(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照しつつ、実施の形態について説明する。なお、図面は簡略的なものであるから、この図面の記載を根拠として実施の形態の技術的範囲を狭く解釈してはならない。また、同一の要素には、同一の符号を付し、重複する説明は省略する。
【0012】
以下の実施の形態においては便宜上その必要があるときは、複数のセクションまたは実施の形態に分割して説明するが、特に明示した場合を除き、それらはお互いに無関係なものではなく、一方は他方の一部または全部の変形例、応用例、詳細説明、補足説明等の関係にある。また、以下の実施の形態において、要素の数等(個数、数値、量、範囲等を含む)に言及する場合、特に明示した場合および原理的に明らかに特定の数に限定される場合等を除き、その特定の数に限定されるものではなく、特定の数以上でも以下でもよい。
【0013】
さらに、以下の実施の形態において、その構成要素(動作ステップ等も含む)は、特に明示した場合および原理的に明らかに必須であると考えられる場合等を除き、必ずしも必須のものではない。同様に、以下の実施の形態において、構成要素等の形状、位置関係等に言及するときは、特に明示した場合および原理的に明らかにそうでないと考えられる場合等を除き、実質的にその形状等に近似または類似するもの等を含むものとする。このことは、上記数等(個数、数値、量、範囲等を含む)についても同様である。
【0014】
<実施の形態1>
図1は、実施の形態1に係る半導体装置1を備えた抵抗計測システムSYS1の構成を示すブロック図である。
本実施の形態に係る半導体装置1及びそれを備えた抵抗計測システムSYS1は、ブリッジ回路の2つの計測ノードの電位差を生じさせないように一方の計測ノードから流れる直流電流を制御した場合における、当該直流電流の値を計測する。このときに計測された直流電流の値に基づいて、ブリッジ回路に含まれる感圧抵抗素子の抵抗値の変化量の算出が可能である。そして、算出した感圧抵抗素子の抵抗値の変化量から体重等の推定が可能である。ここで、本実施の形態に係る半導体装置1及びそれを備えた抵抗計測システムSYS1は、汎用的な部品であるDAコンバータ及びコンパレータ等を用いて体重の計測が可能であり、関連技術と異なり高分解能の電圧測定回路を備える必要がないため、回路規模の増大を抑制することができる。また、消費電力の増大を抑制することもできる。以下、具体的に説明する。
【0015】
図1に示すように、抵抗計測システムSYS1は、例えば、人の体重を計測する体重計であって、半導体装置1と、演算装置(演算処理装置)2と、入力装置3と、表示装置4と、記憶装置5と、ブリッジ回路B1と、を備える。
【0016】
ブリッジ回路B1は、所謂圧力センサであって、計測対象から受ける圧力の変化に応じた電圧(電位差)を生成する回路である。具体的には、ブリッジ回路B1は、抵抗素子R1〜R3と、圧力変化に応じて抵抗値が変化する感圧抵抗素子R4と、定電流源6と、を有する。
【0017】
抵抗素子R1は、電源電圧VDDが供給される電源電圧端子(以下、電源電圧端子VDDと称す)と、計測ノード(第1計測ノード)NAと、の間に設けられている。抵抗素子R2は、定電流源6と、計測ノードNAと、の間に設けられている。抵抗素子R3は、電源電圧端子VDDと、計測ノード(第2計測ノード)NBと、の間に設けられている。感圧抵抗素子R4は、定電流源6と、計測ノードNBと、の間に設けられている。
【0018】
定電流源6は、例えば、NMOSトランジスタ、増幅回路、及び、抵抗素子を有する。NMOSトランジスタ及び抵抗素子は、抵抗素子R2,R4の接続ノードと、接地電圧GNDが供給される接地電圧端子(以下、接地電圧端子GNDと称す)と、の間に直列に設けられている。増幅回路は、NMOSトランジスタと抵抗素子との間の接続ノードの電圧と、基準電圧Vrefと、の電位差を増幅して、NMOSトランジスタのゲートに印加する。それにより、定電流源6は、抵抗素子R2,R4の接続ノードから接地電圧端子GNDに一定の電流を流す。
【0019】
感圧抵抗素子R4は、圧力を受けていない場合、抵抗素子R1〜R3と同じ抵抗値を示す。したがって、感圧抵抗素子R4が圧力を受けていない場合、計測ノードNA,NBのそれぞれの電位Va,Vbは同じ値を示す。つまり、電位Va,Vbには電位差ΔVは生じない。なお、電位差ΔVが生じない、とは、電位差ΔVが完全に0Vになる場合だけでなく、抵抗素子R1〜R4の製造ばらつき等により電位差ΔVがわずかに0Vからずれた場合も含むものとする。
【0020】
それに対し、感圧抵抗素子R4が圧力を受けた場合、感圧抵抗素子R4の抵抗値が抵抗素子R2の抵抗値より大きくなるため、計測ノードNA,NBのそれぞれの電位Va,Vbは異なる値を示す。つまり、電位Va,Vbの電位差ΔVは0より大きくなる。
【0021】
半導体装置1は、可変電流生成部11と、電位差判定部12と、制御部13と、を備える。また、半導体装置1には、ブリッジ回路B1の計測ノードNA,NBに接続される外部端子T1,T2が設けられている。
【0022】
可変電流生成部11は、調整可能な直流電流Idacを流す。より詳細には、可変電流生成部11は、制御信号S1に応じた電流値の直流電流Idacを、計測ノードNBから外部端子T2を介して接地電圧端子GNDに流す。例えば、可変電流生成部11は、電流出力型DAコンバータである。
【0023】
電位差判定部12は、外部端子T1,T2に供給される計測ノードNA,NBのそれぞれの電位Va,Vbに電位差ΔVが生じているか否かを判定する。例えば、電位差判定部12は、コンパレータを含み、電位差ΔVが発生している場合(即ち、ΔV≠0の場合)に判定結果D1をインアクティブ(例えば、Lレベル)にし、電位差ΔVが発生していない場合(即ち、ΔV=0の場合)に判定結果D1をアクティブ(例えば、Hレベル)にする。
【0024】
制御部13は、例えばマイコンであって、電位差判定部12の判定結果D1に応じた制御信号S1を出力する。具体的には、制御部13は、判定結果D1がアクティブになるような(即ち、電位差ΔVを生じさせないような)電流値の直流電流Idacを流すように可変電流生成部11に対して制御信号S1を出力する。
【0025】
例えば、電位Vbが電位Vaより大きい場合、制御部13は、電位Vbが電位Vaと同じ値を示すまで、直流電流Idacの電流値を大きくするように制御する。そして、電位Vbが電位Vaと同じ値を示すと、制御部13は、直流電流Idacの電流値をこれ以上変化させないように制御する。
【0026】
ここで、感圧抵抗素子R4の抵抗値の変化量ΔR4は、ブリッジ回路B1の計測ノードNA,NBの電位差ΔVが生じないように制御された場合における直流電流Idacの値に基づいて算出可能である。以下、数式を用いて詳細に説明する。
【0027】
まず、前述のように、感圧抵抗素子R4が圧力を受けてない場合、計測ノードNA,NBのそれぞれの電位Va,Vbの関係は、以下の式(1)のように表される。
【0029】
次に、圧力を受けた場合の感圧抵抗素子R4の抵抗値をR4a、圧力を受けていない場合の感圧抵抗素子R4の抵抗値をR4、感圧抵抗素子R4の抵抗値の変化量をΔR4とすると、これらの関係は以下の式(2)のように表される。
【0031】
なお、感圧抵抗素子R4の抵抗値の変化量ΔR4が大きいほど、計測ノードNA,NBの電位差ΔVは大きくなる。
【0032】
ここで、半導体装置1は、圧力を受けた感圧抵抗素子R4の抵抗値が変化して当該感圧抵抗素子R4に流れる電流の値が変化した場合、その抵抗値の変化量ΔR4に応じて直流電流Idacの電流値を制御することにより、抵抗素子R3に流れる電流の値を圧力付与前後で同じにしている。したがって、電位Vbは圧力付与前後で電位Vaと同じ値を示す。
【0033】
具体的には、抵抗素子R3に流れる電流の値をI3、感圧抵抗素子R4に流れる電流の値をI4、計測ノードNBから外部端子T1を介して流れる電流の値をIdacとすると、これらの関係は以下の式(3)のように表される。
【0035】
式(3)からわかるように、感圧抵抗素子R4の抵抗値が変化して当該感圧抵抗素子R4に流れる電流の値が変化した場合には、電流値I4と電流値Idacの総和が電流値I3となるように、電流値Idacが制御される。
【0036】
例えば、感圧抵抗素子R4の抵抗値の変化量が小さく電流値I4の変化(低下)が小さい場合、電流値Idacは小さくなるように制御される。他方、感圧抵抗素子R4の抵抗値の変化量が大きく電流値I4の変化(低下)が大きい場合、電流値Idacは大きくなるように制御される。
【0037】
また、電流値I4は、以下の式(4)のように表される。
【0039】
式(2)、式(3)及び式(4)より、式(5)が導き出される。
【0040】
ΔR4={Vb/(I3−Idac)}−R4 ・・・(5)
【0041】
式(5)からわかるように、Vb,I3,R4が圧力付与前後で一定であるため、感圧抵抗素子R4の抵抗値の変化量ΔR4は、電流値Idacにのみ依存している。そのため、電流値Idacを計測するだけで変化量ΔR4の算出が可能である。そして、算出された変化量ΔR4から体重等の推定が可能である。
【0042】
例えば、電源電圧Vddの電圧値を5V、抵抗素子R1〜R4の抵抗値を10kΩ、電流値Idacを0.128mAとすると、電位Vbは、圧力付与前後で一定であるため、2.5V(=5V/2)となる。また、電流値I3は、圧力付与前後で一定であるため、0.25mA(=2.5V/10kΩ)となる。これらの値を式(5)に代入すると、感圧抵抗素子R4の抵抗値の変化量ΔR4は、以下のように算出される。
【0043】
ΔR4={2.5V/(0.25mA−0.128mA)}−10kΩ
=10.5[kΩ]
【0044】
図1の各構成要素の説明に戻る。
入力装置3は、体重の推定等に必要な情報を入力する装置である。演算装置2は、半導体装置1による計測結果(電流値Idac)から感圧抵抗素子R4の抵抗値の変化量を算出したり、算出した感圧抵抗素子R4の抵抗値の変化量から体重を推定したりする装置である。表示装置4は、演算装置2により推定された体重等を表示する装置である。記憶装置5は、過去のデータを記憶したり、演算装置2の演算プログラム等を記憶したりする装置である。
【0045】
このように、本実施の形態に係る半導体装置1及びそれを備えた抵抗計測システムSYS1は、ブリッジ回路B1の計測ノードNA,NBの電位差ΔVを生じさせないように計測ノードNBから流れる直流電流Idacを制御した場合における、直流電流Idacの値を計測する。このときに計測された直流電流Idacの値に基づいて、ブリッジ回路B1に含まれる感圧抵抗素子R4の抵抗値の変化量の算出が可能である。そして、算出した感圧抵抗素子R4の抵抗値の変化量から体重の推定が可能である。ここで、本実施の形態に係る半導体装置1及びそれを備えた抵抗計測システムSYS1は、汎用的な部品からなる可変電流生成部11及び電位差判定部12を用いて体重の計測が可能であり、関連技術と異なり高分解能の電圧測定回路を備える必要がないため、回路規模の増大を抑制することができる。また、消費電力の増大を抑制することもできる。
【0046】
なお、関連技術の構成は、計測ノードNA,NBの電位差ΔVを増幅回路で増幅した後ADコンバータ等の電圧測定回路を用いて計測している。この構成では、電位差ΔVが大きい場合、増幅回路の増幅率を小さくして、増幅回路の出力電圧を電圧測定回路の許容入力電圧範囲に抑える必要がある。ここで、増幅回路の増幅率が小さくなるほど、電圧測定回路による誤差分の除去が困難になってしまう。そこで、それを回避するために、電圧測定回路を高分解能にしておく必要がある。その結果、回路規模、消費電力、及び、計測時間が何れも増大してしまう。
【0047】
それに対し、半導体装置1は、計測ノードNA,NBの電位差ΔVを直流電流Idacに変換してその電流値を計測することで間接的に電位差ΔVを計測している。このとき、半導体装置1は、電位差ΔVが0V付近となるように直流電流Idacを制御したうえで、そのときの直流電流Idacの値から間接的に電位差ΔVを計測するか、又は、必要に応じて可変電流生成部11の最小分解能以下となった電位差ΔVを増幅して計測する。後者の場合でも、増幅回路は、広範囲の電位差ΔVを計測する必要はなく、狭い範囲の電位差ΔVを一定の増幅率で計測できればよい。また、半導体装置1は、上記何れの場合でも、電位差判定部12(コンパレータ又はADコンバータ)及び可変電流生成部11の総ビット数に応じた分解能の計測を行うため、電位差判定部12及び可変電流生成部11のそれぞれのビット数を分散させて小さくすることができる。それにより、電位差判定部12は汎用的なコンパレータ又はADコンバータにより構成可能となり、可変電流生成部11
は少ないビット数で構成可能となる。その結果、半導体装置1は、回路規模、消費電力、及び、計測時間の増大を何れも抑制することができる。
【0048】
なお、可変電流生成部11の分解能の限界により電位差ΔVを0Vにできない場合には、可変電流生成部11の最小分解能以下となった電位差ΔVを増幅する増幅回路、及び、その出力電圧を計測するADコンバータをさらに設けて、当該電位差ΔVを計測すればよい。この場合、増幅回路は、電圧範囲の決まった電位差ΔVを増幅できればよいため、その増幅率を固定することができる。また、増幅回路は、可変電流生成部11の最小分解能以下の電位差ΔVをある程度大きな増幅率で増幅することになるため、低分解能のADコンバータでも誤差分の除去が可能となる。したがって、一定増幅率の増幅回路及び低分解能のADコンバータの追加のみで良いため、回路規模の増大及び消費電力の増大は抑制される。
【0049】
この場合、電位差判定部12は、電位差ΔVが可変電流生成部11の最小分解能以下の所定値の範囲内であるか否かを判定する。具体的には、電位差判定部12は、判定結果D1が例えばLレベルからHレベルに切り替わったことを、電位差ΔVが所定値の範囲内になったことを示す判定結果として出力する。また、この場合、制御部13は、電位差判定部12の判定結果に基づいて、電位差ΔVが所定値の範囲内となるような電流値の直流電流Idacを流すように可変電流生成部11に対して制御信号S1を出力する。
【0050】
また、本実施の形態では、抵抗計測システムSYS1が、人の体重を計測する体重計である場合を例に説明したが、これに限られず、計測対象から受ける圧力を計測する任意の計測システムとして用いられることができる。
【0051】
(抵抗計測システムSYS1の具体的構成例)
図2は、抵抗計測システムSYS1の具体的構成例を抵抗計測システムSYS1aとして示すブロック図である。
図2では、半導体装置1の具体的構成例として半導体装置1aが示されている。抵抗計測システムSYS1aのその他の構成については、抵抗計測システムSYS1と同様であるため、以下では、主に半導体装置1aについて説明する。
【0052】
半導体装置1aは、可変電流生成部11として可変電流生成部11aを備えるとともに、電位差判定部12として増幅回路121及びコンパレータ122を備える。
【0053】
増幅回路121は、外部端子T1,T2に供給される計測ノードNA,NBのそれぞれの電位Va,Vbの電位差ΔVを増幅する。コンパレータ122は、増幅された電位差ΔVと、接地電圧GNDと、を比較して比較結果を判定結果D1として出力する。例えば、コンパレータ122は、増幅された電位差ΔVが接地電圧GNDより大きい場合にLレベルの判定結果D1を出力し、増幅された電位差ΔVが接地電圧GND(0V)を示す場合にHレベルの判定結果D1を出力する。
【0054】
(可変電流生成部11aの具体的構成例)
図3は、可変電流生成部11aの具体的構成例を示す図である。
図3に示すように、可変電流生成部11aは、所謂電流出力型DAコンバータであって、複数のスイッチSW0〜SWn−1(nは自然数)からなるスイッチ群111と、複数の定電流源C0〜Cn−1(nは自然数)からなる定電流源群112と、を備える。
図3では、n=5である場合を例に説明する。
【0055】
スイッチSW0〜SW4は、外部端子T2と接地電圧端子GNDとの間に並列に設けられている。定電流源C0〜C4は、それぞれスイッチSW0〜SW4に直列に設けられている。定電流源C0〜C4は、基準電流値をIとすると、それぞれスイッチSW0〜SW4がオンした場合に電流値I×2
0,I×2
1,I×2
2,I×2
3,I×2
4を流す。
【0056】
制御信号S1は、例えば、“00000”、“00001”等のように、5ビット幅の2進数値で表される。スイッチSW0〜SW4は、それぞれ制御信号S1を構成する5ビットの第0〜第4ビットの値が0の場合にオフし、1の場合オンする。それにより、可変電流生成部11aは、制御信号S1の値が1つ増加するごとに、段階的に直流電流Idacを増加させることができる。
【0057】
(可変電流生成部11aのさらに詳細な構成)
図4は、
図3に示す可変電流生成部11aのさらに詳細な構成を示す図である。
図4では、定電流源群112を構成する複数の定電流源C0〜C4をトランジスタレベルで表している。
【0058】
図4に示すように、定電流源群112は、Nチャネル型のMOSトランジスタ(以下、単にトランジスタと称す)MN1〜MN12と、Pチャネル型のMOSトランジスタ(以下、単にトランジスタと称す)MP1〜MP6と、基準電流源Cbと、を備える。なお、
図4の各トランジスタに付された“W”又は“2W”の記号はトランジスタサイズを表している。トランジスタサイズ2Wのトランジスタは、トランジスタサイズWのトランジスタ2個に相当する。
【0059】
基準電流源Cb及びトランジスタMN1(サイズW)は、電源電圧端子VDDと接地電圧端子GNDとの間に直列に設けられている。基準電流源Cbは、トランジスタMN1のソース−ドレイン間に例えば1μAの基準電流Iを流す。
【0060】
トランジスタMN2(サイズW)は、スイッチSW0に直列接続され、かつ、トランジスタMN1にカレントミラー接続されている。したがって、スイッチSW0がオンした場合、トランジスタMN2には基準電流Iと同じ値の1μAの直流電流Idac成分(=I×2
0)が流れる。
【0061】
トランジスタMN3(サイズ2W)は、スイッチSW1に直列接続され、かつ、トランジスタMN1にカレントミラー接続されている。したがって、スイッチSW1がオンした場合、トランジスタMN3には、基準電流Iの2倍の2μAの直流電流Idac成分(=I×2
1)が流れる。
【0062】
トランジスタMN4(サイズ2W)は、トランジスタMN1にカレントミラー接続されるとともに、トランジスタMP1(サイズW)に直列接続されている。したがって、トランジスタMN4,MP1には、基準電流Iの2倍の2μAの電流が流れる。トランジスタMP2(サイズ2W)は、トランジスタMP1にカレントミラー接続されるとともに、トランジスタMN5(サイズW)に直列接続されている。したがって、トランジスタMP2,MN5には、トランジスタMN4,MP1に流れる電流の2倍(基準電流Iの4倍)の4μAの電流が流れる。
【0063】
トランジスタMN6(サイズW)は、スイッチSW2に直列接続され、かつ、トランジスタMN5にカレントミラー接続されている。したがって、スイッチSW2がオンした場合、トランジスタMN6には、トランジスタMP2,MN5に流れる電流と同じ値(基準電流Iの4倍)の4μAの直流電流Idac成分(=I×2
2)が流れる。
【0064】
トランジスタMN7(サイズW)は、トランジスタMN5にカレントミラー接続されるとともに、トランジスタMP3(サイズW)に直列接続されている。したがって、トランジスタMN7,MP3には、トランジスタMP2,MN5に流れる電流と同じ値(基準電流Iの4倍)の4μAの電流が流れる。トランジスタMP4(サイズ2W)は、トランジスタMP3にカレントミラー接続されるとともに、トランジスタMN8(サイズW)に直列接続されている。したがって、トランジスタMP4,MN8には、トランジスタMN7,MP3に流れる電流の2倍(基準電流Iの8倍)の8μAの電流が流れる。
【0065】
トランジスタMN9(サイズW)は、スイッチSW3に直列接続され、かつ、トランジスタMN8にカレントミラー接続されている。したがって、スイッチSW3がオンした場合、トランジスタMN9には、トランジスタMP4,MN8に流れる電流と同じ値(基準電流Iの8倍)の8μAの直流電流Idac成分(=I×2
3)が流れる。
【0066】
トランジスタMN10(サイズW)は、トランジスタMN8にカレントミラー接続されるとともに、トランジスタMP5(サイズW)に直列接続されている。したがって、トランジスタMN10,MP5には、トランジスタMP4,MN8に流れる電流と同じ値(基準電流Iの8倍)の8μAの電流が流れる。トランジスタMP6(サイズ2W)は、トランジスタMP5にカレントミラー接続されるとともに、トランジスタMN11(サイズW)に直列接続されている。したがって、トランジスタMP6,MN11には、トランジスタMN10,MP5に流れる電流の2倍(基準電流Iの16倍)の16μAの電流が流れる。
【0067】
トランジスタMN12(サイズW)は、スイッチSW4に直列接続され、かつ、トランジスタMN11にカレントミラー接続されている。したがって、スイッチSW4がオンした場合、トランジスタMN12には、トランジスタMP6,MN11に流れる電流と同じ値(基準電流Iの16倍)の16μAの直流電流Idac成分(=I×2
4)が流れる。
【0068】
図4ではn=5の場合を例に説明したが、仮にn=16である場合、即ち、可変電流生成部11aが16ビットの電流出力型DAコンバータである場合、可変電流生成部11aを構成するトランジスタの数は、以下のようになる。なお、サイズWのトランジスタ1個でトランジスタ数が1個となり、サイズ2Wのトランジスタ1個でトランジスタ数が2個となるものとする。
【0069】
まず、定電流源群112を構成するトランジスタの数の内訳は以下のようになる。
基準電流Iが流れるトランジスタ(MN1) ・・・1個
電流I×2
0を生成するトランジスタ(MN2) ・・・1個
電流I×2
1を生成するトランジスタ(MN3) ・・・2個
電流I×2
2を生成するトランジスタ(MN4〜MN6,MP1,MP2)・・・7個
電流I×2
3を生成するトランジスタ(MN7〜MN9,MP3,MP4)・・・6個
電流I×2
4〜I×2
15を生成するトランジスタ・・・72個(6個×12ビット分)
したがって、定電流源群112を構成するトランジスタの数は、89個となる。
【0070】
また、各スイッチSW0〜SW15は2個のトランジスタからなるため、スイッチ群111を構成するトランジスタの数は、32個となる。
【0071】
したがって、可変電流生成部11aを構成するトランジスタの数は、121個(=89+32)となる。これは、同等の分解能を有するADコンバータのトランジスタ数の1/10程度である。このことからも、半導体装置1aが回路規模及び消費電力を縮小できることがわかる。なお、上記したトランジスタ数の比較は、あくまでも一例である。
【0072】
(抵抗計測システムSYS1aの動作)
続いて、抵抗計測システムSYS1aの動作について説明する。
図5は、抵抗計測システムSYS1aの動作を示すフローチャートである。
【0073】
図5に示すように、初期状態では、可変電流生成部11aの設定値Mが0に設定される(ステップS101)。なお、設定値Mは、例えば制御信号S1の値が反映されたものであって、設定値Mが大きくなるほど直流電流Idacの電流値は大きくなる。したがって、初期状態では、直流電流Idacの電流値は小さい。
【0074】
このとき、感圧抵抗素子R4が計測対象からの圧力(体重)を受けて、電位差ΔVが生じていれば(ステップS102のNO)、電位差判定部12の判定結果D1はインアクティブとなる。そのため、制御部13は、可変電流生成部11aの設定値Mを1つ増加させる(ステップS103)。それにより、直流電流Idacの電流値は一段階大きくなり、その結果、計測ノードNBの電位Vbは一段階低下する。
【0075】
その後、まだ電位差ΔVが生じていれば(ステップS102のNO)、電位差判定部12の判定結果D1はインアクティブを維持するため、制御部13は、可変電流生成部11aの設定値Mをさらに1つ増加させる(ステップS103)。それにより、直流電流Idacの電流値はさらに一段階大きくなり、その結果、計測ノードNBの電位Vbはさらに一段階低下する。
【0076】
制御部13は、電位差ΔVが生じなくなって電位差判定部12の判定結果D1がインアクティブからアクティブに切り替わるまで、ステップS102のNOからステップS103の動作を繰り返す。つまり、制御部13は、電位差ΔVが生じなくなるまで、直流電流Idacの電流値を段階的に大きくさせるように制御信号S1を出力する。
【0077】
電位差ΔVが生じなくなると(ステップS102のYES)、電位差判定部12の判定結果D1がインアクティブからアクティブに切り替わるため、制御部13は、例えば、直流電流Idacの電流値をこれ以上変化させないように制御信号S1を出力する。また、制御部13は、可変電流生成部11aに、そのときの設定値Mの情報を出力させる(ステップS104)。
【0078】
つまり、制御部13は、電位差判定部12により電位差ΔVが生じていないと判定された場合、可変電流生成部11aに、そのときの設定値Mの情報、即ち、そのときの直流電流Idacの情報、を出力させる。なお、可変電流生成部11aの代わりに制御部13が直接設定値Mの情報(直流電流Idacの情報)を出力してもよい。
【0079】
そして、計測が完了する(ステップS105)。
【0080】
このように、半導体装置1a及びそれを備えた抵抗計測システムSYS1aは、半導体装置1及びそれを備えた抵抗計測システムSYS1の場合と同等の効果を奏することができる。
【0081】
本実施の形態では、電位差判定部12が増幅回路121及びコンパレータ122を備えた場合を例に説明したが、これに限られない。電位差ΔVがある程度大きければ、電位差判定部12は、必ずしも増幅回路121を備えていなくてもよい。
【0082】
また、電位差判定部12は、コンパレータ122の代わりにADコンバータ123を備えてもよい。ADコンバータ123は、電位差ΔV又はその増幅電圧をデジタル値に変換して判定結果D1として出力する。この場合、制御部13は、判定結果D1に基づいて可変電流生成部11aの設定値Mを速やかに最適な値に設定することができるため、効率よく電位差ΔVを0Vに制御することが可能となる。また、ADコンバータ123は、少なくともコンパレータ122と同等の分解能を有していればよく、高分解能である必要はない。例えば、ADコンバータ123は、汎用MCU内蔵の低分解能のADコンバータ等であってもよい。そのため、コンパレータ122をADコンバータ123に置き換えることによる回路規模及び消費電力の増大は抑制される。
【0083】
<実施の形態2>
図6は、実施の形態2に係る半導体装置1bを備えた抵抗計測システムSYS1bの構成を示すブロック図である。
図6では、半導体装置1の具体的構成例として半導体装置1bが示されている。抵抗計測システムSYS1bのその他の構成については、抵抗計測システムSYS1と同様であるため、以下では、主に半導体装置1bについて説明する。
【0084】
図6に示すように、半導体装置1bは、半導体装置1aと比較して、可変電流生成部11aに代えて可変電流生成部11bを備える。
【0085】
(可変電流生成部11bの具体的構成)
図7は、可変電流生成部11bの具体的構成を示す図である。
図7に示すように、可変電流生成部11bは、電圧出力型のDAコンバータ113と、電圧電流変換回路114と、を備える。
【0086】
電圧出力型のDAコンバータ113は、例えば抵抗ラダー又は抵抗ストリングスにより構成され、制御信号S1に応じた値の電圧を出力する。
【0087】
電圧電流変換回路114は、DAコンバータ113の出力電圧を直流電流Idacに変換する。
【0088】
より具体的には、電圧電流変換回路114は、増幅回路115とNチャネル型のMOSトランジスタ(以下、単にトランジスタと称す)116と、抵抗素子117と、を有する。トランジスタ116及び抵抗素子117は、外部端子T2と接地電圧端子GNDとの間に直列に設けられている。増幅回路115は、トランジスタ116と抵抗素子117との間の接続ノードの電圧と、DAコンバータ113の出力電圧と、の電位差を増幅して、トランジスタのゲートに印加する。それにより、電圧電流変換回路114は、外部端子T2から接地電圧端子GNDに、DAコンバータ113の出力電圧に応じた直流電流Idacを流す。
【0089】
半導体装置1bのその他の構成については、半導体装置1aと同様であるため、その説明を省略する。
【0090】
このように、半導体装置1b及びそれを備えた抵抗計測システムSYS1bは、半導体装置1a及びそれを備えた抵抗計測システムSYS1aと同等の効果を奏することができる。さらに、半導体装置1b及びそれを備えた抵抗計測システムSYS1bは、電圧出力型のDAコンバータ113を抵抗ラダー又は抵抗ストリングスで構成することで、直線性誤差を低減することができる。
【0091】
<実施の形態3>
図8は、実施の形態3に係る半導体装置1cを備えた抵抗計測システムSYS1cの構成を示すブロック図である。
図8では、半導体装置1の具体的構成例として半導体装置1cが示されている。抵抗計測システムSYS1cのその他の構成については、抵抗計測システムSYS1と同様であるため、以下では、主に半導体装置1cについて説明する。
【0092】
図8に示すように、半導体装置1cは、半導体装置1bと比較して、コンパレータ122に代えてADコンバータ123を備える。半導体装置1cのその他の構成については、半導体装置1bと同様であるため、その説明を省略する。
【0093】
ADコンバータ123は、電位差ΔV又はその増幅電圧をデジタル値に変換して判定結果D1として出力する。それにより、制御部13は、判定結果D1に基づいて可変電流生成部11bの設定値Mを速やかに最適な値に設定することができるため、効率よく電位差ΔVを0Vに制御することが可能となる。また、ADコンバータ123は、少なくともコンパレータ122と同等の分解能を有していればよく、高分解能である必要はない。例えば、ADコンバータ123は、汎用MCU内蔵の低分解能のADコンバータ等であってもよい。そのため、コンパレータ122をADコンバータ123に置き換えることによる回路規模及び消費電力の増大は抑制される。
【0094】
例えば、半導体装置1cは、6ビットのDAコンバータ113と、10ビットのADコンバータ123と、を備えていれば、16ビットのADコンバータを電圧測定回路として備えた関連技術の構成と同等の精度にて抵抗値変化の計測が可能である。
【0095】
以上のように、上記実施の形態1〜3に係る半導体装置及びそれを備えた抵抗計測システムは、ブリッジ回路の2つの計測ノードの電位差を生じさせないように一方の計測ノードから流れる直流電流を制御した場合における、当該直流電流の値を計測する。このときに計測された直流電流の値に基づいて、ブリッジ回路に含まれる感圧抵抗素子の抵抗値の変化量の算出が可能である。そして、算出した感圧抵抗素子の抵抗値の変化量から体重等の推定が可能である。ここで、上記実施の形態1〜3に係る半導体装置及びそれを備えた抵抗計測システムは、汎用的な部品であるDAコンバータ及びコンパレータ等を用いて体重の計測が可能であり、関連技術と異なり高分解能の電圧測定回路を備える必要がないため、回路規模の増大を抑制することができる。また、消費電力の増大を抑制することもできる。
【0096】
以上、本発明者によってなされた発明を実施の形態に基づき具体的に説明したが、本発明は既に述べた実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の変更が可能であることはいうまでもない。
【0097】
例えば、上記の実施の形態に係る半導体装置では、半導体基板、半導体層、拡散層(拡散領域)などの導電型(p型もしくはn型)を反転させた構成としてもよい。そのため、n型、及びp型の一方の導電型を第1の導電型とし、他方の導電型を第2の導電型とした場合、第1の導電型をp型、第2の導電型をn型とすることもできるし、反対に第1の導電型をn型、第2の導電型をp型とすることもできる。