特許第6386395号(P6386395)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6386395
(24)【登録日】2018年8月17日
(45)【発行日】2018年9月5日
(54)【発明の名称】コンポジット誘電体材料
(51)【国際特許分類】
   H01B 3/00 20060101AFI20180827BHJP
   H01B 3/12 20060101ALI20180827BHJP
   H01B 3/44 20060101ALI20180827BHJP
   H01G 4/32 20060101ALI20180827BHJP
   C08L 27/16 20060101ALI20180827BHJP
   C08K 3/24 20060101ALI20180827BHJP
【FI】
   H01B3/00 A
   H01B3/12 303
   H01B3/44 C
   H01G4/32 511L
   C08L27/16
   C08K3/24
【請求項の数】1
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2015-30021(P2015-30021)
(22)【出願日】2015年2月18日
(65)【公開番号】特開2016-152175(P2016-152175A)
(43)【公開日】2016年8月22日
【審査請求日】2017年4月13日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】399030060
【氏名又は名称】学校法人 関西大学
(74)【代理人】
【識別番号】100091096
【弁理士】
【氏名又は名称】平木 祐輔
(74)【代理人】
【識別番号】100118773
【弁理士】
【氏名又は名称】藤田 節
(74)【代理人】
【識別番号】100101904
【弁理士】
【氏名又は名称】島村 直己
(74)【代理人】
【識別番号】100176197
【弁理士】
【氏名又は名称】平松 千春
(72)【発明者】
【氏名】桑野 一幸
(72)【発明者】
【氏名】垣花 大
(72)【発明者】
【氏名】長谷 康平
(72)【発明者】
【氏名】濟藤 孝博
(72)【発明者】
【氏名】山本 秀樹
【審査官】 牟田 博一
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−188667(JP,A)
【文献】 特開2015−138904(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01B 3/00、3/12、3/44
H01G 4/18、4/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
チタン酸バリウム又は3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン及びビニルトリメトキシシランから選択されるシラン系カップリング剤で表面処理されたチタン酸バリウムと、フッ化ビニリデン系ポリマーと、炭酸プロピレン及びN,N−ジメチルホルムアミドからなる溶媒とからなるコンポジット誘電体材料であって、炭酸プロピレンのN,N−ジメチルホルムアミドに対する体積比が1/11〜1/3である、コンポジット誘電体材料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はコンポジット誘電体材料に関する。
【背景技術】
【0002】
フィルムコンデンサは、電子機器、電気機器、産業機器、自動車等の部品に広く用いられている。近年、電子機器等の小型化、軽量化、高性能化にともなって、これらの部品についても小型化、大容量化のニーズが高まっており、フィルムコンデンサについても、誘電率の高い小型のものが望まれている。
【0003】
誘電率の高い小型のフィルムコンデンサとして、例えば、誘電性無機粒子とポリマーを複合化し、フィルム化した誘電体フィルムを用いることが知られている。ここで、誘電体フィルムに用いられる誘電性無機粒子の一つとして、チタン酸バリウムが知られている。また、誘電体フィルムに用いられるポリマーの一つとして、フッ化ビニリデン系ポリマーが知られている。
【0004】
チタン酸バリウム及びフッ化ビニリデン系ポリマーを用いた誘電体フィルムとして、例えば、特許文献1には、(A)フッ化ビニリデン系ポリマー、(B)チタン酸バリウム系酸化物粒子及び/又はチタン酸ジルコン酸鉛系酸化物粒子、及び(C)カップリング剤、界面活性剤又はエポキシ基含有化合物の少なくとも1種からなる親和性向上剤を含んでなり、フッ化ビニリデン系ポリマー(A)100質量部に対して、チタン酸バリウム系酸化物粒子及び/又はチタン酸ジルコン酸鉛系酸化物粒子(B)を10〜500質量部、並びに親和性向上剤(C)を0.01〜30質量部含む高誘電性フィルムが記載されている。
【0005】
また、特許文献2は、無機強誘電体粒子を有機高分子に分散させてなる複合誘電体において、上記無機強誘電体粒子の表面に上記分散用の有機高分子と同じ成分の有機高分子を含む被膜を形成したことを特徴とする複合誘電体に関し、無機強誘電体粒子としてチタン酸バリウムの粒子を用い、分散用の有機高分子としてポリフッ化ビニリデンを用いることが記載されている。
【0006】
また、特許文献3は、有機ポリマーに平均粒径が90nm以下の実質的に球形の無機酸化物粒子を分散した有機・無機酸化物混合体薄膜であって、該薄膜の比誘電率が10以上であり、かつ厚さが900nm以下であることを特徴とする有機・無機酸化物混合体薄膜に関し、無機酸化物としてチタン酸バリウムを用い、有機物としてフッ素含有ポリマーを用いることが記載されている。
【0007】
上記の誘電体フィルムは、誘電性無機粒子及びポリマー等のフィルム成分に加えて溶媒を含む誘電体材料から得ることができる。しかし、従来のチタン酸バリウム及びフッ化ビニリデン系ポリマーを用いた誘電体フィルムでは、該フィルムを得るための誘電体材料において、チタン酸バリウム及びフッ化ビニリデン系ポリマーの両方を溶媒に十分に分散させることができず、得られる誘電体フィルム中のこれらの成分の分散性が十分ではないことがあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】国際公開第2007/088924号
【特許文献2】特開昭63−127515号公報
【特許文献3】特開2005−056935号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上記のように、チタン酸バリウム及びフッ化ビニリデン系ポリマーを用いた誘電体フィルムを得るための従来の誘電体材料には、チタン酸バリウム及びフッ化ビニリデン系ポリマーの溶媒中の分散性について改善の余地がある。
【0010】
それ故、本発明は、チタン酸バリウム及びフッ化ビニリデン系ポリマーの溶媒中の分散性が向上した誘電体材料を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、上記課題を解決するための手段を種々検討した結果、溶媒として、炭酸プロピレン及びN,N−ジメチルホルムアミドを特定の体積比で用いることにより、チタン酸バリウム及びフッ化ビニリデン系ポリマーの溶媒中の分散性が向上することを見出し、本発明を完成した。
【0012】
すなわち、本発明の要旨は以下の通りである。
(1)チタン酸バリウムを含む高誘電材料と、フッ化ビニリデン系ポリマーを含む誘電体基材と、炭酸プロピレン及びN,N−ジメチルホルムアミドを含む溶媒とを含むコンポジット誘電体材料であって、炭酸プロピレンのN,N−ジメチルホルムアミドに対する体積比が1/11〜1/3である、コンポジット誘電体材料。
【発明の効果】
【0013】
本発明により、チタン酸バリウム及びフッ化ビニリデン系ポリマーの溶媒中の分散性が向上した誘電体材料を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1図1は、実施例1における、チタン酸バリウム及びフッ化ビニリデン系ポリマーに対する溶媒の相対エネルギー差を示す図である。
図2図2は、実施例2における、チタン酸バリウム及びフッ化ビニリデン系ポリマーに対する溶媒の相対エネルギー差を示す図である。
図3図3は、実施例3における、チタン酸バリウム及びフッ化ビニリデン系ポリマーに対する溶媒の相対エネルギー差を示す図である。
図4図4は、実施例4における、チタン酸バリウム及びフッ化ビニリデン系ポリマーに対する溶媒の相対エネルギー差を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の好ましい実施形態について詳細に説明する。
本発明は、高誘電材料と、誘電体基材と、溶媒とを含むコンポジット誘電体材料に関し、より具体的には、コンポジット誘電体材料は、チタン酸バリウムを含む高誘電材料と、フッ化ビニリデン系ポリマーを含む誘電体基材と、炭酸プロピレン及びN,N−ジメチルホルムアミドを含む溶媒とを含む。
【0016】
高誘電材料はチタン酸バリウムを含む。チタン酸バリウムの平均粒径は、特に限定されずに、例えば、0.01μm〜5μmであり、製造安定性や分散性の観点から、好ましくは、0.05μm〜2μmである。チタン酸バリウムの平均粒径は、例えば、レーザー回折散乱法によって測定することができる。
【0017】
チタン酸バリウムの形状は、球形、楕円形、三角状、長方形状、針状等のいずれでもよく、それらを組み合わせて用いることもできる。
【0018】
チタン酸バリウムとして、カップリング剤で表面処理を行って、フッ化ビニリデン系ポリマーとの親和性を向上させたものを用いてもよい。カップリング剤としては、シラン系カップリング剤が好ましい。シラン系カップリング剤は、チタン酸バリウム及びフッ化ビニリデン系ポリマーの両方に対する親和性が良好である。
【0019】
シラン系カップリング剤としては、特に限定されずに、モノアルコキシシラン、ジアルコキシシラン、トリアルコキシシラン、ダイポーダルアルコキシシラン等が挙げられる。シラン系カップリング剤は、高分子型又は低分子型のいずれも用いることができるが、チタン酸バリウムとの親和性の観点から低分子型のものが好ましい。好ましいシラン系カップリング剤としては、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン及びビニルトリメトキシシランが挙げられる。これらのシラン系カップリング剤は、チタン酸バリウム及びフッ化ビニリデン系ポリマーの溶媒に対する溶解性又は分散性に悪影響を与えずにこれらの親和性を向上させることができる。
【0020】
カップリング剤で表面処理を行ったチタン酸バリウムを用いる場合、カップリング剤は、フッ化ビニリデン系ポリマーに対して、通常、0.01〜30重量%、好ましくは、0.1〜25重量%、より好ましくは、1〜20重量%の量で用いられる。
【0021】
高誘電材料は、チタン酸バリウム及びフッ化ビニリデン系ポリマーの溶媒に対する溶解性又は分散性に影響を及ぼさない限りにおいて、他の誘電性無機粒子を含んでいてもよい。
【0022】
他の誘電性無機粒子としては、特に限定されずに、例えば、チタン酸亜鉛、チタン酸ストロンチウム、チタン酸カルシウム、チタン酸マグネシウム、チタン酸鉛、酸化チタン、アンチモン酸バリウム、アンチモン酸マグネシウム、アンチモン酸ストロンチウム、アンチモン酸カルシウム、アンチモン酸鉛、スズ酸バリウム、スズ酸ストロンチウム等が挙げられる。高誘電材料中の他の誘電性無機粒子の含有量は、通常、10重量%以下、好ましくは、5重量%以下の量である。高誘電材料は、好ましくは、他の誘電性無機粒子を含まない。
【0023】
誘電体基材はフッ化ビニリデン系ポリマーを含む。フッ化ビニリデン系ポリマーとしては、フッ化ビニリデンのホモポリマー(ポリフッ化ビニリデン)、又はフッ化ビニリデンと共重合可能な他のモノマーとのコポリマーのいずれも用いることができるが、フッ化ビニリデンのホモポリマーが好ましい。
【0024】
フッ化ビニリデンと共重合可能な他のモノマーとしては、例えば、テトラフルオロエチレン、クロロトリフルオロエチレン、トリフルオロエチレン、モノフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロピレン、パーフルオロアルキルビニルエーテル等の含フッ素オレフィン類、含フッ素アクリレート、官能基含有含フッ素モノマー等が挙げられる。フッ化ビニリデンと共重合可能な他のモノマーの割合は、特に限定されずに、通常、50モル%以下であり、高い誘電率及び良好な溶解性の観点から、好ましくは、40モル%以下である。
【0025】
誘電体基材は、チタン酸バリウム及びフッ化ビニリデン系ポリマーの溶媒に対する溶解性又は分散性に影響を及ぼさない限りにおいて、他のポリマーを含んでいてもよい。他のポリマーとしては、特に限定されずに、例えば、ポリカーボネート、ポリエステル、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、シリコーン樹脂、ポリエーテル、ポリ酢酸ビニル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ(メタ)アクリレート、エポキシ樹脂、ポリフェニレンオキシド、ポリフェニレンサルファイド、ポリアミド、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリスチレン、ポリベンゾイミダゾール等が挙げられる。誘電体基材中の他のポリマーの含有量は、通常、20重量%以下であり、好ましくは、10重量%以下である。誘電体基材は、好ましくは、他のポリマーを含まない。
【0026】
溶媒は、炭酸プロピレン及びN,N−ジメチルホルムアミド(DMF)を含む。本発明の誘電体材料において、炭酸プロピレンのDMFに対する体積比は1/11〜1/3である。炭酸プロピレンのDMFに対する体積比をこの範囲にすることにより、溶媒のチタン酸バリウム及びフッ化ビニリデン系ポリマーのそれぞれに対する、ハンセン溶解度パラメータ(「Hansen Solubility Parameters:A User's Handbook, Second Edition」(第1−310頁、CRC Press、2007年発行)参照)における相対エネルギー差がともに1未満となり、チタン酸バリウム及びフッ化ビニリデン系ポリマーの両方を溶媒に十分に溶解又は分散させることができる。
【0027】
溶媒は、チタン酸バリウム及びフッ化ビニリデン系ポリマーの溶媒に対する溶解性及び分散性に影響を及ぼさない限りにおいて、他の溶媒を含んでいてもよい。他の溶媒としては、特に限定されずに、例えば、N−メチルピロリドン、N,N−ジメチルアセトアミド等を挙げることができる。溶媒は、好ましくは、炭酸プロピレン及びN,N−ジメチルホルムアミドからなる。
【0028】
誘電体材料中の高誘電材料、誘電体基材及び溶媒の重量比は、特に限定されずに、例えば、10〜30:10〜30:40〜80、好ましくは、10〜20:10〜20:60〜80である。
【0029】
誘電体材料は、チタン酸バリウム及びフッ化ビニリデン系ポリマーの溶媒に対する溶解性及び分散性に影響を及ぼさない限りにおいて、上記の高誘電材料、誘電体基材及び溶媒の他に、界面活性剤、消泡剤、湿潤剤、レベリング剤、流展剤等の他の成分を含んでいてもよい。
【0030】
誘電体材料は、好ましくは、高誘電材料と、誘電体基材と、溶媒とからなる。本発明の一つの実施形態において、誘電体材料は、チタン酸バリウムと、フッ化ビニリデン系ポリマーと、1/11〜1/3の体積比の炭酸プロピレン及びN,N−ジメチルホルムアミドからなる。
【0031】
本発明の誘電体材料は、高誘電材料、誘電体基材、溶媒及び必要に応じて他の成分を混合することによって得られる。混合は、誘電体基材と溶媒を混合し、得られた溶液に高誘電材料及び他の成分を加えて行ってもよいし、あるいは、高誘電材料及び誘電体基材をそれぞれ溶媒と混合し、得られた各溶液を混合して行ってもよい。混合は、特に限定されずに、例えば、超音波振動、撹拌機、ミル、ホモジナイザー等を用いて行うことができる。
【0032】
本発明は、上記の誘電体材料を用いて得られる誘電体フィルムも含む。本発明の誘電体フィルムは、例えば、本発明の誘電体材料を基材にコーティングし、通常、150〜200℃で5〜10分間乾燥させることで得られる。
【実施例】
【0033】
以下、実施例を用いて本発明をさらに具体的に説明する。但し、本発明の技術的範囲はこれら実施例に限定されるものではない。
【0034】
(実施例1)
ハンセン溶解度パラメータを用いて、溶媒としての炭酸プロピレン及びN,N−ジメチルホルムアミドの最適な組成を、チタン酸バリウム及びポリフッ化ビニリデンのそれぞれに対して求めた。ここで、ハンセン溶解度パラメータとは、物質の溶媒に対する溶解性の指標である。具体的には、ハンセン溶解度パラメータにおける相対エネルギー差を、「Hansen Solubility Parameters:A User's Handbook, Second Edition」(第1−310頁、CRC Press、2007年発行)に記載されている計算式によって求めた。ハンセン溶解度パラメータにおいて、溶媒のある物質に対する溶解能は、相対エネルギー差によって判断することができる。ハンセン溶解度パラメータにおける相対エネルギー差(RED)が、RED<1である場合、溶媒と当該物質は相溶性がある。図1に、所定の体積比の炭酸プロピレン(PC)及びN,N−ジメチルホルムアミド(DMF)のチタン酸バリウム(BTO)及びポリフッ化ビニリデン(PVDF)に対する相対エネルギー差(RED)を示す。
【0035】
図1より、チタン酸バリウムに対するRED及びポリフッ化ビニリデンに対するREDがともに1未満となる炭酸プロピレン及びN,N−ジメチルホルムアミドの体積比は、PC/DMF=1/11〜1/3となる。
【0036】
(実施例2)
チタン酸バリウムとして、シラン系カップリング剤の3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン:
【化1】
で表面処理を行ったチタン酸バリウムを用いて、チタン酸バリウム及びポリフッ化ビニリデンのそれぞれに対する最適な溶媒(炭酸プロピレン及びN,N−ジメチルホルムアミド)の組成を実施例1と同様にして求めた。ここで、シラン系カップリング剤で表面処理を行った場合、シラン系カップリング剤のシラノール基がチタン酸バリウム表面と反応し、シラノール基以外の部分がチタン酸バリウム表面を覆うと考えられるが、溶媒のチタン酸バリウムに対する相対エネルギー差は、シラン系カップリング剤のシラノール基以外の部分についてのハンセン溶解度パラメータを計算し、チタン酸バリウム表面のシラン系カップリング剤による被覆率を50%として求めた。結果を図2に示す。
【0037】
図2より、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシランでチタン酸バリウムの表面処理を行った場合についても、炭酸プロピレン及びN,N−ジメチルホルムアミドの体積比は、PC/DMF=1/11〜3/9が最適であった。
【0038】
(実施例3)
チタン酸バリウムとして、シラン系カップリング剤の3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン:
【化2】
で表面処理を行ったチタン酸バリウムを用いた場合について、チタン酸バリウム及びポリフッ化ビニリデンのそれぞれに対する最適な溶媒(炭酸プロピレン及びN,N−ジメチルホルムアミド)の組成を実施例2と同様にして求めた。結果を図3に示す。
【0039】
図3より、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシランでチタン酸バリウムの表面処理を行った場合についても、炭酸プロピレン及びN,N−ジメチルホルムアミドの体積比は、PC/DMF=1/11〜3/9が最適であった。
【0040】
(実施例4)
チタン酸バリウムとして、シラン系カップリング剤のビニルトリメトキシシラン:
【化3】
で表面処理を行ったチタン酸バリウムを用いた場合について、チタン酸バリウム及びポリフッ化ビニリデンのそれぞれに対する最適な溶媒(炭酸プロピレン及びN,N−ジメチルホルムアミド)の組成を実施例2と同様にして求めた。結果を図4に示す。
【0041】
図4より、ビニルトリメトキシシランでチタン酸バリウムの表面処理を行った場合についても、炭酸プロピレン及びN,N−ジメチルホルムアミドの体積比は、PC/DMF=1/11〜3/9が最適であった。
図1
図2
図3
図4