(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記制御部は、前記選択された低雑音増幅器に共に対応する1次インダクタと第1の可変容量素子とが、前記選択された低雑音増幅器に入力された信号の周波数において並列共振回路を構成するように、前記対応する第1の可変容量素子の容量値を設定するように構成される、請求項3に記載の半導体装置。
前記制御部は、前記選択された低雑音増幅器に対応する第1の可変容量素子を除く残余の第1の可変容量素子の容量値を、設定可能な最小値に設定するように構成される、請求項4に記載の半導体装置。
前記制御部は、前記選択された低雑音増幅器に対応する1次インダクタと、前記選択された低雑音増幅器に接続されていない非対応の1次インダクタとの間に接続された第2および第3の可変量素子が、前記非対応の1次インダクタと共に所定の周波数で直列共振回路を構成するように、前記第2および第3の可変容量素子の容量値を設定するように構成される、請求項6に記載の半導体装置。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、各実施形態について図面を参照して詳しく説明する。なお、同一または相当する部分には同一の参照符号を付して、その説明を繰返さない。
【0012】
<第1の実施形態>
[無線通信システムの概略構成]
図1は、第1の実施形態によるRFICが内蔵された無線通信端末の構成を示すブロック図である。
図1の無線通信システム1は、たとえば、携帯電話機に用いられる。無線通信システム1は、RFIC12と、ベースバンドIC(Integrated Circuit)10と、HPA(High Power Amplifier:高出力増幅器)モジュール16と、送信用整合回路14_1〜14_nと、受信用整合回路18_1〜18_nと、フロントエンドモジュール(FEM:Front End Module)20と、アンテナ22とを含む。
【0013】
(RFIC)
図1に示すように、半導体装置としてのRFIC12は、受信部24、送信部26、およびデジタルRF(Radio Frequency)インターフェース(DigRF IF)28を含む。
【0014】
受信部24は、アンテナ22で受信した基地局等からの受信RF信号を、ローカルキャリア信号(局部発振信号)を使ってより低周波数のアナログ受信ベースバンド信号に変換する(ダウンコンバートする)。受信部24は、さらに、アナログ受信ベースバンド信号をAD(Analog-to-Digital)変換してデジタル受信ベースバンド信号を生成する。
【0015】
送信部26は、デジタル送信ベースバンド信号をDA(Digital-to-Analog)変換してアナログ送信ベースバンド信号を生成する。送信部26は、さらに、ローカルキャリア信号を使ってそのアナログ送信ベースバンド信号をより高周波数の送信RF信号に変換する(アップコンバートする)。そして、送信部26は、アンテナ22を介して基地局等に送信RF信号を無線送信する。
【0016】
デジタルRFインターフェース28は、RFIC12とベースバンドIC10との間のインターフェースであり、MIPI Alliance(MIPI:Mobile Industry Processor Interface)により策定されたインターフェース規格に従ったものである。
【0017】
RFIC12は、さらに、各々RF信号を出力する複数の出力ポートTOUT1〜TOUTnと、各々RF信号を受け取る複数の入力ポートRIN1〜RINnを有する。各入力ポートRINは正側端子と負側端子とを含み、この端子対に差動の受信RF信号が入力される。各出力ポートTOUTは、シングルエンドの送信RF信号を出力するための出力端子を含む。出力ポートTOUTと入力ポートRINとは、(TOUT1,RIN1),・・・,(TOUTn,RINn)のようにペアをなしており、RFICが使用されるバンド(周波数帯)に応じて、使用される出力ポートおよび入力ポートのペアが決められている。
【0018】
(ベースバンドIC)
ベースバンドIC10は、RFIC12から受け取ったデジタル受信ベースバンド信号に対して、デジタル復調その他の信号処理を行ない、受信データ(音声、画像またはその他のデータ)を生成する。ベースバンドIC10は、さらに、送信データ(音声、画像またはその他データ)にデジタル変調その他の信号処理を行ってデジタル送信ベースバンド信号を生成し、RFIC12に転送する。
図1には図示しないが無線通信システム1が搭載された携帯電話機は、アプリケーションプロセッサ、メモリ、スピーカ、マイクロホン、入力キー、液晶モニタなどを含み、それぞれがベースバンドIC10との間で信号のやりとりを行なう。
【0019】
(HPAモジュール)
HPAモジュール16は、出力ポートTOUT1〜TOUTnにそれぞれ対応して設けられた複数のHPA(高出力増幅器:High Power Amplifier)16_1〜16_nを含む。各HPAは、対応の出力ポートから整合回路を介して受け取った送信RF信号を増幅する。各HPAは1つ半導体チップで構成されており、これらはパッケージ内にモジュール化されている。
【0020】
(フロントエンドモジュール)
フロントエンドモジュール20は、入力・出力ポートペア(RIN1,TOUT1)〜(RINn,TOUTn)のうち、選択された1組の入力・出力ポートペア(RINi,TOUTi)(iは1以上n以下の整数)と、アンテナ22とを接続する。
【0021】
(整合回路)
送信用整合回路14_1〜14_nは、出力ポートTOUT1〜TOUTnと複数のHPA16_1〜16_nとの間にそれぞれ挿入される。各送信用整合回路は、送信部26の出力インピーダンスとHPAの入力インピーダンスと間の整合をとる。
図1では、整合回路14_1〜14_nはRFIC12に外付けされているが、RFIC12に内蔵することもできる。
【0022】
受信用整合回路18_1〜18_nは、入力ポートRIN1〜RINnとフロントエンドモジュール20との間に挿入される。各受信用整合回路は、フロントエンドモジュール20の出力インピーダンスと受信部24の入力インピーダンスとの間の整合をとる。
図1では、整合回路18_1〜18_nはRFIC12に外付けされているが、RFIC12に内蔵することもできる。
【0023】
[フロントエンドモジュールの詳細構成]
図2は、
図1のフロントエンドモジュールおよび受信部のさらに詳しい構成を示す図である。
【0024】
図2を参照して、フロントエンドモジュール20は、RFスイッチ30_1〜30_nとデュプレクサ32_1〜32_nとを含む。RFスイッチ30_1〜30_nは、アンテナ22とn個のデュプレクサ32_1〜32_nとの接続を選択的に切り替える。
【0025】
デュプレクサ32_1〜32_nは、入力・出力ポートペア(RINi,TOUTi)(iは1以上n以下の整数)にそれぞれ対応して設けられる。各デュプレクサは、対応する出力ポートTOUTから出力された送信RF信号を通過させるバンドパスフィルタと、アンテナ22で受信した信号のうち対応する入力ポートRINに供給する受信RF信号を通過させるバンドパスフィルタとを含む。各デュプレクサ32を構成する受信用のバンドパスフィルタは差動の受信RF信号を対応する周波数帯域用の整合回路18に出力する。
【0026】
[受信部の詳細構成]
図2を参照して、受信部24は、n個のLNA(低雑音増幅器)40_1〜40_nと、n入力1出力のトランスフォーマ(変圧器)42と、直交復調器44と、アクティブフィルタ46,48と、AD変換器(ADC:Analog to Digital Converter)50とを含む。
【0027】
各LNA40は、対応の入力ポートRINから入力された対応の周波数帯域の差動RF信号を増幅し、増幅された差動RF信号を出力する完全差動増幅器(Fully-Differential Amplifier)である。
【0028】
トランスフォーマ42は、n個の1次インダクタL1〜Lnと、各1次インダクタに磁気的に結合された1個の2次インダクタLoとを含む。1次インダクタL1〜LnはLNA40_1〜40_nにそれぞれ対応し、各1次インダクタは対応するLNAの差動出力ノード間に接続される。1次インダクタL1〜Lnのいずれか1つに入力された信号は電磁誘導によって2次インダクタLoに伝達される。
【0029】
直交復調器44は、第1および第2のミキサ(mixer)と、図示しない局部発振器と、図示しない1/2分周器とを含む。1/2分周器は、局部発振器から出力された信号から互いに90度位相が異なる第1および第2の局部発振信号を生成する。第1のミキサは、2次インダクタLoからの信号と第1の局部発振信号とを混合する。同様に、第2のミキサは、2次インダクタLoからの信号と第2の局部発振信号とを混合する。
【0030】
アクティブフィルタ46は、第1のミキサの出力信号のうち高周波分を除去する。これによって、アナログ受信ベースバンド信号としてのI信号(同相信号)が生成される。同様に、アクティブフィルタ48は、第2のミキサの出力信号のうち高周波分を除去する。これによって、アナログ受信ベースバンド信号としてのQ信号(直交信号)が生成される。I信号およびQ信号はADC50に入力されることによってデジタル信号に変換される。
【0031】
なお、上記では、受信部24がダイレクトコンバージョン方式である場合を示したが、受信部24をスーパーヘテロダイン方式によって構成することも可能である。
【0032】
[トランスフォーマのより詳細な構成]
図3は、
図2のトランスフォーマ42のより詳細な構成を示す回路図である。
図3を参照して、トランスフォーマ42は、1次インダクタL1〜Lnにそれぞれ並列に接続された可変容量素子C1〜Cnをさらに含む。後述するように、各可変容量素子は対応する1次インダクタとともに受信RF信号の周波数で並列共振回路を構成する。
【0033】
1次インダクタL1〜Lnの各中点は電源電圧VDDを与えるノード(以下、電源ノードVDDとも記載する)に接続される。2次インダクタLoの両端は直交復調器44と接続される。2次インダクタLoと直交復調器44との間には容量素子52P,52Mが接続される。さらに、2次インダクタLoの中点は接地電位VSSを与えるノード(以下、接地ノードVSSとも称する)に接続される。
【0034】
容量素子52P,52Mは、直交復調器44のバイアス電圧と無関係に2次インダクタLoの電位を設定するために設けられているが、直交復調器44の回路構成によっては必要ない場合もある。なお、
図3の場合、2次インダクタLoの中点を電源ノードVDDに接続するようにしてもよい。
【0035】
LNA40_1〜40_nでは、受信RF信号の周波数帯域に応じて選択的に1つのLNAが活性化され、その他のLNAは非活性化される。LNAの活性化および非活性化の制御は、デジタルRFインターフェース28またはベースバンドIC10(両者を制御部と総称する)によって実行される。活性化状態のLNAは入力信号を増幅し、非活性化状態のLNAは入力信号を遮断する。
【0036】
各可変容量素子は、対応するLNAが活性化状態である場合には、受信RF信号の周波数において、対応する1次インダクタとともに並列共振回路を構成するように調整される。これによって、2次インダクタLoに伝達されるRF電流信号の強度を増大させることができる。一方、各可変容量素子は、対応するLNAが非活性化状態である場合には、設定可能な容量値のうちで最も小さい値に設定される。
【0037】
[LNAの構成例]
図4は、
図2および
図3に示すLNAの構成例を示す回路図である。
図4を参照して、LNA40は、カスコード差動増幅回路74と、第1および第2のバイアス設定回路62,70と、容量素子56,58と、正極側出力ノードAPと、負極側出力ノードAMとを含む。
【0038】
カスコード差動増幅回路74は、NMOS(N-channel Metal Oxide Semiconductor)トランジスタM11〜M16と、ディジェネレーション用のインダクタLSとを含む。NMOSトランジスタM11,M12は差動対を構成し、それぞれのゲートは容量素子56,58を介して入力ポートRIN(正側端子RINP,負側端子RINM)と接続される。NMOSトランジスタM13,M15は、この並び順でNMOSトランジスタM11のドレインと出力ノードAMとの間に直列に接続される。同様に、NMOSトランジスタM14,M16は、この並び順でNMOSトランジスタM12のドレインと出力ノードAPとの間に直列に接続される。出力ノードAP,AM間には、対応する1次インダクタと可変容量素子とが接続される。インダクタLSは、NMOSトランジスタM11,M12のソース間に接続される。インダクタLSの中点が接地ノードVSSに接続される。
【0039】
バイアス設定回路62は、電流源I1と、MOSトランジスタなどによって構成されるスイッチ素子SW3,SW4と、ダイオード接続されたNMOSトランジスタM17と、抵抗素子64,66とを含む。電流源I1、スイッチ素子SW3、およびNMOSトランジスタM17は、この並び順で、電源電位VDDが与えられる電源線60と接地ノードVSSとの間に直列に接続される。NMOSトランジスタM17のゲートは、抵抗素子64を介してNMOSトランジスタM11のゲートに接続されるともに、抵抗素子66を介してNMOSトランジスタM12のゲートに接続される。NMOSトランジスタM12のゲートは、さらに、スイッチ素子SW4を介して接地ノードVSSと接続される。
【0040】
バイアス設定回路70は、MOSトランジスタなどによって構成されるスイッチ素子SW1,SW2を含む。スイッチ素子SW1,SW2は、この並び順で電源線60と接地ノードVSSとの間に直列に接続される。スイッチ素子SW1,SW2の接続ノード72は、NMOSトランジスタM13〜M16の各ゲートに接続される。
【0041】
上記構成において、スイッチ素子SW1〜SW4の開閉および
図3の対応する可変容量素子の容量値は、デジタルRFインターフェース28またはベースバンドIC10からの制御信号に従って制御される。スイッチ素子SW1,SW3をオン状態にしかつスイッチ素子SW2,SW4をオフ状態にすることによってLNA40は活性化される。逆に、スイッチ素子SW1,SW3をオフ状態にしかつスイッチ素子SW2,SW4をオン状態にすることによって、LNA40は非活性化される。
【0042】
LNA40が活性化状態の場合、NMOSトランジスタM11,M12はソース接地増幅回路として動作し、NMOSトランジスタM13〜M16はゲート接地増幅回路として動作する。具体的に、NMOSトランジスタM11,M12は、入力ポートRINから入力された差動のRF電圧信号を信号増幅しながら電流信号に変換する。信号増幅された差動のRF電流信号は、NMOSトランジスタM13〜M16によって伝達され、出力ノードAP,AMからトランスフォーマ42の対応する1次インダクタに出力される。対応する1次インダクタにRF電流信号が流れることによって電磁誘導が生じ、1次インダクタと磁気結合している2次インダクタLoにRF電流信号が伝達される。
【0043】
なお、前述したように、LNA40が活性化状態の場合、対応する可変容量素子と1次インダクタとが並列共振回路を構成するように、対応の可変容量素子の容量値が調整される。これによって、2次インダクタLoが伝達されるRF電流信号の振幅を増大させることができる。
【0044】
一方、LNA40が非活性化状態の場合、NMOSトランジスタM11〜M16のゲートには接地電位が入力されるので、これらのNMOSトランジスタM11〜M16は全てオフ状態になる。この結果、LNA40による信号増幅動作ができない。
【0045】
[ミキサおよびアクティブフィルタの構成例]
図5は、
図2に示す直交復調器を構成するミキサとアクティブフィルタとの構成例を示す回路図である。
図5には、I信号側のミキサ45Iとアクティブフィルタ46との構成が示されている。Q信号側のミキサおよびアクティブフィルタ48の構成も同様である。
【0046】
図5を参照して、ミキサ45Iは、いわゆるギルバートセルミキサを変形したものである。具体的に、ミキサ45Iは、差動入力ノードRFP,RFMと、差動入力ノードLOP,LOMと、差動出力ノードMIXP,MIXMと、NMOSトランジスタM21〜M24を含む。差動入力ノードRFP,RFMは、トランスフォーマ42の2次インダクタに接続されることによって差動のRF電流信号が入力される。差動入力ノードLOP,LOMは、差動の局部発振信号が入力される。
【0047】
NMOSトランジスタM21,M22は、差動対を構成する。NMOSトランジスタM21,M22のソースは、正極側の入力ノードRFPに接続されることによって、正極側のRF電流信号が共通に入力される。NMOSトランジスタM21,M22のゲートは、差動入力ノードLOP,LOMにそれぞれ接続されることによって差動の局部発振信号が入力される。局部発振信号の振幅を比較的大きくすることによって、NMOSトランジスタM21,M22は相補的にオンおよびオフするスイッチとして機能する。NMOSトランジスタM21,M22のドレインは差動出力ノードMIXP,MIXMにそれぞれ接続される。
【0048】
同様に、NMOSトランジスタM23,M24は、差動対を構成する。NMOSトランジスタM23,M24のソースは、負極側の入力ノードRFMに接続されることによって、負極側のRF電流信号が共通に入力される。NMOSトランジスタM23,M24のゲートは、差動入力ノードLOP,LOMにそれぞれ接続されることによって差動の局部発振信号が入力される。局部発振信号の振幅を比較的大きくすることによって、NMOSトランジスタM23,M24は相補的にオンおよびオフするスイッチとして機能する。NMOSトランジスタM23,M24のドレインは差動出力ノードMIXM,MIXPにそれぞれ接続される。
【0049】
上記のミキサ45Iの構成によって、差動出力ノードMIXP,MIXNからは、差動のRF電流信号と差動の局部発振信号とを乗算することよって得られる電流信号が出力される。
【0050】
アクティブフィルタ46は、差動増幅回路47と、容量素子80,84と、抵抗素子82,88とを含む。差動増幅回路47は、NMOSトランジスタM25,M26と、PMOS(P-channel MOS)トランジスタM27,M28と、抵抗素子94,96と、電流源I2と、差動信号が出力される差動出力ノードBBP,BBMとを含む。
【0051】
NMOSトランジスタM25,M26は差動対として用いられる。NMOSトランジスタM25,M26のソースは、共通の電流源I2を介して接地ノードVSSに接続される。NMOSトランジスタM25,M26のドレインは、それぞれ負荷トランジスタとして用いられるPMOSトランジスタM27,M28を介して電源線60と接続される。PMOSトランジスタM27のドレイン90とPMOSトランジスタM28のドレインとの間には抵抗素子94,96が直列に接続される。抵抗素子94,96の接続ノード98は、PMOSトランジスタM27,M28のゲートに接続される。これによって、PMOSトランジスタにはバイアス電位が与えられる。
【0052】
出力ノードBBPは、PMOSトランジスタM28のドレイン92に接続されるとともに、容量素子84と抵抗素子88との並列回路を介してミキサ45Iの出力ノードMIXMに接続される。同様に、出力ノードBBMは、PMOSトランジスタM27のドレイン90に接続されるとともに、容量素子80と抵抗素子82との並列回路を介してミキサ45Iの出力ノードMIXPに接続される。
【0053】
以上によって、差動増幅回路47の差動出力電圧が容量素子と抵抗素子との並列回路を介して入力側にネガティブフィードバックされるローパスフィルタが構成される。ローパスフィルタのカットオフ周波数は容量素子80,84の容量値と抵抗素子82,88の抵抗値との積の平方根の逆数に応じて決まる。
【0054】
[トランスフォーマのレイアウト例]
図6は、
図2および
図3で示したトランスフォーマのレイアウト例を模式的に示す平面図である。
図6に示す例では、2個の1次インダクタL1,L2と2次インダクタLoとによってトランスフォーマ42が構成されている。2次インダクタLoの内周側に近接して1次インダクタL1が設けられ、外周側に近接して1次インダクタL2が設けられる。
図6では、各インダクタの巻数は1であるが、複数巻としたほうが好ましい。複数のインダクタが互いに基板垂直方向に積層された構造も可能である。トランスフォーマ42では、このように複数のインダクタが互いに近接または積層されて設けられているために、レイアウト面積を比較的小さくすることができる。
【0055】
[トランスフォーマの設計について]
次に、
図2および
図3で示したトランスフォーマ42の設計について述べる。
【0056】
図3で説明したように、n個の1次インダクタL1〜Lnと並列にn個の可変容量素子C1〜Cnがそれぞれ接続されている。n個の可変容量素子C1〜Cnの容量値は互いに独立に調整可能である。さらに、n個のインダクタL1〜Lnは、n個のLNA40_1〜40_nの出力ノード(AP1,AM1)〜(APn,AMn)とそれぞれ接続されている。
【0057】
第i番目(1≦i≦n)のLNA40_iを活性化する場合、LNA40_iに入力される受信RF信号の周波数において対応する1次インダクタLiと可変容量素子Ciとが並列共振回路を構成するように可変容量素子Ciの容量値が設定される。その他の可変容量素子C1〜Ci−1,Ci+1〜Cnの容量値は設定可能な値のうちの最小値に設定される。
【0058】
図7は、トランスフォーマの交流等価回路を示す図である。
図7において、第i番目のLNA40_iの出力ノードをAP,ANとし、LNA40_iの出力側の寄生容量をCpとする。さらに、LNA40_iからトランスフォーマ42に入力される電流をIinとし、1次インダクタLiを流れる電流をIaとし、2次インダクタLoから出力される電流をIoutとする。2次インダクタLoに接続される回路(直交復調器44など)のインピーダンスをZoとする。なお、以下では簡単のために、可変容量素子Ciの容量値をCiと記載し、1次インダクタLiのインダクタンス値をLiと記載し、2次インダクタLoのインダクタンス値をLoと記載する。入力されるRF電流信号Iinの角周波数をωとし、虚数単位をjと記載する。
【0059】
この場合、トランスフォーマ42の電流利得Iout/Iinは、次式(1)で表される。次式(1)によれば、角周波数ωが次式(2)の関係式を満足するとき、電流利得が最大となる。すなわち、対応する1次インダクタLiと可変容量素子Ciと寄生容量Cpとが並列共振回路を構成する場合に、トランスフォーマ42の電流利得が最大になる。
【0061】
トランスフォーマ42を構成する1次インダクタL1〜Lnは、独立の素子であるため、任意のインダクタンス値となるように設計することが可能である。したがって、入力ポートRIN1〜RINnに入力される互いに周波数帯域が異なる受信RF信号にそれぞれ対応して並列共振回路を構成するように、1次インダクタL1〜Lnのインダクタンス値および可変容量素子C1〜Cnの容量値の範囲を最適化することができる。この結果、各受信RF信号を増幅する際の電流利得を最大化することができる。
【0062】
図8は、受信部に設けられたLNAの電流利得について説明するための図である。
図8には、各1次インダクタL1〜Lnの各々に入力される受信RF信号の周波数帯域が模式的に示されている。具体的に、1次インダクタL1は周波数f1〜f2の周波数帯域に対応し、1次インダクタL2は周波数f3〜f4の周波数帯域に対応し、1次インダクタLnは周波数f5〜f6の周波数帯域に対応する。
【0063】
たとえば、周波数f1〜f2の周波数帯域に含まれる受信RF信号を増幅する場合には、受信RF信号の周波数で電流利得がピークを有するように、可変容量素子C1の容量値が調整される。他の周波数帯域の受信RF信号についても同様である。以上によって、1つのトランスフォーマ42で多様な周波数範囲に対応することが可能になる。
【0064】
[第1の実施形態の効果]
最初に、トランスフォーマを用いずに、負荷インダクタおよび可変容量素子を共用化した場合の問題点について説明する。この場合、負荷インダクタを共用するLNAの数が増加するにつれて、LNAの出力側に付随する寄生容量の影響も増大する。この寄生容量によって以下の問題が引き起こされる。
【0065】
第1の問題として、可変容量素子の容量値を変化させた際の共振周波数の変動幅が寄生容量の影響で小さくなる。この結果、LNAの広帯域動作が困難になる。たとえば、2.14GHzの周波数帯域と881.5MHzの周波数帯域では、共振周波数の変更が困難であるために、これらの周波数帯域用の負荷インダクタを共用化することができない。言い換えると、比較的近接した周波数帯域の信号を増幅する場合のみしか負荷インダクタスを共用することができない。
【0066】
第2の問題として、寄生容量が増えると、並列共振したときの1次インダクタの端部でのインピーダンスが減少する。これによって、LNAの利得およびノイズ特性が低下してしまう。この場合に、LNAの利得を増加させてノイズ特性を向上させるためには、LNAのトランスコンダクタンスを増加させる必要がある。この結果、消費電流が大幅に増加してしまう。このため、負荷インダクタを共用可能なLNAの数には制限があり、結果として受信回路の面積の削減が困難になる。
【0067】
以上の問題点に対して、第1の実施形態によるRFICの受信部では、
図2または
図3に示すように、n入力1出力のトランスフォーマ42の1次インダクタL1〜Lnがn個のLNA40_1〜40_nの負荷インダクタとしてそれぞれ用いられる。この場合、トランスフォーマ42の1次インダクタL1〜Lnと2次インダクタLoとは互いに近接して配置されるので、面積の削減が可能になる。
【0068】
さらに、各1次インダクタには、対応するLNAの出力側の寄生容量が主として影響するだけであるので、各LNAの利得およびノイズ特性が劣化しない。また、各LNAの負荷インダクタ(すなわち、対応する1次インダクタ)のインダクタンス値を個別に決めることができるので、各入力ポートに入力される受信RF信号ごとに電流利得を容易に最適化できる。
【0069】
なお、
図3および
図4に示すLNAの回路では、ディジェネレーション用のインダクタLSをLNAごとに個別に設けている。これに代えて、ディジェネレーション用のインダクタLSを複数のLNAで共有化してもよく、この場合には、さらに、回路面積を削減することができる。
【0070】
<第2の実施形態>
[受信部の回路構成]
図9は、第2の実施形態によるRFICの受信部の一部の回路構成を示す図である。
図9は、第1の実施形態の
図3に対応するものである。
図9の例では、2個のLNA40_1,40_2と、2入力1出力のトランスフォーマ42とを備えた場合を示している(すなわち、
図3でn=2の場合)。
【0071】
図9に示すように、第2の実施形態によるトランスフォーマ42は、LNA40_1,40_2の正側出力ノードAP1,AP2間に接続された可変容量素子CP12と、LNA40_1,40_2の負側出力ノードAM1,AM2間に接続された可変容量素子CM12とがさらに設けられている点で、
図3に示す第1の実施形態の場合と異なる。可変容量素子CP12,CM12の容量値は、
図1のデジタルRFインターフェース28またはベースバンドIC10(制御部と総称する)によって制御される。
図9のその他の点は
図3の場合と同じであるので、同一または相当する部分には同一の参照符号を付して説明を繰返さない。
【0072】
[回路動作]
次に、
図9に示す受信部の回路動作について説明する。第1の実施形態と同様に2個のLNA40_1,40_2のうち1つが活性となり、他方は非活性となる。LNAの活性および非活性の切替え方法は第1の実施形態の
図4で説明したとおりである。
【0073】
以下、
図9において、LNA40_1が非活性状態であり、LNA40_2が活性状態の場合について説明する。この場合、1次インダクタL1は無信号入力状態であり、1次インダクタL2に信号が入力される。第1の実施形態で説明したように、可変容量素子C2は、1次インダクタL2とともに入力信号の周波数で並列共振回路を構成するように、その容量値が設定される。可変容量素子C1の容量値は、設定可能な値の最小値に設定される(この場合、可変容量素子C1を無視することができる)。
【0074】
図10は、
図9において、第2番目の入力ポートに受信RF信号が入力される場合の等価回路を示す図である。
【0075】
図10を参照して、入力ポートRIN2(正側端子RINP2,負側端子RINM2)に差動の受信RF信号が入力される。この場合、
図1のデジタルRFインターフェース28またはベースバンドIC10(両者を総称して制御部と称する)の制御に従って、LNA40_2が活性化される。LNA40_2と接続された1次インダクタL2が、信号伝達経路として使用される。
【0076】
1次インダクタL2と可変容量素子C2とは受信RF信号の周波数で並列共振回路150を構成する。これによって、対応する周波数範囲において最大電流利得を得ることができる。
【0077】
1次インダクタL1は、2つの可変容量素子CP12,CM12をそれぞれ介してLNA40_2の出力ノードAP2,AM2に接続される。可変容量素子CP12,CM12および1次インダクタL1は帯域除去フィルタ152を構成する。
【0078】
ここで、可変容量素子CP12,CM12の容量値をCp,Cmとしたとき、
1/Cp+1/Cm=1/Cn …(3)
と定義する。そうすると、帯域除去フィルタ152のインピーダンスZnotは、次式(4)で与えられる。次式(4)において、角周波数ωが次式(5)を満たすとき、インピーダンスZnotはゼロになる(すなわち、1次インダクタL1と可変容量素子CP12,CM12とは角周波数ωにおいて直列共振回路を構成する)。このときの周波数をノッチ周波数Fnot=ω/(2・π)と称する。
【0080】
前述の式(1)の場合と同様に、
図10においてトランスフォーマの電流利得Iout/Iinを計算すると、次式(6)が得られる。ただし、2次インダクタLoに接続される回路(直交復調器44など)のインピーダンスZoは、ω・Loに比べて無視できるとしている。次式(6)によれば、角周波数ωが上式(5)を満たすとき(すなわち、回路152が直列共振のとき)、電流利得はゼロになる。各周波数ωが次式(7)を満たすとき(すなわち、回路150が並列共振のとき)、電流利得は最大化される。
【0082】
図11は、
図10の各部のインピーダンスの周波数特性およびトランスフォーマの電流利得の周波数特性を示す図である。具体的に
図11には、
図10の並列共振回路150のインピーダンスZreso、帯域除去フィルタ152のインピーダンスZnot、およびトランスフォーマの電流利得(電流ゲイン)Gcが示されている。
【0083】
図10および
図11を参照して、受信RF信号は、LNA40_2で増幅されるとともに電流信号に変換される。LNA40_2から出力された電流信号は、上記の並列共振回路150と帯域除去フィルタ152とに分流される。並列共振回路150のインピーダンスZresoおよび帯域除去フィルタ152のインピーダンスZnotは、周波数に依存して変化するので、各回路を流れる電流量も周波数に依存して変化する。
【0084】
受信Rf信号の周波数が帯域除去フィルタ152のノッチ周波数Fnot付近のとき、帯域除去フィルタ152のインピーダンスZnotは、並列共振回路150のインピーダンスZresoよりも十分小さい。この場合、LNA40_2から出力された電流信号は、ほぼ帯域除去フィルタ152に流れ、2次インダクタLoから電流信号が出力されない。ノッチ周波数Fnot付近では、電流ゲインGcはほぼ0になり、帯域除去フィルタの特性を示す。
【0085】
一方、ノッチ周波数Fnotの近傍以外の周波数領域では、帯域除去フィルタ152のインピーダンスZnotは、並列共振回路150のインピーダンスZresoに比べて大きくなる。このため、LNA40_2から出力された電流信号は、ほぼ並列共振回路150に流れ、電磁誘導によって2次インダクタLoに電流信号が伝達される。共振周波数Fresoにおいて電流ゲインGcは最大値を有する。
【0086】
[第2の実施形態の効果]
第2の実施形態によるRFICの受信部は、第1の実施形態で説明した効果に加えて、帯域除去フィルタ152よる効果をさらに奏する。以下、
図10の帯域除去フィルタ152よる効果について説明する。
【0087】
第1の効果として、帯域除去フィルタを利用することによって、トランスフォーマの1次インダクタ間の寄生磁気結合の影響を抑圧することができる。
【0088】
図12は、
図10の帯域除去フィルタの効果を説明するための図である。
図12において、太い破線は、帯域除去フィルタがない場合(第1の実施形態の場合)のトランスフォーマの電流利得の周波数特性を示す。太い実線は、帯域除去フィルタある場合(第2の実施形態の場合)のトランスフォーマの電流利得の周波数特性を示す。細い破線は、帯域除去フィルタ単体の周波数特性を示す。
【0089】
トランスフォーマ42では、1次インダクタL1,L2が互いに近接して配置されているので、1次インダクタL1,L2間が磁気結合する。その磁気結合の度合が大きいと、信号無入力の1次インダクタの周波数特性の影響によって、トランスフォーマの電流利得が低下する原因となる。
【0090】
具体的には、
図12の帯域除去フィルタ無しの場合に示されるように、信号無入力状態の1次インダクタの自己共振周波数をFself_oscにおいて電流利得が増加する。ここで、自己共振周波数とは、自己インダクタンスと寄生の線間容量とが共振現象を起こす場合の周波数である。さらに、信号無入力状態の1次インダクタの端部でのインピーダンス増加の影響によって、
図10の並列共振回路150の共振周波数Fresoにおける電流利得が低下してしまう。
【0091】
そこで、
図9の帯域除去フィルタ152のノッチ周波数Fnotが、信号無入力状態の1次インダクタの自己共振周波数Fself_oscに等しくなるように、可変容量素子CP12,CM12の容量値を調整する。
図12の太い実線のグラフで示すように、帯域除去フィルタによって、信号無入力状態の1次インダクタの周波数特性の影響を除去することができるので、共振周波数Fresoでの電流利得が向上する。
【0092】
さらに、第2の効果として、帯域除去フィルタ152を利用することによって、LNAの入力端における妨害波を抑圧することができる。
【0093】
アンテナで受信される所望のRF信号の強度に比べて妨害波の強度が極めて大きい場合がある。妨害波としては、同一チップに搭載されている局部発振回路および/または送信用の電力増幅器からの漏洩信号が考えられる。この非常に強大な妨害波と受信RF信号との両方がRFICの受信部に入力されると、受信部の特性は妨害波の影響により非線形となるために、受信特性が劣化する。
【0094】
そこで、
図10の帯域除去フィルタ152のノッチ周波数Fnotを、妨害波の周波数に合わせることによって、帯域除去フィルタ152によって妨害波が抑圧されるようにする。これによって、LNAよりも後段の回路の線形性を劣化させずに信号処理を行うことができる。
【0095】
[第2の実施形態の変形例]
第2の実施形態において、3個のLNA40_1〜40_3と3入力1出力のトランスフォーマ42とを備えた受信部の場合(すなわち、
図3でn=3の場合)には、
図3の構成と比較して6個の可変容量素子CP12,CP13,CP23,CM12,CM13,CM23が追加される。
【0096】
具体的に、可変容量素子CP12は、LNA40_1の正側出力ノードAP1とLNA40_2の正側出力ノードAP2との間に接続される。可変容量素子CP13は、LNA40_1の正側出力ノードAP1とLNA40_3の正側出力ノードAP3との間に接続される。可変容量素子CP23は、LNA40_2の正側出力ノードAP2とLNA40_3の正側出力ノードAP3との間に接続される。すなわち、可変容量素子CP12,CP13,CP23は、LNA40_1〜40_3の2個ずつ全組合わせ(もしくは、1次インダクタL1〜L3の2個ずつの全組合わせ)にそれぞれ対応して設けられている。
【0097】
同様に、可変容量素子CM12は、LNA40_1の負側出力ノードAM1とLNA40_2の負側出力ノードAM2との間に接続される。可変容量素子CM13は、LNA40_1の負側出力ノードAM1とLNA40_3の負側出力ノードAM3との間に接続される。可変容量素子CM23は、LNA40_2の負側出力ノードAM2とLNA40_3の負側出力ノードAM3との間に接続される。すなわち、可変容量素子CM12,CM13,CM23は、LNA40_1〜40_3の2個ずつ全組合わせ(もしくは、1次インダクタL1〜L3の2個ずつの全組合わせ)にそれぞれ対応して設けられている。
【0098】
たとえば、受信RF信号がLNA40_1に入力された場合には、1次インダクタL1と可変容量素子C1とが受信RF信号が並列共振回路を構成するように、可変容量素子C1の容量値が調整される。さらに、1次インダクタL1と1次インダクタL2との間に接続された可変容量素子CP12,CM12と1次インダクタL2とが所定の周波数(1次インダクタL2の自己共振周波数または妨害波の周波数)で直列共振回路を構成するように、可変容量素子CP12,CM12の容量値が調整される。同様に、1次インダクタL1と1次インダクタL3との間に接続された可変容量素子CP13,CM13と1次インダクタL3とが所定の周波数(1次インダクタL3の自己共振周波数または妨害波の周波数)で直列共振回路を構成するように、可変容量素子CP13,CM13の容量値が調整される。
【0099】
一般にn個のLNA40_1〜40_nとn入力1出力のトランスフォーマ42とを備えた受信部の場合の第2の実施形態による構成を、
図3の構成と比較して説明する。この場合、n個の1次インダクタL1〜Ln(または、n個のLNA40_1〜40_n)の2個ずつの全組合せにそれぞれ対応してn!/2個(n!はnの階乗を表す)の正側可変容量素子が設けられる。同様に、n個の1次インダクタL1〜Ln(または、n個のLNA40_1〜40_n)の2個ずつの全組合せにそれぞれ対応してn!/2個の負側可変容量素子が設けられる。各正側可変容量素子は対応する2個の1次インダクタの正側端子間に(または、対応する2個のLNAの正側出力ノード間に)接続される。各負側可変容量素子は対応する2個の1次インダクタの負側端子間に(または、対応する2個のLNAの負側出力ノード間に)接続される。
【0100】
選択された活性化状態のLNA40_i(ただし、1≦i≦n)に受信RF信号が入力された場合、受信RF信号の周波数でLNA40_iの差動出力ノード間に接続された1次インダクタLiと可変容量素子Ciとは並列共振回路を構成する。さらに、選択されたLNA40_iに対応する1次インダクタLiと、選択された低雑音増幅器に対して非対応の1次インダクタLj(j≠i)との間に接続された正側可変容量素子をCPij(またはCPji)とし、負側可変容量素子をCMij(またはCMji)とする。そうすると、正側可変容量素子CPij(またはCPji)および負側可変容量素子CMij(またはCMji)と1次インダクタLjとは所定の周波数で直列共振回路を構成する。この場合の所定の周波数とは、1次インダクタLjの自己共振周波数またはLNA40_iに入力された妨害波の周波数である。
【0101】
<第3の実施形態>
[第1の回路構成例]
図13は、第3の実施形態によるRFICの受信部の一部の回路構成を示す図である。
図13は、第1の実施形態の
図3に対応するものである。
【0102】
第3の実施形態による受信部は、トランスフォーマ42の各1次インダクタが複数のLNA40によって共有される点で第1の実施形態による受信部と異なる。
図13では一例としてm個のLNA40によって各1次インダクタが共有される場合が示されている。
【0103】
具体的に、
図13の受信部は、n×m個のLNA40と、n×m個の入力ポートRINと、n個の1次インダクタL1〜Lnと、2次インダクタLoと、n個の可変容量素子C1〜Cnとを含む。1次インダクタL1〜Lnと2次インダクタLoとによってn入力1出力のトランスフォーマ42が構成される。
【0104】
図13に示すように、LNA40_i_j(ただし、i,jは1≦i≦n、1≦j≦mを満たす整数)の差動の入力ノードは、入力ポートRIN_i_jを構成する1対の入力端子に接続される。LNA40_i_jの差動の出力ノードは、1次インダクタLiの両端に接続される。したがって、1次インダクタLi(iは1≦i≦nを満たす整数)は、m個のLNA40_i_1,40_i_2,…,40_i_mによって共有される。
図13のその他の点は
図3の場合と同じであるので、同一または相当する部分には同一の参照符号を付して説明を繰返さない。
【0105】
具体的な回路動作は、第1の実施形態の場合と同様である。n×m個の入力ポートRINのうち1つの入力ポートに差動の受信RF信号が入力される。たとえば、入力ポートRIN_1_1にアンテナで受信した信号が入力されたとする。この場合、入力ポートRIN_1_1に対応するLNA40_1_1が活性化され、その他のLNA40_i_j(ただし、i≠1、j≠1)が非活性化される。可変容量素子C1と1次インダクタL1と並列共振回路を構成するように、可変容量素子C1の容量値が調整される。その他の可変容量素子C2〜Cnの容量値は、設定可能な範囲の最小値に設定される。この結果、1次インダクタL1が信号伝達経路となって、2次インダクタL2に受信RF信号が伝達される。
【0106】
上記の受信部の構成によれば、第1の実施形態に比べて、さらに多くの周波数帯域の受信号に対して信号処理が可能になる。この結果、後段の回路の更なる面積削減が可能になる。なお、第3の実施形態を第2の実施形態と組み合わせることも可能である。
【0107】
[第2の回路構成例]
図14は、
図13の変形例を示す回路図である。
図14は、第1の実施形態の
図3に対応するものである。
図14の受信部は、10個のLNA40_1_1〜40_1_6,40_2_1〜40_2_4と、2個の1次インダクタL1,L2と、2次インダクタLoと、2個の可変容量素子C1,C2とを含む。1次インダクタL1,L2と2次インダクタLoとによって2入力1出力のトランスフォーマ42が構成される。
【0108】
図14に示すように、LNA40_1_1〜40_1_6の差動の入力ノードは、入力ポートRIN_1_1〜RIN_1_6にそれぞれ接続される。LNA40_2_1〜40_2_4の差動の入力ノードは、入力ポートRIN_2_1〜RIN_2_4にそれぞれ接続される。LNA40_1_1〜40_1_6の差動の出力ノードは、1次インダクタL1の両端に接続される。すなわち、1次インダクタL1は、LNA40_1_1〜40_1_6によって共有される。LNA40_2_1〜40_2_4の差動の出力ノードは、1次インダクタL2の両端に接続される。すなわち、1次インダクタL2は、LNA40_2_1〜40_2_4によって共有される。
【0109】
さらに、LNA40_1_1とLNA40_1_2とは、ディジェネレーション用のインダクタLS1を共有化している。LNA40_1_3とLNA40_1_4とは、ディジェネレーション用のインダクタLS2を共有化している。LNA40_1_5とLNA40_1_6とは、ディジェネレーション用のインダクタLS3を共有化している。LNA40_2_1〜40_2_4は、ディジェネレーション用のインダクタLS4を共有化している。
【0110】
このように、ディジェネレーション用のインダクタを共有化することによって、回路面積をさらに削減することができる。なお、
図14のその他の点は
図3と同様であるので、同一または相当する部分には同一の参照符号を付して説明を付して説明を繰返さない。
【0111】
図15は、
図14の一部のLNAの回路構成を示す図である。
図15には、ディジェネレーション用のインダクタLS1を共有化しているLNA40_1_1とLNA40_1_2の回路構成とが示されている。他のインダクタLS2〜LS4の各々を共有しているLNAの構成も
図15の場合と同様である。
【0112】
図15を参照して、LNA40_1_1,40_1_2の各々の回路構成は、ディジェネレーション用のインダクタLS1が共有化されている点を除いて
図4で説明したLNA40の回路構成と同じである。具体的に、LNA40_1_1の各構成要素の参照符号は、
図4のLNA40の対応する構成要素の参照符号の末尾に「A」を付したものとなっている。LNA40_1_2の各構成要素の参照符号は、
図4のLNA40の対応する構成要素の参照符号の末尾に「B」を付したものとなっている。
【0113】
LNA40_1_1において、NMOSトランジスタM11Aのソースは、インダクタLS1の一端(ノードSP1)に接続される。NMOSトランジスタM12Aのソースは、インダクタLS1の他端(ノードSM1)に接続される。NMOSトランジスタM15Aのドレインは
図14のノードAM1に接続され、NMOSトランジスタM16Aのドレインは
図14のノードAP1に接続される。
【0114】
同様に、LNA40_1_2において、NMOSトランジスタM11Bのソースは、インダクタLS1の一端(ノードSP1)に接続される。NMOSトランジスタM12Bのソースは、インダクタLS1の他端(ノードSM1)に接続される。NMOSトランジスタM15Bのドレインは
図14のノードAM1に接続され、NMOSトランジスタM16Bのドレインは
図14のノードAP1に接続される。
【0115】
<第4の実施形態>
[受信部の回路構成]
図16は、第4の実施形態によるRFICの受信部の構成を示すブロック図である。
図16は、第1の実施形態の
図2に対応するものである。
図16には、RFIC12Aの他に、受信用整合回路18_1〜18_n、フロントエンドモジュール20、およびアンテナ22が示されている。
【0116】
図16のRFIC12Aの受信部24Aは、n個のLNA40_1〜40_nに代えて1個のLNA40Aが設けられている点で
図2の受信部24と異なる。さらに、
図16の受信部24Aは、LNA40Aがトランスフォーマ42の後段に配置されている点で
図2の受信部24と異なる。
【0117】
具体的に、トランスフォーマ42を構成する1次インダクタL1〜Lnは、それぞれ入力ポートRIN1〜RINnの入力端子対に接続される。2次インダクタLoは、LNA40Aの差動入力ノードに接続される。LNA40Aの差動出力ノードは直交復調器44に接続される。
図16のその他の点は
図2の場合と同じであるので、同一または相当する部分には同一の参照符号を付して説明を繰返さない。
【0118】
図17は、
図16のトランスフォーマおよびLNAのより詳細な構成を示す回路図である。
図17を参照して、トランスフォーマ42は、1次インダクタL1〜Lnにそれぞれ並列に接続された可変容量素子C1〜Cnをさらに含む。第1〜第3の実施形態の場合と同様に、各一次インダクタは、受信信号が入力されている場合に対応の可変容量素子とともに並列共振回路を構成する。
【0119】
LNA40Aは、カスコード接続されたゲート接地回路として構成される。具体的に、LNA40Aは、NMOSトランジスタM31〜M34と、負荷インダクタLDと、可変容量素子CDと、出力ノードAP,AMとを含む。負荷インダクタLDの中点は電源線60に接続される。
【0120】
NMOSトランジスタM31,M33は、この並び順で、2次インダクタLoの一端(ノードSP)と負荷インダクタLDの一端(ノードDP)との間に直列に接続される。NMOSトランジスタM32,M34は、この並び順で、2次インダクタLoの他端(ノードSM)と負荷インダクタLDの他端(ノードDM)との間に直列に接続される。NMOSトランジスタM31,M32のゲートにはバイアス電圧Vbが供給される。NMOSトランジスタM33,M34のゲートは電源線60に接続される。NMOSトランジスタM33,M34のドレインは、それぞれ出力ノードAP,AMに接続される。
【0121】
可変容量素子CDは、負荷インダクタLDと並列に接続される。可変容量素子CDと負荷インダクタLDとが受信RF信号の周波数で並列共振回路を構成するように、可変容量素子CDの容量値が調整される。
【0122】
[回路動作]
次に、
図17の回路の動作について説明する。n個の入力ポートRIN1〜RINnのうち1つの入力ポートに受信RF信号が入力される。可変容量素子C1〜Cnの容量値は、
図16のデジタルRFインターフェース28またはベースバンドIC10(両者を総称して制御部と称する)によって制御される。具体的に、受信RF信号が入力された入力ポートRINに対応する1次インダクタと可変容量素子とが受信RF信号の周波数で並列共振回路を構成するように、対応する可変容量素子の容量値が設定される。この場合、トランスフォーマ42の電流利得が最大となる。その他の可変容量素子の容量値は、設定可能な最小値に設定される。
【0123】
受信RF信号は、信号入力された1次インダクタから2次インダクタLoに電磁誘導によって伝達される。受信RF信号は、ゲート接地回路として構成されたLNA40Aに入力される。LNA40Aにおいても、負荷インダクタLDと対応する可変容量素子CDとが受信RF信号の周波数で並列共振回路を構成するように、可変容量素子CDの容量値が制御部によって調整される。LNA40Aによって増幅された受信RF信号は差動出力ノードAP,AMを介して直交復調器44に出力される。
【0124】
[第4の実施形態の効果]
第1の実施形態では、n個の周波数帯域の受信RF信号を受信可能にするためにn個のLNA40_1〜40_nが必要であったのに対し、本実施形態では1個のLNA40Aで済む。このため、第1の実施形態に比べてさらなる回路面積の削減が可能になる。
【0125】
以上、本発明者によってなされた発明を実施形態に基づき具体的に説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることは言うまでもない。