【実施例1】
【0030】
図1に、本実施例に係わる金属キャスク溶接構造物の構造を、
図2に、
図1中のA部を拡大した溶接構造をそれぞれ示す。
【0031】
該図において、内筒1は、その内部に放射性物質を有する複数の使用済燃料(図示せず)の集合体等を収納する容器であり、強度の高い炭素鋼等の鋼製の鋼材が用いられている。この内筒1の外側には、内筒1と同種材の鋼製の外筒2が内筒1を取り囲むように同軸状に配置されている(金属キャスク全体の強度及び剛性は、強度の高い鋼製の厚板の内筒1と外筒2及びこれらで形成する容器を密閉する複数の蓋(図示せず)等によって十分に確保されている)。内筒1の外面と外筒2の内面の間には、円周方向に略等間隔に、数十枚(所定枚数をN枚という)の伝熱銅フィン3が傾斜して配備されている。
【0032】
これらN枚の伝熱銅フィン3は、熱伝導率の高い純銅等の銅製の銅板材が用いられており、銅製の伝熱銅フィン3を用いることで、使用済燃料集合体から発生する崩壊熱を内筒1及び外筒2の外側へ逃がすための除熱性能を高めることができると共に、軽量化及びコスト低減にも寄与することができる。
【0033】
図2に示すように、N枚の伝熱銅フィン3の片方の各端面部には、内筒1側の各隅肉継手部5で溶接された内側溶接部(溶接ビード及びその溶接断面部)7が形成されており、また、他方の各端面部には、外筒2側の各隅肉継手部8で溶接された外側溶接部(溶接ビード及びその溶接断面部)10が形成されている。この伝熱銅フィン3の内側溶接部7及び外側溶接部10については、特に強度は要求されないが、収納・保管する物質の性質上、高い信頼性を確保する必要がある。
【0034】
溶接すべきN枚の伝熱銅フィン3の各隅肉継手部5、8の内筒1と伝熱銅フィン3、外筒2と伝熱銅フィン3とのそれぞれの角度θ1は、内筒1の外面又は外筒2の内面若しくは内筒1及び外筒2の両面に対して、θ1=120度±15度(105≦θ1≦135度)の範囲の広角に傾斜して形成されている。
【0035】
また、N枚の伝熱銅フィン3が隣接する各空間4は、樹脂材等のレジン(図示せず)を充填配備する場所である。これらのレジンは、使用済燃料の集合体から法線状に放出される放射線を遮蔽する物質であり、溶接終了後に、N枚の伝熱銅フィン3の傾斜面に沿って、レジンが各空間4の内部にそれぞれ充填されるものである。伝熱銅フィン3を広角に傾斜して配備することで、溶接時の作業性が容易になると共に、伝熱銅フィン3の傾斜面に沿って充填されるレジンの傾斜配備によって、放射線の遮蔽性能を高めることができる。
【0036】
本実施例における伝熱銅フィン3の両端面部を内筒1及び外筒2の両面に溶接する方法について、以下に説明する。
【0037】
図3は、本実施例に係わる金属キャスク溶接構造物の溶接手順概要の一実施例を示すフローチャートであり、
図4は、他の金属キャスク溶接構造物の溶接手順概要の一実施例を示すフローチャートである。
【0038】
図3及び
図4に示したフローチャートの主な相違点は、各隅肉継手の仮組工程を含む内筒1側の第1の溶接工程103及び各隅肉継手の仮組工程を含む外筒2側の溶接工程110の施工内容を、内筒1側のN箇所の溶接の繰り返し溶接工程105及び外筒2側のN箇所の溶接の繰り返し溶接工程112と、内筒1側の少数単位での溶接及び検査の繰り返し溶接工程106及び外筒2側の少数単位での溶接及び検査の繰り返し溶接工程113とに区分けしたことである。
【0039】
例えば、
図3に示すように、伝熱銅フィン3の溶接手順(その1)99では、溶接前にワイヤ溶着断面積Awを決定するワイヤ溶着断面積決定工程102と、所定枚数(N枚)の伝熱銅フィン3の片方端面部を内筒1側に各々突合せて隅肉継手部5をN箇所形成、又はN箇所形成すると共に仮付(例えば、仮付溶接)して仮組した後に、そのN箇所の隅肉継手部5−1、5−2・・・5−Nに繰り返し溶接する各隅肉継手の仮組工程を含む内筒1側の第1の溶接工程103及び内筒1側のN箇所の溶接の繰り返し溶接工程105と、その後に行う内筒1側の溶接品質の検査工程107の終了後で、N枚の伝熱銅フィン3の他方の端面部を外筒2側に各々突合せて隅肉継手部8をN箇所形成、又はN箇所形成すると共に仮付溶接して仮組した後に、そのN箇所の隅肉継手部8−1、8−2・・・8−Nに繰り返し溶接する各隅肉継手の仮組工程を含む外筒2側の第2の溶接工程110及びN箇所の溶接の繰り返し溶接工程112と、を備えている。
【0040】
そして、隅肉継手部8をN箇所形成すると共に仮付溶接して仮組した後に、そのN箇所の隅肉継手部8−1、8−2・・・8−Nに1パスずつ繰り返し溶接(連続溶接)することで、各隅肉継手部の仮組作業と溶接作業とをそれぞれ効率良く行うことができる。
【0041】
一方、
図4に示すように、伝熱銅フィン3の溶接手順(その2)100においては、溶接前にワイヤ溶着断面積Awを決定するワイヤ溶着断面積決定工程102の後に行う各隅肉継手の仮組工程を含む内筒1側の第1の溶接工程103では、内筒1側のN箇所の隅肉継手部5−1、5−2・・・5−Nに1パスずつ繰り返し溶接(連続溶接)するN箇所の溶接の繰り返し溶接工程105と、1〜5箇所程度に分割した隅肉継手部に溶接すると共に、その溶接後の溶接部を検査するように、溶接と検査の両作業を繰り返す少数単位での溶接及び検査の繰り返し溶接工程106とに分けている。
【0042】
例えば、少数単位に分割して溶接及び検査を繰り返す少数単位での溶接及び検査の繰り返し溶接工程106では、所定枚数(N枚)の伝熱銅フィン3を内筒1の外面に取り付て隅肉継手部をN箇所形成、又はN箇所形成すると共に仮付溶接して仮組した後に、そのN箇所の隅肉継手部5−1、5−2・・・5−Nを予め1〜5箇所程度に分割し、その分割した1〜5箇所の隅肉継手部5−1〜5−5に1パスずつ溶接すると共に、その溶接部を検査するように、隅肉継手部の溶接と検査とを繰り返すようにしている。
【0043】
一方、各隅肉継手の仮組工程を含む外筒2側の第2の溶接工程110では、内筒1側の場合と同様に、外筒2側のN箇所の隅肉継手部8−1、8−2・・・8−Nに1パスずつ繰り返し溶接(連続溶接)する外筒2側のN箇所の溶接の繰り返し溶接工程112と、1〜5箇所程度に分割した隅肉継手部に1パスずつ溶接すると共に、その溶接部を検査するように、溶接と検査の両作業を繰り返す少数単位での溶接及び検査の繰り返し溶接工程113とに分けている。
【0044】
例えば、外筒2側でも溶接と検査を繰り返す少数単位での溶接及び検査の繰り返し溶接工程113には、内筒2側の場合と同様であり、外筒2側に形成したN箇所の隅肉継手部8−1、8−2・・・8−Nを予め1〜5箇所程度に分割し、その分割した1〜5箇所の隅肉継手部8−1〜8−5に1パスずつ溶接すると共に、その溶接部を検査するように、隅肉継手部の溶接と検査とを繰り返すようにしている。
【0045】
このように、二通りある作業(連続溶接又は溶接と検査の繰り返し)の何れかを選択することで、溶接優先の作業効率向上又は検査優先の溶接品質向上を図ることができる。
【0046】
一方、内筒1側及び外筒2側の検査工程107及び114は、上述したように、本溶接した各溶接部の品質を検査する工程である。この内筒1側及び外筒2側の検査工程107及び114は、各隅肉継手の仮組工程を含む内筒1側の第1の溶接工程103と内筒1側のN箇所の溶接の繰り返し溶接工程105の終了後、又は各隅肉継手の仮組工程を含む内筒1側の第1の溶接工程103、内筒1側のN箇所の溶接の繰り返し溶接工程105、各隅肉継手の仮組工程を含む外筒2側の第2の溶接工程110、外筒2側のN箇所の溶接の繰り返し溶接工程112の終了後の必要箇所に設けられている。更に、内筒1側及び外筒2側の検査工程107及び114では、各溶接部の品質を各々検査すると共に、その検査で不合格となった溶接部分及びその近傍部を補修する補修溶接工程109、116を備えている。
【0047】
また、溶接と検査との両作業を繰り返し行う場合の内筒1側の検査工程117及び外筒2側の検査工程120では、該当する溶接部に溶接ビードが良好に形成されているか否か、割れやアンダーカット等の欠陥があるか否か、のど厚L1やビード高さH1や溶込み深さc等を満足しているか否か等の溶接品質の検査・確認を行う。
【0048】
この溶接品質の検査を行う内筒1側の検査工程117及び外筒2側の検査工程120で不合格となった場合には、不合格の溶接部分及びその近傍部を補修溶接工程119及び122で補修するようにしている。
【0049】
これらの補修溶接工程109、116、119及び122では、例えば、隅肉継手部を本溶接した時の溶接条件と略同一の補修溶接条件、又は補修溶接条件よりもMIG電圧や入熱量を増加した他の補修溶接条件を使用して、1パス肉盛して補修溶接することで、欠陥部(溶接不良部)を容易に消滅できるように肉盛補修することができる。
【0050】
なお、溶接不良部の補修方法については、別の実施例(
図7、
図10、
図14〜16)を用いて後述する。
【0051】
最初に、溶接前に行うワイヤ溶着断面積決定工程102では、所定の隅肉継手部5に形成すべき内側溶接部7ののど厚L1が伝熱銅フィン3の板厚T1以上(L1≧T1)になるように、ワイヤ送り速度Wf又は該ワイヤ送り速度Wfとワイヤ径d及び所定の溶接速度Vからワイヤ溶着断面積Awを算出して決定する。
【0052】
なお、内側溶接部7(又は外側溶接部10)ののど厚L1とは、
図3及び
図4のワイヤ溶着断面積Awの決定工程102中に示すように、伝熱銅フィン3側の溶融底部から溶接ビード表面までの最小距離のことである。また、ワイヤ溶着断面積Awの決定工程102の箇所に図示した隅肉継手部5の内側溶接部7は、内筒1の外面に伝熱銅フィン3の一方の端面部を溶接して形成することを想定して描いているが、外筒2の内面に伝熱銅フィン3の他方の端面部を溶接して他方の外側溶接部10を形成することも想定内であり、
図2に示した溶接構造と同様であることから省略している。
【0053】
次に、
図3及び
図4に示す各隅肉継手の仮組工程を含む内筒1側の第1の溶接工程103では、本溶接前に所定枚数(N枚)の伝熱銅フィン3を内筒1側に仮付溶接して仮組するようにしている。例えば、
図5に示すように、鋼製の内筒1の外面に所定枚数(N枚)の伝熱銅フィン3の片方の各端面部を突き合せて広角形状の各隅肉継手部5−1、5−2・・・5−Nを略等間隔に各々形成、又は各々形成すると共に、仮付(例えば、仮付溶接)して仮組する。
【0054】
図5中の右側に示すように、隅肉継手部5−1、5−2・・・5−Nを形成及び仮組する場合には、例えば、TIG溶接等の溶接法によって仮付溶接し、所定長さX1の仮付部(k1、k2・・・kp)を所定間隔X2毎に形成して、隅肉継手部を仮組すると良い。仮付溶接すべき仮付長さX1は、15mm以上50mm以下(15≦X1≦50mm)の範囲であり、仮付間の距離間隔X2は、200mm以上600mm以下(200≦X2≦600mm)の範囲にすると良い。
【0055】
また、仮付個数nについては、本溶接すべき溶接線長さXwによって変化するが、例えば、溶接線長さXwを仮付間の距離間隔X2で略均等分割した数に開始側又は終了側の1つを加えた合計数にすれば、(溶接線長さXw/距離間隔X2)+1となり、仮付個数nを容易に決定することができる。また、各仮付位置についても、溶接線の開始位置と、その開始位置から前記距離間隔X2毎の各位置と溶接線の終了位置とに決定すれば良い。また、仮付溶接すべき継手母材の溶接線(6−1、6−2・・・6−N)は、本溶接の場合と同程度であり、伝熱銅フィン3の端面角部から伝熱銅フィン表面側に溶接トーチをシフトさせる距離S3(第2の距離)は、1mm以上3mm以下(1≦S3≦3mm)の範囲にすると良い。
【0056】
なお、仮付長さX1が15mmより短過ぎると、仮付長さ不足に伴う強度不足になり易く、反対に、50mmより長過ぎると、本溶接の施工時に仮付部を再溶融させて本溶接ビードを形成させるのに支障が生じ易い。また、仮付間の距離間隔X2が200mmより短過ぎると、仮付個数の増加及び仮付作業の時間増加に至り、反対に、600mmより長過ぎると、仮付個数不足に伴う強度不足になり易く、また、本溶接の施工時に反り変形が生じ易いので好ましくない。また、溶接トーチをシフトさせるシフト距離S3が1mmより短過ぎると、仮付溶接中のアーク及び溶融プールが鋼側(内筒1側)に片寄り易くなることから、反対側の伝熱銅フィン3側の溶融不足やアンダーカット発生に伴う強度不足になり易い。一方、シフト距離S3が3mmより長過ぎると、仮付溶接中のアーク及び溶融プールが伝熱銅フィン3側に片寄り易くなることから、反対側の内筒1側の溶融不足や不正ビードになり易いので好ましくない。
【0057】
このようにして決定した仮付位置に所定長さ(X1)ずつ、所定間隔(X2)毎にTIG仮付溶接を行うことで、内筒1側の場合でも、所定長さずつの仮付部を容易にn個形成(k1、k2・・・kn)することができ、また、本溶接すべき溶接線の曲がりや反り変形が小さい隅肉継手部を容易に仮組製作することができる。また、本仮付方法による仮付によって金属キャスク溶接構造物の溶接組立及び製造を継続することもできる。
【0058】
また、各隅肉継手部5−1、5−2・・・5−Nの所定位置にn個の仮付部を形成するためのTIG仮付溶接では、この仮付溶接後の本溶接で使用予定の溶接ワイヤ及びシールドガスと同一成分のSiCuワイヤ及びArガスとHeガスとの混合ガスを使用すると良い。
【0059】
また、仮付溶接すべき隅肉継手部5−1の溶接線6−1上を通過するように溶接トーチを配置し、溶接トーチの先端開口部から仮付すべき隅肉継手部5−1及びその近傍表面部に向かって混合ガスを流出させて仮付開始位置にTIGアークを発生させ、給電無のSiCuワイヤをTIGアーク中及び溶融プール内に低速送給し、先行ワイヤ後続TIGアークの方向に溶接トーチを走行移動させ、隅肉継手部に所定長さのTIG仮付溶接を施工して仮付ビードを形成することで、所定の仮付長さX1の仮付ビード(k1、k2・・・kn)を良好に得ることができる。
【0060】
また、SiCuワイヤを用いてTIG仮付溶接することで、銅と鋼との異材溶接であっても、銅と鋼及びSiとが固溶可能な状態で適度に混合し合って割れのない良好な仮付ビード及び仮付溶接断面部を得ることができる。更に、複数の仮付部を有する隅肉継手部の本溶接を行うことが可能となる。
【0061】
なお、
図5中には、伝熱銅フィン3を2枚のみ図示して他の部分を省略してあるが、溶接すべき所定枚数の伝熱銅フィン3は、内筒1の外面の円周方向に略等間隔に傾斜配備されている。
【0062】
図6は、
図5に示した内筒側の隅肉継手部に本溶接した溶接部の形状を示す部分斜視図である。
【0063】
本実施例の内筒1側の本溶接では、外筒2は配備せずに、伝熱銅フィン3を内筒1の外面に傾斜配備して広角形状の隅肉継手部5−1、5−2・・・5−Nを形成すると共に仮付して仮組した後に、TIG−MIG溶接トーチによる本溶接の先行TIGと後続MIGとの複合溶接又はMIG溶接トーチによる本溶接のMIG溶接によって、1パスずつ順番に溶接施工して溶接ビード及び溶接断面部7−1、7−2・・・7−Nを形成するようにしている。
【0064】
このように、仮組(仮付溶接)後の各隅肉継手部5−1、5−2・・・5−Nの溶接線上から本溶接を1パスずつ順番に溶接施工することで、十分な大きさを有するのど厚L1とビード高さH1及び除熱に有効な熱伝導断面積を確実に確保でき、浅溶込みの溶接ビード及び溶接断面部7−1、7−2・・・7−Nを得ることができる。
【0065】
また、各隅肉継手の仮組工程を含む内筒1側の第1の溶接工程103(本溶接工程)は、上述したように、仮組及び溶接すべき内筒1側の各隅肉継手を仮付溶接して仮組した後に本溶接する工程である。
【0066】
図3〜
図6に示したように、各隅肉継手の仮組工程を含む内筒1側の第1の溶接工程103では、所定枚数(N枚)の伝熱銅フィン3を内筒1の外面に取り付て隅肉継手部5をN箇所形成、又はN箇所形成すると共に仮付溶接して仮組し、その後に、仮付有継手部に本溶接を施工するようにしている。仮組後の内筒1側の本溶接では、例えば、所定枚数(N枚)の伝熱銅フィン3を内筒1の外面に取り付て隅肉継手部5をN箇所形成、又はN箇所形成すると共に仮付溶接して仮組した後に、そのN箇所の隅肉継手部5−1、5−2・・・5−Nに1パスずつ繰り返し溶接(連続溶接)する内筒1側のN箇所の溶接の繰り返し溶接工程105と、N箇所の隅肉継手部5−1、5−2・・・5−Nを予め1〜5箇所程度に分割し、その分割した1〜5箇所の隅肉継手部5−1、5−2、5−3、5−4、5−5を溶接して、その溶接部を検査するように、溶接と検査の両作業を繰り返す内筒1側の少数単位での溶接と検査の繰り返し溶接工程106とに分けている。
【0067】
内筒1側のN箇所の溶接(本溶接)の繰り返し溶接工程105では、パス毎に溶接すべきN箇所の隅肉継手部5−1、5−2・・・5−Nの各溶接開始位置から終了位置までの各溶接線(伝熱銅フィン3の下位表面に点線で示す溶接線6−1、6−2・・・6−N)に対して、シリコン入りのCuSiワイヤを用い、TIG−MIG溶接トーチによる本溶接の先行TIGと後続MIGとの複合溶接、又はMIG溶接トーチによる本溶接のMIG溶接によって、1パスずつ順番に溶接施工する。
【0068】
このため、内筒1側のN箇所の溶接の繰り返し溶接工程105では、例えば、溶接対象の継手(内筒1及び伝熱銅フィン3の両方)側を回転駆動装置等で回転移動させて、仮付溶接の場合と同様に、本溶接すべき隅肉継手部5−1の溶接線6−1を鉛直方向に姿勢変更した後に、溶接線6−1上に一体構造のTIG−MIG溶接トーチ、又はMIG溶接トーチを下向姿勢で位置決めする。伝熱銅フィン3の両端面部が平坦面形状の場合の溶接線は、端面角部から伝熱銅フィン3の表面側にワイヤ位置又はトーチ位置(電極位置含む)を所定距離だけシフトさせた位置であり、そのシフト量S1(第1の距離S1)は、0mm以上4mm以下(0≦S1≦4mm)の範囲で設定すると良い。
【0069】
また、下向姿勢の一体構造のTIG−MIG溶接トーチ又はMIG溶接トーチを、溶接開始位置から終了位置までの溶接線6−1上に沿って走行させながら1パス溶接して溶接ビード及び溶接断面部7−1、7−2を形成するようにすると良い。
【0070】
このように、ワイヤ位置又はトーチ位置を伝熱銅フィン3側にシフトさせて本溶接することで、伝熱銅フィン3の加熱溶融が促進されると共に、鋼側の溶込み深さcが抑制されるので、十分な大きさを有するのど厚L1及び除熱に有効な熱伝導断面積を確実に確保でき、浅溶込みの溶接ビード及び溶接断面部7−1、7−2を得ることができる。
【0071】
溶接線6−1の1パス溶接が終了すれば、溶接トーチを回避移動させ、次の溶接線6−2の溶接では、継手側を再び回転移動させて、該当する溶接線6−2を鉛直方向に姿勢変更した後に、回避移動させていた溶接トーチを溶接線6−2上に沿って移動させて下向姿勢で位置決めを行う。溶接トーチを溶接線6−2上に沿って走行させながら1パス溶接すると良い。
【0072】
このように、該当する隅肉継手部5の溶接線を姿勢変更する動作、溶接線上に溶接トーチを位置決めする動作、その溶接トーチを走行させながら溶接線上に1パス溶接を施工する動作、1パス溶接施工後に溶接トーチを回避させる動作等の一連の繰り返し動作を行うことで、所定枚数(N枚)の隅肉継手部の各溶接線6−1、6−2・・・6−Nに、
図6に示すように、それぞれ溶接ビード及び溶接断面部7−1、7−2・・・7−Nを形成することができる。
【0073】
なお、先行TIGと後続MIGとの複合溶接又はMIG溶接については、別の実施例(
図11〜14)を用いて後述する。
【0074】
一方、内筒1側の溶接(1〜5箇所)と、その溶接部の検査を繰り返す内筒1側の少数単位での溶接と検査の繰り返し溶接工程106でも、溶接施工は同様であり、上述したように、下向姿勢の一体構造のTIG−MIG溶接トーチ、又はMIG溶接トーチを溶接開始位置から終了位置までの溶接線6−1上に沿って走行させながら1パス溶接して、溶接ビード及び溶接断面部7−1を形成するようにすると良い。溶接後には内筒1側の検査工程117で溶接品質の検査を行い、また、この溶接品質の検査で不合格となった場合には、不合格の溶接部分及びその近傍部を補修溶接工程119で補修するようにしている。
【0075】
CuSiワイヤを用いて先行TIGと後続MIGとの複合溶接又はMIG溶接することで、銅と鋼との異材溶接であっても、銅と鋼及びSiとが固溶可能な状態で適度に混合し合って割れのない良好な溶接ビード及び溶接断面部(溶接部)を形成することができる。
【0076】
例えば、Si及びMnは、CuやFeに対して溶け合う共晶型IIに属する物質であり、このため、該Si及びMn入りのCuSiワイヤを用いて溶接施工することで、上述したように、銅と鋼及びSiが固溶可能な状態で適度に混合し合って割れのない良好な溶接部が得られるものと推定される。
【0077】
一方、熱伝導率が高い純銅製のCuワイヤを使用することも可能であるが、純銅製のCuワイヤの場合には、シリコン入りのCuSiワイヤと比べて、銅と鋼との異材溶接に対して溶接性及び溶接品質が劣ると共に、割れ感受性も高いことから本実施例の溶接方法には採用しなかった。
【0078】
そして、本実施例では、溶接施工された各隅肉継手部5−1、5−2・・・5−Nの溶接ビード及び溶接断面部7−1、7−2・・・7−Nに、少なくとも溶接部ののど厚L1が、伝熱銅フィン3の板厚T1以上(L1≧T1)に形成され、かつ、内筒1側の溶込み深さcが、0.05mm以上6mm以下(0.05≦c≦6mm)に形成されている。好ましくは、溶込み深さcを0.05mm以上4mm以下(0.05≦c≦4mm)に形成する良い。
【0079】
これによって、内筒1側の各伝熱銅フィン3の溶接箇所に、十分な大きさを有するのど厚L及び除熱に有効な熱伝導断面積を確実に確保でき、かつ、割れ等の欠陥がない品質良好な溶接ビード及び溶接断面部を得ることができる。また、除熱性能の向上及び製造コスト低減にも寄与することができる。更に、溶接部の引張強度についても、100N/mm
2以上の強度を確実に得ることができる。
【0080】
上述したのど厚L1が伝熱銅フィン3の板厚T1よりも小さ過ぎると、例えば、内筒1側から内側溶接部7を経由して伝熱銅フィン3側に熱を伝導するのに必要な熱伝導断面積が減少するため、除熱性能の向上に支障をきたすことになる。そのため、溶接部ののど厚L1を伝熱銅フィン3の板厚T1以上(L1≧T1)、ビード高さH1をT1以上(H1≧T1)に形成している。
【0081】
また、伝熱銅フィン3側のビード止端部に発生することがあるアンダーカット深さRを(0.1×T1)以下に抑制している。更に、内筒1側の溶込み深さcが深過ぎると、溶接部の断面積に対する鋼の溶融比率(希釈率)が増加するため、溶接部分の熱伝導率が減少すると共に、割れ感受性が高くなり易い。溶込み深さcが浅過ぎると、鋼側との接合不足によって引張強度が低下し易くなる。
【0082】
そのため、上述したように、内筒1側の溶込み深さcを0.05mm以上6mm以下(0.05≦c≦6mm)に形成している。好ましくは溶込み深さcを0.05mm以上4mm以下(0.05≦c≦4mm)に形成すると良い。
【0083】
一方、各伝熱銅フィン3を、各隅肉継手の仮組工程を含む内筒1側の第1の溶接工程103(本溶接工程)で溶接する過程で発生することがあるアンダーカット過大や、のど厚不足又はビード高さ不足等の溶接不良部、又は溶接後の品質検査工程107、117で検出されることがあるアンダーカット過大、のど厚不足又はビード高さ不足等の溶接不良部は、補修溶接(肉盛補修)する必要がある。
【0084】
図7は、本発明の実施例1に係わる金属キャスク溶接構造物における内筒側の検査工程での合否判定、及び補修溶接工程で溶接不良部を補修した補修溶接部の形状を示す部分斜視図である。
【0085】
本実施例の内筒側の検査工程107、117では、溶接品質の合否判定を行うため、例えば、のど厚L1がL1<T1、又はビード高さH1がH1<T1、又はアンダーカット深さRがR>(0.1×T1)の時には、不合格(溶接不良)と判定し、また、L1≧T1、又はH1≧T1、又はR≦(0.1×T1)の時には、合格(溶接良好)と判定するようにしている。不合格判定の溶接不良部及びその近傍部は、補修溶接工程109、119で補修溶接を実施する。
【0086】
例えば、不合格判定の溶接不良部を補修する場合には、各隅肉継手の仮組工程を含む内筒1側の第1の溶接工程103(本溶接工程)で使用したTIG−MIG溶接トーチ又はMIG溶接トーチと同一又は同種の溶接トーチ、同一成分の溶接ワイヤ及びシールドガスをそれぞれ使用すると共に、各隅肉継手の仮組工程を含む内筒1側の第1の溶接工程103で施工した時の溶接方向と同一方向にTIG−MIG溶接トーチ又はMIG溶接トーチを走行させ、先行TIGと後続MIGとの複合溶接又はMIG溶接によって、溶接不良部を有する溶接ビード部7−1、7−2の上から肉盛するように、溶接不良部及びその近傍部に補修溶接を施工して溶接不良部を消滅させ、かつ、良好な補修溶接ビード(補修ビード)70−1を形成するようにしている。
【0087】
また、補修溶接工程109、119で溶接不良部を補修する場合には、各隅肉継手の仮組工程を含む内筒1側の第1の溶接工程103で使用した溶接条件と略同一の補修溶接条件、又は補修溶接条件よりもMIG電圧や入熱量を増加した他の補修溶接条件を使用し、各隅肉継手の仮組工程を含む内筒1側の第1の溶接工程103で形成された溶接ビード部7−1、7−2の銅側のビード止端部から伝熱銅フィン3の表面側に所定距離だけシフトさせた位置の線上に、TIG−MIG溶接トーチ又はMIG溶接トーチを配置すると良い。
【0088】
そして、溶接不良部及びその近傍部の線上を通過するようにTIG−MIG溶接トーチ又はMIG溶接トーチを走行させ、先行TIGと後続MIGとの複合溶接又はMIG溶接によって、溶接不良部を有する溶接ビード部7−1、7−2の上から肉盛するように、溶接不良部及びその近傍部に補修溶接を施工して溶接不良部を消滅させると共に、良好な補修溶接ビード70−1を形成するようにしている。
【0089】
このように補修溶接することで、のど厚不足又はビード高さ不足及びアンダーカット深さ過大等の溶接不良部を確実に消滅させることができ、品質良好な溶接ビード(補修断面部)70−1、70−2を得ることができる。また、本補修方法による補修によって、金属キャスク溶接構造物の製造を継続することもできる。
【0090】
補修終了後に行う補修溶接部の品質検査1071、1171で、補修後ののど厚L2≧T1、ビード積層高さH2≧T1、アンダーカット深さR≦(0.1×T1)に回復すると合格判定となり、次工程の各隅肉継手の仮組工程を含む外筒2側の第2の溶接工程110に進むようにしている。
【0091】
このように、溶接不良が発生した場合でも、独自の補修溶接の施工によって、のど厚不足やビード高さ不足及びアンダーカット深さ過大等の溶接不良部を確実に消滅させることができ、品質良好な補修溶接ビード(補修断面部)70−1、70−2を得ると共に、除熱性能向上に寄与する大きな溶接のど厚及び熱伝導断面積を確保することができる。
【0092】
次に、各隅肉継手の仮組工程を含む外筒2側の第2の溶接工程110(本溶接工程)は、仮組及び溶接すべき外筒2側の各隅肉継手を仮付溶接して仮組した後に本溶接する工程である。
【0093】
図3及び
図4に示しように、各隅肉継手の仮組工程を含む外筒2側の第2の溶接工程110では、各隅肉継手の仮組工程を含む内筒1側の第1の溶接工程103、内筒1側のN箇所の溶接の繰り返し溶接工程105、内筒1側の少数単位での溶接と検査の繰り返し溶接工程106の終了後又は内筒1側の検査工程107、117の終了後に、外筒2側の各隅肉継手を仮組(仮付溶接)し、その後に、仮付有継手部に本溶接を施工するようにしている。
【0094】
例えば、外筒2側の仮組では、
図8に示すように、内筒1側に溶接済の伝熱銅フィン3の外周側に一体の円筒状の外筒2を配置して、所定枚数(N)の伝熱銅フィン3の他方の各端面部を突き合せて、広角形状の各隅肉継手部8−1、8−2・・・8−Nを略等間隔に各々形成、又は前記各々形成すると共に仮付溶接して仮組する。
【0095】
図8中の右側に示すように、隅肉継手部8−1、8−2・・・8−Nを形成及び仮組する場合には、例えば、TIG溶接等の溶接法によって仮付溶接し、所定長さX1の仮付部(k1、k2・・・kp)を所定間隔X2毎に形成して隅肉継手部を仮組すると良い。
【0096】
上述した内筒1側の場合と同様に、外筒2側の場合でも、仮付溶接すべき仮付長さX1は、15mm以上50mm以下(15≦X1≦50mm)の範囲であり、仮付間の距離間隔X2は、200mm以上600mm以下(200≦X2≦600mm)の範囲であると良い。また、仮付個数nについては、本溶接すべき溶接線長さXwによって変化するが、例えば、溶接線長さXwを仮付間の距離間隔X2で略均等分割した数に開始側又は終了側の1つを加えた合計数にすれば、(溶接線長さXw/距離間隔X2)+1となり、仮付個数nを容易に決定することができる。また、各仮付位置についても、溶接線の開始位置と、その開始位置から距離間隔X2毎の各位置と溶接線の終了位置とに決定すれば良い。
【0097】
このようにして決定した仮付位置にTIG仮付溶接を所定長さ(X1)ずつ、所定間隔(X2)毎に行うことで、内筒1側の場合と同様に、外筒2側の場合でも、所定長さずつの仮付部を容易にn個形成することができ、また、本溶接すべき溶接線の曲がりや反り変形が小さい隅肉継手部を容易に仮組製作することができる。また、上述したように、本仮付方法による仮付によって、金属キャスク溶接構造物の溶接組立及び製造を継続することもできる。
【0098】
なお、各隅肉継手部5−1、5−2・・・5−Nの所定位置にn個の仮付部を形成するためのTIG仮付溶接では、この仮付溶接後の本溶接で使用予定の溶接ワイヤ及びシールドガスと同一成分のSiCuワイヤ及びArガスとHeガスとの混合ガスを使用すると良い。
【0099】
また、内筒1側の仮付溶接の場合と同様に、外筒2の場合でも、仮付溶接すべき隅肉継手部8−1の溶接線9−1上を通過するように溶接トーチを配置し、溶接トーチの先端開口部から仮付すべき隅肉継手部8−1及びその近傍表面部に向かって混合ガスを流出させて仮付開始位置にTIGアークを発生させ、給電無のSiCuワイヤをTIGアーク中及び溶融プール内に低速送給し、先行ワイヤ後続TIGアークの方向に溶接トーチを走行移動させ、隅肉継手部に所定長さの仮付溶接を施工して仮付ビードを形成するTIG仮付溶接を施工し仮付ビードを形成することで、所定の仮付長さX1の仮付ビード(k1、k2・・・kn)を良好に得ることができる。
【0100】
また、SiCuワイヤを用いてTIG仮付溶接することで、銅と鋼との異材溶接であっても、銅と鋼及びSiとが固溶可能な状態で適度に混合し合って割れのない良好な仮付ビード及び仮付溶接断面部を得ることができる。更に、複数の仮付部を有する隅肉継手部の本溶接を行うことが可能となる。
【0101】
なお、
図8中には、
図5と同様に、伝熱銅フィン3を2枚のみ図示して他の部分を省略しているが、溶接すべき所定枚数(N)の伝熱銅フィン3は、内筒1及び外筒2の両面に略等間隔に傾斜配備されており、かつ、内筒1側の溶接ビード及び溶接断面部7−1、7−2・・・7−Nは既に形成済であり、継手側の姿勢を反転して図示している。
【0102】
図9は、
図8に示した外筒側の隅肉継手部に本溶接した溶接部の形状を示す部分斜視図である。
【0103】
本実施例の外筒2側の本溶接では、伝熱銅フィン3を外筒2の内面に傾斜配備して広角形状の隅肉継手部8−1、8−2・・・8−Nを形成すると共に仮付して仮組した後に、内筒1側の場合と同様に、TIG−MIG溶接トーチによる本溶接の先行TIGと後続MIGとの複合溶接又はMIG溶接トーチによる本溶接のMIG溶接によって、1パスずつ順番に溶接施工して溶接ビード(溶接断面部)10−1、10−2・・・10−Nを形成するようにしている。
【0104】
このように、仮組(仮付溶接)後の各隅肉継手部8−1、8−8・・・8−Nの溶接線上から本溶接を1パスずつ順番に溶接施工することで、十分な大きさを有するのど厚L1とビード高さH1及び除熱に有効な熱伝導断面積を確実に確保でき、浅溶込みの溶接ビード(溶接断面部)10−1、10−2・・・10−Nを得ることができる。
【0105】
また、各隅肉継手の仮組工程を含む外筒2側の第2の溶接工程110では、
図3、
図4、
図8及び
図9に示すように、外筒2側に隅肉継手部をN箇所形成、又はN箇所形成すると共に仮付溶接して仮組した後に、そのN箇所の隅肉継手部8−1、8−2・・・8−Nに1パスずつ繰り返し溶接(連続溶接)する外筒2側のN箇所の溶接(本溶接)の繰り返し溶接工程112と、1〜5箇所程度の隅肉継手部8−1、8−2・・・8−Nに1パスずつ溶接すると共に、その溶接後の溶接部を検査するように溶接と検査の両作業を繰り返す外筒2側の少数単位での溶接と検査の繰り返し溶接工程113とに分けている。
【0106】
例えば、外筒2側のN箇所の溶接の繰り返し溶接工程112では、内筒1側のN箇所の溶接の繰り返し溶接工程105の場合と同様に、パス毎に溶接すべきN箇所の隅肉継手部8−1、8−2・・・8−Nの各溶接開始位置から終了位置までの各溶接線(伝熱銅フィン3の下位表面に記載した点線で示す溶接線9−1、9−2・・・9−Nに対して、シリコン入りのCuSiワイヤを用い、先行TIGと後続MIGとの複合溶接又はMIG溶接によって、1パスずつ順番に溶接施工する。
【0107】
このため、内筒1側の場合と同様に、外筒2側の本溶接の場合でも、溶接対象の継手(内筒1と外筒2及び伝熱銅フィン3)側を回転駆動装置等で回転移動させて、仮付溶接の場合と同様に、本溶接すべき隅肉継手部8−1の溶接線9−1を鉛直方向に姿勢変更した後に、溶接線9−1上に、一体構造のTIG−MIG溶接トーチ又はMIG溶接トーチを下向姿勢で位置決めする。
【0108】
上述したように、伝熱銅フィン3の両端面部が平坦面形状の場合の溶接線は、端面角部から伝熱銅フィン3の表面側にワイヤ位置又はトーチ位置(電極位置含む)を所定距離だけシフトさせた位置であり、そのシフト量S1は、0≦S1≦4mmの範囲で設定すると良い。また、下向姿勢の一体構造のTIG−MIG溶接トーチ又はMIG溶接トーチを、溶接開始位置から終了位置までの溶接線9−1上に沿って走行させながら1パス溶接して溶接ビード(溶接断面部)10−1を形成するようにすると良い。
【0109】
このように、ワイヤ位置又はトーチ位置を伝熱銅フィン3側にシフトさせて溶接することで、伝熱銅フィン3の加熱溶融が促進されると共に鋼側の溶込み深さが抑制されるので、十分な大きさを有するのど厚L1とビード高さH1及び除熱に有効な熱伝導断面積を確実に確保でき、浅溶込みの溶接ビード及び溶接断面部を得ることができる。
【0110】
溶接線9−1の1パス溶接が終了すれば、溶接トーチを回避移動させ、次の溶接線9−2の溶接及びそれ以降の溶接線の溶接も同様であり、上述したように、該当する隅肉継手部の溶接線を姿勢変更する動作、溶接線上に溶接トーチを位置決めする動作、溶接トーチを走行させながら溶接線上に1パス溶接を施工する動作、1パス溶接施工後に溶接トーチを回避させる動作等の一連の繰り返し動作を行うことで、所定枚数(N枚)の隅肉継手部の各溶接線9−1、9−2・・・9−Nに、それぞれ溶接ビード(溶接断面部)10−1、10−2・・・10−Nを形成することができる。
【0111】
一方、外筒2側の溶接(1〜5箇所)と、その溶接部の検査とを繰り返す外筒2側の少数単位での溶接と検査の繰り返し溶接工程113でも、内筒1側の場合と同様であり、上述したように、下向姿勢の一体構造のTIG−MIG溶接トーチ又はMIG溶接トーチを、溶接開始位置から終了位置までの溶接線9−1上に沿って走行させながら1パス溶接して溶接ビード(溶接断面部)10−1を形成するようにすると良い。溶接後に外筒2側の溶接品質の検査工程120を行い、また、この外筒2側の溶接品質の検査工程120で不合格となった場合は、不合格の溶接部分及びその近傍部を補修溶接工程122で補修するようにしている。
【0112】
また、
図4、
図8及び
図9に示したように、溶接施工された各隅肉継手部8−1、8−2・・・8−Nの溶接ビード(溶接断面部)10−1、10−2・・・10−Nには、少なくとも溶接部ののど厚L1が伝熱銅フィン3の板厚T1以上(L1≧T1)、ビード高さH1がT1以上(H1≧T1)に形成されており、また、アンダーカット深さRは(0.1×T1)以下に抑制されている。
【0113】
これによって、上述した内筒1側の場合と同様に、外筒2側の各伝熱銅フィン3の溶接箇所でも、十分な大きさを有するのど厚L及び除熱に有効な熱伝導断面積を確実に確保でき、かつ、割れ等の欠陥がない品質良好な溶接ビード(溶接断面部)10−1、10−2・・・10−Nを得ることができる。
【0114】
外筒2側の繰り返し溶接が終了した後の外筒2側の検査工程114では、内筒1側の溶接検査と同様に、外筒2側の各溶接部に溶接ビードが良好に形成されているか否か、割れやアンダーカット等の欠陥があるか否か、のど厚L1やビード高さH1や溶込み深さc等を満足しているか否か等の溶接品質の検査・確認を行う。合格(工程115)であれば、次工程125のステップに進み、不合格の溶接箇所があれば、補修溶接工程116に進み、不合格の溶接箇所及び近傍を補修溶接するようにしている。
【0115】
内筒1側の場合と同様に、外筒2側の溶接部に発生したアンダーカット過大、のど厚不足又はビード高さ不足等の溶接不良部は、補修溶接(肉盛補修)する必要がある。
図10に示すように、外筒2側の検査工程114、120では、溶接品質の合否判定を行うため、例えば、のど厚L1がL1<T1、又はビード高さH1がH1<T1、又はアンダーカット深さRがR>(0.1×T1)の時は不合格(溶接不良)と判定し、不合格判定の溶接不良部及びその近傍部は、補修溶接工程116、122で補修溶接を実施する。
【0116】
内筒1側の場合と同様に、不合格判定の溶接不良部を補修溶接工程116、122で補修する場合には、各隅肉継手の仮組工程を含む外筒2側の第2の溶接工程110(本溶接工程)で使用したTIG−MIG溶接トーチ又はMIG溶接トーチと同一又は同種の溶接トーチ、同一成分の溶接ワイヤ及びシールドガスをそれぞれ使用すると共に、各隅肉継手の仮組工程を含む外筒2側の第2の溶接工程110で施工した時の溶接方向と同一方向にTIG−MIG溶接トーチ又はMIG溶接トーチを走行させ、先行TIGと後続MIGとの複合溶接又はMIG溶接によって、溶接不良部を有する溶接ビード(溶接断面部)10−1の上から肉盛するように、溶接不良部及びその近傍部に補修溶接を施工して溶接不良部を消滅させると共に、良好な補修溶接ビード100−1を形成するようにしている。
【0117】
また、補修溶接工程116、122で溶接不良部を補修する場合には、上述したように、各隅肉継手の仮組工程を含む第1の溶接工程110で使用した溶接条件と略同一の補修溶接条件、又は補修溶接条件よりもMIG電圧や入熱量を増加した他の補修溶接条件を使用し、各隅肉継手の仮組工程を含む外筒2側の第2の溶接工程110で形成された補修溶接ビード10−1の銅側のビード止端部から伝熱銅フィン3表面側に所定距離だけシフトさせた位置の線上に、TIG−MIG溶接トーチ又はMIG溶接トーチを配置すると良い。
【0118】
そして、溶接不良部及びその近傍部の線上を通過するようにTIG−MIG溶接トーチ又はMIG溶接トーチを走行させ、先行TIGと後続MIGとの複合溶接又はMIG溶接によって、溶接不良部を有する溶接ビード(溶接断面部)10−1の上から肉盛するように、溶接不良部及びその近傍部に補修溶接を施工して溶接不良部を消滅させると共に、良好な補修溶接ビード100−1を形成するようにしている。
【0119】
このように補修溶接することで、のど厚L1不足又はビード高さH1不足及びアンダーカット深さR過大等の溶接不良部を確実に消滅させることができ、品質良好な補修溶接ビード100−1を得ることができる。また、上述したように、本補修方法による補修によって金属キャスク溶接構造物の製造を継続することもできる。
【0120】
補修溶接(肉盛補修)すべき補修箇所は、主に不合格判定された溶接不良部及びその近傍部であり、上述したように、溶接不良部を有する溶接ビード10−1の上から肉盛するように、溶接不良部及びその近傍部に補修溶接を施工すると良い。なお、合格判定の溶接良好部には補修溶接を施工する必要性がないので省略すれば良い。
【0121】
そして、補修終了後に行う補修溶接部の品質検査1141、1201で、補修後ののど厚L2≧T1、ビード積層高さH2≧T1、アンダーカット深さR≦(0.1×T1)に回復すると合格判定となり、次工程125に進むようにしている。
【0122】
このように、外筒2側の溶接箇所に溶接不良が発生した場合でも、内筒2側の場合と同様に、独自の補修溶接の施工によって、のど厚L1不足やビード高さH1不足及びアンダーカット深さR過大等の溶接不良部を確実に消滅させることができ、品質良好な補修溶接ビード100−1を得ると共に、除熱性能向上に寄与する大きな溶接のど厚及び熱伝導断面積を確保することができる。
【0123】
図11及び
図12は、本実施例に係わる一体構造のTIG−MIG溶接トーチの概略構成及びトーチ配置の一実施例を示すものである。
【0124】
図11に示すように、一体構造のTIG−MIG溶接トーチ11の内部には、タングステン等の非消耗電極13、その非消耗電極13の先端部及び溶接部分に向けて第1のシールドガス14を流出させる第1のガス通路(図示せず)等を備えたTIGユニット12と、CuSiワイヤ等の消耗ワイヤ18(溶接ワイヤともいう)、その消耗ワイヤ18が挿通するワイヤ通路(図示せず)、消耗ワイヤ18の先端部及び溶接部分に向けて第2のシールドガス19を流出させる第2のガス通路等を備えたMIGユニット17とが配備されている。
【0125】
第1及び第2のシールドガス14及び19は、ガスの種類や成分を変更可能であるが、ここではArガスとHeガスとの混合ガスをシールドガスに使用している。銅と鋼との溶接にArガスとHeガスとの混合ガスを使用することで、純Arガスの場合と比べて、電位傾度が高く、溶接性や濡れ性等が優れており、品質良好な溶接部を得ることが容易となる。図示していないが、この他にも、TIG−MIG溶接トーチ11を循環水で冷却する水路が設けられている。
【0126】
TIG−MIG溶接トーチ11は、鋼製の内筒1と銅製の伝熱銅フィン3との隅肉継手部5の溶接線6に対して、走行移動可能な長尺アーム31の先端部に取付冶具(図示せず)を介して略下向姿勢に取付け、又は長尺アーム31の先端部に取付冶具及び左右・上下移動可能な2軸駆動テーブル(図示せず)を介して取付け、かつ、溶接線6−1方向に配置されている。
【0127】
また、走行移動可能な長尺アーム31の代わりに、多関節可動式の溶接ロボットを用い、この溶接ロボットの手首部にTIG−MIG溶接トーチ11を配置(取付)して、TIG−MIG溶接トーチ11を走行移動させながら、先行TIGと後続MIGとの複合溶接を隅肉継手部の溶接線の開始位置から終了位置まで溶接施工するようにしても良い。
【0128】
更に、先行TIGの非消耗電極13側のTIGユニット12は、溶接進行方向と逆方向側に後退角−α1で傾斜配置され、また、後続MIGの消耗ワイヤ18側のMIGユニット17は、溶接進行方向に前進角+α2で傾斜して配置されている。
【0129】
先行TIG側の後退角−α1は、0〜45度の範囲にすると良い。好ましくは15〜30度の範囲に配置するとさらに良い。他方の後続MIG側の前進角+α2は、15〜45度の範囲にすると良い。好ましくは15〜30度の範囲に配置するとさらに良い。
【0130】
また、非消耗電極13の先端部の延長線が継手母材の溶接線6と交差する位置から消耗ワイヤ18の先端部までの両電極間の距離間隔f1は、3〜9mmの範囲にすると良い。好ましくは4〜7mmの範囲に配置するとさらに良い。また、継手母材の溶接線6から非消耗電極13の先端部までの電極高さf2は、3〜9mmの範囲にすると良い。好ましくは4〜7mmの範囲に配置するとさらに良い。
【0131】
このように、TIG−MIG溶接トーチ11を配置して溶接線上を走行移動及び溶接動作させることで、先行TIGと後続MIGとの複合溶接を安定に施工することができる。
【0132】
なお、TIGユニット12の後退角−α1及びMIGユニット17の前進角+α2が15度よりも小さ過ぎると、例えば、非消耗電極13と消耗ワイヤ18との距離間隔f1を所定範囲に接近させることができなくなり、また、TIGアーク22とMIGアーク23で形成する1つの溶融プール24の形状が細長く不安定になり易い。
【0133】
一方、後退角−α1及び前進角+α2が上述した角度範囲よりも大き過ぎると、MIGアーク23によって溶融される消耗ワイヤ18の溶滴が、スパッタとなって先行TIG側方向に飛び散り易く、そのスパッタの一部が先行TIG側の非消耗電極13に付着して非消耗電極13を損傷させることがあり、また、ガスシールド性が低下し易いので好ましくない。
【0134】
従って、先行TIG側の後退角−α1は、0〜45度の範囲にすると良いし、後続MIG側の前進角+α2は、15〜45度の範囲にすると良い。
【0135】
また、非消耗電極13と消耗ワイヤ18との距離間隔f1の値が3mmよりも小さ過ぎると、例えば、TIGアーク22とMIGアーク23が接近し過ぎ、後続MIG側の消耗ワイヤ18から発生したスパッタの一部が先行TIG側の非消耗電極13に付着して非消耗電極13を損傷させることがあり、しかも、TIGアーク22とMIGアーク23の挙動も不安定になり易い。
【0136】
一方、非消耗電極13と消耗ワイヤ18との距離間隔f1が9mmよりも大き過ぎると、TIGアーク22とMIGアーク23で形成する1つの溶融プール24の形状が細長く不安定になり易く、所望の溶接ビード及び溶接断面部が得られない場合がある。
【0137】
従って、非消耗電極13の先端部の延長線が継手母材の溶接線6−1と交差する位置から消耗ワイヤ18の先端部までの両電極間の距離間隔f1は、3〜9mmの範囲にすると良い。
【0138】
更に、継手母材の溶接線6から非消耗電極13の先端部までの電極高さf2が3mmよりも小さ過ぎると、例えば、TIGアーク22の短縮に伴うアーク電圧低下及び入熱減少等によって溶融不足が発生することがあり、また、非消耗電極13の先端部が溶融プール24の表面上に接近しているので、溶融プール24の挙動変化や飛散したスパッタの影響を受け易くなる。
【0139】
一方、継手母材の溶接線6−1から非消耗電極13の先端部までの電極高さf2が9mmよりも大き過ぎると、TIGアーク22の延長に伴うアーク不安定化及び入熱増加等によって、伝熱銅フィン3が過剰に溶融されてアンダーカットの発生要因になることがあり、また、ガスシールド性も低下し易いので好ましくない。
【0140】
従って、継手母材の溶接線6−1から非消耗電極13の先端部までの電極高さf2は、3〜9mmの範囲にすると良い。
【0141】
図12に示すように、TIG溶接電源15は、給電ケーブル16−1、16−2を経由してTIGユニット12内の非消耗電極13と継手母材の内筒1との間に接続され、かつ、非消耗電極13側の極性を負極(マイナス)とし、内筒1側の極性を正極(プラス)として、シールドガス14の流出雰囲気内で、TIGアーク22を溶接箇所に発生させる。他方のMIG溶接電源20(ワイヤ送給装置も含む)は、給電ケーブル21−1、21−2を経由してMIGユニット17内の消耗ワイヤ18と継手母材の内筒1との間に接続され、かつ、給電及び送給する消耗ワイヤ18側の極性を正極(プラス)とし、内筒1側の極性を負極(マイナス)として、第2のシールドガス19の流出雰囲気内で、MIGアーク23をTIGアーク22の後方近傍に発生させる。
【0142】
先行TIG側の非消耗電極13を流れる第1の溶接電流Iaと、後続MIG側の消耗ワイヤ18(CuSiワイヤ)を流れる第2の溶接電流Ibとで生じる反発作用の磁力によって、相互に反発し合う2つのTIGアーク22及びMIGアーク23で1つの溶融プール24を形成し、仮付有継手部の溶接線6上を通過するように溶接方向25aへ移動させながら本溶接するようにしている。
【0143】
第1の溶接電流Iaと第2の溶接電流Ibとの比(Ia/Ib)は、約0.8〜1.2の範囲に設定して出力させると良い。また、第1及び第2の溶接電流Ia及びIbは、両方共に直流電流を給電して、直流同士の2つのアークを形成するようにすると良い。。
【0144】
非消耗電極13を流れる第1の溶接電流Iaと、消耗ワイヤ18を流れる第2の溶接電流Ibとの比(Ia/Ib=0.8〜1.2)の範囲で直流同士の溶接電流Ia、Ibを出力させることで、相互に反発し合うTIGアーク22とMIGアーク23が略下向き方向に偏向した状態で持続されると共に、1つの溶融プール24を安定に形成することができる。また、消耗ワイヤ18の先端部からの溶滴が飛散することなく、溶融プール24内へ容易に溶滴移行し易くなり、良好な溶接ビード及び溶接断面部を有する溶接ビード(溶接断面部)7−1を得ることができる。
【0145】
なお、非消耗電極13を流れる第1の溶接電流Iaと、消耗ワイヤ18を流れる第2の溶接電流Ibとの比(Ia/Ib)が小さ過ぎる場合又は大き過ぎる場合には、相互に反発し合うTIGアーク22とMIGアーク23に大きな偏差が生じるため、電流が大きい側のアーク力の影響により電流の小さい側のアーク挙動が不安定となって溶接不良になり易い。
【0146】
一方、例えば、TIG側の極性を負極(マイナス)から正極(プラス)に反転させた場合は、溶接中にタングステン等の非消耗電極13が高温過熱によって激しく消耗するため、アーク挙動が不安定となって溶接不良になり易く、時間の長い溶接が困難となる。また、TIGアーク22とMIGアーク23が相互に引き合う方向に偏向するため、MIG側の消耗ワイヤ18の溶滴が、TIG側の非消耗電極13に溶着して短時間で電極消耗が発生することもある。他方のMIG側の極性を正極(プラス)から負極(マイナス)に反転させた場合には、不安定なアーク挙動及びスパッタの発生を伴うため溶接不良になり易く、時間の長い溶接が困難となる。
【0147】
図12中には、説明し易くするために中央付近の溶接線6上にTIGアーク22とMIGアーク23及び1つの溶融プール24を図示しているが、実際にTIGアーク22とMIGアーク23を発生させる箇所は、溶接すべき隅肉継手部5の溶接線6上の溶接開始位置である。
【0148】
例えば、溶接対象の継手(内筒1及び伝熱銅フィン3)側を回転駆動装置等で回転移動させて、溶接すべき隅肉継手部5の溶接線6を鉛直方向に姿勢変更した後に、溶接線6−1上に一体構造のTIG−MIG溶接トーチ11を下向姿勢で位置決めする。その後、TIG−MIG溶接トーチ11を溶接線6上の溶接開始位置に停止させる。TIG−MIG溶接トーチ11内のTIGユニット12の先端開口部と、MIGユニット17の先端開口部との両方からArガスとHeガスとの混合ガスを溶接開始位置及びその近傍で流出させながら、先行TIGの非消耗電極13の先端部から電極負極(マイナス)のTIGアーク22を発生させ、その第1の溶接電流Iaを定常値まで到着させた直後又は所定時間経過後に、後続MIGの消耗ワイヤ18として送給するCuSiワイヤからワイヤ正極(プラス)のMIGアーク23を、TIGアーク22の後方近傍に発生させると共に、その第2の溶接電流Ibを定常値まで到達させ、相互に反発し合うTIGアーク22とMIGアーク23で1つの溶融プール24を形成させ、溶接開始位置に発生させた直後又は所定時間経過後に、TIG−MIG溶接トーチ11を走行させて、1つの溶融プール24を溶接線方向に移動させながら隅肉継手部5の溶接終了位置まで溶接するようにしている。
【0149】
このように溶接施工することで、上述したように、隅肉継手部5の溶接開始位置から終了位置までの溶接線6上に良好な溶接ビード(溶接断面部)7−1を確実に形成することができる。
【実施例6】
【0198】
次に、本発明者等が実際に行った溶接試験及び補修試験の方法及び結果について説明する。
【0199】
図17は、本発明の実施例6に係わる補修試験方法及び溶接ビード部の上から肉盛するように補修溶接するトーチ配置を示す一実施例である。
【0200】
本実施例では、多関節可動式の溶接ロボット33を用い、作業台36及び試験固定台35に傾斜配置した伝熱銅フィン(銅板)3と内筒(鋼板)1との隅肉継手に対して、事前に溶接施工した溶接ビード7の上位に、溶接ロボット33の手首34に保持したTIG−MIG溶接トーチを垂直下向方向に配置し、補修溶接する試験を実施した。
【0201】
図18は、本発明の実施例6に係わる溶接模擬欠陥部のTIG補修試験片の一実施例を示す斜視図である。
【0202】
本実施例でのTIG補修用の試験片は、板厚5mmの銅板(材質:C1020P、サイズ:長さ250×幅80mm)と板厚16mmの炭素鋼板(材質:SM400A、サイズ:長さ250×幅100mm)との隅肉継手を用いた。ワイヤは、1.2mm径のCuSiワイヤ(MG960)、また、シールドガスは、ArガスとHeガス(50〜70%)との混合ガスを用いた。
【0203】
そして、隅肉継手の試験片に本溶接のTIG−MIG複合溶接を事前に施工して本溶接ビードを形成し、のど厚不足やアンダーカット深さ過大の溶接欠陥を有する試験片と仮定した。
【0204】
模擬欠陥部のTIG補修溶接試験では、
図15及び
図18に示すように、溶接ビード7(模擬欠陥部)の上位にTIG−MIG溶接トーチ11を配置して走行させ、先行ワイヤ及び後続TIGアーク22によるTIG補修溶接を施工し、約50mm長さの補修溶接断面部(補修溶接ビード70)(1パス又は2パス)を2ヵ所に形成させた。このTIG補修溶接試験では、適正な補修溶接条件を調査するため、トーチ位置のシフト量S2、溶接(補修)速度V、ワイヤ送り速度Wf、TIG電流It等の条件因子を変化させた。
【0205】
図19は、本発明の実施例6に係わる溶接模擬欠陥部のTIG−MIG補修試験片の一実施例を示す斜視図である。
【0206】
本実施例でのTIG−MIG補修用の試験片は、TIG補修用の試験片と同一の材質及びサイズのものを用い、この銅・鋼隅肉継手に本溶接のTIG−MIG複合溶接を事前に施工して本溶接ビードを形成し、のど厚不足やアンダーカット深さ過大の溶接欠陥を有する試験片と仮定した。
【0207】
そして、模擬欠陥部のTIG−MIG補修溶接試験では、
図14及び
図19に示すように、溶接ビード7(模擬欠陥部)の上位にTIG−MIG溶接トーチ11を配置して走行させ、先行TIGアーク及び後続MIGアークによるTIG−MIG補修溶接を施工し、約160mm長さの補修溶接ビード70を1ヵ所に形成させた。このTIG−MIG補修溶接試験では、MIG設定電圧Em等の条件因子を変化させた。
【0208】
表1は、銅板と炭素鋼との隅肉継手試験片に本溶接のTIG−MIG複合溶接試験とその本溶接ビードの上にTIG補修溶接試験及びTIG−MIG補修溶接試験を行った時の溶接条件並びに補修溶接条件を示すものである。
【0209】
【表1】
【0210】
本溶接のTIG−MIG複合溶接試験は、補修溶接する前に、アンダーカット過大やのど厚不足等の溶接不良部を想定した模擬欠陥を有した溶接ビード7を形成させるための試験であり、溶接速度が354mm/分、ワイヤ送り速度が11m/分、TIG電流が約300Aの一定の条件下でTIG−MIG複合溶接を施工した。
【0211】
このTIG−MIG複合溶接試験では、のど厚L1やビード高さH1等の溶接品質に及ぼす影響を調査するため、継手試験片の予熱有無、電極高さh及びシフト量S1を変化させて溶接施工し、模擬欠陥の溶接ビード部7を形成させて評価した。
【0212】
一方、模擬欠陥の溶接ビード7の上に肉盛するTIG補修溶接試験では、TIG電流(It=275〜340A)、ワイヤ送り速度(Wf=2〜2.5m/分)、補修溶接速度(V=90〜120mm/分)、シフト量(S2=0〜3mm)等の条件因子を変化させ、
図18に示すように、溶接ビード7の上に1パス補修又は2パス補修を施工し、補修溶接ビード部70を形成させて評価した。
【0213】
また、模擬欠陥の溶接ビード7の上に肉盛するTIG−MIG補修溶接試験では、本溶接条件と略同一の補修溶接条件を用い、更に、MIG設定電圧を増加させ、
図19に示すように、溶接ビード7の上に1パス補修を施工し、補修溶接ビード部70を形成させて評価した。
【0214】
なお、表1中に記載したMIG設定電圧Emは、給電ケーブル電圧を含むMIG側の電圧値(電圧検出フィードバック制御の出力電圧に該当)であるため、MIG電極と母材間で計測した電圧値(計測値)よりも約1.7〜2V程度高くなっている。
【0215】
また、表1中(後述する表2も同様)の左側に記載の各番号は、本溶接(39−49)の試験番号及び補修(1−14)の試験番号である。例えば、表1の最上段に本溶接39、その下に補修1、2を記載しているのは、本溶接39の試験後の溶接ビード上に、補修1、2の試験を施工したからであり、以下の番号配列も同様である。更に、表1中の仮付方向の記入欄に記載の逆方向は、溶接方向に対する表現であり、ワイヤ先行後続TIGアークの方向にTIG補修溶接した試験例、また、正方向も溶接方向に対する表現であり、本溶接の場合と同様に、先行TIGアーク後続MIGアークの方向にTIG−MIG補修溶接した試験例である。
【0216】
表2は、表1に示した溶接条件及び補修溶接条件で試験した時のTIG−MIG複合溶接部とTIG補修溶接及びTIG−MIG補修溶接部の各形状寸法並びに評価結果を示すものである。
【0217】
【表2】
【0218】
表2中には、各溶接試験片から3個ずつ採取した各溶接断面部ののど厚L、ビード積層高さHの各値と融合不良有無、ビード外観良否及び合否評価の結果をそれぞれ記している。補修前の本溶接部ののど厚L1は基準値(L1≧T1)を全て満足しているが、模擬欠陥有の溶接ビードと仮定し、この模擬欠陥有の溶接ビード部の上に補修ビード部を形成させ、補修終了後の各補修溶接断面部からのど厚L2、ビード積層高さH2を計測して評価した。
【0219】
表2中の斜線部分は、アンダーカット過大、溶融不良及び溶落ちによる判定で不合格(×印)になったものであり、○印は品質基準確保の判定で合格になったものである。また、△印については、品質基準を満たしているが、ワイヤ溶融不安定の影響で補修ビードの形状が見劣りする判定で、○印に至らなかったものである。
【0220】
図20は、本発明の実施例6に係わる溶接(補修)速度及びワイヤ送り速度を変化させた時のワイヤ溶着断面積を示す特性図である。図中には、TIG補修溶接の適用範囲及び代表的な補修溶接断面部の写真を記している。
【0221】
該図の補修溶接断面部の写真から分かるように、上側の補修溶接部は、銅板側及び下側の溶接部の両方に深く溶込んで融合している。ワイヤ溶着断面積Bは、ワイヤ送り速度Wfに比例増加し、溶接速度Vに反比例する関係にある。
【0222】
良好な補修溶接ビード70が得られる適正なTIG補修溶接の適用範囲は、溶接(補修)速度Vが90≦V≦150mm/分の範囲であると共に、ワイヤ送り速度Wfが2≦Wf≦2.5m/分であり、好ましくは2≦Wf≦2.2m/分である。
【0223】
この適用範囲でTIG補修溶接を施工することで、アンダーカット深さ過大やのど厚不足等の溶接不良部を確実に消滅できると共に、品質良好な補修溶接ビード(補修溶接断面部)を得ることができる。
【0224】
なお、溶接(補修)速度Vが150mm/分より速過ぎると、入熱不足及びワイヤ溶着断面不足の影響で不良ビードになり易い。また、ワイヤ送り速度Wfが2m/分より少な過ぎると、ワイヤ溶着断面不足の影響で、補修溶接時にワイヤの溶融状態及び溶融プールの形成状態が不安定になって不良ビードになり易い。
【0225】
一方、補修速度Vが90mm/分より遅過ぎる場合は、作業時間の増加による生産効率低下を伴うと共に、入熱増加及びワイヤ溶着断面増加の影響で肉盛すべき補修ビードが鋼側の溶接ビードへ垂れ下がり易くなる。また、ワイヤ送り速度Wfが2.5m/分より多過ぎる場合は、ワイヤ溶着断面が増加するが、のど厚増加になり難く、ワイヤ溶融の不安定化の影響で補修ビードが鋼側の溶接ビードへ垂れ下がり易くなる。
【0226】
従って、上述した適用範囲でTIG補修溶接を施工することで、良好な補修溶接ビードを安定に形成することができる。
【0227】
図21は、本発明の実施例6に係わるTIG−MIG複合溶接した後の本溶接ビードの上からTIG補修溶接した時の補修ビード及び補修有無部の溶接断面の一実施例を示す試験結果の写真図である。
【0228】
該図のビード外観写真中に記載の番号は、表1及び表2に示した試験番号である。また、各溶接(補修)断面部は、本溶接ビード部の1ヶ所と2ヵ所の補修ビード部から各々採取した位置を記している。TIG−MIG複合溶接した本溶接ビードの溶接速度は354mm/分であり、また、TIG補修溶接した補修ビードの溶接(補修)速度は90mm/分の場合と120mm/分の場合である。
【0229】
該図の補修溶接断面部の写真から分かるように、上側の補修溶接部は、銅板側及び下側の溶接部の両方に深く溶込んで融合している。
【0230】
このように、溶接ビード7の上からTIG補修溶接を施工することで、アンダーカット深さ過大やのど厚不足等の溶接不良部を確実に消滅できると共に、品質良好な補修溶接ビード(補修溶接断面部)70を得ることができる。また、TIG−MIG複合溶接による本溶接方法並びにTIG補修溶接による補修方法を金属キャスク溶接構造物の製造ラインへ適用することで、金属キャスク溶接構造物の製造を継続することができる。
【0231】
TIG補修溶接では、本溶接のTIG−MIG複合溶接の場合と比べて、溶接(補修)速度が遅い。このため、例えば、補修すべき溶接不良部の長さが比較的短い溶接線に対して、TIG補修溶接を適用することで、補修作業の時間短縮を図ることができる。
【0232】
図22及び
図23は、本発明の実施例6に係わるTIG−MIG複合溶接した後の本溶接ビードの上からTIG補修溶接又はTIG−MIG補修溶接した時のトーチ位置のシフト量と補修前後ののど厚及びビード積層高さの関係を示す一実施例の特性図である。
【0233】
図22に示すように、補修前の本溶接部ののど厚L1は、6.4〜6.7mmの大きさで基準値(L1≧T1)を満足しているが、溶接ビード7の上からシフト量S2(第2の距離)を変化(S2=0〜3mm)させてTIG補修溶接した時ののど厚L2は、バラツキがあるものの、約9.2〜9.8mmの大きさ(約1.4倍)に増加している。また、TIG−MIG補修溶接の場合には、10.5〜10.9mmであり、TIG補修溶接部ののど厚L2よりも大きく形成されている。
【0234】
一方、ビード積層高さH2は、
図23に示すように、シフト量S2の増加に伴って増加する傾向ある。補修前のビード高さH1が約6.7〜6.8mmであるのに対して、シフト量S2を2mmに設定して補修溶接した時のビード積層高さH2は、バラツキがあるものの、約12.1〜12.9mmの大きさ(約1.8〜1.9倍)に増加してしている。
【0235】
このような結果から、例えば、補修前ののど厚L1及びビード高さH1の各値が基準値(L1≧T1=5、H1≧T1)を下回る4mm程度の場合でも、上述した補修溶接を施工することで、基準値を満足する大きさに改善することができる。また、アンダーカット深さが1mm前後ある場合でも、アンダーカット部及びその近傍に肉盛するように補修溶接を施工することで、アンダーカットを確実に消滅させることができると共に、基準値を満足するのど厚L2及びビード積層高さH2を有する良好な補修溶接ビード(補修溶接断面部)が形成できる。
【0236】
なお、シフト量S2が3mmより大き過ぎると、補修時のアーク及び溶融プールが銅側(伝熱銅フィン側)寄りに形成され易いため、ビード積層高さH2は増加する可能性があるが、のど厚L2増加が望めず、伝熱銅フィンの溶融過大による溶落ちに至る可能性が高い。一方、シフト量S2が0mmより小さ過ぎると、補修時のアーク及び溶融プールが溶接ビード寄りに形成され易いため、補修後ののど厚L2及びビード積層高さH2の増加にならず、溶接ビード側へ垂れ下がり易くなる。
【0237】
従って、シフト量S2を0≦S2≦3mmの範囲に、好ましくは1≦S2≦2mmの範囲に設定して、TIG−MIG補修溶接又はTIG補修溶接を施工することで、上述したように、アンダーカット深さ過大やのど厚不足等の溶接不良部を確実に消滅できると共に、良好な補修溶接ビード(補修溶接断面部)を得ることができる。
【0238】
図24は、本発明の実施例6に係わるTIG−MIG複合溶接した本溶接ビードの上からTIG−MIG補修溶接した時の補修溶接ビード及び補修有無部の溶接断面の一実施例を示す試験結果の写真図である。
【0239】
該図のビード外観写真中に記載の番号は、
図21に示した結果の場合と同様に、表1及び表2に示した試験番号である。また、各溶接(補修)断面部は、本溶接ビード部の1ヶ所と補修ビード部の2ヵ所から各々採取した位置を記している。
【0240】
本溶接ビード7の上からTIG−MIG補修溶接した補修溶接ビード70の溶接速度は、本溶接時と同一速度の354mm/分であり、TIG補修溶接の場合と比べて約3倍速く補修することができる。また、TIG−MIG補修溶接では、例えば、本溶接のTIG−MIG複合溶接で使用した溶接条件よりも、MIG設定電圧Emを1V前後高くした補修溶接条件を使用して補修施工することで、補修ビードの表面形状を滑らかに改善することができ、また、補修作業の時間短縮を図ることも可能である。
【0241】
上述したように、TIG−MIG補修溶接では、本溶接のTIG−MIG複合溶接と同一速度で補修溶接することができる。このため、例えば、補修すべき溶接不良部の長さが比較的長い溶接線に対して、TIG−MIG補修溶接を適用することで、補修作業の時間短縮を図ることができる。補修すべき溶接不良部の長さの相違に応じて、TIG−MIG補修溶接とTIG補修溶接とを使い分けて施工すると良い。
【0242】
また、TIG−MIG補修溶接又はTIG補修溶接では、本溶接工程で使用した溶接トーチと同一又は同種のTIG−MIG溶接トーチ11、同一成分のSiCuワイヤ(消耗ワイヤ18)及びArガスとHeガスとの混合ガス(第1、第2のシールドガス14、19)を使用して補修溶接を施工することで、装置の兼用化や設備投資削減や製造コスト低減等を図ることができる。
【0243】
一方、
図24に示す補修溶接断面部の写真から分かるように、上側の補修溶接部は銅板側(伝熱銅フィン側)及び下側の溶接部の両方に深く溶込んで融合している。補修前の溶接ビード及びその溶接断面部7には、アンダーカット等の溶接不良部は発生していないが、欠陥部の補修溶接を想定した補修試験のように、模擬欠陥部の溶接ビード7の上からTIG−MIG補修溶接を施工することで、アンダーカット深さR過大やのど厚L2不足等の溶接不良部を確実に消滅できると共に、品質良好な補修溶接ビード(補修溶接断面部)70を得ることができる。
【0244】
このような結果から、例えば、アンダーカット深さが1mm前後ある場合、又はのど厚L1及びビード高さH1が基準値(L1≧T1=5mm、H1≧T1)を下回る4mm程度の場合でも、これらの溶接不良部及びその近傍に肉盛するようにTIG−MIG補修溶接を施工することで、アンダーカットを確実に消滅させることができると共に、基準値を満足するのど厚L2及びビード積層高さH2を有する良好な補修溶接ビード(補修溶接断面部)70が形成できる。
【0245】
また、TIG−MIG複合溶接による本溶接方法、並びに同様なTIG−MIG補修溶接による補修方法を金属キャスク溶接構造物の製造ラインへ適用することで、金属キャスク溶接構造物を製造及び継続することができる。
【0246】
また、上述した前記TIG−MIG補修溶接又はTIG補修溶接によって形成された補修ビード及び補修断面部70には、少なくともアンダーカット深さR過大、のど厚L1不足又はビード高さH1不足等の溶接不良部が消滅しており、かつ、補修前の溶接部を含む補修溶接部のビード積層高さH2が補修後ののど厚L2より大きく、補修後ののど厚L2も伝熱銅フィンの板厚T1より大きく(H2>L2>T1)形成できる。
【0247】
更に、TIG−MIG溶接トーチ11の代わりに、各隅肉継手の仮組工程を含む内筒1側の第1の溶接工程103、各隅肉継手の仮組工程を含む外筒2側の第2の本溶接工程110で使用した溶接トーチと同一のMIG溶接トーチ26、同一成分のSiCuワイヤ及びArガスとHeガスとの混合ガスを用い、各隅肉継手の仮組工程を含む内筒1側の第1の溶接工程103、各隅肉継手の仮組工程を含む外筒2側の第2の本溶接工程110で使用したMIG溶接条件と略同一の補修溶接条件、又はこの補修溶接条件よりもMIG設定電圧や入熱量を少し高くした補修溶接条件を用い、補修溶接工程109、116、119及び122でMIG補修溶接することも可能であり、MIG補修溶接によって形成された補修ビード及び補修断面部70には、少なくともアンダーカット深さR過大、のど厚L1不足又はビード高さH1不足等の溶接不良部が消滅しており、かつ、補修前の溶接部を含む補修溶接部のビード積層高さH2が補修後ののど厚L2より大きく、補修後ののど厚L2も伝熱銅フィンの板厚T1より大きく(H2>L2>T1)形成することができる。
【0248】
また、上述したように、TIG−MIG補修溶接の場合と同様に、溶接不良部を有する溶接ビード7の上から肉盛するようにMIG補修溶接することで、のど厚L1不足又はビード高さH1不足及びアンダーカット深さR過大等の溶接不良部を確実に消滅させることができ、品質良好な補修溶接ビード(補修溶接断面部)70を得ることができる。
【0249】
なお、本発明は上述した実施例に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば、上記した実施例は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、ある実施例の構成の一部を他の実施例の構成に置き換えることが可能であり、また、ある実施例の構成に他の実施例の構成を加えることも可能である。また、各実施例の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をすることが可能である。