(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
無機材料または有機材料で構成される第1の基材と、無機材料または有機材料で構成される第2の基材と、前記第1の基材と前記第2の基材とを接着する接着層とを備える積層構造物の製造方法であって、
前記積層構造物に備えられる前記第1の基材と、前記第2の基材のうち、少なくともいずれか一方は、光透過性を有する基材であり、
前記積層構造物の製造方法は、
前記第1の基材と前記第2の基材のうち少なくともいずれか一方の表面に、請求項4に記載の光硬化性組成物を塗布する塗布工程と、
前記光硬化性組成物を塗布した基材を加熱して溶剤を蒸発させる工程と、
前記光硬化性組成物を塗布した表面を介して、前記第1の基材と前記第2の基材とを貼り合せる積層工程と、
前記光透過性を有する基材を介して光を照射する光照射工程と、
を含むことを特徴とする、積層構造物の製造方法。
無機材料または有機材料で構成される第1の基材と、無機材料または有機材料で構成される第2の基材と、前記第1の基材と前記第2の基材とを接着する接着層とを備える積層構造物の製造方法であって、
前記積層構造物に備えられる前記第1の基材と、前記第2の基材のうち、少なくともいずれか一方は、光透過性を有する基材であり、
前記積層構造物の製造方法は、
前記第1の基材と前記第2の基材のうち少なくともいずれか一方の表面に、請求項5または6に記載の光硬化性組成物を塗布する塗布工程と、
前記光硬化性組成物を塗布した表面を介して、前記第1の基材と前記第2の基材とを貼り合せる積層工程と、
前記光透過性を有する基材を介して光を照射する光照射工程と、
を含むことを特徴とする、積層構造物の製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、本発明の実施の形態について適宜図面を用いて詳しく説明する。なお、本明細書中において「〜」は特に断りがなければ以上から以下を表す。
【0032】
[積層構造物]
まず、本実施形態に係る積層構造物について
図1に基づいて説明する。
本実施形態の積層構造物100は、第1の基材11と第2の基材12と、これらの基材間を接着する接着層13を備えるものである。
【0033】
この第1の基材11および第2の基材12は、それぞれ無機材料または有機材料から構成されるものである。
無機材料の例としては、ガラス、石英、アルミニウム、ニッケル、鉄、銅、銀、金、ステンレス鋼、ゲルマニウム、チタン、シリコン、アルミナ、半導体等の無機材料が挙げられる。
また、有機材料の例としては、ポリイミド、ポリアミド、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリフェニレンエーテル、ポリフェニレンスルフィド、ポリアクリレート、ポリメタクリレート、ポリアリレート、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、ポリオレフィン、ポリ環状オレフィン、セルロース系樹脂、フッ素樹脂等の有機材料などが挙げられる。また、後述するフッ素含有ポリマー、または光硬化性組成物からなる成形体を基材として採用することもできる。
さらに、これらの基材は、接着性を上げる目的で基材の表面にコロナ処理、プラズマ処理、UV処理、プライマー処理、エッチング処理などの物理的あるいは化学的な表面処理によって易接着処理を施してもよい。
なお、本実施形態の積層構造物100は、第1の基材11または第2の基材12のいずれかの基材を介して光を照射し、後述する光硬化性組成物を硬化することで接着層12が形成される。
そのため、通常、第1の基材11または第2の基材12のいずれかは光透過性の基材が用いられる。
【0034】
なお、
図1において、第1の基材11、第2の基材12および接着層13の三層のみからなる積層構造物100を図示したが、本発明においては、これ以外の層を設けることもできる。
たとえば、後述する光硬化性組成物を第1の基材11の上面に塗布し、他の基材をこの光硬化性樹脂組成物の塗布層上に設け、積層数を増加させることもできる。
光硬化性組成物は片方の基材に塗工しても両方の基材に塗工してもよく、両方の基材に塗工するときは同種、異種いずれの接着剤を用いてもよく、積層数を増加させる基材は本実施形態の積層構造物100で用いたものと同種、異種いずれのものであってもよい。
このような方法で積層した構造物は、いずれか一方の基材が光を透過し光硬化反応が起こるものであればよく、無機、有機何れの材料であっても、同種あるいは、異種の材料を組み合わせて用いてもよい。
【0035】
また、本実施形態の積層構造物100は、第1の基材11として、表面に凹凸の構造を有するフィルムを用い、裏面が接着層13と接する構造としてもよい。
または、第1の基材11と第2の基材12の両方の表面に凹凸の構造を有するフィルムを用い、凹凸の構造を有する面が接着層13と接する構造としてもよい。
この凹凸構造のサイズは、40nm〜5000μmのパターンを賦型したものであり、形状は特に限定されるものではない。ここで凹凸構造は、スクリーン印刷、エンボス加工、サブミクロンインプリント、ナノインプリントなど様々な方法で凹凸構造を形成しても良い。
特に、凹凸構造をインプリント方法で形成するときは、石英、シリコン、ニッケル、レジストなどからなるモールドの様々なパターンに光硬化性樹脂、または熱可塑性樹脂、ポリマーワニスなどの樹脂を塗布し、適宜、それぞれに合った方法で凹凸構造を形成させる。この凹凸構造を表面に持つフィルムを後述する光硬化性組成物で第2の基材12と接着させて、積層構造物100とすることもでき、第1の基材11と第2の基材12の両方の表面に凹凸の構造を有するフィルムを接着させて積層構造物100とすることもできる。
【0036】
[光硬化性組成物]
本実施形態の光硬化性組成物は、具体的には以下に示す種の組成物を用いることができる。
(1) 光硬化性化合物(A)および光硬化開始剤(B)、特定のフッ素含有ポリマー(C)および自身は光硬化しない溶剤(D)を含有し、かつ質量比(A)/(C)が95/5〜5/95の範囲であり、さらに質量比[(A)+(C)] /(D)が80/20〜5/95であることを特徴とする光硬化性組成物。
(2) 光硬化性化合物(A)、光硬化開始剤(B)および特定のフッ素含有ポリマー(C)を含有し、かつ質量比(A)/(C)が95/5〜25/75の範囲であり、好ましくは自身は光硬化しない溶媒を実質的には含まない光硬化性組成物。
【0037】
通常、光硬化性組成物を接着層に利用して積層構造物を作製する際に生じる、基材の反り、歪みは、光照射硬化時の光硬化性化合物の硬化収縮に起因する。
具体的に、反応性二重結合を有するモノマーを光照射により硬化させるラジカル重合系の光硬化性組成物では硬化収縮の程度が大きく、硬化前後の体積の変化率を収縮率とする指標で10%以上の硬化収縮が生じる。そこで、利用されるのが含酸素環状部位の開環重合により硬化反応が進行するエポキシ、オキセタン化合物のカチオン重合系の光硬化性組成物であるが、このような光硬化組成物を用いた場合であっても、三員環の開環反応で硬化が進行するエポキシ化合物のときの硬化収縮は10%を下回る程度、四員環の開環反応で硬化が進行するオキセタン化合物のときで5%程度である。
【0038】
これに対し、本実施形態の光硬化性組成物では、組成を適切に調整することにより、光硬化後の収縮率を0〜4%に制御することができる。
また、硬化後の収縮率は配合の調整を適切に図ることにより、好ましくは0〜3%とすることができ、さらに好ましくは0〜1%とすることができる。
すなわち、これまでにない収縮率の低さにより、従来は反り、歪みがあった積層構造物を、反り、歪みのない積層構造物として提供することができるようになる。
【0039】
さらには、本実施形態の光硬化性組成物は、光硬化性化合物(A)、光硬化開始剤(B)および特定のフッ素含有ポリマー(C)を含有し、かつ質量比(A)/(C)が95/5〜25/75の範囲である無溶剤の光硬化性組成物を用いても良い。
これにより、後述する積層構造物の製造方法において、乾燥工程を要せず、工程を簡略化でき、光硬化後の収縮率を0〜4%に制御した積層構造物を得ることができる。
また、硬化後の収縮率は配合の調整を適切に図ることにより、好ましくは0〜3%とすることができ、さらに好ましくは0〜1%とすることができる。
【0040】
また、本実施形態の光硬化性組成物は光透過性に優れ、厚さ1μmあたりの光照射時における300nmの光線透過率が50%/μm以上とすることができる。さらに、光硬化性組成物の、厚さ1μmあたりの光照射時における300nmの光線透過率は、60%/μm以上であることがより好ましく、70%/μm以上であることがさらに好ましい。
なお、この「%/μm」は光照射時、波長300nmにおける接着層の厚さ1μmあたりの透過率である。
【0041】
本実施形態における光硬化性組成物は、光硬化性化合物(A)とフッ素含有ポリマー(C)の質量比(A)/(C)は、自身は硬化しない溶剤(D)を含有するとき95/5〜5/95であり、90/10〜10/90であることが好ましく、85/15〜10/90であることがより好ましい。また、質量比[(A)+(C)] /(D)が80/20〜5/95であり、75/25〜5/95であることが好ましく、70/30〜5/95であることがより好ましい。このような範囲に設定することで、硬化後の収縮率を効果的に低下させ、また、光透過性を向上させることができる。
また、溶剤(D)を含有しない場合、本実施形態における光硬化性組成物は、光硬化性化合物(A)とフッ素含有ポリマー(C)の質量比(A)/(C)は、95/5〜25/75であり、92/8〜28/72であることが好ましく、90/10〜30/70であることがより好ましい。このような範囲に設定することで、上述の自身は硬化しない溶剤を含む光硬化性組成物を用いる場合と同様な効果が得られる。
【0042】
具体的に本実施形態の光硬化性組成物に含まれる、光硬化性化合物(A)、光硬化開始剤(B)およびフッ素含有ポリマー(C)は以下に示される。
【0043】
<光硬化性化合物(A)>
光硬化性化合物(A)は、公知の光硬化性化合物の中から適宜選択することができるが、硬化後の硬化収縮にともなう基材の変形の抑制や、フッ素含有ポリマー(C)との相溶性の観点から、好適にはカチオン重合可能な開環重合性化合物が選ばれる。
【0044】
カチオン重合可能な開環重合性化合物は、1分子中に反応性基を1個有していてもよく、複数個有していてもよい。また、光硬化性化合物(A)には、異なる反応性基数の化合物を任意の割合で混合して用いても良い。これらにより、本実施形態の光硬化性組成物を接着剤に使用した際の光照射硬化後の形態で、光透過性良く、積層構造物の反り、歪みを生じず寸法精度良く、かつ強固に基材を接着することができる。
【0045】
光硬化性化合物(A)のうち、カチオン重合可能な開環重合性化合物としては、例えば、シクロヘキセンエポキシド、ジシクロペンタジエンオキサイド、リモネンジオキサイド、4−ビニルシクロヘキセンジオキサイド、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3',4'−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、ジ(3,4−エポキシシクロヘキシル)アジペート、(3,4−エポキシシクロヘキシル)メチルアルコール、(3,4−エポキシ−6−メチルシクロヘキシル)メチル−3,4−エポキシ−6−メチルシクロヘキサンカルボキシレート、エチレン−1,2−ジ(3,4−エポキシシクロヘキサンカルボン酸)エステル、1−tert−ブトキシ−2,3−エポキシプロパン、(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、フェニルグリシジルエーテル、ジシクロヘキシル−3,3´−ジエポキシド、1,7−オクタジエンジエポキシド、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ハロゲン化ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、o−、m−、p−クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、多価アルコールのポリグリシジルエーテル、3,4−エポキシシクロヘキセニルメチル−3´,4´−エポキシシクロヘキセンカルボキシレートといった脂環式エポキシ樹脂あるいは水添ビスフェノールAのグリシジルエーテル等の、エポキシ化合物類が挙げられる。さらに、3−メチル−3−(ブトキシメチル)オキセタン、3−メチル−3−(ペンチロキシメチル)オキセタン、3−メチル−3−(ヘキシロキシメチル)オキセタン、3−メチル−3−(2−エチルヘキシロキシメチル)オキセタン、3−メチル−3−(オクチロキシメチル)オキセタン、3−メチル−3−(デカニロキシメチル)オキセタン、3−メチル−3−(ドデカニロキシメチル)オキセタン、3−メチル−3−(フェノキシメチル)オキセタン、3−エチル−3−(ブトキシメチル)オキセタン、3−エチル−3−(ペンチロキシメチル)オキセタン、3−エチル−3−(ヘキシロキシメチル)オキセタン、3−エチル−3−(2−エチルヘキシロキシメチル)オキセタン、3−エチル−3−(オクチロキシメチル)オキセタン、3−エチル−3−(デカニロキシメチル)オキセタン、3−エチル−3−(ドデカニロキシメチル)オキセタン、3−(シクロヘキシロキシメチル)オキセタン、3−メチル−3−(シクロヘキシロキシメチル)オキセタン、3−エチル−3−(シクロヘキシロキシメチル)オキセタン、3−エチル−3−(フェノキシメチル)オキセタン、3,3−ジメチルオキセタン、3−ヒドロキシメチルオキセタン、3−メチル−3−ヒドロキシメチルオキセタン、3−エチル−3−ヒドロキシメチルオキセタン、3−エチル−3−フェノキシメチルオキセタン、3−n−プロピル−3−ヒドロキシメチルオキセタン、3−イソプロピル−3−ヒドロキシメチルオキセタン、3−n−ブチル−3−ヒドロキシメチルオキセタン、3−イソブチル−3−ヒドロキシメチルオキセタン、3−sec−ブチル−3−ヒドロキシメチルオキセタン、3−tert−ブチル−3−ヒドロキシメチルオキセタン、3−エチル−3−(2−エチルヘキシル)オキセタン、3−エチル−3−(ヘキシルオキシメチル)オキセタン等があり、オキセタニル基を2個以上有する化合物としてビス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、1,2−ビス[(3−エチル−3−オキセタニルメトキシ)]エタン、1,3−ビス[(3−エチル−3−オキセタニルメトキシ)]プロパン、1,3−ビス[(3−エチル−3−オキセタニルメトキシ)]−2,2−ジメチル−プロパン、1,4−ビス(3−エチル−3−オキセタニルメトキシ)ブタン、1,6−ビス(3−エチル−3−オキセタニルメトキシ)ヘキサン、1,4−ビス[(3−メチル−3−オキセタニル)メトキシ]ベンゼン、1,3−ビス[(3−メチル−3−オキセタニル)メトキシ]ベンゼン、1,4−ビス{[(3−メチル−3−オキセタニル)メトキシ]メチル}ベンゼン、1,4−ビス{[(3−メチル−3−オキセタニル)メトキシ]メチル}シクロヘキサン、4,4´−ビス{[(3−メチル−3−オキセタニル)メトキシ]メチル}ビフェニル、4,4´−ビス{[(3−メチル−3−オキセタニル)メトキシ]メチル}ビシクロヘキサン、2,3−ビス[(3−メチル−3−オキセタニル)メトキシ]ビシクロ[2.2.1]ヘプタン、2,5−ビス[(3−メチル−3−オキセタニル)メトキシ]ビシクロ[2.2.1]ヘプタン、2,6−ビス[(3−メチル−3−オキセタニル)メトキシ]ビシクロ[2.2.1]ヘプタン、1,4−ビス[(3−エチル−3−オキセタニル)メトキシ]ベンゼン、1,3−ビス[(3−エチル−3−オキセタニル)メトキシ]ベンゼン、1,4−ビス{[(3−エチル−3−オキセタニル)メトキシ]メチル}ベンゼン、1,4−ビス{[(3−エチル−3−オキセタニル)メトキシ]メチル}シクロヘキサン、4,4´−ビス{[(3−エチル−3−オキセタニル)メトキシ]メチル}ビフェニル、4,4'−ビス{[(3−エチル−3−オキセタニル)メトキシ]メチル}ビシクロヘキサン、2,3−ビス[(3−エチル−3−オキセタニル)メトキシ]ビシクロ[2.2.1]ヘプタン、2,5−ビス[(3−エチル−3−オキセタニル)メトキシ]ビシクロ[2.2.1]ヘプタン、2,6−ビス[(3−エチル−3−オキセタニル)メトキシ]ビシクロ[2.2.1]ヘプタン、3−エチル−3{[(3−エチルオキセタン−3−イル)メトキシ]メチル}オキセタン等のオキセタン化合物類が挙げられる。これらは、単独で用いても、2種以上組み合わせて用いてもよい。
【0046】
<光硬化開始剤(B)>
光硬化開始剤(光重合開始剤)(B)としては、光の照射によってカチオンを生成する光カチオン開始剤が挙げられる。光硬化開始剤(B)の使用量は、光硬化性化合物(A)100質量部に対して0.05質量部以上であることが好ましく、0.1〜10質量部であることがより好ましい。
【0047】
光硬化開始剤(B)のうち、光の照射によってカチオンを生成する光カチオン開始剤としては、光照射により、上述のカチオン重合可能な開環重合性化合物のカチオン重合を開始させる化合物が例示されるが、例えば、オニウム陽イオンと対を成す陰イオンとのオニウム塩のように光反応しルイス酸を放出する化合物が好ましい。
【0048】
オニウム陽イオンの具体例としては、ジフェニルヨードニウム、4−メトキシジフェニルヨードニウム、ビス(4−メチルフェニル)ヨードニウム、ビス(4−tert−ブチルフェニル)ヨードニウム、ビス(ドデシルフェニル)ヨードニウム、トリフェニルスルホニウム、ジフェニル−4−チオフェノキシフェニルスルホニウム、ビス〔4−(ジフェニルスルフォニオ)−フェニル〕スルフィド、ビス〔4−(ジ(4−(2−ヒドロキシエチル)フェニル)スルホニオ)−フェニル〕スルフィド、η5−2,4−(シクロペンタジェニル)〔1,2,3,4,5,6−η−(メチルエチル)ベンゼン〕−鉄(1+)等が挙げられる。また、これらの陽イオンは、単独で用いても、2種以上組み合わせて用いてもよい。
【0049】
一方、陰イオンの具体例としては、テトラフルオロボレート、ヘキサフルオロホスフェート、ヘキサフルオロアンチモネート、ヘキサフルオロアルセネート、ヘキサクロロアンチモネート、テトラ(フルオロフェニル)ボレート、テトラ(ジフルオロフェニル)ボレート、テトラ(トリフルオロフェニル)ボレート、テトラ(テトラフルオロフェニル)ボレート、テトラ(ペンタフルオロフェニル)ボレート、テトラ(ペルフルオロフェニル)ボレート、テトラ(トリフルオロメチルフェニル)ボレート、テトラ(ジ(トリフルオロメチル)フェニル)ボレート等が挙げられる。また、これらの陰イオンは、単独で用いても、2種類以上組み合わせて用いてもよい。さらに、過塩素酸イオン、トリフルオロメタンスルホン酸イオン、トルエンスルホン酸イオン、トリニトロトルエンスルホン酸イオン等などの酸発生剤を併用してもよい。
【0050】
さらに、好ましく用いられる光カチオン開始剤の具体例としては、例えば、イルガキュアー250(チバ・スペシャリティー・ケミカルズ社製)、イルガキュアー290(BASF社製)、イルガキュアー784(チバ・スペシャリティー・ケミカルズ社製)、エサキュアー1064(ランベルティー社製)、WPI−124(和光純薬工業社製)、CYRAURE UVI6990(ユニオンカーバイト日本社製)、CPI−100P(サンアプロ社製)、PHOTO INITIATOR 2074(ソルベイジャパン社製)、アデカオプトマーSP−172(旭電化社製)、アデカオプトマーSP−170(旭電化社製)、アデカオプトマーSP−152(旭電化社製)、アデカオプトマーSP−150(旭電化社製)等が挙げられる。また、これらの光カチオン開始剤は、単独で用いても、2種類以上組み合わせて用いてもよい。
【0051】
光硬化性化合物(A)および光硬化開始剤(B)は、これらを含有する光硬化性を有する混合物として用いることができる。このような混合物は、光硬化開始剤(B)を前記の光硬化性化合物(A)に溶解して得ることができ、光硬化性化合物(A)と光硬化開始剤(B)を共に有機溶剤に溶解して得ることもできる。さらに、必要に応じて第3成分として他の公知の成分、例えば、老化防止剤、レベリング剤、濡れ性改良剤、界面活性剤、可塑剤等の改質剤、紫外線吸収剤、防腐剤、抗菌剤などの安定剤、光増感剤、シランカップリング剤等を加えてもよい。
【0052】
<フッ素含有ポリマー(C)>
フッ素含有ポリマーは、下記一般式(1)で表される構造単位を含有する。本実施形態において、このフッ素含有ポリマーを特定の割合で含む光硬化性組成物を接着剤として利用することにより、反り、歪みの発生を抑制し、高い寸法精度の積層構造物を作製することができる。
【0054】
(式(1)中、R
1〜R
4は、フッ素、フッ素を含有する炭素数1〜10のアルキル基、フッ素を含有する炭素数1〜10のアルコキシ基、またはフッ素を含有する炭素数2〜10のアルコキシアルキル基のいずれかである。R
1〜R
4は互いに同一であっても異なっていてもよい。R
1〜R
4は互いに結合して環構造を形成していてもよく、XはCH
2またはOから選ばれる。)
【0055】
一般式(1)においてR
1〜R
4は、フッ素、フルオロメチル基、ジフルオロメチル基、トリフルオロメチル基、トリフルオロエチル基、ペンタフルオロエチル基、ヘプタフルオロプロピル基、ヘキサフルオロイソプロピル基、ヘプタフルオロイソプロピル基、ヘキサフルオロ−2−メチルイソプロピル基、ペルフルオロ−2−メチルイソプロピル基、n−ペルフルオロブチル基、n−ペルフルオロペンチル基、ペルフルオロシクロペンチル基等のアルキル基の水素の一部または全てがフッ素で置換されたアルキル基等のフッ素を含有する炭素数1〜10のアルキル基;フルオロメトキシ基、ジフルオロメトキシ基、トリフルオロメトキシ基、トリフルオロエトキシ基、ペンタフルオロエトキシ基、ヘプタフルオロプロポキシ基、ヘキサフルオロイソプロポキシ基、ヘプタフルオロイソプロポキシ基、ヘキサフルオロ−2−メチルイソプロポキシ基、ペルフルオロ−2−メチルイソプロポキシ基、n−ペルフルオロブトキシ基、n−ペルフルオロペントキシ基、ペルフルオロシクロペントキシ基等のアルコキシ基の水素の一部または全てがフッ素で置換されたアルコキシ基等のフッ素を含有する炭素数1〜10のアルコキシ基;またはフルオロメトキシメチル基、ジフルオロメトキシメチル基、トリフルオロメトキシメチル基、トリフルオロエトキシメチル基、ペンタフルオロエトキシメチル基、ヘプタフルオロプロポキシメチル基、ヘキサフルオロイソプロポキシメチル基、ヘプタフルオロイソプロポキシメチル基、ヘキサフルオロ−2−メチルイソプロポキシメチル基、ペルフルオロ−2−メチルイソプロポキシメチル基、n−ペルフルオロブトキシメチル基、n−ペルフルオロペントキシメチル基、ペルフルオロシクロペントキシメチル基等のアルコキシアルキル基の水素の一部または全てがフッ素で置換されたアルコキシアルキル基等のフッ素を含有する炭素数2〜10のアルコキシアルキル基が例示される。
また、R
1〜R
4が互いに結合して環構造を形成していてもよく、ペルフルオロシクロアルキル、酸素を介したペルフルオロシクロエーテル等の環を形成してもよい。
【0056】
フッ素含有ポリマーは、一般式(1)で表される構造単位1種類のみを有するものであってもよく、また、R
1〜R
4のうち、いずれかが異なる種類の構造単位を含んでいてもよい。
さらに、本実施形態のフッ素含有ポリマーにおける一般式(1)のXは、−CH
2−または−O−から選ばれ、それぞれを単独に有してもよく、それぞれを含んでいてもよい。また、一般式(1)のXが−CH
2−または−O−を単独に、もしくはそれぞれを含む何れの場合であっても、R
1〜R
4のうち、いずれかが異なる種類の構造単位を含んでいてもよい。
【0057】
一般式(1)で表される構造単位を含有するフッ素含有ポリマーの具体的な例として、ポリ(1,1,2−トリフルオロ−2−トリフルオロメチル−3,5−シクロペンチレンエチレン)、ポリ(1,2−ジフルオロ−1,2−ビス(トリフルオロメチル)−3,5−シクロペンチレンエチレン)、ポリ(1,1,2,2,3,3,3a, 6a−オクタフルオロシクロペンチル−4,6−シクロペンチレンエチレン)、ポリ(1,1,2,2,3,3,4,4,3a, 7a−デカフルオロシクロヘキシル−5,7−シクロペンチレンエチレン)、ポリ(1,1,2−トリフルオロ−2−ペルフルオロブチル−3,5−シクロペンチレンエチレン)、ポリ(1,2−ジフルオロ−1−トリフルオロメチル−2−ペルフルオロブチル−3,5−シクロペンチレンエチレン)、ポリ(1−フルオロ−1−ペルフルオロエチル−2,2−ビス(トリフルオロメチル))−3,5−シクロペンチレンエチレン)、ポリ(1,2−ジフルオロ−1−ペルフルオロプロパニル−2−トリフルオロメチル)−3,5−シクロペンチレンエチレン)、ポリ(1,1,2−トリフルオロ−2−ペルフルオロペンチル−3,5−シクロペンチレンエチレン)、ポリ(1,2−ジフルオロ−1−トリフルオロメチル−2−ペルフルオロブチル−3,5−シクロペンチレンエチレン)、ポリ(1,1,2−トリフルオロ−2−ペルフルオロヘキシル−3,5−シクロペンチレンエチレン)、ポリ(1,2−ジフルオロ−1−トリフルオロメチル−2−ペルフルオロペンチル−3,5−シクロペンチレンエチレン)、ポリ(1,1,3,3,3a, 6a−ヘキサフルオロフラニル−3,5−シクロペンチレンエチレン)、ポリ(1,1,2−トリフルオロ−2−トリフルオロメトキシ−3,5−シクロペンチレンエチレン)、ポリ(1,2−ジフルオロ−1,2−ビス(トリフルオロメトキシ)−3,5−シクロペンチレンエチレン)、ポリ(1,2−ジフルオロ−1−トリフルオロメトキシ−2−ペルフルオロエトキシ−3,5−シクロペンチレンエチレン)、ポリ(1,1,2−トリフルオロ−2−ペルフルオロブトキシ−3,5−シクロペンチレンエチレン)、ポリ(1,2−ジフルオロ−1−トリフルオロメトキシ−2−ペルフルオロブトキシ−3,5−シクロペンチレンエチレン)、ポリ(1−フルオロ−1−ペルフルオロエトキシ−2,2−ビス(トリフルオロメトキシ)−3,5−シクロペンチレンエチレン)、ポリ(1,2−ジフルオロ−1−ペルフルオロプロポキシ−2−トリフルオロメトキシ−3,5−シクロペンチレンエチレン)、ポリ(1,1,2−トリフルオロ−2−ペルフルオロペントキシ−3,5−シクロペンチレンエチレン)、ポリ(1,2−ジフルオロ−1−トリフルオロメトキシ−2−ペルフルオロブトキシ−3,5−シクロペンチレンエチレン)、ポリ(1,1,2−トリフルオロ−2−ペルフルオロヘトキシ−3,5−シクロペンチレンエチレン)、ポリ(1,2−ジフルオロ−1−トリフルオロメトキシ−2−ペルフルオロペンチル−3,5−シクロペンチレンエチレン)、ポリ(1,2−ジフルオロ−1−トリフルオロメトキシ−2−(2´,2´,2´-トリフルオロエトキシ)−3,5−シクロペンチレンエチレン)、ポリ(1,1,2−トリフルオロ−2−(2´, 2´, 3´, 3´ , 4´,4´,4´-ヘプタフルオロブトキシ)−3,5−シクロペンチレンエチレン)、ポリ(1−フルオロ−1−(2´, 2´, 2´, −トリフルオロエトキシ)−2,2−ビス(トリフルオロメトキシ))−3,5−シクロペンチレンエチレン)、ポリ(1,1,2−トリフルオロ−2−(1´,1´,1´-トリフルオロ-iso-プロポキシ)−3,5−シクロペンチレンエチレン)、ポリ(1,2−ジフルオロ−1−トリフルオロメトキシ−2−(2´, 2´, 3´, 3´ , 4´,4´,4´−ヘプタフルオロブトキシ)−3,5−シクロペンチレンエチレン)、ポリ(1,1,2−トリフルオロ−2−(2´, 2´, 3´, 3´ , 4´,4´,5´,5´,6´,6´,6´−ウンデカフルオロヘトキシ)−3,5−シクロペンチレンエチレン)等が挙げられる。
【0058】
さらに、一般式(1)のR
1〜R
4は等しく、Xが−O−であるポリ(4−オキサ−3,5−シクロペンチレンエチレン)の誘導体が挙げられ、これらフッ素系のポリマーからなるフィルムの光の透過性は全光線透過率が94%〜99%である。
【0059】
フッ素含有ポリマー(C)の分子量は、たとえば試料濃度3.0〜9.0mg/mlでゲルパーミュエーションクロマトグラフィー(GPC)によって測定したポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)において、3,000〜100,000であることが好ましく、5,000〜30,000であることがより好ましい。この重量平均分子量(Mw)を上記下限値以上とすることにより、本実施形態の光硬化性組成物を接着剤として利用し、光照射により光硬化性組成物を硬化させ積層構造物を作製した際に接着層のヒビなど生じず、良好な状態の積層構造物を得ることができる。また、重量平均分子量(Mw)を上記上限値以下とすることにより、光硬化性組成物を調製する際の優れたポリマーの溶解性を発現でき、ゲルなど生じず、接着剤として光照射硬化後の基材との界面を均一に保つことができ、膜厚精度が高い積層構造物を得ることができる。
【0060】
また、重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比である分子量分布(Mw/Mn)は、1.3〜5.0とすることが好ましく、1.5〜4.5とすることがより好ましく、1.7〜4.0とすることがさらに好ましい。この分子量分布(Mw/Mn)を上記下限値以上とすることにより、本実施形態の光硬化性組成物を接着剤として利用した積層構造物の接着層の靱性を向上させ、外部応力に起因したクラックや割れの発生を効果的に抑制することができる。一方で、分子量分布(Mw/Mn)を上記上限値以下とすることにより、光照射硬化後の接着層のオリゴマーなどの特に低分子量成分のブリードアウトを抑え、基材と接着層の界面を均一に保て膜厚精度が高い積層構造物を作製することができる。
すなわち、重量平均分子量(Mw)、および分子量分布(Mw/Mn)を上記した範囲とすることにより、基材間を接着する接着剤として、本実施形態の光硬化性組成物を好適に利用することができる。
【0061】
示差走査熱量分析によるフッ素含有ポリマー(C)のガラス転移温度は、50〜250℃とすることが好ましく、80〜200℃とすることがより好ましく、90〜180℃とすることがさらに好ましい。ガラス転移温度が上記範囲であると、光照射硬化の際の発熱や光源からの輻射熱による接着層のタレを防止でき、また使用環境下で形状を維持することができ、本実施形態の光硬化性組成物を、基材間を接着する接着剤として好適に利用することができる。
【0062】
本発明の一般式(1)の部分的にフッ素化されたポリマーは、全フッ素化ポリマーとは異なり、主鎖が炭化水素で側鎖にフッ素原子を有する部分的なフッ素化ポリマーである構造に起因して極性が大きく、これにより、ポリマー合成時の溶剤である通常市販されているエーテル、ケトンなどの極性溶剤に対して良く溶解し、光硬化性化合物などの極性化合物にも優れた溶解性を示しながら、無機材料または有機材料で構成される基材に対して優れた接着性を示す。
【0063】
[フッ素含有ポリマー(C)の製造方法]
フッ素含有ポリマー(C)は、下記一般式(2)で表わされるモノマーを開環メタセシス重合触媒によって連鎖移動重合し、得られる重合体の主鎖のオレフィン部(二重結合部分)を水素添加することによって、合成することができる。
【0065】
(式(2)中、R
1〜R
4およびXは、上述した式(1)と同義である。)
【0066】
なお、本発明の効果を損なわない範囲であれば、一般式(2)で表されるモノマー以外のモノマーを含んでいてもよい。
ここで、本実施形態のフッ素含有ポリマーを合成するに際し、一般式(2)で表されるモノマーは、重合に寄与する化合物全体のうち、90重量%以上用いることが好ましく、95重量%以上用いることがより好ましく、98重量%以上用いることが更に好ましい。
【0067】
本実施形態の一般式(1)で表されるフッ素含有ポリマー(C)は、一般式(2)で表されるモノマーを開環メタセシス重合した後に、主鎖二重結合を水添したフッ素含有ポリマーである。開環メタセシス重合は、Schrock触媒が好ましく用いられ、Grubbs触媒を用いても良く、特に、極性モノマーに対する重合触媒活性を高め、工業的に優れた製造方法を実現することが可能となる。なお、これらの開環メタセシス重合触媒は、単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。また、古典的な有機遷移金属錯体、遷移金属ハロゲン化物または遷移金属酸化物と、助触媒としてのルイス酸との組み合せからなる開環メタセシス重合触媒を用いることもできる。
【0068】
また、開環メタセシス重合を行う時は分子量、およびその分布を制御するために、連鎖移動剤としてオレフィンまたはジエンを使用することができる。オレフィンとしては、例えば、エチレン、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−オクテン等のα−オレフィンまたはこれらのフッ素含有オレフィンを用いることができる。例えば、ビニルトリメチルシラン、アリルトリメチルシラン、アリルトリエチルシラン、アリルトリイソプロピルシラン等のケイ素含有オレフィンまたはこれらのフッ素およびケイ素含有オレフィン等があげられる。また、ジエンとしては、1,4−ペンタジエン、1,5−ヘキサジエン、1,6−ヘプタジエン等の非共役系ジエンまたはこれらのフッ素含有非共役系ジエンがあげられる。これらオレフィン、フッ素含有オレフィンまたはジエンはそれぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用しても良い。
【0069】
また、モノマーの開環メタセシス重合は、無溶剤でも溶剤を使用しても良いが、特に使用する溶剤としては、テトラヒドロフラン、ジエチルエーテル、ジブチルエーテル、ジメトキシエタンもしくはジオキサン等のエーテル類、酢酸エチル、酢酸プロピルもしくは酢酸ブチル等のエステル類、ベンゼン、トルエン、キシレンもしくはエチルベンゼン等の芳香族炭化水素、ペンタン、ヘキサンもしくはヘプタン等の脂肪族炭化水素、シクロペンタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、ジメチルシクロヘキサンもしくはデカリン等の脂肪族環状炭化水素、メチレンジクロライド、ジクロロエタン、ジクロロエチレン、テトラクロロエタン、クロロベンゼンもしくはトリクロロベンゼン等のハロゲン化炭化水素、フルオロベンゼン、ジフルオロベンゼン、ヘキサフルオロベンゼン、トリフルオロメチルベンゼン、メタキシレンヘキサフルオライド等のフッ素含有芳香族炭化水素、ペルフルオロヘキサン等のフッ素含有脂肪族炭化水素、ペルフルオロシクロデカリン等のフッ素含有脂肪族環状炭化水素、またはペルフルオロ−2−ブチルテトラヒドロフラン等のフッ素含有エーテル類が挙げられる。これらは、単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて使用しても良い。
【0070】
モノマーの開環メタセシス重合では、該モノマーの反応性および重合溶剤ヘの溶解性によっても異なるが、モノマー溶液に対するモノマーの濃度は5〜100質量%であることが好ましく、10〜60質量%であることがより好ましい。また、反応温度は、−30〜150℃であることが好ましく、30〜100℃であることがより好ましい。また、反応時間は、10分〜120時間であることが好ましく、30分〜48時間であることがより好ましい。さらに、ブチルアルデヒド等のアルデヒド類、アセトン等のケトン類、メタノール等のアルコール類、水等の失活剤で反応を停止し、重合体の溶液を得ることができる。
【0071】
開環メタセシス重合で得られたポリマーの主鎖の二重結合部を水素添加するための触媒は、水素添加できる触媒であれば、均一系金属錯体触媒でも不均一系の金属担持触媒のいずれであってもよい。均一系金属錯体触媒として、例えば、クロロトリス(トリフェニルホスフィン)ロジウム、ジクロロトリス(トリフェニルホスフィン)オスミウム、ジクロロヒドリドビス(トリフェニルホスフィン)イリジウム、ジクロロトリス(トリフェニルホスフィン)ルテニウム、ジクロロテトラキス(トリフェニルホスフィン)ルテニウム、クロロヒドリドカルボニルトリス(トリフェニルホスフィン)ルテニウム、ジクロロトリス(トリメチルホスフィン)ルテニウム等が挙げられ、また、不均一系金属担持触媒として、例えば、活性炭担持パラジウム、アルミナ担持パラジウム、活性炭担持ロジウム、アルミナ担持ロジウム、活性炭担持ルテニウム、アルミナ担持ルテニウム等が挙げられる。これら水添触媒は、単独で用いてもよく、または二種類以上を組合せて使用することもできる。
【0072】
水素添加に用いられる溶剤としては、ポリマーを溶解し、かつ、溶剤自身が水素添加されないものであれば特に制限はなく、例えば、テトラヒドロフラン、ジエチルエーテル、ジブチルエーテル、ジメトキシエタンなどのエーテル類、酢酸エチル、酢酸プロピルまたは酢酸ブチル等のエステル類、ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼンなどの芳香族炭化水素、ペンタン、ヘキサン、ヘプタンなどの脂肪族炭化水素、シクロペンタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、ジメチルシクロヘキサン、デカリンなどの脂肪族環状炭化水素、メチレンジクロリド、クロロホルム、ジクロロエタン、ジクロロエチレン、テトラクロロエタン、クロロベンゼン、トリクロロベンゼンなどのハロゲン化炭化水素、フルオロベンゼン、ジフルオロベンゼン、ヘキサフルオロベンゼン、トリフルオロメチルベンゼン、メタキシレンヘキサフルオライド等のフッ素含有芳香族炭化水素、ペルフルオロヘキサン等のフッ素含有脂肪族炭化水素、ペルフルオロシクロデカリン等のフッ素含有脂肪族環状炭化水素、ペルフルオロ−2−ブチルテトラヒドロフラン等のフッ素含有エーテル類等が挙げられる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を組合せて使用してもよい。
【0073】
上記の主鎖のオレフィン部の水素添加反応は、水素圧力が常圧〜10MPaであることが好ましく、0.5〜8MPaであることがより好ましく、2〜5MPaであることがとくに好ましい。また、反応温度は、0〜200℃の温度であることが好ましく、室温〜150℃であることがより好ましく、50〜100℃であることがとくに好ましい。水素添加反応の実施様式は、特に制限はないが、例えば、触媒を溶剤中に分散または溶解して行う方法、触媒をカラムなどに充填し、固定相としてポリマー溶液を流通させて行う方法などが挙げられる。
【0074】
さらに、主鎖のオレフィン部の水素添加処理は、水素添加処理前のポリマーの重合溶液を貧溶剤に析出させポリマーを単離した後に、再度溶剤に溶解して水素添加処理を行なっても、重合溶液からポリマーを単離することなく、上記の水添触媒で水素添加処理を行なってもよく、特に制限はない。
【0075】
また、ポリマーのオレフィン部の水素添加率は50%以上であることが好ましく、70〜100%であることがより好ましく、90〜100%であることがとくに好ましい。水素添加率を上記下限値以上とすることにより、オレフィン部において、光吸収に起因した劣化や成形時の加熱に起因した酸化が生じることを抑制し、基材との接着性を良好なものとすることができる。
【0076】
水添後、特に、活性炭担持パラジウム、アルミナ担持パラジウムなどの固体触媒を好ましく用いる場合のポリマー溶液からポリマーを取得する方法は、特に制限はないが、例えば、ろ過、遠心分離、デカンテーション等の方法でポリマーを取得し、撹拌下の貧溶剤に反応溶液を排出する方法、反応溶液中にスチームを吹き込むスチームストリッピング等の方法によってポリマーを析出させる方法、または、反応溶液から溶剤を加熱等によって蒸発除去する方法等が挙げられる。
【0077】
また、不均一系金属担持触媒を利用して水添反応を実施した場合は、合成液をろ過して金属担持触媒をろ別した後に、上記した方法でポリマーを取得する事もできる。なお、粒径の大きな触媒成分を予めデカンテーション、延伸分離などの方法でポリマー溶液中に沈降させ、上澄みを採取し、触媒成分を粗取りした溶液をろ過し、上記した方法でポリマーを取得しても良い。特に、触媒成分を精密ろ過することが、好適であり、ろ過フィルターの目開きは、好ましくは、10μm〜0.05μm、特に好ましくは、10μm〜0.10μm、さらに好ましくは、5μm〜0.10μmである。
【0078】
本実施形態において水添後のポリマー溶液からフッ素含有ポリマー(C)を回収した後に再度溶剤に溶解して、光硬化性化合物(A)と混合して光硬化性組成物としても、直接、光硬化性化合物(A)に溶解して光硬化性組成物としても、フッ素含有ポリマー(C)を回収することなく水添後のポリマー溶液をそのまま光硬化性化合物(A)と混合して光硬化性組成物としても良い。水添後のポリマーの溶液からフッ素含有ポリマー(C)を回収する方法は、特に制限はないが、例えば、撹拌下の貧溶剤に反応溶液を排出する方法、反応溶液中にスチームを吹き込むスチームストリッピングの方法等の方法によりポリマーを析出させ、濾過、遠心分離、デカンテーション等の方法でポリマーを回収する方法、または反応溶液から溶剤を加熱等により蒸発除去する方法等が挙げられる。また、本発明の目的を損なわない範囲で回収したポリマーに紫外線吸収剤、酸化防止剤、難燃剤、帯電防止剤、レべリング剤等の公知の各種添加剤を配合することができる。
【0079】
接着剤のワニスを調製する為に上記のフッ素含有ポリマー(C)を溶剤に溶解することもできる。例えば、メタキシレンヘキサフロライド、ベンゾトリフロライド、フルオロベンゼン、ジフルオロベンゼン、ヘキサフルオロベンゼン、トリフルオロメチルベンゼン、ビス(トリフルオロメチル)ベンゼン、メタキシレンヘキサフルオリド等のフッ素含有芳香族炭化水素、ペルフルオロヘキサン、ペルフルオロオクタン等のフッ素含有脂肪族炭化水素、ペルフルオロシクロデカリン等のフッ素含有脂肪族環状炭化水素、ペルフルオロ−2−ブチルテトラヒドロフラン等のフッ素含有エーテル類、クロロホルム、クロルベンゼン、トリクロルベンゼンなどのハロゲン化炭化水素、テトラヒドロフラン、ジブチルエーテル、1,2−ジメトキシエタン、ジオキサン、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等のエーテル類、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル等のエステル類、または、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、2−メトキシエタノール、3−メトキシプロパノール等のアルコール類などが挙げられる。これらのうちから溶解性、製膜性を考慮して選択でき、フッ素含有ポリマー(C)を溶解する有機溶剤と同一でも異なってもよく、単独でも2種類以上の溶剤を用いてもよい。
【0080】
特に、フッ素含有ポリマー(C)溶液に、光硬化性化合物(A)および光硬化開始剤(B)を添加して本発明の光硬化性組成物を調製する際は、製膜性の観点から大気圧下で70℃以上の沸点をもつ溶剤が好ましい。
このような沸点の溶剤を用いることで、蒸発速度を適切な速度に制御することができ、接着層の膜厚を所望の範囲に制御しやすくなる。またこれにより、光照射硬化後の接着強度を高めることができる。
【0081】
フッ素含有ポリマー(C)を溶解させる濃度は、1.0〜99.0質量%であることが好ましく、5.0〜90.0質量%であることがより好ましく、10.0〜80.0質量%であることがとくに好ましい。濃度は、ポリマーの溶解性、ろ過プロセスへの適応性、光硬化性組成物を調製するプロセス適応性を考慮して選択してもよい。
【0082】
<自身は光硬化しない溶剤(D)>
本実施形態の光硬化性組成物には、必要に応じて、自身は光硬化しない溶剤(D)が含まれる。
この溶剤としては、フッ素含有ポリマー(C)を溶解することのできる溶媒を選択することが好ましい。また、フッ素含有ポリマー(C)を製造する際の反応において用いられた溶剤をそのまま用いても、粘度調整のために濃縮して用いても良い。
また、溶剤の具体例としては、前記、接着剤のワニスを調製するために用いられる溶剤と等しい種類の溶剤が用いられ、同一でも異なってもよく、単独でも2種類以上の溶剤を用いてもよい。
【0083】
[光硬化性組成物の調製方法]
本実施形態において、光硬化性化合物(A)、光硬化開始剤(B)、フッ素含有ポリマー(C)を混合する方法としては、上述のフッ素含有ポリマー(C)溶液に光硬化性化合物(A)および光硬化開始剤(B)を添加して混合しても、フッ素含有ポリマー(C)を光硬化性化合物(A)に直接溶解して混合してもよい。さらに、本発明の目的を損なわない範囲で、光硬化性組成物に紫外線吸収剤、酸化防止剤、難燃剤、帯電防止剤、レべリング剤等の公知の各種添加剤を配合することができる。
【0084】
光硬化性化合物(A)、光硬化開始剤(B)、フッ素含有ポリマー(C)を混合した光硬化性組成物の樹脂成分濃度は、0.5〜99.5質量%であることが好ましく、1〜99質量%であることがより好ましく、2〜98質量%であることがとくに好ましい。樹脂成分濃度は、溶液ろ過プロセスへの適応性、塗工性、接着層の膜厚を考慮して適宜調整することができる。
【0085】
調製した光硬化性組成物はフィルターを通過させてろ過することができる。その目的として光硬化性組成物から異物等を低減する必要がある場合は、特に好ましい。ろ過により、接着剤の基材間での接触不良を防止し、安定的に積層構造物を得ることができる。
【0086】
ここで用いられるろ過フィルターの目開きは、好ましくは、10μm〜0.05μm、特に好ましくは、10μm〜0.1μm、さらに好ましくは、5μm〜0.1μmである。ろ過のプロセスは、孔径の大きなフィルターから小さなフィルターへポリマー溶液を送る多段プロセスでも、直接、孔径の小さなフィルターへ光硬化性組成物を送る単一プロセスでも良い。フィルターの材質は、テフロン(登録商標)、ポリプロピレン(PP)、ポリエーテルスルホン(PES)、セルロースなどの有機材料からなるものでも、ガラス繊維、金属などの無機材料からなるものでも良く、光硬化性組成物の特性、プロセス適応性から好適に選ぶことができる。
【0087】
また、光硬化性組成物をフィルターへ送る方法としては、圧力差を利用する方法でも、スクリューなどを介して機械的な駆動によって光硬化性組成物をフィルターへ送液する方法でも良い。さらに、ろ過の温度は、フィルター性能、光硬化性化合物の安定性、光硬化性組成物の粘度、ポリマーの溶解性を考慮した範囲で選ばれ、室温〜200℃であることが好ましく、室温〜150℃であることがより好ましく、室温〜100℃であることが特に好ましい。
【0088】
[積層構造物の製造方法]
続いて、本実施形態に係る積層構造物の製造方法について説明する。
本実施形態の積層構造物の製造方法は、無機材料または有機材料で構成される第1の基材と、無機材料または有機材料で構成される第2の基材と、前記第1の基材と前記第2の基材とを接着する接着層とを備える積層構造物の製造方法であって、積層構造物に備えられる前記第1の基材と、前記第2の基材のうち、少なくともいずれか一方は、光硬化性化合物の光照射硬化に必要なだけの光透過性を有する基材であることを特徴とする。
また、当該積層構造物の製造方法は、第1の基材と前記第2の基材のうち少なくともいずれか一方の表面に、上記の光硬化性組成物を塗布する塗布工程と、前記光硬化性組成物を塗布した表面を介して、前記第1の基材と前記第2の基材とを貼り合せる積層工程と、前記光透過性を有する基材を介して光を照射する光照射工程と、を含むことを特徴とする。
【0089】
本実施形態の積層構造物の製造方法に用いることのできる第1の基材11と第2の基材12は、前述の基材のなかから適宜選択すればよい。ただし、第1の基材11と、第2の基材12のうち、少なくともいずれか一方は、光透過性を有する基材である。
【0090】
(塗布工程)
本実施形態の積層構造物の製造方法における塗布工程の方法としては、特に制限はないが、例えば、前述の光硬化性組成物を、テーブルコート、スピンコート、ディップコート、ダイコート、スプレーコート、バーコート、ロールコート、カーテンフローコートなどにより基材に塗布する方法が挙げられる。
【0091】
さらに、基材に塗布した光硬化性組成物は、自身は光硬化しない有機溶剤を含む場合は、塗工した基材をヒートプレート、加熱炉や熱風などの方法で加熱しても良く、これらを組み合わせたプロセスを利用して加熱し、有機溶剤を除去して用いられる。この加熱温度は、基材によるが、通常は、室温〜250℃であることが好ましく、40〜220℃であることがより好ましく、特に好ましくは、60〜200℃である。また、これらの温度は、光硬化性化合物の安定性、光硬化性組成物の特性、塗布層(接着層)の厚み、基材の耐熱性を考慮して選ぶことができる。さらに、加熱時間は通常、1秒〜2時間であり、好ましくは30秒〜1時間であり、さらに好ましくは30秒〜10分である。温度、時間の設定はそれぞれを2種類以上の多段の条件で乾燥させても良く、塗膜を乾燥する時間は、溶剤の沸点、接着層の厚み、プロセス要件を考慮した条件から選択する事ができる。これらによって、基材上に塗布層が形成される。
【0092】
塗布層の厚みは、好ましくは0.1μm〜50μm、より好ましくは0.5μm〜30μm、さらに好ましくは1μm〜10μmであり、基材間を強固に接着するために必要な厚みであれば、プロセス適応性を考慮して好適に選ばれる。また、接着機能の他に、例えば、光学利用の屈折率調整、環境安定性を付与するガスバリヤなどの機能を付与する目的に応じた厚みを設定しても良い。
【0093】
(積層工程)
本実施形態の積層構造物の製造方法における積層工程は、光硬化性組成物を塗布した表面を介して、第1の基材11と第2の基材12とを貼り合せることで行われる。その方法としては、例えばローラーを押し当てる方法、両面を上下から挟み圧力を印加して押し付ける方法、塗布層を形成した基材を送りながら別の基材を載せて送りロールの周速度差を利用して押し付ける方法などが挙げられ、積層構造物の形態、プロセス適応性を考慮して好適に選ばれる。また、2種類以上の方法を併用して用いてもよく、加熱を併用してもよい。
【0094】
(光照射工程)
本実施形態の積層構造物の製造方法における光照射工程は、光透過性を有する基材を介して光を照射することで行われる。
このとき、無機材料または/および有機材料から構成される基材間に存在する光硬化性組成物を、必要に応じて加圧してもよい。この光照射工程における光源としては、波長400nm以下の光線、例えば、低圧水銀灯、中圧水銀灯、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、発光ダイオード、ケミカルランプ、ブラックライトランプ、マイクロウェーブ励起水銀灯およびメタルハライドランプ、i線、g線、KrFエキシマレーザ光、ArFエキシマレーザ光を用いることができる。
【0095】
光硬化性組成物への照射強度は、目的とする製品毎に制御されるものであって特に限定されるものではない。例えば、光硬化開始剤の活性化に有効な光波長領域(光硬化開始剤によって異なるが、通常200〜420nmの光が用いられる)の光照射強度が0.1〜100mW/cm
2であることが好ましい。組成物への照射強度を0.1mW/cm
2以上とすることで硬化時間を短縮することができ、100mW/cm
2以下とすることで光硬化性組成物及びその硬化物、また、基材を劣化させることなく、硬化を行うことができる。
【0096】
この光の照射時間は、目的とする製品毎に制御されるものであって特に限定されるものではないが、光波長領域での光照射強度と光照射時間の積として表される、光硬化性組成物に対する積算光量が通常20〜1000mJ/cm
2に設定することが出来る。更に好ましくは50〜1000mJ/cm
2であり、特に好ましくは100〜1000mJ/cm
2である。
光硬化性組成物に対する積算光量を上記範囲に設定することで、得られる硬化物の特性を低下や変色を招くことなく、安定的に硬化を行うことができる。
また、光照射時に加熱しながら光照射しても良く、光照射後に加熱しても良い。
光照射時または光照射後の加熱温度は、通常、室温以上であり、好ましくは30〜100℃が好ましく、より好ましくは50〜100℃である。
【0097】
なお、本発明は前述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良等は本発明に含まれるものである。
【実施例】
【0098】
以下、実施例において、本発明を説明するが、本発明はこれらの例によって何ら限定されるものではない。
【0099】
まず、本実施例で得られたポリマーの物性、光硬化性組成物の性能等については以下の項目に基づき分析・評価を行った。
【0100】
[重量平均分子量(Mw)、分子量分布(Mw/Mn)]
下記の条件下でゲルパーミュエーションクロマトグラフィー(GPC)を使用して、テトラヒドロフラン(THF)に溶解したポリマーの重量平均分子量(Mw)および数平均分子量(Mn)を以下の条件で、ポリスチレンスタンダードによって分子量を較正して測定した。検出器:日本分光製RI−2031および875−UV、直列連結カラム:Shodex K−806M,804,803,802.5、カラム温度:40℃、流量:1.0ml/分、試料濃度:3.0mg/ml
【0101】
[ポリマーの水素添加率]
水素添加反応を行った開環メタセシス重合体の粉末を重水素化クロロホルム、または重水素化テトラヒドロフランに溶解し、日本電子社製核磁気共鳴装置を用いて270MHz−
1H−NMRスペクトルを測定し、δ=4.5〜7.0ppmの主鎖の二重結合炭素に結合する水素に由来するシグナルの積分値より水素添加率を算出した。
【0102】
[ガラス転移温度]
島津製作所社製DSC−50を用い、測定試料を窒素雰囲下で10℃/分の昇温速度で加熱し測定した。
【0103】
[光硬化性組成物の光線透過率の測定]
光硬化性組成物の光線透過率は、島津製作所社製分光光度計UV3100Sを使用して、波長300nmの透過率を測定し、液膜高さの計測値から1μmあたりの透過率を評価した。
【0104】
[収縮率の評価方法]
基材の貼り合わせる前の面積をA1とし、UV照射硬化して貼り合わせた後の基材の法線方向から見た面積をA2(カールなど変形している場合であっても、法線方向から見た二次元の面積を計測して算出する)として、以下の数式により収縮率を算出した。
収縮率(%)=(A1−A2)/A1×100
【0105】
[フィルムの密着性試験]
JIS K 5600 5−6「クロスカット法」に準拠して、貼り合わせたフィルムの片面を2mm×2mmのサイズで100マスを碁盤目状にカットしたフィルムに、ニチバン社製セロハンテープを貼り付け剥離し、残膜数をカウントして評価した。
【0106】
[製造例1] ポリマー1の合成
5,5,6−トリフルオロ−6−(トリフルオロメチル)ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン(100g)と1−ヘキセン(0.268g)のテトラヒドロフラン溶液に、Mo(N−2,6−Pr
i2C
6H
3)(CHCMe
2Ph)(OBu
t)
2(50mg)のテトラヒドロフラン溶液を添加し、70℃にて開環メタセシス重合を行った。得られたポリマーのオレフィン部を、パラジウムアルミナ(5g)によって120℃で水素添加反応を行い、ポリ(1,1,2−トリフルオロ−2−トリフルオロメチル−3,5−シクロペンチレンエチレン)のテトラヒドロフラン溶液を得た。
溶液をメタノールに加え、白色のポリマーをろ別、乾燥し99gのフッ素含有ポリマー(C)のポリマー1を得た。水素添加率は100%、重量平均分子量(Mw)は83000、分子量分布(Mw/Mn)は1.73、ガラス転移温度は109℃であった。
【0107】
[実施例1]
製造例1で合成したポリマー1を30質量%濃度で溶解したメチルイソブチルケトン溶液100gに、光硬化性化合物(A)として3−エチル−3{[(3−エチルオキセタン−3−イル)メトキシ]メチル}オキセタンと1,7−オクタジエンジエポキシドの質量比9/1の混合物を7.5g[(A)/(C)=20/80]、および光硬化開始剤(B)として(アデカオプトマーSP−172、旭電化社製)を0.4g加えた溶液を調製し、孔径1μmのフィルターで加圧ろ過し、次いで0.1μmのフィルターでろ過して光硬化性組成物1を調製した。液膜の高さ30μmで作製した光硬化性組成物1の300nmの光線透過率は92.7%/μmであった。
次いで、基材として厚み100μmのPETフィルム(ルミラー、東レ社製)を10cm×10cmのサイズに切り出し、バーコーターを用いて光硬化性組成物1をフィルム全面にコートした。その後、PETフィルムを50℃で1分間加熱し、放冷した後、10cm×10cmのサイズで切り出した厚み75μmのアクリルフィルム(アクリプレン、三菱レイヨン社製)を、光硬化性組成物1のコート面に載せクライムプロダクツ社製ラミネーターSE650UVを使用して、0.3MPaの圧力を印加しながら基材全面にローラーを走査して均一に圧着し、PETフィルムの背面から高輝度発光ダイオード(365nm)のUV光を200mJ/cm
2の積算光量で照射し光硬化性組成物1を硬化させて、PETフィルムとアクリルフィルムを接着した積層構造物を作製した。接着層の厚みはNIKON社製デジマイクロMH−15M+TC−101用いて、積層構造物の任意の10箇所の厚みを測定して平均し、その平均値から基材の厚みの合計値を差し引いた値を積層構造物の接着層として求めた。その厚みは3.1μmであった。クロスカット法で試験した密着性は100/100で良好な密着性を示し、収縮率は0.2%であった。
【0108】
[実施例2]
光硬化性化合物(A)として3−エチル−3{[(3−エチルオキセタン−3−イル)メトキシ]メチル}オキセタンと1,7−オクタジエンジエポキシドの質量比9/1の混合物に、無溶剤でポリマー1を溶解した光硬化性組成物2[(A)/(C)=90/10]を調製した。液膜の高さ22.1μmで作製した光硬化性組成物2の300nmの光線透過率は78.4%/μmであった。
次いで、接着剤として光硬化性組成物2を使用したこと以外は、実施例1と同様の方法でPETフィルムとアクリルフィルムを接着した積層構造物を作製した。実施例1と同様に測定した接着層の厚みは1.7μmであり、クロスカット法で試験した密着性は100/100で良好な密着性を示し、収縮率は0.5%であった。
【0109】
[実施例3]
フッ素含有モノマーの種類を5,6−ジフルオロ−5−ペンタフルオロエチル−6−トリフルオロメチルビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エンに変更したこと以外は、製造例1と同様の方法で98gのポリマー2を得た。次いで、ポリマー2を30質量%濃度でメチルエチルケトンに溶解し、光硬化性化合物とポリマー2の比率を(A)/(C)=10/90に変更したこと以外は実施例1と同様の方法で光硬化性組成物3を調製した。液膜の高さ40.2μmで作製した光硬化性組成物3の300nmの光線透過率は93.6%/μmであった。
次いで、光硬化性組成物3を接着剤に用いたこと以外は実施例1と同様の方法でPETフィルムとアクリルフィルムを接着した積層構造物を作製した。接着層の厚みは4.1μmであり、クロスカット法で試験した密着性は100/100で良好な密着性を示し、収縮率は0.4%であった。
【0110】
[実施例4]
フッ素含有モノマーの種類を5,6−ジフルオロ−5,6−ビストリフルオロメチル−7−オキサ−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エンに変更したこと以外は、製造例1と同様の方法で99gのポリマー3を得た。次いで、ポリマー3を30質量%濃度でメチルエチルケトンに溶解し、光硬化性化合物とポリマー3の比率を(A)/(C)=40/60に変更したこと以外は実施例1と同様の方法で光硬化性組成物4を調製した。液膜の高さ19.8μmで作製した光硬化性組成物4の300nmの光線透過率は90.2%/μmであった。
次いで、光硬化性組成物4を接着剤に用いたこと以外は実施例1と同様の方法でPETフィルムとアクリルフィルムを接着した積層構造物を作製した。接着層の厚みは0.8μmであり、クロスカット法で試験した密着性は100/100で良好な密着性を示し、収縮率は0.3%であった。
【0111】
[実施例5]
光硬化性化合物(A)の種類を3−エチル−3−(ヘキシルオキシメチル)オキセタンと1,7−オクタジエンジエポキシドの質量比9/1の混合物に、光硬化開始剤(B)をCPI−100P(サンアプロ社製)に変更したこと以外は実施例1と同様に光硬化性組成物5[(A)/(C)=20/80]を調製した。液膜の高さ22.4μmで作製した光硬化性組成物5の300nmの光線透過率は92.6%/μmであった。
次いで、光硬化性組成物5を接着剤に用いたこと以外は実施例1と同様の方法でPETフィルムとアクリルフィルムを接着した積層構造物を作製した。接着層の厚みは2.5μmであり、クロスカット法で試験した密着性は100/100で良好な密着性を示し、収縮率は0.4%であった。
【0112】
[実施例6]
光硬化性化合物(A)の種類を1,4−ビス[{(3−エチル−3−オキセタニル)メトキシ}メチル]ベンゼンと1,7−オクタジエンジエポキシドの質量比9/1の混合物に、光硬化開始剤(B)をイルガキュアー 290(BASF社製)に変更したこと以外は実施例1と同様に光硬化性組成物6[(A)/(C)=20/80]を調製した。液膜の高さ30.1μmで作製した光硬化性組成物6の300nmの光線透過率は92.4%/μmであった。
次いで、光硬化性組成物6を接着剤に用いたこと以外は実施例1と同様の方法でPETフィルムとアクリルフィルムを接着した積層構造物を作製した。接着層の厚みは3.4μmであり、クロスカット法で試験した密着性は100/100で良好な密着性を示し、収縮率は0.2%であった。
【0113】
[実施例7]
光硬化性化合物(A)の種類を3−エチル−3{[(3−エチルオキセタン−3−イル)メトキシ]メチル}オキセタンと1−tert−ブトキシ−2,3−エポキシプロパンの質量比9/1の混合物に変更したこと以外は実施例1と同様に光硬化性組成物7[(A)/(C)=20/80]を調製した。液膜の高さ25.9μmで作製した光硬化性組成物7の300nmの光線透過率は92.6%/μmであった。
次いで、光硬化性組成物7を接着剤に用いたこと以外は実施例1と同様の方法でPETフィルムとアクリルフィルムを接着した積層構造物を作製した。接着層の厚みは2.7μmであり、クロスカット法で試験した密着性は100/100で良好な密着性を示し、収縮率は0.3%であった。
【0114】
[実施例8]
基材として製造例1で合成したポリマー1から形成した厚み30μmのフィルムを使用し、接着剤として実施例1の光硬化性組成物の溶剤をシクロヘキサノンに変更し光硬化性組成物8とした以外は、実施例1と同様の方法でPETフィルムとポリマー1のフィルムを接着した積層構造物を作製した。接着層の厚みは3.5μmであり、クロスカット法で試験した密着性は100/100で良好な密着性を示し、収縮率は0.2%であった。
【0115】
[実施例9]
基材として厚み3mm、サイズが10cm×10cmの石英ガラスに、実施例1で調製した光硬化性組成物1を全面にコートした。その後、石英ガラスを90℃で1分間加熱し、放冷した後、10cm×10cmのサイズで切り出した厚み75μmのアクリルフィルム(アクリプレン、三菱レイヨン社製)を、光硬化性組成物1のコート面に載せて実施例1と同様の方法で石英ガラスの背面からUV照射し、石英ガラスとアクリルフィルムを接着した積層構造物を作製した。接着層の厚みは1.5μmであり、クロスカット法で試験した密着性は100/100で良好な密着性を示し、収縮率は0%であった。
【0116】
[実施例10]
基材として厚み800μm、サイズが10cm×10cmのアルミニウムシートに実施例1で調製した光硬化性組成物1を全面にコートした。その後、アルミニウムシートを90℃で1分間加熱し、放冷した後、10cm×10cmのサイズで切り出した厚み100μmのPETフィルム(ルミラー、東レ社製)を、光硬化性組成物1のコート面に載せて実施例1と同様の方法でPETフィルム背面からUV照射し、アルミニウムシートとPETフィルムを接着した積層構造物を作製した。接着層の厚みは2.4μmであり、クロスカット法で試験した密着性は100/100で良好な密着性を示し、収縮率は0%であった。
【0117】
[実施例11]
サイズが10cm×10cmでライン幅200nm、スペース幅100nm、ピッチ300nm、高さ200nmのライン&スペース形状を賦型したニッケルモールドのパターン面に、製造例1で合成したポリマー1を35質量%濃度で溶解したメチルイソブチルケトン溶液を載せバーコーターで全面にコートし、ニッケルモールドを120℃で2時間加熱した。
次いで、基材として10cm×10cmのサイズに切り出した厚み100μmのPETフィルム(ルミラー、東レ社製)にバーコーターを用いて実施例1で調製した光硬化性組成物1をPETフィルム全面にコートした。その後、PETフィルムを90℃で1分間加熱し、放冷した後、加熱後のニッケルモールドに接して積層された凹凸構造を賦型したポリマー1のフィルムの裏面に、PETフィルムの光硬化性組成物1のコート面が接触するように載せて、実施例1と同様の方法でPETフィルム背面からUV照射し、ニッケルモールドとポリマー1のフィルムを剥離することで、ライン幅100nm、スペース幅200nm、ピッチ300nm、高さ200nmのライン&スペースパターン形状を賦型した積層構造物を作製した。接着層の厚みは3.3μmであり、クロスカット法で試験した密着性は100/100で良好な密着性を示し、収縮率は0.2%であった。
【0118】
[実施例12]
光硬化性化合物(A)と製造例1で合成したポリマー1の組成比を(A)/(C)=40/60に変更した以外は、実施例1と同様の方法で光硬化性組成物9を調製した。次に、サイズが20cm×20cmの4種類のマイクロレンズアレーパターンを有する石英モールドにおいて、パターンサイズが、10μm、15μm、20μm、25μmで、かつ、高さ10μmの石英モールドに光硬化性組成物9を塗布して、バーコーターで全面にコートし、120℃で加熱し、冷却後、積算光量で200mJ/cm
2のUV光を照射した。これにより、石英モールド上に光硬化性組成物9を硬化させた、凹凸構造を賦型したフィルムから構成される層を形成させた。
次いで、実施例11と同様の方法で光硬化性組成物1を接着剤に使用して、剥離前の凹凸構造を賦型したフィルムの裏面とPETフィルムを接着した後、石英モールドを剥離してサイズが20cm×20cmの4種類のマイクロレンズアレーパターンを有する反転パターンを賦型したフィルムが積層された構造物を作製した。接着層の厚みは4.6μmであり、クロスカット法で試験した密着性は100/100で良好な密着性を示し、収縮率は0.2%であった。
【0119】
[実施例13]
実施例12に記載した石英モールドと等しいサイズ、形状のモールドを2枚用いて、それぞれ、実施例12と同様に、光硬化性組成物9の凹凸構造を賦型したフィルムから構成される層を形成させた石英モールドを2枚作製した。(これらは何れも剥離前の状態であり、接着剤をコートする石英モールド上に硬化性組成物9の凹凸構造を形成させた基材をIとし、接着層に被せる基材をIIとする。)
次いで、基材Iに実施例2で調製した光硬化性組成物2をバーコーターで全面にコートした。その後、基材Iの接着層に基材IIを被せ実施例1と同様な方法で密着させ、基材Iの石英モールドの背面から積算光量で200mJ/cm
2のUV光を照射して基材Iと基材IIを接着した。基材Iと基材IIそれぞれの石英モールドを剥離して、両面にマイクロレンズアレーパターンを有する反転パターンを賦型した積層構造物を作製した。接着層の厚みは1.1μmであり、クロスカット法で試験した密着性は100/100で良好な密着性を示し、収縮率は0.1%であった。
【0120】
[実施例14]
製造例1で合成したポリマー1から作製した厚み50μm、サイズ10cm×10cmのフィルムを実施例11で使用したニッケルモールドのパターン面に載せて130℃に加熱し、10MPaの圧力で加熱溶融圧着して、室温まで冷却した。
これにより、ニッケルモールド上に、ライン&スペース形状を賦型したフィルムから構成される層を形成させた。
次いで、実施例11と同様の方法で光硬化性組成物1を接着剤に使用して、剥離前の凹凸構造を賦型したフィルムの裏面とPETフィルムを接着した後、石英モールドを剥離してライン幅100nm、ピッチ300nm、高さ200nmのライン&スペースパターン形状を賦型した積層構造物を作製した。接着層の厚みは3.8μmであり、クロスカット法で試験した密着性は100/100で良好な密着性を示し、収縮率は0.4%であった。
【0121】
[実施例15]耐環境安定性の試験
実施例1、3、5で作製した積層構造物を恒温恒湿オーブンに入れて、60℃、95%(湿度)の条件に2000時間暴露した後の外観検査、密着性評価した。3種何れの積層構造物も、濁り、変形、接着層の割れなど無く、クロスカット法による密着性も100/100で良好な密着性を維持していた。
【0122】
[比較例1]
光硬化開始剤(B)として光カチオン開始剤(アデカオプトマーSP−172、旭電化社製)を0.4g及び光硬化性化合物(A)として1,4−ビス[{(3−エチル−3−オキセタニル)メトキシ}メチル]ベンゼンと1,7−オクタジエンジエポキシドの質量比9/1の混合物を調製し、光硬化性組成物10[(A)/(C)=100/0]とした。液膜の高さ23.5μmで作製した光硬化性組成物10の300nmの光線透過率は42.1%/μmであり、UV照射して硬化させた光硬化性組成物10は脆く割れ、フィルムとしての形状を保てなかった。
【0123】
[比較例2]
比較例1の光硬化性組成物10を使用して、実施例2と同様な方法でPETフィルムとアクリルフィルムを接着した積層構造物は、接着層の厚み3.8μmであり、接着層の一部にヒビが見られ、クロスカット法で試験した密着性は80/100で一部が剥離し、収縮率は4.2%であった。
【0124】
[比較例3]
2−メチル−2−プロペン酸メチル5gに光ラジカル硬化開始剤(エサキュアー KTO46、ランベルティー社製)を50質量%濃度で溶解した2−メトキシエタノール溶液0.3gを添加した光硬化性組成物11を調製した。液膜の高さ4.3μmで作製した光硬化性組成物11の300nmの光線透過率は20.3%/μmであり、次いで、実施例2と同様の方法でPETフィルムとアクリルフィルムを接着した積層構造物を作製した。接着層の厚みは4.0μmであり、クロスカット法で試験した密着性は77/100で一部が剥離した。積層構造物は、アクリルフィルム側に反りがあり、収縮率は13.5%であった。