(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記(メタ)アクリル系共重合体Aの水酸基を有する単量体に由来する構成単位の含有率aに対する、前記(メタ)アクリル系共重合体Bの水酸基を有する単量体に由来する構成単位の含有率bの比率(b/a)が5〜500の範囲である請求項1又は請求項2に記載の粘着剤組成物。
前記(メタ)アクリル系共重合体A及び前記(メタ)アクリル系共重合体Bの合計量100質量部に対して0.01質量部〜1.5質量部の範囲のイミダゾール化合物を更に含む請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載の粘着剤組成物。
前記(メタ)アクリル系共重合体A及び前記(メタ)アクリル系共重合体Bの合計量100質量部に対して0.05質量部〜1質量部の範囲のシランカップリング剤を更に含む請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載の粘着剤組成物。
(メタ)アクリル系共重合体Aのガラス転移温度(TgA)は、−60℃以上−40℃以下の範囲であり、(メタ)アクリル系共重合体Bのガラス転移温度(TgB)は、−55℃以上−25℃以下の範囲であり、TgAはTgBよりも低い、請求項1〜請求項7のいずれか1項に記載の粘着剤組成物。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の一例である実施形態について説明する。なお、本明細書において「〜」を用いて示された数値範囲は、「〜」の前後に記載される数値をそれぞれ最小値及び最大値として含む範囲を示す。また、本明細書において組成物中の各成分の量は、粘着剤組成物中に各成分に該当する物質を複数種併用する場合には、特に断らない限り、その成分に該当する複数種の物質の合計量を意味する。
更に(メタ)アクリルとは、アクリル及びメタクリルの少なくとも一方を意味し、(メタ)アクリレートとは、アクリレート及びメタアクリレートの少なくとも一方を意味する。
更に粘着剤組成物とは、(メタ)アクリル系共重合体とトリレンジイソシアネート系化合物との架橋反応が終了する前の組成物であって、例えば、液状、ペースト状又は粉末状の組成物を意味する。
更に粘着剤層とは、(メタ)アクリル系共重合体とトリレンジイソシアネート系化合物との架橋反応が終了した後の層であって、例えば、固形状又はゲル状の層を意味する。
【0015】
〔粘着剤組成物〕
本発明における粘着剤組成物は、水酸基を有する単量体に由来する構成単位を全構成単位に対して0.001質量%〜0.5質量%の範囲で有する(メタ)アクリル系共重合体Aと、水酸基を有する単量体に由来する構成単位を全構成単位に対して0.1質量%〜4質量%の範囲で有し、水酸基を有する単量体に由来する構成単位の含有率が前記(メタ)アクリル系共重合体Aの水酸基を有する単量体に由来する構成単位の含有率よりも高い(メタ)アクリル系共重合体Bと、前記(メタ)アクリル系共重合体A及び前記(メタ)アクリル系共重合体Bの合計量100質量部に対して5質量部〜30質量部の範囲のトリレンジイソシアネート系化合物と、を含み、前記(メタ)アクリル系共重合体Bに対する前記(メタ)アクリル系共重合体Aの含有比率(A/B)が、質量基準で60/40〜95/5の範囲であり、前記(メタ)アクリル系共重合体A及び前記(メタ)アクリル系共重合体Bの酸価の合計が、2.5mgKOH/g以下である。
【0016】
本発明における粘着剤組成物は、(メタ)アクリル系共重合体A及び(メタ)アクリル系共重合体Bの酸価の合計が2.5mgKOH/g以下と低いため、例えば、静電容量方式のタッチパネルの貼り合わせに用いた場合にITOを腐食しにくい。
【0017】
さらに、本発明における粘着剤組成物は、粘着剤層として偏光板等の光学フィルムやタッチパネルを、液晶セル等の被着体に貼り付けた際に、耐久性と白抜けの抑制との両立に優れているが、その理由は以下のように推測される。
【0018】
本発明における粘着剤組成物では、(メタ)アクリル系共重合体がトリレンジイソシアネート系化合物によって化学的に架橋された架橋体と、トリレンジイソシアネート系化合物同士が反応して形成されたトリレンジイソシアネートの縮合体とが存在している。
トリレンジイソシアネートの縮合体は比較的硬いため応力の発生を抑制することが可能であり、架橋体は比較的柔らかいため被着体との密着性が良好になると考えられる。
そのため、縮合体による硬さと、架橋体による部分的な柔らかさとを適切な範囲にすることで、耐久性と白抜けの抑制との両立に優れると考えられる。より具体的には、以下のように推測される。
【0019】
本発明における粘着剤組成物は、水酸基を有する単量体に由来する構成単位を全構成単位に対して0.001質量%〜0.5質量%の範囲で有する(メタ)アクリル系共重合体Aと、水酸基を有する単量体に由来する構成単位を全構成単位に対して0.1質量%〜4質量%の範囲で有し、水酸基を有する単量体に由来する構成単位の含有率が(メタ)アクリル系共重合体Aの水酸基を有する単量体に由来する構成単位の含有率よりも高い(メタ)アクリル系共重合体Bとを含む。また、(メタ)アクリル系共重合体Bに対する(メタ)アクリル系共重合体Aの含有比率(A/B)が、質量基準で60/40〜95/5の範囲である。つまり、本発明における粘着剤組成物は、水酸基を有する単量体に由来する構成単位の含有率が異なる2つのアクリル系共重合体を所定の比率で含む。
このため、架橋体の存在による粘着剤層の柔らかい部分にも、比較的硬い部分と比較的柔らかい部分とが所定の比率で形成される。この2つの部分のうち、比較的硬い部分が応力の発生を抑制することで白抜けが抑制され、比較的柔らかい部分がタッチパネル、光学フィルム、液晶セルなどの被着体との密着性を高めることで剥がれが生じにくく、耐久性に優れる。この2つの部分を適切な比率で含むため、本発明における粘着剤組成物は、耐久性と白抜けの抑制とを両立できる。
【0020】
なお、本発明における粘着剤組成物と異なり、1種類のアクリル系共重合体を用いた粘着剤組成物では、耐久性と白抜けの抑制とを両立することは困難である。
【0021】
さらに、本発明における粘着剤組成物は、(メタ)アクリル系共重合体100質量部に対して5質量部〜30質量部の範囲のトリレンジイソシアネート系化合物を含むことで粘着剤層としたときに硬くなり、応力の発生を抑制することが可能である。詳述すると、架橋剤としてトリレンジイソシアネート系化合物を5質量部以上含むことにより、耐久性(特に耐熱性)に優れ、発泡や剥がれを抑制することができ、さらに、白抜けも抑制することができる。また、架橋剤としてトリレンジイソシアネート系化合物を30質量部以下含むことにより、粘着剤層としたときの白化を抑制することができ、タッチパネル、光学フィルム等の透明性が要求される物品の貼り合わせに好適に用いることが可能である。
【0022】
また、本発明における粘着剤組成物は、架橋剤としてトリレンジイソシアネート系化合物を含むため、タッチパネルや光学フィルムの貼り合わせに好適に用いることができ、かつ、耐久性と白抜けの抑制とを両立できる。一方、架橋剤がキシレンジイソシアネート系化合物であると、(メタ)アクリル系共重合体A及び(メタ)アクリル系共重合体Bと、キシレンジイソシアネート系化合物との相溶性が悪く、粘着剤層が白化し、タッチパネル、光学フィルム等の透明性が要求される物品の貼り合わせに用いることができない。また、架橋剤がヘキサメチレンジイソシアネート系化合物であると、粘着剤層としたときに応力の発生を抑制するだけの硬さが得られず白抜けが発生してしまい、耐久性と白抜けの抑制とが両立できない。
【0023】
[(メタ)アクリル系共重合体A及び(メタ)アクリル系共重合体B]
本発明における粘着剤組成物は、水酸基を有する単量体に由来する構成単位を全構成単位に対して0.001質量%〜0.5質量%の範囲で有する(メタ)アクリル系共重合体Aと、水酸基を有する単量体に由来する構成単位を全構成単位に対して0.1質量%〜4質量%の範囲で有し、水酸基を有する単量体に由来する構成単位の含有率が(メタ)アクリル系共重合体Aの水酸基を有する単量体に由来する構成単位の含有率よりも高く(メタ)アクリル系共重合体Bと、を含む。さらに、本発明における粘着剤組成物は、(メタ)アクリル系共重合体Bに対する(メタ)アクリル系共重合体Aの含有比率(A/B)が、質量基準で60/40〜95/5の範囲であり、(メタ)アクリル系共重合体A及び(メタ)アクリル系共重合体Bの酸価の合計が、2.5mgKOH/g以下である。
【0024】
本発明で用いる(メタ)アクリル系共重合体A及び(メタ)アクリル系共重合体Bは、アルキル(メタ)アクリレートを主成分とした共重合体が好ましく、必要に応じて、カルボキシル基を有する単量体、その他の単量体等を共重合成分としてもよい。ここで、アルキル(メタ)アクリレートを主成分とした共重合体とは、共重合体中の構成単位100質量%に対し、アルキル(メタ)アクリレートに由来する構成単位を50質量%以上有する共重合体である。
【0025】
(メタ)アクリル系共重合体Bに対する(メタ)アクリル系共重合体Aの含有比率(A/B)は、質量基準で60/40〜95/5の範囲である。含有比率(A/B)が60/40よりも小さい、つまり(メタ)アクリル系共重合体Bの含有量が多すぎると、粘着剤層としたときに架橋体部分が過度に硬くなり、剥がれが生じやすくなり、耐久性に劣る。含有比率が95/5より大きい、つまり(メタ)アクリル系共重合体Aの含有量が多すぎると、粘着剤層としたときに架橋体部分が過度に柔らかくなり、白抜けの抑制に劣る。
同様の観点から、含有比率(A/B)は、65/35〜90/10の範囲が好ましく、70/30〜85/15の範囲がより好ましい。
【0026】
(メタ)アクリル系共重合体A及び(メタ)アクリル系共重合体Bの酸価の合計は2.5mgKOH/g以下であるため、例えば、静電容量方式のタッチパネルの貼り合わせに用いた場合にITOを腐食しにくい。ITOの腐食をより好適に抑制する観点から、前記酸価の合計は、2.0mgKOH/g以下が好ましく、1.0mgKOH/g以下がより好ましく、0.5mgKOH/g以下が更に好ましく、0mgKOH/gが特に好ましい。なお、酸価の合計は、下記の計算式により算出した値である。
【0027】
(メタ)アクリル系共重合体Aの酸価(mgKOH/g)=(A/B)×56.1×10×G
A=(メタ)アクリル系共重合体Aに使用される全単量体中の、カルボキシル基を有する単量体の含有率(質量%)
B=(メタ)アクリル系共重合体Aに使用されるカルボキシル基を有する単量体の分子量
G=(メタ)アクリル系共重合体Aに使用されるカルボキシル基を有する単量体1分子中のカルボキシル基の数
なお、56.1はKOHの分子量である。
【0028】
(メタ)アクリル系共重合体Bの酸価(mgKOH/g)=(C/D)×56.1×10×H
C=(メタ)アクリル系共重合体Bに使用される全単量体中の、カルボキシル基を有する単量体の含有率(質量%)
D=(メタ)アクリル系共重合体Bに使用されるカルボキシル基を有する単量体の分子量
H=(メタ)アクリル系共重合体Bに使用されるカルボキシル基を有する単量体1分子中のカルボキシル基の数
なお、56.1はKOHの分子量である。
【0029】
(メタ)アクリル系共重合体A又は(メタ)アクリル系共重合体Bに使用されるカルボキシル基を有する単量体が2種以上である場合は、それぞれの単量体について上記の計算式に準じて酸価を求め、得られた値を合計して酸価を求める。
【0030】
酸価の合計(mgKOH/g)=[(メタ)アクリル系共重合体Aの酸価×E/(E+F)]+[(メタ)アクリル系共重合体Bの酸価×F/(E+F)]
E=(メタ)アクリル系共重合体Aの含有量(質量部)
F=(メタ)アクリル系共重合体Bの含有量(質量部)
【0031】
(メタ)アクリル系共重合体A及び(メタ)アクリル系共重合体Bは、水酸基を有する単量体に由来する構成単位を有しており、該水酸基と、トリレンジイソシアネート系化合物と、がそれぞれ架橋反応する。したがって、粘着剤組成物の凝集力があがり、粘着力に優れ、耐久性試験において発泡を抑制できる。
【0032】
本発明で用いる(メタ)アクリル系共重合体A及び(メタ)アクリル系共重合体Bの主成分であるアルキル(メタ)アクリレートとしては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、sec−ブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、n−オクチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、n−ノニル(メタ)アクリレート、イソノニル(メタ)アクリレート、n−デシル(メタ)アクリレート、n−ドデシル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレートが挙げられる。アルキル(メタ)アクリレートのアルキル基は、直鎖、分枝または環状のいずれであっても良い。アルキル基の炭素数は1〜18が好ましく、1〜8がより好ましく、1〜4が更に好ましい。
【0033】
(メタ)アクリル系共重合体A及び(メタ)アクリル系共重合体Bにおける、アルキル(メタ)アクリレートの含有率は、粘着特性と粘弾性特性を調整しやすいため、80質量%以上が好ましく、90質量%以上がより好ましく、95質量%以上が更に好ましい。
【0034】
さらに、(メタ)アクリル系共重合体Aの主成分であるアルキル(メタ)アクリレートとしては、硬さと柔らかさを両立しやすいため、メチル(メタ)アクリレート及びn−ブチル(メタ)アクリレートの少なくともいずれかが好ましく、メチルアクリレート及びn−ブチルアクリレートの少なくともいずれかがより好ましく、n−ブチルアクリレートが更に好ましい。
【0035】
また、(メタ)アクリル系共重合体Bの主成分であるアルキル(メタ)アクリレートとしては、硬さと柔らかさを両立しやすいため、メチル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート及びt−ブチル(メタ)アクリレートの少なくともいずれかが好ましく、n−ブチルアクリレート、t−ブチルアクリレート及びメチルアクリレートの少なくともいずれかがより好ましく、n−ブチルアクリレートとt−ブチルアクリレートとの組合せ及びn−ブチルアクリレートとメチルアクリレートとの組合せの少なくとも一方が更に好ましい。
【0036】
本発明で用いる(メタ)アクリル系共重合体A及び(メタ)アクリル系共重合体Bの一成分である水酸基を有する単量体としては、水酸基を有する(メタ)アクリル系単量体、不飽和アルコール等が挙げられる。
【0037】
水酸基を有する(メタ)アクリル系単量体としては、例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、3−メチル−3−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、1,1−ジメチル−3−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、1,3−ジメチル−3−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2,2,4−トリメチル−3−ヒドロキシペンチル(メタ)アクリレート、2−エチル−3−ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレートに代表されるヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートや、グリセリンモノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリ(エチレングリコール−プロピレングリコール)モノ(メタ)アクリレート、N−メチロールアクリルアミドが挙げられる。
【0038】
中でも水酸基を有する(メタ)アクリル系単量体としては、他の単量体との相溶性及び共重合性が良好である点、並びに架橋剤との架橋反応が良好である点から、炭素数1〜5のヒドロキシアルキル基を有するヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートが好ましく、炭素数2〜4のヒドロキシアルキル基を有するヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートがより好ましい。具体的には、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートが好ましく、2−ヒドロキシエチルアクリレート、4−ヒドロキシブチルアクリレートがより好ましい。
【0039】
不飽和アルコールとしては、例えば、アリルアルコール、メタリルアルコールが挙げられる。
【0040】
(メタ)アクリル系共重合体Aは、水酸基を有する単量体に由来する構成単位を全構成単位に対して0.001質量%〜0.5質量%の範囲で有している。
(メタ)アクリル系共重合体Aの水酸基を有する単量体に由来する構成単位の含有率が0.001質量%以上であるため、粘着剤層が柔らかくなりすぎず、光学フィルムからのガスの発生(発泡)を抑制することができるため、耐久性を高めることができる。また、(メタ)アクリル系共重合体Aは、該含有率が0.5質量%以下であるため、粘着剤層が硬くなりすぎず、被着体との密着性に優れ、被着体からの剥離を抑制することができる。
同様の観点より、(メタ)アクリル系共重合体Aは、水酸基を有する単量体に由来する構成単位を全構成単位に対して、0.005質量%〜0.1質量%の範囲で有していることが好ましく、0.005質量%〜0.05質量%の範囲で有していることがより好ましい。
【0041】
また、(メタ)アクリル系共重合体Bは、水酸基を有する単量体に由来する構成単位を全構成単位に対して0.1質量%〜4質量%の範囲で有している。
(メタ)アクリル系共重合体Bの水酸基を有する単量体に由来する構成単位の含有率が0.1質量%以上であるため、応力の発生が抑制されることで白抜けが抑制される。また、(メタ)アクリル系共重合体Bは、該含有率が4質量%以下であるため、粘着剤層が硬くなりすぎず、被着体との密着性に優れ、被着体からの剥離を抑制することができる。
同様の観点より、(メタ)アクリル系共重合体Bは、水酸基を有する単量体に由来する構成単位を全構成単位に対して0.5質量%〜2質量%の範囲で有していることが好ましい。
【0042】
また、(メタ)アクリル系共重合体Bの水酸基を有する単量体に由来する構成単位の含有率が、(メタ)アクリル系共重合体Aの水酸基を有する単量体に由来する構成単位の含有率より大きい。このため、本発明における粘着剤組成物は、水酸基を有する単量体に由来する構成単位の含有率が異なる2つのアクリル系共重合体を含むことになり、粘着剤層の柔らかい部分、すなわちアクリル系共重合体の架橋体部分にも、比較的硬い部分と比較的柔らかい部分とが形成される。その結果、応力の発生を抑制しつつ、被着体との密着性を高めることができるので、本発明における粘着剤組成物は、耐久性と白抜けの抑制との両立により優れる。
【0043】
また、(メタ)アクリル系共重合体A及び(メタ)アクリル系共重合体Bにおける、水酸基を有する単量体に由来する構成単位の含有率は、(メタ)アクリル系共重合体A及び(メタ)アクリル系共重合体Bの全構成単位に対して0.05質量%〜1.5質量%の範囲であることが好ましい。
該含有率が0.05質量%以上であると、粘着剤層が柔らかくなりすぎず、光学フィルムからのガスの発生(発泡)を抑制することができるため、耐久性を高めることができる。また、該含有率が1.5質量%以下であると、粘着剤層が硬くなりすぎず、被着体との密着性に優れ、被着体からの剥離を抑制することができる。
同様の観点より、該含有率は、0.1質量%〜1.0質量%の範囲が好ましい。
なお、該含有率を換言すれば、粘着剤組成物中の(メタ)アクリル系共重合体A及び(メタ)アクリル系共重合体Bの全構成単位(質量基準)に対する、粘着剤組成物中の(メタ)アクリル系共重合体Aに含まれる水酸基を有する単量体に由来する構成単位と(メタ)アクリル系共重合体Bに含まれる水酸基を有する単量体に由来する構成単位との合計質量の割合である。
【0044】
また、(メタ)アクリル系共重合体Aの水酸基を有する単量体に由来する構成単位の含有率aに対する、(メタ)アクリル系共重合体Bの水酸基を有する単量体に由来する構成単位の含有率bの比率(b/a)は、耐久性と白抜けの抑制とを両立する観点から、5〜500の範囲が好ましく、10〜300の範囲がより好ましく、20〜200の範囲が特に好ましい。
【0045】
(メタ)アクリル系共重合体A及び(メタ)アクリル系共重合体Bの酸価の合計が2.5mgKOH/g以下となる範囲で、(メタ)アクリル系共重合体A及び(メタ)アクリル系共重合体Bは、カルボキシル基を有する単量体を共重合成分としてもよい。カルボキシル基を有する単量体としては、カルボキシル基を有する(メタ)アクリル系単量体が挙げられる。カルボキシル基を有する(メタ)アクリル系単量体としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、無水マレイン酸、フマル酸、クロトン酸、イタコン酸、シトラコン酸、桂皮酸、コハク酸モノヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、マレイン酸モノヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、フマル酸モノヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、フタル酸モノヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、1,2−ジカルボキシシクロヘキサンモノヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸ダイマー、ω−カルボキシ−ポリカプロラクトンモノ(メタ)アクリレートが挙げられる。
【0046】
(メタ)アクリル系共重合体における、カルボキシル基を有する単量体に由来する構成単位の含有率は、酸価を低くしてITOの腐食を抑制する観点から、全構成単位に対して0.2質量%以下が好ましく、0.05質量%以下がより好ましく、0質量%すなわち含まないことが更に好ましい。
【0047】
本発明で用いる(メタ)アクリル系共重合体A及び(メタ)アクリル系共重合体Bは、前述のアルキル(メタ)アクリレート、水酸基を有する単量体及びカルボキシル基を有する単量体以外のその他の単量体を共重合成分としてもよい。その他の単量体としては、例えば、芳香族環を有する(メタ)アクリル系単量体、窒素原子を有する(メタ)アクリル系単量体、その他の共重合性単量体が挙げられる。
【0048】
本発明で用いる(メタ)アクリル系共重合体A及び(メタ)アクリル系共重合体Bは、芳香族環を有する(メタ)アクリル系単量体を共重合成分として含んでいてもよい。これにより、本発明における粘着剤組成物は、偏光板の接着に用いる際の白抜けを抑制しやすくなる。
【0049】
芳香族環を有する(メタ)アクリル系単量体としては、例えば、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、フェノキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド(EO)変性クレゾール(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド(EO)変性ノニルフェノール(メタ)アクリレート、ヒドロキシエチル化β−ナフトールアクリレート、ビフェニル(メタ)アクリレートが挙げられる。
【0050】
本発明で用いる(メタ)アクリル系共重合体A及び(メタ)アクリル系共重合体Bは、窒素原子を有する(メタ)アクリル系単量体を共重合成分として含んでいてもよい。窒素原子を有する(メタ)アクリル系単量体を共重合体成分として含むと、養生時間が短縮する傾向にある。
【0051】
窒素原子を有する(メタ)アクリル系単量体としては、例えば、アミノエチル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジエチルアクリルアミド、N−エチル、N−メチル(メタ)アクリルアミド、N−イソプロピル(メタ)アクリルアミドが挙げられる。
【0052】
本発明で用いる(メタ)アクリル系共重合体A及び(メタ)アクリル系共重合体Bは、その他の共重合性単量体を共重合成分として含んでいてもよい。このような単量体としては、例えば、スチレン、α−メチルスチレン、t−ブチルスチレン、p−クロロスチレン、クロロメチルスチレン、ビニルトルエン、ビニルピリジンに代表される芳香族モノビニル単量体や、例えば、アクリロニトリル、メタクリロニトリルに代表されるシアン化ビニル単量体や、例えば、蟻酸ビニル、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、「バーサチック酸ビニル」(商品名、ネオデカン酸ビニル)に代表されるカルボン酸ビニル単量体や、これらの各種誘導体が挙げられる。
【0053】
本発明で用いる(メタ)アクリル系共重合体A及び(メタ)アクリル系共重合体Bの重量平均分子量(Mw)は、とくに制約はないが、それぞれ70万〜200万の範囲が好ましく、100万〜150万の範囲が好ましい。重量平均分子量は、重合反応温度、時間、有機溶媒の量などにより調整することができる。重量平均分子量が70万〜200万の範囲であれば、本発明の粘着剤組成物の粘度が低く、塗布性が良好であり好ましい。
【0054】
(メタ)アクリル系共重合体A及び(メタ)アクリル系共重合体Bの重量平均分子量(Mw)は、下記の方法によりそれぞれ測定された値である。
(重量平均分子量(Mw)の測定方法)
下記(1)〜(3)に従って測定する。
(1)(メタ)アクリル系共重合体溶液((メタ)アクリル系共重合体A又は(メタ)アクリル系共重合体を含む溶液)を剥離紙に塗布し、100℃で2分間乾燥し、フィルム状の(メタ)アクリル系共重合体を得る。
(2)前記(1)で得られたフィルム状の(メタ)アクリル系共重合体をテトラヒドロフランにて固形分0.2%になるように溶解させる。
(3)下記条件にて、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を用いて、標準ポリスチレン換算値として、(メタ)アクリル系共重合体の重量平均分子量(Mw)を測定する。
(条件)
GPC:HLC−8220 GPC〔東ソー(株)製〕
カラム:TSK−GEL GMHXL4本使用
移動相溶媒:テトラヒドロフラン
流速:0.6ml/min
カラム温度:40℃
【0055】
本発明で用いる(メタ)アクリル系共重合体Aのガラス転移温度(TgA)及び(メタ)アクリル系共重合体Bのガラス転移温度(TgB)は、粘着剤組成物に十分な凝集力を与え、十分な耐久性を発揮させることを目的として、それぞれ−80℃以上が好ましく、−60℃以上がより好ましい。また、TgA及びTgBは、支持基板に対する十分な密着性を粘着剤組成物に発揮させ、はがれ等が生じない耐久性を発揮させることを目的として、−25℃以下が好ましい。
【0056】
より詳細には、TgAは、−60℃以上−40℃以下の範囲が好ましく、TgBは、−55℃以上−25℃以下の範囲が好ましい。TgAが上記数値範囲内であると、粘着剤層としたときの耐久性がより高く、かつ白抜けがより抑制される。TgBが上記数値範囲内であると、粘着剤層としたときに被着体からの剥離が生じにくく、耐久性がより高くなる。
【0057】
さらに、TgAは、耐久性をより高め、かつ白抜けをより抑制する観点から−60℃以上−45℃以下の範囲が好ましく、−60℃以上−50℃以下の範囲がより好ましい。
また、同様の観点から、TgBは、−55℃以上−30℃以下の範囲が好ましい。
【0058】
また、TgA及びTgBは、耐久性をさらに高め、かつ白抜けをさらに好適に抑制する観点から0<TgB−TgA≦30が好ましく、0<TgB−TgA≦30かつ−60≦TgA≦−50がより好ましい。
【0059】
TgA及びTgBは、それぞれの共重合体について、下記式の計算により求められる絶対温度(K)をセルシウス温度(℃)に換算した値である。
【0060】
【数1】
式中、Tg
1、Tg
2、・・・・・及びTg
nは、単量体1、単量体2、・・・・・及び単量体nそれぞれの単量体を単独重合体としたときの絶対温度(K)で表されるガラス転移温度である。m
1、m
2、・・・・・及びm
nは、それぞれの単量体のモル分率である。
【0061】
なお、「単独重合体としたときの絶対温度(K)で表されるガラス転移温度」は、その単量体を単独で重合して製造した単独重合体の絶対温度(K)で表されるガラス転移温度をいう。単独重合体のガラス転移温度は、その単独重合体を、示差走査熱量測定装置(DSC)(セイコーインスツルメンツ社製、EXSTAR6000)を用い、窒素気流中、測定試料10mg、昇温速度10℃/分の条件で測定を行い、得られたDSCカーブの変曲点を、単独重合体のガラス転移温度としたものである。
【0062】
代表的な単量体の「単独重合体のセルシウス温度(℃)で表されるガラス転移温度」は、メチルアクリレートは5℃であり、エチルアクリレートは−27℃であり、n−ブチルアクリレートは−57℃であり、2−エチルヘキシルアクリレートは−76℃であり、2−ヒドロキシエチルアクリレートは−15℃であり、4−ヒドロキシブチルアクリレートは−39℃であり、t−ブチルアクリレートは41℃であり、アクリル酸は163℃である。例えば、これら代表的な単量体を用いることで、前述のガラス転移温度TgA、TgBを適宜調整することが可能である。
なお、絶対温度(K)から273を引くことで絶対温度(K)をセルシウス温度(℃)に換算可能であり、セルシウス温度(℃)に273を足すことでセルシウス温度(℃)を絶対温度(K)に換算可能である。
【0063】
本発明で用いる(メタ)アクリル系共重合体A及び(メタ)アクリル系共重合体Bの製造方法は、特に制限されるものではなく、溶液重合、乳化重合、懸濁重合などの方法で単量体を重合して製造できる。なお、製造後に本発明における粘着剤組成物を調製するにあたり、処理工程が比較的簡単かつ短時間で行えることから、溶液重合が好ましい。
【0064】
溶液重合は、一般に、重合槽内に所定の有機溶媒、単量体、重合開始剤、及び、必要に応じて用いられる連鎖移動剤を仕込み、窒素気流中又は有機溶媒の還流温度で、撹拌しながら数時間加熱反応させる等の方法を使用することができる。なお、(メタ)アクリル系共重合体の重量平均分子量は、反応温度、時間、溶剤量、触媒の種類や量を調整することにより、所望の値にできる。
【0065】
(メタ)アクリル系共重合体A及び(メタ)アクリル系共重合体Bの製造に用いられる重合用の有機溶媒としては、芳香族炭化水素化合物、脂肪系もしくは脂環族系炭化水素化合物、エステル化合物、ケトン化合物、グリコールエーテル化合物、アルコール化合物などが挙げられる。これらの有機溶媒はそれぞれ1種単独でも、2種以上混合して用いてもよい。また、重合開始剤としては、例えば、通常の重合方法で使用できる有機過酸化物、アゾ化合物が挙げられる。
【0066】
[トリレンジイソシアネート系化合物]
本発明における粘着剤組成物は、(メタ)アクリル系共重合体A及び(メタ)アクリル系共重合体Bの合計100質量部に対して5質量部〜30質量部の範囲のトリレンジイソシアネート系化合物を含む。
トリレンジイソシアネート系化合物は、架橋剤として機能する。
【0067】
トリレンジイソシアネート系化合物としては、トリレンジイソシアネート、トリレンジイソシアネートの2量体、トリレンジイソシアネートとポリオールとのアダクト体、トリレンジイソシアネートの3量体又は5量体であるイソシアヌレート体、トリレンジイソシアネートのビュレット体などの各種トリレンジイソシアネートに由来するトリレンジイソシアネート系化合物を用いることができる。上記の中でも、反応性に優れ架橋密度を高めることができる点、並びに(メタ)アクリル系共重合体A及び(メタ)アクリル系共重合体Bとの相溶性に優れる点から、トリレンジイソシアネートとポリオールとのアダクト体が好ましく、トリレンジイソシアネートとトリメチロールプロパンとのアダクト体が特に好ましい。
【0068】
粘着剤組成物におけるトリレンジイソシアネート系化合物の含有量は、(メタ)アクリル系共重合体A及び(メタ)アクリル系共重合体Bの合計100質量部に対して、5質量部〜30質量部の範囲である。トリレンジイソシアネート系化合物を5質量部以上含むことにより、発泡や剥がれを抑制することができ、耐久性(特に耐熱性)に優れる。トリレンジイソシアネート系化合物を30質量部以下含むことにより、粘着剤層としたときの白化を抑制することができ、タッチパネル、光学フィルム等の透明性が要求される物品の貼り合わせに好適に用いることが可能である。
【0069】
粘着剤組成物におけるトリレンジイソシアネート系化合物の含有量は、(メタ)アクリル系共重合体A及び(メタ)アクリル系共重合体Bの合計100質量部に対して、10質量部〜30質量部の範囲が好ましく、12質量部〜30質量部の範囲がより好ましい。これにより、粘着剤層としたときの耐久性と白抜けの抑制との両立により優れる。
【0070】
トリレンジイソシアネート系化合物は、上市されている市販品を用いてもよい。市販品では、トリレンジイソシアネートとトリメチロールプロパンとのアダクト体として、日本ポリウレタン工業株式会社製の「コロネートL」(商品名)や、トリレンジイソシアネートのイソシアヌレート体として、日本ポリウレタン工業株式会社製の「コロネート2030」等を好適に使用することができる。
【0071】
[その他の架橋剤]
本発明における粘着剤組成物は、本発明の目的を損なわない範囲にて、トリレンジイソシアネート系化合物以外のその他の架橋剤を含んでもよい。その他の架橋剤としては、特に限定されず、トリレンジイソシアネート系化合物以外のポリイソシアネート化合物、ポリエポキシ化合物、ポリアジリジン化合物、金属キレート化合物等を挙げることができる。これらその他の架橋剤は、1種単独を、又は2種以上を、トリレンジイソシアネート系化合物と組み合わせて使用することができる。
【0072】
[イミダゾール化合物]
本発明における粘着剤組成物は、イミダゾール化合物を含むことが好ましい。イミダゾール化合物は、粘着剤組成物において、例えば架橋触媒として機能する。粘着剤組成物がイミダゾール化合物を含むことで、優れた耐久性を維持しつつ、養生時間をより短縮することができる。
イミダゾール化合物を含むことで、架橋点が水酸基であり架橋剤がイソシアネート化合物である場合に使用されることが多い錫化合物を含有する架橋触媒を使用せずに、養生時間を短縮することができる。
【0073】
イミダゾール化合物としては、分子中に少なくとも1つのイミダゾール環を有する化合物であれば特に制限されないが、養生時間を短縮し、かつポットライフを長くする観点から、N置換イミダゾール化合物が好ましい。N置換イミダゾール化合物は、分子中に少なくとも1つのイミダゾール環を有し、イミダゾール環の窒素原子上に水素原子を有さない化合物であれば特に制限されない。
【0074】
N置換イミダゾール化合物の具体例としては、下記一般式(I)で表される化合物が挙げられる。
【0076】
一般式(I)において、式(I)中、R
1、R
2及びR
4は、それぞれ独立に、水素原子又は置換基を表し、R
3は、置換基を表す。好ましくは、一般式(I)において、R
1、R
2、及びR
4は、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基、アリール基又はアラルキル基を表し、R
3はアルキル基、アリール基又はアラルキル基を表す。また、R
1及びR
2、又はR
3及びR
4は互いに連結して環状構造を形成してもよい。
【0077】
一般式(I)におけるアルキル基(R
1〜R
4)は、直鎖状であっても、分岐鎖状であってもよい。また、アルキル基の炭素数は1〜2が好ましい。一般式(I)におけるアリール基(R
1〜R
4)は、炭素数が6〜10が好ましく、フェニル基又はナフチル基がより好ましい。一般式(I)におけるアラルキル基(R
1〜R
4)は、炭素数1〜2のアルキレン基と炭素数6〜10のアリール基とからなることが好ましく、ベンジル基又はフェニルエチル基がより好ましい。
【0078】
一般式(I)で表されるN置換イミダゾール化合物は、養生時間を短縮し、かつポットライフを長くする観点から、R
3がアルキル基又はアラルキル基であって、R
1、R
2及びR
4がそれぞれ独立に、水素原子、アルキル基又はアリール基が好ましい。中でも、一般式(I)で表されるN置換イミダゾール化合物は、1,2−ジメチルイミダゾール、1−ベンジル−2−メチルイミダゾール及び1−ベンジル−2−フェニルイミダゾールからなる群より選ばれる少なくとも1種がより好ましい。またR
3及びR
4が互いに連結して5〜6員の飽和脂肪族環を形成し、R
1及びR
2が互いに連結して6員の芳香族環を形成する態様も好ましく、養生時間短縮の観点から、2,3−ジヒドロ−1H−ピロロ[1,2−a]ベンズイミダゾールがより好ましい。
【0079】
粘着剤組成物におけるイミダゾール化合物の含有量は、養生時間を短縮し、かつポットライフを長くする観点から、(メタ)アクリル系共重合体A及び(メタ)アクリル系共重合体Bの合計100質量部に対して、0.01質量部〜1.5質量部の範囲が好ましく、0.05質量部〜1.2質量部の範囲がより好ましく、0.1質量部〜1.0質量部の範囲が更に好ましい。
【0080】
本発明で用いるN置換イミダゾール化合物としては、例えば、四国化成工業株式会社製の「キュアゾール 1,2DMZ」、「キュアゾール 1B2MZ」、「キュアゾール 1B2PZ」、「キュアゾール TBZ」など、市販されているものが挙げられる。
【0081】
なお、反応速度を上げて養生時間を短縮するため、架橋触媒としてイミダゾール化合物の代わりに錫化合物を使用してもよく、イミダゾール化合物と錫化合物とを組み合わせてもよいが、耐久性の観点から架橋触媒はイミダゾール化合物が好ましい。粘着剤組成物における錫化合物の含有量(イミダゾール化合物と錫化合物とを組み合わせた場合はその合計量)の好ましい範囲は、上述のイミダゾール化合物の含有量と同様である。
【0082】
[シランカップリング剤]
本発明における粘着剤組成物は、シランカップリング剤を更に含むことが好ましい。粘着剤組成物がシランカップリング剤を含む場合、粘着剤層がガラスに対してより優れた接着性を示し、偏光板が組み込まれた液晶表示装置が高温環境下又は高温高湿環境下に曝されても、粘着剤層と偏光板又は液晶セルとの間に剥がれがより発生し難くなる傾向がある。
【0083】
シランカップリング剤としては、例えば、メルカプト基を有するカップリング剤、エポキシ基を有するカップリング剤、カルボキシル基を有するカップリング剤、アミノ基を有するカップリング剤、ヒドロキシル基を有するカップリング剤、アミド基を有するカップリング剤、イソシアネート基を有するカップリング剤、イソシアヌレート骨格を有するカップリング剤などが挙げられる。これらシランカップリング剤は、1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0084】
シランカップリング剤は、上市されている市販品を用いてもよい。市販品としては、例えば、信越化学工業株式会社製の「KBM−403」、「KBM−303」、「KBM−402」、「KBE−402」、「KBE−403」(商品名)に代表されるエポキシ基を有するシランカップリング剤を好適に使用することができる。
【0085】
本発明における粘着剤組成物がシランカップリング剤を含有する場合、粘着剤組成物におけるシランカップリング剤の含有量は、(メタ)アクリル系共重合体A及び(メタ)アクリル系共重合体Bの合計100質量部に対して、0.05質量部〜0.7質量部の範囲が好ましく、0.1質量部〜0.5質量部の範囲がより好ましい。
【0086】
[溶剤]
また、本発明における粘着剤組成物は、偏光板等の光学フィルムやタッチパネル、液晶セルなどに対する塗布性向上のために溶剤が添加されていてもよい。
【0087】
溶剤としては、例えば、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサンに代表される炭化水素類、ジクロロメタン、トリクロロエタン、トリクロロエチレン、テトラクロロエチレン、ジクロロプロパンに代表されるハロゲン化炭化水素類、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロピルアルコール、ブタノール、イソブチルアルコール、ジアセトンアルコールに代表されるアルコール類、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジオキサン、テトラヒドロフランに代表されるエーテル類、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、イソホロン、シクロヘキサノンに代表されるケトン類、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸イソブチル、酢酸アミル、酢酸エチルに代表されるエステル類、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートに代表されるポリオール類、これらの誘導体が挙げられる。
【0088】
[その他の成分]
本発明における粘着剤組成物は、(メタ)アクリル系共重合体A、(メタ)アクリル系共重合体B及びトリレンジイソシアネート系化合物の他に、必要に応じて、前述のイミダゾール化合物、シランカップリング剤、溶剤及びその他の架橋剤や、耐候性安定剤、タッキファイヤー、可塑剤、軟化剤、剥離助剤、染料、顔料、無機充填剤、界面活性剤、酸化防止剤、金属腐食防止剤、紫外線吸収剤、ヒンダードアミン系化合物などの光安定剤等を適宜含有してもよい。
【0089】
本発明における粘着剤組成物は、耐久性をより高め、かつ白抜けをより抑制する観点から、架橋後における30℃の貯蔵弾性率(G’)は2.0×10
5Pa〜1.0×10
7Paの範囲が好ましく、2.0×10
5Pa〜5.0×10
5Paの範囲がより好ましく、3.0×10
5Pa〜2.0×10
6Paの範囲が更に好ましい。なお、粘着剤組成物の貯蔵弾性率は、実施例に記載する方法により測定される値である。
【0090】
〔粘着シート〕
本発明における粘着シートは、上述した粘着剤組成物から形成された粘着剤層を有する。本発明における粘着シートは、基材を有しない無基材タイプの粘着シートでもよく、光学フィルムなどの基材の少なくとも片面に粘着剤層を有する有基材タイプの粘着シートでもよい。前記粘着剤層は、高温環境下又は高温高湿環境下に曝されても、被着体との界面で浮きや剥がれが生じにくいため、本発明における粘着シートは耐久性に優れる。
【0091】
本発明の粘着シートにおいて、粘着剤層の厚さは、特に制限されるものではなく、用途や要求性能により適宜選択することができる。粘着剤層の厚さとして、例えば1〜100μmの範囲が挙げられる。
【0092】
本発明の粘着シートを光学用途に使用する場合、粘着剤層は、透明性が高いことが好ましい。具体的には、JIS K 7361(1997年)に従って測定される可視光波長領域における粘着剤層の全光線透過率は、85%以上が好ましく、90%以上がより好ましい。
また、JIS K 7136(2000年)に従って測定される粘着剤層のヘイズは、2.5%以下が好ましく、2.0%以下がより好ましく、1.5%以下がさらに好ましい。
【0093】
本発明における粘着シートの露出した粘着剤層は、剥離フィルムによって保護されていてもよい。剥離フィルムとしては、粘着剤層からの剥離が容易に行なえるものであれば特に限定されず、例えば、剥離処理剤を用いて少なくとも片面に易剥離処理が施された樹脂フィルムが挙げられる。樹脂フィルムとしては、例えば、ポリエチレンテレフタレートフィルムに代表されるポリエステルフィルムが挙げられる。剥離処理剤として、例えば、フッ素系樹脂、パラフィンワックス、シリコーン、長鎖アルキル基化合物が挙げられる。剥離フィルムは、粘着シートを実用に供するまでの間、粘着剤層の表面を保護し、使用時に剥離される。
【0094】
本発明における粘着シートは、例えば、本発明における粘着剤組成物を剥離フィルムや基材に塗布し、乾燥後に一定期間養生することによって粘着剤層を形成して作製できる。養生の条件は、例えば23℃、50%RH(相対湿度)の環境下で1〜10日間とすることができる。粘着剤層を養生することにより、トリレンジイソシアネート系化合物によって(メタ)アクリル系共重合体を十分に架橋された状態とすることができる。
【0095】
無基材タイプの粘着シートは、例えば、剥離フィルムの剥離処理面に粘着剤組成物を塗布し、乾燥させ、粘着剤組成物の層を形成し、得られた前記層の、剥離フィルムと接しない露出した面に、別の剥離フィルムを剥離処理面が接するように重ね、養生して粘着剤層を形成する方法により作製できる。
【0096】
有基材タイプの粘着シートは、粘着剤組成物を光学フィルムなどの基材に塗布する方法により作製しても、粘着剤組成物を剥離フィルムに塗布する方法により作製してもよい。このような方法としては、例えば、剥離フィルムの剥離処理面に粘着剤組成物を塗布し、乾燥させ、粘着剤組成物の層を形成し、得られた前記層の剥離フィルムと接しない露出した面に基材を貼合し、養生して粘着剤層を形成する方法が挙げられる。
【0097】
有基材タイプの粘着シートの基材は、光学フィルムを例示できる。光学フィルムとしては、具体的には、液晶表示装置に使用される光学フィルムが挙げられる。より具体的には、偏光板、位相差板、反射防止フィルム、視野角拡大フィルム、輝度向上フィルム、ITOフィルム等の光学フィルムが挙げられる。これらの中でも、有基材タイプの粘着シートの基材としては、光学フィルムが好ましく、偏光板がより好ましい。
【0098】
偏光板は、少なくとも偏光子を有していればよく、例えば偏光子の片面に保護フィルムを有する偏光板や、偏光子の両面に保護フィルムを有する偏光板を用いることができる。偏光板の偏光子としては、例えばヨウ素が吸着配向されたポリビニルアルコール(PVA)フィルムが使用され、偏光子の保護フィルムとしては、例えばトリアセチルセルロース(TAC)が使用される。
【0099】
偏光板を基材とする場合、粘着剤層は、PVAフィルム上に形成してもよいし、TACフィルム上に形成してもよい。
【0100】
剥離フィルムや基材に粘着剤組成物を塗布する方法としては、グラビアロールコーター、リバースロールコーター、キスロールコーター、ディップロールコーター、バーコーター、ナイフコーター、スプレーコーター等を用いた公知の方法が挙げられる。
【0101】
本発明における粘着シートは、液晶表示装置の光学フィルムなどの貼合に好適に用いることができる。すなわち、本発明における粘着シートは、偏光板、位相差板、反射防止フィルム、視野角拡大フィルム、輝度向上フィルム、ITOフィルム等の光学フィルム同士の貼合、並びに前記光学フィルムと、液晶セル、ガラス基板、保護フィルム等との貼合に好適に用いることができる。また、本発明における粘着シートは、タッチパネルと、液晶セル、ガラス基板、保護フィルム等との貼合に好適に用いることができる。
【0102】
本発明における粘着シートの例としては、粘着剤層の両面に剥離フィルムを貼り合せた構造(剥離フィルム/粘着剤層/剥離フィルム)を備えた無基材タイプの粘着シート、粘着剤層の一方の面に光学フィルム、他方の面に剥離フィルムを貼り合せた構造(光学フィルム/粘着剤層/剥離フィルム)を備えた有基材タイプの粘着シートが挙げられる。
【実施例】
【0103】
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0104】
<(メタ)アクリル系共重合体Aの製造>
(樹脂A1の製造)
温度計、撹拌機、窒素導入管、及び還流冷却管を備えた反応器内に、アルキル(メタ)アクリレートとしてブチルアクリレート(BA)99.999質量部、水酸基を有する単量体として2−ヒドロキシエチルアクリレート(2HEA)0.001質量部、溶剤として酢酸エチル110質量部入れて混合した後、反応器内を窒素置換した。その後、反応器内の混合物を撹拌しながら70℃に昇温した後に、重合開始剤としてアゾビスジメチルバレロニトリル(ABVN)0.04質量部と、溶剤として酢酸エチル40質量部を逐次添加し6時間保持して重合反応させた。重合反応終了後、溶剤としての酢酸エチルで希釈し固形分を24.0質量%にした。このようにして、(メタ)アクリル系共重合体A(樹脂A1)の溶液を得た。
この樹脂A1は、水酸基を有する単量体である2HEAに由来する構成単位を0.001質量%有するため、本発明で用いられる(メタ)アクリル系共重合体Aに含まれる。
【0105】
(樹脂A2〜A11の製造)
以下の表1に示す単量体組成としたこと以外は、前述の「樹脂A1の製造」と同様にして、(メタ)アクリル系共重合体A(樹脂A2〜A11)の溶液を得た。なお、表1において、MAはメチルアクリレート、AAはアクリル酸を表している。
これらの樹脂A2〜A7、A9は、表1に記載したとおり、水酸基を有する単量体である2HEAに由来する構成単位を0.001質量%〜0.5質量%の範囲で有するため、本発明で用いられる(メタ)アクリル系共重合体Aに含まれる。
【0106】
樹脂A1〜A11における単量体組成(質量部)、酸価及びTgAを表1に示す。なお、(メタ)アクリル系共重合体の酸価及びTgAは、前述した手順で算出した。
具体的には、樹脂A6の酸価は以下のとおり算出した。
(0.1/72.1)×56.1×10×1=0.8(mgKOH/g)
なお、AAの分子量は72.1であり、AA1分子中のカルボキシル基の数は1である。
【0107】
【表1】
【0108】
<(メタ)アクリル系共重合体Bの製造>
(樹脂B1の製造)
温度計、撹拌機、窒素導入管、及び還流冷却管を備えた反応器内に、アルキル(メタ)アクリレートとしてブチルアクリレート(BA)84質量部、アルキル(メタ)アクリレートとしてt−ブチルアクリレート(t−BA)15質量部、水酸基を有する単量体として2−ヒドロキシエチルアクリレート(2HEA)1質量部、溶剤として酢酸エチル110質量部を入れて混合した後、反応器内を窒素置換した。その後、反応器内の混合物を撹拌しながら70℃に昇温した後に、重合開始剤としてアゾビスジメチルバレロニトリル(ABVN)0.04質量部と、溶剤として酢酸エチル40質量部とを逐次添加し6時間保持して重合反応させた。重合反応終了後、溶剤としての酢酸エチルで希釈し固形分を19.0質量%にした。このようにして、(メタ)アクリル系共重合体B(樹脂B1)の溶液を得た。
この樹脂B1は、水酸基を有する単量体である2HEAに由来する構成単位を0.001質量%有するため、本発明に用いられる(メタ)アクリル系共重合体Bに含まれる。
【0109】
(樹脂B2〜B13の製造)
以下の表2に示す単量体組成としたこと以外は、前述の「樹脂B1の製造」と同様にして、(メタ)アクリル系共重合体B(樹脂B2〜B13)の溶液を得た。なお、表2において、MAはメチルアクリレート、AAはアクリル酸を表している。
これらの樹脂B2〜B8、B10、B13は、表2に記載したとおり、水酸基を有する単量体である2HEAに由来する構成単位を0.1質量%〜4質量%の範囲で有するため、本発明で用いられる(メタ)アクリル系共重合体Bに含まれる。
【0110】
樹脂B1〜B13における単量体組成(質量部)、酸価及びTgBを表2に示す。なお、(メタ)アクリル系共重合体の酸価及びTgBは、前述した手順で算出した。
具体的には、樹脂B7の酸価は以下のとおり算出した。
(0.1/72.1)×56.1×10×1=0.8(mgKOH/g)
なお、AAの分子量は72.1であり、AA1分子中のカルボキシル基の数は1である。
【0111】
【表2】
【0112】
<粘着剤組成物の調製>
(実施例1)
(メタ)アクリル系共重合体Aとして樹脂A1の溶液354.2質量部(固形分としては85.0質量部)と、(メタ)アクリル系共重合体Bとして樹脂B1の溶液78.9質量部(固形分としては15.0質量部)と、トリレンジイソシアネート系化合物としてコロネートLを20.0質量部(日本ポリウレタン工業株式会社製、トリレンジイソシアネートとトリメチロールプロパンのアダクト体、有効成分としては15.0質量部)と、イミダゾール化合物としてキュアゾールTBZを0.5質量部(四国化成工業株式会社製、2,3−ジヒドロ−1H−ピロロ[1,2−a]ベンズイミダゾール、有効成分としては0.5質量部)と、シランカップリング剤(SC剤)としてKBM−403を0.4質量部(信越化学工業株式会社製、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、有効成分としては0.4質量部)と、を十分に攪拌混合して粘着剤組成物を得た。
得られた粘着剤組成物の酸価の合計、水酸基を有する単量体の含有率(水酸基含有単量体含有率)、水酸基の比率(樹脂B/樹脂A)を表3に示す。
なお、実施例1は、本発明の粘着剤組成物に該当する。
【0113】
(実施例2〜23)
実施例2〜23では、以下の表3に示す粘着剤組成物の組成としたこと以外は、実施例1と同様にして、粘着剤組成物を調製した。
得られた粘着剤組成物の酸価の合計、水酸基含有単量体の含有率、水酸基の比率(樹脂B/樹脂A)を表3に示す。
具体的には、実施例19における酸価の合計は以下のとおり算出した。
0.8×80/(80+20)+0.8×20/(80+20)=0.8
なお、実施例2〜23は、請求項1に記載された粘着剤組成物に該当する。
【0114】
(比較例1〜14)
比較例1〜14では、以下の表3に示す粘着剤組成物の組成としたこと以外は、実施例1と同様にして、粘着剤組成物を調製した。
詳細には、比較例1、2では、酸価の合計が2.5mgKOH/g超であった。
また、比較例3では、樹脂Aの水酸基を有する構成単位の含有率が0.001質量%未満であり、比較例4では、樹脂Aの水酸基を有する構成単位の含有率が0.5質量%超であった。
また、比較例5では、樹脂Bの水酸基を有する構成単位の含有率が0.1質量%未満であり、比較例6では、樹脂Bの水酸基を有する構成単位の含有率が4質量%超であった。
比較例7では、樹脂Aの水酸基を有する構成単位の含有率と、樹脂Bの水酸基を有する構成単位の含有率とが同じであった。
比較例8では、樹脂Bに対する樹脂Aの含有比率(A/B)が、質量基準で60/40よりも小さかった。つまり、比較例8では、樹脂Bの含有量が実施例1〜23よりも多かった。比較例9では、含有比率(A/B)が、質量基準で95/5よりも大きかった。つまり、比較例9では、樹脂Bの含有量が実施例1〜23よりも少なかった。そして、比較例10では、樹脂Bが含まれていなかった。
比較例11では、樹脂A及び樹脂Bの合計量100質量部に対するトリレンジイソシアネート系化合物の量が5質量部未満であり、比較例12では、樹脂A及び樹脂Bの合計量100質量部に対するトリレンジイソシアネート系化合物の量が30質量部超であった。
比較例13では、トリレンジイソシアネート系化合物の代わりに、キシレンジイソシアネート系化合物であるタケネートD−110N(武田薬品工業株式会社製)を架橋剤として用いた。比較例14では、トリレンジイソシアネート系化合物の代わりに、ヘキサメチレンジイソシアネート系化合物であるスミジュールN−75(住化バイエルウレタン株式会社製)を架橋剤として用いた。
【0115】
<粘着シートサンプルの作製>
上記で得られた各実施例及び比較例の粘着剤組成物を用い、以下の手順で粘着シートサンプルを作製した。まず、シリコーン系離型剤で表面処理された剥離フィルム(藤森工業株式会社製、100E−0010NO23)の表面処理面に、乾燥後の塗布量が20g/cm
2となるように粘着剤組成物を塗布した。次いで、粘着剤組成物塗布後の剥離フィルムを100℃で90秒間の条件で熱風循環式乾燥機を用いて乾燥させ、剥離フィルム上に粘着剤組成物の層を形成した。続いて、トリアセチルセルロース(TAC)/ポリビニルアルコール(PVA)/TAC構造の偏光板の一方の面と剥離フィルム上の粘着剤組成物の層とを重ねて貼り合せ、加圧ニップロールに通して圧着した。圧着後、オートクレーブ処理(50℃、5kg/cm
2、20分)を施し、35℃、45%RHの条件下で96時間養生させ、剥離フィルム/粘着剤層/偏光板の積層構造を有する粘着シートサンプルを作製した。
【0116】
以下の表3に、実施例1〜23、比較例1〜14にて得られた粘着剤組成物の組成、粘着剤組成物及び粘着シートサンプルの測定結果、評価結果を示す。
【0117】
【表3】
【0118】
表3中に示す架橋剤a〜c及び架橋触媒d〜gは、以下のとおりである。
架橋剤a:コロネートL(日本ポリウレタン工業株式会社製、トリレンジイソシアネートとトリメチロールプロパンのアダクト体)
架橋剤b:タケネートD−110N(武田薬品工業株式会社製、キシレンジイソシアネート系化合物)
架橋剤c:スミジュールN−75(住化バイエルウレタン株式会社製、ヘキサメチレンジイソシアネート系化合物)
架橋触媒d:キュアゾールTBZ(四国化成工業株式会社製、2,3−ジヒドロ−1H−ピロロ[1,2−a]ベンズイミダゾール)
架橋触媒e:キュアゾール1B2MZ(四国化成工業株式会社製、1−ベンジル−2−メチルイミダゾール)
架橋触媒f:キュアゾール1B2PZ(四国化成工業株式会社製、1−ベンジル−2−フェニルイミダゾール)
架橋触媒g:ジブチル錫ジラウレート
SC剤:KBM−403(信越化学工業株式会社製、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン)
【0119】
表3中、「ND1」は剥がれにより評価不能であったことを表し、「ND2」はヘイズにより評価不能であったことを表す。
【0120】
[ITO腐食防止性の評価]
縦30mm×横95mmにカットしたITOフィルム(商品名テトライトTCF KB300N03−125−U3/P、尾池工業株式会社製)の導電処理された面の両端部に、銀ペースト(商品名ドータイトFA-401CA、藤倉化成株式会社製)を幅が15mmになるように薄く塗り、140℃で15分間焼成した。
各実施例及び各比較例の粘着剤組成物を用いて得られた粘着シートサンプルを縦30mm×横75mmにカットし、粘着シートサンプルの剥離フィルムを剥がし、粘着剤層を露出させた。
露出した粘着剤層が銀ペーストと銀ペーストの間を埋めるように、粘着シートサンプルをITOフィルムの導電処理された面に貼り付けた後、縦20mm×横95mmにカットした。カット後に0.5MPa、40℃、30分の条件でオートクレーブ処理し、腐食防止性試験サンプルを得た。
腐食防止性試験サンプルの両端の銀ペースト部分にテスターのリード棒をあて、試験前の抵抗値を測定した。次いで、腐食防止性試験サンプルを60℃、90%RHの条件下で250時間放置する腐食防止性試験にかけた。試験後の腐食防止性試験サンプルを取り出し、23℃、50%RHの環境下で、腐食防止性試験サンプルの両端の銀ペースト部分にテスターのリード棒をあて、試験後の抵抗値を測定した。試験前の抵抗値と試験後の抵抗値から抵抗値の変化率を以下の式により計算した。
(式)抵抗値の変化率(%)=[(試験後の抵抗値−試験前の抵抗値)÷試験前の抵抗値]×100
上記式より算出される抵抗値の変化率(%)及び下記の評価基準に従い、ITO腐食防止性を評価した。なお、評価結果がA又はBであれば、ITOの腐食が少なく、実用上問題ない。
評価基準
A:抵抗値の変化率が10%未満である。
B:抵抗値の変化率が10%以上20%未満である。
C:抵抗値の変化率が20%以上である。
【0121】
[耐久性(80℃、60℃×90%RH)の評価]
前述のようにして作製した粘着シートサンプルを、吸収軸に対して長辺が45゜になるようにカットした140mm×260mm(長辺)の試験片を準備し、試験片の剥離フィルムを剥がし、粘着剤層を露出させた。次いで、粘着剤層の露出した面が0.7mmコーニング社製無アルカリガラス板「#1737」の片面に接するように、ラミネーターを用いて貼付し、耐久性評価用サンプルを作製した。次に、このサンプルにオートクレーブ処理(50℃、5kg/cm
2、20分)を施し、23℃、50%RHの条件下で24時間放置した。その後、80℃の高温環境下、又は60℃×90%RHの高温高湿環境下に、それぞれ500時間放置し、発泡、剥れや浮きの状態を目視にて観察し、下記評価基準にて評価した。なお、評価結果がA又はBであれば、耐久性に優れ、実用上問題ない。
評価基準
A:発泡、剥れが全く見られない。
B:発泡が殆ど見られなく、かつ2辺において外周端部から0.5mm以上の位置に剥れが無い。
C:発泡が顕著に見られる、又は2辺において外周端部から0.5mm以上の位置に剥れがある。
【0122】
[白抜けの評価]
前述のようにして作製した粘着シートサンプルを、吸収軸に対して長辺が45゜になるようにカットした140mm×260mm(長辺)の試験片を準備し、試験片の剥離フィルムを剥がし、粘着剤層を露出させた。次いで、粘着剤層の露出した粘着シートサンプルを0.7mmコーニング社製無アルカリガラス板「#1737」の両面に、偏光板の偏光軸が互いに直交するようにラミネーターを用いて貼付し、白抜け評価用サンプルを作製した。次に、このサンプルにオートクレーブ処理(50℃、5kg/cm
2、20分)を施し、23℃、50%RHの条件下で24時間放置した。その後、85℃、0%RHの条件下に500時間、放置した。放置後、23℃、50%RHの条件下で均一光源を使用し、白抜け状態を目視にて観察し、下記評価基準にて評価した。なお、評価結果がA又はBであれば、白抜けの抑制に優れ、実用上問題ない。
評価基準
A:白抜けが全く認められない。
B:白抜けがほとんど認められない。
C:白抜けが多く認められる。
【0123】
[貯蔵弾性率(G’)の測定]
各実施例及び各比較例の粘着剤組成物の貯蔵弾性率(G’)を以下の方法により測定した。
調製した粘着剤組成物を前述の粘着シートサンプルの作製と同様の条件で塗布、乾燥、養生させて20μmの粘着剤層を形成した。形成した粘着剤層を厚み600μmになるように粘着剤層同士を貼り合せ、動的粘弾性測定装置(Anton Paar社製、Physica MCR301)を用い、評価温度:30℃、使用コーン:8mmφ、測定ギャップ:0.6mmにて、周波数1Hzでせん断応力を与えながら、貯蔵弾性率(G’)(Pa)を測定した。結果は表3に示すとおりである。
【0124】
[結果]
実施例1〜23では、ITO腐食防止性、耐久性(80℃と60℃×90RHのそれぞれ)及び白抜けの全てにおいて、評価B以上であり、実用上問題ないことがわかる。
一方、比較例1〜14では、ITO腐食防止性、耐久性(80℃と60℃×90RHのそれぞれ)及び白抜けのいずれかにおいて、評価C又は測定不能(白化によるヘイズ、剥がれが原因)であり、実用上問題あることがわかる。