(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
請求項1のセンサ装置であって、前記接触子の高さ及び前記センサ装置の全高が、それぞれ、前記センサ装置が前記体表面と前記被検者の着衣との間に挟持されて前記体表面に装着された際に前記接触子が前記体表面に対して加圧された状態にて押し付けられて前記体表面が前記接触面に沿って窪み変形する高さ及び全高を有しているセンサ装置。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】
図1(A)は、本発明のセンサ装置が適用される人間の呼吸に伴う体表面の変位による圧力変化を計測する装置のシステムの概要を説明する図である。
図1(B)は、本発明のセンサ装置を被検者のズボン(ボトムズ)の上縁に取り付ける様子を示した図である。
図1(C)は、被検者の腰部の体表面に本発明のセンサ装置を接触させる様子を模式的に示した図であり、
図1(D)は、本発明のセンサ装置の接触子が被検者腰部体表面に対して加圧された状態で接触させられる様子を模式的に示している。
【
図2】
図2(A)は、本発明のセンサ装置の模式的な斜視図であり、
図2(B)は、矢印(B)の方向から見たセンサ装置の側面図であり、体表面の変位による入力圧変化の増大のために検討される接触子及びセンサ装置の形状に於けるパラメータを説明している。
図2(C)、(D)は、矢印(C)の方向から見た本発明のセンサ装置のセンサ装置の断面図である。
図2(C)は、接触子とクリップの力点との間にオフセットがある場合であり、
図2(D)は、接触子とクリップの力点との間にオフセットがない場合である。
【
図3】
図3(A)は、本発明のセンサ装置に利用可能な接触子の接触面の形状を模式的に示した図である。
図3(B)は、被検者の体表面とズボンの上縁との間に挟持された本発明のセンサ装置の状態を説明する図である。
図3(C)は、本発明のセンサ装置の装着に際して、接触子とクリップの力点との間にオフセットがない場合(左)とオフセットがある場合(右)とに於ける接触子の装着位置を説明する図である。
【
図4】
図4(A)、(B)は、センサ装置の接触子の接触面の形状の条件を検証する実験に使用した押し子の模式図と写真である。
図4(C)、(D)は、接触子の接触面の形状の条件を検証する実験に於いて、押し子を接触させたセンサ装置の模式的な上面図と側面図である。
図4(E)は、センサ装置の接触子に押し子を押し付ける状態を示す接触子及び押し子の側面図である。
【
図5】
図5(A)は、
図4(C)、(D)の接触子上のP1の位置にて押し子を押し付けた場合の荷重に対するセンサ装置の出力値(圧電振動子のインピーダンスのAD変換値)の変化を示すグラフ図であり、
図5(B)は、
図4(C)、(D)の接触子上のP3の位置にて押し子を押し付けた場合の荷重に対するセンサ装置の出力値(圧電振動子のインピーダンスのAD変換値)の変化を示すグラフ図である。
図5(C)は、インクが塗布された平坦な接触面を有する接触子を被検者の種々の部位に押し付けた場合に、被検者の部位に於けるインクに付いた領域、即ち、接触面が実際に接触した領域を示している。
【
図6】
図6(A)は、本発明による接触子及びセンサ装置の形状についての条件の有効性を確認する実証実験に用いた種々の形状の接触子の寸法を示した側面図を示している。
図6(B)は、
図6(A)の接触子に荷重を、その値を変化させながら、与えた場合のセンサ装置の出力値の変化を模式的に示した図である。
図6(C)は、
図6(A)の種々の形状の接触子を用いて
図6(B)の計測を行った場合の、接触子に荷重に対するセンサ装置の出力値の傾きを示したグラフ図である。
【
図7】
図7(A)は、被検者の腰部に装着された本発明によるセンサ装置と被検者の胸部に装着された胸バンド式の呼吸センサ(対照用)とを用いて、被検者の呼吸に伴う体表面の変位による圧力変化を計測するシステムの概要図を示している。
図7(B)は、本発明によるセンサ装置の出力値(圧電振動子のインピーダンスのAD変換値)の時間変化を示している。
図7(C)は、本発明によるセンサ装置の出力値の時間変化(本発明)と胸バンド式呼吸センサの出力値の時間変化(対照)を示している(図示のデータは、ノイズ除去処理の後、比較のため振幅が調整されている。)。なお、本発明によるセンサ装置の接触子は、全高20mm、ヘッド高さ4mmのものを用いた。
【
図8】
図8(A)、(B)は、
図7(A)と同様の計測に於ける本発明によるセンサ装置と胸バンド式呼吸センサの出力値の時間変化を示している。
図8(A)は、本発明によるセンサ装置の接触子として、全高18mm、ヘッド高さ4mmのものを用いた場合の結果であり、上段は、力単位に換算した本発明によるセンサ装置の出力値のそのままの波形であり、下段は、ノイズを除去した後の、本発明によるセンサ装置(本発明)と胸バンド式呼吸センサ(対照)の出力値の時間変化の波形である。
図8(B)は、本発明によるセンサ装置の接触子として、全高23mm、ヘッド高さ4mmのものを用いた場合の結果であり、上段は、力単位に換算した本発明によるセンサ装置の出力値のそのままの波形であり、下段は、ノイズを除去した後の、本発明によるセンサ装置(本発明)と胸バンド式呼吸センサ(対照)の出力値の時間変化の波形である。
【
図9】
図9は、
図7(A)と同様の計測に於いて、本発明によるセンサ装置の接触子のヘッド高さを変化させた場合のセンサ装置の出力値の波形の振幅を示している。
【
図10】
図10(A)、(B)は、
図7(A)と同様の計測に於ける本発明によるセンサ装置と胸バンド式呼吸センサの出力値の時間変化を示している。
図10(A)は、本発明によるセンサ装置の、接触子とクリップの力点との間のオフセットが0cmとした場合(
図3(C)左)の結果であり、上段は、力単位に換算した本発明によるセンサ装置の出力値のそのままの波形であり、下段は、ノイズを除去した後の、本発明によるセンサ装置と胸バンド式呼吸センサの出力値の時間変化の波形である。
図10(B)は、本発明によるセンサ装置の、接触子とクリップの力点との間のオフセットが4cmとした場合(
図3(C)右)の結果であり、上段は、力単位に換算した本発明によるセンサ装置の出力値のそのままの波形であり、下段は、ノイズを除去した後の、本発明によるセンサ装置と胸バンド式呼吸センサの出力値の時間変化の波形である。なお、本発明によるセンサ装置の接触子として、全高20mm、ヘッド高さ4mmのものを用いた。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下に添付の図を参照しつつ、本発明を幾つかの好ましい実施形態について詳細に説明する。図中、同一の符号は、同一の部位を示す。
【0018】
呼吸波形計測システムの概要
本発明による人間の呼吸に伴う体表面の変位を検出するセンサ装置は、
図1(A)に模式的に描かれている如き、人間の呼吸波形の計測システムの一部として用いられる。図示の如き呼吸波形の計測システムに於いては、端的に述べれば、人間の体の一部にセンサ装置10を装着し、そのセンサ装置10は、呼吸によって振動的に運動する体表面の変位又はその変位による圧力変化を時系列に計測して、その計測値を無線又は有線の通信によってデータ信号処理器50へ送信して、図中の上段に描かれている如き呼吸運動の時系列波形データが生成される。かかる呼吸の運動波形データは、既に触れた如く、人(又は動物)の脳や神経の活動に関わる生体状態に関連があるので、その呼吸の運動波形データを用いて、生体状態の推定が行われることとなる。
【0019】
上記の如き呼吸波形の計測システムに於ける人間の体の一部に装着されるセンサ装置10としては、従前では、被検者の胸部等の全周に亘って巻き付けられる胸バンドを用いて、体表面の変位を計測する計測器を締め付ける方式のものが採用されていたが、センサ装置としては、やや大掛かりであり、装着に手間を要する。そこで、本発明に於いては、図示の如く、比較的小型であって被検者のズボン20等の下半身の被服(ボトムズ)の上縁又はベルト若しくは帯体22に装着できる形式のセンサ装置が採用される。
【0020】
センサ装置の構成
上記のセンサ装置10は、典型的には、
図2(A)に模式的に描かれている如き突出した接触子12を有する数センチ程度の寸法の筐体15の形態を有し、接触子12の在る側と反対側に取り付けられたクリップ18(掛け留め金具−
図2(C)参照)によって、
図1(B)に模式的に描かれている如く、被検者のボトムズ20の上縁又はベルト若しくは帯体22に掛け留めされ、更に、
図1(C)の如く、センサ装置10の筐体から突出した接触子12が腹部〜腰部の体表面30に対して加圧された状態にて押し付けられる。そして、被検者の呼吸による横隔膜の変動によって、
図1(D)中の矢印の如く、その腹部〜腰部の体表面30が変位すると、その変位により接触子12が受ける圧力に変化が生ずるので、その圧力変化が電気信号に変換されて呼吸運動を表す指標値として計測され、データ信号処理器50へ送信されることとなる。圧力変化から電気信号への変換については、種々の原理が採用されてよいところ、特に、本発明に於いては、既に触れた如く、接触子を介して体表面に加圧下に接触させた状態にてその固有共振周波数の交流電圧の印加によって振動する圧電振動子のインピーダンスが、その接触子を介して圧電振動子が受ける圧力変化によって変化する現象を利用したもの(特許文献1、2)が採用される。その場合、センサ装置10の内部に於いては、より具体的には、
図2(C)に於いて一部簡素化して示されている如く(
図2(D)は、向きを反転させただけで、同一の構成である。)、筐体15の内部にて、圧電振動子16が支持枠15aに保持され、筐体15から、被検者の体表面に当接する接触面14が突出した接触子12の他方の面が圧電振動子16に対して当接した状態に配置される。そして、圧電振動子16には、図示していない電気回路を介して電源13から固有共振周波数の交流電圧が印加され、接触子12の受ける圧力の変化による圧電振動子16のインピーダンスの変化がデジタル化されて、通信器11によって時々刻々にデータ信号処理器50へ送信される。
【0021】
上記の如きセンサ装置10に関して、「発明の概要」の欄にて触れた如く、体表面の変位による圧力変化をより感度よく計測するためには、体表面の変位による圧力変化をできるだけ効率よく圧電振動子16まで伝達させることが必要となる。上記の如く、人間の呼吸による横隔膜の変動に対応して腰部又は腹部の体表面にて計測される圧力は、0.1N/cm
2程度の微小圧であり、また、腰部又は腹部に装着されるセンサ装置の場合、被検者の姿勢、体格、着衣の状態によっては、体表面と接触子との接触面積及び押圧力が変化して、圧力変化の伝達性能が更に低くなる場合がある。従って、上記の如き腰部又は腹部に装着されるセンサ装置に於いては、体表面の変位による圧力変化の圧電振動子16まで伝達がより良好となるように接触子の形状及び/又は配置を改良することが望ましい。
【0022】
そこで、本発明の発明者等は、上記の如きセンサ装置10に於いて、
図2(B)、(C)及び(D)に示されている5つの構成要件、(1)接触子12のかさ幅、(2)かさ上部曲率、(3)ヘッド高さ、(4)センサ装置全高、及び、(5)接触子とセンサ装置を被検者の体表面に装着するためのクリップとの配置構成について、それぞれの構成要件の体表面の変位による圧力変化に対する圧電振動子への入力圧変化の増大、即ち、圧電振動子への圧力変化の伝達性能の向上を図るための条件及び構成を検討し、それらの条件の有効性を実験計画法による実証実験により検証した。
【0023】
かくして、本発明に於いては、上記5つの構成要件についての下記の条件又は構成を満たすように、センサ装置10及び接触子12を構成することにより、体表面の変位による圧力変化に対する圧電振動子への入力圧変化の増大が図られることとなる。(実験計画法による実証実験の結果は、後述される。)
【0024】
(1)接触子12のかさ幅、即ち、接触子の上部のかさ状部分が下部の円柱状部分の外周から放射方向に突出する長さ(
図2(B)の(1)参照)について、実証実験に於ける分散分析の結果(図示せず)によれば、有意な長さ(2〜3mm程度)にて突出した形状、即ち、かさ有り形状が、上部のかさ状部分の外周が下部の円柱状部分の外周に一致した形状(突出長さが0の形状−かさ無し形状)に比して有利であることが見出された。しかしながら、かさ有り形状とかさ無し形状との間で、圧力変化に対する圧電振動子への入力圧変化の傾きに於いては、有意な差は見出されなかった。従って、接触子の上部のかさ状部分は、下部の円柱状部分の外周から放射方向に突出していなくてもよいことが見出された。
【0025】
(2)接触子12の接触面14の形状、即ち、接触子の上面の、被検者の体表面に接触する面(接触面)の形状(
図2(B)の(2)参照)について、接触面が平坦である場合に比して、
図3(A)に模式的に描かれている如く、接触面が周縁から中心へ向かう方向に突出した曲面状である場合の方が、
図1(D)に模式的に描かれている如く、接触子12の接触面14が体表面30を押圧した際に体表面30が窪み変形した際に接触面14と体表面30との接触面積が広くなり、また、体表面30と接触面14との向きが変化しても、接触面積が大きく変化し難いので、体表面30から圧電振動子16までの良好な圧力変化の伝達が達成できることとなる。接触子12の突出方向から見た形状(平面図)は、真円であっても楕円であってもよい。なお、体表面の変位による圧力変化に対する入力の変化を大きくするために、即ち、体表面の変位による圧力変化が効率よく圧電振動子に伝達されるようにするためには、接触子は、体表面の変位による圧力変化に対して実質的に変形しない材料にて形成されることが好ましい。実証実験の結果によれば、接触面が曲面状である場合には、接触面が平坦である場合に比して、圧力変化に対する圧電振動子への入力圧変化の傾きが大きくなり、また、ダイナミックレンジも大きくなるので、有利であることが見出された。更に、接触面の曲率半径が7mmから50mmの間である場合に、圧力変化に対する圧電振動子への入力圧変化が有利に検出できることが実証実験の結果により見出された。
【0026】
(3)ヘッド高さ、即ち、センサ装置10の筐体15の上面から突出した接触子12の高さ(
図2(B)の(3)参照)と、(4)センサ装置全高、即ち、センサ装置10の筐体15の底面からの接触子12の高さ(
図2(B)の(4)参照)について、上記の如く、センサ装置10を被検者の体表面30とボトムズ20の上縁22との間に挟持する構成に於いては、体表面の変位による圧力変化が圧電振動子16まで効率よく伝達されるようにするためには、適度な圧力にて、接触子12の接触面が体表面を押圧し、被検者の姿勢、体格、着衣の状態の変化があっても、接触子と体表面との接触面積の変化ができるだけ抑制されることが好ましい。そのためには、
図3(B)に描かれている如く、接触子12が体表面30に対して加圧された状態にて押し付けられ、これに対して逆向きに、体表面が接触面を押圧しその接触面に沿って窪み変形するように、ヘッド高さh1及びセンサ装置10の全高h0が設計されていることが好ましい。しかしながら、ヘッド高さh1及び全高h0が過大であり、体表面30に対する接触子12の押し付けが強すぎると、被検者が不快感を覚える可能性が生ずる。かくして、上記の要求を満たす(3)ヘッド高さ及び(4)センサ装置全高の条件として、実験によれば、センサ装置全高が16mmから23mmの範囲であることが好適であり、接触子の高さが3mmから5mmの範囲であることが更に好適であることが見出された。
【0027】
(5)接触子とクリップとの配置構成に関して、本発明の構成に於いては、
図2(C)に示されている如く、クリップ18が被検者のボトムズ20の上縁22に掛け留めされて、センサ装置10が体表面と上縁22とに挟持され、かくして、上縁22によって及ぼされる力F(例えば、ベルト又は帯の締め付けによって及ぼされる力)が接触子12の接触面14に作用することによって、接触面14が体表面30に押し付けられた状態でセンサ装置10が被検者の体表面30に装着される。この点に関し、
図2(D)に示されている如く、力Fが作用する部位(力点)の延長線(一点鎖線)上に接触子12の接触面14が存在する場合には、
図3(C)左の如く、接触子12の体表面30に対する押し付けによって、体表面30が窪み変形して、接触子12が体表面30とボトムズ20の上縁22との間に良好に加圧状態で保持されることとなる。しかしながら、
図2(C)に示されている如く、力点Fの延長線(一点鎖線)上からの接触子12の接触面14の位置にずれ(オフセット)がある場合、そのオフセットの長さによっては、
図3(C)右の如く、接触子12が体表面30とボトムズ20の上縁22との間に良好に加圧状態で保持されにくい状態も起き得る。かくして、本発明に於いては、基本的には、上縁22によって及ぼされる力点Fの延長線上に接触子12の接触面14が位置するようにクリップが配置され、それを達成するようにクリップがセンサ装置10に取り付けられる。なお、実証実験によれば、クリップの力点Fと接触子12の接触面14との距離(クリップ・オフセット)は、必ずしも0mmでなくてもよく、40mm程度あってもよいことが見出された。その場合も本発明の範囲に属することは理解されるべきである。
【0028】
センサ装置及び接触子の構成についての条件の検証
上記の5つの構成要件についての条件について、それらの有効性を実験計画法による実証実験により確認した。
【0029】
1.接触子の接触面を曲面状にする条件について
(実験1)
図4(A)〜(E)を参照して、
図4(A)、(B)に示されている形状の部材(thin、ラウンド)を、押し子として、
図4(C)、(D)に模式的に描かれている、上面が平坦な接触子12を有するセンサ装置10に押し付けて、センサ装置10の出力を計測した。部材は、それぞれ、
図4(C)、(D)に示されている接触子12上の位置P1(略中央)と位置P3(周縁近傍)とのそれぞれに於いて、
図4(E)に示されている如く、押し子を、その先端を下向きにして、角度θ(0°〜30°)にて配置し、上から荷重F(0〜14N)を与えた。
【0030】
図5(A)は、接触子12の位置P1に、部材thinと部材ラウンドを、それぞれ、配置し、荷重Fを与えた場合のセンサ装置10の出力の変化を示している。図中、R0、R10、R20、R30(いずれも点線)は、それぞれ、部材ラウンドを、角度θを0°、10°、20°、30°に設定して配置した場合の結果であり、T0、T10、T20、T30(いずれも実線)は、それぞれ、部材thinを、角度θを0°、10°、20°、30°に設定して配置した場合の結果である。縦軸は、センサ装置の出力のAD変換値である。同図を参照して、荷重を0〜4Nまで変化させた場合、出力の立ち上がりは、部材ラウンドを用いた方が大きく、有利であることを示している。
図5(B)は、接触子12の位置P3に於いて、同様の実験を行った場合の結果を示している。同図をして、位置P3の場合には、0〜4Nまで荷重を与えた場合には、部材thinと部材ラウンドの違い及び角度による違いは、殆ど見られなかったが(図示せず)、角度θが小さいとき(R0、T0、R10、T10)、部材thinは、出力の飽和が早期に発生した。即ち、部材ラウンドのダイナミックレンジが部材thinに比して広いことが示された。
【0031】
(実験2)
接触面(上面)が平坦な接触子12を有するセンサ装置10に於いて、上面(接触面)にインクを塗布し、そのインクが塗布された接触面を被検者の腹部又は背部に装着して、体表面に写ったインクの跡を観察した。
図5(C)は、被検者A、Bに於いて、接触子を、腹部正面、右脇腹と腹部正面との間、及び、右脇腹に装着した際の、体表面に残ったインク跡を示している。複数回の装着(1〜3)に於いて、いずれの場合も、接触子上面の全域に対応する部位にインク跡が残った例は観察されなかった。インク跡の付いていない領域は、接触面が良好に接触していないことを示唆するので、平坦形状の接触面の場合には、体表面に良好に接触していない領域が存在し、その領域では、圧力変化の伝達が良好ではないことが推定される。
【0032】
(実験3)
図6(A)に示されている接触面が曲面状の接触子が装着されたセンサ装置を用いて、接触子の接触面に0〜15Nまでの荷重を与えて出力を計測し、
図6(B)に模式的に描かれている如く、荷重に対するセンサ装置の出力値の傾きを算出した。図示の接触子(1)〜(4)は、体表面に押し付けても変形しない程度の剛性を有する材料で形成されたものであり、接触面の曲率半径は、それぞれ、(1)7.25mm、(2)14.5mm、(3)29mm、(4)14.5mmである。また、ゴム製の接触子(調整用ゴムヘッド)の接触面の曲率半径は、50mmである。接触子(1)、(2)、調整用ゴムヘッドは、かさ幅=0である。
図6(C)は、異なる4台のセンサ装置に、それぞれ、接触子(1)〜(4)及び調整用ゴムヘッドを装着して計測を行った場合の荷重に対する出力値の傾き(Δy/Δx)を示している。それぞれのプロット(■、◇、×、▲)は、互いに異なる装置による結果を表している。横軸の「ゴム」、(1)、(2)、(3)、(4)は、それぞれ、
図6(A)の接触子を使用した場合に対応する。同図を参照して、出力値の傾きは、装置による個体差はあるが、接触子による大きな差異は、なく、曲率半径が概ね7〜50mmの場合に、計測が可能であり、かさ幅の有無による差異は、認められなかった。また、全てのセンサ装置についてではないが、ゴム製の接触子に比して、剛性の有る接触子(1)〜(4)の方が傾きが大きくなる傾向があった。
【0033】
かくして、上記の実験1〜3の結果を参照すると、センサの接触子の接触が曲面状である方が荷重に対する出力値の立ち上がり及び/又はダイナミックレンジが良好であること(実験1)、及び、平坦状の接触子の場合には、接触面が体表面に十分に接触できない領域が存在すること(実験2)から、接触子の接触面は曲面状である方が、良好な圧力変化の伝達が達成できることが示唆された。また、接触子の接触面は曲面状である場合に、その曲率半径が概ね7〜50mmの場合に圧力変化の検出が可能であること及びかさ幅の有無は結果に殆ど影響しないことが示唆された。
【0034】
2.接触子のヘッド高さ及びセンサ装置の全高条件について
図7(A)を参照して、接触子のヘッド高さ、センサ装置の全高の条件についての検証を行うべく、図示の如く、ベッドに仰向けに横たわった被検者の腹部に本発明によるセンサ装置10を装着し、被検者の呼吸に伴うセンサ装置の出力を計測した。なお、対照比較のため、医学的に信頼性が確認されている胸バンド式のセンサ装置を用いた呼吸計測法による計測を同時に実施した。計測に於いては、本発明によるセンサ装置10の出力と、胸バンド式センサ装置の出力を増幅器にて増幅した出力とをデータ記録器へ送信し、時系列の呼吸波形データを生成した。
【0035】
図7(B)は、ヘッド高さ=4mm、全高=20mmの接触面が曲面状の接触子を用いて、クリップ・オフセット=0mmの状態で計測された本発明のセンサ装置10の出力値の時系列データであり、
図7(C)は、本発明のセンサ装置10の出力値と胸バンド式センサ装置の出力値との時系列データの各々を、比較のために、振幅を調整して表示したグラフである。同図を参照して理解される如く、本発明のセンサ装置10の出力値と胸バンド式センサ装置の出力値との時系列データは、実質的に互いに同期した振動波形を呈した。それぞれの波形の振幅を0〜1の範囲に正規化した後に算出した両者の相互相関係数は、0.97であった。この値は、「発明が解決しようとする課題」にて述べた如き、医療器として認可されている呼吸バンドの波形と正規化相関値が0.9以上であるという要求を満たすものである。
【0036】
図8(A)、(B)は、全高=18mm又は23mmにしたセンサ装置を用いて上記と同様の計測結果を示している。相互相関係数は、それぞれ、0.52、0.96であった。
図8(B)の場合は、医療器として認可されている呼吸バンドの波形と正規化相関値が0.9以上であるという要求を満たすものである。
図8(A)の場合は、前記の正規化相関値の要求を満たすものではないが、本発明のセンサ装置の出力波形は、胸バンド式センサ装置の出力波形と概ね同期した。
【0037】
図9は、全高=23mmのセンサ装置に於いて、ヘッド高さを、3mm、4mm、5mmとした場合の上記と同様の計測により得られたセンサ装置10の出力値の波形の振幅の平均値を示している(エラーバーは、標準偏差である。)。いずれの場合も有意な計測が可能であった。
【0038】
かくして、センサ装置全高が16mmから23mmの範囲であり、接触子の高さが3mmから5mmの範囲である場合に有意な計測が可能であることが示された。
【0039】
3.クリップ・オフセットの条件について
クリップ・オフセットが0mmの場合と40mmの場合について、
図7(A)に於いて説明された計測実験と同様に本発明のセンサ装置10を用いて被検者の呼吸波形の計測を行った。
図10(A)、(B)は、それぞれ、クリップ・オフセット=0mm、=40mmの場合の本発明のセンサ装置10の出力値の時系列データ(上段)と、振幅を調整して表示された本発明のセンサ装置10の出力値と胸バンド式センサ装置の出力値との時系列データを示している。相互相関係数は、それぞれ、0.93、0.55であった。
図10(A)の場合は、医療器として認可されている呼吸バンドの波形と正規化相関値が0.9以上であるという要求を満たすものである。
図10(B)の場合は、前記の正規化相関値の要求を満たすものではないが、本発明のセンサ装置の出力波形は、胸バンド式センサ装置の出力波形と概ね同期した。かくして、クリップ・オフセットが0〜40mmの範囲に於いて有意な計測が可能であることが示された。
【0040】
かくして、上記の如く、本発明のセンサ装置に於いて、上記の5つの構成要件についての条件にて被検者の呼吸波形の計測が可能であることが示された。
【0041】
以上の説明は、本発明の実施の形態に関連してなされているが、当業者にとつて多くの修正及び変更が容易に可能であり、本発明は、上記に例示された実施形態のみに限定されるものではなく、本発明の概念から逸脱することなく種々の装置に適用されることは明らかであろう。