特許第6386379号(P6386379)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6386379スケール生成種を不動態化するための電気透析方法及び装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6386379
(24)【登録日】2018年8月17日
(45)【発行日】2018年9月5日
(54)【発明の名称】スケール生成種を不動態化するための電気透析方法及び装置
(51)【国際特許分類】
   C02F 1/469 20060101AFI20180827BHJP
   B01D 61/44 20060101ALI20180827BHJP
   C02F 1/44 20060101ALI20180827BHJP
   C02F 5/00 20060101ALI20180827BHJP
   C25B 9/00 20060101ALI20180827BHJP
【FI】
   C02F1/469
   B01D61/44 510
   C02F1/44 G
   C02F5/00 610B
   C02F5/00 610C
   C02F5/00 620B
   C25B9/00 Z
【請求項の数】16
【全頁数】26
(21)【出願番号】特願2014-530680(P2014-530680)
(86)(22)【出願日】2012年8月28日
(65)【公表番号】特表2014-530091(P2014-530091A)
(43)【公表日】2014年11月17日
(86)【国際出願番号】US2012052591
(87)【国際公開番号】WO2013039677
(87)【国際公開日】20130321
【審査請求日】2015年8月19日
【審判番号】不服2017-9581(P2017-9581/J1)
【審判請求日】2017年6月30日
(31)【優先権主張番号】13/234,232
(32)【優先日】2011年9月16日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】390041542
【氏名又は名称】ゼネラル・エレクトリック・カンパニイ
(74)【代理人】
【識別番号】110001173
【氏名又は名称】特許業務法人川口國際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100137545
【弁理士】
【氏名又は名称】荒川 聡志
(74)【代理人】
【識別番号】100105588
【弁理士】
【氏名又は名称】小倉 博
(74)【代理人】
【識別番号】100129779
【弁理士】
【氏名又は名称】黒川 俊久
(74)【代理人】
【識別番号】100113974
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 拓人
(72)【発明者】
【氏名】モー,ニール・エドウィン
【合議体】
【審判長】 豊永 茂弘
【審判官】 馳平 憲一
【審判官】 宮澤 尚之
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−125738(JP,A)
【文献】 特開2001−239270(JP,A)
【文献】 特表2010−504200(JP,A)
【文献】 特開2010−264385(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2006/0144787(US,A1)
【文献】 特開2003−190959(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C02F 1/469
B01D 61/44-61/54
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気透析デバイスであって、当該電気透析デバイスが、
アノード(21)及びカソード(22)としてそれぞれ機能する一対の電極(21,22)と、
アニオン型スケール生成種(T-)、アニオン型非スケール生成種(Y-)、カチオン型スケール生成種(S+)及びカチオン型非スケール生成種(X+)を含有する水性供給流であって、アニオン型スケール生成種(T-)が第1のアニオン型スケール生成種濃度で存在し、カチオン型スケール生成種(S+)が第1のカチオン型スケール生成種濃度で存在している水性供給流を電気透析デバイスに導くための入口(240)と、
アノード(21)に隣接したアノードセルユニット(26)と、
カソード(22)に隣接したカソードセルユニット(25)と、
アノードセルユニット(26)とカソードセルユニット(25)との間に配置された1以上の汎用セルユニット(23)と
を備えており、
カソードセルユニット(25)が第3の膜群(231)を有し、
汎用セルユニット(23)が第1の膜群(232)と、第2の膜群(233)と、汎用セルユニット(23)の第1の膜群(232)と隣接するカソードセルユニット(25)の第3の膜群(231)又は隣接する汎用セルユニット(23’)の第2の膜群(233’)との間に画成される第1の供給経路(236)と、第1の膜群(232)と第2の膜群(233)との間に画成される第2の供給経路(237)とを有していて、第1の供給経路(236)及び第2の供給経路(237)の各々に入口(240)から水性供給流が供給され、
第1の膜群(232)が、アニオン型スケール生成種(T-)を第1の供給経路(236)から第2の供給経路(237)へと透過させることができるとともに、カチオン型スケール生成種(S+)を第2の供給経路(237)から第1の供給経路(236)へと透過させることができ、第2の膜群(233)が、アニオン型非スケール生成種(Y-)を第2の供給経路(237)の外へと透過させることができ、かつ第3の膜群(231)が、カチオン型非スケール生成種(X+)を第1の供給経路(236)の外へと透過させることができ、もって第1の供給経路(236)を通して水性供給流を通過させた後に、第1のアニオン型スケール生成種濃度よりも低いアニオン型スケール生成種濃度を有する第1の排液が得られ、第2の供給経路(237)を通して水性供給流を通過させた後に、第1のカチオン型スケール生成種濃度よりも低いカチオン型スケール生成種濃度を有する第2の排液が得られる、電気透析デバイス。
【請求項2】
前記1対の電極を備える電気透析槽(24)をさらに備える、請求項1記載の電気透析デバイス。
【請求項3】
第1の膜群(232)がT-選択性アニオン交換膜とS+選択性カチオン交換膜とを含んでいる、請求項1又は請求項2記載の電気透析デバイス。
【請求項4】
第2の膜群(233)がY-選択性アニオン交換膜を含んでおり、第3の膜群(231)がX+選択性カチオン交換膜を含んでいる、請求項1乃至請求項3のいずれか1項記載の電気透析デバイス。
【請求項5】
カチオン型スケール生成種(S+)が、Mg2+、Ca2+、Sr2+及びBa2+からなる群から選択され、アニオン型スケール生成種(T-)が、SO42-、HCO3-、CO32-、OH-、F-、PO43-、HPO42-及びH2PO4-からなる群から選択される、請求項1乃至請求項4のいずれか1項記載の電気透析デバイス。
【請求項6】
カチオン型スケール生成種(S+)がCa2+であり、アニオン型スケール生成種(T-)がSO42-及び/又はHCO3-を含む、請求項1乃至請求項5のいずれか1項記載の電気透析デバイス。
【請求項7】
第1の排液が、第1のアニオン型スケール生成種濃度の90%未満のアニオン型スケール生成種濃度を有し、第2の排液が、第1のカチオン型スケール生成種濃度の90%未満のカチオン型スケール生成種濃度を有する、請求項1乃至請求項6のいずれか1項記載の電気透析デバイス。
【請求項8】
第1の排液が、第1のアニオン型スケール生成種濃度の50%未満のアニオン型スケール生成種濃度を有し、第2の排液が、第1のカチオン型スケール生成種濃度の50%未満のカチオン型スケール生成種濃度を有する、請求項7記載の電気透析デバイス。
【請求項9】
第1の排液が、第1のアニオン型スケール生成種濃度の20%未満のアニオン型スケール生成種濃度を有し、第2の排液が、第1のカチオン型スケール生成種濃度の20%未満のカチオン型スケール生成種濃度を有する、請求項8記載の電気透析デバイス。
【請求項10】
第1の供給経路及び第2の供給経路が脱塩プラント取込口と流体連通しており、第1の供給経路及び第2の供給経路の内容物が脱塩プラントで別々に処理される、請求項1乃至請求項9のいずれか1項記載の電気透析デバイス。
【請求項11】
脱塩ユニット供給流のスケール生成イオン濃度を低減させる方法であって、
a)電気透析デバイスの1対の電極(21,22)に直流を通電し、電極対をそれぞれカソード(22)とアノード(21)として付勢する工程と、
b)アニオン型スケール生成種(T-)、アニオン型非スケール生成種(Y-)、カチオン型スケール生成種(S+)及びカチオン型非スケール生成種(X+)を含有する水性供給流であって、アニオン型スケール生成種(T-)が第1のアニオン型スケール生成種濃度で存在し、カチオン型スケール生成種(S+)が第1のカチオン型スケール生成種濃度で存在している水性供給流を電気透析デバイスの第1の膜群(232)と第3の膜群(231)との間に画成される第1の供給経路(236)と、第1の膜群(232)と第2の膜群(233)との間に画成される第2の供給経路(237)の各々に供給する工程と、
c)水性供給流を電気透析デバイス内で、第3の膜群(231)と流体連通した第1の供給経路(236)、及び第1の膜群(232)で隔てられ、第2の膜群(233)と流体連通した第2の供給経路(237)に沿って流す工程であって、第1の膜群(232)が、アニオン型スケール生成種(T-)を第1の供給経路(236)から第2の供給経路(237)へと透過させることができるとともに、カチオン型スケール生成種(S+)を第2の供給経路(237)から第1の供給経路(236)へと透過させることができ、第2の膜群(233)が、アニオン型非スケール生成種(Y-)を第2の供給経路(237)の外へと透過させることができ、かつ第3の膜群(231)が、カチオン型非スケール生成種(X+)を第1の供給経路(236)の外へと透過させることができ、もって第1の供給経路(236)を通して水性供給流を通過させた後に、第1のアニオン型スケール生成種濃度よりも低いアニオン型スケール生成種濃度を有する第1の排液が得られ、第2の供給経路(237)を通して水性供給流を通過させた後に、第1のカチオン型スケール生成種濃度よりも低いカチオン型スケール生成種濃度を有する第2の排液が得られる、工程と、
d)第1及び第2の排液の一方又は両方を、脱塩ユニット供給流として脱塩ユニットに供給する工程であって、第1及び第2の排液の両方を脱塩ユニットに供給する場合には、それらを混合せずに別々に供給する工程と
を含む方法。
【請求項12】
カチオン型スケール生成種(S+)が、Mg2+、Ca2+、Sr2+及びBa2+からなる群から選択され、アニオン型スケール生成種(T-)が、SO42-、HCO3-、CO32-、OH-、F-、PO43-、HPO42-及びH2PO4-からなる群から選択される、請求項11記載の方法。
【請求項13】
カチオン型スケール生成種(S+)がCa2+であり、アニオン型スケール生成種(T-)がSO42-及び/又はHCO3-を含む、請求項11又は請求項12記載の方法。
【請求項14】
第1の排液が、第1のアニオン型スケール生成種濃度の90%未満のアニオン型スケール生成種濃度を有し、第2の排液が、第1のカチオン型スケール生成種濃度の90%未満のカチオン型スケール生成種濃度を有する、請求項11乃至請求項13のいずれか1項記載の方法。
【請求項15】
第1の排液が、第1のアニオン型スケール生成種濃度の50%未満のアニオン型スケール生成種濃度を有し、第2の排液が、第1のカチオン型スケール生成種濃度の50%未満のカチオン型スケール生成種濃度を有する、請求項14記載の方法。
【請求項16】
第1の排液が、第1のアニオン型スケール生成種濃度の20%未満のアニオン型スケール生成種濃度を有し、第2の排液が、第1のカチオン型スケール生成種濃度の20%未満のカチオン型スケール生成種濃度を有する、請求項15記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は水の中のスケール生成種の不動態化に関する。
【背景技術】
【0002】
水化学は脱塩処理の設計に対して支配的でありかつこれを制限する。大部分の分離に対する制限は、CaCO3やCaSO4などの難溶性の化合物の沈殿によるものであり、浸透圧などの本来の物理特性によるものではない。例えば内陸の汽水源(brackish water sources)の脱塩では、逆浸透法は典型的にはCa2+、SO42-、HCO3-などの微量のスケール生成種が存在するため水回収率が概ね75%までに制限されており、浸透圧単独でもNa+とCl-しか存在しないと仮定した場合、98%の回収というかなり高い限界が課せられることになる。水回収が低いことの帰結として、1)ポンプ、取込口、落し口(outfall)及び前処理系が大きくなり、2)水損失に関連する阻止流の体積が大きくなる。第1の帰結は、海水の熱式脱塩で最も明瞭に表れており、大部分の処理がスケール生成種のために僅か25〜35%の水回収かつ最適未満の温度での実行となる。第2の帰結は汽水の内陸脱塩の実現性に重大な影響を及ぼす。
【0003】
したがって、脱塩処理におけるスケール生成種の濃度の低減に対する有効な解決法が必要とされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】米国特許出願第2006/144787号
【発明の概要】
【0005】
本発明の一態様では、電気透析デバイスが複数の第1の供給経路及び複数の第2の供給経路に供給流を導くための入口を備えており、供給流は第1のアニオンスケール生成種及び第1のカチオンスケール生成種からなり、第1のカチオンスケール生成種は第2の供給経路から第1の供給経路まで第1の膜群を通して移送され、第1のアニオンスケール生成種は第1の供給経路から第2の供給経路まで第1の膜群を通して移送され、第1の供給経路から出る排液中の第1のアニオンスケール生成種の濃度は電気透析デバイスの入口位置における供給流中の第1のアニオンスケール生成種の濃度の約90%未満である。
【0006】
別の態様では電気透析デバイスはさらに、電気透析槽と、電気透析槽内に配設された1対の電極であってそれぞれアノードとカソードとして機能する1対の電極と、アノードに隣接するアノードセルユニット、カソードに隣接するカソードセルユニット及びアノードセルユニットとカソードセルユニットの間に配設された1以上の汎用セルユニットとを備えており、カソードセルユニットは1以上の要素からなる第3の膜群を有しており、汎用セルユニットは1以上の要素からなる第1の膜群、1以上の要素からなる第2の膜群、第1の供給経路及び第2の供給経路を有しており、第1の膜群はアニオン交換膜及びカチオン交換膜を備えており、汎用セルユニットのうちの1つの第1の供給経路は汎用セルユニットの第1の膜群及び隣接するカソードセルユニットの第3の膜群によって画成され、汎用セルユニットのうちの1以上の第1の供給経路は汎用セルユニットの第1の膜群及び隣接する汎用セルユニットの第2の膜群によって画成され、1以上の汎用セルユニットの第2の供給経路は第1及び第2の膜群によって画成される。
【0007】
電気透析デバイスの別の態様では、第2の供給経路から出る排液中の第1のカチオンスケール生成種の濃度は、電気透析デバイスの入口位置における供給流中の第1のカチオンスケール生成種の濃度の約90%未満である。
【0008】
電気透析デバイスの別の態様では、第1の供給経路から出る排液中の第1のアニオンスケール生成種の濃度は、電気透析デバイスの入口位置における供給流中の第1のアニオンスケール生成種の濃度の約50%未満であり、第2の供給経路から出る排液中の第1のカチオンスケール生成種の濃度は、電気透析デバイスの入口位置における供給流中の第1のカチオンスケール生成種の濃度の約50%未満である。
【0009】
電気透析デバイスの別の態様では、第1の供給経路から出る排液中の第1のアニオンスケール生成種の濃度は、電気透析デバイスの入口位置における供給流中の第1のアニオンスケール生成種の濃度の約20%未満であり、第2の供給経路から出る排液中の第1のカチオンスケール生成種の濃度は、電気透析デバイスの入口位置における供給流中の第1のカチオンスケール生成種の濃度の約20%未満である。
【0010】
電気透析デバイスの別の態様ではその第1の膜群要素は、1価選択性アニオン交換膜、1価選択性カチオン交換膜、2価選択性アニオン交換膜又は2価選択性カチオン交換膜からなる群から選択される。
【0011】
電気透析デバイスの別の態様ではその第2の膜群は、1以上のアニオン交換膜要素又は1以上のカチオン交換膜要素からなる。
【0012】
電気透析デバイスの別の態様ではその第3の膜群は、1以上のアニオン交換膜要素又は1以上のカチオン交換膜要素からなる。
【0013】
電気透析デバイスの別の態様ではその第1のカチオンスケール生成種は、Mg2+、Ca2+、Sr2+及びBa2+からなる群から選択され、その第1のアニオンスケール生成種は、SO42-、HCO3-、CO32-、OH-、F-、PO43-、HPO42-及びH2PO4-からなる群から選択される。
【0014】
電気透析デバイスの別の態様ではその第1の供給経路及び第2の供給経路は脱塩プラント取込口と流体連通しており、第1の供給経路及び第2の供給経路の内容物は脱塩プラントで別々に処理される。
【0015】
別の態様では電気透析デバイスはさらに、それぞれアノードとカソードとして機能する1対の電極を備えた少なくとも2つの電気透析槽と、アノードに隣接するアノードセルユニット、カソードに隣接するカソードセルユニット及びアノードセルユニットとカソードセルユニットの間に配設された1以上の汎用セルユニットとを備えており、アノードセルユニット、カソードセルユニット及び1以上の汎用セルユニットは電気透析槽に跨っており、カソードセルユニットは1以上の要素からなる第3の膜群を有し、汎用セルユニットは1以上の要素からなる第1の膜群、1以上の要素からなる第2の膜群、第1の供給経路及び第2の供給経路を有しており、第1の膜群はアニオン交換膜及びカチオン交換膜を備えており、汎用セルユニットのうちの1つの第1の供給経路は汎用セルユニットの第1の膜群及び隣接するカソードセルユニットの第3の膜群によって画成され、汎用セルユニットのうちの1以上の第1の供給経路は汎用セルユニットの第1の膜群及び隣接する汎用セルユニットの第2の膜群によって画成され、1以上の汎用セルユニットの第2の供給経路は第1及び第2の膜群によって画成される。
【0016】
別の態様では請求項1の電気透析デバイスはさらに、複数の液圧段(hydraulic stage)を有しているそれぞれアノードとカソードとして機能する1対の電極を備えた1以上の電気透析槽をさらに備えており、カソードセルユニットは1以上の要素からなる第3の膜群を有し、汎用セルユニットは1以上の要素からなる第1の膜群、1以上の要素からなる第2の膜群、第1の供給経路及び第2の供給経路を有しており、汎用セルユニット、第1及び第2の膜群並びに第1及び第2の供給経路はそれぞれ第1及び第2の部分を有しており、第1の膜群はアニオン交換膜及びカチオン交換膜を備えており、1以上の汎用セルユニットの第1の供給経路は第1の膜群によって少なくとも部分的に画成され、1以上の汎用セルユニットの第2の供給経路は第1の膜群及び第2の膜群によって少なくとも部分的に画成される。
【0017】
本発明のさらに別の態様によるスケール生成種を不動態化するための方法は、第1の供給経路及び第2の供給経路を有する電気透析デバイスの1対の電極に直流を通し、電極対をそれぞれカソードとアノードとして付勢する工程と、第1の膜群によって分離された第1の供給経路及び第2の供給経路に第1のアニオンスケール生成種及び第1のカチオンスケール生成種からなる供給流を供給する工程と、第2の供給経路から第1の供給経路まで第1の膜群を通して第1のカチオンスケール生成種を移送する工程とを含む。
【0018】
別の態様では、本方法はさらに第1の供給経路から第2の供給経路まで第1の膜群を通して第1のアニオンスケール生成種を移送する工程を含んでおり、電気分解デバイスはさらにその各々がアノード及びカソードを包含した1以上の電気透析槽を備えており、アノードに隣接してアノードセルユニットがあり、カソードに隣接してカソードセルユニットがありかつアノードセルユニットとカソードセルユニットの間に1以上の汎用セルユニットが配列され、カソードセルユニットは1以上の要素からなる第3の膜群を有し、汎用セルユニットは1以上の要素からなる第1の膜群、1以上の要素からなる第2の膜群、第1の供給経路及び第2の供給経路を有しており、第1の膜群はアニオン交換膜及びカチオン交換膜を備えており、1以上の汎用セルユニットの第1の供給経路は第1の膜群によって少なくとも部分的に画成され、1以上の汎用セルユニットの第2の供給経路は第1及び第2の膜群によって少なくとも部分的に画成される。
【0019】
別の態様では、本方法はさらに第1及び第2の供給経路から排液を除去する工程を含んでおり、第1の供給経路から除去される排液中の第1のアニオンスケール生成種の濃度は、第1の供給経路に入る供給流中の第1のアニオンスケール生成種の濃度の約90%未満である。
【0020】
本方法の別の態様では、第2の膜群は1以上のアニオン交換膜又は1以上のカチオン交換膜からなる。
【0021】
本方法の別の態様では、第3の膜群は1以上のアニオン交換膜又は1以上のカチオン交換膜からなる。
【0022】
別の態様では、本方法はさらに第1及び第2の供給経路からの排液を脱塩プラントに導く工程を含んでおり、第1の供給経路の内容物は第2の供給経路の内容物とは別に処理される。
【0023】
本方法の別の態様では、電気透析デバイスはさらにその各々がアノード及びカソードを有する2以上の電気透析槽からなり、そのアノードセルユニット、カソードセルユニット及び1以上の汎用セルユニットは2以上の電気透析槽に跨っている。
【0024】
本方法の別の態様ではその第1のカチオンスケール生成種は、Mg2+、Ca2+、Sr2+及びBa2+からなる群から選択され、その第1のアニオンスケール生成種は、SO42-、HCO3-、CO32-、OH-、F-、PO43-、HPO42-及びH2PO4-からなる群から選択される。
【0025】
本発明のこれら及びその他の態様については、構造の詳細を表した図面及び例証用の実施形態と一緒に取り上げた説明並びに本特許請求の範囲から明らかとなろう。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】本発明の第1の実施形態による電気透析デバイスを表した概要図である。
図2】本発明の第2の実施形態による電気透析デバイスを表した概要図である。
図3】本発明の第3の実施形態による電気透析デバイスを表した概要図である。
図4】本発明の第4の実施形態による電気透析デバイスを表した概要図である。
図5】本発明の第5の実施形態による電気透析デバイスを表した概要図である。
図6】本発明の第6の実施形態による電気透析デバイスを表した概要図である。
図7a】本発明の第7の実施形態による電気透析デバイスを表した概要図である。
図7b】本発明の第8の実施形態による電気透析デバイスを表した概要図である。
図7c】本発明の第9の実施形態による電気透析デバイスを表した概要図である。
図7d】本発明の第10の実施形態による電気透析デバイスを表した概要図である。
図8】本発明の一実施形態による電気透析デバイスの利用を表したブロック図である。
図9】本発明の一実施形態による電気透析デバイスの利用を表したブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
本明細書及び特許請求の範囲の全体を通じてその中で使用する場合に、それに関する基本的機能に変化を生じさせずに許容可能に変更し得る任意の定量的表現の修飾のために概略表現を利用することがある。したがって、「約(about)」などの用語(複数のこともある)で修飾した値は、指定した精細な値への限定ではない。少なくとも幾つかの例ではその概略表現はその値を計測するための計器の精度に対応することがある。範囲の限定は組み合わせ及び/又は重なり合いとすることがあり、こうした範囲はコンテクストや言語表記によって特に指示しない限り本明細書で述べたすべての下位範囲を含むように特定されるものとする。明細書及び特許請求の範囲で用いる成分、反応条件その他の量に言及したすべての数値や表現内容は、すべての事例において用語「約(about)」で修飾されていると理解すべきである。
【0028】
「任意選択の(optional)」や「任意選択において(optionally)」という表現は、続いて記載される事象や状況が生じることも生じないこともあること、続いて特定される材料が存在することも存在しないこともあること、並びにこの記述によってその事象や状況が生じる場合やその材料が存在する場合とその事象や状況が生じない場合やその材料が存在しない場合を含めていることを意味している。
【0029】
本明細書で使用する場合に、用語「comprises」、「comprising」、「includes」、「including」、「has」、「having」、又はこれらに関する別の任意の変形は、非排他的な包含(non−exclusive inclusion)を網羅するように意図したものである。例えば、ある要素のリストを含む処理、方法、物品又は装置は必ずしもそれらの要素のみに限定されないが、明示的に列挙されない要素あるいは処理、方法、物品又は装置に固有の別の要素を含み得る。
【0030】
単数形をした「a」、「an」及び「the」はコンテキストにより明瞭に異なる記述をしない限り複数の言及要素を含むものとする。
【0031】
図1を参照すると、CaSO4、CaCO3、Mg(OH)2、CaF2、SrSO4、BaSO4及びCa3(PO42からなる群から選択されるスケール生成種などのスケール生成種を不動態化するための電気透析デバイス2に関する第1の実施形態は、それぞれアノード21及びカソード22として機能する1対の電極と、カソード22に隣接したカソードセルユニット25と、アノード21に隣接したアノードセルユニット26と、アノードセルユニット26とカソードセルユニット25の間にある1以上の汎用セルユニット23と、アノード21、カソード22、カソードセルユニット25、アノードセルユニット26及び1以上の汎用セルユニット23をその内部に収容するための槽24とを含む。アノード21及びカソード22はそれぞれ、DC電源又はパルス電源のアノード及びカソードに接続される。当業者であれば幾つかの実施形態においてカソード22が任意選択のカソードガード膜を有しかつアノード21が任意選択のアノードガード膜を有することを理解されよう。この任意選択のカソード及びアノードガード膜によってアノード21及びカソード22に隣接してガードチャンネルが形成される。一実施形態ではその任意選択のアノード及びカソードガード膜はカチオン交換膜である。
【0032】
槽24は、電気透析デバイス2を通る供給流の流れを誘導するための1以上の入口240と、1以上の第1の供給経路出口242、1以上の第2の供給経路出口243、第3の供給経路出口241及び第4の供給経路出口244のそれぞれとを含む。カソードセルユニット25は、第3の供給経路235と、1以上の要素からなる第3の膜群231とを有する。アノードセルユニット26は第4の供給経路238からなる。汎用セルユニット23は、第1の供給経路236と、第2の供給経路237と、1以上の要素からなる第1の膜群232と、1以上の要素からなる第2の膜群233と、からなる。
【0033】
カソードセルユニット25において、第3の膜群231はカソード22と隣接する汎用セルユニット23との間に配設される。第3の膜群231及びカソード22は第3の供給経路出口241を有する第3の供給経路235を画成する。アノードセルユニット26において、第4の供給経路出口244を有する第4の供給経路238は隣接する汎用セルユニット23とアノード21の間に画成される。
【0034】
汎用セルユニット23において、第2の膜群233は汎用セルユニット23のアノード側に配置され、第1の膜群232は汎用セルユニット23のカソード側に配置される。第2の膜群233及び第1の膜群232は、第2の供給経路出口242を有する第2の供給経路237を画成する。第1の膜群232と汎用セルユニット23のカソード側にある隣接するセルユニットは、第1の供給経路出口242を有する第1の供給経路236を画成する。したがって汎用セルユニット23は、汎用セルユニット23のアノード側から汎用セルユニット23のカソード側まで順に、第2の膜群233、第2の供給経路237、第1の膜群232及び第1の供給経路236からなる。汎用セルユニット23の幾つかの実施形態では、汎用セルユニット23のカソード側にある隣接するセルユニットはカソードセルユニット25である。別の実施形態では、汎用セルユニット23のカソード側にある隣接するセルユニットは別の汎用セルユニット23である。
【0035】
図1に示した実施形態では、電気透析デバイス2の入口240にX+、Y-、S+及びT-を包含する供給流が提供される。X+及びY-は非スケール生成性のカチオンとアニオンを意味しており、S+は第1のカチオンスケール生成種を意味しており、T-は第1のアニオンスケール生成種を意味している。第3の膜群231の要素はX選択性アニオン交換膜である。第2の膜群233の要素はY選択性アニオン交換膜である。第1の膜群232はT選択性アニオン交換膜要素及びS選択性カチオン交換膜要素からなる。図1では、S選択性カチオン交換膜の前にT選択性アニオン交換膜を配置している。しかしS選択性カチオン交換膜をT選択性アニオン交換膜の前に配置してもその機能は変わらない。したがって、幾つかの実施形態では第1の膜群232内でS選択性カチオン交換膜の前にT選択性アニオン交換膜を配置することが企図される。
【0036】
+及びT-のカチオン及びアニオンスケール生成種が第1の供給経路236及び第2の供給経路237を流れている間に電気透析デバイス2に電源からの直流を通したとき、第1のアニオンスケール生成種(T-)は第1の供給経路236から第2の供給経路237まで第1の膜群232を通して移送され、第1のカチオンスケール生成種(S+)は第2の供給経路237から第1の供給経路236まで第1の膜群232を通して移送される。さらに、アニオン非スケール生成種Y-は、第2の供給経路237から第4の供給経路238まで第2の膜群233を通して移送される。最後に、カチオン非スケール生成種X+は、第1の供給経路236から第3の供給経路235まで第3の膜群231を通して移送される。
【0037】
カチオンスケール生成種は、Mg2+、Ca2+、Sr2+及びBa2+からなる群から選択可能であり、アニオンスケール生成種は、SO42-、HCO3-、CO32-、OH-、F-、PO43-、HPO42-及びH2PO4-からなる群から選択可能であることが企図される。
【0038】
一実施形態では、第1の供給経路出口242の位置で電気透析デバイス2から出る排液中の第1のアニオンスケール生成種の濃度は、電気透析デバイス2の入口位置の供給流242中の第1のアニオンスケール生成種の濃度の約90%未満である。第2の供給経路出口243の位置で電気透析デバイス2から出る排液中の第1のカチオンスケール生成種の濃度は、電気透析デバイス2の入口位置の供給流240中の第1のカチオンスケール生成種の濃度の約90%未満である。
【0039】
別の実施形態では、第1の供給経路出口242の位置で電気透析デバイス2から出る排液中の第1のアニオンスケール生成種の濃度は、電気透析デバイス2の入口位置における供給流中の第1のアニオンスケール生成種の濃度の約50%未満である。第2の供給経路出口243の位置で電気透析デバイス2から出る排液中の第1のカチオンスケール生成種の濃度は、電気透析デバイス2の入口位置における供給流中の第1のカチオンスケール生成種の濃度の約50%未満である。
【0040】
別の実施形態では、第1の供給経路出口242の位置で電気透析デバイス2から出る排液中の第1のアニオンスケール生成種の濃度は、電気透析デバイス2の入口位置における供給流中の第1のアニオンスケール生成種の濃度の約20%未満である。第2の供給経路出口243の位置で電気透析デバイス2から出る排液中の第1のカチオンスケール生成種の濃度は、電気透析デバイス2の入口位置における供給流中の第1のカチオンスケール生成種の濃度の約20%未満である。
【0041】
さらに電気透析デバイス2は、以下の図5に示すような供給流中で2つのスケール生成種を不動態化し得ることが企図される。したがってこうした実施形態では、第1の供給経路出口242の位置で電気透析デバイス2から出る排液中の第2のアニオンスケール生成種の濃度は、電気透析デバイス2の入口位置における供給流242中の第2のアニオンスケール生成種の濃度の約90%未満である。第2の供給経路出口243の位置で電気透析デバイス2から出る排液中の第2のカチオンスケール生成種の濃度は、電気透析デバイス2の入口位置における供給流240中の第2のカチオンスケール生成種の濃度の約90%未満である。
【0042】
電気透析デバイス2が供給流中で2つのスケール生成種を不動態化するような別の実施形態では、第1の供給経路出口242の位置で電気透析デバイス2から出る排液中の第2のアニオンスケール生成種の濃度は、電気透析デバイス2の入口位置における供給流中の第2のアニオンスケール生成種の濃度の約50%未満である。第2の供給経路出口243の位置で電気透析デバイス2から出る排液中の第2のカチオンスケール生成種の濃度は、電気透析デバイス2の入口位置における供給流中の第2のカチオンスケール生成種の濃度の約50%未満である。
【0043】
電気透析デバイス2が供給流中で2つのスケール生成種を不動態化するような別の実施形態では、第1の供給経路出口242の位置で電気透析デバイス2から出る排液中の第2のアニオンスケール生成種の濃度は、電気透析デバイス2の入口位置における供給流中の第2のアニオンスケール生成種の濃度の約20%未満である。第2の供給経路出口243の位置で電気透析デバイス2から出る排液中の第2のカチオンスケール生成種の濃度は、電気透析デバイス2の入口位置における供給流中の第2のカチオンスケール生成種の濃度の約20%未満である。
【0044】
さらに幾つかの実施形態では、排液中のアニオンスケール生成種の濃度が所定のレベル未満になるまで、第1の供給経路236からの排液の全部又は一部を追加の処理のために第1の供給経路236にフィードバックさせることがあることが企図される。さらに幾つかの実施形態では、排液中のカチオンスケール生成種の濃度が所定のレベル未満になるまで、第2の供給経路237からの排液の全部又は一部を追加の処理のために第2の供給経路237にフィードバックさせることがあることが企図される。
【0045】
さらに、第3及び第4の供給経路235及び238からの排液は電気透析デバイス2の供給流240に帰還させるかドレインに送られることが企図される。
【0046】
第1のアニオンスケール生成種(T-)及び第1のカチオンスケール生成種(S+)はこれらが第1の供給経路出口242及び第2の供給経路出口243からの排液の形態で電気透析デバイス2から出るときに別々の供給経路流に配置されることから、これらのスケール生成種が不動態化されかつスケール生成のリスクが現出されることがない。したがって、第1の供給経路出口242及び第2の供給経路出口243からの排液は、排液を別々に高い回収レベルまで処理可能とするように脱塩プラントに提供することが可能である。
【0047】
図2を参照するとこの実施形態では、電気透析デバイス2の入口240にX+、Y-、S+及びT-を包含する供給流が提供される。X+及びY-は非スケール生成種を意味しており、S+は第1のカチオンスケール生成種を意味しており、T−は第1のアニオンスケール生成種を意味している。電気透析デバイス2は、アノードセルユニット26、カソードセルユニット25、第1の汎用セルユニット23及び第2の汎用セルユニット23’を包含することが確認できよう。この実施形態では2つの汎用セルユニット23及び23’を示しているが、別の実施形態は3以上の汎用セルユニットを包含可能であることが企図される。
【0048】
第2の膜群233及び233’の要素はY選択性アニオン交換膜である。第1の膜群232及び232’はT選択性アニオン交換膜及びS選択性カチオン交換膜からなる。第3の膜群231はX選択性カチオン交換膜からなる。
【0049】
+及びT-スケール生成種が第1の供給経路236及び236’並びに第2の供給経路237及び237’を流れている間に電気透析デバイス2に電源からの直流を通したとき、第1のアニオンスケール生成種(T-)は、第1の供給経路236及び236’から第2の供給経路237及び237’まで第1の膜群232及び232’を通って移送され、第1のカチオンスケール生成種(S+)は、第2の供給経路237及び237’から第1の供給経路236及び236’まで第1の膜群232及び232’を通って移送される。さらに、カチオン非スケール生成種X+は、第1の供給経路236から第3の供給経路235まで第3の膜群231を通して移送される。最後にアニオン非スケール生成種Y-は第2の供給経路237及び237’から第1の供給経路236’及び第4の供給経路238まで移送される。
【0050】
第1のアニオンスケール生成種(T-)及び第1のカチオンスケール生成種(S+)はこれらが第1の供給経路出口242及び242’並びに第2の供給経路出口243及び243’からの排液の形態で電気透析デバイス2から出るときに別々の供給経路流に配置されることから、これらのスケール生成種はもはやスケール生成リスクとならない。したがって幾つかの実施形態では、第1の供給経路出口242及び242’並びに第2の供給経路出口243及び243’からの排液は、排液を別々に高い回収レベルまで処理可能とするように脱塩プラントに提供することが可能である。
【0051】
別の実施形態では、第1の供給経路出口(例えば、242及び242’)を第1の合成供給経路出口とするように融合させることが可能であり、第2の供給経路出口(例えば、243及び243’)を第2の合成供給経路出口とするように融合させることが可能である。したがって、第1及び第2の合成供給経路出口からの排液は、排液を別々に高い回収レベルまで処理可能とするように脱塩プラントに提供することが可能である。
【0052】
図3を参照するとこの実施形態では、電気透析デバイス2の入口240にNa+、Cl-、Ca2+及びHCO3-を包含する供給流が提供される。この実施形態では、Ca2+が第1のカチオンスケール生成種でありかつHCO3-が第1のアニオンスケール生成種である。第2の膜群233の要素は1価Cl-選択性アニオン交換膜である。第1の膜群232の要素は、1価HCO3-選択性アニオン交換膜及び2価Ca2+選択性カチオン交換膜である。第3の膜群231は1価Na+選択性アニオン交換膜からなる。
【0053】
スケール生成種が第1の供給経路236及び第2の供給経路237を流れている間に電気透析デバイス2に電源からの直流を通したとき、第1のアニオンスケール生成種(HCO3-)は第1の供給経路236から第2の経路237まで第1の膜群232を通って移送され、第1のカチオンスケール生成種(Ca2+)は、第2の供給経路237から第1の供給経路236まで第1の膜群232を通して移送される。さらに、アニオン非スケール生成種Cl-は、第2の流路237から第4の流路238まで第2の膜群233を通して移送され、カチオン非スケール生成種Na+は、第1の供給経路236から第3の供給経路235まで第3の膜群231を通して移送される。
【0054】
第1のアニオンスケール生成種(HCO3-)及び第1のカチオンスケール生成種(Ca2+)はこれらが第1の供給経路出口242及び第2の供給経路出口243からの排液の形態で電気透析デバイス2から出るときに別々の供給経路流に配置されることから、これらのスケール生成種はもはやスケール生成リスクとならない。したがって、第1の供給経路出口242及び第2の供給経路出口243からの排液は、排液を別々に高い回収レベルまで処理可能とするように脱塩プラントに提供することが可能である。
【0055】
図4を参照するとこの実施形態では、電気透析デバイス2の入口240にNa+、Cl-、Ca2+及びSO42-を包含する供給流が提供される。この実施形態では、Ca2+が第1のカチオンスケール生成種でありかつSO42-が第1のアニオンスケール生成種である。第2の膜群233を成す要素は1価Cl-選択性アニオン交換膜である。第1の膜群232の要素は、2価SO42-選択性アニオン交換膜要素及び2価Ca2+選択性カチオン交換膜要素である。
【0056】
スケール生成種が第1の供給経路236及び第2の供給経路237を流れている間に電気透析デバイス2に電源からの直流を通したとき、第1のアニオンスケール生成種(SO42-)は、第1の供給経路236から第2の供給経路237まで第1の膜群232を通して移送され、第1のカチオンスケール生成種(Ca2+)は、第2の供給経路237から第1の供給経路236まで第1の膜群232を通して移送される。さらに、アニオン非スケール生成種Cl-は、第2の供給経路237から第4の供給経路238まで第2の膜群233を通して移送され、カチオン非スケール生成種Na+は、第1の供給経路236から第3の供給経路235まで第3の膜群231を通して移送される。
【0057】
第1のアニオンスケール生成種(SO42-)及び第1のカチオンスケール生成種(Ca2+)はこれらが第1の供給経路出口242及び第2の供給経路出口243からの排液の形態で電気透析デバイス2から出るときに別々の供給経路流に配置されることから、これらのスケール生成種はもはやスケール生成リスクとならない。したがって、第1の供給経路出口242及び第2の供給経路出口243からの排液は、排液を別々に高い回収まで処理可能とするように脱塩プラントに提供することが可能である。
【0058】
図5を参照するとこの実施形態では、電気透析デバイス2の入口240にNa+、Cl-、Ca2+、HCO3-及びSO42-を包含する供給流が提供される。この実施形態では、Ca2+が第1のカチオンスケール生成種でありかつSO42-が第1のアニオンスケール生成種である。さらに、Ca2+が第2のカチオンスケール生成種でありかつHCO3-が第2のアニオンスケール生成種である。第2の膜群233の要素は1価Cl-選択性アニオン交換膜である。第1の膜群232の要素は、1価HCO3-選択性アニオン交換膜、2価SO42-選択性アニオン交換膜及び2価Ca2+選択性カチオン交換膜である。第3の膜群231の要素は1価Na+選択性カチオン交換膜である。
【0059】
スケール生成種が第1の供給経路236及び第2の供給経路237を流れている間に電気透析デバイス2に電源からの直流を通したとき、第1のアニオンスケール生成種(SO42-)及び第2のアニオンスケール生成種(HCO3-)は、第1の供給経路236から第2の供給経路237まで第1の膜群232を通して移送され、第1及び第2のカチオンスケール生成種(Ca2+)は、第2の供給経路237から第1の供給経路236まで第1の膜群232を通して移送される。さらに、アニオン非スケール生成種Cl-は、第2の供給経路237から第4の供給経路238まで第2の膜群233を通して移送される。さらに、カチオン非スケール生成種Na+は、第1の供給経路236から第3の供給経路まで第3の膜群231を通して移送される。
【0060】
第1のアニオンスケール生成種(SO42-)及び第2のアニオンスケール生成種(HCO3-)並びに第1及び第2のカチオンスケール生成種(Ca2+)はこれらが第1の供給経路出口242及び第2の供給経路出口243からの排液の形態で電気透析デバイス2から出るときに別々の供給経路流に配置されることから、これらのスケール生成種はもはやスケール生成リスクとならない。したがって、第1の供給経路出口242及び第2の供給経路出口243からの排液は、排液を別々に高い回収レベルまで処理可能とするように脱塩プラントに提供することが可能である。
【0061】
したがって別の実施形態では、カチオンスケール生成種は、Mg2+、Ca2+、Sr2+及びBa2+からなる群から選択可能であり、アニオンスケール生成種は、SO42-、HCO3-、CO32-、OH-、F-、PO43-、HPO42-及びH2PO4-からなる群から選択可能であることが企図される。
【0062】
図6を参照すると電気透析デバイス2の幾つかの実施形態は、直列接続とした複数の電気透析槽又は電気段24a、24b及び24cを有し得ることが企図される。こうした実施形態では、1以上の汎用セルユニット23、アノードセルユニット26、カソードセルユニット25、第1、第2及び第3の膜群232、231及び233の要素並びに第1、第2、第3及び第4の供給経路236、237、235及び238が、電気段24a、24b及び24cの間で分割される。各電気段24a、24b及び24cは、アノード21a、21b及び21cと、カソード22a、22b及び22cとを有する。
【0063】
この実施形態では、3つの電気段を図示しているが、当業者によって2以上など別の数の電気段を用いるような選択も可能であることが企図される。さらにこの実施形態では、各電気段が各膜群の1つの膜要素だけを有するように表している。しかし、当業者によって各電気段に別の数の膜要素を用いるような選択も可能である。
【0064】
図7a〜dを参照すると、電気透析デバイス2の幾つかの実施形態は複数の液圧段を有し得ることが企図される。したがってこうした実施形態では、1以上の汎用セルユニット23が複数の液圧段に跨っている。したがって、第1及び第2の膜群232及び233の要素並びに第1及び第2の供給経路236及び237もまた複数の液圧段に跨っている。
【0065】
図7aに示した実施形態では、汎用セルユニット23は第1段の液圧段23a及び第2の液圧段23bに分割され、第1の供給経路236は第1の部分236a及び第2の部分236bに分割され、第2の供給経路237は第1の部分237a及び第2の部分237bに分割され、第1の膜群232は第1の部分232a及び第2の部分232bに分割され、第2の膜群233は第1の部分233a及び第2の部分233bに分割される。汎用セルユニットの第1の液圧段23aは、第1の供給経路の第1の部分236a、第2の供給経路の第1の部分237a、第1の膜群の第1の部分232a及び第2の膜群の第1の部分233aを含む。汎用セルユニットの第2の液圧段23bは、第1の供給経路の第2の部分236b、第2の供給経路の第2の部分237b、第1の膜群の第2の部分232b及び第2の膜群の第2の部分233bを含む。
【0066】
第1の供給経路の第1の部分236aはカソードユニットセル25の第3の膜群231及び第1の膜群の第1の部分232aによって画成され、第1の供給経路の第2の部分236bは第2の膜群の第1の部分233a及び第1の膜群の第2の部分232bによって画成される。第2の供給経路の第1の部分237aは第1の膜群の第1の部分232a及び第2の膜群の第1の部分233aによって画成され、第2の供給経路の第2の部分237bは第1の膜群の第2の部分232b及び第2の膜群の第2の部分233bによって画成される。
【0067】
したがって汎用セルユニットにおいて第1の供給経路236は、第1の膜群232、第2の膜群232及びカソードセルユニット25の第3の膜群231によって少なくとも部分的に画成される。さらに第2の供給経路237は、第1の膜群232及び第2の膜群233によって少なくとも部分的に画成される。
【0068】
カソードセルユニット25において第3の供給経路235は、第3の膜群213及びカソード22によって画成される。アノードセルユニット26において第4の供給経路238は、第2の膜群233の少なくとも一部及びアノード21によって画成される。
【0069】
この実施形態では、電気透析デバイス2の入口240にNa+、Cl-、Ca2+及びHCO3-を含む供給流が提供される。この実施形態では、Ca2+が第1のカチオンスケール生成種でありかつHCO3-が第1のアニオンスケール生成種である。第2の膜群233の要素は1価Cl-選択性アニオン交換膜である。第1の膜群232の要素は1価HCO3-選択性アニオン交換膜及び2価Ca2+選択性カチオン交換膜である。第3の膜群231は1価Na+選択性アニオン交換膜からなる。
【0070】
スケール生成種が第1の供給経路236及び第2の供給経路237を流れている間に電気透析デバイス2に電源から直流を流したとき、第1のアニオンスケール生成種(HCO3-)は第1の供給経路236から第2の経路237まで第1の膜群232を通して移送され、第1のカチオンスケール生成種(Ca2+)は、第2の供給経路237から第1の供給経路236まで第1の膜群232を通して移送される。さらに、アニオン非スケール生成種Cl-は、第2の流路237から第4の流路238まで第2の膜群233を通して移送され、アニオン非スケール生成種Cl-は第2の流路237から第1の流路233まで第2の膜群233を通して移送され、カチオン非スケール生成種Na+は第1の供給経路236から第3の供給経路235まで第3の膜群231を通して移送される。
【0071】
第1のアニオンスケール生成種(HCO3-)及び第1のカチオンスケール生成種(Ca2+)はこれらが第1の供給経路出口242及び第2の供給経路出口243からの排液の形態で電気透析デバイス2から出るときに別々の供給経路流に配置されることから、これらのスケール生成種はもはやスケール生成リスクとならない。したがって、第1の供給経路出口242及び第2の供給経路出口243からの排液は、排液を別々に高い回収レベルまで処理可能とするように脱塩プラントに提供することが可能である。
【0072】
図7bに示した実施形態では、汎用セルユニット23は第1段の液圧段23a、第2の液圧段23b及び第3の液圧段23cに分割される。汎用セルユニットの第1の液圧段23aはカソードセルユニット25と汎用セルユニットの第2の液圧段23bの間に配置される。汎用セルユニットの第3の液圧段23cはアノードセルユニット26と汎用セルユニットの第2の液圧段23bの間に配置される。
【0073】
第1の供給経路236は第1の部分236a、第2の部分236b及び第3の部分236cに分割され、第2の供給経路237は第1の部分237a、第2の部分237b及び第3の部分237cに分割され、第1の膜群232は第1の部分232a、第2の部分232b及び第3の部分232cに分割され、第2の膜群233は第1の部分233a、第2の部分233b及び第3の部分233cに分割される。
【0074】
汎用セルユニットの第1の液圧段23aは、第1の供給経路の第1の部分236a、第2の供給経路の第1の部分237a、第1の膜群の第1の部分232a及び第2の膜群の第1の部分233aを含む。汎用セルユニットの第2の液圧段23bは、第1の供給経路の第2の部分236b、第2の供給経路の第2の部分237b、第1の膜群の第2の部分232b及び第2の膜群の第2の部分233bを含む。汎用セルユニットの第3の液圧段23cは、第1の供給経路の第3の部分236c、第2の供給経路の第3の部分237c、第1の膜群の第3の部分232c及び第2の膜群の第3の部分233cを含む。
【0075】
第1の供給経路の第1の部分236aはカソードユニットセル25の第3の膜群231及び第1の膜群の第1の部分232aによって画成され、第1の供給経路の第2の部分236bは第2の膜群の第1の部分233a及び第1の膜群の第2の部分232bによって画成され、第1の供給経路の第3の部分236cは第2の膜群の第2の部分233b及び第1の膜群の第3の部分232cによって画成される。第2の供給経路の第1の部分237aは第1の膜群の第1の部分232a及び第2の膜群の第1の部分233aによって画成され、第2の供給経路の第2の部分237bは第1の膜群の第2の部分232b及び第2の膜群の第2の部分233bによって画成され、第2の供給経路の第3の部分237cは第1の膜群の第3の部分232c及び第2の膜群の第3の部分233cによって画成される。
【0076】
したがって汎用セルユニットでは第1の供給経路236は、第1の膜群232、第2の膜群232及びカソードセルユニット25の第3の膜群231によって少なくとも部分的に画成される。さらに第2の供給経路237は、第1の膜群232及び第2の膜群233によって少なくとも部分的に画成される。
【0077】
カソードセルユニット25では第3の供給経路235は、第3の膜群213及びカソード22によって画成される。アノードセルユニット26において第4の供給経路238は、第2の膜群233の少なくとも一部及びアノード21によって画成される。
【0078】
この実施形態では、電気透析デバイス2の入口240にNa+、Cl-、Ca2+、HCO3-及びSO42-を含む供給流が提供される。この実施形態では、Ca2+が第1のカチオンスケール生成種でありかつSO42-が第1のアニオンスケール生成種である。さらに、Ca2+は第2のカチオンスケール生成種でありかつHCO3-が第2のアニオンスケール生成種である。第2の膜群233の要素は1価Cl-選択性アニオン交換膜である。第1の膜群232の要素は、1価HCO3-選択性アニオン交換膜、2価SO42-選択性アニオン交換膜及び2価Ca2+選択性カチオン交換膜である。第3の膜群231の要素は1価Na+選択性カチオン交換膜である。
【0079】
スケール生成種が第1の供給経路236及び第2の供給経路237を流れている間に電気透析デバイス2に電源からの直流を通したとき、第1のアニオンスケール生成種(SO42-)及び第2のアニオンスケール生成種(HCO3-)は、第1の供給経路236から第2の供給経路237まで第1の膜群232を通して移送され、第1及び第2のカチオンスケール生成種(Ca2+)は、第2の供給経路237から第1の供給経路236まで第1の膜群232を通して移送される。さらに、アニオン非スケール生成種Cl-は第2の供給経路237から第2及び第4の供給経路237及び238まで第2の膜群233を通して移送される。さらに、カチオン非スケール生成種Na+は、第1の供給経路236から第3の供給経路まで第3の膜群231を通して移送される。
【0080】
第1のアニオンスケール生成種(SO42-)及び第2のアニオンスケール生成種(HCO3-)並びに第1及び第2のカチオンスケール生成種(Ca2+)はこれらが第1の供給経路出口242及び第2の供給経路出口243からの排液の形態で電気透析デバイス2から出るときに別々の供給経路流に配置されることから、これらのスケール生成種はもはやスケール生成リスクとならない。したがって、第1の供給経路出口242及び第2の供給経路出口243からの排液は、排液を別々に高い回収レベルまで処理可能とするように脱塩プラントに提供することが可能である。
【0081】
さらに図7c及び7dに示したように、幾つかの実施形態は2以上の汎用セルユニット23を有することが可能であることが企図される。図7c及び7dに示した実施形態では、第1の汎用セルユニット23は第1の液圧段23a及び第2の液圧段23bに分割される。第1の汎用セルユニット23において、第1の供給経路236は第1の部分236a及び第2の部分236bに分割され、第2の供給経路237は第1の部分237a及び第2の部分237bに分割され、第1の膜群232は第1の部分232a及び第2の部分232bに分割され、第2の膜群233は第1の部分233a及び第2の部分233bに分割される。
【0082】
第1の汎用セルユニットの第1の液圧段23aは、第1の供給経路の第1の部分236a、第2の供給経路の第1の部分237a、第1の膜群の第1の部分232a及び第2の膜群の第1の部分233aを含む。第1の汎用セルユニットの第2の液圧段23bは、第1の供給経路の第2の部分236b、第2の供給経路の第2の部分237b、第1の膜群の第2の部分232b及び第2の膜群の第2の部分233bを含む。
【0083】
第2の汎用セルユニット23’は第1の液圧段23a’及び第2の液圧段23b’に分割される。第2の汎用セルユニット23’では、第1の供給経路236’は第1の部分236a’及び第2の部分236b’に分割され、第2の供給経路237’は第1の部分237a’及び第2の部分237b’に分割され、第1の膜群232’は第1の部分232a’及び第2の部分232b’に分割され、第2の膜群233’は第1の部分233a’及び第2の部分233b’に分割される。
【0084】
第2の汎用セルユニットの第1の液圧段23a’は、第1の供給経路の第1の部分236a’、第2の供給経路の第1の部分237a’、第1の膜群の第1の部分232a’及び第2の膜群の第1の部分233a’を含む。第2の汎用セルユニットの第2の液圧段23b’は、第1の供給経路の第2の部分236b’、第2の供給経路の第2の部分237b’、第1の膜群の第2の部分232b’及び第2の膜群の第2の部分233b’を含む。
【0085】
第1の汎用セルユニット23において、第1の供給経路の第1の部分236aは、カソードユニットセル25の第3の膜群231と第1の汎用セルユニットの第1の液圧段23aに据え付けられた第1の膜群の第1の部分232aとによって画成され、第1の供給経路の第2の部分236bは第1の汎用セルユニットの第2の液圧段23bに据え付けられた第1の膜群の第2の部分232bと第2の汎用セルユニットの第1の段23bに据え付けられた第2の膜群の第1の部分233a’とによって画成される。第2の供給経路の第1の部分237aは、第1の汎用セルユニットの第1の液圧段23aに据え付けられた第1の膜群の第1の部分232aと第1の汎用セルユニットの第1の液圧段23aに据え付けられた第2の膜群の第1の部分233aとによって画成され、第2の供給経路の第2の部分237bは第1の汎用セルユニットの第2の液圧段23bに据え付けられた第1の膜群の第2の部分232bと第1の汎用セルユニットの第2の液圧段23bに据え付けられた第2の膜群の第2の部分233bとによって画成される。
【0086】
したがって第1の汎用セルユニット23において第1の供給経路236は、第1の汎用セルユニット23の第1の膜群232、第2の汎用セルユニット23’の第2の膜群233’、及びカソードセルユニット25の第3の膜群231のうちの1つ又は幾つかの要素によって少なくとも部分的に画成される。さらに第2の供給経路237は、第1の汎用セルユニット23の第1の膜群232及び第2の膜群233のうちの1つ又は幾つかの要素によって少なくとも部分的に画成される。
【0087】
この実施形態では、第1及び第2の汎用セルユニット23及び23’のみを提示している。しかし、これより多くの数の汎用セルユニット(例えば、7個のユニット)を有する実施形態ではその第1の汎用セルユニットの第1の供給経路は、第1の汎用セルユニットの第1の膜群、最高位(例えば、第7)の汎用セルユニットの第2の膜群及びカソードセルユニットの第3の膜群のうちの1つ又は幾つかの要素によって少なくとも部分的に画成されることになることが企図される。
【0088】
第2の汎用セルユニット23’に戻ると、第1の供給経路の第1の部分236a’は、第1の汎用セルユニットの第1の液圧段23aに据え付けられた第2の膜群の第1の部分233aと第2の汎用セルユニットの第1の液圧段23a’に据え付けられた第1の膜群の第1の部分232a’とによって画成される。第1の供給経路の第2の部分236b’は、第1の汎用セルユニットの第2の液圧段23bに据え付けられた第2の膜群の第2の部分233bと第2の汎用セルユニットの第2の液圧段23b’に据え付けられた第1の膜群の第2の部分232b’とによって画成される。第2の供給経路の第1の部分237a’は、第2の汎用セルユニット23a’の第1の液圧段に据え付けられた第1の膜群の第1の部分232a’と第2の汎用セルユニットの第1の液圧段23a’に据え付けられた第2の膜群の第1の部分233a’とによって画成される。第2の供給経路の第2の部分237b’は、第2の汎用セルユニットの第2の液圧段23b’に据え付けられた第1の膜群の第2の部分232b’と第2の汎用セルユニットの第2の液圧段23b’に据え付けられた第2の膜群の第2の部分233b’とによって画成される。
【0089】
したがって第2の汎用セルユニット23’において第1の供給経路236’は、第2の汎用セルユニット23’の第1の膜群232’及び第1の汎用セルユニット23の第2の膜群233の1つ又は幾つかの要素によって少なくとも部分的に画成される。さらに第2の供給経路237’は、第2の汎用セルユニット23’の第1の膜群232’及び第2の膜群233’の1つ又は幾つかの要素によって少なくとも部分的に画成される。
【0090】
カソードセルユニット25において第3の供給経路235は、第3の膜群231及びカソード22によって画成される。アノードセルユニット26において第4の供給経路238は、第2の汎用セルユニット23’の第2の膜群233’及びアノード21によって画成される。3以上の汎用セルユニットを有する実施形態では、第4の供給経路238が最高位の汎用セルユニットの第2の膜群の少なくとも一部及びアノード21によって画成される。
【0091】
この実施形態では、電気透析デバイス2の入口240にNa+、Cl-、Ca2+及びHCO3-を含む供給流が提供される。この実施形態では、Ca2+が第1のカチオンスケール生成種でありかつHCO3-が第1のアニオンスケール生成種である。第2の膜群233及び233’の要素は1価Cl-選択性アニオン交換膜である。第1の膜群232及び232’ の要素はは1価HCO3-選択性アニオン交換膜及び2価Ca2+選択性カチオン交換膜からなる。第3の膜群231は1価Na+選択性アニオン交換膜からなる。
【0092】
スケール生成種が第1の供給経路236及び236’並びに第2の供給経路237及び237’を流れている間に電気透析デバイス2に電源からの直流を通したとき、第1のアニオンスケール生成種(HCO3-)は第1の供給経路236及び236’から第2の経路237及び237’まで第1の膜群232及び232’を通って移送され、第1のカチオンスケール生成種(Ca2+)は、第2の供給経路237及び237’から第1の供給経路236及び236’まで第1の膜群232及び232’を通って移送される。さらにアニオン非スケール生成種(Cl-)は、第2の流路237及び237’から第4の流路238及び238’まで第2の膜群233を通って移送され、アニオン非スケール生成種Cl-は、第2の流路237及び237’から第1の流路236及び236’まで第2の膜群233及び233’を通して移送され、カチオン非スケール生成種Na+は、第1の供給経路236から第3の供給経路235まで第3の膜群231を通して移送される。
【0093】
第1のアニオンスケール生成種(HCO3-)及び第1のカチオンスケール生成種(Ca2+)はこれらが第1の供給経路出口242及び242’並びに第2の供給経路出口243及び243’からの排液の形態で電気透析デバイス2から出るときに別々の供給経路流に配置されることから、これらのスケール生成種はもはやスケール生成リスクとならない。したがって第1の供給経路出口242及び242’並びに第2の供給経路出口243及び243’からの排液は、排液を別々に高い回収レベルまで処理可能とするように脱塩プラントに提供することが可能である。
【0094】
さらに、複数の第1及び第2の供給経路出口を有する電気分解デバイスの幾つかの実施形態では、複数の第1の供給経路出口(例えば、242、242’)を第1の合成供給経路出口342とするように融合させることが可能であり、複数の第2の供給経路出口(例えば、243、243’)を第2の合成供給経路出口343とするように融合させることが可能であることが企図される。複数の第1及び第2の供給経路出口(例えば、242、242’、243、243’)を有する電気分解デバイスの別の実施形態では、これらの出口の分離が保たれている。
【0095】
したがって2以上の汎用セルユニット23を含む実施形態では、第1の汎用セルユニット23の第1の供給経路の第2の部分236bが最高位の汎用セルユニットの第2の膜群の1つ又は幾つかの要素によって少なくとも部分的に画成されることになることが理解されよう。
【0096】
図7cから確認できるように第1の汎用セルユニット23において、第1の供給経路の第1のセクション236aからの排液の全体は第1の供給経路の第2のセクション236bに流入し、第2の供給経路の第1のセクション237aからの排液の全体は第2の供給経路の第2のセクション237bに流入する。さらに第2の汎用セルユニット23’において、第1の供給経路の第1のセクション236a’からの排液の全体は第1の供給経路の第2のセクション236b’に流入し、第2の供給経路の第1のセクション237a’からの排液の全体は第2の供給経路の第2のセクション237b’に流入する。
【0097】
しかし図7dに示した実施形態では、第1及び第2の汎用ユニットの第1の流路の第1の部分236a及び236a’からの排液は第1の流路コンジット246に導かれ、ここで排液が合成されて第1及び第2の汎用ユニットの第2の流路236b及び236b’に伝達される。さらに、第1及び第2の汎用ユニットの第1の流路の第1の部分237a及び237a’からの排液は第1の流路コンジット247に導かれ、ここで排液が合成されて第1及び第2の汎用ユニットの第2の流路237b及び237b’に伝達される。さらに図7a〜dに示した実施形態では、各膜群が有する膜要素が1つのみであるようにして各膜群の第1及び第2の部分を図示している。しかし当業者であれば、各膜群の第1及び第2の部分で別の数の膜要素を使用するような選択が可能である。
【0098】
図8及び9を参照すると幾つかの実施形態では電気透析デバイス2は、多種多様な塩水や汽水源から水の入口240を通して供給流を受け取り得ることが企図される。この供給流は、2以上のスケール生成種からなることが可能である。この供給流は第1及び第2の供給経路に導かれる。電気透析デバイス2は、第2の供給経路から第1の供給経路へカチオンスケール生成種を移動させること並びに第1の供給経路から第2の供給経路までアニオンスケール生成種を移動させることによって2以上のスケール生成種を不動態化する。第1の供給経路からの排液は脱塩プラント取込口に第1の供給経路出口242のうちの1つ又は幾つかから伝達され、第2の供給経路からの排液は脱塩プラント取込口に第2の供給経路出口243のうちの1つ又は幾つかを介して伝達される。第1及び第2の供給経路出口242及び243を複数有する幾つかの実施形態では、複数の第1の供給経路出口(例えば、242、242’)を第1の合成供給経路出口342とするように融合させることが可能であり、複数の第2の供給経路出口(例えば、243、243’)を第2の合成供給経路出口343とするように融合させることが可能であることが企図される。電気透析デバイス2から出た後は、第1の供給経路の内容物は第2の供給経路の内容物と混合されない。第1及び第2の供給経路の内容物は脱塩プラントで別々に高回収まで処理される。
【0099】
さらに本発明はまた、上述した電気透析装置の使用を介してスケール生成種を不動態化するための方法からなることが企図される。一実施形態では本方法は、電気透析デバイスの1対の電極に直流を通しこれにより電極対をそれぞれカソードとアノードとして付勢する工程と、電気透析デバイスの1以上の入口に供給流を供給する工程と、からなる。この1以上の入口は供給流を第1の供給経路及び第2の供給経路に導く。第1の供給経路及び第2の供給経路は第1の膜群によって分離される。この供給流は少なくとも、第1のアニオンスケール生成種、第1のカチオンスケール生成種、第1のアニオン非スケール生成種及び第1のカチオン非スケール生成種からなる。幾つかの実施形態ではその供給流は、追加のスケール生成種及び/又は非スケール生成種からなる。
【0100】
第1及び第2の供給経路に沿って進み下る間に、第1のカチオンスケール生成種は第2の供給経路から、第1の膜群を通って、さらに第1の供給経路まで移送される。さらに第1のアニオンスケール生成種は、第1の供給経路から、第1の膜群を通って、さらに第2の供給経路まで移送される。
【0101】
供給流が複数のアニオン及びカチオンスケール生成種を含むような幾つかの実施形態では、第1及び第2の供給経路に沿って進み下る間に、追加のカチオンスケール生成種は第2の供給経路から、第1の膜群を通って、第1の供給経路まで移送される。さらに追加のアニオンスケール生成種は第1の供給経路から、第1の膜群を通って、さらに第2の供給経路まで移送される。
【0102】
本方法はさらに、第1の供給経路出口を通して第1の供給経路からの排液を除去する工程と、第2の供給経路出口を通して第2の供給経路からの排液を除去する工程と、からなる。一実施形態ではその第1及び第2の供給経路出口は、脱塩ユニットの入口まで排液を導き、ここで第1の供給経路からの排液は第2の供給経路からの排液とは別に処理される。
【0103】
本方法の一実施形態ではそのスケール生成種は、CaSO4、CaCO3、Mg(OH)2、CaF2、SrSO4、BaSO4及びCa3(PO42からなる群から選択される。
【0104】
一実施形態では、第1の供給経路から除去される排液中の第1のアニオンスケール生成種の濃度は、第1の供給経路に入る供給流中の第1のアニオンスケール生成種の濃度の約90%未満である。さらに、第2の供給経路から除去される排液中の第1のカチオンスケール生成種の濃度は、第2の供給経路に入る供給流中の第1のカチオンスケール生成種の濃度の約90%未満である。
【0105】
別の実施形態では、第1の供給経路から除去される排液中の第1のアニオンスケール生成種の濃度は、第1の供給経路に入る供給流中の第1のアニオンスケール生成種の濃度の約50%未満である。さらに、第2の供給経路から除去される排液中の第1のカチオンスケール生成種の濃度は、第2の供給経路に入る供給流中の第1のカチオンスケール生成種の濃度の約50%未満である。
【0106】
追加的な一実施形態では、第1の供給経路から除去される排液中の第1のアニオンスケール生成種の濃度は、第1の供給経路に入る供給流中の第1のアニオンスケール生成種の濃度の約20%未満である。さらに、第2の供給経路から除去される排液中の第1のカチオンスケール生成種の濃度は、第2の供給経路に入る供給流中の第1のカチオンスケール生成種の濃度の約20%未満である。
【0107】
一実施形態では、第1の供給経路出口を通って電気透析デバイスから出る排液中の第1のアニオンスケール生成種の濃度は、電気透析デバイスに入る供給流中の第1のアニオンスケール生成種の濃度の約90%未満である。さらに、第2の供給経路出口を通って電気透析デバイスから出る排液中の第1のカチオンスケール生成種の濃度は、電気透析デバイスに入る供給流中の第1のカチオンスケール生成種の濃度の約90%未満である。
【0108】
別の実施形態では、第1の供給経路出口を通って電気透析デバイスから出る排液中の第1のアニオンスケール生成種の濃度は、電気透析デバイスに入る供給流中の第1のアニオンスケール生成種の濃度の約50%未満である。さらに、第2の供給経路出口を通って電気透析デバイスから出る排液中の第1のカチオンスケール生成種の濃度は、電気透析デバイスに入る供給流中の第1のカチオンスケール生成種の濃度の約50%未満である。
【0109】
追加的な一実施形態では、第1の供給経路出口を通って電気透析デバイスから出る排液中の第1のアニオンスケール生成種の濃度は、電気透析デバイスに入る供給流中の第1のアニオンスケール生成種の濃度の約20%未満である。さらに、第2の供給経路出口を通って電気透析デバイスから出る排液中の第1のカチオンスケール生成種の濃度は、電気透析デバイスに入る供給流中の第1のカチオンスケール生成種の濃度の約20%未満である。
【0110】
一実施形態では、第1の供給経路から除去される排液中の第2のアニオンスケール生成種の濃度は、第1の供給経路に入る供給流中の第2のアニオンスケール生成種の濃度の約90%未満である。さらに、第2の供給経路から除去される排液中の第2のカチオンスケール生成種の濃度は、第2の供給経路に入る供給流中の第2のカチオンスケール生成種の濃度の約90%未満である。
【0111】
別の実施形態では、第1の供給経路から除去される排液中の第2のアニオンスケール生成種の濃度は、第1の供給経路に入る供給流中の第2のアニオンスケール生成種の濃度の約50%未満である。さらに、第2の供給経路から除去される排液中の第2のカチオンスケール生成種の濃度は、第2の供給経路に入る供給流中の第2のカチオンスケール生成種の濃度の約50%未満である。
【0112】
追加的な一実施形態では、第1の供給経路から除去される排液中の第2のアニオンスケール生成種の濃度は、第1の供給経路に入る供給流中の第2のアニオンスケール生成種の濃度の約20%未満である。さらに、第2の供給経路から除去される排液中の第2のカチオンスケール生成種の濃度は、第2の供給経路に入る供給流中の第2のカチオンスケール生成種の濃度の約20%未満である。
【0113】
一実施形態では、第1の供給経路出口を通って電気透析デバイスから出る排液中の第2のアニオンスケール生成種の濃度は、電気透析デバイスに入る供給流中の第2のアニオンスケール生成種の濃度の約90%未満である。さらに、第2の供給経路出口を通って電気透析デバイスから出る排液中の第2のカチオンスケール生成種の濃度は、電気透析デバイスに入る供給流中の第2のカチオンスケール生成種の濃度の約90%未満である。
【0114】
別の実施形態では、第1の供給経路出口を通って電気透析デバイスから出る排液中の第2のアニオンスケール生成種の濃度は、電気透析デバイスに入る供給流中の第2のアニオンスケール生成種の濃度の約50%未満である。さらに、第2の供給経路出口を通って電気透析デバイスから出る排液中の第2のカチオンスケール生成種の濃度は、電気透析デバイスに入る供給流中の第2のカチオンスケール生成種の濃度の約50%未満である。
【0115】
追加的な一実施形態では、第1の供給経路出口を通って電気透析デバイスから出る排液中の第2のアニオンスケール生成種の濃度は、電気透析デバイスに入る供給流中の第2のアニオンスケール生成種の濃度の約20%未満である。さらに、第2の供給経路出口を通って電気透析デバイスから出る排液中の第2のカチオンスケール生成種の濃度は、電気透析デバイスに入る供給流中の第2のカチオンスケール生成種の濃度の約20%未満である。
【0116】
本発明について上述した具体的な実施形態に関連して記載してきたが、多くの代替形態、混合形態、修正形態及び変形形態が当業者にとって明らかなことは自明であろう。したがって、上で示した本発明の好ましい実施形態は単に例証を意図したものであり、限定を意味ではない。本発明の精神及び趣旨を逸脱することなく様々な変更を行うことが可能である。したがって本発明の技術的範囲は、上述した実施形態のみではなく、添付の特許請求の範囲の趣旨域内にあるすべてを含むものである。
【0117】
この記載では、本発明(最適の形態を含む)を開示するため、並びに当業者による任意のデバイスやシステムの製作と使用及び組み込んだ任意の処理の実行を含む本発明の実施を可能にするために例を使用している。本発明の特許性のある範囲は本特許請求の範囲によって規定していると共に、当業者により行われる別の例を含むことができる。これら別の例は、本特許請求の範囲の文字表記と異ならない構造要素を有する場合や、本特許請求の範囲の文字表記と実質的に差がない等価的な構造要素を有する場合があるが、本特許請求の範囲の域内にあるように意図したものである。
【符号の説明】
【0118】
2 電気透析デバイス
21 アノード
21a アノード
21b アノード
21c アノード
22 カソード
22a カソード
22b カソード
22c カソード
23 汎用セルユニット
23’ 第2の汎用セルユニット
24 電気透析槽
24a 電気透析槽
24b 電気透析槽
24c 電気透析槽
25 カソードセルユニット
26 アノードセルユニット
231 第3の膜群
232 第1の膜群
232’ 第1の膜群
232a 第1の膜群の第1の部分
232b 第1の膜群の第2の部分
232c 第1の膜群の第3の部分
233 第2の膜群
233’ 第2の膜群
233a 第2の膜群の第1の部分
233b 第2の膜群の第2の部分
233c 第2の膜群の第3の部分
235 第3の供給経路
236 第1の供給経路
236’ 第1の供給経路
236a 第1の供給経路の第1の部分
236b 第1の供給経路の第2の部分
236c 第1の供給経路の第3の部分
237 第2の供給経路
237’ 第2の供給経路
237a 第2の供給経路の第1の部分
237b 第2の供給経路の第2の部分
237c 第2の供給経路の第3の部分
238 第4の供給経路
240 入口
241 第3の供給経路出口
242 第1の供給経路出口
242’ 第1の供給経路出口
243 第2の供給経路出口
243’ 第2の供給経路出口
244 第4の供給経路出口
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7a
図7b
図7c
図7d
図8
図9