【実施例】
【0022】
以下、本発明によるAl−Cu接合体のめっき前処理方法の実施例について詳細に説明する。
【0023】
[実施例1]
まず、アルミニウム部材として94mm×26mm×3mmの大きさのアルミニウム板(日本軽金属株式会社製のA1050)、銅部材として108mm×67mm×4mmの大きさの銅合金板(DOWAメタルテック株式会社製のDSC−3N、表面粗さRa=0.18μm)を用意するとともに、Al(75質量%)−Si(5質量%)−Cu(20質量%)粉末からなるろう材とフラックス(CF−15(CsF系とノコロックの混合物)とを5:1の比率で含むろう材ペーストを用意した。
【0024】
次に、銅合金板上に20mg/cm
2の量で塗布したろう材ペースト上にアルミニウム板を載せて窒素(100%)雰囲気の炉内に入れ、ろう付温度540℃で2分間保持した後、約150℃まで冷却し、炉内から取り出して、ろう接によりアルミニウム板と銅合金板を接合したAl−Cu接合体(Al−Cu複合部材)を得た。
【0025】
次に、苛性ソーダを含む脱脂液(100mL/Lのギルライト650(上村工業株式会社製)を含む水溶液)を50℃に保持し、この脱脂液にAl−Cu接合体を10分間浸漬することにより、Al−Cu接合体の表面の脱脂処理を行った後、Al−Cu接合体を水洗して脱脂液を洗い流した。
【0026】
次に、フッ酸を含有するエッチング液(100mL/LのAD−101F(上村工業株式会社製)を含む水溶液)を65℃に保持し、このエッチング液にAl−Cu接合体を4分間浸漬してエッチング処理を行った後、Al−Cu接合体を水洗してエッチング液を洗い流した。
【0027】
次に、100g/Lの過硫酸ナトリウムと18g/Lの硫酸を含む水溶液を25℃に保持し、この過硫酸ナトリウム水溶液にAl−Cu接合体を30秒間浸漬して、1回目の酸処理を行った。
【0028】
次に、アルカリ性の亜鉛置換液(250mL/LのMCT−17(上村工業株式会社製)を含む水溶液)を20℃に保持し、この亜鉛置換液にAl−Cu接合体を20秒間浸漬して、1回目のジンケート処理を行った後、Al−Cu接合体を水洗した。
【0029】
次に、1回目の酸処理と同じ(25℃に保持した)過硫酸ナトリウム水溶液にAl−Cu接合体を1分間浸漬して、2回目の酸処理を行った。
【0030】
次に、1回目のジンケート処理と同じ(20℃に保持した)亜鉛置換液にAl−Cu接合体を40秒間浸漬して、2回目のジンケート処理を行った後、Al−Cu接合体を水洗した。
【0031】
次に、無電解ニッケル−リンめっき液(150mL/LのニムデンKLP−1−MM(上村工業株式会社製)と60mL/LのニムデンKLP−1−MA(上村工業株式会社製)含む水溶液)を90℃に保持し、この無電解ニッケルめっき液に前処理後のAl−Cu接合体を20分間浸漬して、Al−Cu接合体の表面にニッケル−リン合金めっき皮膜を形成した。
【0032】
このようにしてニッケル−リン合金めっきを施したAl−Cu接合体の銅板上のめっき皮膜の表面粗さ(ISO 4287−1997)で規定される算術平均粗さ)Raを求めたところ、0.16μmであった。この表面粗さは、表面粗さ測定機(株式会社小坂研究所製のサーフコーダSE4000)を用いて、測定長さ2.5mm、送り速さ0.1mm/s、カットオフ値0.8mmで測定した。
【0033】
また、Al−Cu接合体の表面に形成しためっき皮膜の密着性について、JIS H8504に準じてクロスカットテープピーリング試験を行って、めっき皮膜の剥離の有無を目視によって評価したところ、Al−Cu接合体のアルミニウム部材と銅部材の表面のいずれも、めっき皮膜の剥離はなく、めっき皮膜の密着性が良好であった。
【0034】
また、Al−Cu接合体の銅板上のニッケル−リン合金めっき皮膜上に(厚さ0.6mmのアルミナからなるセラミックス基板の両面に厚さ0.3mmのタフピッチ銅板が直接接合した)銅−セラミックス接合基板の一方の銅板を半田付けしたところ、半田ボイドや半田はじきの発生はなかった。
【0035】
[実施例2]
2回目の酸処理と2回目のジンケート処理を行わなかった以外は、実施例1と同様の方法によりニッケル−リン合金めっきを施したAl−Cu接合体について、実施例1と同様の方法により、Al−Cu接合体の銅板上の表面粗さRaを求めるとともに、めっき皮膜の密着性を評価し、半田ボイドと半田はじきの有無を確認した。その結果、銅板上のめっき皮膜の表面粗さRaは0.18μmであり、Al−Cu接合体のアルミニウム部材と銅部材の表面のいずれも、めっき皮膜の剥離はなく、めっき皮膜の密着性が良好であり、半田ボイドや半田はじきの発生もなかった。
【0036】
[比較例1]
実施例1と同様の方法によりAl−Cu接合体を得た後、銅部材について一般的に行われている前処理(電解脱脂および活性化処理)と無電解ニッケルめっきを行った。すなわち、70℃に保持したアルカリ性の脱脂液にAl−Cu接合体とSUS板を入れ、Al−Cu接合体を陽極、SUS板を陰極として、電圧5Vで30秒間電解脱脂し、水洗した後、フッ化物を含む硫酸溶液に室温で30秒間浸漬する活性化処理を行い、その後、実施例1と同様の方法により、Al−Cu接合体の表面にニッケル−リン合金めっき皮膜を形成した。
【0037】
このようにしてニッケル−リン合金めっきを施したAl−Cu接合体について、実施例1と同様の方法により、Al−Cu接合体の銅板上のめっき皮膜の表面粗さRaを求めるとともに、めっき皮膜の密着性を評価し、半田ボイドと半田はじきの有無を確認した。その結果、銅板上のめっき皮膜の表面粗さRaは0.16μmであり、半田ボイドや半田はじきの発生もなかったが、Al−Cu接合体のアルミニウム部材と銅部材の表面のいずれも、めっき皮膜の剥離があり、めっき皮膜の密着性が良好でなかった。
【0038】
[比較例2]
実施例1と同様の方法により、Al−Cu接合体の表面の脱脂処理とエッチング処理を行った後、Al−Cu接合体を、硝酸溶液(500mL/Lの硝酸を含む水溶液)に室温で30秒間浸漬して、1回目の酸処理を行った。
【0039】
次に、1回目の酸処理後のAl−Cu接合体を、実施例1と同様の方法により、亜鉛置換液に浸漬して、1回目のジンケート処理を行った後、Al−Cu接合体を水洗した。
【0040】
次に、1回目のジンケート処理後のAl−Cu接合体を1回目の酸処理と同じ硝酸溶液に室温で30秒間浸漬して、2回目の酸処理を行った。
【0041】
次に、2回目の酸処理後のAl−Cu接合体を、実施例1と同様の方法により、亜鉛置換液に浸漬して、2回目のジンケート処理を行った後、Al−Cu接合体を水洗した。
【0042】
次に、実施例1と同様の方法により、Al−Cu接合体の表面にニッケル−リン合金めっき皮膜を形成した。
【0043】
このようにしてニッケル−リン合金めっきを施したAl−Cu接合体について、実施例1と同様の方法により、Al−Cu接合体の銅板上のめっき皮膜の表面粗さRaを求めるとともに、めっき皮膜の密着性を評価し、半田ボイドと半田はじきの有無を確認した。その結果、Al−Cu接合体のアルミニウム部材と銅部材の表面のいずれも、めっき皮膜の剥離はなく、めっき皮膜の密着性は良好であったが、銅板上のめっき皮膜の表面粗さRaが0.32μmと大きく、半田ボイドや半田はじきの発生があった。
【0044】
[比較例3]
実施例1と同様の方法により、Al−Cu接合体の表面の脱脂処理とエッチング処理を行った後、酸性の亜鉛置換液(500mL/LのAZ−501(上村工業株式会社製)を含む水溶液)にAl−Cu接合体を室温で2分間浸漬して、ジンケート処理を行い、その後、Al−Cu接合体を水洗した後、実施例1と同様の方法により、Al−Cu接合体の表面にニッケル−リン合金めっき皮膜を形成した。
【0045】
このようにしてニッケル−リン合金めっきを施したAl−Cu接合体について、実施例1と同様の方法により、Al−Cu接合体の銅板上のめっき皮膜の表面粗さRaを求めるとともに、めっき皮膜の密着性を評価し、半田ボイドの有無を確認した。その結果、銅板上のめっき皮膜の表面粗さRaは0.15μmと小さかったが、Al−Cu接合体のアルミニウム部材と銅部材の表面のいずれも、めっき皮膜の剥離があり、めっき皮膜の密着性が良好でなく、半田ボイドと半田はじきの発生の有無を評価することができなかった。