特許第6386339号(P6386339)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6386339
(24)【登録日】2018年8月17日
(45)【発行日】2018年9月5日
(54)【発明の名称】歪み補償電力増幅器
(51)【国際特許分類】
   H03F 1/32 20060101AFI20180827BHJP
   H03F 3/24 20060101ALI20180827BHJP
   H04B 1/04 20060101ALI20180827BHJP
【FI】
   H03F1/32
   H03F3/24
   H04B1/04 R
【請求項の数】4
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2014-219333(P2014-219333)
(22)【出願日】2014年10月28日
(65)【公開番号】特開2016-86352(P2016-86352A)
(43)【公開日】2016年5月19日
【審査請求日】2017年5月30日
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成26年度、総務省、ミリ波帯における高度多重化干渉制御技術等に関する研究開発の委託事業、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
(73)【特許権者】
【識別番号】000005821
【氏名又は名称】パナソニック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105050
【弁理士】
【氏名又は名称】鷲田 公一
(72)【発明者】
【氏名】宮長 健二
(72)【発明者】
【氏名】滝波 浩二
【審査官】 緒方 寿彦
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−042238(JP,A)
【文献】 特開2011−044836(JP,A)
【文献】 国際公開第2013/046183(WO,A1)
【文献】 特開2004−264497(JP,A)
【文献】 特開2003−234717(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2008/0218262(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H03F 1/00− 3/45、3/50− 3/52、
3/62− 3/64、3/68− 3/72
H04B 1/04
H04B 1/38− 1/58
H04B 7/24− 7/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電力増幅器の非線形歪みを補償して電力増幅する歪み補償電力増幅器であって、
入力信号に、前記電力増幅器において発生する歪み特性と逆特性を与えるプリディストーション処理を行うプリディストーション部と、
複素数であるフィルタ係数を有し、前記プリディストーション処理後の入力信号を、前記入力信号の中心周波数に対して非対称となる周波数特性を用いて帯域制限するフィルタ部と、
前記帯域制限後の入力信号をダウンサンプリングするダウンサンプリング部と、
前記ダウンサンプリング後の入力信号をデジタル信号からアナログ信号に変換するデジタルアナログコンバータと、
を具備
前記フィルタ部は、前記フィルタ係数の虚部の符号を反転してフィルタ係数を切り替える、
歪み補償電力増幅器。
【請求項2】
電力増幅器の非線形歪みを補償して電力増幅する歪み補償電力増幅器であって、
入力信号に、前記電力増幅器において発生する歪み特性と逆特性を与えるプリディストーション処理を行うプリディストーション部と、
複素数であるフィルタ係数を有し、前記プリディストーション処理後の入力信号を、前記入力信号の中心周波数に対して非対称となる周波数特性を用いて帯域制限するフィルタ部と、
前記帯域制限後の入力信号をダウンサンプリングするダウンサンプリング部と、
前記ダウンサンプリング後の入力信号をデジタル信号からアナログ信号に変換するデジタルアナログコンバータと、
を具備
前記フィルタ部は、前記入力信号の通信に用いるチャネルと隣接する隣接チャネルの信号の受信電力に基づいて、前記フィルタ係数を切り替える、
歪み補償電力増幅器。
【請求項3】
電力増幅器の非線形歪みを補償して電力増幅する歪み補償電力増幅器であって、
入力信号に、前記電力増幅器において発生する歪み特性と逆特性を与えるプリディストーション処理を行うプリディストーション部と、
複素数であるフィルタ係数を有し、前記プリディストーション処理後の入力信号を、前記入力信号の中心周波数に対して非対称となる周波数特性を用いて帯域制限するフィルタ部と、
前記帯域制限後の入力信号をダウンサンプリングするダウンサンプリング部と、
前記ダウンサンプリング後の入力信号をデジタル信号からアナログ信号に変換するデジタルアナログコンバータと、
を具備
前記フィルタ部は、前記入力信号の通信に用いるチャネルと隣接する隣接チャネルを用
いて通信する端末数に基づいて、前記フィルタ係数を切り替える、
歪み補償電力増幅器。
【請求項4】
入力信号をアップサンプリングするアップサンプリング部をさらに具備し、
前記プリディストーション部は、アップサンプリングされた入力信号に対してプリディストーション処理し、
前記デジタルアナログコンバータは、サンプリング周波数が前記アップサンプリング部に入力される前記入力信号の帯域幅の所定数倍以下である、
請求項1から3の何れか1項に記載の歪み補償電力増幅器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、電力増幅により生じる信号の非線形歪みをプリディストーションにより補償する歪み補償電力増幅器に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、例えば、携帯電話、無線通信機能が搭載されたノートパソコンを含むモバイル機器の普及が進んでいる。モバイル機器に搭載される無線通信装置では、電力増幅器の非線形な入出力特性に起因して隣接チャネル漏洩電力が増加する。電力増幅器は入出力特性に高い線形性が要求される。
【0003】
ミリ波帯を用いたモバイル機器は、例えば、動画の大容量データを受信する、又は、同時期に複数のユーザにそれぞれ異なる大容量データを配信するために、複数のユーザに隣接するチャネルを割り当てる。隣接チャネル漏洩電力の増加によって、隣接チャネルへ与える干渉が大きくなる。
【0004】
しかしながら、高い線形性を保ち、高出力化、高効率化することは困難であり、非線形歪み補償技術の適用が要求されている。電力増幅器の非線形歪みを補償する方式として、近年、プリディストーション方式が注目されている。プリディストーション方式は、電力増幅器において発生する歪み特性と逆特性をあらかじめ入力信号に与えてから電力増幅器に入力する方法である(例えば、特許文献1、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005−79935号公報
【特許文献2】特開2000−99022号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上述した特許文献1及び特許文献2に記載の電力増幅器では、以下のような課題がある。
【0007】
DACのサンプリングレートが不十分である場合には、隣接チャネル漏洩電力の抑圧が困難であり、隣接チャネルの通信に干渉を与えるという課題がある。
【0008】
本開示は、DACのサンプリングレートが不十分である場合でも、隣接チャネルの通信に与える干渉を軽減する歪み補償電力増幅器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本開示の一態様に係る歪み補償電力増幅器は、電力増幅器の非線形歪みを補償して電力増幅する歪み補償電力増幅器であって、入力信号に、前記電力増幅器において発生する歪み特性と逆特性を与えるプリディストーション処理を行うプリディストーション部と、複素数であるフィルタ係数を有し、前記プリディストーション処理後の入力信号を、前記入力信号の中心周波数に対して非対称となる周波数特性を用いて帯域制限するフィルタ部と、前記帯域制限後の入力信号をダウンサンプリングするダウンサンプリング部と、前記ダウンサンプリング後の入力信号をデジタル信号からアナログ信号に変換するデジタルアナログコンバータと、を具備前記フィルタ部は、前記フィルタ係数の虚部の符号を反転してフィルタ係数を切り替える。
【発明の効果】
【0010】
本開示によれば、DACのサンプリングレートが不十分である場合においても、隣接チャネルの通信に与える干渉を軽減できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】特許文献1に記載の歪み補償電力増幅器の構成を示すブロック図
図2】特許文献2に記載の信号処理装置の構成を示すブロック図
図3図2の信号処理装置の各ブロックにおける信号波形を示す図
図4】本開示の実施の形態1に係る歪み補償電力増幅器の構成を示すブロック図
図5図4に示したフィルタ部の内部構成を示す図
図6図4に示した歪み補償電力増幅器の動作手順を示すフロー図
図7図4の歪み補償電力増幅器の各ブロックにおける信号波形を示す図
図8図4の歪み補償電力増幅器の各ブロックにおける他の信号波形を示す図
図9】本開示の実施の形態2に係る歪み補償電力増幅器の構成を示すブロック図
図10図9に示したフィルタ部の内部構成を示す図
図11】APが複数の端末と通信する様子を示す概念図
図12】端末と、端末が使用しているチャネルとの関係を示すテーブル
図13】本開示の実施の形態3に係る歪み補償電力増幅器の構成を示すブロック図
図14】本開示の実施の形態4に係る歪み補償電力増幅器の構成を示すブロック図
図15図14に示した隣接チャネル判定部の動作手順を示すフロー図
【発明を実施するための形態】
【0012】
(本開示に係るレーダ装置の各実施形態の内容に至る経緯)
先ず、本開示に係るレーダ装置の各実施形態の内容を説明する前に、本開示に係る歪み補償電力増幅器の各実施形態の内容に至る経緯について説明する。
【0013】
ここで、上記特許文献1に記載の歪み補償電力増幅器について説明する。図1は、特許文献1に記載の歪み補償電力増幅器の構成を示すブロック図である。図1の歪み補償電力増幅器は、プリディストーション部11と、電力増幅器12と、歪み係数演算部13と、補償係数演算部14と、評価関数計算部15と、バックオフ制御部16とを備える。
【0014】
図1において、入力信号xは、プリディストーション部11において電力増幅器12の非線形歪みと逆特性の歪みを与えられた後、信号yとして出力される。なお、プリディストーション部11の処理は非線形処理となる。
【0015】
信号yは、電力増幅器12において、電力増幅器12の非線形歪み特性と打ち消しあって歪み補償され、出力zとなる。
【0016】
歪み係数演算部13において、信号yと出力zが用いられ、所定の歪み係数Akが求められ、歪み係数Akが補償係数演算部14に出力される。歪み係数Akは、補償係数演算部14において、バックオフB1とから補償係数が求められ、補償係数がプリディストーション部11に出力される。
【0017】
一方で、評価関数計算部15において、出力zから隣接チャネル漏洩電力比が求められ、隣接チャネル漏洩電力比と法定値とから評価関数が求められ、評価関数がバックオフ制御部16に出力される。バックオフ制御部16は、評価関数を0に近づけるためにバックオフB1を逐次的に決定し、バックオフB1をプリディストーション部11に出力する。
【0018】
プリディストーション部11においてデジタル信号処理を実現するためには、プリディストーション部11から出力されたデジタル信号をDAC(Digital-to-Analog Converter)を用いてアナログ信号に変換する必要がある。プリディストーション部11から出力される信号yは、元の信号xより信号帯域幅が広くなるために、DACのサンプリングレートを十分確保する必要がある。
【0019】
しかし、DACのサンプリングレートの増加は、回路規模及び消費電力の増加に直結するため、信号xが広帯域な信号である場合には、DACのサンプリングレートを抑える必要がある。信号xの帯域幅に対してDACのサンプリングレートが不十分な場合には、信号yの高域成分による折り返し歪みが発生する。このため、電力増幅器12による非線形歪みを十分打ち消せないという課題がある。
【0020】
課題を解決する手段として、例えば、特許文献2に記載の信号処理装置がある。以下、特許文献2に記載の信号処理装置について、図2及び図3を用いて説明する。図2は、特許文献2に記載の信号処理装置の構成を示すブロック図である。また、図3は、図2の信号処理装置の各ブロックにおける信号波形を示す図である。ただし、図3において、横軸fは周波数を示し、0は信号の中心周波数を示す。また、Bは入力信号の帯域幅を示し、fsはDACのサンプリングレートを示す。DACのサンプリングレートの十分な確保が困難である例として、fs=2Bである。また、fcはキャリア周波数を示す。また、CH1〜CH3はチャネルを示す。
【0021】
図2の信号処理装置は、オーバーサンプリング部21と、非線形処理部22と、フィルタ部23と、ダウンサンプリング部24と、DAC25と、電力増幅器26とを備える。
【0022】
周波数0を中心として−B/2〜+B/2の範囲に広がる入力信号(図3(a)参照)は、オーバーサンプリング部21に入力され、オーバーサンプリング部21において、入力信号の2倍のサンプリング周波数によってオーバーサンプリングされ(図3(b)参照)、オーバーサンプリングデータが非線形処理部22に出力される(図3(c)参照)。ここでは、−fsと+fsの部分にあったイメージ成分が除去されている。
【0023】
オーバーサンプリングデータは、非線形処理部22において、例えば、プリディストーション処理を用いた非線形処理が施され、非線形オーバーサンプリングデータがフィルタ部23に出力される(図3(d)参照)。ここでは、電力増幅器26の歪み特性と逆特性を与えた結果、図3(a)に示す入力信号の帯域幅B(=fs/2)から−fsと+fsとの間の範囲に広がる。
【0024】
非線形オーバーサンプリングデータは、フィルタ部23において、オーバーサンプリング部21のサンプリング周波数の半分の周波数成分が通過させられ、フィルタリングオーバーサンプリングデータがダウンサンプリング部24に出力される(図3(e)参照)。なお、フィルタ部23は、フィルタ係数が実数である実フィルタである。フィルタリングオーバーサンプリングデータは、−fs/2から+fs/2の範囲内に帯域制限される。
【0025】
フィルタリングオーバーサンプリングデータは、ダウンサンプリング部24において、1/2倍ダウンサンプリングされ、サンプリングデータがDAC25に出力される(図3(f)参照)。サンプリングデータはDAC25のサンプリングレートfs毎に同じ信号が繰り返されている。周波数=−fsが中心である信号と、周波数=+fsが中心である信号にも逆歪みの成分が発生しているが、フィルタ部23において帯域制限することで、隣り合う信号の重複を回避する。
【0026】
サンプリングデータは、DAC25において、デジタルアナログ変換されて、アナログ信号が電力増幅器26に出力される(図3(g)参照)。アナログ信号は、DAC25後のLPF(図示せず)によって、−fs/2から+fs/2の範囲外の成分は抑圧されている。
【0027】
アナログ信号は、電力増幅器26において、電力増幅され、出力される(図3(h)参照)。電力増幅されたアナログ信号は、折り返し歪みを受けないために非線形処理部22によって逆特性が与えられているので、−fs/4から−fs/2の範囲、および、+fs/4から+fs/2の範囲において、電力増幅器において発生する非線形歪みが打ち消される。
【0028】
特許文献2に記載された信号処理装置は、入力信号に対して、オーバーサンプリング、非線形処理、フィルタリング処理及びダウンサンプリング処理の順に処理することにより、入力信号のサンプリング周波数の半分よりも高い周波数成分を除去でき、非線形処理に起因して発生する折り返し歪みの発生を低減できる。
【0029】
しかしながら、上述した特許文献2に記載の信号処理装置では、以下のような課題がある。
【0030】
入力信号の帯域幅に対してDACのサンプリングレートが不十分である場合には、プリディストーションの効果が得られる周波数領域は、DACのサンプリングレートに制限される。
【0031】
例えば、入力信号の帯域幅B(図3(a)参照)に対して、DACのサンプリングレートfsが2倍である場合(fs=2B)について説明する。以下、Bに対するfsの比(=fs/B)をオーバーサンプリング比と呼ぶ。図3(h)では、プリディストーションの効果が得られる範囲は、キャリア周波数fcに対して-fs/2〜+fs/2の範囲となる。また、オーバーサンプリング比=2では、隣接チャネル漏洩電力は、プリディストーションしない場合の半分程度であるため、隣接チャネルでの通信に干渉を与える。
【0032】
DACのサンプリングレートが不十分である場合には、隣接チャネル漏洩電力の抑圧が困難であり、隣接チャネルの通信に干渉を与えてしまうという課題がある。
【0033】
そこで、以下の各実施の形態では、DACのサンプリングレートが不十分である場合でも、隣接チャネルの通信に与える干渉を軽減する歪み補償電力増幅器の例を説明する。
【0034】
以下、本開示の実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。ただし、実施の形態において、同一機能を有する構成には、同一符号を付し、重複する説明は省略する。
【0035】
(実施の形態1)
図4は、本開示の実施の形態1に係る歪み補償電力増幅器100の構成を示すブロック図である。以下、歪み補償電力増幅器100の構成について説明する。
【0036】
アップサンプリング部101は、DAC105のサンプリングレートの2倍のサンプリングレートに入力信号をアップサンプリングし、また、アップサンプリング時に発生するイメージ信号を抑圧して、アップサンプリングした信号をプリディストーション部102に出力する。
【0037】
プリディストーション部102は、アップサンプリング部101から出力された信号に対して、補償係数に応じて、電力増幅器107において発生する歪み特性と逆特性の歪みを与えるプリディストーション処理を行い、フィルタ部103に出力する。
【0038】
フィルタ部103は、フィルタ係数が複素数である複素フィルタであり、プリディストーション部102から出力された信号に対して帯域制限し、ダウンサンプリング部104に出力する。フィルタ部103は、帯域制限後の帯域幅がDAC105のサンプリングレート以下にするための帯域制限を行う。フィルタ部103の周波数特性は周波数軸上において入力信号の中心周波数に対して非対称である。なお、フィルタ部103の詳細については後述する。
【0039】
ダウンサンプリング部104は、フィルタ部103から出力された信号のサンプリングレートがDAC105のサンプリングレートに等しくするために、フィルタ部103から出力された信号をダウンサンプリングし、DAC105に出力する。
【0040】
DAC105は、ダウンサンプリング部104から出力された信号をデジタル信号からアナログ信号に変換し、周波数変換部106に出力する。DAC105は、DAC105のサンプリング周波数がアップサンプリング部101に入力される入力信号の帯域幅の3倍以下である。
【0041】
周波数変換部106は、DAC105から出力された信号をベースバンド帯から搬送波周波数へアップコンバートし、電力増幅器107に出力する。例えば、DAC105から出力される信号がI、Qの複素信号である場合には、周波数変換部106は直交変調器として構成される。
【0042】
電力増幅器107は、周波数変換部106から出力された信号を所定の電力に増幅し、アンテナ108から送信する。電力増幅器107は、プリディストーション部102において与えられた逆歪み成分と、電力増幅器107において発生する非線形歪み成分とが打ち消しあって、非線形歪みを抑制した信号を送信できる。
【0043】
図5は、図4に示したフィルタ部103の内部構成を示す図である。図5のフィルタ部103は、一般的な複素フィルタをFIR(Finite Impulse Response)フィルタとして構成した一例を示す。
【0044】
図5では、フィルタ部103への入力信号をx(n)、フィルタ部103の出力信号をy(n)と表わす。また、フィルタ係数をa(k=0、1、、、N−1)と表わす。入力信号x(n)、出力信号y(n)は複素数の信号であり、フィルタ係数aも複素数であり、それぞれ以下の式(1)〜(3)によって表わされる。
【数1】
(n)はx(n)の実部、x(n)はx(n)の虚部を表わす。
【数2】
(n)はy(n)の実部、y(n)はy(n)の虚部を表わす。
【数3】
krはaの実部、akiはaの虚部を表わす。
【0045】
図5のフィルタ部103は、主に、N−1個の遅延器(図中、Dを用いて示す)151−1、151−2、…、151−(N−1)と、N個の乗算器152−1、152−2、…、152−Nと、加算器153とによって構成される。
【0046】
遅延器151−1は、フィルタ部103のサンプリングクロックに従って、入力信号x(n)を1クロック遅延させる。同様に、遅延器151−2は、遅延器151−1の出力信号を1クロック遅延させ、遅延器151−(N−1)は、遅延器151−(N−2)の出力信号を1クロック遅延させる。
【0047】
乗算器152−1、152−2、…、152−Nは、入力信号x(n)と各遅延器の出力信号に対して、フィルタ係数a(k=0、1、・・・N−1)を乗算する。
【0048】
加算器153は、各乗算器の出力信号を加算して、フィルタ部103の出力信号y(n)として出力する。
【0049】
x(n)とy(n)の関係はaを用いて、次式(4)に示される。
【数4】
【0050】
フィルタ部103は、フィルタ係数aに適切な複素数を設定することによって、非対称な周波数特性を得る。
【0051】
次に、上述した歪み補償電力増幅器100の動作について、図6を用いて説明する。ステップS201において、アップサンプリング部101は、入力信号をアップサンプルし、ステップS202において、プリディストーション部102は、アップサンプリング部101から出力された信号に対して、補償係数を用いて、電力増幅器107において発生する歪み特性と逆特性の歪みを与える。
【0052】
ステップS203において、フィルタ部103は、プリディストーション部102から出力された信号をDAC105のサンプリングレート以下の帯域幅に帯域制限し、ステップS204において、ダウンサンプリング部104は、フィルタ部103から出力された信号をDAC105のサンプリングレートに等しくするためにダウンサンプリングする。
【0053】
ステップS205において、DAC105は、ダウンサンプリング部104から出力された信号をアナログ信号に変換し、ステップS206において、周波数変換部106は、DAC105から出力された信号をベースバンド周波数から搬送波周波数にアップコンバートする。
【0054】
ステップS207において、電力増幅器107は、周波数変換部106から出力された信号を所定の電力に増幅し、アンテナ108から送信する。
【0055】
次に、図4の歪み補償電力増幅器100の各ブロックにおける信号波形について、図7を用いて説明する。ただし、図7において、横軸fは周波数を示し、0は信号の中心周波数を示す。また、Bは入力信号の帯域幅を示し、fsはDACのサンプリングレートを示し、fs=2Bである。また、fcはキャリア周波数を示す。また、CH1〜CH3はチャネルを示す。なお、図7(a)〜(d)は、図3(a)〜(d)と同様である。
【0056】
図7(e)では、フィルタ部103が、−fs/4〜+3fs/4の帯域を通過させる、非対称な周波数特性を実現できることを示している。
【0057】
図7(f)では、ダウンサンプリング部104から出力された信号が、DACのサンプリングレートfs毎に同じ信号が繰り返されることを示している。
【0058】
図7(g)では、DACから出力された信号が、DAC105後段の図示せぬフィルタにより−3fs/4から+3fs/4の範囲外の成分が抑圧されることを示している。
【0059】
図7(h)では、電力増幅器107から出力された信号が、+fs/4から+3fs/4の範囲、つまり、CH3の帯域全体において、電力増幅器107において発生する非線形歪みが打ち消されることを示している。
【0060】
CH1では、歪み補償の効果は少ないが、CH3では、歪み補償の効果が十分に得られる。すなわち、CH3に与える干渉を低減できる。
【0061】
なお、図7(e)では、フィルタ部103が−fs/4〜+3fs/4の帯域を通過させる周波数特性であるが、フィルタ部103が−3fs/4〜+fs/4の帯域を通過させる周波数特性としてもよい(図8(e)参照)。フィルタ部103の通過帯域の切り替えは、フィルタ部103のフィルタ係数を複素共役の複素数に切り替えればよく、虚部の符号を反転することによって実現できる。図8(f)〜(h)では、中心周波数より低い周波数帯域を歪み補償でき、CH1に与える干渉を軽減できる。なお、図8(a)〜(d)は、図7(a)〜(d)と同様である。
【0062】
実施の形態1によれば、フィルタ係数に複素数を設定するフィルタ部により、通過帯域を入力信号の中心帯域から高い周波数帯域または低い周波数帯域のいずれか一方に偏らせることができ、DACのサンプリングレートが不十分であっても、電力増幅器において発生する非線形歪みを打ち消すため、隣接チャネルの通信に与える干渉を軽減できる。
【0063】
(実施の形態2)
図9は、本開示の実施の形態2に係る歪み補償電力増幅器300の構成を示すブロック図である。図9は、図4に対して、アンテナ301、電力判定部302、隣接チャネル判定部303を追加し、フィルタ部103をフィルタ部304に変更した点が異なる。
【0064】
電力判定部302は、帯域フィルタ321−1、321−2、電力検出部322−1、322−2、比較部323を備えており、受信信号の帯域毎の受信電力の大小を判定する。
【0065】
帯域フィルタ321−1、321−2は、アンテナ301によって受信した信号のうち、特定の帯域を通過させるフィルタである。例えば、歪み補償電力増幅器300を備えた通信装置がCH2を用いて送信する場合、一方の帯域フィルタ321−1はCH1(CH2より低い方の周波数に隣接するチャネル)の帯域を通過させる。他方の帯域フィルタ321−2はCH3(CH2より高い方の周波数に隣接するチャネル)の帯域を通過させる。
【0066】
電力検出部322−1、322−2は、帯域フィルタ321−1、321−2から出力された信号の電力を検出し、検出結果を比較部323に出力する。電力検出部322−1、322−2は、例えば、検波部とLPF(Low Pass Filter)とを組み合わせ、電力値をアナログ電圧値に変換してもよい。また、電力検出部322−1、322−2は、電力値に相当する電圧値をADC(Analog-to-Digital Converter)においてデジタル値に変換してもよい。
【0067】
比較部323は、2つの電力検出部322−1、322−2から出力された電力検出結果に基づいて、いずれのチャネルの電力が大きいかを判定し、判定結果を隣接チャネル判定部303に出力する。
【0068】
隣接チャネル判定部303は、比較部323から出力された判定結果に基づいて、電力の大きい方のチャネルを歪み補償すると判定し、判定結果をフィルタ部304に出力する。
【0069】
フィルタ部304は、隣接チャネル判定部303から出力された判定結果に基づいて、フィルタ係数を切り替え、プリディストーション部102から出力された信号のうち、歪み補償を行う周波数帯を通過させる。
【0070】
図10は、図9に示したフィルタ部304の内部構成を示す図である。図10は、図5に対して、複数のセレクタ354−1、354−2、…、354−Nを追加した点が異なる。
【0071】
セレクタ354−1、354−2、…、354−Nは、それぞれ2つのフィルタ係数akL、akU(k=0、1、…、N−1)を備えている。フィルタ係数akLは、周波数の低い方(CH1側)を歪み補償するためのフィルタ係数である。フィルタ係数akUは、周波数の高い方(CH3側)を歪み補償するためのフィルタ係数である。なお、フィルタ係数akL、akUも複素数であり、複素共役の関係にある。セレクタ354−1、354−2、…、354−Nは、隣接チャネル判定部303からの指示に従って、フィルタ係数akLまたはフィルタ係数akUのいずれかを選択し、乗算器152−1、152−2、…、152−Nに出力する。
【0072】
つまり、歪み補償電力増幅器300は、低い周波数帯域の歪み補償と、又は、高い周波数帯域の歪み補償とを、隣接チャネル判定部303からの指示に従って切り替えができる。
【0073】
実施の形態2によれば、電力の大きい隣接チャネルを歪み補償することにより、端末が使用しているチャネルに与える干渉を低減できる。
【0074】
(実施の形態3)
本開示の実施の形態3では、AP(Access Point)と複数の端末との通信について説明する。図11では、APは、複数のチャネル(CH1〜CH3)を用いて、同時期に通信できる。APは、端末がどのチャネルにおいて通信するかを把握しており、APは、例えば、図12(a)または図12(b)に示すテーブルを有している。図11図12に示す例では、端末A、端末B、端末CがCH1において通信し、端末D、端末EがCH2において通信し、端末FがCH3において通信する。
【0075】
図13は、本開示の実施の形態3に係る歪み補償電力増幅器400の構成を示すブロック図である。図13は、図9に対して、パケット復調部401、端末ID管理部402を追加し、電力判定部302を削除し、隣接チャネル判定部303を隣接チャネル判定部403に変更した点が異なる。
【0076】
パケット復調部401は、アンテナ301によって受信したパケット信号を復調し、パケット信号に含まれる、例えば、端末ID、使用中の通信チャネル、通信相手の少なくとも1つを含む情報を抽出し、抽出した情報を端末ID管理部402に出力する。
【0077】
端末ID管理部402は、パケット復調部401から出力された、端末ID、使用中の通信チャネル、通信相手の少なくとも1つを含む情報を蓄積して、例えば、図12(a)または図12(b)に示すテーブルを作成して、保持する。端末ID管理部402は、各チャネルにおいて通信する端末数を示す端末数情報を隣接チャネル判定部403に出力する。
【0078】
隣接チャネル判定部403は、端末ID管理部402から出力された端末数情報に基づいて、端末数の多い隣接チャネルを歪み補償すると判定し、判定結果をフィルタ部304に出力する。隣接チャネル判定部403は、例えば、APがCH2において端末Dと通信する場合、隣接するチャネルCH1とCH3とでは、CH1において通信する端末の方が多いので、CH1の方の帯域を歪み補償すると判定する。これにより、CH1へ与える干渉を軽減できるので、システム全体としてのスループットの低下を抑制できる。
【0079】
実施の形態3によれば、通信する端末数の多い隣接チャネルを歪み補償することにより、多くの端末が使用しているチャネルに与える干渉を低減でき、システムスループットの低下を抑制できる。
【0080】
なお、APから端末へ図12(a)または図12(b)に示すテーブルを送信することによって、AP以外に、端末側も通信する端末数の多い隣接チャネルの歪みを補償できる。例えば、端末DからAPへ送信する場合、端末DはAPから送信されたテーブルに基づいて、通信する端末数が多い隣接チャネル、つまりCH1の方の帯域の歪みを補償する。APは、テーブルが更新される毎に各端末に対してテーブルを送信することにより、APと通信中の端末数が増減しても、端末は適切に歪み補償する帯域を選択できる。
【0081】
(実施の形態4)
図14は、本開示の実施の形態4に係る歪み補償電力増幅器500の構成を示すブロック図である。図14は、図4に対して、隣接チャネル判定部501と、図9のアンテナ301及び電力判定部302と、図13のパケット復調部401及び端末ID管理部402とを追加し、フィルタ部を図9または図13のフィルタ部304に変更した点が異なる。
【0082】
隣接チャネル判定部501は、比較部323から出力された判定結果、及び、端末ID管理部402から出力された端末数情報に基づいて、電力の大きい方の隣接チャネルまたは通信中の端末数の多い隣接チャネルを歪み補償すると判定し、判定結果をフィルタ部304に出力する。
【0083】
図15は、図14に示した隣接チャネル判定部501の動作手順を示すフロー図である。図14に示した歪み補償電力増幅器500を備えた通信装置がCH2を用いて通信し、隣接チャネルであるCH1及びCH3のいずれかの歪み補償について説明する。
【0084】
ステップS601では、CH1の電力がCH3の電力より大きいか否かを判定し、CH1の電力が大きい(YES)場合には、ステップS604に移行し、CH1の電力が小さい(NO)場合には、ステップS602に移行する。
【0085】
ステップS602では、CH1の電力がCH3の電力より小さいか否かを判定し、CH1の電力が小さい(YES)場合には、ステップS605に移行し、CH1の電力が大きい(NO)場合には、ステップS603に移行する。
【0086】
ステップS603では、CH1の端末数がCH3の端末数より多いか否かを判定し、CH1の端末数がCH3の端末数より多い(YES)では、ステップS604に移行し、CH1の端末数がCH3の端末数以下(NO)では、ステップS605に移行する。
【0087】
ステップS604では、CH1側を歪み補償すると判定し、ステップS605では、CH3側を歪み補償すると判定する。
【0088】
CH1の電力とCH3の電力が同じ場合には、端末数の多少による判定によって、歪み補償に適したチャネルを選択し、隣接チャネルの通信に与える干渉をより効果的に軽減できる。なお、CH1の電力とCH3の電力が同じ場合とは、厳密に同じである必要はなく、これらの電力差が一定の範囲内に収まればよい。
【0089】
実施の形態4によれば、隣接チャネルの電力及び端末数に基づいて、歪み補償する隣接チャネルを判定するため、隣接チャネルに与える干渉を効果的に低減できる。
【0090】
なお、上記実施の形態2〜4では、電力値及び又は端末数を用いて歪み補償するチャネルを判定する場合について説明したが、本開示はこれに限らず、電力値及び端末数以外のパラメータを用いてもよい。
【0091】
例えば、通信しているデータに求められる通信品質を用いてもよい。ストリーミングデータのように遅延及び伝送誤りが許容されないデータを通信している端末が存在する場合には、端末が通信しているチャネルを優先的に歪み補償してもよい。
【0092】
また、大容量のデータを通信する端末が存在する場合には、長時間、任意のチャネルを使用するため、端末が通信しているチャネルを優先的に歪み補償してもよい。これらのパラメータは、電力値及び端末数と組み合わせてもよい。複数のパラメータを組み合わせて判定することによって、システム全体のスループット低減を抑制した歪み補償ができる。
【0093】
なお、上記各実施の形態では、フィルタ部にFIRフィルタを用いて説明したが、本開示はこれに限らず、フィルタ部にIIR(Infinite Impulse Response)フィルタを用いてもよい。
【0094】
また、上記各実施の形態では、入力信号のサンプリングレートがDACのサンプリングレートと等しい場合を例に説明したが、本開示はこれに限らず、入力信号のサンプリングレートがDACのサンプリングレートと等しくなくてもよい。例えば、入力信号のサンプリングレートがDACのサンプリングレートよりも高く、電力増幅器において発生する歪み特性と逆特性の歪みをプリディストーション部において与えた後に折り返しノイズの影響を抑制できる場合には、アップサンプリング部を省略してもよい。例えば、入力信号とプリディストーション部とフィルタ部のサンプリングレートがfs=4Bであり、ダウンサンプリング部とDACのサンプリングレートがfs=2Bである場合は、アップサンプリング部を省略できる。
【0095】
また、上記各実施の形態では、フィルタ部は、帯域制限後の帯域幅がfsとなるために帯域制限したが、帯域制限後の帯域幅がfs未満となる帯域制限であってもよい。帯域制限後の帯域幅を狭くすることで非線形歪みを打ち消す効果は小さくなるが、フィルタ部、又は、DAC後のフィルタの設計条件を緩和できる。
【0096】
また、上記実施の形態では、アップサンプリング部でのサンプリングレートをDACのサンプリングレートの2倍として説明したが、本開示はこれに限らず、プリディストーション部でのサンプリングレートがDACのサンプリングレートの2倍より大きくてもよい。
【0097】
アップサンプリング部でのサンプリングレートは、電力増幅器において発生する歪み特性と逆特性の歪みを与えた後の信号の周波数の広がりに応じて、つまり、電力増幅器の非線形歪み特性に応じて決定してもよい。電力増幅器での非線形歪みがより広い周波数に及ぶ場合には、DACのサンプリングレートの2倍よりも大きなサンプリングレートを用いてアップサンプリングしてもよい。
【0098】
また、上記各実施の形態では、周波数の低い方と高い方の両方に隣接チャネルが存在する例について説明したが、本開示はこれに限らず、利用できるチャネルのうち、一番端のチャネルを使用してもよい。例えば、周波数の低い方からCH1、CH2、CH3、CH4と並んだ4つのチャネルが利用可能であり、ある端末がCH1を使用する場合、CH1より低い周波数には干渉を与える端末は存在しないので、低周波数帯域についての歪み補償は省略してもよい。
【0099】
以上、図面を参照して各種の実施形態について説明したが、本開示はかかる例に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本開示の技術的範囲に属するものと了解される。
【0100】
上記各実施形態では、本開示はハードウェアを用いて構成する例にとって説明したが、本開示はハードウェアとの連携においてソフトウェアでも実現することも可能である。
【0101】
また、上記各実施形態の説明に用いた各機能ブロックは、典型的には集積回路であるLSIとして実現される。これらは個別に1チップ化されてもよいし、一部または全てを含むように1チップ化されてもよい。ここでは、LSIとしたが、集積度の違いにより、IC、システムLSI、スーパーLSI、ウルトラLSIと呼称されることもある。
【0102】
また、集積回路化の手法はLSIに限るものではなく、専用回路または汎用プロセッサを用いて実現してもよい。LSI製造後に、プログラムすることが可能なFPGA(Field Programmable Gate Array)、LSI内部の回路セルの接続又は設定を再構成可能なリコンフィギュラブル プロセッサ(Reconfigurable Processor)を利用してもよい。
【0103】
さらには、半導体技術の進歩又は派生する別技術により,LSIに置き換わる集積回路化の技術が登場すれば、当然、その技術を用いて機能ブロックを集積化してもよい。バイオ技術の適用等が可能性としてありえる。
【0104】
本開示に係る実施形態の種々の態様として、以下のものが含まれる。
【0105】
第1の開示に係る歪み補償電力増幅器は、電力増幅器の非線形歪みを補償して電力増幅する歪み補償電力増幅器であって、入力信号に、前記電力増幅器において発生する歪み特性と逆特性を与えるプリディストーション処理を行うプリディストーション部と、複素数であるフィルタ係数を有し、前記プリディストーション処理後の入力信号を、前記入力信号の中心周波数に対して非対称となる周波数特性を用いて帯域制限するフィルタ部と、前記帯域制限後の入力信号をダウンサンプリングするダウンサンプリング部と、前記ダウンサンプリング後の入力信号をデジタル信号からアナログ信号に変換するデジタルアナログコンバータと、を具備する。
【0106】
第2の開示に係る歪み補償電力増幅器は、上記第1の開示の歪み補償電力増幅器において、入力信号をアップサンプリングするアップサンプリング部をさらに具備し、前記プリディストーション部は、アップサンプリングされた入力信号に対してプリディストーション処理し、前記デジタルアナログコンバータは、サンプリング周波数が前記アップサンプリング部に入力される前記入力信号の帯域幅の所定数倍以下である。
【0107】
第1の開示に係る歪み補償電力増幅器は、上記第1の開示の歪み補償電力増幅器において、前記フィルタ部は、前記フィルタ係数を切り替えて帯域制限する。
【0108】
第1の開示に係る歪み補償電力増幅器は、上記第2の開示の歪み補償電力増幅器において、前記フィルタ部は、前記フィルタ係数の虚部の符号を反転してフィルタ係数を切り替える。
【0109】
第1の開示に係る歪み補償電力増幅器は、上記第2の開示の歪み補償電力増幅器において、前記フィルタ部は、前記入力信号の通信に用いるチャネルと隣接する隣接チャネルの信号の受信電力に基づいて、前記フィルタ係数を切り替える。
【0110】
第1の開示に係る歪み補償電力増幅器は、上記第2の開示の歪み補償電力増幅器において、前記フィルタ部は、前記入力信号の通信に用いるチャネルと隣接する隣接チャネルを用いて通信する端末数に基づいて、前記フィルタ係数を切り替える。
【産業上の利用可能性】
【0111】
本開示にかかる歪み補償電力増幅器は、例えば、無線通信装置等に適用できる。
【符号の説明】
【0112】
101 アップサンプリング部
102 プリディストーション部
103、304 フィルタ部
104 ダウンサンプリング部
105 DAC
106 周波数変換部
107 電力増幅器
108、301 アンテナ
151−1〜151−(N−1) 遅延器
152−1〜152−N 乗算器
153 加算器
302 電力判定部
321−1、321−2 帯域フィルタ
322−1、322−2 電力検出部
323 比較部
303、403、501 隣接チャネル判定部
354−1〜354−N セレクタ
401 パケット復調部
402 端末ID管理部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15