(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6386371
(24)【登録日】2018年8月17日
(45)【発行日】2018年9月5日
(54)【発明の名称】耐油吸水性組成物、耐油吸水性包装材
(51)【国際特許分類】
C08L 33/00 20060101AFI20180827BHJP
C08L 9/06 20060101ALI20180827BHJP
C08L 1/00 20060101ALI20180827BHJP
D21H 19/20 20060101ALI20180827BHJP
D21H 19/34 20060101ALI20180827BHJP
D21H 21/14 20060101ALI20180827BHJP
D06M 15/07 20060101ALI20180827BHJP
D06M 15/233 20060101ALI20180827BHJP
D06M 15/263 20060101ALI20180827BHJP
D06M 15/693 20060101ALI20180827BHJP
B65D 81/26 20060101ALI20180827BHJP
B65D 65/40 20060101ALI20180827BHJP
B32B 27/30 20060101ALI20180827BHJP
B32B 23/04 20060101ALI20180827BHJP
【FI】
C08L33/00
C08L9/06
C08L1/00
D21H19/20 A
D21H19/34
D21H21/14 Z
D06M15/07
D06M15/233
D06M15/263
D06M15/693
B65D81/26 J
B65D65/40 D
B32B27/30 A
B32B23/04
【請求項の数】7
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2014-264556(P2014-264556)
(22)【出願日】2014年12月26日
(65)【公開番号】特開2016-124898(P2016-124898A)
(43)【公開日】2016年7月11日
【審査請求日】2017年9月29日
(73)【特許権者】
【識別番号】000162113
【氏名又は名称】共同印刷株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100096828
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 敬介
(74)【代理人】
【識別番号】100110870
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 芳広
(72)【発明者】
【氏名】昼間 徹夫
(72)【発明者】
【氏名】深谷 聡
(72)【発明者】
【氏名】神田 悠郷
【審査官】
岡山 太一郎
(56)【参考文献】
【文献】
特表平05−501273(JP,A)
【文献】
国際公開第2013/098026(WO,A1)
【文献】
特表2002−500259(JP,A)
【文献】
特開2014−173202(JP,A)
【文献】
特開2002−13095(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 33/00−33/26
C08L 1/00−1/32
C08L 9/00−9/10
D21H 19/00−19/84
D06M 15/00−15/715
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アクリルスチレンポリマーと、造膜剤と、水不溶性セルロースと、を有し、
前記アクリルスチレンポリマーと前記造膜剤とが、重量比で、アクリルスチレンポリマー/造膜剤=90/10〜40/60の割合で含まれており、
前記水不溶性セルロースが、前記アクリルスチレンポリマーと前記造膜剤との合計100重量部に対して、0.5重量部〜5重量部含まれることを特徴とする耐油吸水性組成物。
【請求項2】
前記造膜剤が、スチレン−ブタジエンゴムであることを特徴とする請求項1に記載の耐油吸水性組成物。
【請求項3】
前記水不溶性セルロースが、水不溶性カルボキシメチルセルロースであることを特徴とする請求項1又は2に記載の耐油吸水性組成物。
【請求項4】
アクリル系樹脂と、造膜剤としてスチレン−ブタジエンゴムと、水不溶性セルロースと、を有し、
前記アクリル系樹脂と前記造膜剤とが、重量比で、アクリル系樹脂/造膜剤=90/10〜40/60の割合で含まれており、
前記水不溶性セルロースが、前記アクリル系樹脂と前記造膜剤との合計100重量部に対して、0.5重量部〜5重量部含まれることを特徴とする耐油吸水性組成物。
【請求項5】
前記水不溶性セルロースが、水不溶性カルボキシメチルセルロースであることを特徴とする請求項4に記載の耐油吸水性組成物。
【請求項6】
アクリル系樹脂と、造膜剤と、水不溶性カルボキシメチルセルロースと、を有し、
前記アクリル系樹脂と前記造膜剤とが、重量比で、アクリル系樹脂/造膜剤=90/10〜40/60の割合で含まれており、
前記水不溶性カルボキシメチルセルロースが、前記アクリル系樹脂と前記造膜剤との合計100重量部に対して、0.5重量部〜5重量部含まれることを特徴とする耐油吸水性組成物。
【請求項7】
基材と、前記基材上に形成されるコート層と、から構成され、
前記コート層が、請求項1〜6のいずれか一項に記載の耐油吸水性組成物から形成されることを特徴とする耐油吸水性包装材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、耐油吸水性組成物、及び耐油吸水性包装材、具体的には、油分を多く含んだ食品と接触する耐油吸水性包装材に関するものである。
【背景技術】
【0002】
主にファーストフード店において、フライドポテトやフライドチキンのような油分が多い食品を提供する際に、食品に触れる面に耐油加工を施した包装体や包装箱が使用されている。ここでいう耐油加工とは、紙等の基材の表面に耐油性の組成物を塗布することをいうが、この耐油性の組成物としては、フッ素化合物が含まれるフッ素系耐油剤や、フッ素化合物が含まれない非フッ素系耐油剤が用いられている。
【0003】
ところで、フッ素系耐油剤を有する包装体や包装箱を焼却する際に、フッ素系耐油剤に含まれるフッ素化合物から、フッ化水素等の腐食性の強いガスや炭化水素から成る樹脂とは異なる有機ガスが発生することがあった。またフッ素系耐油剤に含まれるフッ素化合物やこのフッ素化合物の燃焼により発生する含フッ素有機化合物は、一般的に難分解性である。このことから、食品包装で用いられる耐油性の包装体・包装箱としては、フッ素化合物を用いないものが求められていた。
【0004】
一方、非フッ素系耐油剤として、従来では、でんぷん、PVA、セルロース、アクリル樹脂等の水溶性高分子を含む耐油性組成物が使用されてきた。これら水溶性高分子を含む耐油性組成物の塗布膜を、包装体や包装箱の内面側に形成されることで、油分の浸透を防ぎ包装体や包装箱に耐油性を発現させることができる。
【0005】
しかし、出来立ての料理や食品を包装体や包装箱に収容すると、料理や食品から発散する水蒸気によって包装体や包装箱の内壁に水滴が生じる。この水滴は、料理や食品を濡らして食味を著しく低下させるだけでなく、包装体や包装箱の内壁に設けられる耐油性組成物の塗布膜を劣化させる原因にもなっていた。
【0006】
このように、料理や食品から発散する水蒸気への対策として、特許文献1では、繊維中に一定量の充填剤が含まれる紙材の表面に水溶性高分子物質が塗布されている耐油紙が開示されている。また特許文献2には、水溶性セルロースエーテルにポリエステル系耐油剤を添加してなる耐油性薬剤、及びこの耐油性薬剤を紙材に塗布して当該紙材を加熱処理することで得られる耐油紙が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2005−171390号公報
【特許文献2】特開2006−16720号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、特許文献1の耐油紙は、耐油性に加えて水蒸気透過性が備わっている。しかし、特許文献1では、坪量が30g/m
2〜60g/m
2といった薄用紙を対象とするものであり、坪量が薄用紙よりも大きい包装箱用の紙材の場合では包装箱の外側へ水蒸気を逃がすことは困難であった。また特許文献2の耐油紙は、耐油紙が有する塗布膜が耐水性を有するものの、料理や食品から発散する水蒸気の料理や食品への影響については考慮されていなかった。
【0009】
本発明は、上述した課題を解決するためになされるものであり、その目的は、耐油性を確保しつつ料理や食品から発散する水蒸気に起因する料理や食品等の品質低下を防止した耐油吸水性組成物及びこれを用いた耐油吸水性包装材を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の課題を解決するために成された本発明の構成は以下の通りである。
即ち、本発明の
第一の耐油吸水性組成物は、アクリル
スチレンポリマーと、造膜剤と、水不溶性セルロースと、を有し、
前記アクリル
スチレンポリマーと前記造膜剤とが、重量比で、アクリル
スチレンポリマー/造膜剤=90/10〜40/60の割合で含まれており、
前記水不溶性セルロースが、前記アクリル
スチレンポリマーと前記造膜剤との合計100重量部に対して、0.5重量部〜5重量部含まれることを特徴とする。
本発明の第二の耐油吸水性組成物は、アクリル系樹脂と、造膜剤としてスチレン−ブタジエンゴムと、水不溶性セルロースと、を有し、
前記アクリル系樹脂と前記造膜剤とが、重量比で、アクリル系樹脂/造膜剤=90/10〜40/60の割合で含まれており、
前記水不溶性セルロースが、前記アクリル系樹脂と前記造膜剤との合計100重量部に対して、0.5重量部〜5重量部含まれることを特徴とする。
本発明の第三の耐油吸水性組成物は、アクリル系樹脂と、造膜剤と、水不溶性カルボキシメチルセルロースと、を有し、
前記アクリル系樹脂と前記造膜剤とが、重量比で、アクリル系樹脂/造膜剤=90/10〜40/60の割合で含まれており、
前記水不溶性カルボキシメチルセルロースが、前記アクリル系樹脂と前記造膜剤との合計100重量部に対して、0.5重量部〜5重量部含まれることを特徴とする。
【0012】
本発明の
第一の耐油吸水性組成物においては、前記造膜剤が、スチレン−ブタジエンゴムであることが好ましい。
【0013】
本発明の
第一又は第二の耐油吸水性組成物においては、前記水不溶性セルロースが、水不溶性カルボキシメチルセルロースであることが好ましい。
【0014】
また本発明の耐油吸水性包装材は、基材と、前記基材上に形成されるコート層と、から構成され、
前記コート層が、本発明の耐油吸水性組成物から形成されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、耐油性を確保しつつ料理や食品から発散する水蒸気に起因する料理や食品等の品質低下を防止した耐油吸水性組成物及びこれを用いた耐油吸水性包装材を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明の耐油吸水性包装材における実施形態の例を示す断面模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態について説明する。尚、以下の説明において、「%」は、特に説明がない限り、重量%をいうものとする。
【0018】
(1)耐油吸水性組成物
本発明の耐油吸水性組成物は、アクリル系樹脂と、造膜剤と、水不溶性セルロースと、を有する。
【0019】
本発明の耐油吸水性組成物において、アクリル系樹脂及び造膜剤は、重量比で、アクリル系樹脂/造膜剤=90/10〜40/60の割合で含まれている。本発明においては、アクリル系樹脂と造膜剤との配合比を上述したように調整することによって、組成物を紙材等の基材に塗布したときに形成される塗布膜に耐油性を付与させることができる。
【0020】
本発明において、耐油吸水性組成物に含まれるアクリル系樹脂の含有量が過剰である場合、具体的には、アクリル系樹脂及び造膜剤の合計量に対してアクリル系樹脂の含有量が90%を超えると、耐油吸水性組成物に含まれる造膜剤の含有量が過少になることにより造膜性が落ちて耐油性が低下することがある。一方、耐油吸水性組成物に含まれるアクリル系樹脂の含有量が過少である場合、具体的には、アクリル系樹脂及び造膜剤の合計量に対してアクリル系樹脂の含有量が40%未満の場合は、耐油吸水性組成物に含まれる造膜剤の含有量が過剰になることにより、耐油吸水性組成物からなる膜を塗布形成した用紙を重ねて保管したときにブロッキングが発生することがある。
【0021】
本発明において、アクリル系樹脂及び造膜剤の好ましい配合比は、重量比で、アクリル系樹脂/造膜剤=90/10〜70/30である。
【0022】
また本発明の耐油吸水性組成物において、水不溶性セルロースは、アクリル系樹脂と造膜剤との合計100重量部に対して、0.5重量部〜5重量部含まれる。本発明においては、組成物中に水不溶性セルロースが適量配合されることにより、上記塗布膜に吸水性をさらに付与することができる。ここで水不溶性セルロースの含有量が、アクリル系樹脂と造膜剤との合計100重量部に対して0.5重量部未満であると、水不溶性セルロースが有する吸水・吸湿効果を十分に発揮させることができない。一方、水不溶性セルロースの含有量が、アクリル系樹脂と造膜剤との合計100重量部に対して5重量部を超えていると、上記塗布膜の耐油性が低下することになる。本発明の組成物において、水不溶性セルロースの好ましい添加量は、アクリル系樹脂と造膜剤との合計100重量部に対して1重量部〜5重量部である。より好ましい添加量は、アクリル系樹脂と造膜剤との合計100重量部に対して2重量部〜3重量部である。
【0023】
以下、本発明の耐油吸水性組成物に含まれる各成分について説明する。
【0024】
(1−1)アクリル系樹脂
アクリル系樹脂は、上記塗布膜の基礎となる材料である。
【0025】
アクリル系樹脂としては、ポリアクリル酸、ポリアクリル酸エステル等のアクリル酸系ポリマー、ポリメタクリル酸、ポリメタクリル酸エステル等のメタクリル酸系ポリマーが挙げられる。尚、本発明においては、上述したアクリル酸系ポリマーやメタクリル酸系ポリマーを2種類以上混合して得られるポリマーブレンドや、アクリル酸系モノマー(アクリル酸誘導体)又はメタクリル酸系モノマー(メタクリル酸誘導体)と他のモノマーとを共重合させて得られる共重合体ポリマーもアクリル系樹脂に含まれ得る。本発明において、アクリル系樹脂として、好ましくは、ポリメタクリル酸メチル又はアクリルスチレンポリマーであり、より好ましくは、アクリルスチレンポリマーである。
【0026】
本発明の耐油吸水性組成物を調製する際に、アクリル系樹脂は、必ずしも固体状のものを用いる必要はない。溶液状のものを用いてもよいし、エマルジョン状のものを用いてもよい。
【0027】
(1−2)造膜剤
造膜剤は、上記塗布膜を紙材等の基材の表面に固定させる材料である。
【0028】
造膜剤としては、天然ゴム、イソプレンゴム、ブタジエンゴム、スチレン−ブタジエンゴム等の合成ゴム、加工でん粉、耐油でん粉、PVA等の材料を使用することができるが、好ましくは、イソプレンゴム、ブタジエンゴム、スチレン−ブタジエンゴム等の合成ゴムであり、より好ましくは、スチレン−ブタジエンゴムである。
【0029】
本発明の耐油吸水性組成物を調製する際に、造膜剤は、必ずしも固体状のものを用いる必要はなく、溶液状のものを用いてもよいし、エマルジョン状(ラテックス状)のものを用いてもよい。
【0030】
(1−3)水不溶性セルロース
本発明において、水不溶性セルロースとは、単に、水に溶解されないセルロースをいうのではなく、セルロースの中でも水に溶解されないが水を吸収するものを指す。
【0031】
水不溶性セルロースとして、例えば、セルロースが有する水酸基(−OH)の一部をエーテル化することで得られるセルロースエーテルが挙げられる。ただし、セルロースエーテルの中でも、エーテル化された水酸基の割合が大きいものは水溶性のセルロースになるため、エーテル化された水酸基の割合がセルロースの水溶化が生じない程度に適宜制御されたセルロースエーテルが好ましい。尚、ここでいう制御とは、25℃及び1気圧の環境下において、部分解重合前における100グラムの蒸留水中での溶解度が2グラム未満又は1グラム未満に制御されていることをいう。
【0032】
またセルロースエーテルとして、例えば、水不溶性カルボキシメチルセルロース、水不溶性エチルセルロース、水不溶性エチルメチルセルロース、水不溶性エチルプロピルセルロース、水不溶性イソプロピルセルロース、水不溶性ブチルセルロース、水不溶性ベンジルセルロース、水不溶性シアノエチルセルロース等が挙げられるが、これらの中でも、好ましくは、水不溶性カルボキシメチルセルロースである。
【0033】
また本発明の耐油吸水性組成物に含まれる水不溶性セルロースエーテルの粒径は、グラビア版に収容することができる60μm以下が好ましく、15μm〜25μmがより好ましい。
【0034】
本発明の耐油吸水性組成物を調製する際に、水不溶性セルロースは、必ずしも固体状のものを用いる必要はなく、アルコール等で溶解させてなる溶液状のものを用いてもよい。
【0035】
(2)耐油吸水性包装材
次に、図面を参照しながら、本発明の耐油吸水性包装材について説明する。
図1は、本発明の耐油吸水性包装材における実施形態の例を示す断面模式図である。
図1の耐油吸水性包装材1は、基材10と、基材10の上に設けられるコート層11とからなる。
【0036】
図1の耐油吸水性包装材1において、基材10としては、紙材(具体的には、坪量40g/m
2〜310g/m
2の紙材)、不織布(フェルト材)等が挙げられる。
【0037】
図1の耐油吸水性包装材1において、コート層11は、本発明の耐油吸水性組成物を基材10の上に塗布成膜してなる層である。コート層11の厚さとして、好ましくは、1μm〜5μmである。
【0038】
本発明の耐油吸水性組成物を基材10の上に塗布成膜する方法としては、特に限定されないが、例えば、グラビア印刷方式、スクリーン印刷方式、フレキソ印刷方式、オフセット印刷方式等が挙げられる。尚、グラビア印刷方式を用いてコート層11を形成する場合は、上述したように、グラビアセルのサイズよりも粒径が小さい水不溶性セルロースを用いるのが好ましい。
【実施例】
【0039】
[実施例1]
(1)耐油吸水性組成物の調製
本実施例において、耐油吸水性組成物の調製の際に使用した試薬を以下に示す。
・試薬1:下処理剤B(エマルジョン状、試薬中に含まれる固形分(アクリル系樹脂)含有量:40.5%、大阪印刷インキ製造株式会社製)
・試薬2:スマーテックス PA3816(ラテックス(エマルジョン)状、試薬中に含まれる固形分(スチレン−ブタジエン系樹脂)含有量:51%、日本エイ アンド エル株式会社製)
・水不溶性セルロース:サンローズ SLD−FM(日本製紙株式会社製)
【0040】
本実施例では、試薬1、試薬2及び水不溶性セルロースを混合して耐油吸水性組成物を調製した。具体的には、組成物中の試薬1と試薬2との重量比が試薬1/試薬2=9/1になるようにし、また水不溶性セルロースの配合量を、試薬1及び試薬2の固形分の合計100重量部に対して3重量部になるようにした。尚、本実施例にて調製した耐油吸水性組成物に含まれるアクリル系樹脂、造膜剤及び水不溶性セルロースの固形分比(重量比)は、アクリル系樹脂:造膜剤:水不溶性セルロース=88:12:3である。
【0041】
(2)耐油吸水性包装材の製造
180線の版を使用したフレキソ印刷方式を用いて、(1)で調製した耐油吸水性組成物を紙材(坪量260g/m
2)の上に塗布した後、塗布した耐油吸水性組成物を自然乾燥させることにより、
図1の耐油吸水性包装材1を得た。このとき耐油吸水性包装材1を構成するコート層11の厚さは、約3μmであった。
【0042】
(3)耐油吸水性包装材の評価方法
得られた耐油吸水性包装材について、以下の評価を行った。
【0043】
(3−1)耐油度の評価
JAPAN TAPPI 紙パルプ試験法No.41 キット法を用いて、耐油吸水性包装材の耐油性の評価を行った。尚、評価の際、耐油度が11以上である場合を合格、11未満の場合を不合格とした。評価結果を表1に示す。
【0044】
(3−2)吸水度の評価
JIS8140(コップ法)を用いて、耐油吸水性包装材の吸水性の評価を行った。尚、評価の際、吸水度が4.5以上である場合を合格、4.5未満の場合を不合格とした。評価結果を表1に示す。
【0045】
[実施例2]
実施例1(1)において、組成物中の試薬1と試薬2との重量比が試薬1/試薬2=7/3になるように試薬1及び試薬2の配合量を調整したこと以外は、実施例1と同様の方法により、耐油吸水性組成物及び耐油吸水性包装材を得た。尚、本実施例にて調製した耐油吸水性組成物に含まれるアクリル系樹脂、造膜剤及び水不溶性セルロースの固形分比(重量比)は、アクリル系樹脂:造膜剤:水不溶性セルロース=65:35:3である。得られた耐油吸水性包装材について、実施例1と同様に、耐油度及び吸水度の評価を行った。評価結果を表1に示す。
【0046】
[実施例3]
実施例1(1)において、組成物中の試薬1と試薬2との重量比が試薬1/試薬2=5/5になるように試薬1及び試薬2の配合量を調整したこと以外は、実施例1と同様の方法により、耐油吸水性組成物及び耐油吸水性包装材を得た。尚、本実施例にて調製した耐油吸水性組成物に含まれるアクリル系樹脂、造膜剤及び水不溶性セルロースの固形分比(重量比)は、アクリル系樹脂:造膜剤:水不溶性セルロース=44:56:3である。得られた耐油吸水性包装材について、実施例1と同様に、耐油度及び吸水度の評価を行った。評価結果を表1に示す。
【0047】
[比較例1]
(1)耐油吸水性組成物について
本比較例では、試薬1をそのまま耐油吸水性組成物として用いた。
【0048】
(2)耐油吸水性包装材の製造
フレキソ印刷方式を用いて、試薬1を紙材の上に塗布した後、塗布した試薬1を自然乾燥させることにより、耐油吸水性包装材を得た。
【0049】
(3)耐油吸水性包装材の評価
得られた耐油吸水性包装材について、実施例1と同様に、耐油度及び吸水度の評価を行った。評価結果を表1に示す。
【0050】
[比較例2]
実施例1(1)において、組成物中の試薬1と試薬2との重量比が試薬1/試薬2=3/7になるように試薬1及び試薬2の配合量を調整したこと以外は、実施例1と同様の方法により、耐油吸水性組成物及び耐油吸水性包装材を得た。尚、本比較例にて調製した耐油吸水性組成物に含まれるアクリル系樹脂、造膜剤及び水不溶性セルロースの固形分比(重量比)は、アクリル系樹脂:造膜剤:水不溶性セルロース=25:75:3である。得られた耐油吸水性包装材について、実施例1と同様に、耐油度及び吸水度の評価を行った。評価結果を表1に示す。
【0051】
[比較例3]
実施例1(1)において、組成物中の試薬1と試薬2との重量比が試薬1/試薬2=1/9になるように試薬1及び試薬2の配合量を調整したこと以外は、実施例1と同様の方法により、耐油吸水性組成物及び耐油吸水性包装材を得た。尚、本比較例にて調製した耐油吸水性組成物に含まれるアクリル系樹脂、造膜剤及び水不溶性セルロースの固形分比(重量比)は、アクリル系樹脂:造膜剤:水不溶性セルロース=8:92:3である。得られた耐油吸水性包装材について、実施例1と同様に、耐油度及び吸水度の評価を行った。評価結果を表1に示す。
【0052】
【表1】
【0053】
以上より、アクリル系樹脂、造膜剤及び水不溶性セルロースが所定の割合で含まれる耐油吸水性組成物を基材(紙材)の上に塗布して形成される本発明の耐油吸水性組成物は、耐油性及び吸水性において優れていることを確認することができた。
【符号の説明】
【0054】
1:耐油吸水性包装材
10:基材
11:コート層