特許第6386286号(P6386286)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6386286
(24)【登録日】2018年8月17日
(45)【発行日】2018年9月5日
(54)【発明の名称】モータアクチュエータ
(51)【国際特許分類】
   H01H 3/42 20060101AFI20180827BHJP
   H01H 1/28 20060101ALI20180827BHJP
   H01H 3/16 20060101ALI20180827BHJP
   H02K 7/06 20060101ALN20180827BHJP
【FI】
   H01H3/42 A
   H01H1/28
   H01H3/16 B
   !H02K7/06 B
【請求項の数】4
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2014-160444(P2014-160444)
(22)【出願日】2014年8月6日
(65)【公開番号】特開2016-38982(P2016-38982A)
(43)【公開日】2016年3月22日
【審査請求日】2017年7月10日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002233
【氏名又は名称】日本電産サンキョー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002158
【氏名又は名称】特許業務法人上野特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100095669
【弁理士】
【氏名又は名称】上野 登
(72)【発明者】
【氏名】有賀 久剛
【審査官】 関 信之
(56)【参考文献】
【文献】 特開平08−163892(JP,A)
【文献】 特開2004−079213(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01H 3/42
H01H 1/28
H01H 3/16
H02K 7/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
駆動源であるモータと、
前記モータの駆動力が伝達され一方向に回転するカム部材と、
導電性の弾性体からなり互いに接触または離間してスイッチを継断する複数のスイッチ接片と、
前記スイッチ接片の前記カム部材方向への可動範囲を制限する少なくとも一つの規制部と、を備え、
前記複数のスイッチ接片は前記カム部材の径方向外側に押圧されることにより弾性変形しており、
前記カム部材は外周面が径方向に段状に切り欠かれた段差部を少なくとも一つ有し、
前記複数のスイッチ接片は、より前記カム部材に近接した少なくとも一つの前記スイッチ接片からなる内側スイッチ接片と、前記内側スイッチ接片に隣接する外側スイッチ接片と、からなり、
前記規制部は、前記外側スイッチ接片のみと接触することにより、前記段差部における前記外側スイッチ接片の落下幅を制限し、
前記複数のスイッチ接片は、前記カム部材に近接する順に、第一のスイッチ接片、第二のスイッチ接片、および第三のスイッチ接片を有し、
前記カム部材の外周面に摺接する前記第一のスイッチ接片の先端部は、前記第二のスイッチ接片の先端部よりも前記カム部材の軸方向の幅が小さく、前記カム部材の外周面に摺接する前記第一のスイッチ接片および前記第二のスイッチ接片の先端部は、前記第三のスイッチ接片の先端部よりも前記カム部材の軸方向の幅が小さく、
前記カム部材の外周面には、前記段差部である第一の段差部により切り欠かれた範囲にわたり、前記第一のスイッチ接片の先端部の前記軸方向外側、かつ、前記第二のスイッチ接片の先端部の前記軸方向内側に、前記カム部材の径方向外側へ延出した前記規制部である第一の拡径カム面と、前記段差部である第二の段差部により切り欠かれた範囲にわたり、前記第一のスイッチ接片および前記第二のスイッチ接片の先端部の前記軸方向外側、かつ、前記第三のスイッチ接片の先端部の前記軸方向内側に、前記カム部材の径方向外側へ延出した前記規制部である第二の拡径カム面と、が形成されることを特徴とするモータアクチュエータ。
【請求項2】
前記内側スイッチ接片が前記段差部を落下することにより前記内側スイッチ接片と離間した前記外側スイッチ接片は、前記内側スイッチ接片が前記カム部材の外周面に押圧され前記外側スイッチ接片側に弾性変形することにより前記内側スイッチ接片と接触し、前記内側スイッチ接片が前記カム部材の外周面にさらに押圧されることにより前記規制部から離間することを特徴とする請求項1に記載のモータアクチュエータ。
【請求項3】
前記第一の拡径カム面は前記カム部材の外周面の軸方向両側に設けられていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のモータアクチュエータ。
【請求項4】
前記第二の拡径カム面は前記カム部材の外周面の軸方向両側に設けられていることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか一項に記載のモータアクチュエータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はモータアクチュエータに関し、さらに詳しくは、導電性の弾性体からなる複数の接点部材を備えるモータアクチュエータに関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1には、導電性の弾性体からなる複数のスイッチ接片(6、7、8)と、段差部(3、4)が形成されたカム部材(2)とを備え、段差部にスイッチ接片の一部を落下させることによりスイッチ接片同士を離間させるカムスイッチが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−079213号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
薄板状の金属片などの導電性弾性体を接点部材として用い、出力部材の変位に連動してその接点部材を湾曲させることにより接点の接触(ON)と離間(OFF)とを切り換え、装置の動作状態の検出や制御を行う機構が一般に知られている。
【0005】
特許文献1のカムスイッチのように、各接点部材の摺接部の長さや形状、またはカム体の段差部の形状などを工夫し、複数の接点部材のうちの一部のみをカム体の段差部で落下させる機構とした場合、落下する接点部材はその復元力により段差部の落差の分だけ加速してカム体に打ち付けられることとなる。また、段差部で離間した接点部材を再度接触させる際には、落下した接点部材に隣接する接点部材を段差部から一定の角度をおいて落下させており、隣接する接点部材についても先に落下した接点部材に打ち付けられることとなる。このような動作が繰り返されることは接点部材やカム体の寿命低下の原因となる。
【0006】
特に、カム体に近接する側の接点部材を短くすることにより短い方の接点部材のみを先に段差部から落下させる場合、短い方の接点部材とその接点部材に隣接する接点部材の両方を一旦段差部の縁の高さまで乗り上げさせてから落下させる必要がある。そのため、短い方の接点部材が落下する落差が大きくなるとともに、隣接する接点部材も短い方の接点部材の厚みの分だけ段差部の縁に打ち付けられることとなる。
【0007】
接点部材の湾曲部をより長くすることにより接点部材がカム体に打ち付けられる衝撃力を低減させることは可能であるが、装置の小型化の妨げになるという問題がある。また、段差部の代わりにテーパを設けて接点部材を離間させる場合、接点部材がカム体に打ち付けられることは避けられるが、接点部材が離間または接触する間際におけるスイッチの継断が不安定となり、チャタリングなどによる装置の誤動作や故障を招くおそれがある。
【0008】
上記問題に鑑み、本発明が解決しようとする課題は、接点部材がカム体に打ちつけられることによる衝撃力を低減し、かつ、スイッチの継断を高い精度で行うことのできるモータアクチュエータを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するため、本発明のモータアクチュエータは、駆動源であるモータと、前記モータの駆動力が伝達され一方向に回転するカム部材と、導電性の弾性体からなり互いに接触または離間してスイッチを継断する複数のスイッチ接片と、前記スイッチ接片の前記カム部材方向への可動範囲を制限する少なくとも一つの規制部と、を備え、前記複数のスイッチ接片は前記カム部材の径方向外側に押圧されることにより弾性変形しており、前記カム部材は外周面が径方向に段状に切り欠かれた段差部を少なくとも一つ有し、前記複数のスイッチ接片は、より前記カム部材に近接した少なくとも一つの前記スイッチ接片からなる内側スイッチ接片と、前記内側スイッチ接片に隣接する外側スイッチ接片と、からなり、前記規制部は、前記外側スイッチ接片のみと接触することにより、前記段差部における前記外側スイッチ接片の落下幅を制限し、前記複数のスイッチ接片は、前記カム部材に近接する順に、第一のスイッチ接片、第二のスイッチ接片、および第三のスイッチ接片を有し、前記カム部材の外周面に摺接する前記第一のスイッチ接片の先端部は、前記第二のスイッチ接片の先端部よりも前記カム部材の軸方向の幅が小さく、前記カム部材の外周面に摺接する前記第一のスイッチ接片および前記第二のスイッチ接片の先端部は、前記第三のスイッチ接片の先端部よりも前記カム部材の軸方向の幅が小さく、前記カム部材の外周面には、前記段差部である第一の段差部により切り欠かれた範囲にわたり、前記第一のスイッチ接片の先端部の前記軸方向外側、かつ、前記第二のスイッチ接片の先端部の前記軸方向内側に、前記カム部材の径方向外側へ延出した前記規制部である第一の拡径カム面と、前記段差部である第二の段差部により切り欠かれた範囲にわたり、前記第一のスイッチ接片および前記第二のスイッチ接片の先端部の前記軸方向外側、かつ、前記第三のスイッチ接片の先端部の前記軸方向内側に、前記カム部材の径方向外側へ延出した前記規制部である第二の拡径カム面と、が形成されることを要旨とする。
【0010】
外側スイッチ接片の落下幅を制限する規制部を外側スイッチ接片のみと接触させることにより、段差部において内側スイッチ接片を落下させる前に内側スイッチ接片を一旦規制部の高さまで乗り上げさせる必要がなくなる。これにより内側スイッチ接片の落下幅を最小限に抑えることができ、内側スイッチ接片がカム部材に打ち付けられる衝撃力を低減させることができる。また、内側スイッチ接片が落下した際に外側スイッチ接片が規制部に打ち付けられることも避けられる、もしくはその衝撃力を低減することができる。また、カム部材の外周面において、第一のスイッチ接片の先端部が摺接する範囲よりも軸方向外側に、第二のスイッチ接片の先端部のみと接触する第一の拡径カム面を形成することにより、第一のスイッチ接片と第一の拡径カム面とを互いに干渉させることなく、つまり段差部において第一のスイッチ接片を落下させる前に第一のスイッチ接片を一旦第一の拡径カム面の高さまで乗り上げさせることなく、第二のスイッチ接片の落下のみを制限することができる。これにより第一の段差部における第一のスイッチ接片の落下幅を最小化することが可能となる。また、第一の段差部により切り欠かれた範囲にわたって第一の拡径カム面が形成されていることから、第二のスイッチ接片が第一の拡径カム面から落下して第一のスイッチ接片に打ち付けられることが避けられる。そして、三つのスイッチ接片を備え、カム部材の外周面に第一の拡径カム面に加えて第二の拡径カム面を形成することにより、各スイッチ接片が他のスイッチ接片やカム部材に打ち付けられる衝撃力を抑えつつ、第一のスイッチ接片のみが離間した状態、第三のスイッチ接片のみが離間した状態、および全てのスイッチ接片が接触した状態を切り替えることが可能となる。
【0011】
また、前記内側スイッチ接片が前記段差部を落下することにより前記内側スイッチ接片と離間した前記外側スイッチ接片は、前記内側スイッチ接片が前記カム部材の外周面に押圧され前記外側スイッチ接片側に弾性変形することにより前記内側スイッチ接片と接触し、前記内側スイッチ接片が前記カム部材の外周面にさらに押圧されることにより前記規制部から離間することが望ましい。
【0012】
離間した内側スイッチ接片と外側スイッチ接片とを接触させる際に、外側スイッチ接片を内側スイッチ接片側に落下させるのではなく、内側スイッチ接片を外側スイッチ接片側に弾性変形させて接触させることにより、外側スイッチ接片が内側スイッチ接片に打ち付けられる動作がなくなり、スイッチ接片およびカム部材の寿命向上に資する。その後さらに内側スイッチ接片を弾性変形させ、外側スイッチ接片が規制部から離間するまで押圧することにより外側スイッチ接片と内側スイッチ接片との接点の接触精度が高められる。
【0015】
また、前記第一の拡径カム面は前記カム部材の外周面の軸方向両側に設けられている構成とすることにより、上述の第一のスイッチ接片と第二のスイッチ接片の接触および離間動作をより安定して行うことが可能となる。
【0018】
同様に、前記第二の拡径カム面は前記カム部材の外周面の軸方向両側に設けられている構成とすることが望ましい。
【発明の効果】
【0023】
本発明にかかるモータアクチュエータによれば、接点部材がカム体に打ちつけられることによる衝撃力を低減し、かつ、スイッチの継断を高い精度で行うことのできるモータアクチュエータを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】排水弁駆動装置1を上方から見た分解斜視図である。
図2】排水弁駆動装置1の下方から見た分解斜視図である。
図3】排水弁駆動装置1の歯車列の噛合状態を示す透過図である。
図4】排水弁駆動装置1のカム部材およびスイッチ接片の取り付け状態を示す図である。
図5】排水弁駆動装置1の弾性変形前のスイッチ接片を示す図である。
図6】排水弁駆動装置1のカム部材の形状を示す図である。
図7】排水弁駆動装置1のカム部材の回転角度に応じたスイッチ接片の継断状態を示す遷移図である。
図8】排水弁駆動装置2における規制部を示す図である。
図9】排水弁駆動装置3における規制部を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
(全体構成)
以下、本発明にかかるモータアクチュエータの実施形態について図面を用いて詳細に説明する。本実施形態におけるモータアクチュエータは、洗濯機の筐体内に設置される排水弁駆動装置1である。なお、以下の説明における上下とは、図1における上下(上ケース半体91側を上、下ケース半体92側を下とする)をいう。
【0026】
図1および図2は本実施形態における排水弁駆動装置1の分解斜視図である。本実施形態における排水弁駆動装置1は、駆動源であるモータ10と、モータ10の駆動力を被駆動体である排水弁95に伝達する歯車列30およびクランク部材37と、クランク部材37の回転角度を検出するカム部材50およびスイッチ接片40と、上下に分割された上ケース半体91および下ケース半体92からなるケース体90と、ケース体90の内部空間を上下に仕切る略板状の部材である仕切板93と、から構成される。
【0027】
図3は排水弁駆動装置1の歯車列30の噛合状態を示す透過図である。本実施形態におけるモータ10は図示しない逆転防止機構により一方向にのみ回転するACモータである。歯車列30は、モータ10のピニオン31を第一の歯車として、第二の歯車32と、第三の歯車33と、第四の歯車34と、第五の歯車35と、第六の歯車36と、からなる減速歯車機構であり、ピニオン31を除く各歯車は平歯車である大径歯車と小径歯車とが二段に形成された複合歯車である。図1図2に示すように第六の歯車36の小径歯車には排水弁95を開閉するクランク部材37が装着される。
【0028】
図4はカム部材50およびスイッチ接片40の取り付け状態を示す図である。本実施形態における排水弁駆動装置1には、クランク部材37の回転角度から排水弁95の開閉状態を検出するためのカム部材50および三つのスイッチ接片40が設けられている。スイッチ接片40は導電性の弾性体である短冊状の金属片からなり、先端部に設けられた接点部材を互いに接触または離間することによりスイッチを継断する。各スイッチ接片40は後端部が仕切板93の上面に形成されたスイッチ接片保持部の溝に嵌合され固定されている。各スイッチ接片40の後端部には信号端子94が接続されており、スイッチの継断は信号端子94を介して外部に接続された図示しない制御装置へと通知され、該制御装置によりモータ10の回転が制御されている。
【0029】
カム部材50は第六の歯車36の大径歯車と小径歯車との間に形成された円柱部に挿通されている。該円柱部は先端側の外周面が一部平面状に切り欠かれており、カム部材50の挿通孔も同形状に形成されている。よって、第六の歯車36の円柱部にカム部材50が挿通され、小径歯車にクランク部材37が装着されることにより、カム部材50は第六の歯車36に軸方向および周方向に固定され、第六の歯車36の回転に連れ回って回転することとなる。
【0030】
仕切板93の上面には、カム部材50の軸方向と平行する方向に突出した規制部である第二の突起部62が、カム部材50と第三のスイッチ接片43との間に第三のスイッチ接片43のみと接触する位置に設けられている。つまり第二の突起部62は、第一のスイッチ接片41および第二のスイッチ接片42を内側スイッチ接片とし、第三のスイッチ接片43を外側スイッチ接片とした規制部である。
【0031】
(スイッチ構造)
スイッチ接片40はカム部材50に近接する順に、第一のスイッチ接片41、第二のスイッチ接片42、および第三のスイッチ接片43からなる。スイッチ接片40は、カム部材50または第二の突起部62に押圧されることにより、カム部材50の径方向外側に弾性変形している。
【0032】
図5(a)は弾性変形する前のスイッチ接片40を示す図である。図5(b)は第一のスイッチ接片41、第二のスイッチ接片42、および第三のスイッチ接片のそれぞれを図5(a)のA方向から見た図、図5(c)はそれらを図5(a)のB方向から見た図である。以下の説明におけるスイッチ接片40の「幅」とは、図5(b)および図5(c)における左右の長さをいう。
【0033】
第一のスイッチ接片41は、先端部41aが第二のスイッチ接片42側に傾斜しており、先端部41aの第二のスイッチ接片42側の面に設けられた接点部材411と、第二のスイッチ接片42の接点部材421との間隔が小さくされている。
【0034】
第二のスイッチ接片42は厚み方向への傾斜や屈曲のない平板状の部材である。先端部42aの幅は先端部41aの幅よりも広く形成されている。先端部42aの両面には第一のスイッチ接片41の接点部材411および第三のスイッチ接片43の接点部材431に接触する接点部材421が設けられている。
【0035】
第三のスイッチ接片43は、先端部43aの最も先端の位置が先端部41aおよび先端部42aの最も先端の位置よりも長く延出しており、先端部43aの全長における略中心から最も先端にかけての部分は第一のスイッチ接片41および第二のスイッチ接片42から離れる方向に傾斜している。第二の突起部62はその傾斜した部分と接触する位置に設けられる。一方で、先端部43aのその傾斜した部分とスイッチ接片保持部の溝に嵌合される後端部を除いた部分は第二のスイッチ接片42側に傾斜しており、先端部43aの第二のスイッチ接片42側の面に設けられた接点部材431と、第二のスイッチ接片42の接点部材421との間隔が小さくされている。
【0036】
図6はカム部材50の形状を示す図である。図6(a)はカム部材50を上面から見て第一の段差部51を透過させた平面図、図6(b)はカム部材50をB方向から見た斜視図、図6(c)はカム部材50をA方向から見た斜視図である。
【0037】
カム部材50は外周面にカム面を備えた略円柱状の部材であり、モータ10の駆動力が伝達されることにより図6(a)視反時計方向にのみ回転する。以下の説明における「前」および「後」とは、カム体50にスイッチ接片40が摺接する経時的順序をいい、「径方向」および「軸方向」とはカム体50の径方向および軸方向をいう。
【0038】
カム部材50は外周面が径方向に段状に切り欠かれた第一の段差部51および第二の段差部52を有している。本実施形態におけるこれら段差部は、カム部材50の軸穴を中心として略対称となる位置に形成されているが、かかる形成位置は、検知しようとするカム体50の回転角度に応じて適宜変更可能である。第一の段差部51および第二の段差部52は、外周面の径方向位置が段状に縮小された後、略直角に後方向に向かってゆるやかに二つの丘陵を形成しながら外周面を切り欠いている。
【0039】
第一の段差部51および第二の段差部52の前後には、外周面の径方向位置が略一定の起伏のない曲面である中間曲面が形成されており、第一のスイッチ接片41が中間曲面に摺接している間はスイッチ接片40の接点は全て接触状態とされる。
【0040】
第一の段差部51の軸方向両端には、第二のスイッチ接片42のカム部材50方向への可動範囲を制限する規制部である第一の拡径カム面61が形成されている。第一の拡径カム面61はカム部材50に摺接する第一のスイッチ接片41の先端部41aの軸方向外側、かつ、第二のスイッチ接片42の先端部42aの軸方向内側に形成されており、第二のスイッチ接片42の先端部42aのみと接触する。つまり第一の拡径カム面61は、第一のスイッチ接片41を内側スイッチ接片とし、第二のスイッチ接片42を外側スイッチ接片とした規制部である。
【0041】
第一の拡径カム面61は、第一の段差部51の手前から拡径を開始し、第一のスイッチ接片41が落下する位置において第二のスイッチ接片42の先端部42aの径方向位置までせり出して先端部42aを支持し、かかる径方向位置を維持しつつその後の中間曲面に該中間曲面と同じ曲率で収束し一体化している。
【0042】
(動作)
次に本実施形態における排水弁駆動装置1の動作について説明する。モータ10に電力が供給されピニオン31が回転すると、その駆動力が第二の歯車32、第三の歯車33、第四の歯車34、第五の歯車35、第六の歯車36の順に伝達される。各歯車の小径歯部は次の歯車の大径歯車と噛合されていることにより、モータ10の駆動力は減速されてクランク部材37および排水弁95に伝達される。
【0043】
図7はカム部材50の回転角度に応じたスイッチ接片40の継断状態を示す遷移図である。図7(a)は排水弁95が完全に開放された際のカム部材50およびスイッチ接片40の状態を示し、図7(c)は排水弁95が完全に閉塞された際のこれらの状態を示す。以下の説明においては、第二のスイッチ接片42と第三のスイッチ接片43との間の接点をA接点と言い、第一のスイッチ接片41と第二のスイッチ接片42との間の接点をB接点と言う。
【0044】
図7(a)に示すように、排水弁95が完全に開放された際には、第一のスイッチ接片41および第二のスイッチ接片42が接触状態を保ったまま第二の段差部52を落下し、第三のスイッチ接片43は第二の突起部62と接触することにより落下が制限される。その結果、第二のスイッチ接片42と第三のスイッチ接片43が離間し、A接点は断状態となる。A接点の断は信号端子94を介して外部に接続された図示しない制御装置へと通知され、制御装置は排水弁95が完全に開放されたことを検知する。
【0045】
第三のスイッチ接片43の先端部43aのみが接触する位置に第二の突起部62が設けられていることにより、第二の突起部62と第一のスイッチ接片41および第二のスイッチ接片42とを互いに干渉させることなく第三のスイッチ接片43の落下のみが制限されている。そのため、第二の突起部62の位置まで第一のスイッチ接片41および第二のスイッチ接片42を一旦乗り上げさせてから落下させる必要がなく、第二の段差部52における第一のスイッチ接片41および第二のスイッチ接片42の落下幅が最小化されている。また、第一のスイッチ接片41および第二のスイッチ接片42が落下した際に第三のスイッチ接片43が第二の突起部62に打ちつけられる衝撃力も必要最小限とされている。さらに、第二の突起部62はカム部材50とは別体として設けられていることから、第一の拡径カム面61とは異なりカム部材50の軸方向長さに影響を与えないため、カム部材50の大型化が抑えられている。
【0046】
第二の突起部62に接触して静止した第三のスイッチ接片43は、カム部材50がその後回転しても静止状態が維持されるため、第三のスイッチ接片43が先に落下した第二のスイッチ接片42に打ち付けられることがない。図7(b)に示すように、第一のスイッチ接片41および第二のスイッチ接片42の落下後、カム部材50がさらに回転することにより、第一のスイッチ接片41および第二のスイッチ接片42はカム部材50の外周面に押圧されて弾性変形し、第二のスイッチ接片42が第三のスイッチ接片43に接触する。これによりA接点は再び継状態となる。その後さらにカム部材50が回転することにより、第三のスイッチ接片43は第二のスイッチ接片42に押圧されて第二の突起部62と離間するとともに、A接点における高い接触精度が確保される。
【0047】
図7(c)に示すように、排水弁95が完全に閉塞された際には、第一のスイッチ接片41が第一の段差部51を落下する。一方で第二のスイッチ接片42は第三のスイッチ接片43との接触状態を保ったまま、第一の拡径カム面61と接触することにより落下が制限される。その結果、第一のスイッチ接片41と第二のスイッチ接片42が離間し、B接点は断状態となる。B接点の断は信号端子94を介して外部に接続された図示しない制御装置へと通知され、制御装置は排水弁95が完全に閉塞されたことを検知する。
【0048】
カム部材50の外周面において、第一のスイッチ接片41の先端部41aが摺接する範囲よりも軸方向外側に、第二のスイッチ接片42の先端部42aのみと接触する第一の拡径カム面61が形成されていることにより、第一のスイッチ接片41と第一の拡径カム面61とを互いに干渉させることなく、第二のスイッチ接片42の落下のみが制限されている。そのため、第一のスイッチ接片41および第二のスイッチ接片42を第一の拡径カム面61の高さまで一旦乗り上げさせてから落下させる必要がなく、第一の段差部51における第一のスイッチ接片41および第二のスイッチ接片42の落下幅が最小化され、第一のスイッチ接片41がカム部材50に打ち付けられる衝撃力が低減されている。
【0049】
図7(d)に示すように、第一の拡径カム面61は第一の段差部51により切り欠かれた範囲の全域にわたり径方向位置を維持しつつ、その後の中間曲面に該中間曲面と同じ曲率で収束し一体化するよう形成されている。つまり第一の拡径カム面61とその後の中間曲面とは一つの滑らかな曲面を形成しているため、第二のスイッチ接片42が第一の拡径カム面61から落下して第一のスイッチ接片41に打ちつけられることがない。
【0050】
B接点が断状態とされた後、カム部材50がさらに回転することにより、第一のスイッチ接片41はカム部材50の外周面に押圧されて弾性変形し、第二のスイッチ接片42に接触する。B接点はこのようにして再び継状態となる。その後さらにカム部材50が回転することにより、第二のスイッチ接片42は第一のスイッチ接片41に押圧されて第一の拡径カム面61と離間するとともに、B接点における高い接触精度が確保される。
【0051】
図8は本発明にかかるモータアクチュエータの他の実施形態である排水弁駆動装置2におけるカム部材50の規制部を示す図である。排水弁駆動装置2の基本的な構成は排水弁駆動装置1と同様であるため、共通する部分については詳細な説明を省略するとともに、同一の符号を付して図示する。
【0052】
排水弁駆動装置2は第二の突起部62を備えず、また、第三のスイッチ接片43の先端部43aの幅が第二のスイッチ接片42の先端部42aの幅よりも広く形成されている。
【0053】
第二の段差部52の軸方向両端には、第三のスイッチ接片43のカム部材50方向への可動範囲を制限する規制部である第二の拡径カム面63が形成されている。第二の拡径カム面63は第二のスイッチ接片42の先端部42aの軸方向外側、かつ、第三のスイッチ接片43の先端部43aの軸方向内側に形成されており、第三のスイッチ接片43の先端部43aのみと接触する。つまり第二の拡径カム面63は、第一のスイッチ接片41および第二のスイッチ接片42を内側スイッチ接片とし、第三のスイッチ接片43を外側スイッチ接片とした規制部である。
【0054】
第二の拡径カム面63は、第二の段差部52の手前から拡径を開始し、第一のスイッチ接片41および第二のスイッチ接片42が落下する位置において第三のスイッチ接片43の先端部43aの径方向位置までせり出して先端部43aを支持し、徐々に径方向位置を低くしながらその後の中間曲面に該中間曲面と同じ曲率で収束し一体化している。つまり第二の拡径カム面63とその後の中間曲面とは一つの滑らかな曲面を形成しているため、第三のスイッチ接片43が第二の拡径カム面63から落下して第二のスイッチ接片42に打ちつけられることがない。
【0055】
排水弁95が完全に開放された際には、第一のスイッチ接片41および第二のスイッチ接片42が第二の段差部52を落下する。一方で第三のスイッチ接片43は第二の拡径カム面63と接触することにより落下が制限される。その結果、第二のスイッチ接片42と第三のスイッチ接片43が離間し、A接点は断状態となる。A接点の断は信号端子94を介して外部に接続された図示しない制御装置へと通知され、制御装置は排水弁95が完全に開放されたことを検知する。
【0056】
カム部材50の外周面において、第二のスイッチ接片42の先端部42aの幅よりも軸方向外側に、第三のスイッチ接片43の先端部43aのみと接触する第二の拡径カム面63が形成されていることにより、第一のスイッチ接片41および第二のスイッチ接片42と第二の拡径カム面63とを互いに干渉させることなく第三のスイッチ接片43の落下が制限されている。そのため、第二の拡径カム面63の高さまで第一のスイッチ接片41、第二のスイッチ接片42を一旦乗り上げさせてから落下させる必要がなく、第二の段差部52におけるこれら第一のスイッチ接片41、第二のスイッチ接片42、および第三のスイッチ接片43の落下幅が最小化され、第一のスイッチ接片41がカム部材50に打ち付けられる衝撃力が低減されている。
【0057】
第二の拡径カム面63は第二の段差部52により切り欠かれた範囲の全域にわたり徐々に径方向位置を低くしながらその後の中間曲面に該中間曲面と同じ曲率で収束し一体化するよう形成されている。そのため、第三のスイッチ接片43が落下して第二のスイッチ接片42に打ちつけられることがない。
【0058】
A接点が断状態とされた後、カム部材50がさらに回転することにより、第一のスイッチ接片41および第二のスイッチ接片42はカム部材50の外周面に押圧されて弾性変形し、第三のスイッチ接片43に接触する。A接点はこのようにして再び継状態となる。その後さらにカム部材50が回転することにより、第三のスイッチ接片43は第二のスイッチ接片42に押圧されて第二の拡径カム面63と離間するとともに、A接点における高い接触精度が確保される。
【0059】
その他、第二の拡径カム面63は、第一のスイッチ接片41および第二のスイッチ接片42を内側スイッチ接片とし、第三のスイッチ接片43を外側スイッチ接片としている点で第一の拡径カム面61と異なるだけで、これらの目的、機能、および効果は同じである。
【0060】
図9は本発明にかかるモータアクチュエータの他の実施形態である排水弁駆動装置3における規制部を示す図である。排水弁駆動装置3の基本的な構成は排水弁駆動装置1と同様であるため、共通する部分については詳細な説明を省略するとともに、同一の符号を付して図示する。
【0061】
排水弁駆動装置3は、第一の拡径カム面61、第二の段差部52、第三のスイッチ接片43、第二の突起部62を備えず、また、第二のスイッチ接片42は、先端部42aの最も先端の位置が先端部41aの最も先端の位置よりも長く延出しており、先端部42aの全長における略中心から最も先端にかけての部分は第一のスイッチ接片41から離れる方向に傾斜している。つまり排水弁駆動装置3のスイッチ接片40はB接点のみを備える。
【0062】
仕切板93の上面には、カム部材50の軸方向と平行する方向に突出した規制部である第一の突起部64が、カム部材50と第二のスイッチ接片42との間に第二のスイッチ接片42のみと接触する位置に設けられている。つまり第一の突起部64は、第一のスイッチ接片41を内側スイッチ接片とし、第二のスイッチ接片42を外側スイッチ接片とした規制部である。
【0063】
第二のスイッチ接片42の先端部42aのみが接触する位置に第一の突起部64が設けられていることにより、第一の突起部64と第一のスイッチ接片41とを互いに干渉させることなく第二のスイッチ接片42の落下のみが制限されている。そのため、第一の突起部64の位置まで第一のスイッチ接片41を一旦乗り上げさせてから落下させる必要がなく、第一の段差部51における第一のスイッチ接片41の落下幅が最小化されている。また、第一のスイッチ接片41が落下した際に第二のスイッチ接片42が第一の突起部64に打ちつけられる衝撃力も必要最小限とされている。さらに、第二の突起部62はカム部材50とは別体として設けられていることからカム部材50の軸方向長さに影響を与えないため、カム部材50の大型化が抑えられている。
【0064】
第一の突起部64に接触して静止した第二のスイッチ接片42は、カム部材50がその後回転しても静止状態が維持されるため、第二のスイッチ接片42が先に落下した第一のスイッチ接片41に打ち付けられることがない。その後カム部材50が回転することにより、第一のスイッチ接片41はカム部材50の外周面に押圧されて弾性変形し、第二のスイッチ接片42に接触する。これによりB接点は再び継状態となる。その後さらにカム部材50が回転することにより、第二のスイッチ接片42は第一のスイッチ接片41に押圧されて第一の突起部64と離間するとともに、B接点における高い接触精度が確保される。
【0065】
その他、第一の突起部64は、第一のスイッチ接片41を内側スイッチ接片とし、第二のスイッチ接片42を外側スイッチ接片としている点で第二の突起部62と異なるだけで、これらの目的、機能、および効果は同じである。
【0066】
以上、本発明の実施の形態について詳細に説明したが、本発明は上記実施の形態に何ら限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の改変が可能である。
【符号の説明】
【0067】
1、2、3 排水弁駆動装置
10 モータ
30 歯車列
37 クランク部材
40 スイッチ接片
41 第一のスイッチ接片
41a 第一のスイッチ接片の先端部
411 第一のスイッチ接片の接点部材
42 第二のスイッチ接片
42a 第二のスイッチ接片の先端部
421 第二のスイッチ接片の接点部材
43 第三のスイッチ接片
43a 第三のスイッチ接片の先端部
431 第三のスイッチ接片の接点部材
50 カム部材
51 第一の段差部
52 第二の段差部
61 第一の拡径カム面
62 第二の突起部
63 第二の拡径カム面
64 第一の突起部
90 ケース体
93 仕切板
95 排水弁
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9