(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6386329
(24)【登録日】2018年8月17日
(45)【発行日】2018年9月5日
(54)【発明の名称】車両用シートの表皮材
(51)【国際特許分類】
B60N 2/58 20060101AFI20180827BHJP
B32B 9/02 20060101ALI20180827BHJP
D06N 3/00 20060101ALI20180827BHJP
B68F 1/00 20060101ALI20180827BHJP
C14B 1/02 20060101ALI20180827BHJP
C14B 1/14 20060101ALI20180827BHJP
D04B 1/00 20060101ALI20180827BHJP
D03D 1/00 20060101ALI20180827BHJP
D03D 11/00 20060101ALI20180827BHJP
A47C 31/02 20060101ALI20180827BHJP
【FI】
B60N2/58
B32B9/02
D06N3/00
B68F1/00 A
C14B1/02
C14B1/14
D04B1/00 B
D03D1/00 Z
D03D11/00
A47C31/02 J
【請求項の数】9
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2014-205623(P2014-205623)
(22)【出願日】2014年10月6日
(65)【公開番号】特開2016-74293(P2016-74293A)
(43)【公開日】2016年5月12日
【審査請求日】2017年7月5日
(73)【特許権者】
【識別番号】000220066
【氏名又は名称】テイ・エス テック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088580
【弁理士】
【氏名又は名称】秋山 敦
(74)【代理人】
【識別番号】100111109
【弁理士】
【氏名又は名称】城田 百合子
(72)【発明者】
【氏名】三好 貴子
(72)【発明者】
【氏名】高橋 淳一
【審査官】
毛利 太郎
(56)【参考文献】
【文献】
実開平03−035800(JP,U)
【文献】
実公平06−016959(JP,Y2)
【文献】
特開2002−054059(JP,A)
【文献】
特開2013−203169(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60N 2/00− 2/90
A47C 31/00−31/12
B32B 9/02
B68F 1/00
C14B 1/02
C14B 1/14
D03D 1/00
D03D 11/00
D04B 1/00
D06N 3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
天然皮革又は人工皮革からなる皮革部と、
該皮革部の裏側に位置するメッシュ状の布部と、を有し、
前記布部が有する表面及び裏面のうちの一方の凹凸度合いが他方の凹凸度合いよりも大きいことを特徴とする車両用シートの表皮材。
【請求項2】
天然皮革又は人工皮革からなる皮革部と、
該皮革部の裏側に位置するメッシュ状の布部と、を有し、
前記布部には、編み方又は織り方を変えることでメッシュサイズが互いに異なるように形成された複数の層が積層状態で配置されていることを特徴とする車両用シートの表皮材。
【請求項3】
前記布部は、前記複数の層のうち、前記メッシュサイズがより小さい層にて前記皮革部の裏面に接着されていることを特徴とする請求項2に記載の車両用シートの表皮材。
【請求項4】
前記布部は、前記メッシュサイズがより小さい裏側層と、前記メッシュサイズがより大きい表側層と、を有し、前記裏側層のうち、前記表側層とは反対側に位置する面に塗布された接着剤によって前記皮革部の裏面に接着されていることを特徴とする請求項3に記載の車両用シートの表皮材。
【請求項5】
前記布部は、平編みされた裏布からなり、
前記複数の層のうち、前記メッシュサイズがより大きい層は、針抜き編成にて形成されていることを特徴とする請求項2乃至4のいずれか一項に記載の車両用シートの表皮材。
【請求項6】
前記布部の伸縮率は、前記皮革部の伸縮率より高いことを特徴とする請求項2乃至5のいずれか一項に記載の車両用シートの表皮材。
【請求項7】
前記布部の単位面積あたりの重量が100g/m2以上であることを特徴とする請求項2乃至6のいずれか一項に記載の車両用シートの表皮材。
【請求項8】
前記皮革部は、加工前の厚みよりも薄くなるように加工された天然皮革又は人工皮革からなることを特徴とする請求項1乃至7のいずれか一項に記載の車両用シートの表皮材。
【請求項9】
前記皮革部は、加工前の厚みの半分以下の厚みとなるようにスライス加工された天然皮革からなることを特徴とする請求項8に記載の車両用シートの表皮材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用シートの表皮材に係り、特に、皮革材料を用いた車両用シートの表皮材に関する。
【背景技術】
【0002】
車両用シートの表皮材の一例としては、天然皮革や人工皮革が知られており、これらの皮革材料を表皮材として用いることで車両用シートの品質(高級感)が高められる。一方、天然皮革や人工皮革を他の材料に貼り合せて構成される表皮材が、これまでに開発されている。一例を挙げると、特許文献1では、天然皮革中の紋様層を除去することで構成される表皮をシート状の弾性基体に貼り付けて構成される表皮材が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平9−39190号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、天然皮革や人工皮革を利用した車両用シートの表皮材については、皮革材料の質感を活かしつつ好適な触感(例えば、車両用シートに着座して表皮材に触れたときの触感)を実現することが求められている。しかしながら、皮革材料に貼り合せる材料の種類や構造によっては、好ましい触感が得られ難くなる可能性がある。例えば、特許文献1に示すようなシート状の弾性基体のように平坦面を有する材料を、当該平坦面にて皮革材料に貼り付けた場合には、面接着となるので、好適な触感が得られ難くなってしまう。
【0005】
そこで、本発明は、上記の問題に鑑みてなされたものであり、その目的は、皮革材料を用いて構成された車両用シートの表皮材として、皮革材料の質感を活かしながら好適な触感を実現する表皮材を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題は、本発明の車両用シートの表皮材によれば、天然皮革又は人工皮革からなる皮革部と、該皮革部の裏側に位置するメッシュ状の布部と、を有
し、前記布部が有する表面及び裏面のうちの一方の凹凸度合いが他方の凹凸度合いよりも大きいことで解決される。
上記の構成によれば、皮革部の裏側にメッシュ状の布部が配置されているので、皮革部と面にて接合することがなく、点あるいは線にて接合することになる。これにより、皮革部と面にて接合する構成に比べて触感が向上する。したがって、本発明の車両用の表皮材であれば、皮革部の質感を活かしつつ好適な触感を実現することが可能である。
【0007】
また
、布部が有する表面及び裏面のうちの一方の凹凸度合いが他方の凹凸度合いよりも大きいので、両面の凹凸度合いが一様となった構成に比して布部のボリューム感が向上する。したがって、表皮材全体の物性(特に、ボリューム感)を向上させることが可能となる。
【0008】
また、
前記課題は、本発明の車両用シートの表皮材によれば、天然皮革又は人工皮革からなる皮革部と、該皮革部の裏側に位置するメッシュ状の布部と、を有し、前記布部には、編み方又は織り方を変えることでメッシュサイズが互いに異なるように形成された複数の層が積層状態で配置されている
ことにより解決される。
上記の構成によれば、メッシュ状の布部が、積層状態で配置された複数の層からなる。また、複数の層のうち、メッシュサイズがより大きい層は、メッシュサイズがより小さい層に比べて軽い(厳密には、低密度となる)。したがって、布部中にメッシュサイズがより大きい層を備える表皮材は、メッシュサイズがより小さいサイズにて統一された表皮材に比較して、より軽量化されることになる。一方、複数の層のうち、メッシュサイズがより小さい層は、メッシュサイズがより大きい層に比べて緻密であり、高強度(高剛性)となっている。したがって、布部中にメッシュサイズがより小さい層を備える表皮材は、メッシュサイズがより大きいサイズにて統一された表皮材に比較して、より高強度になる。このように互いに物性が異なる層が布部内に積層状態で存在することにより、皮革部の質感を活かしつつ表皮材全体における軽量化及び高強度化を図ることが可能となる。
【0009】
また、上記の車両用シートの表皮材において、前記布部は、前記複数の層のうち、前記メッシュサイズがより小さい層にて前記皮革部の裏面に接着されているとよい。特に、前記布部は、前記メッシュサイズがより小さい裏側層と、前記メッシュサイズがより大きい表側層と、を有し、前記裏側層のうち、前記表側層とは反対側に位置する面に塗布された接着剤によって前記皮革部の裏面に接着されていると好適である。
上記の構成では、布部が複数の層のうち、メッシュサイズがより小さい層にて皮革部の裏面に接着されている。このため、メッシュサイズがより大きい層にて接着される場合に比して、接着面積が広くなり、より強固に布部と皮革部とを貼り合せることが可能となる。
【0010】
また、上記の車両用シートの表皮材において、前記布部は、平編みされた裏布からなり、前記複数の層のうち、前記メッシュサイズがより大きい層は、針抜き編成にて形成されているとよい。
上記の構成では、布部が平編みされた裏布からなり、複数の層のうち、メッシュサイズがより大きい層が針抜き編成にて形成されている。つまり、裏布を編む途中で針抜きを行うことにより、メッシュサイズがより大きい層をより容易に形成することが可能となる。
【0011】
また、上記の車両用シートの表皮材において、前記布部の伸縮率は、前記皮革部の伸縮率より高いとよい。
上記の構成では、皮革部よりも伸縮率が高い布部が設けられていることにより、皮革部のみからなる表皮材よりも伸縮性に富む。この結果、車両用シートに乗員が着座してシート各部が変形する際、表皮材が当該変形に良好に追従するようになる。
【0012】
また、上記の車両用シートの表皮材において、前記布部の単位面積あたりの重量が100g/m
2以上であるとよい。
上記の構成では、単位面積当たりの重量(いわゆる目付量)が100g/m
2以上となるように布部が構成されている。これは、上記の基準値を下回ると、布部によって表皮材に付与される強度が、車両用シートの表皮材として用いるのに必要な強度まで到達し難くなるためである。つまり、上記の構成によれば、車両用シートの表皮材として必要な強度を確保することがより容易になる。
【0013】
また、上記の車両用シートの表皮材において、前記皮革部は、加工前の厚みよりも薄くなるように加工された天然皮革又は人工皮革からなるとよい。
上記の構成では、天然皮革や人工皮革からなる皮革部が加工前の厚みより薄くなるように加工されており、その裏側にメッシュ状の布部が配置されている。これにより、皮革部を薄くすることで表皮材全体の軽量化を図りながらも、そのボリューム感を維持し、表皮材全体の強度を確保することが可能となる。
【0014】
また、上記の車両用シートの表皮材において、前記皮革部は、加工前の厚みの半分以下の厚みとなるようにスライス加工された天然皮革からなるとよい。
上記の構成であれば、皮革部を極力薄くして表皮材全体の軽量化を図ることが可能となる。また、皮革部が天然皮革からなる場合、布部を貼り付けて表皮材の物性を確保する構成がより有意義なものとなる。具体的に説明すると、天然皮革の物性(例えば強度等)は、その採取元となる生物のうち、どこの部位から採取したかによって変化する。したがって、天然皮革のみによって表皮材を構成すると、採取部位の相違に起因して表皮材全体の物性が変動し得ることがある。これに対して、天然皮革を薄くした上で布部を貼り付けて表皮材を構成すれば、採取部位の違いによる影響が緩和されるため、表皮材の物性の均一化を図ることが可能となる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、皮革部の質感を活かしながら好適な触感を実現することが可能である。
また、本発明によれば、布部が有する表面及び裏面のうちの一方の凹凸度合いが他方の凹凸度合いよりも大きいため、両面の凹凸度合いが一様となった布部を用いた表皮材に比べて、ボリューム感を向上させることが可能となる。
また、本発明によれば、互いに物性が異なる層が布部内に積層状態で存在することで、皮革部の質感を活かしつつ表皮材全体の軽量化及び高強度化を図ることが可能となる。
また、本発明によれば、複数の層のうち、メッシュサイズがより小さい層にて布部が皮革部の裏面に接着されるので、接着面積がより広くなり、より強固に布部と皮革部とを貼り合せることが可能となる。
また、本発明によれば、布部を構成する裏布を平編みする途中で針抜きを行うことで、当該層のメッシュサイズをより大きくすることが可能となる。
また、本発明によれば、皮革部よりも伸縮率が高い布部が設けられていることで伸縮性に富む表皮材が実現され、当該表皮材であれば、車両用シートに乗員が着座してシート各部が変形する際、当該変形に良好に追従するようになる。
また、本発明によれば、単位面積当たりの重量(いわゆる目付量)が100g/m
2以上となるように布部が構成されていることで、車両用シートの表皮材として必要な強度を容易に確保することが可能となる。
また、本発明によれば、天然皮革や人工皮革からなる皮革部が加工前の厚みより薄くなるように加工し、その裏側にメッシュ状の布部を配置することで表皮材全体の軽量化を図りながらもそのボリューム感を維持し、表皮材全体の強度を確保することが可能となる。
また、本発明によれば、皮革部を極力薄くして表皮材全体の軽量化を図るとともに、天然皮革の採取部位の相違に起因して表皮材全体の物性が変動するのを抑えることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明の一実施形態に係る車両用シートの表皮材の説明図である。
【
図2】本発明の一実施形態に係る裏布の断面構造を示す模式図である。
【
図3】本発明の一実施形態に係る裏布の表面及び裏面の各々の繊維構造を示す図である。
【
図4】本発明の一実施形態に係る裏布の編み様式を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の一実施形態(本実施形態)について説明する。なお、以下に説明する実施形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定するものではない。すなわち、本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更、改良され得ると共に、本発明にはその等価物が含まれることは勿論である。
【0018】
本実施形態に係る車両用シートの表皮材(以下、本表皮材1)は、
図1に示すように皮革部2と布部3とを接着剤にて貼り合せることで構成されている。
図1は、本表皮材1の説明図であり、本表皮材1の断面を模式的に示した図である。なお、図示を分かり易くする都合上、
図1では本表皮材1各部の厚みの比率(例えば、皮革部2及び布部3のそれぞれの厚みの比率)が実際の値とは異なっている。
【0019】
本表皮材1は、2つの材質からなり、具体的には皮革部2及び布部3のみからなる。ただし、これに限定するものではなく、例えば、皮革部2と布部3との間に他の部材(例えば、両面テープ等のシート体)が介在していてもよい。
【0020】
皮革部2は、車両用シートの外表面(意匠面)をなす部分であり、本実施形態では、天然皮革をスライス加工することにより加工前の厚みよりも薄厚化することで構成されている。より詳しく説明すると、皮革部2は、加工前の厚みの半分以下の厚みとなるようにスライス加工されることで構成されている。スライス加工された皮革部2は、乳頭層2aと網様層2bとを有する。また、乳頭層2aの表面(いわゆる銀面)には耐摩耗性向上のための表面処理が施されることで表面処理層2cが形成されている。
【0021】
なお、皮革部2をなす天然皮革については、牛革、馬革及び豚革などの動物系皮革が例示されるが、生物由来の皮革であれば特に限定されるものではない。また、天然皮革の採取元となる生物の皮革採取部位は、特に限定されるものではない。さらに、本実施形態では、皮革部2が天然皮革からなるが、皮革部2が人工皮革からなることとしてもよい。
【0022】
布部3は、本表皮材1において皮革部2の裏側に配置されており、厳密には、本表皮材1の裏面に貼り付けられている。本実施形態に係る布部3は、メッシュ状の布、より具体的に平編みされた裏布からなる。ただし、これに限定されるものではなく、布部3を構成する裏布の編み方については、平編みに限らず、他の編み方(例えば、ゴム編み、パール編み、デンビー編み、コード編み、アトラス編み等)であってもよい。また、裏布については、編物に限らず、織物であってもよい。
【0023】
布部3をなす上記の裏布は、互いに凹凸度合いが異なる面を有している。凹凸度合いとは、凹凸の間隔及び深さのうちの少なくとも一方を指し、本実施形態では凹凸の間隔及び深さの双方を意味する。すなわち、裏布の一方の面(表面)は、凹凸状のリブ面となっており、他方の面(裏面)は、比較的平坦な面(つまり、凹凸が少ない面)となっている。
【0024】
より詳しく説明すると、上記の裏布は、積層された複数の層を有しており、具体的には
図2の(a)のように二層構造となっている。
図2は、本実施形態に係る裏布の断面構造を示す模式図であり、同図中の(a)が本実施形態に係る裏布の断面構造を、(b)が比較例に係る裏布の断面構造を、(c)が変形例に係る裏布の断面構造を、それぞれ示している。
【0025】
布部3に形成された二つの層は、それぞれ、編み方(裏布が織物である場合には、織り方)を変えることでメッシュサイズが互いに異なるように形成されている。より具体的に説明すると、表側層3aは、上記二つの層のうち、メッシュサイズがより大きい層となっており、本実施形態では
図3の(a)に示すようにハニカム柄をなしている。裏側層3bは、上記二つの層のうち、メッシュがより小さい層となっており、本実施形態では
図3の(b)に示すように無地柄をなしている。
図3は、本実施形態に係る裏布の表面及び裏面の各々の繊維構造を示す図である。
【0026】
表側層3aは、平編みされた裏布において針抜き編成にて形成されている。より具体的に説明すると、上記の裏布を編む過程において、
図4に図示したように1リピート分の編み量では裏糸が8ループを形成するのに対し、表糸が1柄(菱形格子状の柄)をなすように針抜きが行われている。このように針抜きが行われることで、裏布においてメッシュサイズがより大きい層、すなわち表側層3aが容易に形成される。なお、
図4は、本実施形態に係る裏布の編み様式を示した図である。
【0027】
また、前述したように、本実施形態では、裏布の表面の凹凸度合いが裏面の凹凸度合いよりも大きくなっている。このような構造の裏布を形成する方法としては、例えば、表糸によって構成された凸部(厳密には、編み目を構成している部分)同士を立体状に編み込み、
図3の(a)に示すように編み目をハニカム状に連ねる方法が考えられる。ただし、これに限定されるものではなく、凹凸度合いが異なるように裏布を形成する限りにおいては、他の編み方・織り方を採用してもよい。
【0028】
裏側層3bは、表側層3aとは反対側に位置する面(以下、接合面)にて皮革部2の裏面に接着されている。つまり、本実施形態において、布部3は、裏側層3bの接合面に塗布された接着剤によって皮革部2の裏面に接着されている。このように布部3がより緻密な層である裏側層3bにて皮革部2に貼り付けられているので、表側層3aにて貼り付けられる場合に比して、より強固に貼り付けられるようになる。また、布部3がメッシュ状となっているので、接合面において接着剤の塗布箇所(換言すると、裏糸が接合面上に現れている箇所)が点在している。つまり、皮革部2と布部3とは点接着にて貼り合わされている。このように皮革部2と布部3とが点接着にて貼り合わされていれば、面接着の場合に比して、触感(例えば、表皮材が取り付けられた車両用シートに着座して当該表皮材に触れたときの触感)がより良好なものになる。
【0029】
以上のように本実施形態に係る布部3は、2層構造となったメッシュ状の裏布により構成されている。そして、上記の布部3が皮革部2に貼り合わされていることで構成された本表皮材1は、スライス加工前の天然皮革と略同じ厚みを有する一方で、当該天然皮革よりも軽量となる。つまり、本表皮材1は、スライス加工前の天然皮革の質感を残しつつ、天然皮革よりも軽量化されたものとなっている。
【0030】
特に、本実施形態に係る布部3の表面及び裏面については、互いに凹凸度合いが異なっており、両面の凹凸度合いが一様となった布と比較してボリューム感に富んでいる。このような裏布を貼り合せることで、本表皮材1は、好適なボリューム感を有するものになっている。また、布部3の構造は、メッシュサイズが互いに異なるように形成された複数の層が積層状態で配置された構造となっている。これにより、本実施形態では、天然皮革の質感や強度の維持及び軽量化の双方を効果的に実現することが可能である。
【0031】
具体的に説明すると、例えば、
図2の(b)に示す布部13、すなわち、単一の層(具体的には、本実施形態に係る布部3の裏側層3b
に相当する層)のみからなる布部1
3を皮革部2に貼り付けた場合、それによって構成される表皮材は、天然皮革の質感(ボリューム感)に欠けてしまう。また、ボリューム感を高めるために上記の布部13を重ね合わせる等すると、重量が増す結果、布部13による軽量効果が十分に得られなくなる。これに対して、本実施形態に係る布部3は、その厚み方向に並ぶ二つの層からなる。ここで、二つの層のうち、メッシュサイズがより大きい層(すなわち、表側層3a)は、メッシュサイズがより小さい層(すなわち、裏側層3b)に比べて軽い。したがって、布部3中にメッシュサイズがより大きい層を備える本表皮材1は、メッシュサイズがより小さいサイズにて統一された表皮材に比較して、より軽量化されることになる。一方で、裏側層3bは、表側層3aに比べて緻密であり高強度(高剛性)となっている。したがって、布部3中にメッシュサイズがより小さい層が設けられた本表皮材1は、メッシュサイズがより大きいサイズにて統一された表皮材に比較して、より高い強度を有するようになる。以上により、本表皮材1によれば、軽量化を図りながらも天然皮革の質感及び表皮材の強度を確保することが可能となる。
【0032】
また、スライス加工によって低下した天然皮革の物性(ボリューム感や強度)を布部3にて補填することで、本表皮材1を車両用シートの表皮材として用いる上で必要な強度が確保されるようになる。さらに、布部3を皮革部2に貼り付けることにより、皮革部2をなす天然皮革の採取箇所の違いによる影響を緩和することが可能となる。具体的に説明すると、天然皮革の物性は、その採取箇所に応じて変化し得るが、天然皮革を薄くして布部3を貼り付けることにより当該採取箇所の違いによる影響が緩和され、本表皮材1の物性の均一化を図ることが可能となる。
【0033】
なお、本表皮材1の強度を適切に確保するにあたっては、布部3の単位面積あたりの重量(いわゆる目付量)が100g/m
2以上であることが必要であり、より好ましくは100〜250g/m
2であるとよい。
【0034】
また、本実施形態では、布部3の伸縮率が皮革部2の伸縮率より高くなっている。これにより、本表皮材1は伸縮性に富んだものとなり、車両用シートに乗員が着座してシート各部が変形する際、本表皮材1が当該変形に良好に追従するようになる。
【0035】
ところで、上記の実施形態では、二層構造の布部3を例に挙げて説明したが、層の数については二層以上あればよく、
図2の(c)に示すように三層構造の布部3であってもよい。
図2の(c)に図示の布部3は、メッシュサイズが同一である表側層3c及び裏側層3d、並びにこれらの間に配置された中間層3eを有する。また、上記の実施形態では、布部3のうち、メッシュサイズがより小さい層の表面(具体的には、裏側層3bの接合面)が皮革部2の裏面に接着されていることとした。ただし、これに限定されるものではなく、
図2の(c)に図示の布部3のようにメッシュサイズがより大きい層にて皮革部2に接着されたものであってもよい。より具体的に説明すると、
図2の(c)に図示の布部3のうち、表側層3c及び裏側層3dは、メッシュサイズがより大きい層であり、針抜き編成にて形成されている。中間層3eは、メッシュサイズがより小さい層である。そして、
図2の(c)に図示の布部3は、裏側層3dの表面にて皮革部2の裏面に貼り付けられる。かかる場合に得られる表皮材は、上記の実施形態に係る表皮材(すなわち、本表皮材1)と同様、軽量化を図りつつ天然皮革の質感及び強度を確保したものとなっている。ただし、皮革部2と布部3とをより強固に貼り合せる点では、上記の実施形態の方が望ましい。
【0036】
<実施例>
次に、本表皮材1の実施例について説明する。本表皮材1の構成要素のうち、皮革部2は、厚み約1.2mmの天然皮革(例えば、牛革)を厚み0.6mmとなるようにスライス加工することで取得可能である。なお、皮革部2の乳頭層2aの表面に耐摩耗性向上のための表面処理を施して表面処理層2cを形成しておくと、好適である。
【0037】
布部3は、ダブルニット編機によってメッシュ状の布(裏布)を平編みすることで取得可能である。ここで、布部3の原糸は、繊維径110dtex/36f(換言すると、糸の太さが100d)で光沢度SD(セミダル)のポリエステル繊維からなる加工糸である。また、布を平編みする際、二層構造となるように編み、さらに、一方の層が針抜き編成となるように編む。さらにまた、布の編み条件として布の厚み及び目付量を、それぞれ、0.5mm及び100g/m
2に設定し、この編み条件に従って編まれた布を取得する。ちなみに、目付量については、前述したように100〜250g/m
2の範囲にあると好適である。
【0038】
上記の手順にて取得された布部3のうち、メッシュサイズがより小さい層である裏側層3bの表面(接合面)に接着剤を塗布し、当該接合面を皮革部2の裏面に貼り付ける。そして、以上までの工程が終了した時点で本表皮材1が完成する。
【0039】
以上までに説明してきた本表皮材1の構成については、あくまでも一例に過ぎず、他の構成も考えられる。例えば、上述した布部3は、編物や織物からなることとしたが、メッシュ状の布部を構成するものである限り、製法や材料については限定されず、編物や編物以外からなる布(例えば、樹脂繊維をメッシュ状に成形・配向させてなる布)を用いてもよい。
【符号の説明】
【0040】
1 本表皮材(車両用シートの表皮材)
2 皮革部
2a 乳頭層
2b 網様層
2c 表面処理層
3,13 布部
3a,3c 表側層
3b,3d 裏側層
3e 中間層