特許第6386393号(P6386393)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6386393
(24)【登録日】2018年8月17日
(45)【発行日】2018年9月5日
(54)【発明の名称】コンクリート打設高さ管理方法
(51)【国際特許分類】
   E04G 21/10 20060101AFI20180827BHJP
   G01C 11/06 20060101ALI20180827BHJP
【FI】
   E04G21/10 ZESW
   G01C11/06
【請求項の数】4
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2015-28357(P2015-28357)
(22)【出願日】2015年2月17日
(65)【公開番号】特開2016-151113(P2016-151113A)
(43)【公開日】2016年8月22日
【審査請求日】2017年9月26日
(73)【特許権者】
【識別番号】000174943
【氏名又は名称】三井住友建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100096611
【弁理士】
【氏名又は名称】宮川 清
(72)【発明者】
【氏名】中村 收志
(72)【発明者】
【氏名】掛橋 孝夫
(72)【発明者】
【氏名】古賀 友一郎
(72)【発明者】
【氏名】藤岡 泰輔
(72)【発明者】
【氏名】細野 宏巳
(72)【発明者】
【氏名】淺井 宏隆
【審査官】 西村 隆
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−019202(JP,A)
【文献】 特開2002−202124(JP,A)
【文献】 特開2003−075150(JP,A)
【文献】 特開2002−030670(JP,A)
【文献】 特開平06−272376(JP,A)
【文献】 特開昭63−300879(JP,A)
【文献】 特開2005−213779(JP,A)
【文献】 特開平04−264585(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2010/0221067(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04G 21/10
E04G 21/00
G01C 11/06
E01C 19/48
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンクリートを打設しようとする領域の上面の周囲に、互いの離隔距離が知られた3点を含む複数の基準点を設置する工程と、
コンクリートを打設したときの上面を撮影することができる位置で、前記基準点の互いに離隔距離が知られた3点を写し込むように、2つの異なる位置から画像を撮影する工程と、
撮影された画像に写し込まれた前記基準点の位置からそれぞれの撮影位置を特定する工程と、
コンクリートを打設して上面を均すとともに、打設したコンクリートの上面を2つの異なる位置から撮影する工程と、
前記基準点又は撮影された画像に写し込まれた高さ指標点と打設するコンクリートの上面の計画仕上げ高さとの位置関係を設定する工程と、
コンクリートを打設した領域の上面の複数の位置について上面の高さを、2つの異なる位置で撮影した前記画像から演算する工程と、
演算された前記上面の高さを前記計画仕上げ高さと対比する工程と、
前記コンクリートを打設する領域について、演算された前記上面の高さが、前記計画仕上げ高さより高い位置と前記計画仕上げ高さより低い位置とを、識別が可能となるように表示手段によって表示する工程と、
前記表示手段の表示にしたがって打設したコンクリートの上面を前記計画仕上げ高さに近づけるように均す工程と、を含むことを特徴とするコンクリート打設高さ管理方法。
【請求項2】
前記表示手段によって表示する工程は、打設したコンクリートの上面に、前記計画仕上げ高さより上面の高さが高い位置と前記計画仕上げ高さより低い位置とを色分けした画像を、該画像上の位置が打設した上記コンクリートの上面の実際の位置と一致するように打設したコンクリートの上面に投影するものであることを特徴とする請求項1に記載のコンクリート打設高さ管理方法。
【請求項3】
前記表示手段によって表示する工程は、打設したコンクリートの上面に、複数色のレーザー光を走査し、予め定められた色のレーザー光は前記計画仕上げ高さより上面の高さが高い位置を走査するときに点灯し、前記計画仕上げ高さより低い位置を走査するときに消灯し、他の色のレーザー光は、前記計画仕上げ高さより上面の高さが高い位置を走査するときに消灯し、前記計画仕上げ高さより低い位置を走査するときに点灯することを特徴とする請求項1に記載のコンクリート打設高さ管理方法。
【請求項4】
前記基準点を設置する工程は、コンクリートを打設する範囲の周囲の複数の位置に基準フレームを配置するものであり、それぞれの基準フレームは、異なる高さの複数の位置に基準点が設けられたものであることを特徴とする請求項1から請求項3までのいずれかに記載のコンクリート打設高さ管理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、構造物等を構築するためのコンクリートを打設するときに、上面を所定の高さに正確に仕上げるための管理方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
コンクリートを打設するときには、多くの場合型枠を組み立て、該型枠内に未硬化のコンクリートを流し込む。そして、上面は鏝等を用いて均し、予め定められた高さとなるように仕上げる。
【0003】
打設したコンクリートの上面を予め定められた高さに仕上げるためには、打設する範囲内に棒状となった打設高さの指標を立設しておき、コンクリートの上面を指標に基づいて均す方法が多く採用される。また、特許文献1には、打設高さの指標をレーザーによって表示する技術が開示されている。この技術は、打設するコンクリートの上面より所定の高さの位置にレーザーを投射し、コンクリートの上面を均す鏝等の工具に照射されるレーザーの位置でコンクリートの上面の高さを判断しながら所定の高さに仕上げるものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001−152668号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来の方法では作業者の技能によって仕上がりに差が生じることがある。特に、コンクリートの打設によって構築しようとする構造部材が橋梁のコンクリート床版であるときや、建築物の床であるときのように、水平方向に広い範囲にコンクリートを打設するときには、上面を凹凸が生じることなく正確な高さに仕上げるために作業者の高い技能が求められる。
【0006】
本発明は、上記のような事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、打設したコンクリートの上面を効率よく正確な高さ仕上げることができるコンクリート打設高さの管理方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、請求項1に係る発明は、 コンクリートを打設しようとする領域の上面の周囲に、互いの離隔距離が知られた3点を含む複数の基準点を設置する工程と、 コンクリートを打設したときの上面を撮影することができる位置で、前記基準点の互いに離隔距離が知られた3点を写し込むように、2つの異なる位置から画像を撮影する工程と、 撮影された画像に写し込まれた前記基準点の位置からそれぞれの撮影位置を特定する工程と、 コンクリートを打設して上面を均すとともに、打設したコンクリートの上面を2つの異なる位置から撮影する工程と、 前記基準点又は撮影された画像に写し込まれた高さ指標点と打設するコンクリートの上面の計画仕上げ高さとの位置関係を設定する工程と、 コンクリートを打設した領域の上面の複数の位置について上面の高さを、2つの異なる位置で撮影した前記画像から演算する工程と、 演算された前記上面の高さを前記計画仕上げ高さと対比する工程と、 前記コンクリートを打設する領域について、演算された前記上面の高さが、前記計画仕上げ高さより高い位置と前記計画仕上げ高さより低い位置とを、識別が可能となるように表示手段によって表示する工程と、 前記表示手段の表示にしたがって打設したコンクリートの上面を前記計画仕上げ高さに近づけるように均す工程と、を含むコンクリート打設高さ管理方法を提供する。
【0008】
この方法では、基準点が写し込まれた画像と3つ以上の基準点の相互間の位置関係から、これらの基準点と撮影位置との相対的な位置関係が特定される。そして、2つの画像から3次元写真計測の手法により、基準点と打設したコンクリートの上面の複数の位置との相対的な位置関係が特定される。したがって、コンクリートの上面の計画仕上げ高さと基準点又は撮影した画像内に写し込まれた点との位置関係が設定されることにより、2つの画像から得られたコンクリートの上面の位置と計画仕上げ高さとの位置関係を特定することが可能となる。これらを対比して、コンクリートを均す作業を行っている時に、コンクリートの上面の高さが計画仕上げ高さより高い範囲又は低い範囲を表示手段で表示することにより、上面を均している作業者は表示された画像に基づいて上面の高さを修正して、計画仕上げ高さに近づけることが可能となる。
【0009】
請求項2に係る発明は、請求項1に記載のコンクリート打設高さの管理方法において、 前記表示手段によって表示する工程は、打設したコンクリートの上面に、前記計画仕上げ高さより上面の高さが高い位置と前記計画仕上げ高さより低い位置とを色分けした画像を、該画像上の位置が打設した上記コンクリートの上面の実際の位置と一致するように打設したコンクリートの上面に投影するものとする。
【0010】
この方法では、コンクリートの上面の高さが計画仕上げ高さより高い範囲又は低い範囲が実際に均しているコンクリートの上面に表示され、作業者はこの表示を見ながら表示された位置の高さを修正することができる。したがって効率よくコンクリートの上面を正確な高さに仕上げることができる。
【0011】
請求項3に係る発明は、請求項1に記載のコンクリート打設高さの管理方法において、 前記表示手段によって表示する工程は、打設したコンクリートの上面に、複数色のレーザー光を走査し、予め定められた色のレーザー光は前記計画仕上げ高さより上面の高さが高い位置を走査するときに点灯し、前記計画仕上げ高さより低い位置を走査するときに消灯し、他の色のレーザー光は、前記計画仕上げ高さより上面の高さが高い位置を走査するときに消灯し、前記計画仕上げ高さより低い位置を走査するときに点灯するものとする。
【0012】
この方法では、請求項2に係る発明と同様に効率よくコンクリートの上面を正確な高さに仕上げることができるとともに、周囲が明るい状態であっても表示を明確に認識することができる。
【0013】
請求項4に係る発明は、請求項1から請求項3までのいずれかに記載のコンクリート打設高さの管理方法において、 前記基準点を設置する工程は、コンクリートを打設する範囲の周囲の複数の位置に基準フレームを配置するものであり、それぞれの基準フレームは、異なる高さの複数の位置に基準点が設けられたものとする。
【0014】
この方法では、基準点を簡単に設置することができるとともに、撮影位置の特定及び2つの画像から演算するコンクリートの上面の高さを正確に演算することが可能となる。
【発明の効果】
【0015】
以上説明したように、本発明に係るコンクリート打設高さの管理方法では、打設したコンクリートの上面を効率よく正確な高さ仕上げることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明に係るコンクリート打設高さの管理方法を実施するための機材及びその配置の例を示す概略斜視図である。
図2】本発明に係るコンクリート打設高さの管理方法を実施するために使用することができる基準フレームの正面図、側面図、上面図及び底面図である。
図3図2に示す基準フレーム及び高さ指標点を設置した状態を示す概略斜視図である。
図4】2つの異なる位置で撮影された2つの画像からこれらの画像に写し込まれた測定対象の位置を特定する原理を示す概略図である。
図5】2つの異なる位置で撮影された2つの画像上で同一点を特定する操作の概略を示す図である。
図6】打設したコンクリートの高さと計画仕上げ高さとを対比した画像の例を示す図である。
図7】コンクリートの橋梁を片持ち施工するときに、本発明に係るコンクリート打設高さの管理方法を適用した例を示す概略図である。
図8】コンクリートを打設する範囲の上面が広い場合に採用することができるデジタルカメラ及び基準フレームの配置例を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態を図に基づいて説明する。
図1は、本発明に係るコンクリート打設高さの管理方法を実施するときの機材及びその配置の例を示す概略斜視図である。
この方法は、コンクリートを所定の範囲Aに打設して上面をほぼ平坦に仕上げるときに好適に採用することができるものであって、コンクリートを打設しようとする範囲Aの周囲に設置する基準フレーム1と、打設するコンクリートの上面を撮影する2つのデジタルカメラ2a,2bと、上記デジタルカメラで撮影された画像のデータが入力されるコンピュータ3と、打設するコンクリートの上面の高さについての情報を表示する表示装置4と、打設するコンクリートの上面の高さについての情報を実際に打設しているコンクリートの上面の対応する位置に投影する投影装置5と、を使用するものである。
【0018】
上記基準フレーム1は、図2に示すように、帯状に長い鋼板材を無端状に接続してほぼ直角二等辺三角形の枠体としたものである。直角となった頂角1aの両側の辺1b,1cは、この基準フレーム1を型枠や既に打設して硬化したコンクリートに固定するため固定辺となっており、ボルト等を使用して固定することができるようにボルト孔1dが形成されている。また、直角となった頂角1aと対峙する斜辺1eの外側面には3つの基準点1f−1,1f−2,1f−3が設けられている。それぞれの基準点1fは、2つの三角形を頂角が突き合わされるように描いたものであり、描かれた上記頂角の位置を撮影された画像内で正確に特定することができるものとなっている。そして上記3つの基準点1f−1,1f−2,1f−3は、互いの離隔距離が正確に測定されており、直角となった頂角1aに隣接する辺1bをほぼ水平な面に当接して固定されたときに、固定された面から各基準点1f−1,1f−2,1f−3までの高さ方向の位置も正確に計測されて既知となっている。
【0019】
上記デジタルカメラ2a,2bは、レンズの歪みが少なく、レンズの中心を通過した光線が撮像素子の受光面に正確に結像するものが望ましく、撮像素子で検知された画像データをコンピュータに速やかに出力することができるものを用いる。また、レンズの焦点距離が正確に計測されているものであって、光軸と受光面が直交し、光軸の受光面での位置が正確に計測されているものを用いるのがよい。
【0020】
上記コンピュータ3は、2つのデジタルカメラで撮影された画像データが入力され、これらの画像データと基準点に関するデータからデジタルカメラによる撮影位置を演算するとともに、2つの画像から打設したコンクリートの表面の位置を演算するものである。そして、この結果を表示装置4及び投影装置5に対して出力することができるものとなっている。また、コンクリートを打設する位置付近に設置することができるものが望ましく、パーソナルコンピュータを用いることができる、
上記表示装置4は、上記コンピュータ3で演算された結果を色分けされた図として表示することができるものであり、パーソナルコンピュータとともに広く用いられるディスプレイを用いることができる。また、上記投影装置5は、コンピュータから出力される画像データによって画像をスクリーン等に投影するプロジェクタを用いることができる。
【0021】
次に、上記デジタルカメラ2a,2b、基準フレーム1等を用いて本発明に係るコンクリート打設高さの管理方法を実施するときの工程について説明する。
コンクリートを打設するための型枠が組み立てられ、埋め込む鉄筋等が配置されると、コンクリートを打設する領域の上方に2つのデジタルカメラ2a,2bを設置する。これらのデジタルカメラ2a,2bは、図1に示すように、打設するコンクリートの上面を上方からほぼ鉛直下方に向けて撮影するように設置する。2つのデジタルカメラ2a,2bはほぼ同じ高さに設定し、相互の間隔は0.5m〜1.5m程度に設定することが望ましい。また、デジタルカメラ2a,2bを設置する高さは、打設するコンクリートの上面より3m〜5m程度とすることができる。
打設するコンクリートの上方には投影装置であるプロジェクタ5を設置する。プロジェクタ5は、打設するコンクリートの上面に画像を投影することができる位置及び高さに設置する。
【0022】
コンクリートを打設する範囲Aの周囲には、図1に示すように、複数の基準点フレーム1を設置する。本実施の形態では矩形となった領域の外側で四つの隅角部付近にそれぞれ設置している。そして、各基準フレーム1の一つの基準点、例えば最も下方にある第1基準点1f−1について各基準フレーム間の距離を計測しておくのが望ましい。この計測値は、デジタルカメラ2a,2bによる撮影位置を演算するとき、デジタルカメラ2a,2bによって撮影された画像から写し込まれた点の位置を演算するときに用いることによって演算値の精度を上げることができる。
【0023】
この基準フレーム1は、図3に示すように、型枠7又は既に打設されて硬化したコンクリート8に固定することができ、高さを正確に設定して固定するのが望ましい。例えば基準フレーム1の固定辺1bを打設しようとするコンクリートの上面の高さに合わせて設置する。このように設置すると、基準フレーム1の固定辺1bと斜辺1eに描かれた基準点1fの位置関係は予め測定されており、打設しようとするコンクリートの上面の計画仕上げ高さと基準点1fとの相対的な位置関係が設定される。これにより、撮影された画像内に写し込まれた点の位置と、設定されたコンクリートの計画仕上げ面との相対的な位置関係を演算することが可能となる。
【0024】
上記基準点1と打設するコンクリートの計画仕上げ面との位置関係を明確にして基準フレーム1を固定することが難しいときには、図3に示すように基準フレーム1とは別に3つ以上の高さ指標点6を設けることができる。この高さ指標点6は、デジタルカメラ2a,2bで撮影された画像上で容易に特定することができる点として棒状の部材に付されたものであり、この高さ指標点6が打設するコンクリートの計画仕上げ面と一致するように設置する。この高さ指標点6を二つのデジタルカメラ2a,2bで撮影された画像内に写し込むことにより、これらの高さ指標点6を含む平面を計画仕上げ面として特定することができ、画像内で特定された点との位置関係を演算することができる。
【0025】
基準フレーム1の設置又は基準フレーム1と高さ指標点6との設置が終了すると、コンクリートを打設し、鏝等を用いて上面を均すとともに2つのデジタルカメラ2a,2bで打設しているコンクリートの上面を基準フレーム1及び高さ指標点6とともに撮影する。撮影された画像データはコンピュータ3に入力され、画像に写し込まれた基準点の位置からデジタルカメラ2a,2bによる撮影位置を演算し、さらに2つの画像上で写し込まれた同一の点を特定し、それぞれの画像に写し込まれている位置から3次元空間内の位置を演算する。
これらの演算方法は、写真測量又は写真計測として知られている方法を用いるものであり、相互間の距離が知られた基準点が写し込まれた画像から、画像上でその基準点が写し込まれている位置に基づいてデジタルカメラによる撮影位置を特定する。そして、2つの画像上の同一点を特定し、図4に示すように、この点がそれぞれの画像上で写し込まれている位置から3次元空間における位置を特定するものである。
このとき、デジタルカメラによる撮影位置、基準点の位置は、図4に示すように撮影位置に基づいて設定された座標系において3次元座標を特定することができる。また、後述するように測定対象に基づいて設定された座標系に変換した3次元座標で表示することもできる
なお、デジタルカメラによる撮影位置を特定する工程は、コンクリートを打設する前に予め行っておいてもよい。
【0026】
撮影された2つの画像上で同一点を特定する工程は、例えば次のように行うことができる。
2つの画像を解像度が低い状態として一方から一部の範囲を取り出し、これをテンプレートT1として、図5(a)に示すように他方の画像P上を走査する。そして、順次位置を移動させながら画像の相関を演算し、相関値がピークとなった位置を2つの画像の同一点とする。次に、画像の解像度を上げ、先にテンプレートT1として取り出した範囲内からさらに一部を取り出してテンプレートT2とし、解像度が低い状態で相関値がピークとなった範囲t1内で、図5(b)に示すように他方の画像上を走査する。そして、順次位置を移動させながら画像の相関を演算し、相関値がピークとなった位置を2つの画像の同一点とする。このような操作を繰り返して打設したコンクリートの上面のほぼ全域について所定の大きさのブロック毎に2つの画像上の同一点を特定する。
上記テンプレートTは、図5(d)に示すように撮影する角度に応じた補正を行うのが望ましい。2つの異なる位置から撮影した画像は、撮影する角度の違いによって同一の部分であっても形状がひずんだ状態で撮影される。このため、撮影されたままの画像から一部を取り出してテンプレートT0とすると、相関値が小さくなる。したがって、撮影した角度に応じた補正を行うものである。
また、上記走査によって2つの画像から同一点を特定するのを容易とするために、2つの画像を撮影するときにコンクリートの上面に光を照射してもよい。例えば格子状の光を照射して撮影することにより、各位置の特徴が明確となり、同一点の特定が容易となる。
【0027】
上記のように2つの画像上で同一点が特定されると、この点が2つの画像に写し込まれた位置から3次元空間内の位置を特定する。そして、打設されたコンクリートの上面の位置が特定されると、これを設定されている計画仕上げ面つまり上面の計画仕上げ高さと対比して位置関係を演算する。このとき、位置関係が明確となる座標系を設定するのが望ましい。例えば設定された計画仕上げ面をXY平面とし、これに直交する軸をZ軸とする座標系を設定する。この座標系では、2つの画像から特定されたコンクリートの上面の位置を、計画仕上げ面より高いときにZ方向の正の値でその差を示し、計画仕上げ面より低いときにはZ方向の負の値で計画仕上げ面より低い量を示すことができる。このように対比された値を、打設するコンクリートの上面を示す図上に表示する。
【0028】
図6は、2つの画像から特定されたコンクリートの上面の位置と計画仕上げ面とを対比し、その高さの差を色分けして表示する図の一例を示すものである。この図においては計画仕上げ面より高い範囲及び低い範囲、その高さの差の程度が色分けによって表示されており、この図を表示装置4に表示することによって、コンクリートを打設して均す作業を行っているときにコンクリートの上面の高さを把握することができる。
また、この図を投影装置5によって打設して均しているコンクリートの上面に、位置を対応させて投影することによって、実際に均しているコンクリートの上面において、計画仕上げ面より高い位置と低い位置を均している作業者が認識することができる。したがって、作業者は、高い位置では均しているコンクリートの上面が低くなるように、低い位置では高くなるように修正しながら均すことができる。
【0029】
上記投影装置5は、本実施の形態でプレジェクタを用いているが、コンクリートの打設作業を行う位置の周囲が明るいときには、投影された画像が見えにくい場合がある。このようなときには周囲を囲って明るさを制限し、明瞭な画像を投影することができる。また、投影装置として、プロジェクタに代えてレーザー照射装置を用いることもできる。このレーザー照射装置は、複数色のレーザー光を打設するコンクリートの上面の全域に走査できるものとし、高速で走査しながらレーザー光を点滅させる。そして、撮影された二つの画像から特定されたコンクリートの上面の高さに応じて、走査中に各レーザー光を点灯させる領域を制御する。これにより、計画仕上げ面より高い範囲と低い範囲とに異なる色のレーザー光を照射するとともに、さらにそれぞれの範囲で計画仕上げ面との高さの差が大きい範囲と小さい範囲とでも異なる色のレーザー光を照射することができる。したがって、作業者はこれを見てコンクリートの上面の高さを修正することができる。
【0030】
図7は、本発明に係るコンクリート打設高さの管理方法を、プレストレストコンクリートの橋梁を片持ち施工するときに適用した例を示す概略側面図である。
この橋梁の構築方法は、架設中の橋桁11をコンクリートの橋脚12から片持ち状に支持し、順次ブロックごとに張り出すように構築してゆくものである。ブロックごとに橋桁を構築する作業は、橋桁11の既に構築された部分上に移動吊り支保工13を据え付け、これによって型枠14及び足場15を支持してコンクリートを打設するものである。各ブロックのコンクリートの打設高さを管理するために、デジタルカメラ22及び投影装置25は、既に構築された橋桁11から張り出すように支持された移動吊り支保工の本体枠13aによって支持し、コンクリートを打設するブロック16の上方から下方へ向けて設置することができる。
【0031】
コンクリートを打設する範囲が大きく、2つのデジタルカメラすなわち一組のデジタルカメラでは全域を撮影することができないときには、複数組のデジタルカメラと投影装置を設置し、複数の領域に分けてそれぞれで打設高さを管理することができる。また、コンクリートを打設する範囲の上面を複数の領域に分けて撮影するときにも、全域の連続した画像を表示することができる。このときには、図8に示すように隣り合う領域に設定したデジタルカメラ32a,32b,32c,32dで共通の基準フレーム31を撮影し、それぞれの領域に設けたデジタルカメラの相対的な位置を特定する。これにより、それぞれのデジタルカメラで撮影された画像から得られるデータすなわち打設したコンクリートの上面の高さデータを複数の領域に連続したものとすることができる。
【0032】
また、コンクリートを打設するときの計画仕上げ面の高さは、一つの平面として設定される場合に限らず、複数の面の組み合わせとして設定することもできる。例えば、上記片持ち施工される橋桁11の上面が幅方向の中央部で高く、両側縁に向かって下り勾配となったいわゆる拝み勾配であるときには、それぞれの面の高さにしたがって図3に示すような高さ指標点6を設ける。これらを写し込んだ画像から、それぞれの計画仕上げ面と画像に写し込まれた多数の点との相対位置を特定し、打設中のコンクリートの高さを計画仕上げ面と対比して表示することができる。
【0033】
本発明に係るコンクリート打設高さの管理方法は、以上に説明した片持ち施工される橋桁に適用される他、先に形成されたコンクリート又は鋼の橋桁上にコンクリートの床版を構築する場合、建築物の床のコンクリートを打設する場合、舗装のコンクリートを打設する場合等、広い範囲にコンクリートを正確に均す必要があるときに好適に適用することができる。また、その他使用する機材や操作についても本発明の範囲内において、適宜に変更を加えて実施することができ、基準フレームの形態も図2に示すものに限定されるものではない。
【符号の説明】
【0034】
1:基準フレーム, 1a:基準フレームの直角となった頂角, 1b,1c:直角となった頂角に隣接する辺, 1d:ボルト孔, 1e:基準フレームの斜辺, 1f−1,1f−2,1f−3:基準点, 2:デジタルカメラ, 3:コンピュータ, 4:表示装置(ディスプレイ), 5:投影装置(プロジェクタ), 6:高さ指標点, 7:型枠, 8:硬化したコンクリート,
11:橋桁, 12:橋脚, 13:移動吊り支保工, 14:型枠, 15:足場, 16:コンクリートを打設するブロック,
22:デジタルカメラ, 25:投影装置,
31:基準フレーム, 32:デジタルカメラ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8