報伝送データd5を陸上装置210へ送信する。こうして、時刻情報の配信と観測情報の伝送を、1本の光ファイバで可能としている。
【0134】
陸上装置210の構成を説明する。
陸上装置210は、送信フレーム生成器11と、並列/直列変換器12と、送信制御器13と、シンボル符号器14と、遅延時間計測器15と、位相同期回路16と、演算部17と、電気/光変換器117と、観測情報受信器218とを含むように構成される。図1の構成と異なるのは、電気/光変換器117と観測情報受信器218であり、他の構成は、図1の構成と同じである。電気/光変換器117は、図4の構成と同じである。
【0135】
陸上装置210において、位相同期回路16で生成された処理用クロック信号c2は、位相同期回路16で用いられるとともに、位相同期回路16と電気/光変換器117とを除き、陸上装置210の構成の全てへ出力される。
【0136】
観測情報受信器218は、観測装置220から受信した直列の観測情報伝送データd5bを、復号した後、並列変換し、観測情報として出力する。このため、観測情報受信器218は、シンボル復号器21、直列/並列変換器22、受信制御器23等のような受信回路として必要な構成を備えている。
【0137】
次に、観測装置220の構成を説明する。
観測装置220は、シンボル復号器21と、直列/並列変換器22と、受信制御器23と、ANDゲート24と、時計回路25と、遅延器26と、位相同期回路27と、電気/光変換器127と、スイッチ229と、観測情報送出器228とを含むように構成される。図1の構成と異なるのは、電気/光変換器127とスイッチ229と観測情報送出器228であり、他の構成は、図1の構成と同じである。電気/光変換器127は、図4の構成と同じである。
【0138】
観測装置220において、位相同期回路27で生成された処理用クロック信号c2は、位相同期回路27で用いられるとともに、位相同期回路27と電気/光変換器127とを除き、観測装置220の構成の全てへ出力される。
【0139】
観測情報送出器228は、観測器(不図示)が観測した各種観測情報d4と、時計回路25の出力である時刻情報d0bとを含む伝送フレームを生成し、直列変換した後、シンボル符号化し、観測情報伝送データd5として出力し、陸上装置210へ送信する観測情報送出部である。伝送フレームの構成は、図3に示す伝送フレームd2と同様である。このため、観測情報送出器228は、フレーム生成器11、並列/直列変換器12、送信制御器13、シンボル符号器14等のような送信回路として必要な構成を備えている。
【0140】
スイッチ229の接続は、接点aが観測情報送出器228の出力に接続されていること以外は、第2実施形態(図4)のスイッチ129の接続と同じである。すなわち、スイッチ229は、観測装置220を、折り返し状態と、非折り返し状態との間で切り替える。折り返し状態とは、陸上装置210から信号が送信され、観測装置220で折り返されて陸上装置210へ戻る状態である。非折り返し状態とは、折り返し状態でない状態であり、例えば、図2の送信開始時間t0の期間である。
【0141】
スイッチ229は、折り返し状態の期間において、電気/光変換器127からの電気信号であるシンボル信号d3bを、電気/光変換器127へ折り返す。つまり、スイッチ129の接点bと、電気/光変換器127の電気信号入力cとが接続される。
【0142】
また、スイッチ229は、非折り返し状態の期間において、観測情報送出器228からの観測情報伝送データd5を、電気/光変換器127へ出力する。つまり、スイッチ229の接点aと、電気/光変換器127の電気信号入力cとが接続される。
【0143】
以上の構成により、観測情報d4は、観測情報送出器228において、タイムスタンプである観測時間d0bが付加された後、観測情報d4を伝送するためのフレームに重畳され、非折り返し状態の期間において、直列データである観測情報伝送データd5として出力される。観測情報伝送データd5は、スイッチ229を経由し、1芯双方向の電気/光変換器127により光信号に変換され、観測装置220から出力される。
【0144】
観測装置220から出力された観測情報は、光ファイバ151を経由して陸上装置210に入力される。陸上装置210に入力された観測情報は、1芯双方向の電気/光変換器117により電気信号d5bに変換され、観測情報受信器218により、タイムスタンプである観測時間d0bが付加された観測情報として出力される。
【0145】
次に、観測装置220内の遅延器26への遅延時間t2の設定処理や、観測装置220における時刻情報d0b、正秒タイミング信号s0c、処理用クロック信号c2の生成処理について説明する。本実施形態において、電源投入直後等の初期状態では、スイッチ229は、折り返し状態にあるものとする。
【0146】
まず、陸上装置210は、GPS受信機からの正秒信号s0(1)と時刻情報d0(1)を受信後、送信フレーム生成器11において、フレーム情報d1(1)を生成する。フレーム情報d1(1)は、送信制御器13からの制御信号に従い、並列/直列変換器12を経て、シンボル符号器14からシンボル信号d3として出力される。シンボル信号d3は、電気/光変換器117で光信号に変換され、伝送路である光ファイバ151へ出力される。
【0147】
観測装置220は、光ファイバ151経由で送られてきた陸上装置210からの光信号を、電気/光変換器127により、電気信号であるシンボル信号d3bに変換する。この電気信号d3bは、スイッチ229で折り返されて、電気/光変換器127の電気信号入力cへ入力される。このとき、観測装置220は折り返し状態であり、スイッチ229の接点bと、電気/光変換器127の電気信号入力cとが接続されている。
【0148】
陸上装置210は、フレーム情報d1(1)が送信された後、観測装置220で折り返され戻るまでの往復時間を遅延時間計測器15で計測する。そして、第1実施形態と同様に、上記往復時間から算出した信号遅延時間t1と、送信開始時間t0と、同期パターン検出時間t3とを用いて、遅延時間t2を算出する。
【0149】
次に、陸上装置210は、次の正秒信号s0(2)と時刻情報d0(2)を受信後、送信フレーム生成器11において次のフレーム情報d1(2)を生成し、並列/直列変換器12、シンボル符号器14の処理を経た後、電気/光変換器117から出力する。このフレーム情報d1(2)には、GPS受信機からの時刻情報d0(2)と遅延時間t2を含む遅延時間指定情報とが含まれる。
【0150】
フレーム情報d1(2)は、観測装置220へ伝送され、第1実施形態の受信装置20と同様に、遅延時間t2が遅延器26に設定される。そして、遅延器26において、同期タイミング信号s0bから遅延時間t2後に、正秒タイミング信号s0cが生成される。そして、時計回路25において、フレーム情報d1bに含まれる時刻情報d0(2)が、正秒タイミング信号s0cにより設定される。これにより、正確な時刻を示す時刻情報d0bが、時計回路25から出力されるようになる。
【0151】
こうして観測装置220は、正確な時刻を認識できるようになる。すると、スイッチ229は、折り返し状態の時間帯は、スイッチ229の接点bと、電気/光変換器127の電気信号入力cとを接続し、非折り返し状態の時間帯は、スイッチ229の接点aと、電気/光変換器127の電気信号入力cとを接続する動作を行うようになる。そして、観測情報送出器228は、非折り返し状態の時間帯に、観測情報伝送データd5を、電気/光変換器127へ出力する。
【0152】
また、第1実施形態と同様に、シンボル復号器21において、シンボル信号d3bから、受信データである直列伝送データd2b、データ取込タイミング信号s3、基準クロック取出し信号s4が生成される。そして、シンボル信号d3bと基準クロック取出し信号s4とにより、基準クロック信号c1が取り出され、位相同期回路27において、基準クロック信号c1に基づき、処理用クロック信号c2が生成される。
【0153】
なお、上記の説明では、時刻情報の折り返し状態と観測情報の伝送状態との切替に、スイッチ229を使用したが、必ずしもスイッチ229を使用しなくてもよい。例えば、図5において、スイッチ229を用いることなく、スイッチ229の接点bと電気/光変換器127の電気信号入力cとが固定して接続され、スイッチ229の接点aと接点bとが固定して接続された回路を形成し、陸上装置210からの時刻情報が光ファイバ151に重畳されていない期間(非折り返し状態の時間帯)に、観測装置220からの観測情報を光ファイバ151に重畳する時分割方法を用いてもよい。
【0154】
第3実施形態によれば、少なくとも次の効果を得ることができる。
(C1)陸上装置と観測装置との間を1本の光ファイバのみで信号接続することにより、観測装置における時刻情報d0b、正秒タイミング信号s0c、処理用クロック信号c2を、GPS受信機における時刻情報d0、正秒信号s0、精密クロック信号c0に近い精度とすることができる。
(C2)観測装置は、陸上装置からの信号を折り返して陸上装置へ送信する折り返し状態と、陸上装置からの信号を折り返さない非折り返し状態との間で切り替えるスイッチとを備え、陸上装置から情報信号を受信する時間帯は、スイッチを折り返し状態にし、陸上装置から情報信号を受信しない時間帯は、スイッチを非折り返し状態にして、観測情報を陸上装置へ送信するよう構成したので、1本の光ファイバのみで、観測装置から観測情報を陸上装置へ伝送することができる。
【0155】
なお、本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、種々変形、組み合わせて実施することができる。
また、本発明は、本発明に係る処理を実行するシステムとしてだけでなく、装置、方法として、或いは、このような方法やシステムを実現するためのプログラムや当該プログラムを記録する記録媒体などとして把握することができる。
また、本発明の各構成部は、CPU(Central Processing Unit)がメモリに格納された制御プログラムを実行することにより制御する構成としてもよく、あるいは、CPUを用いないハードウエア回路として構成してもよい。
【符号の説明】
【0156】
10…送信装置、11…送信フレーム生成器、12…並列/直列変換器、13…送信制御器、14…シンボル符号器、15…遅延時間計測器(遅延時間取得部)、16…位相同期回路、17…演算部、20…受信装置、21…シンボル復号器、22…直列/並列変換器、23…受信制御器、24…ANDゲート、25…時計回路、26…遅延器、27…位相同期回路、31…フレーム情報、32…アイドル状態、33…同期パターン、34…時刻情報、35…その他情報、51…通信ケーブル、110…陸上装置、111…送信フレーム生成器、117…電気/光変換器、120…観測装置、122…直列/並列変換器、127…電気/光変換器、128…電気/光変換器、129…スイッチ、151…光ファイバ、210…陸上装置、218…観測情報受信器、220…観測装置、228…観測情報送出器、229…スイッチ、c0…精密クロック信号、c1…基準クロック信号、c2…処理用クロック信号、d0,d0b…時刻情報、d1,d1b…フレーム情報、d2,d2b…直列伝送データ、d3,d3b,d3c…シンボル信号、d4…観測情報、d5,d5b…観測情報伝送データ、d01…設定要求情報、d02…観測装置指定情報、d03…折り返し指定情報、s0…正秒信号、s0b…同期タイミング信号(基準タイミング信号)、s0c…正秒タイミング信号、s1…送信開始信号、s2…シンボルタイミング信号、s3…データ取込タイミング信号、s4…基準クロック取出し信号、s5…直列/並列変換期間信号、t0…送信開始時間、t1…信号遅延時間、t2…遅延時間、t3…同期パターン検出時間。
図1
図2
図3
図4
図5