特許第6386273号(P6386273)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6386273
(24)【登録日】2018年8月17日
(45)【発行日】2018年9月5日
(54)【発明の名称】立体物造形装置及び立体物造形方法
(51)【国際特許分類】
   B29C 64/112 20170101AFI20180827BHJP
   B33Y 10/00 20150101ALI20180827BHJP
   B33Y 30/00 20150101ALI20180827BHJP
【FI】
   B29C64/112
   B33Y10/00
   B33Y30/00
【請求項の数】11
【全頁数】22
(21)【出願番号】特願2014-139659(P2014-139659)
(22)【出願日】2014年7月7日
(65)【公開番号】特開2016-16554(P2016-16554A)
(43)【公開日】2016年2月1日
【審査請求日】2017年6月13日
(73)【特許権者】
【識別番号】000137823
【氏名又は名称】株式会社ミマキエンジニアリング
(74)【代理人】
【識別番号】100166545
【弁理士】
【氏名又は名称】折坂 茂樹
(74)【代理人】
【識別番号】100142653
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100103676
【弁理士】
【氏名又は名称】藤村 康夫
(72)【発明者】
【氏名】原 浩文
【審査官】 一宮 里枝
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−043338(JP,A)
【文献】 特開2005−205670(JP,A)
【文献】 特開2003−211648(JP,A)
【文献】 特開2001−018297(JP,A)
【文献】 特開2000−280354(JP,A)
【文献】 特開2002−331592(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 64/00−64/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
立体物を造形する立体物造形装置であって、
所定の条件に応じて硬化する液体である硬化性液体の液滴を吐出することで立体物の形状を形成する立体形状形成用ヘッドと、
前記立体形状形成用ヘッドにより吐出された前記硬化性液体を硬化させる硬化手段と、
立体物の表面に印刷すべき画像である印刷画像に基づいて着色用のインクのインク滴を吐出することにより、立体物を着色する着色用ヘッドと、
前記立体形状形成用ヘッド、前記硬化手段、及び前記着色用ヘッドの動作を制御する制御部と
を備え、
前記制御部は、前記立体形状形成用ヘッド及び前記硬化手段に、
予め設定された領域を覆う前記硬化性液体を硬化させた層を複数層重ねて形成することにより、硬化した前記硬化性液体の層が複数層重なった立体物である積層立体物を形成する動作であり、少なくとも一部の前記硬化性液体の層の積層により生じる段差を有する積層立体物を形成する積層立体物形成動作と、
少なくとも前記積層立体物における前記段差に重ねて前記硬化性液体の層を形成する段差被覆層形成動作と
を行わせ、
前記着色用ヘッドは、前記段差被覆層形成動作が行われた後に、立体物を着色することを特徴とする立体物造形装置。
【請求項2】
前記積層立体物形成動作は、前記印刷画像に応じた前記段差を有する前記積層立体物を形成することを特徴とする請求項1に記載の立体物造形装置。
【請求項3】
前記硬化性液体は、紫外線硬化型のインクであり、
前記硬化手段は、紫外線照射装置であり、
前記立体形状形成用ヘッド及び前記着色用ヘッドは、インクジェット方式でインク滴を吐出するインクジェットヘッドであり、
前記積層立体物形成動作及び前記段差被覆層形成動作において、前記立体形状形成用ヘッドは、予め設定された主走査方向へ移動しつつインク滴を吐出する主走査動作を行うことにより、前記制御部により指定される位置へインク滴を吐出することを特徴とする請求項1又は2に記載の立体物造形装置。
【請求項4】
前記積層立体物を構成する複数の層は、下の層の少なくとも一部の領域内に上の層が形成されるように重なることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の立体物造形装置。
【請求項5】
前記立体形状形成用ヘッドは、白色及びクリア色のうちの少なくとも一方の色のインク滴を吐出するインクジェットヘッドであることを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の立体物造形装置。
【請求項6】
前記制御部は、前記立体形状形成用ヘッド及び前記硬化手段に、前記段差被覆層形成動作として、
前記積層立体物の上に前記印刷画像に基づいて前記硬化性液体の液滴を吐出することにより、前記印刷画像に応じた凹凸を前記積層立体物上に形成する凹凸形成動作を行わせ、
前記着色用ヘッドは、前記凹凸形成動作により前記凹凸が形成された後に、立体物を着色することを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載の立体物造形装置。
【請求項7】
前記凹凸形成動作において、前記立体形状形成用ヘッドは、前記印刷画像に基づいて前記硬化性液体の液滴を吐出することで形成する層である凹凸形成用層を形成し、かつ、前記凹凸形成用層を複数層重ねて形成することにより、前記印刷画像に応じた凹凸を前記積層立体物上に形成することを特徴とする請求項6に記載の立体物造形装置。
【請求項8】
前記凹凸形成動作において、前記立体形状形成用ヘッドは、前記印刷画像に基づくグレースケール画像を前記硬化性液体で印刷する動作を行うことにより、前記印刷画像に応じた凹凸を前記積層立体物上に形成することを特徴とする請求項6又は7に記載の立体物造形装置。
【請求項9】
前記グレースケール画像は、前記印刷画像に対し、
グレースケール化と、
画像内における少なくとも一部の領域に対する階調反転と
を行った画像であることを特徴とする請求項8に記載の立体物造形装置。
【請求項10】
前記制御部は、前記立体形状形成用ヘッド及び前記硬化手段に、
前記凹凸形成動作で形成された前記凹凸を覆う領域に前記硬化性液体を硬化させた層を形成する凹凸被覆動作を更に行わせ、
前記着色用ヘッドは、前記凹凸被覆動作が行われた後に、前記立体物を着色することを特徴とする請求項6から9のいずれかに記載の立体物造形装置。
【請求項11】
立体物を造形する立体物造形方法であって、
所定の条件に応じて硬化する液体である硬化性液体の液滴を吐出することで立体物の形状を形成する立体形状形成用ヘッドと、
前記立体形状形成用ヘッドにより吐出された前記硬化性液体を硬化させる硬化手段と、
立体物の表面に印刷すべき画像である印刷画像に基づいて着色用のインクのインク滴を吐出することにより、立体物を着色する着色用ヘッドと
を用い、
前記立体形状形成用ヘッド及び前記硬化手段に、
予め設定された領域を覆う前記硬化性液体を硬化させた層を複数層重ねて形成することにより、硬化した前記硬化性液体の層が複数層重なった立体物である積層立体物を形成する動作であり、少なくとも一部の前記硬化性液体の層の積層により生じる段差を有する積層立体物を形成する積層立体物形成動作と、
少なくとも前記積層立体物における前記段差に重ねて前記硬化性液体の層を形成する段差被覆層形成動作と
を行わせ、
前記段差被覆層形成動作が行われた後に、前記着色用ヘッドに立体物を着色させることを特徴とする立体物造形方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、立体物造形装置及び立体物造形方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、3次元形状の立体物を造形する3Dプリンタが様々な用途に用いられつつある。また、従来、紫外線硬化型インク(UV硬化インク)を用いて立体物を造形する方法が知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第4420685号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
3Dプリンタでは、様々な形状の立体物の造形が可能である。しかし、従来の3Dプリンタは、例えば装置の構成が複雑であるため、一般的に高価である。また、その結果、3Dプリンタは、広く普及するには至っていない。そのため、従来、より簡易な構成で立体物を造形可能な構成が望まれていた。そこで、本発明は、上記の課題を解決できる立体物造形装置及び立体物造形方法を提供することを目的とする。
【0005】
尚、3Dプリンタで着色された立体物を造形しようとする場合、例えば広く普及している2次元(2D)のプリンタで印刷をする場合と比べ、色の再現域が狭くなりやすい。そのため、より簡易な構成で立体物を造形可能な構成においては、更に、例えば、色の再現域をより広くできる構成が望まれる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本願の発明者は、より簡易な構成で立体物を造形可能な構成について、鋭意研究を行った。そして、先ず、紫外線硬化型インクで形成したインクの層を積層することで高さを表現することを考えた。
【0007】
ここで、上記においても説明をしたように、例えば、従来のインクジェットプリンタで紫外線硬化型インクを用いる方法でも、インクの層を重ねることにより、立体的な形状を形成できる。より具体的には、例えば、盛りと呼ばれるデータを1つ用意し、そのデータに基づいて同じ領域に対し、重ねて2〜30回程度の印刷を行うことで、ある程度の高さ(例えば6mm程度)までであれば、立体的な形状を形成できる。また、立体的な形状の形成後、表面にカラー印刷を行うことで、立体物を着色することも可能である。しかし、このような方法で形成可能な立体形状は、通常、単純な凹凸等を表現するまでである。
【0008】
これに対し、本願の発明者は、同じデータを用いて同じ領域へ複数のインクの層を重ねるのではなく、複数種類のデータのそれぞれに対応するインクの層を積層することで、より複雑な形状を造形することを考えた。また、より具体的に、例えば、造形しようとする立体物を示す写真やデータ等に合わせた複数のデータを用意し、それぞれのデータに基づいて複数のインクの層を積層することで、単純な凹凸等ではなく、より複雑な形状の立体物を造形することを考えた。
【0009】
しかし、このような方法で複数のインクの層を積層した場合、積層される層の境界部分において、積層による段差が発生することになる。また、その結果、立体物として不自然な形状になる場合がある。より具体的には、例えば、風景や動物等の自然物の写真に基づき、その自然物を表現する立体物を造形しようとする場合、積層による段差が発生すると、段差の輪郭が目立ち、立体物の印象が不自然になるおそれがある。
【0010】
これに対し、本願の発明者は、更なる鋭意研究により、単に複数のインクの層を積層するのみではなく、積層により生じる段差に重ねて更にインクの層を形成することを考えた。このように構成した場合、段差に重ねてインクの層を形成することにより、例えば瓦に雪がかぶった状態のようになり、段差の輪郭が目立つことを適切に防ぐことができると考えられる。また、これにより、自然な印象の立体物を適切に造形することができると考えられる。
【0011】
また、本願の発明者は、段差に重ねてインクの層を形成する方法に関し、より具体的に、例えば、立体物により表現しようとする対象物の画像に応じた細かい凹凸を更に形成することで、より自然な印象を与える立体物を造形することを考えた。この場合、立体物により表現しようとする対象物の画像とは、例えば、立体物への着色時に印刷する画像又はその画像に所定の画像処理を行った画像(例えばグレースケール画像等)である。
【0012】
このように構成した場合、例えば、積層による段差に重ねて対象物の細かい形状に応じた凹凸が形成されるため、積層による不自然な段差がより目立ちにくくなる。また、これにより、例えば、より自然な印象の立体物を造形することができる。また、より具体的に、例えば、風景や動物等の自然物を表現する立体物を造形しようとする場合、風景中の樹木の葉や、動物の毛等の細かい形状に応じた凹凸まで、立体物に形成することができる。
【0013】
また、この場合、立体物への着色は、例えば、立体物の表面(上面)に対し、2次元(2D)での印刷の動作と同様に行うことができる。そのため、このように構成すれば、例えば、3Dプリンタでの一般的な方法で着色を行う場合と比べ、色の再現域をより広くできるとも言える。
【0014】
また、これらの動作は、従来の3Dプリンタと比べてより簡易な構成により実行することができる。例えば、これらの動作は、例えば、インクジェットプリンタに対し、所定の制御を行うことで実行できる。また、本願の発明者は、実際の実験等により、これらの動作を行うことで、従来の3Dプリンタと比べてより簡易な構成で立体物を適切に造形可能であることを確認した。すなわち、上記の課題を解決するために、本発明は、以下の構成を有する。
【0015】
(構成1)立体物を造形する立体物造形装置であって、所定の条件に応じて硬化する液体である硬化性液体の液滴を吐出することで立体物の形状を形成する立体形状形成用ヘッドと、立体形状形成用ヘッドにより吐出された硬化性液体を硬化させる硬化手段と、立体物の表面に印刷すべき画像である印刷画像に基づいて着色用のインクのインク滴を吐出することにより、立体物を着色する着色用ヘッドと、立体形状形成用ヘッド、硬化手段、及び着色用ヘッドの動作を制御する制御部とを備え、制御部は、立体形状形成用ヘッド及び硬化手段に、予め設定された領域を覆う硬化性液体を硬化させた層を複数層重ねて形成することにより、硬化した硬化性液体の層が複数層重なった立体物である積層立体物を形成する動作であり、少なくとも一部の硬化性液体の層の積層により生じる段差を有する積層立体物を形成する積層立体物形成動作と、少なくとも積層立体物における段差に重ねて硬化性液体の層を形成する段差被覆層形成動作とを行わせ、着色用ヘッドは、段差被覆層形成動作が行われた後に、立体物を着色する。
【0016】
このように構成した場合、例えば、積層立体物形成動作で複数の層を重ねて形成することにより、厚みのある立体物を適切に形成できる。また、その後に段差被覆層形成動作を行うことにより、例えば、複数の層を積層することで生じる不自然な段差が目立つことを適切に防ぐことができる。そのため、このように構成すれば、例えば、自然な印象の立体物を適切に形成できる。また、これにより、例えば、簡易な構成により、立体物を適切に造形できる。
【0017】
ここで、硬化性液体とは、例えば、所定の条件に応じて硬化するインクである。立体形状形成用ヘッドは、例えば、インクジェットインクジェット方式により、硬化性液体の液滴を吐出する。また、立体形状形成用ヘッドは、例えば、主走査動作(スキャン動作)を行うことにより、硬化性液体の液滴を吐出する。この場合、主走査動作とは、例えば、予め設定された主走査方向へ移動しつつ液滴を吐出する動作である。
【0018】
また、硬化手段は、例えば、立体形状形成用ヘッドが各回の主走査動作を行う毎に、その回の主走査動作で吐出された硬化性液体を硬化させる。この場合、硬化手段は、例えば、立体形状形成用ヘッドと共に主走査方向へ移動しつつ、硬化性液体を硬化させてよい。また、例えば、立体形状形成用ヘッドが各回の主走査動作を行った後、次の主走査動作を行うまでの間に、硬化性液体を硬化させてもよい。また、例えば、硬化手段は、例えば、立体形状形成用ヘッドが複数回の主走査動作を行う毎に、硬化性液体を硬化させてもよい。
【0019】
積層立体物形成動作は、例えば、ベタ印字により形成される層を複数層重ねる動作である。この場合、ベタ印字とは、例えば、予め設定された所定の濃度(印字濃度)で一定の領域を塗りつぶす動作である。また、積層立体物形成動作は、造形しようとする立体物の形状に応じて予め用意された複数のデータ(層データ)に従って、それぞれの層データにより指定される層を順次重ねる動作であってよい。この場合、それぞれの層データは、例えば、造形しようとする立体物の断面形状を示すデータであってよい。
【0020】
また、段差被覆層形成動作は、より具体的に、例えば、以下において説明をする凹凸形成動作のことである。また、凹凸形成動作は、例えば、グレースケール画像を印刷する動作である。このように構成すれば、例えば、不自然な段差が目立つことをより適切に防ぐことができる。また、これにより、自然な印象の立体物をより適切に造形できる。
【0021】
また、段差被覆層形成動作として、凹凸形成動作以外の動作を行ってもよい。例えば、段差被覆層形成動作として、少なくとも積層立体物における段差上を塗りつぶすオーバーコート層等を形成すること等も考えられる。この場合、このオーバーコート層の厚さは、例えば、積層立体物を構成する硬化性液体の層の一層分の厚さにすることが考えられる。また、オーバーコート層の厚さは、更に厚くしてもよい。このようなオーバーコート層を形成した場合も、積層立体物における段差の位置近辺について、例えば瓦に雪がかぶった状態のようになり、段差の輪郭が目立つことを適切に防ぐことができる。また、これにより、自然な印象の立体物を適切に造形できる。
【0022】
(構成2)積層立体物形成動作は、印刷画像に応じた段差を有する積層立体物を形成する。このように構成すれば、例えば、造形の対象物をより適切に表現できる。
【0023】
(構成3)硬化性液体は、紫外線硬化型のインクであり、硬化手段は、紫外線照射装置であり、立体形状形成用ヘッド及び着色用ヘッドは、インクジェット方式でインク滴を吐出するインクジェットヘッドであり、積層立体物形成動作及び段差被覆層形成動作において、立体形状形成用ヘッドは、予め設定された主走査方向へ移動しつつインク滴を吐出する主走査動作を行うことにより、制御部により指定される位置へインク滴を吐出する。このように構成すれば、例えば、積層立体物形成動作及び段差被覆層形成動作等を適切に行うことができる。また、これにより、例えば、自然な印象の立体物をより適切に形成できる。また、この場合、着色用ヘッドで用いる着色用のインクとしても、紫外線硬化型インクを用いることが好ましい。
【0024】
(構成4)積層立体物を構成する複数の層は、下の層の少なくとも一部の領域内に上の層が形成されるように重なる。このようにして形成される立体物は、例えば、オーバーハングしない立体物である。この場合、オーバーハングとは、例えば、立体物の少なくとも一部において、ある位置よりも上側の部分が下側の部分よりも外側へ突出することである。また、この場合、立体物の上側とは、積層される複数の層において、先に形成される層から後に形成される層へ向かう方向の側のことである。
【0025】
立体物を造形する場合において、例えばオーバーハングする立体物を形成しようとする場合、例えば、外側へ突出する部分を支えるためのサポート材を用いる必要がある。そして、この場合、立体物を造形するための構成がより複雑になるため、簡易な構成で造形をしようとするのではなく、例えば従来の3Dプリンタを用いることが好ましい場合もある。
【0026】
これに対し、オーバーハングしない立体物であれば、例えば、上記のような簡易な構成により、自然な印象の立体物を適切に形成し、着色できる。そのため、このように構成すれば、例えば、オーバーハングしない立体物をより適切に造形できる。
【0027】
(構成5)立体形状形成用ヘッドは、白色及びクリア色のうちの少なくとも一方の色のインク滴を吐出するインクジェットヘッドである。このように構成すれば、例えば、立体物の形状を適切に造形できる。
【0028】
(構成6)制御部は、立体形状形成用ヘッド及び硬化手段に、段差被覆層形成動作として、積層立体物の上に印刷画像に基づいて硬化性液体の液滴を吐出することにより、印刷画像に応じた凹凸を積層立体物上に形成する凹凸形成動作を行わせ、着色用ヘッドは、凹凸形成動作により凹凸が形成された後に、立体物を着色する。
【0029】
このように構成した場合、凹凸形成動作を行うことにより、例えば、積層立体物の上に、立体物により表現しようとする対象物のより細かい形状に合わせた凹凸を形成できる。そのため、このように構成すれば、例えば、自然な印象の立体物をより適切に形成できる。
【0030】
尚、凹凸形成動作において、印刷画像に基づいて硬化性液体の液滴を吐出するとは、例えば、印刷画像に基づいて印刷を行うことである。また、印刷画像に基づいて印刷を行うとは、例えば、印刷画像、又は印刷画像に所定の画像処理等を行った画像を印刷することである。また、着色用ヘッドは、例えば、凹凸形成動作で形成された凹凸と位置を合わせて、印刷画像を印刷する。このように構成すれば、例えば、より自然な印象の着色を適切に行うことができる。
【0031】
(構成7)凹凸形成動作において、立体形状形成用ヘッドは、印刷画像に基づいて硬化性液体の液滴を吐出することで形成する層である凹凸形成用層を形成し、かつ、凹凸形成用層を複数層重ねて形成することにより、印刷画像に応じた凹凸を積層立体物上に形成する。このように構成すれば、例えば、凹凸形成動作で形成する層について、十分な厚みを持たせることができる。また、これにより、例えば、立体物により表現しようとする対象物の形状に合わせた凹凸をより適切に形成できる。
【0032】
尚、立体物により表現しようとする対象物の形状に関し、例えば、対象物が実在する物や人物等である場合、対象物の形状とは、対象物の実際の形状のことである。また、例えば、対象物が想像上の物や人物等(例えばアニメーションのキャラクタ等)である場合、対象物の形状とは、その物の想定される形状等であってよい。
【0033】
(構成8)凹凸形成動作において、立体形状形成用ヘッドは、印刷画像に基づくグレースケール画像を硬化性液体で印刷する動作を行うことにより、印刷画像に応じた凹凸を積層立体物上に形成する。このように構成すれば、例えば、立体物により表現しようとする対象物の形状に合わせた凹凸をより適切に形成できる。
【0034】
(構成9)グレースケール画像は、印刷画像に対し、グレースケール化と、画像内における少なくとも一部の領域に対する階調反転とを行った画像である。
【0035】
凹凸形成動作において、例えばグレースケール画像を印刷した場合、画像内の濃淡(階調値)に応じて、凹凸を形成することになる。また、この場合、画像内で暗い部分が凸部になり、明るい部分が凹部になる。また、印刷画像を単にグレースケール化した場合、例えば印刷画像における陰の部分は、グレースケール化した画像において、暗い部分になる。そのため、凹凸形成動作において、印刷画像を単にグレースケール化したグレースケール画像を用いた場合、印刷画像における陰の部分が凸部になるように、凹凸を形成することになる。
【0036】
しかし、風景や動物等の自然物においては、一般的に、奥に凹んだ部分等が陰になる部分になりやすい。そのため、造形する立体物において、陰の部分が凸部になると、不自然な印象になる場合もある。
【0037】
これに対し、印刷画像を単にグレースケール化するのみではなく、階調の反転も行えば、印刷画像における陰の部分は、グレースケール化した画像において、明るい部分になる。そして、この場合、凹凸形成動作において、印刷画像における陰の部分が凹部になるように、凹凸を形成することになる。そのため、このように構成すれば、例えば、より自然な印象になる立体物をより適切に造形することができる。
【0038】
(構成10)制御部は、立体形状形成用ヘッド及び硬化手段に、凹凸形成動作で形成された凹凸を覆う領域に硬化性液体を硬化させた層を形成する凹凸被覆動作を更に行わせ、着色用ヘッドは、凹凸被覆動作が行われた後に、立体物を着色する。
【0039】
凹凸形成動作で凹凸を形成した場合、細かな凹凸を形成することで、積層立体物形成動作で形成した複数の層により生じる段差を目立たなくすることができる。しかし、この場合、着色用ヘッドで着色を行う領域に、細かな凹凸が形成されることになる。そして、例えば高い解像度で着色を行おうとする場合等においては、このような細かな凹凸が、着色用のインクの色再現域の広がりを妨げる要因となるおそれもある。
【0040】
これに対し、このように構成すれば、例えば、凹凸被覆動作を行うことにより、凹凸形成動作で形成される凹凸の影響を適切に低減できる。また、これにより、着色用のインクの色再現域をより適切に広げることができる。
【0041】
(構成11)立体物を造形する立体物造形方法であって、所定の条件に応じて硬化する液体である硬化性液体の液滴を吐出することで立体物の形状を形成する立体形状形成用ヘッドと、立体形状形成用ヘッドにより吐出された硬化性液体を硬化させる硬化手段と、立体物の表面に印刷すべき画像である印刷画像に基づいて着色用のインクのインク滴を吐出することにより、立体物を着色する着色用ヘッドとを用い、立体形状形成用ヘッド及び硬化手段に、予め設定された領域を覆う硬化性液体を硬化させた層を複数層重ねて形成することにより、硬化した硬化性液体の層が複数層重なった立体物である積層立体物を形成する動作であり、少なくとも一部の硬化性液体の層の積層により生じる段差を有する積層立体物を形成する積層立体物形成動作と、少なくとも積層立体物における段差に重ねて硬化性液体の層を形成する段差被覆層形成動作とを行わせ、段差被覆層形成動作が行われた後に、着色用ヘッドに立体物を着色させる。このように構成すれば、例えば、構成1と同様の効果を得ることができる。
【発明の効果】
【0042】
本発明によれば、例えば、簡易な構成により、立体物を適切に造形できる。
【図面の簡単な説明】
【0043】
図1】本発明の一実施形態に係る立体物造形装置10の一例を示す図である。図1(a)は、立体物造形装置10の要部の構成の一例を示す。図1(b)は、ヘッド部12の具体的な構成の一例を示す。
図2】本例において立体物50の造形及び着色を行う動作の一例を示す図である。図2(a)は、積層立体物形成動作の一例を示す。図2(b)は、凹凸形成動作の一例を示す。図2(c)は、凹凸被覆動作の一例を示す。図2(d)は、着色動作の一例を示す。
図3】着色動作において印刷する印刷画像402の一例を示す図である。
図4】積層立体物形成動作で印刷する画像の一例を示す図である。
図5】積層立体物形成動作で印刷する画像の一例を示す図である。図5(a)、(b)は、一層分の層データの一例をそれぞれ示す。
図6】積層立体物形成動作で印刷する画像の一例を示す図である。図6(a)〜(d)は、一層分の層データの一例をそれぞれ示す。
図7】凹凸形成動作で印刷するグレースケール画像406の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0044】
以下、本発明に係る実施形態を、図面を参照しながら説明する。図1は、本発明の一実施形態に係る立体物造形装置10の一例を示す。図1(a)は、立体物造形装置10の要部の構成の一例を示す。
【0045】
尚、以下に説明をする点以外について、立体物造形装置10は、公知の立体物造形装置と同一又は同様の構成を有してよい。また、立体物造形装置10としては、例えば、紫外線硬化型インクを用いるインクジェットプリンタを用いることができる。この場合、各部の動作の制御以外の点において、立体物造形装置10は、公知のインクジェットプリンタと同一又は同様であってよい。
【0046】
本例において、立体物造形装置10は、紫外線硬化型インクを用いて立体物50を造形する装置であり、ヘッド部12、走査駆動部14、テーブル16、及び制御部18を備える。ヘッド部12は、立体物50の造形及び着色に用いる紫外線硬化型インクのインク滴を吐出する部分である。本例において、ヘッド部12は、例えば、複数のインクジェットヘッドと、紫外線光源とを有する。ヘッド部12の構成については、後に更に詳しく説明する。
【0047】
走査駆動部14は、ヘッド部12に主走査動作及び副走査動作を行わせる駆動部である。この場合、ヘッド部12に主走査動作及び副走査動作を行わせるとは、例えば、ヘッド部12が有するインクジェットヘッドに、主走査動作及び副走査動作を行わせることである。また、インクジェットヘッドに主走査動作を行わせるとは、例えば、予め設定された主走査方向(図中のY方向)へ移動しつつインク滴を吐出する動作をインクジェットヘッドに行わせることである。また、インクジェットヘッドに副走査動作を行わせるとは、例えば、主走査方向と直交する副走査方向(X方向)へ、テーブル16に対して相対的にインクジェットヘッドを移動させることである。
【0048】
尚、図1(a)に示した構成において、副走査方向(X方向)とは、図中に示したY方向及びZ方向と直交する方向である。また、本例において、立体物造形装置10は、例えば、形成しようする立体物50の副走査方向における長さに応じて、必要な場合に、副走査動作を実行する。
【0049】
また、本例において、走査駆動部14は、キャリッジ102及びガイドレール104を有する。キャリッジ102は、形成する立体物50へ向けてヘッド部12を保持する部材である。この場合、ヘッド部12を立体物50へ向けるとは、例えば、ヘッド部12によるインク滴の吐出方向について、立体物50を形成する台となるテーブル16へ向かう方向に設定することである。ガイドレール104は、主走査方向へのキャリッジ102の移動をガイドするレールである。これらの構成により、主走査動作時において、走査駆動部14は、ガイドレール104に沿ってキャリッジ102を移動させることで、Y方向へ、ヘッド部12を移動させる。また、副走査動作時において、走査駆動部14は、X方向へガイドレール104を移動させることにより、X方向へ、ヘッド部12を移動させる。尚、立体物造形装置10の構成としては、例えば、副走査動作時において、副走査方向におけるヘッド部12の位置を固定して、テーブル16の側を移動させることも考えられる。
【0050】
テーブル16は、立体物50を形成する台となる部材である。また、本例において、テーブル16は、所定の上下方向(図中のZ方向)へ上面を昇降させる機能を有する。この場合、上下方向とは、例えば、対向しているヘッド部12とテーブル16とを結ぶ方向である。このように構成すれば、例えば、立体物50の造形の進行に応じて、ヘッド部12と立体物50との間の距離を適切に調整できる。
【0051】
制御部18は、例えば立体物造形装置10のCPUである。制御部18は、例えばホストPCの指示に応じて、立体物造形装置10の各部の動作を制御する。以上の構成により、立体物造形装置10は、立体物50の造形及び着色を行う。立体物50の造形及び着色を行う動作については、後に更に詳しく説明をする。
【0052】
続いて、ヘッド部12のより具体的な構成について、説明をする。図1(b)は、ヘッド部12の具体的な構成の一例を示す。本例において、ヘッド部12は、複数の着色用ヘッド202と、複数の白インク用ヘッド204と、透明インク用ヘッド206と、複数の紫外線光源208とを有する。
【0053】
複数の着色用ヘッド202は、立体物50の着色用のインクジェットヘッドであり、立体物50の表面に印刷すべき画像である印刷画像に基づいて着色用のインクのインク滴を吐出することにより、立体物50を着色する。この場合、印刷画像に基づいて着色用のインクのインク滴を吐出するとは、例えば、立体物50の表面に印刷画像を印刷することである。また、印刷画像としては、例えば、カラー画像が用いられる。また、本例において、複数の着色用ヘッド202のそれぞれは、印刷のプロセスカラーであるYMCKの各色について、紫外線硬化型インクのインク滴を吐出する。
【0054】
尚、複数の着色用ヘッド202としては、例えば、公知のインクジェットヘッドを好適に用いることができる。また、図示は省略したが、複数の着色用ヘッド202のそれぞれは、例えば、副走査方向(X方向)へ複数のノズルが並ぶノズル列を有する。そして、複数の着色用ヘッド202は、例えば、副走査方向の位置を揃えて、主走査方向へ並べて配設される。
【0055】
複数の白インク用ヘッド204及び透明インク用ヘッド206は、立体形状形成用ヘッドの一例である。この場合、立体形状形成用ヘッドとは、例えば、紫外線硬化型インクの液滴を吐出することで立体物の形状を形成するインクジェットヘッドのことである。また、複数の白インク用ヘッド204は、白色(W)の紫外線硬化型インクのインク滴を吐出する。透明インク用ヘッド206は、クリア色(CL)の紫外線硬化型インクのインク滴を吐出する。この場合、クリア色とは、例えば、無色透明な色のことである。また、クリア色のインクとは、例えば、顔料等の着色剤を添加していないインクのことであってよい。また、クリア色のインクは、例えば公知のインクジェットプリンタにおいて用いられるクリアインクであってよい。
【0056】
尚、白インク用ヘッド204及び透明インク用ヘッド206としても、例えば、公知のインクジェットヘッドを好適に用いることができる。また、図示は省略したが、白インク用ヘッド204及び透明インク用ヘッド206のそれぞれは、例えば、副走査方向へ複数のノズルが並ぶノズル列を有する。そして、白インク用ヘッド204及び透明インク用ヘッド206は、例えば、複数の着色用ヘッド202に対し、副走査方向の位置を揃えて、主走査方向へ並べて配設される。
【0057】
複数の紫外線光源208は、紫外線硬化型インクを硬化させるための紫外線を照射する光源である。紫外線光源208としては、例えば、UVLEDを有する光源を好適に用いることができる。また、本例において、複数の紫外線光源208のそれぞれは、例えば、主走査方向において、複数の着色用ヘッド202、複数の白インク用ヘッド204、及び透明インク用ヘッド206の並びの一方側及び他方側のそれぞれに配設される。また、各回の主走査動作において、複数の紫外線光源208は、複数の着色用ヘッド202、複数の白インク用ヘッド204、及び透明インク用ヘッド206と共に移動する。これにより、複数の紫外線光源208は、例えば、ヘッド部12による各回の主走査動作において、その回の主走査動作で吐出された紫外線硬化型インクを硬化させる。
【0058】
以上の構成により、複数の着色用ヘッド202、複数の白インク用ヘッド204、及び透明インク用ヘッド206は、制御部18の制御に応じて、紫外線硬化型インクを吐出する。また、複数の紫外線光源208は、吐出後の紫外線硬化型インクを硬化させる。また、これにより、立体物造形装置10は、以下において更に詳しく説明をするように、立体物50の造形及び着色を行う。
【0059】
尚、例えば立体物造形装置10の構成の変形例において、ヘッド部12の具体的な構成としては、図1(b)に示した構成以外のものを用いることもできる。例えば、図1(b)では、全てのインクジェットヘッド(複数の着色用ヘッド202、複数の白インク用ヘッド204、及び透明インク用ヘッド206)について、副走査方向における位置を揃えて主走査方向へ並ぶ場合の構成を図示した。しかし、ヘッド部12の構成の他の例においては、例えば、一部のインクジェットヘッドについて、他のインクジェットヘッドと副走査方向における位置をずらして配設すること等も考えられる。例えば、複数の白インク用ヘッド204及び透明インク用ヘッド206について、複数の着色用ヘッド202と副走査方向における位置をずらして配設すること等も考えられる。また、ヘッド部12は、例えば、複数の透明インク用ヘッド206を有してもよい。また、白インク用ヘッド204の個数は、例えば1個であってもよい。
【0060】
また、例えば、ヘッド部12における少なくとも一部の色のインクジェットヘッドについて、着色用ヘッド及び立体形状形成用ヘッドの両方の用途に用いてもよい。例えば、CMYKの少なくとも一部の色用の着色用ヘッド202について、立体形状形成用ヘッドとしても用いてもよい。また、立体形状形成用ヘッドの少なくとも一部(例えば、白インク用ヘッド204)について、着色用ヘッドとしても用いてもよい。
【0061】
更に、複数の着色用ヘッド202、複数の白インク用ヘッド204、及び透明インク用ヘッド206のそれぞれは、例えば、複数のインクジェットヘッドにより構成される複合ヘッドであってもよい。例えば、複数の着色用ヘッド202、複数の白インク用ヘッド204、及び透明インク用ヘッド206のそれぞれは、複数のインクジェットヘッドをスタガ配置で並べたスタガヘッドであってもよい。
【0062】
また、本例において、紫外線硬化型インクは、所定の条件に応じて硬化する液体である硬化性液体の一例である。紫外線光源208は、硬化性液体を硬化させる硬化手段の一例である。また、立体物造形装置10の構成の変形例においては、例えば、紫外線硬化型インク以外の硬化性液体を用いることも考えられる。この場合、紫外線光源208に代えて、使用する硬化性液体に対応する硬化手段を用いることが考えられる。
【0063】
続いて、立体物50の造形及び着色を行う動作については、詳しく説明をする。図2は、本例において立体物50の造形及び着色を行う動作の一例を示す。本例において、立体物造形装置10は、積層立体物形成動作、凹凸形成動作、凹凸被覆動作、及び着色動作を行うことにより、立体物50の造形及び着色を行う。立体物造形装置10は、例えば、予め用意されたプログラムに従って動作することにより、これらの各動作を行う。
【0064】
尚、本例において、立体物造形装置10は、オーバーハングしない立体物50を造形する。この場合、オーバーハングとは、例えば、立体物の少なくとも一部において、ある位置よりも上側の部分が下側の部分よりも外側へ突出することである。また、この場合、立体物の上側とは、積層される複数の層において、先に形成される層から後に形成される層へ向かう方向の側のことである。また、より具体的に、本例において、立体物の上側とは、鉛直方向における上側のことである。
【0065】
また、本例において、凹凸形成動作は、段差被覆層形成動作の一例である。この場合、段差被覆層形成動作とは、例えば、積層立体物形成動作で形成される積層立体物における段差に重ねて紫外線硬化型インクの層を形成する動作のことである。立体物造形装置10の構成の変形例においては、段差被覆層形成動作として、オーバーコート層を形成する動作等を行ってもよい。
【0066】
図2(a)は、積層立体物形成動作の一例を示す。本例において、積層立体物形成動作は、例えば、造形しようとする立体物50の形状に応じて予め用意された複数のデータ(層データ)に従って、それぞれの層データにより指定されるベタインク層302を順次重ねる動作である。積層立体物形成動作により、立体物造形装置10は、例えば、立体物50の概形を示す大きな凹凸を形成する。それぞれの層データは、例えば、造形しようとする立体物の断面形状を示すデータであってよい。
【0067】
本例の積層立体物形成動作において、立体物造形装置10は、複数の白インク用ヘッド204及び透明インク用ヘッド206により、予め設定した領域を塗りつぶしたベタインク層302を複数層重ねて形成する。この場合、ベタインク層302とは、予め設定された領域を覆う紫外線硬化型インクを硬化させた層のことである。また、これにより、硬化した紫外線硬化型インクの層が複数層重なった立体物である積層立体物を形成する。
【0068】
また、より具体的に、本例において、立体物造形装置10は、ヘッド部12における2個の白インク用ヘッド204と、透明インク用ヘッド206とを用いて、積層立体物形成動作を行う。また、2個の白インク用ヘッド204及び透明インク用ヘッド206は、制御部18の指示に応じて主走査動作を行うことにより、制御部18により指定される位置へインク滴を吐出する。また、これにより、各回の主走査動作で、1層のベタインク層302を形成する。
【0069】
また、各回の主走査動作において、制御部18は、ベタインク層302を形成すべき領域に対し、2個の白インク用ヘッド204及び透明インク用ヘッド206のそれぞれに、100%の濃度でインク滴を吐出させる。この場合、100%の濃度とは、例えば、立体物造形装置10において予め設定された最大の濃度のことである。また、最大の濃度とは、例えば、一のインクジェットヘッドの一列のノズル列を用いて1回の主走査動作で塗りつぶしを行う場合の最大の濃度のことである。そのため、本例のように、3個のインクジェットヘッドを用いてベタインク層302を形成する場合、1層のベタインク層302は、300%の濃度で形成されることになる。
【0070】
また、本例の積層立体物形成動作において、立体物造形装置10は、オーバーハングしないように、複数のベタインク層302を形成する。この場合、複数のベタインク層302がオーバーハングしないとは、例えば、積層立体物を構成する複数のベタインク層302について、下の層の少なくとも一部の領域内に上の層が形成されるように層を重ねることである。
【0071】
また、本例において、立体物造形装置10は、積層立体物形成動作に続いて、凹凸形成動作を行う。図2(b)は、凹凸形成動作の一例を示す。本例において、凹凸形成動作は、例えば、立体物50の着色に用いる印刷画像に合わせた細かい凹凸を形成する動作である。
【0072】
本例の凹凸形成動作において、立体物造形装置10は、複数の白インク用ヘッド204及び透明インク用ヘッド206で予め用意されたグレースケール画像を印刷することにより、ベタインク層302の上にグレースケール印刷層304を形成する。
【0073】
ここで、本例において用いるグレースケール画像は、印刷画像に基づくグレースケール画像である。印刷画像に基づくグレースケール画像とは、例えば、カラー画像である印刷画像に対する画像処理により得られたグレースケール画像のことである。より具体的に、このグレースケール画像としては、例えば、印刷画像に対し、グレースケール化と、画像内における少なくとも一部の領域に対する階調反転とを行った画像を好適に用いることができる。尚、印刷画像及びグレースケール画像等については、後に、実施例により、具体的な例を示す。
【0074】
このようなグレースケール画像を用いた場合、凹凸形成動作において、立体物造形装置10は、複数のベタインク層302により構成される積層立体物の上に、印刷画像に基づいて紫外線硬化型インクのインク滴を吐出する。また、これにより、立体物造形装置10は、印刷画像に応じた細かい凹凸を積層立体物上に形成する。
【0075】
ここで、凹凸形成動作においては、例えば、各回の主走査動作で吐出するインクの濃度について、例えば30%以下、好ましくは25%以下、更に好ましくは22%以下とすることが好ましい。また、この場合、例えばグレースケール画像を複数回印刷することでグレースケール印刷層304を形成することが好ましい。
【0076】
より具体的に、例えば、本例の凹凸形成動作では、グレースケール印刷層304として、複数のインクの層を重ねて形成する。この動作において、立体物造形装置10は、例えば、グレースケール画像を1回印刷する毎に、1層のインクの層(以下、凹凸形成用層とする)を形成する。そして、グレースケール画像の印刷を複数回行うことにより、例えば、グレースケール印刷層304として、複数の凹凸形成用層を重ねた層を形成する。このように構成すれば、例えば、グレースケール印刷層304に十分な厚みを持たせ、印刷画像に応じた凹凸をより明確に形成できる。また、これにより、立体物50により表現しようとする対象物の形状に合わせた凹凸をより適切に形成できる。
【0077】
尚、凹凸形成動作について、より一般化して表現した場合、印刷画像に基づいて紫外線硬化型インクを吐出する動作と言うこともできる。この場合、印刷画像に基づいて紫外線硬化型インクを吐出するとは、例えば、印刷画像に基づいて印刷を行うことである。また、印刷画像に基づいて印刷を行うとは、例えば、印刷画像、又は印刷画像に所定の画像処理等を行った画像を印刷することである。
【0078】
また、本例において、立体物造形装置10は、凹凸形成動作に続いて、凹凸被覆動作を行う。図2(c)は、凹凸被覆動作の一例を示す。本例において、凹凸被覆動作は、例えば、凹凸形成動作で形成した凹凸を覆うインクの層である被覆層306を形成する動作である。
【0079】
本例の凹凸被覆動作において、立体物造形装置10は、立体物50において後に着色を行う領域の少なくとも一部に対し、複数の白インク用ヘッド204及び透明インク用ヘッド206の少なくともいずれかを用いて、所定の濃度での塗りつぶしを行い、被覆層306を形成する。この場合、立体物造形装置10は、立体物50において後に着色を行う領域の全体に対し、被覆層306を形成することが好ましい。また、立体物50に求められる精度や立体物50の用途によっては、例えば、後に着色を行う領域の一部に対し、被覆層306を形成することも考えられる。
【0080】
また、より具体的に、凹凸被覆動作において、制御部18は、例えば、複数の白インク用ヘッド204及び透明インク用ヘッド206の少なくともいずれかと、紫外線光源208とに、凹凸形成動作で形成された凹凸を覆う領域に、被覆層306として、紫外線硬化型インクを硬化させた層を形成させる。また、この場合、例えば、濃度を75%以上にして、白色又はクリア色の紫外線硬化型インクで塗りつぶしを行うことが考えられる。
【0081】
尚、凹凸被覆動作は、例えば、凹凸形成動作で形成された細かい凹凸を覆う被覆層306を形成することで表面を平準化し、細かい凹凸の影響で着色用インクの色再現域が縮小することを防ぐ動作である。そのため、凹凸被覆動作においては、紫外線硬化型インクをグロス状に硬化させることが好ましい。紫外線硬化型インクをグロス状に硬化させるとは、例えば、インク滴の着弾により形成されるインクのドットが十分に広がった後にインクを硬化させることである。また、より具体的に、紫外線硬化型インクをグロス状に硬化させるとは、例えば、インク滴を吐出する主走査動作時には紫外線光源208による紫外線の照射を行わず、その後にインクを硬化させることであってよい。この場合、立体物50の各領域に対する紫外線の照射は、例えば、その領域への主走査動作が終わった後に、紫外線光源208を走査させることで行う。
【0082】
また、本例において、立体物造形装置10は、凹凸被覆動作に続いて、着色動作を行う。図2(d)は、着色動作の一例を示す。本例において、着色動作は、複数の着色用ヘッド202で立体物50の表面に印刷画像を印刷することで立体物50を着色する動作である。この場合、立体物50の表面とは、例えば、凹凸被覆動作で被覆層306が形成された領域のことであってよい。
【0083】
着色動作において、立体物造形装置10は、例えば、立体的な媒体に対して印刷を行う公知のインクジェットプリンタと同一又は同様にして、立体物50への印刷を行う。また、立体物造形装置10は、印刷画像の印刷を、例えば、マルチパス方式で行ってもよい。この場合、マルチパス方式とは、例えば、立体物50において印刷が行われる被印刷領域の各位置に対して複数回の主走査動作を行う方式である。このように構成すれば、例えば、印刷画像の印刷を高い精度でより適切に行うことができる。
【0084】
尚、着色動作において、複数の着色用ヘッド202は、例えば、凹凸形成動作で形成された凹凸と位置を合わせて、印刷画像を印刷する。凹凸形成動作で形成された凹凸と位置を合わせて印刷画像を印刷するとは、例えば、凹凸形成動作で印刷したグレースケール画像と重ねて印刷画像を印刷することである。また、グレースケール画像と重ねて印刷画像を印刷するとは、例えば、位置を合わせて両画像を重ねて印刷することである。このように構成すれば、例えば、より自然な印象の着色を適切に行うことができる。
【0085】
以上の各動作を行った場合、例えば、積層立体物形成動作で複数のベタインク層302を重ねて形成することにより、立体物50の厚みを適切に表現することができる。また、その後に凹凸形成動作を行うことにより、例えば、立体物50により表現しようとする対象物のより細かい形状に合わせた凹凸を形成できる。また、これにより、例えば、複数のベタインク層302を積層することで生じる不自然な段差が目立つことを適切に防ぐことができる。そのため、本例によれば、例えば、自然な印象の立体物50をより適切に造形できる。
【0086】
また、例えば、凹凸形成動作と着色動作との間に凹凸被覆動作を行うことにより、凹凸形成動作で形成される凹凸の影響を適切に低減できる。また、これにより、例えば、着色動作で用いる着色用のインクについて、色再現域をより適切に広げることができる。そのため、本例によれば、例えば、着色された立体物50をより適切に造形できる。
【0087】
また、本例においては、上記のように、立体形状形成用ヘッドとして、白インク用ヘッド204を用いている。そして、この場合、白インクとして、例えば、無機物(例えば酸化チタン)の顔料により着色されたインクを用いることが考えられる。このように構成すれば、例えば、熱収縮しにくいインクにより立体物50を造形することができる。また、これにより、例えば、立体物50の形状をより安定させることができる。
【0088】
ここで、凹凸形成動作で用いるグレースケール画像について、更に詳しく説明をする。凹凸形成動作において、例えばグレースケール画像を印刷した場合、画像内の濃淡(階調値)に応じて、凹凸を形成することになる。また、この場合、画像内で暗い部分が凸部になり、明るい部分が凹部になる。また、印刷画像を単にグレースケール化した場合、例えば印刷画像における陰の部分は、グレースケール化した画像において、暗い部分になる。そのため、凹凸形成動作において、印刷画像を単にグレースケール化したグレースケール画像を用いた場合、印刷画像における陰の部分が凸部になるように凹凸を形成することになる。
【0089】
しかし、風景や動物等の自然物においては、一般的に、奥に凹んだ部分等が陰になる部分になりやすい。そのため、造形する立体物において、陰の部分が凸部になると、不自然な印象になる場合もある。
【0090】
そのため、上記においても説明をしたように、凹凸形成動作において、グレースケール画像としては、例えば、印刷画像に対し、グレースケール化と、画像内における少なくとも一部の領域に対する階調反転とを行った画像を好適に用いることができる。このように構成した場合、印刷画像における陰の部分は、グレースケール画像において、明るい部分になる。そのため、このようなグレースケール画像を用いて凹凸形成動作を行えば、例えば、印刷画像における陰の部分が凹部になるように、細かい凹凸を形成することができる。また、これにより、例えば、より自然な印象になる立体物50をより適切に造形することができる。
【0091】
尚、凹凸形成動作で用いるグレースケール画像としては、例えば、印刷画像に対し、グレースケール化と、画像全体に対する階調反転とを行った画像を用いてもよい。このように構成すれば、例えば、グレースケール画像をより簡易に作成できる。また、例えば、立体物により表現しようとする対象物に合わせ、例えばユーザが領域を適宜選択することにより、一部の領域のみに対し、階調反転を行ってもよい。このように構成すれば、例えば、造形される立体物の印象をより自然にできる。
【0092】
続いて、本例において行う各動作について、実施例により、更に具体的に説明をする。図3〜7は、本発明の実施例に関し、各段階で印刷する画像の一例を示す。尚、本実施例では、紫外線硬化型インク用のインクジェットプリンタの動作を制御することにより、立体物造形装置として動作させている。また、説明の便宜上、先ず、着色動作において印刷する印刷画像の一例を示す。
【0093】
図3は、着色動作において印刷する印刷画像402の一例を示す。本実施例において、立体物造形装置10は、複数の着色用ヘッド202により印刷画像を印刷することにより、立体物50を着色する。尚、本実施例において、印刷画像402としては、カラー画像を用いる。しかし、図3においては、図示の便宜上、本来はカラー画像である印刷画像402を、グレースケール画像で示している。
【0094】
図4〜6は、積層立体物形成動作で印刷する画像の一例を示す。尚、本実施例において、積層立体物形成動作で印刷する画像とは、ベタインク層302(図2参照)を形成するために用いるデータである層データのことである。また、この層データは、ベタインク層302を形成する領域を示す塗りつぶし用のデータである。
【0095】
また、本実施例においては、図4図6に示した複数の層データ404a〜gを用いて、積層立体物形成動作を行う。複数の層データ404a〜gのそれぞれは、1層のベタインク層302に対応する層データである。また、立体物造形装置10は、複数の層データ404a〜gのそれぞれに対応するベタインク層302を、この順番で、順次重ねて形成する。
【0096】
より具体的に、本実施例においては、立体物造形装置10は、先ず、図4に示した層データ404aに基づき、ベタインク層302を形成する。また、その後、層データ404aに対応するベタインク層302の上に、図5(a)に示した層データ404bに基づき、次のベタインク層302を形成する。また、層データ404bに対応するベタインク層302の上に、図5(b)に示した層データ404cに基づき、その次のベタインク層302を形成する。また、以下同様にして、直前に形成したベタインク層302の上に、図6(a)〜(d)に示した層データ404d〜gのそれぞれに基づき、ベタインク層302を順次重ねて形成する。
【0097】
ここで、本実施例において、用いる層データのうち、層データ404a〜cは、形成しようとする立体物の全体又はほぼ全体に対応する領域を塗りつぶすためのデータである。層データ404a〜cに対応する3層のベタインク層302を形成することにより、例えば、所定の高さ分のインクの層を形成し、立体物全体に厚みを持たせることができる。
【0098】
また、層データ404d〜gは、立体物に局所的な凹凸を形成するためのパーツ毎用のデータである。層データ404d〜gのそれぞれに対応するベタインク層302を形成することにより、例えば、層データ404a〜cにより形成されたベタインク層302の一部の領域に対し、立体物の各部を示す凸部を、所定の高さで形成することができる。
【0099】
尚、層データ404a〜gのそれぞれについては、例えば、印刷画像402に基づき、ユーザが予め作成することが考えられる。また、印刷画像402や、対象物の立体形状のデータ等に基づき、自動的に層データ404a〜gを作成してもよい。また、層データ404a〜gとしては、画像処理ソフトウェア等により周辺部にぼかし処理を行ったデータを好適に用いることができる。このように構成すれば、例えば、複数のベタインク層302を用いて、より自然な形状を表現することができる。
【0100】
また、上記においても説明をしたように、本実施例においては、白インク用ヘッド204等を用いて、ベタインク層302を形成する。しかし、例えばインクジェットプリンタを用いて立体物の形成を行う場合、白色の領域は、インク滴を吐出しない領域として扱われる場合がある。そのため、本実施例において、層データ404a〜gのそれぞれは、例えば、黒色(K)で印刷をする領域を示すデータとして作成する。この場合、例えば、黒色で印刷をする領域を示すデータに基づいて白インク用ヘッド204及び透明インク用ヘッド206等を制御することにより、ベタインク層302を適切に形成できる。また、層データ404a〜gのそれぞれは、黒以外の色で印刷をする領域を示すデータとして作成してもよい。
【0101】
また、図1及び図2等を用いても説明をしたように、本実施例において、ベタインク層302は、層データ404a〜gのそれぞれにより示される領域に対し、ベタ印字を行うことで形成する。また、一の層データ(層データ404a〜gのそれぞれ)に対し、3個のインクジェットヘッド(2個の白インク用ヘッド204及び透明インク用ヘッド206)を用い、1回の印刷動作を行うことで、1層のベタインク層302を形成している。そのため、本実施例において、1層のベタインク層302の濃度は、300%になる。この場合、印刷動作の回数とは、立体物の各領域に対して行う主走査動作を伴った総副走査動作の繰り返し回数のことである。また、1層のベタインク層302の濃度とは、ノズル列数と、印字濃度と、印刷動作の回数との積(ノズル列数×印字濃度×印刷回数)のことである。また、ノズル列数とは、ベタインク層302の形成に使用するインクジェットヘッドの数と、1個のインクジェットヘッドが有するノズル列の数との積のことである。印字濃度とは、一のノズル列による塗りつぶしの濃度のことである。印字濃度は、主走査動作を伴った副走査動作で吐出するインクの量(吐出量)ということもできる。
【0102】
また、ベタインク層302は、例えば、複数のインクの層を重ねて形成した層であってもよい。この場合、例えば、ベタインク層302を形成する領域の全面に対する全面印刷を繰り返すことで、複数のインクの層を重ねて形成することが好ましい。より具体的に、例えば、100%の濃度での全面印刷を繰り返して合計で300%分の濃度となるようにベタインク層302を形成する場合、最初に、100%の濃度で全面印刷をして、1層目のインクの層を形成する。その後、その上に100%濃度で全面印刷をして、2層目のインクの層を形成する。更に、その後に、その上に100%濃度で全面印刷をして、3層目のインクの層を形成する。このようにすれば、例えば、高い濃度のベタインク層302を適切に形成できる。
【0103】
尚、300%の濃度でベタインク層302を形成する方法としては、例えば、1回の主走査動作の対象となる領域であるバンド毎に主走査動作を3回繰り返す方法等も考えられる。しかし、この場合、バンド縞が発生しやすくなるおそれがある。また、次のバンドの印刷時に発生するしぶきが問題になるおそれもある。これに対し、上記のように、全面印刷を繰り返す方法の場合、高い濃度のベタインク層302をより適切に形成できる。
【0104】
また、1層のベタインク層302の濃度については、例えば、300%以外の濃度のすることも考えられる。例えば、使用するノズル列の数や、印刷動作の回数を増やすことにより、1層のベタインク層302の濃度をより高くすることも考えられる。この場合、1層のベタインク層302の濃度は、1500%以下にすることが好ましい。これは、同じ層データに対応するベタインク層302の厚さが大きくなりすぎ、例えば1500%分の厚みを超える状態になると、不自然な形状になりやすいためである。
【0105】
図7は、凹凸形成動作で印刷するグレースケール画像406の一例を示す。本実施例においては、グレースケール画像406を、印刷画像402に対するグーレスケール化及び階調反転等を行うことで予め作成する。この場合、階調反転を行うことにより、グレースケール画像406を印刷することで形成するグレースケール印刷層304について、元の画像である印刷画像402において濃い部分へのインクの積層を減らし、薄い部分への積層を増やすことができる。また、これにより、例えば、印刷画像402において陰になっている部分が凹むように、グレースケール印刷層304を形成できる。
【0106】
但し、本実施例では、図から分かるように、人物を示す立体物を造形する。そして、人物の場合、黒目の部分は、通常、凹部にするより、凸部にする方が自然な印象になる。そのため、本実施例においては、印刷画像402のグーレスケール化及び階調反転とを行った画像に対し、更に、目の部分について、階調反転を行い、グレースケール画像406を作成する。この場合、グレースケール画像406は、印刷画像402に対し、グレースケール化と、目の部分を除く領域に対する階調反転とを行った画像と言うこともできる。
【0107】
尚、本実施例において、グレースケール画像406の作成は、ユーザの操作により、画像処理ソフトウェアで印刷画像402を加工することで行った。また、画像処理ソフトウェアにおける明るさやコントラストの設定は、作成されるグレースケール画像406の状態を見ながら、適宜調節した。グレースケール画像406の作成は、例えば、予め用意したプログラム等を利用して、自動的に行うことも考えられる。
【0108】
また、本実施例の凹凸形成動作においては、このようなグレースケール画像406を印刷することにより、グレースケール印刷層304を形成する。また、これにより、印刷画像402中の細かな形状に対応する微細な凹凸等を形成する。このように構成すれば、例えば、ベタインク層302を積層するのみでは生じる不自然な積層段差を解消し、自然な立体を表現することができる。
【0109】
尚、凹凸形成動作においては、グレースケール画像406を繰り返し印刷することで、複数のインクの層により、グレースケール印刷層304を形成することが好ましい。より具体的に、本実施例では、グレースケール画像406の印刷を8回繰り返すことにより、1回の印刷動作で形成されるインクの層の8層分の厚さで、グレースケール印刷層304を形成する。
【0110】
また、ベタインク層302の場合と異なり、グレースケール印刷層304の厚さについては、1500%の濃度に対応する厚さに制限されない。そのため、グレースケール印刷層304の厚さについては、表現しようとする細かい凹凸の程度や求められる精度等に応じて、適宜設定することが好ましい。例えば、動物の毛並等の細かい形状を明確に表現しようとする場合、繰り返す印刷動作の回数を増やし、グレースケール印刷層304をより厚くすることが好ましい。
【0111】
また、凹凸形成動作において、1回の主走査動作で吐出するインクの量(印字濃度)は、22%以下にすることが好ましい。このように構成すれば、例えば、細かい凹凸をより適切に形成できる。また、この場合、印刷動作を繰り返す回数については、印字濃度の設定に応じて、適宜増加させることが考えられる。
【0112】
また、より具体的に、グレースケール画像406の印刷を繰り返す回数については、例えば20回程度(例えば、15〜25回程度)としてもよい。また、凹凸形成動作で使用するインクジェットヘッドについては、例えば、印字濃度の設定に応じて、複数の白インク用ヘッド204及び透明インク用ヘッド206の一部のみ(例えば、白インク用ヘッド204のみ)としてもよい。また、本実施例において、グレースケール画像406は、積層立体物形成動作で用いる層データ404a〜gと同様に、例えば、黒色(K)で印刷をする画像のデータとして作成する。
【0113】
また、本実施例では、上記のように、印刷画像402からグレースケール画像406を作成する画像処理において、一部を除いた領域に対して階調反転を行っている。しかし、立体物により表現しようとする対象物によっては、例えば、印刷画像402の全体に対し、階調反転を行ってもよい。また、階調反転を行わない場合も考えられる。
【0114】
また、本実施例においては、凹凸形成動作に続いて、凹凸被覆動作を行う。凹凸被覆動作では、図2等に関連して説明をしたように、白色又はクリア色のインクを用いて、例えば75%以上等の高い濃度で印刷を行うことで、被覆層306を形成し、凹凸形成動作で形成された細かい凹凸の上を塗りつぶす。
【0115】
尚、図示は省略したが、凹凸被覆動作で印刷する画像を示すデータとしては、例えば、印刷画像402により着色を行う領域の全体を塗りつぶしたデータ等を用いることができる。また、このようなデータとしては、より具体的に、例えば、立体物において最も下層に形成されるベタインク層302に対応する層データ404aと同じ領域を塗りつぶすためのデータ等を用いることが考えられる。
【0116】
また、本実施例においては、凹凸被覆動作に続いて、着色動作を行う。着色動作では、複数の着色用ヘッド202を用いて、被覆層306の上に、印刷画像402を印刷する。本実施例によれば、例えば、立体物の造形及び着色を適切に行うことができる。
【0117】
尚、上記においても説明をしたように、本実施例によれば、グレースケール画像406を用いて凹凸形成動作を行うことで、例えば、対象物の細かい形状等を自然に表現することができる。また、凹凸形成動作を行うことは、特に、動物や植物等の自然物を表現する場合に大きな効果を発揮する。
【0118】
また、本実施例において用いた立体物造形装置10は、例えば、細かい形状の部分を含まないより単純な形状の立体物を造形するために用いることもできる。より具体的に、例えば、本実施例において用いた立体物造形装置10により、チョコレートやキーボード等の形状を造形すること等も考えられる。そして、この場合、通常、自然物等を造形する場合と異なり、毛並みのような細かい形状等を表現することは必要ない。そのため、この場合、例えば、凹凸形成動作を省略してもよい。また、この場合、積層立体物形成動作で形成するベタインク層302について、1層のベタインク層302の濃度を1500%より大きくしてもよい。
【0119】
以上、本発明を実施形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施形態に記載の範囲には限定されない。上記実施形態に、多様な変更又は改良を加えることが可能であることが当業者に明らかである。その様な変更又は改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。
【産業上の利用可能性】
【0120】
本発明は、例えば立体物造形装置に好適に利用できる。
【符号の説明】
【0121】
10・・・立体物造形装置、12・・・ヘッド部、14・・・走査駆動部、16・・・テーブル、18・・・制御部、50・・・立体物、102・・・キャリッジ、104・・・ガイドレール、202・・・着色用ヘッド、204・・・白インク用ヘッド、206・・・透明インク用ヘッド、208・・・紫外線光源、302・・・ベタインク層、304・・・グレースケール印刷層、306・・・被覆層、308・・・着色層、402・・・印刷画像、404a〜g・・・層データ、406・・・グレースケール画像
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7