特許第6386283号(P6386283)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6386283
(24)【登録日】2018年8月17日
(45)【発行日】2018年9月5日
(54)【発明の名称】搬送システム
(51)【国際特許分類】
   B65G 47/52 20060101AFI20180827BHJP
【FI】
   B65G47/52 101Z
【請求項の数】3
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2014-152205(P2014-152205)
(22)【出願日】2014年7月25日
(65)【公開番号】特開2016-30655(P2016-30655A)
(43)【公開日】2016年3月7日
【審査請求日】2017年5月1日
(73)【特許権者】
【識別番号】307011510
【氏名又は名称】株式会社熊平製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】特許業務法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】福田 正則
(72)【発明者】
【氏名】河上 直紀
【審査官】 小金井 匠
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭63−047208(JP,A)
【文献】 特開平09−140002(JP,A)
【文献】 特開2000−153905(JP,A)
【文献】 特開昭56−007105(JP,A)
【文献】 特開2013−038294(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65G 47/52−47/62
B65G 47/66
B65G 1/00− 1/20
B65G 47/00−47/32
G05D 1/00− 1/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
荷を載せた状態でそれぞれ所定方向へ移動可能な第1の搬送装置および第2の搬送装置を備え、前記第1の搬送装置と前記第2の搬送装置との間で荷を受け渡して荷を搬送する搬送システムであって、
前記第1の搬送装置および前記第2の搬送装置は、互いに相手装置に対向する面に発信器および受信器を有しており、
前記第1の搬送装置の発信器および受信器は、前記第1の搬送装置および前記第2の搬送装置が荷受け渡し可能な位置にあるときに前記第2の搬送装置の受信器および発信器にそれぞれ対向するような位置に配置されており、
前記第1の搬送装置および前記第2の搬送装置の各発信器は、前記第1の搬送装置および前記第2の搬送装置が荷受け渡し可能な位置となった後でかつ前記第1の搬送装置と前記第2の搬送装置との間で荷受け渡しが行われる前と、前記第1の搬送装置と前記第2の搬送装置との間で荷受け渡しが行われている間とで、相手装置へ互いにオンデューティがずれたパルスバースト信号を出力するものであり、
前記第1の搬送装置および前記第2の搬送装置は、荷受け渡しの指令を受け、それぞれの装置の受信器が相手装置の発信器からのパルス信号を受信できたとき、荷を受け渡し、
前記荷受け渡しが行われている間、前記第1の搬送装置および前記第2の搬送装置の一方の装置の発信器が出力したパルス信号を他方の装置の受信器が受信した場合には、他方の装置の発信器がパルス信号を出力し、一方の装置の発信器が出力したパルス信号を他方の装置の受信器が受信しなかった場合には、他方の装置の発信器のパルス信号の出力を停止し、
前記第1の搬送装置および前記第2の搬送装置は、荷受け渡しの最中に一方の装置の受信器が他方の装置の発信器からのパルス信号を受信しなくなったとき、荷受け渡しを停止することを特徴とする搬送システム。
【請求項2】
前記発信器および前記受信器が、それぞれ、透過型光電センサの投光器および受光器である
ことを特徴とする請求項に記載の搬送システム。
【請求項3】
前記第1の搬送装置および前記第2の搬送装置は、前記受信器および前記発信器による信号送受信を無効にする指令を受けると、それぞれの装置の受信器が相手装置の発信器からの信号を受信できたか否かにかかわらず荷を受け渡す
ことを特徴とする請求項1または2に記載の搬送システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、屋内で荷を搬送する搬送システムに関し、特に、荷を載せた状態で所定方向へ移動可能な搬送装置間で荷を受け渡して荷を搬送する搬送システムに関する。
【背景技術】
【0002】
全自動貸金庫や全自動倉庫といった設備では、巨大なラック列にさまざまな荷が収納・保管されており、スタッカークレーンがラック間を走行・昇降して目的の荷の取り出し・返却が行われる。スタッカークレーンには搬送装置(キャリッジ)が取り付けられており、キャリッジはその上面に配設されたベルトコンベアに荷を載せてスタッカークレーンを昇降することができるようになっている。また、ラック列の外部の床面にはレールが敷設されており、別の搬送装置(電動台車)がその上面に配設されたベルトコンベアに荷を載せてレール上を走行することができるようになっている。そして、両搬送装置を互いに対向する位置に移動させて、両搬送装置のベルトコンベアを作動させて搬送装置間で荷を受け渡しすることで、ラックに収納・保管された荷を目的の位置まで搬送し、また目的の位置からラックの元の位置まで荷を搬送することができる。
【0003】
上記のような搬送システムでは、搬送装置間で安全・確実に荷を受け渡すために、荷受け渡しの際に両搬送装置に位置ずれが生じてはならない。搬送装置の位置合わせの技術ではないが、同様の技術として、大きさの異なる荷に対応可能なリフター付荷受台において、一対の荷受体の一方と他方の各荷支持部材に光電スイッチの投光体と受光体を対向するように設け、当該光電スイッチがオフになることで両荷支持部材の高さにずれが発生したことを検出しているものがある(例えば、特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平7−291407号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
例えば全自動貸金庫では分散制御システムが採用されており、各搬送装置は、統括制御盤によって統括制御される。すなわち、搬送装置間での荷受け渡しは、統括制御盤から各搬送装置への荷受け渡し位置への移動通信命令、および荷渡し・荷受け通信命令で行われている。
【0006】
このような搬送システムでは、搬送装置間の荷受け渡しの信頼度は、搬送装置の移動位置精度と、統括制御盤との通信シーケンスとに依存することになる。
【0007】
また、搬送装置間で荷を受け渡そうとしたときに搬送装置の停止位置がずれたために、荷の落下防止のために荷受け渡し動作を停止させたいことがある。しかし、そのような場合、1)搬送装置は停止位置がずれたことを判断して自身の搬送動作を停止するとともに統括制御盤に現状を通知する、2)通信回線経由で停止位置ずれを認識した統括制御盤は各搬送装置に搬送停止命令を送信する、3)通信回線経由で搬送停止命令を受信した各搬送装置は搬送動作を停止する、といった3つのステップを踏まなければならず、実際の搬送停止までに時間がかかり、荷の落下リスクが高まるおそれがある。
【0008】
また、搬送装置間での荷受け渡し中に例えば地震が発生して搬送装置の停止位置がずれ、それと同時に通信異常も発生したような場合には、両搬送装置の搬送動作を停止することができずに荷の落下リスクがさらに高まってしまう。
【0009】
上記問題に鑑み、本発明は、搬送装置間で荷受け渡しを行って荷を搬送する搬送システムにおいて荷受け渡し時の荷の落下を防止することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の一局面に従った搬送システムは、荷を載せた状態でそれぞれ所定方向へ移動可能な第1の搬送装置および第2の搬送装置を備え、前記第1の搬送装置と前記第2の搬送装置との間で荷を受け渡して荷を搬送する搬送システムであって、前記第1の搬送装置および前記第2の搬送装置は、互いに相手装置に対向する面に発信器および受信器を有しており、前記第1の搬送装置の発信器および受信器は、前記第1の搬送装置および前記第2の搬送装置が荷受け渡し可能な位置にあるときに前記第2の搬送装置の受信器および発信器にそれぞれ対向するような位置に配置されており、前記第1の搬送装置および前記第2の搬送装置の各発信器は、前記第1の搬送装置および前記第2の搬送装置が荷受け渡し可能な位置となった後でかつ前記第1の搬送装置と前記第2の搬送装置との間で荷受け渡しが行われる前と、前記第1の搬送装置と前記第2の搬送装置との間で荷受け渡しが行われている間とで、相手装置へ互いにオンデューティがずれたパルスバースト信号を出力するものであり、前記第1の搬送装置および前記第2の搬送装置は、荷受け渡しの指令を受け、それぞれの装置の受信器が相手装置の発信器からのパルス信号を受信できたとき、荷を受け渡し、前記荷受け渡しが行われている間、前記第1の搬送装置および前記第2の搬送装置の一方の装置の発信器が出力したパルス信号を他方の装置の受信器が受信した場合には、他方の装置の発信器がパルス信号を出力し、一方の装置の発信器が出力したパルス信号を他方の装置の受信器が受信しなかった場合には、他方の装置の発信器のパルス信号の出力を停止し、前記第1の搬送装置および前記第2の搬送装置は、荷受け渡しの最中に一方の装置の受信器が他方の装置の発信器からのパルス信号を受信しなくなったとき、荷受け渡しを停止するものである。
【0011】
これによると、第1および第2の搬送装置の間で荷受け渡し動作を開始する前に、第1および第2の搬送装置が互いに相手装置の停止位置を確認し合い、停止位置がずれていれば荷受け渡しが開始されずに荷受け渡し時の荷の落下を防止することができる。
【0012】
前記第1の搬送装置および前記第2の搬送装置の各発信器は、互いにオンデューティがずれたパルスバースト信号を出力するものであってもよく、前記第1の搬送装置および前記第2の搬送装置の一方の装置の発信器は、当該一方の装置の受信器が他方の装置の発信器からのパルス信号を受信したとき、パルス信号を出力するものであってもよい。
【0013】
これによると、例えば、搬送装置において発信器と受信器が近接して配置されているような場合において、自身の発信器から出力した信号が相手装置の対向面で反射して自身の受信器で受信してしまうような事態を避け、確実に相手装置からの信号を受信することができる。
【0014】
前記第1の搬送装置および前記第2の搬送装置の各発信器は、前記第1の搬送装置と前記第2の搬送装置との間で荷受け渡しが行われている間中、相手装置の受信器へ信号を出力するものであってもよく、前記第1の搬送装置および前記第2の搬送装置は、荷受け渡しの最中に一方の装置の受信器が他方の装置の発信器からの信号を受信しなくなったとき、荷受け渡しを停止するものであってもよい。
【0015】
これによると、第1および第2の搬送装置の間で荷受け渡し中においても第1および第2の搬送装置が互いに相手装置の停止位置を確認し合い、いずれかの搬送装置の位置がずれた場合には即座に荷受け渡し動作を停止して荷の落下を防止することができる。
【0016】
上記の搬送システムにおいて、前記発信器および前記受信器が、それぞれ、透過型光電センサの投光器および受光器であってもよい。
【0017】
これによると、発信器および受信器を安価に簡単に構成することができる。
【0018】
前記第1の搬送装置および前記第2の搬送装置は、前記受信器および前記発信器による信号送受信を無効にする指令を受けると、それぞれの装置の受信器が相手装置の発信器からの信号を受信できたか否かにかかわらず荷を受け渡すものであってもよい。
【0019】
これによると、発信器および/または受信器が故障した場合に、システム全体の搬送動作を停止させることなく縮退動作に移行して、従来の搬送システムと同等の搬送動作を継続することができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によると、搬送装置間で荷受け渡しを行って荷を搬送する搬送システムにおいて荷受け渡し時の荷の落下を防止することができる。これにより、安全・確実に荷受け渡しを行って荷を搬送することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本発明の一実施形態に係る搬送システムにおける2台の搬送装置の斜視図である。
図2】搬送装置の概略斜視図である。
図3】荷受け渡し位置へ移動した2台の搬送装置を示す図である。
図4】正常に荷受け渡しが行われる場合の、2台の搬送装置間で投光/受光されるパルスバースト信号のタイミングチャートである。
図5】2台の搬送装置間で投光/受光されるパルスバースト信号の制御タイミングチャートである。
図6】荷受け渡し中に搬送装置の位置ずれが発生する場合の、2台の搬送装置間で投光/受光されるパルスバースト信号のタイミングチャートである。
図7】本発明の一実施形態に係る搬送システムにおいて荷受け渡し中に搬送装置の位置ずれが発生した場合の制御フローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、図面を参照しながら本発明を実施するための形態について説明する。
【0023】
本発明の一実施形態に係る搬送システムは、例えば、全自動貸金庫において利用される搬送システムである。全自動貸金庫では、金庫室に複数のラックが列を連ねて配置されており、各ラックには保護箱が所定位置に収納・保管されている。保護箱とは、顧客が貴重品を収容するための容器(金属製の直方体の箱)であり、搬送システムで搬送される荷の一例である。金庫室内ではスタッカークレーンがラック間を走行・昇降して目的の保護箱の取り出し・返却を行う。保護箱は、さらに、垂直方向に昇降可能な垂直搬送機や、床面などに水平に敷設されたレール上を移動可能な電動台車などに次々と渡されて目的の場所まで搬送される。顧客は、金庫室から離れたクーポンブース内に設けられたブース機器を操作して、目的の保護箱を受け取ったり、保護箱を金庫室へ返却したりすることができる。このような全自動貸金庫において、保護箱は、金庫室内のラックの所定位置とクーポンブース内のブース機器との間で搬送システムによって自動搬送される。
【0024】
図1は、本発明の一実施形態に係る搬送システムにおける2台の搬送装置10Aおよび10Bの斜視図である。図1(a)は、2台の搬送装置10Aおよび10Bがそれぞれ独立に移動している状態の図であり、図1(b)は、2台の搬送装置間で保護箱100を受け渡ししている状態の図である。
【0025】
図1に示したように、本実施形態に係る搬送システムは、搬送装置10Aおよび10Bを備えている。搬送装置10Aおよび10Bは、いずれも、その上面に保護箱100を載せた状態で所定方向へ移動が可能となっている。例えば、搬送装置10Aは、支柱101を昇降可能な垂直搬送機として構成されている。すなわち、搬送装置10Aは、上下方向へ移動可能な搬送装置である。一方、搬送装置10Bは、床面などに水平に敷設されたレール102上を移動可能な電動台車として構成されている。すなわち、搬送装置10Bは、水平方向へ移動可能な搬送装置である。図1(a)は、搬送装置10Aが保護箱100を載せて支柱101を降下している様子を示している。
【0026】
図2は、搬送装置10Aおよび10Bの概略斜視図である。搬送装置10Aおよび10Bは、いずれも、上面にベルトコンベア11を有しており、ベルトコンベア11を所定方向へ作動させることで保護箱100を送り出す、または取り込むことができる。搬送装置10Bは、レール102の延長方向に対して横方向へ保護箱100を出し入れする。同様に、搬送装置10Aも、レール102の延長方向に対して横方向へ保護箱100を出し入れする。すなわち、これら搬送装置10Aおよび10Bは、互いに相手装置に対向する位置へと移動して、レール102の延長方向に対して横方向へ保護箱100を出し入れすることで保護箱100を受け渡しする。図1(b)は、搬送装置10Aから搬送装置10Bへ保護箱100が受け渡しされる様子を示している。
【0027】
搬送装置10Aおよび10Bは、図示しない統括制御盤によってその動作が制御される。搬送装置10Aおよび10Bの間で保護箱100の受け渡しを行う場合、統括制御盤から搬送装置10Aおよび10Bへ移動通信命令および荷渡し・荷受け通信命令が送信される。搬送装置10Aおよび10Bは、これら命令を受信すると、それぞれ、所定の荷受け渡し位置へと移動して、保護箱100の受け渡し動作を開始する。
【0028】
搬送装置10Aおよび10Bの間で保護箱100を安全・確実に受け渡すには、搬送装置10Aおよび10Bが、それぞれ、荷受け渡し位置へと移動し、これら装置の上下方向および左右方向の位置が揃って両装置のベルトコンベア11が一直線上に並ぶ必要がある。換言すると、搬送装置10Aおよび10Bの位置がずれている、あるいは、荷受け渡し中に搬送装置10Aおよび/または搬送装置10Bの位置がずれれば保護箱100が落下する危険性があるため、落下を防止するために搬送装置10Aおよび10Bの間で保護箱100の受け渡し動作を開始しない、あるいは、受け渡し中には受け渡し動作を停止する必要がある。
【0029】
本実施形態に係る搬送システムでは、搬送装置10Aおよび10Bの間で保護箱100を安全・確実に受け渡すことができるように、荷受け渡し前、さらに好ましくは荷受け渡し中にも、搬送装置10Aおよび10Bが互いに相手装置の停止位置を確認し合うようになっている。以下、その仕組みについて詳細に説明する。
【0030】
図2に示したように、搬送装置10Aおよび10Bにおいて互いに相手装置に対向する面に投光器12および受光器13が設けられている。図3は、荷受け渡し位置へと移動した搬送装置10Aおよび10Bを示す図であり、図3(a)は平面図であり、図3(b)は図3(a)中のA方向から見た側面図であり、図3(c)は図3(a)中のB方向から見た側面図である。
【0031】
図3に示したように、搬送装置10Aおよび10Bが荷受け渡し可能な位置にあるとき、搬送装置10Aの投光器12と搬送装置10Bの受光器13とが互いに対向し合い、また、搬送装置10Bの投光器12と搬送装置10Aの受光器13とが互いに対向し合い、それぞれ、透過型光電センサが構成されるようになっている。搬送装置10Aおよび10Bの各受光器13が相手装置の各投光器12からの光200を受光できたとき、搬送装置10Aおよび10Bは荷受け渡し可能と判断して各ベルトコンベア11を作動させて保護箱100の受け渡し動作を開始する。これにより、搬送装置10Aおよび10Bの間で保護箱100を安全・確実に受け渡すことができる。
【0032】
さらに、搬送装置10Aおよび10Bは、荷受け渡し中に各受光器13が相手装置の各投光器12からの光200を継続的に受光できているかを監視し、もし、受光が確認できなければ、各ベルトコンベア11を停止させる。これにより、例えば、荷受け渡しを完了させたい場合、搬送装置10Aおよび10Bの各投光器12が光200の出力を停止することで、各ベルトコンベア11を停止させて荷受け渡しを完了させることができる。また、荷受け渡し中に地震などが発生して搬送装置10Aおよび/または搬送装置10Bの位置がずれた場合、直ちに各ベルトコンベア11を停止させて荷受け渡し動作を中断させることができる。これにより、保護箱100の落下を防止することができる。
【0033】
搬送装置10Aおよび10Bにおいて、投光器12および受光器13の配置位置は、図2に示したように横一列でなくてもよく、例えば、上下に並べても斜めに並べてもよい。
【0034】
また、搬送装置10Aおよび10Bにおいて、投光器12および受光器13の配置位置が互いに近いと、自身の投光器12から出力した光200が相手装置の対向面で反射して自身の受光器13がその反射光を受光してしまうおそれがあるため、投光器12および受光器13はなるべく離隔させて配置するのが好ましい。しかし、搬送装置10Aおよび10Bの構造上の理由などで投光器12および受光器13を十分に離隔させることができないことがある。そのような場合には、光200を連続光ではなく断続光(パルスバースト信号)にしてもよい。パルスバースト信号とは、一定周期でオン/オフを繰り返す信号である。
【0035】
光200にパルスバースト信号を用いる場合、搬送装置10Aおよび10Bで互いにオンデューティがずれたパルスバースト信号を用いるようにする。これは、搬送装置10Aおよび搬送装置10Bが、自身の投光器12から出力した光200の反射光を自身の受光器13で受光しないようにするためである。以下、各投光器12が出力する光200にパルスバースト信号を用いた例について詳細に説明する。
【0036】
図4は、正常に荷受け渡しが行われる場合の、搬送装置10Aおよび10Bの間で投光/受光されるパルスバースト信号のタイミングチャートである。便宜上、搬送装置10Aが荷渡し側であり、搬送装置10Bが荷受け側であるとする。統括制御盤からの移動通信命令および荷渡し・荷受け通信命令により搬送装置10Aおよび10Bが荷受け渡し位置へと移動すると、荷受け渡し動作を開始する前に、まず、搬送装置10Aの投光器12がパルス状の光200を出力する(P1)。搬送装置10Bの受光器13が搬送装置10Aの投光器12から出力されたパルス状の光200を受光すると(P2)、今度は、搬送装置10Bの投光器12がパルス状の光200を出力する(P3)。搬送装置10Aの受光器13が搬送装置10Bの投光器12から出力されたパルス状の光200を受光してその立ち下がりエッジが検出されると(P4)、搬送装置10Aおよび10Bは、各ベルトコンベア11を作動させて保護箱100の受け渡し動作を開始する。
【0037】
図5は、搬送装置10Aおよび10Bの間で投光/受光されるパルスバースト信号の制御タイミングチャートである。パルスバースト信号の出力および受信は、搬送装置10Aおよび10Bに搭載された図示しないマイコンによって制御される。図5に示したように、例えば、1サイクル=200msの間に、搬送装置10Aの投光器12からのパルス状の光200の出力、搬送装置10Bの受光器13によるパルス状の光200の受光、搬送装置10Bの投光器12からのパルス状の光200の出力、および搬送装置10Aの受光器13によるパルス状の光200の受光、といった一連のシーケンスがマイコンによって制御される。
【0038】
搬送装置10Aのマイコンは、例えば、投光器12からオンデューティ=50msのパルス状の光200の出力制御を行う。搬送装置10Bのマイコンは、搬送装置10Aの投光器12からパルス状の光200が出力されてから、例えば、オンディレイ=20msで受光器13による受光確認を開始する。受光の監視期間は、例えば、50msである。なお、オンディレイを設ける理由は、受光したパルス状の光200の立ち上がりエッジにおけるチャタリングを除去するためである。
【0039】
搬送装置10Bのマイコンは、受光監視期間中に、受光器13によるパルス状の光200の受光の有無を確認し、受光が確認できた場合、受光監視期間終了後さらに一定の待ち時間(例えば、10ms)が経過した後、例えば、投光器12からオンデューティ=50msのパルス状の光200の出力制御を行う。このように受光監視期間終了後にさらに待ち時間を設ける理由は、受光監視期間終了直後はマイコン内部で光200の受光処理が完了していないおそれがあるため、そのような信号処理が確実に終了してから投光器12の出力制御を行うためである。
【0040】
搬送装置10Bの投光器12からパルス状の光200が出力されると、今度は、搬送装置10Aのマイコンが、例えば、オンディレイ=20msで受光器13による受光確認を開始する。受光の監視期間は、搬送装置10Bの場合と同様に、例えば、50msである。そして、搬送装置10Aのマイコンは、投光器12からパルス状の光200の出力制御を開始してから、例えば、200ms経過後に、次のパルス状の光200の出力制御を開始する。
【0041】
図4へ戻り、搬送装置10Aの受光器13が搬送装置10Bの投光器12から出力されたパルス状の光200を受光すると(P4)、搬送装置10Aの投光器12が再びパルス状の光200を出力する(P5)。搬送装置10Bの受光器13が搬送装置10Aの投光器12から再び出力されたパルス状の光200を受光すると(P6)、搬送装置10Bの投光器12が再びパルス状の光200を出力し(P7)、搬送装置10Aの受光器13が搬送装置10Bの投光器12から再び出力されたパルス状の光200を受光する(P8)。このように、搬送装置10Aおよび10Bの間で保護箱100の受け渡しが行われている間中、搬送装置10Aおよび10Bは、互いに相手装置へパルスバースト信号を出力し続ける。
【0042】
搬送装置10Bは保護箱100を所定位置まで取り込んだことを検知すると、ベルトコンベア11を停止させるとともに投光器12からの光200の出力を停止する。一方、搬送装置10Aは保護箱100を送出し終えたことを検知し、搬送装置10Bから光200を受光できなくなると、ベルトコンベア11を停止させるとともに投光器12からの光200の出力を停止する。これをもって、搬送装置10Aおよび10Bの間での保護箱100の受け渡しが完了する。
【0043】
なお、荷受け渡し動作の開始前に、搬送装置10Aがパルス状の光200を出力したにもかかわらず搬送装置10Bの応答がなかった場合、搬送装置10Aは何度かパルス状の光200の出力をリトライしてもよい。そして、リトライ期間内に搬送装置10Bから応答があった場合、荷受け渡し動作を開始するようにしてもよい。
【0044】
また、搬送装置10Aは、搬送装置10Bからパルス状の光200を受光できなくなった場合に直ちに光200の出力を停止してベルトコンベア11を停止させるのではなく、パルス状の光200の出力を数回続けてそれでもなお搬送装置10Bからの応答がなかった場合に初めて光200の出力を停止してベルトコンベア11を停止させるようにしてもよい。
【0045】
図6は、荷受け渡し中に搬送装置10Aおよび/または搬送装置10Bの位置ずれが発生する場合の、搬送装置10Aおよび10Bの間で投光/受光されるパルスバースト信号のタイミングチャートである。図4と同様に、搬送装置10Aおよび10Bの間で保護箱100の受け渡しが行われている間中、搬送装置10Aおよび10Bは、互いに相手装置へパルスバースト信号を出力し続ける。荷受け渡し中に地震などにより搬送装置10Aおよび/または搬送装置10Bの位置ずれが発生し、搬送装置10Aの投光器12がパルス状の光200を出力した(P10)にもかかわらず、搬送装置10Bの受光器13がその光200を受光できなかった場合、搬送装置10Bは、ベルトコンベア11を停止させる。また、搬送装置10Bの受光器13がパルス状の光200を受光できなければ、投光器12からパルス状の光200が出力されないため、搬送装置10Aの受光器13も光200を受光しなくなり、搬送装置10Aもまたベルトコンベア11を停止させる。これにより、搬送装置10Aおよび10Bの間の荷受け渡し動作が中断され、保護箱100を落下などの危険から保護することができる。
【0046】
なお、図4ないし図6の例では、荷渡し側の搬送装置10Aが先に光200を出力しているが、荷受け側の搬送装置10Bが先に光200を出力するようにしてもよい。
【0047】
次に、荷受け渡し中に搬送装置の位置ずれが発生した場合における搬送システムの動作について説明する。図7は、本発明の一実施形態に係る搬送システムにおいて荷受け渡し中に搬送装置の位置ずれが発生した場合の制御フローチャートである。
【0048】
搬送装置10Aおよび10B(以下、それぞれ、荷渡し装置および荷受け装置)の間で保護箱100の受け渡しを行う場合、まず、統括制御盤が、荷受け装置および荷渡し装置へ移動命令を送信する(S1)。荷受け装置および荷渡し装置は、移動命令を受信するとそれぞれ荷受け渡し位置へと移動し、移動完了後に統括制御盤へ移動完了を返信する(S2)。
【0049】
統括制御盤は、荷受け装置および荷渡し装置から移動完了を受信すると、これら装置へ荷受け命令および荷渡し命令を送信する(S3)。荷受け装置および荷渡し装置は、荷受け命令および荷渡し命令を受信すると、パルスバースト信号(光200)をやりとりして互いに相手装置の停止位置を確認する(S4)。そして、荷受け装置および荷渡し装置は、互いに相手装置からパルスバースト信号を受信できれば、ベルトコンベア11を作動させて保護箱100の受け渡し動作を開始する(S5)。
【0050】
保護箱100の受け渡し中に、例えば、荷受け装置の位置ずれが発生したとする。この場合、荷受け装置は、荷渡し装置からパルスバースト信号を受信できなくなるため、荷渡し装置へのパルスバースト信号の送信を停止し、ベルトコンベア11を停止させて荷受け動作を停止する(S6)。荷受け装置からのパルスバースト信号の送信が停止されると、荷渡し装置は、荷受け装置からパルスバースト信号を受信できなくなるため、荷受け装置へのパルスバースト信号の送信を停止し、ベルトコンベア11を停止させて荷渡し動作を停止する(S7)。そして、荷受け装置および荷渡し装置は、荷受け渡し中に異常が発生したことを統括制御盤へ送信する(S8)。
【0051】
統括制御盤は、荷受け装置および荷渡し装置から異常発生を受信すると、搬送システムにおけるすべての搬送装置へ動作停止命令を送信する(S9)。搬送システムにおけるすべての搬送装置は、動作停止命令を受けると搬送動作を停止する(S10)。これにより、搬送システムの搬送動作がすべて停止する。
【0052】
以上のように、本実施形態によると、搬送装置10Aおよび10Bの間で荷受け渡しを行う前および荷受け渡し中に、両装置間で互いの停止位置を確認し合うため、搬送装置10Aおよび/または搬送装置10Bの停止位置を速やかに検出して荷受け渡し動作を即座に停止することができる。これにより、荷受け渡し時の荷の落下を防止することができる。また、搬送装置10Aおよび/または搬送装置10Bの停止位置ずれが末端装置側(搬送装置)および中央制御装置側(統括制御盤)において2重にチェックすることができるため、荷の搬送の安全性をより向上させることができる。
【0053】
また、本実施形態によると、搬送装置10Aおよび10Bの間で荷受け渡し中に搬送装置10Aおよび/または搬送装置10Bの位置ずれが発生した場合に即座に荷受け渡し動作を停止することができることから、搬送装置10Aおよび10Bにおいてベルトコンベア11のブレーキ機構を省略することが可能になる。これにより、部品点数が減るため、搬送装置のコストダウンやメンテナンス性を向上させることができる。
【0054】
なお、投光器12および/または受光器13が故障すると、搬送装置10Aおよび搬送装置10Bの間で互いの停止位置を確認することができずに搬送システム全体が停止するおそれがある。したがって、そのような故障が発生した場合には、例えば、統括制御盤からすべての搬送装置に対して投光器12および受光器13による光200の投光および受光を無効にする命令を送信し、すべての搬送装置は、当該命令を受信すると、自身の受光器13が相手装置の投光器12から光200を受光できたか否かにかかわらず保護箱100の受け渡しを行うようにしてもよい。これにより、投光器12および/または受光器13の故障発生時には、本実施形態に係る搬送システムは搬送動作を停止することなく縮退動作に移行して、従来の搬送システムと同等の搬送動作を継続することができる。
【0055】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上記の実施形態の構成に限られず種々の変形が可能である。例えば、投光器12および受光器13に代えてミリ波送受信器を用いてもよい。また、荷受け渡しに係る一方の搬送装置が移動することのない固定機の場合には、荷受け渡しをする方向の正面に投光器12および受光器13を配置せずに、例えば、側面にそれらを配置してもよい。
【0056】
また、上記実施形態により示した構成は、本発明の一実施形態に過ぎず、本発明を当該構成に限定する趣旨ではない。
【産業上の利用可能性】
【0057】
本発明に係る搬送システムは、荷受け渡し時の荷の落下を防止することができるため、全自動貸金庫や全自動倉庫といった屋内で荷を搬送する搬送システムとして有用である。
【符号の説明】
【0058】
10A 搬送装置(第1の搬送装置)
10B 搬送装置(第2の搬送装置)
12 投光器(発信器)
13 受光器(受信器)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7