特許第6386338号(P6386338)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6386338アンモニア含有排水の処理装置および処理方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6386338
(24)【登録日】2018年8月17日
(45)【発行日】2018年9月5日
(54)【発明の名称】アンモニア含有排水の処理装置および処理方法
(51)【国際特許分類】
   C02F 1/44 20060101AFI20180827BHJP
   B01D 61/32 20060101ALI20180827BHJP
   B01D 61/30 20060101ALI20180827BHJP
   C02F 1/28 20060101ALI20180827BHJP
   C01C 1/24 20060101ALI20180827BHJP
【FI】
   C02F1/44 E
   B01D61/32
   B01D61/30
   C02F1/28 M
   C01C1/24 H
【請求項の数】10
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2014-217268(P2014-217268)
(22)【出願日】2014年10月24日
(65)【公開番号】特開2016-83609(P2016-83609A)
(43)【公開日】2016年5月19日
【審査請求日】2017年7月4日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004400
【氏名又は名称】オルガノ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】特許業務法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】江口 正浩
(72)【発明者】
【氏名】前田 臨太郎
(72)【発明者】
【氏名】村上 敬介
(72)【発明者】
【氏名】鳥羽 裕一郎
(72)【発明者】
【氏名】恵良 彰
【審査官】 片山 真紀
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2012/0315209(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2010/0218573(US,A1)
【文献】 特開2013−202475(JP,A)
【文献】 特開平06−246296(JP,A)
【文献】 特開2011−161305(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C02F 1/44
B01D 53/22、61/00−71/82
C01C 1/24
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
Japio−GPG/FX
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
気液分離膜と、前記気液分離膜の一方の面に隣接して設けられた第1の液室と、前記気液分離膜の他方の面に隣接して設けられた第2の液室とを有し、前記第1の液室にアンモニア含有排水を通液してアンモニアを除去し、前記第2の液室に硫酸溶液を前記アンモニア含有排水と対向流で通液して前記除去したアンモニアに接触させて硫酸アンモニウム溶液として回収するアンモニア除去手段と、
前記回収した硫酸アンモニウム溶液を前記第2の液室の出口側から入口側へ循環運転する硫酸アンモニウム溶液循環手段と、
前記第2の液室の前記硫酸溶液の入口側を開閉するための入口側バルブおよび出口側を開閉するための出口側バルブと、
前記第2の液室への前記硫酸溶液の通液を停止した場合に前記入口側バルブおよび前記出口側バルブを閉状態とする制御手段と、
を備えることを特徴とするアンモニア含有排水の処理装置。
【請求項2】
請求項1に記載のアンモニア含有排水の処理装置であって、
さらに前記入口側バルブと前記出口側バルブとの間の圧力を逃すための圧力逃し手段を備え、
前記制御手段は、前記第2の液室への前記硫酸溶液の通液を停止した場合に前記入口側バルブおよび前記出口側バルブを閉状態とし、前記圧力逃し手段を作動することを特徴とするアンモニア含有排水の処理装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載のアンモニア含有排水の処理装置であって、
前記第2の液室への前記硫酸溶液の通液を停止した場合に、前記アンモニア除去手段により得られた処理水を前記第1の液室の出口側から入口側へ循環運転する処理水循環手段を備えることを特徴とするアンモニア含有排水の処理装置。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載のアンモニア含有排水の処理装置であって、
前記第2の液室に通液する硫酸溶液の硫酸濃度を調整するための硫酸添加手段を備え、前記硫酸添加手段から添加される硫酸溶液の硫酸濃度が50質量%以上であることを特徴とするアンモニア含有排水の処理装置。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載のアンモニア含有排水の処理装置であって、
記回収した硫酸アンモニウム溶液の硫酸アンモニウム濃度を測定する硫酸アンモニウム濃度測定手段と、
を備え、
前記測定した硫酸アンモニウム濃度が所定の値以上の場合に、前記回収した硫酸アンモニウム溶液を取り出すことを特徴とするアンモニア含有排水の処理装置。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1項に記載のアンモニア含有排水の処理装置であって、
前記アンモニア除去手段における前記アンモニア含有排水の温度が30〜55℃の範囲であることを特徴とするアンモニア含有排水の処理装置。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか1項に記載のアンモニア含有排水の処理装置であって、
前記アンモニア除去手段における前記アンモニア含有排水のpHが11以上であることを特徴とするアンモニア含有排水の処理装置。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか1項に記載のアンモニア含有排水の処理装置であって、
前記アンモニア含有排水が酸化剤を含有する場合に、前記第1の液室に通液する前に前記アンモニア含有排水から前記酸化剤を除去する酸化剤除去手段を備えることを特徴とするアンモニア含有排水の処理装置。
【請求項9】
気液分離膜と、前記気液分離膜の一方の面に隣接して設けられた第1の液室と、前記気液分離膜の他方の面に隣接して設けられた第2の液室とを有するアンモニア除去装置の前記第1の液室にアンモニア含有排水を通液してアンモニアを除去し、前記第2の液室に硫酸溶液を前記アンモニア含有排水と対向流で通液して前記除去したアンモニアに接触させて硫酸アンモニウム溶液として回収するアンモニア除去工程を含み、
前記回収した硫酸アンモニウム溶液を前記第2の液室の出口側から入口側へ循環運転し、
前記第2の液室への前記硫酸溶液の通液を停止した場合に、前記第2の液室の前記硫酸溶液の入口側を開閉するための入口側バルブおよび出口側を開閉するための出口側バルブを閉状態とすることを特徴とするアンモニア含有排水の処理方法。
【請求項10】
請求項9に記載のアンモニア含有排水の処理方法であって、
前記第2の液室への前記硫酸溶液の通液を停止した場合に、前記第2の液室の前記硫酸溶液の入口側を開閉するための入口側バルブおよび出口側を開閉するための出口側バルブを閉状態とし、前記入口側バルブと前記出口側バルブとの間の圧力を逃すための圧力逃し手段を作動させることを特徴とするアンモニア含有排水の処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子産業工場、化学工場等から排出されるアンモニア含有排水を処理して硫酸アンモニウムとして回収するアンモニア含有排水の処理装置および処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、半導体工場等の電子産業工場や化学工場、火力発電所等から排出される比較的高濃度のアンモニア含有排水は、例えば、アンモニアストリッピング法(例えば、特許文献1参照)、蒸発濃縮法(例えば、特許文献2参照)、触媒湿式酸化法(例えば、特許文献3参照)等により処理されている。また、比較的低濃度のアンモニア含有排水は、例えば、生物処理法等により処理されている。
【0003】
アンモニアストリッピング法は、アンモニア含有排水にアルカリ溶液を添加、加温後、充填物を充填した放散塔に通し、蒸気および空気に接触させることで、排水中のアンモニアをガス側に移動させる処理方法である。本方法は、比較的簡易な処理であるが、放散塔の設備が大型である課題がある。また、加温、蒸気等の熱エネルギーを用いてガス側に移動したアンモニアを、さらに高温での触媒酸化で処理する必要があり、処理コストが高いという課題がある。また、触媒酸化時にNO、NO等が発生することがある。
【0004】
蒸発濃縮法は、アンモニア含有排水を加熱、蒸発させ、生成したアンモニア含有蒸気を凝縮し、アンモニア水として回収する処理方法である。本方法は、蒸発のための加温エネルギーコスト、蒸発器の伝熱面のスケール付着等の課題がある。
【0005】
触媒湿式酸化法は、触媒存在下に100〜370℃の温度と圧力をかけてアンモニア含有排水を処理する方法である。本方法は、高温、高圧処理のため安全性、コストに課題がある。
【0006】
近年、液体を通さずアンモニアを通す疎水性多孔質の気液分離膜を用いてアンモニア含有排水からアンモニアを除去する気液分離膜法が提案されている(例えば、特許文献4参照)。本方法は、アンモニア含有排水をpH10以上のアルカリ性にすることで、排水中のアンモニアをガス化し、気液分離膜の二次側を真空ポンプで吸引することで、アンモニア含有排水からアンモニアを除去する方法である。しかし、本方法では、硫安スクラバを別途設置する必要がある。
【0007】
また、気液分離膜法において、気液分離膜である疎水性中空糸膜の二次側に硫酸溶液を流して向流接触させることで硫酸アンモニウム溶液として回収する方法も提案されている(例えば、特許文献5参照)。本方法は、中空糸膜の外側にpH10以上に調整したアンモニア含有排水を流し、中空糸膜の内側にはpH2以下の硫酸溶液を対向流で流すことで、排水中のアンモニア除去、回収を行う技術である。ガス化したアンモニアは、中空糸膜の内側を流れる硫酸と接触し、硫酸アンモニウムとして回収される。
【0008】
気液分離膜を用いた方法では、設備的に簡易な処理で経済的にアンモニア含有排水を処理し、硫酸アンモニウム溶液を経て再利用が可能となる方法であるが、硫酸アンモニウム溶液中の硫酸アンモニウム濃度が低いと再利用や有価物回収の場合に、硫酸アンモニウム溶液をさらに濃縮する必要があるという課題があった。特に、硫酸アンモニウム溶液の濃度が25質量%未満では有価物として引取りが困難となり、廃棄物として扱われる場合があるため、さらに逆浸透膜(RO膜)処理、イオン交換樹脂処理等で別途濃縮する必要があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特許第3987896号公報
【特許文献2】特開2011−153043号公報
【特許文献3】特許第3272859号公報
【特許文献4】特許第3240694号公報
【特許文献5】特開2013−202475号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の目的は、気液分離膜を用いてアンモニア含有排水からアンモニアを除去するとともに、除去したアンモニアに硫酸溶液を接触させて硫酸アンモニウム溶液として回収するアンモニア含有排水の処理において、例えば25質量%以上の高濃度の硫酸アンモニウム溶液を得ることにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、気液分離膜と、前記気液分離膜の一方の面に隣接して設けられた第1の液室と、前記気液分離膜の他方の面に隣接して設けられた第2の液室とを有し、前記第1の液室にアンモニア含有排水を通液してアンモニアを除去し、前記第2の液室に硫酸溶液を前記アンモニア含有排水と対向流で通液して前記除去したアンモニアに接触させて硫酸アンモニウム溶液として回収するアンモニア除去手段と、前記回収した硫酸アンモニウム溶液を前記第2の液室の出口側から入口側へ循環運転する硫酸アンモニウム溶液循環手段と、前記第2の液室の前記硫酸溶液の入口側を開閉するための入口側バルブおよび出口側を開閉するための出口側バルブと、前記第2の液室への前記硫酸溶液の通液を停止した場合に前記入口側バルブおよび前記出口側バルブを閉状態とする制御手段と、を備えるアンモニア含有排水の処理装置である。
【0012】
前記アンモニア含有排水の処理装置において、さらに前記入口側バルブと前記出口側バルブとの間の圧力を逃すための圧力逃し手段を備え、前記制御手段は、前記第2の液室への前記硫酸溶液の通液を停止した場合に前記入口側バルブおよび前記出口側バルブを閉状態とし、前記圧力逃し手段を作動することが好ましい。
【0013】
前記アンモニア含有排水の処理装置において、前記第2の液室への前記硫酸溶液の通液を停止した場合に、前記アンモニア除去手段により得られた処理水を前記第1の液室の出口側から入口側へ循環運転する処理水循環手段を備えることが好ましい。
【0014】
前記アンモニア含有排水の処理装置において、前記第2の液室に通液する硫酸溶液の硫酸濃度を調整するための硫酸添加手段を備え、前記硫酸添加手段から添加される硫酸溶液の硫酸濃度が50質量%以上であることが好ましい。
【0015】
前記アンモニア含有排水の処理装置において、前記回収した硫酸アンモニウム溶液の硫酸アンモニウム濃度を測定する硫酸アンモニウム濃度測定手段と、を備え、前記測定した硫酸アンモニウム濃度が所定の値以上の場合に、前記回収した硫酸アンモニウム溶液を取り出すことが好ましい。
【0016】
前記アンモニア含有排水の処理装置において、前記アンモニア除去手段における前記アンモニア含有排水の温度が30〜55℃の範囲であることが好ましい。
【0017】
前記アンモニア含有排水の処理装置において、前記アンモニア除去手段における前記アンモニア含有排水のpHが11以上であることが好ましい。
【0018】
前記アンモニア含有排水の処理装置において、前記アンモニア含有排水が酸化剤を含有する場合に、前記第1の液室に通液する前に前記アンモニア含有排水から前記酸化剤を除去する酸化剤除去手段を備えることが好ましい。
【0019】
また、本発明は、気液分離膜と、前記気液分離膜の一方の面に隣接して設けられた第1の液室と、前記気液分離膜の他方の面に隣接して設けられた第2の液室とを有するアンモニア除去装置の前記第1の液室にアンモニア含有排水を通液してアンモニアを除去し、前記第2の液室に硫酸溶液を前記アンモニア含有排水と対向流で通液して前記除去したアンモニアに接触させて硫酸アンモニウム溶液として回収するアンモニア除去工程を含み、前記回収した硫酸アンモニウム溶液を前記第2の液室の出口側から入口側へ循環運転し、前記第2の液室への前記硫酸溶液の通液を停止した場合に、前記第2の液室の前記硫酸溶液の入口側を開閉するための入口側バルブおよび出口側を開閉するための出口側バルブを閉状態とするアンモニア含有排水の処理方法である。
【0020】
前記アンモニア含有排水の処理方法において、前記第2の液室への前記硫酸溶液の通液を停止した場合に、前記第2の液室の前記硫酸溶液の入口側を開閉するための入口側バルブおよび出口側を開閉するための出口側バルブを閉状態とし、前記入口側バルブと前記出口側バルブとの間の圧力を逃すための圧力逃し手段を作動させることが好ましい。
【0021】
前記アンモニア含有排水の処理方法において、前記第2の液室への前記 硫酸溶液の通液を停止した場合に、前記アンモニア除去工程により得られた処理水を前記第1の液室の出口側から入口側へ循環運転する処理水循環工程を含むことが好ましい。
【0022】
前記アンモニア含有排水の処理方法において、前記第2の液室に通液する硫酸溶液の硫酸濃度を調整するための硫酸溶液の硫酸濃度が50質量%以上であることが好ましい。
【0023】
前記アンモニア含有排水の処理方法において、前記回収した硫酸アンモニウム溶液の硫酸アンモニウム濃度を測定して、前記測定した硫酸アンモニウム濃度が所定の値以上の場合に、前記回収した硫酸アンモニウム溶液を取り出すことが好ましい。
【0024】
前記アンモニア含有排水の処理方法において、前記アンモニア除去工程における前記アンモニア含有排水の温度が30〜55℃の範囲であることが好ましい。
【0025】
前記アンモニア含有排水の処理方法において、前記アンモニア除去工程における前記アンモニア含有排水のpHが11以上であることが好ましい。
【0026】
前記アンモニア含有排水の処理方法において、前記アンモニア含有排水が酸化剤を含有する場合に、前記第1の液室に通液する前に前記アンモニア含有排水から前記酸化剤を除去する酸化剤除去工程を含むことが好ましい。
【発明の効果】
【0027】
本発明では、気液分離膜を用いてアンモニア含有排水からアンモニアを除去するとともに、除去したアンモニアに硫酸溶液を接触させて硫酸アンモニウム溶液として回収するアンモニア含有排水の処理において、例えば25質量%以上の高濃度の硫酸アンモニウム溶液を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1】本発明の実施形態に係るアンモニア含有排水の処理装置の一例を示す概略構成図である。
図2】本発明の実施形態に係るアンモニア含有排水の処理装置の他の例を示す概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
本発明の実施の形態について以下説明する。本実施形態は本発明を実施する一例であって、本発明は本実施形態に限定されるものではない。
【0030】
本発明の実施形態に係るアンモニア含有排水の処理装置の一例の概略を図1に示し、その構成について説明する。アンモニア含有排水処理装置1は、アンモニア除去手段としてのアンモニア除去装置16と、硫酸アンモニウム溶液循環手段としての循環槽18とを備える。アンモニア含有排水処理装置1は、原水槽10と、加熱手段としての熱交換器12と、pH調整槽14と、硫酸添加手段としての硫酸貯槽20と、pH調整剤貯槽22とを備えてもよい。
【0031】
アンモニア除去装置16は、気液分離膜26、および、その気液分離膜26により区画された第1の液室24a、第2の液室24bを有する。気液分離膜26は、液体を通さずガス状のアンモニアを通す中空糸膜等の膜である。第1の液室24aは、気液分離膜26の一方の面に隣接して設けられ、第2の液室24bは、気液分離膜26の他方の面に隣接して設けられる。第1の液室24aにはアンモニア含有排水が供給され、第2の液室24bには硫酸溶液が供給されるようになっている。
【0032】
図1のアンモニア含有排水処理装置1において、原水配管30が原水槽10の原水入口に接続されている。原水槽10の出口と熱交換器12の原水入口とが原水供給配管32により接続され、熱交換器12の原水出口とpH調整槽14の入口とが原水供給配管34により接続されている。pH調整槽14の出口とアンモニア除去装置16の一端側に設けられた第1の液室24aの入口とがpH調整水配管36により接続されている。アンモニア除去装置16の他端側に設けられた第1の液室24aの出口と熱交換器12の処理水入口とは、処理水循環配管38により接続され、熱交換器12の処理水出口と原水槽10の処理水入口とは、バルブ62を介して処理水循環配管40により接続されている。熱交換器12の処理水出口とバルブ62との間には、処理水排出配管54が処理水取出バルブ64を介して接続されている。循環槽18の出口とアンモニア除去装置16の他端側に設けられた第2の液室24bの入口とが入口側バルブ56を介して硫酸アンモニウム溶液循環配管42により接続され、アンモニア除去装置16の一端側に設けられた第2の液室24bの出口と循環槽18の入口とが出口側バルブ58を介して硫酸アンモニウム溶液循環配管44により接続されている。循環槽18の取出口には、回収硫酸アンモニウム溶液配管50が接続されている。硫酸貯槽20の出口は硫酸配管46により循環槽18と接続されている。pH調整剤貯槽22の出口はpH調整剤配管48によりpH調整槽14と接続されている。循環槽18には硫酸アンモニウム濃度測定装置66が設定されていてもよい。
【0033】
本実施形態に係るアンモニア含有排水の処理方法およびアンモニア含有排水処理装置1の動作について説明する。
【0034】
原水のアンモニア含有排水は、原水配管30を通して必要に応じて原水槽10に貯留された後、原水供給配管32を通して必要に応じて熱交換器12に送液される。原水のアンモニア含有排水は、必要に応じて熱交換器12において、処理水配管38を通して送液された処理水と熱交換され、加熱される(加熱工程)。アンモニア含有排水の温度が所定の値であれば、加熱工程は行われなくてもよい。
【0035】
熱交換器12において必要に応じて加熱されたアンモニア含有排水は、原水供給配管34を通して必要に応じてpH調整槽14に送液される。pH調整槽14において、必要に応じてpH調整剤貯槽22からpH調整剤配管48を通してpH調整剤が供給され、アンモニア含有排水のpHが所定の値に調整される(pH調整工程)。pH調整工程において用いられるpH調整剤は、例えば、水酸化ナトリウム溶液等のアルカリ、または、塩酸等の酸である。pH調整工程において、アンモニア含有排水は、アンモニア含有排水中のアンモニウムイオンをアンモニアガスへと酸解離させて下記アンモニア除去工程におけるアンモニア除去速度を高めるため、pH11以上に調整されることが好ましい。また、膜や配管材質等への影響を考えると、pH11〜12の範囲に調整されることがより好ましい。アンモニア含有排水のpHが所定の値であれば、pH調整工程は行われなくてもよい。
【0036】
必要に応じてpH調整されたpH調整水は、pH調整水配管36を通してアンモニア除去装置16の一端側に設けられた入口から第1の液室24aに送液される。アンモニア除去装置16において、液体を通さずアンモニアを通す気液分離膜26を用いて、アンモニア含有排水からアンモニアが除去される。アンモニアが除去された処理水は、アンモニア除去装置16の他端側に設けられた第1の液室24aの出口から処理水配管38を通して熱交換器12に送液される。一方、入口側バルブ56および出口側バルブ58を開状態として、硫酸貯槽20から硫酸配管46を通して循環槽18に貯留された硫酸溶液が硫酸アンモニウム溶液循環配管42を通してアンモニア除去装置16の他端側に設けられた入口から第2の液室24bに供給され、第1の液室24aのアンモニア含有排水と対向流で流される。例えば、中空糸膜の外側(第1の液室24a)にアンモニア含有排水を流し、中空糸膜の内側(第2の液室24b)に硫酸溶液を流せばよい。気液分離膜26を透過したアンモニアは、アンモニア除去装置16の第2の液室24bを流れる硫酸溶液と接触し、硫酸アンモニウムが生成される(以上、アンモニア除去工程)。
【0037】
熱交換器12に送液された処理水は、必要に応じて熱交換器12において、原水供給配管32を通して送液されたアンモニア含有排水と熱交換され、冷却される(冷却工程)。冷却された処理水は、バルブ62を閉状態、バルブ64を開状態として、処理水排出配管54を通して排出される。
【0038】
アンモニア除去装置16の第2の液室24bで生成した硫酸アンモニウムは、硫酸溶液に溶解されたままアンモニア除去装置16の一端側に設けられた第2の液室24bの出口から硫酸アンモニウム溶液循環配管44を通して循環槽18へ送液される。硫酸溶液は、硫酸アンモニウムが所定の濃度となるまで循環槽18、硫酸アンモニウム溶液循環配管42,44を通して循環される(硫酸アンモニウム溶液循環工程)。この際、硫酸貯槽20から硫酸配管46を通して硫酸溶液が循環槽18へ供給され、循環される硫酸溶液のpHが所定の値になるように調整される。循環される硫酸溶液中の回収された硫酸アンモニウムの濃度が所定の濃度以上となったら、循環槽18から回収硫酸アンモニウム溶液配管50を通して、回収硫酸アンモニウム溶液として排出される。
【0039】
本発明者らの検討により、気液分離膜を用いてアンモニア含有排水を処理する場合、アンモニアガスの他に水蒸気も気液分離膜を透過して移動することがわかった。このため、回収した硫酸アンモニウム溶液が水蒸気により希釈されて、硫酸アンモニウム溶液中の硫酸アンモニウムの濃度が所定の値にならず、予測より低めになることがあった。特に比較的低濃度、例えば約3,000mg/L以下の濃度のアンモニア含有排水の処理において、25質量%以上の硫酸アンモニウム溶液を得ようとする場合に、水蒸気の移動が無視できないことが明らかになった。
【0040】
本発明者らは、気液分離膜における水蒸気の移動についてさらに鋭意検討した結果、気液分離膜へのアンモニア含有排水の通液が停止中でも、水蒸気が気液分離膜を透過して移動し、生成した硫酸アンモニウム溶液の濃度が低下していることが明らかとなった。具体的には、例えば図1において、気液分離膜26へのアンモニア含有排水の通液を停止し、例えば半日程度放置した場合、または、原水槽10の水位レベルが低くなり、通液を停止した場合に、気液分離膜26において水蒸気の移動が生じ、硫酸アンモニウム溶液を貯留する循環槽18において硫酸アンモニウム溶液の水位が高くなり続けると共に、硫酸アンモニウム濃度が低下していた。
【0041】
そこで、本発明者らは、気液分離膜を用いてアンモニア含有排水からアンモニアを除去して硫酸アンモニウム溶液を回収する装置において、気液分離膜26の二次側、すなわち第2の液室24bに通液する硫酸溶液の入口側および出口側に入口側バルブ56および出口側バルブ58をそれぞれ設置した。そして、第2の液室24bへの硫酸溶液の通液を停止した場合に入口側バルブ56および出口側バルブ58の両方を閉状態とすることにより、気液分離膜26を透過して水蒸気が移動したとしても、水蒸気が硫酸アンモニウム溶液循環配管42,44を通して循環槽18へ移動することを抑制し、例えば25質量%以上の高濃度の硫酸アンモニウム溶液を得ることができることを見出した。入口側バルブ56および出口側バルブ58の開閉は、図示しない制御装置により行ってもよい。例えば原水槽10の水位レベルが低い場合や循環槽18の水位レベルが高い場合に、「待機」状態、すなわち第2の液室24bへの硫酸溶液の通液を停止し、かつ入口側バルブ56および出口側バルブ58の両方を閉状態として水蒸気の流入による硫酸アンモニウム溶液の濃度低下を防ぐように制御すればよい。
【0042】
アンモニア含有排水処理装置1の運転を「待機」状態とし、運転を再開する前に、第2の液室24bに溜まった硫酸溶液をブローすることが好ましい。これにより、運転再開後に回収した硫酸アンモニウム溶液の濃度の低下をより抑制することができる。
【0043】
本発明者らの検討では、第2の液室24bへの硫酸溶液の通液を停止した場合に入口側バルブ56および出口側バルブ58を閉状態としても、気液分離膜26の二次側、すなわち第2の液室24b等に残存する硫酸アンモニウム溶液の濃度が例えば数日後には顕著に低下し、入口側バルブ56と出口側バルブ58との間の圧力が例えば0.05〜0.4MPa程度上昇することが明らかになった。そこで、図2に示すアンモニア含有排水処理装置3のように、例えば入口側バルブ56と第2の液室24bの入口との間に、入口側バルブ56と出口側バルブ58との間の圧力を逃すための圧力逃し手段として圧力逃し配管52を圧力逃しバルブ60を介して接続する。そして、第2の液室24bへの硫酸溶液の通液を停止した場合に入口側バルブ56および出口側バルブ58を閉状態とし、圧力逃しバルブ60を開状態とするように制御する。これにより、長時間運転を停止した場合でも、気液分離膜26の二次側の圧力上昇を抑制し、気液分離膜26に過剰な圧力がかかることを抑制することができる。圧力逃し配管52および圧力逃しバルブ60は、第2の液室24bの出口と出口側バルブ58との間に設置してもよい。入口側バルブ56、出口側バルブ58および圧力逃しバルブ60の開閉は、図示しない制御装置により行ってもよい。
【0044】
第2の液室24bへの硫酸溶液の通液を停止した場合に、バルブ62を開状態、バルブ64を閉状態として、処理水が第1の液室24aの出口側から処理水循環手段としての処理水循環配管38,40、原水槽10を通して第1の液室24aの入口側へ循環されてもよい(処理水循環工程)。気液分離膜26の一次側、すなわち第1の液室24aからの処理水を原水槽10へ循環運転することで、原水であるアンモニア含有排水を保温または加熱してアンモニア含有排水の温度を所定の範囲に保持することにより、運転再開後の処理を安定することが可能となる。
【0045】
処理対象のアンモニア含有排水は、例えば、半導体工場等の電子産業工場や化学工場、火力発電所等から排出されるアンモニア含有排水である。
【0046】
半導体工場等の電子産業工場から排出されるアンモニア含有排水のようにアンモニア含有排水が過酸化水素等の酸化剤を含む場合には、アンモニア除去装置16の前段で、酸化剤除去手段としての活性炭処理装置等により酸化剤を除去してもよい(酸化剤除去工程)。これにより、過酸化水素等の酸化剤に起因する、アンモニア除去工程におけるアンモニア除去率の低下や、気液分離膜の劣化を抑制することができる。
【0047】
原水のアンモニア含有排水中のアンモニア濃度は、特に限定されるものではない。回収硫酸アンモニウム溶液中の硫酸アンモニウムの濃度を25質量%以上とし、かつ硫酸アンモニウムが析出しにくい濃度にするために、900mg/L以上2,200mg/L以下で運転することが好ましい。
【0048】
アンモニア含有排水中のアンモニア濃度が低い場合(例えば、900mg/L未満の場合)、アンモニア除去装置16の前段で、逆浸透膜処理等によりアンモニアを濃縮してもよい。また、硫酸アンモニウムの濃縮を行うために、濃度が低いアンモニア含有排水を処理して生成された硫酸アンモニウム溶液を循環槽18から原水槽10等へ返送し、再度アンモニア処理を行ってもよい。
【0049】
熱交換器12等の加熱装置により、原水の温度を例えば30〜55℃の範囲で、好ましくは35〜55℃の範囲で加熱してアンモニア除去装置16へアンモニア含有排水を送液することが好ましい。原水の温度が30℃未満であると、アンモニア含有排水中のアンモニアがガス化しにくくなり、アンモニア除去装置16におけるアンモニア除去率が低下する傾向にある。加熱装置として熱交換器12の代わりに、原水槽10、原水配管30および原水供給配管32のうち少なくとも1つにヒータ等の加温可能な設備を備え、原水を加熱してもよい。
【0050】
アンモニア除去工程において、アンモニア除去速度の観点から、処理対象のアンモニア含有排水のpHは11以上であることが好ましい。処理対象のアンモニア含有排水のpHが11未満であると、アンモニア含有排水中のアンモニアがガス化しにくくなり、アンモニア除去率が低下する傾向にある。
【0051】
気液分離膜26は、液体を通さずガス状のアンモニアを通すものであればよく、特に制限はない。気液分離膜26としては、例えば、疎水性多孔質の中空糸膜等が挙げられる。例えば、中空糸の径が300μm程度で、空孔サイズが0.03μm程度、(平均)空孔率が40〜50%程度の中空糸膜を用いればよい。このような気液分離膜26により、アンモニア含有排水中に含有されるガス状のアンモニアが気液分離膜26を通過し、アンモニア含有排水中から除去される。
【0052】
循環される硫酸溶液のpHが2以下、例えば1〜2の範囲、好ましくは1.5〜2の範囲に維持されるように硫酸貯槽20から硫酸溶液を注入することが好ましい。循環される硫酸溶液のpHが2を超えると、アンモニア除去速度が低下する場合がある。
【0053】
硫酸貯槽20から添加される硫酸溶液は、できる限り高濃度であることが好ましい。取扱い等の点から硫酸貯槽20から添加される硫酸溶液の硫酸濃度は50質量%以上であることが好ましい。
【0054】
上記の通り、循環される硫酸溶液中の回収された硫酸アンモニウムの濃度が所定の濃度以上、例えば25質量%以上となったら、循環槽18から硫酸アンモニウム溶液配管50を通して、回収硫酸アンモニウム溶液として排出される。
【0055】
循環される硫酸溶液中の硫酸アンモニウムの濃度は、例えば比重計や濃度計等の硫酸アンモニウム濃度測定手段としての硫酸アンモニウム濃度測定装置66を用いて測定してもよい。測定した硫酸アンモニウムの濃度に基づいて、硫酸アンモニウムの濃度が所定の濃度以上、例えば25質量%以上となったら(例えば比重計による測定値が25質量%硫酸アンモニウム溶液の比重約1.14以上となったら)、自動的に循環槽18から回収硫酸アンモニウム溶液配管50を通して回収硫酸アンモニウム溶液として取り出されてもよい。図1,2の例では硫酸アンモニウム濃度測定装置66は循環槽18に設置されているが、硫酸アンモニウム溶液循環配管42に設置されてもよい。また、硫酸アンモニウムが析出しにくい濃度(例えば、40質量%以下)になるように、測定した硫酸アンモニウムの濃度に基づいて自動的に水を供給して希釈する設備を備えてもよい。
【0056】
金属塩類等により気液分離膜26が汚染し、アンモニア除去率が低下した場合、またはアンモニア除去率の低下を抑制するために、所定の時期に気液分離膜26の酸洗浄を実施してもよい(酸洗浄工程)。例えば、酸貯槽を別途設置して、酸溶液をpH調整水配管36を通してアンモニア除去装置16の第1の液室24aに送液し、気液分離膜26を洗浄してもよいし、硫酸貯槽20からの硫酸溶液の一部を第1の液室24aに送液してもよい。
【0057】
酸洗浄工程において用いられる酸溶液としては、硫酸、塩酸、クエン酸等の酸の溶液を用いることができる。
【実施例】
【0058】
以下、実施例および比較例を挙げ、本発明をより具体的に詳細に説明するが、本発明は、以下の実施例に限定されるものではない。
【0059】
以下の試験条件でアンモニア含有排水の処理を行った。
[試験条件]
・使用気液分離膜:ポリプロピレン製多孔質中空糸膜モジュール
・膜面積:1.4m
・通水量:0.0145m/h
・水温:30℃
・アンモニア含有排水pH:12以上
・酸側pH:2以下
【0060】
気液分離膜の一次側(第1の液室)に、アンモニア濃度1796mg/Lのアンモニア含有排水を6時間通水した。本実験系の一次側(第1の液室)および二次側(第2の液室)流量は、それぞれ14.5L/h、19.0L/hとした。第1の液室に通水するアンモニア含有排水は、水酸化ナトリウム溶液を添加してpH12以上とし、第2の液室に通水する溶液は、初期の14質量%硫酸アンモニウム溶液に、50質量%硫酸溶液を用いてpH2以下を維持した。
【0061】
<実施例1>
アンモニア含有排水を6時間通水して処理した後、アンモニア含有排水および硫酸溶液の通水を17時間停止し、硫酸溶液の入口側を開閉するための入口側バルブおよび出口側を開閉するための出口側バルブを閉状態となるように制御した。
【0062】
<比較例1>
アンモニア含有排水を6時間通水して処理した後、アンモニア含有排水および硫酸溶液通水を17時間停止し、入口側バルブおよび出口側バルブを両方とも開状態とした。
【0063】
(実験結果)
実験結果を表1に示す。
【0064】
【表1】
【0065】
実施例1では、硫酸アンモニウム溶液を25%質量以上で安定して回収可能であったが、比較例1では最終的な硫酸アンモニウム溶液の濃度は25質量%未満(22.5質量%)に低下した。比較例1では、17時間停止の際に入口側バルブおよび出口側バルブを両方とも開状態としていたので、気液分離膜を通して水蒸気移動が起こり、循環槽中の硫酸アンモニウム溶液が水蒸気により希釈され、硫酸アンモニウムの濃度が低下したと考えられる。
【符号の説明】
【0066】
1,3 アンモニア含有排水処理装置、10 原水槽、12 熱交換器、14 pH調整槽、16 アンモニア除去装置、18 循環槽、20 硫酸貯槽、22 pH調整剤貯槽、24a 第1の液室、24b 第2の液室、26 気液分離膜、30 原水配管、32,34 原水供給配管、36 pH調整水配管、38,40 処理水循環配管、42,44 硫酸アンモニウム溶液循環配管、46 硫酸配管、48 pH調整剤配管、50 回収硫酸アンモニウム溶液配管、52 圧力逃し配管、54 処理水排出配管、56 入口側バルブ、58 出口側バルブ、60 圧力逃しバルブ、62 バルブ、64 処理水取出バルブ、66 硫酸アンモニウム濃度測定装置。
図1
図2