特許第6386409号(P6386409)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 日本碍子株式会社の特許一覧

特許638640913族窒化物自立基板へのドーパント導入方法およびLED素子の製造方法
<>
  • 特許6386409-13族窒化物自立基板へのドーパント導入方法およびLED素子の製造方法 図000004
  • 特許6386409-13族窒化物自立基板へのドーパント導入方法およびLED素子の製造方法 図000005
  • 特許6386409-13族窒化物自立基板へのドーパント導入方法およびLED素子の製造方法 図000006
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6386409
(24)【登録日】2018年8月17日
(45)【発行日】2018年9月5日
(54)【発明の名称】13族窒化物自立基板へのドーパント導入方法およびLED素子の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C30B 29/38 20060101AFI20180827BHJP
   C30B 31/04 20060101ALI20180827BHJP
   H01L 33/32 20100101ALI20180827BHJP
【FI】
   C30B29/38 D
   C30B31/04
   H01L33/32
【請求項の数】6
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2015-70569(P2015-70569)
(22)【出願日】2015年3月31日
(65)【公開番号】特開2015-199650(P2015-199650A)
(43)【公開日】2015年11月12日
【審査請求日】2017年10月20日
(31)【優先権主張番号】特願2014-70913(P2014-70913)
(32)【優先日】2014年3月31日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000004064
【氏名又は名称】日本碍子株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088672
【弁理士】
【氏名又は名称】吉竹 英俊
(74)【代理人】
【識別番号】100088845
【弁理士】
【氏名又は名称】有田 貴弘
(72)【発明者】
【氏名】市村 幹也
(72)【発明者】
【氏名】倉岡 義孝
【審査官】 有田 恭子
(56)【参考文献】
【文献】 特開平11−340571(JP,A)
【文献】 特開2010−225767(JP,A)
【文献】 特開2009−161401(JP,A)
【文献】 特開平09−235199(JP,A)
【文献】 特開平06−293600(JP,A)
【文献】 特開平01−234400(JP,A)
【文献】 特開2002−053397(JP,A)
【文献】 国際公開第2007/083768(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C30B 1/00−35/00
H01L 33/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一方主面が13族元素面であり他方主面が15族元素面である13族窒化物自立基板にドーパントを導入する方法であって、
前記13族窒化物自立基板を、前記ドーパントとして導入する元素の単体金属であるドーパント源金属と金属Gaとの混合融液中に浸漬した状態で保持し、前記混合融液から前記13族窒化物自立基板に前記ドーパントを拡散させることによって、前記13族窒化物自立基板に前記ドーパントを導入する融液アニール工程と、
前記融液アニール工程を経た前記13族窒化物自立基板の前記13族元素面側を研磨することにより前記13族元素面側における前記ドーパントの拡散領域を除去する研磨除去工程と、
を備えることを特徴とする13族窒化物自立基板へのドーパント導入方法。
【請求項2】
請求項1に記載の13族窒化物自立基板へのドーパント導入方法であって、
前記ドーパントがGeまたはSiである、
ことを特徴とする13族窒化物自立基板へのドーパント導入方法。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の13族窒化物自立基板へのドーパント導入方法であって、
前記13族窒化物自立基板と、いずれも固体状態の前記ドーパント源金属と前記金属Gaとを坩堝内に充填し、前記坩堝内の充填物を加熱することにより前記13族窒化物自立基板が浸漬された前記混合融液を得る昇温加熱工程、
をさらに備え、
前記融液アニール工程においては、前記昇温加熱工程で得られた前記混合融液中に前記13族窒化物自立基板を浸漬した状態で保持する、
ことを特徴とする13族窒化物自立基板へのドーパント導入方法。
【請求項4】
請求項1ないし請求項3のいずれかに記載の13族窒化物自立基板へのドーパント導入方法であって、
前記混合融液における前記ドーパント源金属と前記金属Gaとの総重量に対する前記ドーパント源金属の重量比率が2%以上50%以下である、
ことを特徴とする13族窒化物自立基板へのドーパント導入方法。
【請求項5】
請求項1ないし請求項4のいずれかに記載の13族窒化物自立基板へのドーパント導入方法であって、
前記13族窒化物自立基板がGaNの自立基板である、
ことを特徴とする13族窒化物自立基板へのドーパント導入方法。
【請求項6】
請求項1ないし請求項5のいずれかに記載のドーパント導入方法によって前記ドーパントが導入された前記13族窒化物自立基板を下地基板として準備する工程と、
前記13族窒化物自立基板の前記13族元素面上にn型導電層をエピタキシャル形成する工程と、
前記n型導電層の上に活性層をエピタキシャル形成する工程と、
前記活性層の上に備わるp型導電層をエピタキシャル形成する工程と、
前記p型導電層の上にアノード反射電極を形成する工程と、
前記13族窒化物自立基板の前記15族元素面上にドット状、メッシュ状、ライン状、もしくは櫛歯状の金属カソード電極または面状の透明電極を形成する工程と、
前記カソード電極または前記透明電極までが形成されることで得られる積層構造体を素子単位に分断する工程と、
を備えることを特徴とするLED素子の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、13族窒化物自立基板に関し、特に、LED素子用の13族窒化物自立基板に関する。
【背景技術】
【0002】
13族窒化物半導体を用いた発光デバイスであるLED(発光ダイオード)の高効率化に各研究機関・各企業が注力している。取り組みの対象は多岐にわたるが、発光効率向上の一方策として、13族窒化物単結晶からなる自立基板を用いた縦型LED構造の採用が検討されている。
【0003】
13族窒化物自立基板の1つであるGaN自立基板を用いたLED構造においては、通常、−c極性面であるN面(窒素面)の側が光取出し面とされる。これは、+c極性面であるGa面(ガリウム面)に配置されるp型層の導電性が低いことや、p型電極の単位面積あたりのコンタクト抵抗が高いことなどが理由で、寄生直列抵抗を削減するにはGa面の側に設ける電極を形成面の略全体を覆う反射電極とする必要があり、その結果として、N面側を光取り出し面とせざるを得ないからである。
【0004】
それゆえ、光取出し効率を高めるためには、N面側に設ける電極(カソード電極)は、N面を被覆する面積が出来るだけ小さくなるように、ドット状、メッシュ状、ライン状、もしくは櫛歯状などの形状にて形成されるのが好ましいということになる。しかしながら、電極面積を狭くすると、寄生直列抵抗が増加することになる。それゆえ、電極の単位面積あたりのコンタクト抵抗を減らす方策が求められる。一般的に用いられるTi/Al、Ti/Al/Ni/Au等のTi系電極や、ITO、ZnO等の透明電極では、コンタクト抵抗の低減は必ずしも十分ではない。
【0005】
係るコンタクト抵抗低減の手法として、GaN自立基板の裏面にn−GaN層をMOCVD法にてエピタキシャル成長させた後、Ti系電極を形成するという態様が既に公知である(例えば、特許文献1参照)。また、GaN自立基板の裏面を酸素プラズマで処理した後にTi系電極を形成するという態様も既に公知である(例えば、特許文献2参照)。あるいはさらに、窒化物単結晶上に金属Si層とSiO層とを積層後、アニールでSiを窒化物中に拡散させ、その後にTi系電極を形成するという態様も既に公知である(例えば、非特許文献1参照)。
【0006】
また、13族窒化物半導体に対するドーパントの導入制御のための技術として、気相成長法を用いた結晶成長の際に、ドーパントガス(シラン、Cp2Mgなど)を同時供給することでドーパントを導入する方法が広く採用されているほか、液相成長法を用いた結晶成長の際に、ドーパント原料(金属Ge、液体Ge化合物)を液相中に添加しておく技術が、既に公知である(例えば、特許文献3および特許文献4参照)。なお、特許文献3には、基板の厚み方向におけるゲルマニウム濃度は実質的に均一であることが望ましいとの記載もある。
【0007】
あるいは、デバイス作製の際に、熱拡散やイオン注入によるドーパント導入を行う態様も既に公知である(例えば、非特許文献1および非特許文献2参照)。
【0008】
さらには、外周部のキャリア濃度を内部のキャリア濃度よりも低くすることで13族窒化物(III族窒化物)半導体自立基板の反り低減やクラックの抑制を行う技術も既に公知である(例えば、特許文献5参照)。また、基板内部において面内方向にキャリア濃度の分布を設ける一方で、表面におけるキャリア濃度を均一としてなる13族窒化物(III−V族窒化物)半導体自立基板も既に公知である(例えば、特許文献6参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開平11−340571号公報
【特許文献2】特開2010−225767号公報
【特許文献3】特許第4223540号公報
【特許文献4】国際公開第2013/147326号
【特許文献5】特開2010−248022号公報
【特許文献6】特開2005−101475号公報
【非特許文献】
【0010】
【非特許文献1】C.F.Lin et al,"Improved contact performance of GaN film using Si diffusion", Applied Physics Letters, 2000年4月3日, volume76, number14, p.1878-p.1880
【非特許文献2】新山勇樹、他5名、「ノーマリオフ型窒化ガリウム系MOS型電界効果トランジスタの高出力動作」、古河電工時報、平成21年8月、第124号、p.1-p.5
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
特許文献1に開示されているコンタクト抵抗の低減手法は、基板裏面に対しn−GaN層を成長させるプロセスが必要となるため、コスト面で不利である。
【0012】
特許文献2に開示されているコンタクト抵抗の低減手法は、酸化に伴う表面状態の不安定性のため、低抵抗化の再現性が低いという問題がある。
【0013】
一方、非特許文献1に開示されているコンタクト抵抗の低減手法は、金属SiとSiOキャップ層との積層プロセスおよびアニールプロセスを経るためにコスト面で不利である。
【0014】
本発明の発明者は、鋭意検討をするなかで、すでに作製されてなる13族窒化物自立基板の表層部分にドーパントを容易かつ確実に導入する手法を見出すとともに、当該手法が13族窒化物自立基板の15族元素面におけるカソード電極との間のコンタクト抵抗の低減に有効であることを見出した。
【0015】
なお、特許文献3および特許文献4に開示されているような液相成長時にドーパントを導入する手法や、あるいは、広く知られている気相成長時ドーパントを導入する手法は、すでに作製された13族窒化物自立基板に対しドーパントを導入するものではない。
【0016】
また、非特許文献1に開示されている手法は、あらかじめ基板上に形成されたGaN層の上に金属Si層およびSiOキャップ層を積層形成した後、アニールすることで、GaN層に金属Si層およびSiOキャップ層からSiを拡散させるというものであるが、積層プロセスおよびアニールプロセスを経るためにコスト面で不利である。
【0017】
一方、非特許文献2に開示されている手法は、あらかじめ基板上に形成されたGaN層に対しイオン注入によりドーパントを導入するというものであるが、一般にイオン注入装置が高価であるため、コスト面で不利である。
【0018】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、15族元素面の近傍におけるドーパント濃度の高い13族窒化物自立基板を従来よりも簡便にかつ確実に得ることができる13族窒化物自立基板へのドーパント導入方法、および、これによって得られた13族窒化物自立基板を用いて作製されたLED素子を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0019】
上記課題を解決するため、請求項1の発明は、一方主面が13族元素面であり他方主面が15族元素面である13族窒化物自立基板にドーパントを導入する方法であって、前記13族窒化物自立基板を、前記ドーパントとして導入する元素の単体金属であるドーパント源金属と金属Gaとの混合融液中に浸漬した状態で保持し、前記混合融液から前記13族窒化物自立基板に前記ドーパントを拡散させることによって、前記13族窒化物自立基板に前記ドーパントを導入する融液アニール工程と、前記融液アニール工程を経た前記13族窒化物自立基板の前記13族元素面側を研磨することにより前記13族元素面側における前記ドーパントの拡散領域を除去する研磨除去工程と、を備えることを特徴とする。
【0020】
請求項2の発明は、請求項1に記載の13族窒化物自立基板へのドーパント導入方法であって、前記ドーパントがGeまたはSiである、ことを特徴とする。
【0021】
請求項3の発明は、請求項1または請求項2に記載の13族窒化物自立基板へのドーパント導入方法であって、前記13族窒化物自立基板と、いずれも固体状態の前記ドーパント源金属と前記金属Gaとを坩堝内に充填し、前記坩堝内の充填物を加熱することにより前記13族窒化物自立基板が浸漬された前記混合融液を得る昇温加熱工程、をさらに備え、前記融液アニール工程においては、前記昇温加熱工程で得られた前記混合融液中に前記13族窒化物自立基板を浸漬した状態で保持する、ことを特徴とする。
【0022】
請求項4の発明は、請求項1ないし請求項3のいずれかに記載の13族窒化物自立基板へのドーパント導入方法であって、前記混合融液における前記ドーパント源金属と前記金属Gaとの総重量に対する前記ドーパント源金属の重量比率が2%以上50%以下である、ことを特徴とする。
【0023】
請求項5の発明は、請求項1ないし請求項4のいずれかに記載の13族窒化物自立基板へのドーパント導入方法であって、前記13族窒化物自立基板がGaNの自立基板である、ことを特徴とする。
【0026】
請求項の発明は、請求項1ないし請求項5のいずれかに記載のドーパント導入方法によって前記ドーパントが導入された前記13族窒化物自立基板を下地基板として準備する工程と、前記13族窒化物自立基板の前記13族元素面上にn型導電層をエピタキシャル形成する工程と、前記n型導電層の上に活性層をエピタキシャル形成する工程と、前記活性層の上に備わるp型導電層をエピタキシャル形成する工程と、前記p型導電層の上にアノード反射電極を形成する工程と、前記13族窒化物自立基板の前記15族元素面上にドット状、メッシュ状、ライン状、もしくは櫛歯状の金属カソード電極または面状の透明電極を形成する工程と、前記カソード電極または前記透明電極までが形成されることで得られる積層構造体を素子単位に分断する工程と、を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0027】
請求項1ないし請求項の発明によれば、融液中でのアニールと、その後の研磨という、比較的簡便かつ、コスト的にも安価な処理によって、15族元素面の近傍に高濃度のドーパントが導入されてなる13族窒化物自立基板を得ることが出来る。
【0028】
また、請求項の発明によれば、カソード電極における単位面積当たりのコンタクト抵抗が低減されるので、大電流で駆動する際のエネルギーロスが低減された(効率の向上した)LED素子が実現される。
【図面の簡単な説明】
【0029】
図1】13族窒化物自立基板1を例示する図である。
図2】13族窒化物自立基板1へのドーパント導入処理の手順を示す図である。
図3】13族窒化物自立基板1を用いて作製したLED素子10の構成を例示する図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
本明細書中に示す周期表の族番号は、1989年国際純正応用化学連合会(International Union of Pure Applied Chemistry:IUPAC)による無機化学命名法改訂版による1〜18の族番号表示によるものであり、13族とはアルミニウム(Al)・ガリウム(Ga)・インジウム(In)等を指し、14族とは、シリコン(Si)、ゲルマニウム(Ge)、スズ(Sn)、鉛(Pb)等を指し、15族とは窒素(N)・リン(P)・ヒ素(As)・アンチモン(Sb)等を指す。
【0031】
図1は、本発明の実施の形態に係る13族窒化物自立基板1を例示する図である。13族窒化物自立基板1は、その一方主面側が+c極性の13族元素面1aとなっており、他方主面側が−c極性の15族元素面1bとなっているものである。13族窒化物自立基板1は例えば、GaNからなる自立基板であり、その場合、+c極性を有するのはGa面(ガリウム面)であり、−c極性を有するのはN面(窒素面)である。本発明の実施の形態に係る13族窒化物自立基板1は、15族元素面1bの近傍、より具体的には、15族元素面1bから1nm〜50nm以内の範囲におけるドーパント濃度が、他の部分のドーパント濃度よりも高いという特徴を有してなる。なお、本実施の形態においては、ドーパントがいずれも14族元素であるGeとSiである場合を例として説明を行う。
【0032】
13族窒化物自立基板1のサイズには、特段の制限はないが、取り扱いの容易さの点からは、自立基板として取り扱う場合には、直径が1インチ〜6インチ程度であって、200μm〜1mm程度の厚みを有する平板状をなしているのが好適である。もちろん、それ以上大きなサイズを有していてもよい。
【0033】
図2は、13族窒化物自立基板1において上述のようなドーパント分布を実現するための13族窒化物自立基板1へのドーパント導入処理の手順を示す図である。
【0034】
13族窒化物自立基板1に対するドーパント導入処理を開始するにあたっては、まず、13族窒化物自立基板1を用意する(ステップS1)。
【0035】
13族窒化物自立基板1は、例えば、いわゆるフラックス法によって得ることが出来る。
【0036】
フラックス法によって自立基板たる13族窒化物自立基板1を作製するには、まず、サファイア基板などの下地基板上にMOCVD法などの公知の成膜手法によって13族窒化物単結晶の薄膜層を適宜の厚みに形成することで、種基板を作製する。次に、該種基板と、13族窒化物を構成する13族元素の単体金属と、金属Naとを、円筒平底のアルミナ坩堝に充填する。さらに、該アルミナ坩堝を耐熱金属製の育成容器に入れて密閉する。なお、必要であれば、ドーパント源となる化合物についても併せてアルミナ坩堝に充填する態様であってもよい。例えば、Geをドーパントとする場合であれば四塩化ゲルマニウムがドーパント源として例示される。そして、当該容器を、揺動および回転が可能な結晶育成炉内において回転させながら所定の高温高圧状態で保持することによって、13族元素の単体金属と、金属Naとからなる(場合によってはドーパント源となる化合物をさらに含む)融液を撹拌しながら、サファイア基板上に13族窒化物単結晶を200μm〜1mm程度の厚みに成長させる。室温まで徐冷した後、アルミナ坩堝内から13族窒化物単結晶が成長してなるサファイア基板を取り出し、サファイア基板を除去することで、13族窒化物自立基板1が得られる。
【0037】
次に、用意した13族窒化物自立基板1と、いずれも固体状態のドーパント源金属と金属Gaとを、円筒平底のアルミナ坩堝に充填する(ステップS2)。ここで、ドーパント源金属とは、ドーパントとして導入する元素の単体金属である。例えば、Geをドーパントとする場合であれば金属Geを、Siをドーパントとする場合であれば金属Siをそれぞれ用意する。なお、ドーパント源金属と金属Gaとの総重量に対するドーパント源金属の重量比率は2%〜50%であるのが好適である。実際の重量比率は、13族窒化物自立基板1において実現しようとするドーパント濃度やドーパントの導入深さ等を鑑みて、適宜に定められてよい。例えば、当該重量比率と13族窒化物自立基板1におけるドーパント導入状況との関係をあらかじめ実験的に特定しておき、その結果に応じて重量比率を定める態様であってもよい。
【0038】
続いて、基板等が充填されたアルミナ坩堝を耐熱金属製の容器に入れて密閉した後、雰囲気制御機能付の加熱炉内に配置し、圧力が0.5atm〜5atmのアルゴンまたは窒素雰囲気で800℃〜1300℃のアニール温度にまでアルミナ坩堝内の充填物を加熱することによって、ドーパント源金属と金属Gaとを混合融液化する(ステップS3)。
【0039】
そして、係るアニール温度で1時間〜100時間保持することにより、13族窒化物自立基板1を融液に浸漬した状態でアニールし(ステップS4)、その後、1時間〜10時間かけて室温まで徐冷する(ステップS5)。
【0040】
室温への徐冷が完了すると、加熱炉から育成容器を取り出し、熱硫燐酸を用いてアルミナ坩堝内から凝固物を取り出す(ステップS6)とともに金属を除去して、基板を回収する(ステップS7)。
【0041】
最後に、回収された13族窒化物自立基板1の表面を研磨する(ステップS8)。具体的には、13族元素面1aに対しては機械研磨を施すことによって、13族窒化物自立基板1の厚みを1μm〜300μm程度減少させた後、平坦性を高めるために機械化学研磨を施す。一方、15族元素面1bに対しては機械化学研磨のみを施す。以上により、13族窒化物自立基板1に対するドーパント導入処理が完了する。
【0042】
以上の手順にてドーパント導入処理が施された13族窒化物自立基板1においては、融液浸漬状態でのアニールの際に、結晶表面から内部へとドーパント原子が拡散してなる。ドーパントの最大侵入範囲は、処理条件にもよるが、概ね、表面から50nm〜500μm程度である。なお、ドーパントが13族窒化物自立基板1の内部へと拡散していることは、ドーパント導入処理後の13族窒化物自立基板1について、SIMS(二次イオン質量分析)などの手法により厚み方向におけるドーパント元素の濃度分布を調べることで確認が可能である。
【0043】
ただし、アニール後の研磨により、13族元素面1aの側においてはドーパントの拡散領域を除去しているので、研磨後に最終的に得られる13族窒化物自立基板1は、上述のように、15族元素面1bの近傍におけるドーパントの濃度が、他の部分のドーパントの濃度よりも高いという特徴を有するものとなっている。
【0044】
すなわち、上述した手順で行うドーパント導入処理は、13族窒化物自立基板1の15族元素面1bの近傍のみに選択的にドーパントを導入するのに特に効果的な手法であるといえる。
【0045】
なお、金属Gaを用いず、ドーパント源金属のみの融液でアニールするという対応も考えられるが、拡散速度が遅く、ドーパントが十分に拡散しないので、好ましくない。すなわち、ドーパント源金属と金属Gaとの混合融液でアニール処理することが、13族窒化物自立基板1へのドーパントの導入には効果的である。これは、13族窒化物自立基板1の最表面に形成されている自然酸化層がドーパント元素の拡散を阻害しており、ドーパント源金属と金属Gaとの混合融液でアニール処理することで、この自然酸化層が除去されるためであると考えられる。
【0046】
<LED素子への適用>
15族元素面1bの近傍におけるドーパント濃度が高められた13族窒化物自立基板1は、LED素子の基板として、特に、縦型構造を有するLED素子の基板として好適に使用されるものである。
【0047】
係る縦型構造のLED素子は、例えば、本実施の形態に係る13族窒化物自立基板1の13族元素面1aの側に、いずれも13族窒化物からなるn型導電層と、例えば多重量子井戸構造を有する活性層と、p型導電層とをMOCVD法などの公知のエピタキシャル成長手法にてこの順にエピタキシャル形成したうえで、p型導電層の上にアノード反射電極を設け、一方、光取り出し面となる15族元素面1bの側にはドット状、メッシュ状、ライン状、もしくは櫛歯状の金属カソード電極または面状の透明電極を設けることで、構成される。n型導電層、p型導電層としては、それぞれ、SiをドープしたGaN層や、MgをドープしたGaN層などが例示される。活性層としては、InGaN層とGaN層とを繰り返し交互に積層してなることで形成される多重量子井戸構造を有するものなどが例示される。金属カソード電極としては、Ti/Al/Ti/Au、Ti/Al/Ni/Au、Ti/Alなどの多層膜(多層電極)が例示される。透明電極としては、ITO(スズ添加酸化インジウム)、AZO(アルミニウム添加酸化亜鉛)、GZO(ガリウム添加酸化亜鉛)、ATO(アンチモン添加酸化スズ)、FTO(フッ素添加酸化スズ)などからなるものが例示される。
【0048】
本実施の形態に係る13族窒化物自立基板1を係る縦型構造のLED素子に使用した場合、LED素子を大電流で駆動する際のエネルギーロスの低減(効率向上)という効果が得られる。なぜならば、15族元素面1bの近傍にドーパントとしてGeやSiのような14族元素が導入されてなることで、上述のような形状のカソード電極を設けたとしても該カソード電極の単位面積当たりのコンタクト抵抗は低く抑えられ、LED素子において寄生直列抵抗が増加することがないからである。なお、LED素子の寄生直列抵抗の大小は、順方向電圧や順方向電流の値などから評価が可能である。
【0049】
以上、説明したように、本実施の形態によれば、融液中でのアニールと、その後の研磨という、比較的簡便かつ、コスト的にも安価な処理によって、15族元素面の近傍にのみドーパントが導入されてなる13族窒化物自立基板を得ることが出来る。
【0050】
また、係る13族窒化物自立基板を用いて、15族元素面の側を光取り出し面とする縦型構造のLED素子を作製すれば、15族元素面に櫛歯状等のカソード電極を設ける際の該カソード電極における単位面積当たりのコンタクト抵抗が低減される。これにより、LED素子を大電流で駆動する際のエネルギーロスの低減(効率向上)が実現される。
【実施例】
【0051】
(実施例1)
13族窒化物自立基板1としてのGaN自立基板を対象に、Geをドーパントとするドーパント導入処理を行い、その後、厚み方向におけるドーパントの濃度分布を評価した。以下においては、13窒化物自立基板1をGaN自立基板1とも称する。また、13族元素面1aのことをGa面1aと称し、15族元素面1bのことをN面1bと称することがある。
【0052】
初めに、フラックス法によりGaN自立基板1を作製した。具体的には、まず、直径2インチのサファイア下地基板上にGaN薄膜を備える種基板を作製した後、該種基板と、金属Gaと、金属Naと、四塩化ゲルマニウムとを円筒平底のアルミナ坩堝に充填した。さらに、該アルミナ坩堝を耐熱金属製の育成容器に入れて密閉した。当該容器を、揺動および回転が可能な結晶育成炉内において回転させながら所定の高温高圧状態で保持することで、金属Gaと、金属Naと、四塩化ゲルマニウムとからなる融液を撹拌しながら、サファイア基板上にキャリア濃度が約1×1018[cm−3]のGaN単結晶1を0.7mm程度の厚みに成長させた。室温まで徐冷した後、アルミナ坩堝内から、GaN厚膜が成長してなるサファイア下地基板を取り出し、さらにサファイア下地基板を除去することで、GaN自立基板1を得た。
【0053】
次に、得られたGaN自立基板1に対しドーパント導入処理を行った。具体的には、内径80mm、高さ45mmの円筒平底のアルミナ坩堝を用意し、その中に、作製したGaN自立基板1と、5gの金属Geと、95gの金属Gaとを充填した。このアルミナ坩堝を耐熱金属製の容器に入れて密閉した後、雰囲気制御機能付加熱炉内に配置し、1気圧のアルゴン雰囲気内でアニール温度である1000℃まで昇温加熱し、続いて、1000℃のまま50時間保持することにより、ドーパント源金属である金属Geと金属Gaとの混合融液によるアニールを行った。当該時間経過後、5時間かけて室温まで徐冷した。徐冷後、加熱炉から育成容器を取り出し、熱硫燐酸を用いて、金属を除去して、GaN自立基板1を回収した。
【0054】
最後に、回収したGaN自立基板1のGa面1aに対して機械研磨および機械化学研磨を施し、さらにはN面1bに対して機械化学研磨を施すことで、GaN自立基板1の厚みを0.5mmとした。
【0055】
ドーパント導入処理後のGaN自立基板1について、SIMSにより、厚み方向におけるGe原子の濃度分布を測定した。なお、参考のため、Si原子の濃度分布についても併せて測定した。具体的には、Ga面1aから深さ20nmの箇所と、N面1bから20nm、100nm、250nm、400nmの4箇所の計5箇所でのGeおよびSiの原子濃度を測定した。
【0056】
また、ドーパント導入処理後のGaN自立基板1を用いて、LED素子を作製し、その電気的特性を評価した。図3は、本実施例においてGaN自立基板1を用いて作製したLED素子10の構成を例示する図である。
【0057】
LED素子10の作製は、GaN自立基板1を母基板とし、いわゆる多数個取りの手法により行った。具体的には、まず、MOCVD法によって、GaN自立基板1のGa面1aの側に、n型半導体層2としてのSiドープGaN層と、第1単位層3aとしてのIn0.15Ga0.85N層と第2単位層3bとしてのGaN層とを繰り返し交互に10層ずつ有する活性層3と、p型半導体層4としてのMgドープGaN層とを順次にエピタキシャル形成した。そして、フォトリソグラフィープロセスと電子ビーム蒸着法により、GaN自立基板1のN面1bの上に櫛歯状のカソード電極6のパターンを設け、さらに、電子ビーム蒸着法により、MgドープGaN層の上にアノード電極5のパターンを設けた。各層の形成条件は以下の通りである。なお、本実施の形態において、15族/13族ガス比とは、13族原料の供給量に対する15族原料の供給量の比(モル比)である。
【0058】
SiドープGaN層(n型半導体層2):
形成温度→1100℃;
リアクタ内圧力→100kPa;
15族/13族ガス比→2000;
13族原料に対するSi原料モル比→1×10−4
厚み→1000nm。
【0059】
In0.15Ga0.85N層(第1単位層3a):
形成温度→800℃;
リアクタ内圧力→100kPa;
15族/13族ガス比→10000;
全13族原料に対するTMIモル比→0.6;
厚み→2nm。
【0060】
GaN層(第2単位層3b):
形成温度→800℃;
リアクタ内圧力→100kPa;
15族/13族ガス比→20000;
厚み→5nm。
【0061】
MgドープGaN層(p型半導体層4):
形成温度→1000℃;
リアクタ内圧力→100kPa;
15族/13族ガス比→10000;
13族原料に対するMg原料モル比→1×10−3
厚み→100nm。
【0062】
なお、MgドープGaN層の形成後には、Mg活性化処理として、650℃の窒素ガス雰囲気中で5分間のアニール処理を行った。
【0063】
カソード電極6は、Ti/Al/Ti/Au多層電極として形成した。それぞれの電極層の厚みは、30nm、300nm、30nm、60nmとした。カソード電極6を形成の後には、合金化アニールを実施した。合金化アニールは、700℃の窒素雰囲気で30秒間行った。
【0064】
アノード電極5は、Ni/Au多層電極として形成した。それぞれの電極層の厚みは、30nm、300nmとした。アノード電極5を形成の後には、合金化アニールを実施した。合金化アニールは500℃の窒素雰囲気で、5分間行った。
【0065】
最後に、アノード電極5の形成までがなされた積層構造体をダイサーにより素子単位に分断して、複数のLED素子10を得た。
【0066】
LED素子10の電気的特性の評価としては、順方向電流が100mAおよび10μAのときの順方向電圧の測定と、逆方向電圧が−5Vのときの逆方向飽和電流の測定とを行った。測定サンプル数は10とした。
【0067】
(実施例2)
GaN自立基板1を対象に、Siをドーパントとするドーパント導入処理を行い、その後、厚み方向におけるドーパントの濃度分布を評価した。具体的には、アルミナ坩堝への充填物を、GaN自立基板1と、5gの金属Siと、95gの金属Gaとしたほかは、実施例1と同様とした。さらに、実施例1と同様に、LED素子10の作製と、該LED素子10の電気的特性の評価とを行った。
【0068】
(実施例3)
アニール処理を、5気圧の窒素雰囲気内で、アニール温度を1300℃とし、該アニール温度での保持時間を12時間として行うようにしたほかは、実施例1と同様のドーパント導入処理とドーパント濃度分布の評価とを行った。さらに、実施例1と同様に、LED素子10の作製と、該LED素子10の電気的特性の評価とを行った。
【0069】
なお、SIMSによるGeおよびSiの原子濃度の測定は、Ga面1aから深さ20nmの箇所と、N面1bから20nm、100nm、250nm、400nm、10μm、100μm、300μmの7箇所の計8箇所で行った。
【0070】
(実施例4)
アニール処理を、5気圧の窒素雰囲気内で、アニール温度を1300℃とし、該アニール温度での保持時間を12時間として行うようにしたほかは、実施例2と同様のドーパント導入処理とドーパント濃度分布の評価とを行った。さらに、実施例2と同様に、LED素子10の作製と、該LED素子10の電気的特性の評価とを行った。
【0071】
SIMSによるGeおよびSiの原子濃度の測定は、実施例3と同様の計8箇所で行った。
【0072】
(比較例1)
アニール時の融液がGeのみを含むようにするべく、アルミナ坩堝への充填物を、GaN自立基板1と、100gの金属Geとしたほかは、実施例1と同様の処理とドーパント濃度分布の評価とを行った。さらに、実施例1と同様に、LED素子10の作製と、該LED素子10の電気的特性の評価とを行った。
【0073】
(比較例2)
アニール時の融液がGeのみを含むようにするべく、アルミナ坩堝への充填物を、GaN自立基板1と、100gの金属Geとしたほかは、実施例3と同様のドーパント導入処理とドーパント濃度分布の評価とを行った。さらに、実施例3と同様に、LED素子10の作製と、該LED素子10の電気的特性の評価とを行った。
【0074】
(比較例3)
アルミナ坩堝への充填物を、GaN自立基板1の13族元素面1aおよび15族元素面1bのそれぞれに金属Si膜をスパッタ法にて10μmの厚みに形成したもののみとしたほかは、実施例4と同様のドーパント導入処理とドーパント濃度分布の評価とを行った。さらに、実施例4と同様に、LED素子10の作製と、該LED素子10の電気的特性の評価とを行った。なお、係る比較例3は、固体のドーパント源がGaN自立基板1と接触した状態でのアニール処理の効果を評価する目的で行ったものである。
【0075】
(比較例4)
実施例1と同様に作製したGaN自立基板1について、融液下でのアニール処理を行うことなく厚み方向におけるドーパントの濃度分布を評価した。また、実施例1と同様に、LED素子10の作製と、その電気的特性の評価とを行った。
【0076】
(ドーパント濃度分布の対比)
実施例1ないし実施例4、および、比較例1ないし比較例4のSIMS分析の結果を表1に示す。
【0077】
【表1】
【0078】
表1に示すように、アニール温度を1000℃とした実施例1および実施例2についてみれば、実施例1においてはGeの原子濃度が、実施例2においてはSiの原子濃度が、GaN自立基板1のN面1bから100nm以内の範囲で内部(例えばN面1bから250nm以深の範囲)よりも高くなっていた。特に、N面1bから20nmのところで顕著にGeまたはSiが存在していた。これに対して、Ga面1aの近傍におけるドーパント濃度は内部と変わらなかった。なお、基板内部およびGa面1aの近傍にGeが存在しているのは、自立基板作製時に四塩化ゲルマニウムを用いたことによるものである。
【0079】
また、アニール温度を1300℃とした実施例3および実施例4についてみれば、実施例3においては、N面1bから遠ざかるほど減少する傾向はみられるものの、いずれの評価位置においても、実施例1に比して、Geの原子濃度は顕著に高くなっていた。同様に、実施例4においても、N面1bから遠ざかるほど減少する傾向はみられるものの、いずれの評価位置においても、実施例2に比して、Siの原子濃度は顕著に高くなっていた。
【0080】
一方、比較例1ないし比較例4においては、比較例2においてN面1bから20nmのところで若干Ge濃度が高くなったほかは、GeおよびSiの濃度に測定箇所による差異は確認されなかった。
【0081】
実施例1ないし実施例4の結果とドーパント源金属と金属Gaとの混合融液中でのアニール処理を行わなかった比較例1および比較例2との結果の相違、および、実施例1ないし実施例4の結果と融液アニール処理を行わなかった比較例4との結果の相違は、ドーパント源金属と金属Gaとの混合融液中でのアニール処理が、N面1bの近傍におけるドーパントの濃度が他の部分のドーパントの濃度よりも高いGaN自立基板1の作製に有効であることを指し示すものである。なお、Ga面1aの近傍におけるドーパント濃度が内部と変わらないのは、研磨処理によってドーパントが導入された部分が除去されたことの効果であると考えられる。
【0082】
特に、実施例1ないし実施例4の結果と比較例1および比較例2の結果との相違は、ドーパント源金属と金属Gaとの混合融液の使用が、ドーパントの導入に、特に、表面近傍に対するドーパントの導入に効果的であり、ドーパント源金属のみの融液中でのアニール処理は、少なくともN面近傍へのドーパントの導入に関しては、十分な効果が得られないことを、指し示している。
【0083】
また、実施例2および実施例4と比較例3の結果との相違は、ドーパント源金属と金属Gaとの混合融液を使用する手法の方が、固体のドーパント源をGaN自立基板1に積層させた状態でアニール処理を行い固相熱拡散を生じさせる手法よりもドーパントの導入に効果的であることを示すものである。
【0084】
さらには、実施例3および実施例4の結果は、1300℃という高いアニール温度にて融液アニール処理をすることが、ドーパント導入処理の効果をより高めることを示すものと考えられる。
【0085】
(電気的特性の対比)
実施例1ないし実施例4、および、比較例1ないし比較例4の電気的特性の評価結果を表2に示す。なお、表2においては、10個のサンプルについての測定値の平均値を「電圧値」もしくは「電流値」として示すとともに、測定値のばらつきの程度を表す指標である3σ(σは標準偏差)の値も記載している。
【0086】
【表2】
【0087】
表2に示すように、順方向電流が100mAの時の順方向電圧については、実施例1ないし実施例4の値が比較例1ないし比較例4の値よりも小さくなった。一方で、順方向電流が10μAのときの順方向電圧と、逆方向電圧が−5Vのときの逆方向飽和電流の値については、実施例1ないし実施例4と比較例1ないし比較例4とでほぼ差異がなかった。
【0088】
係る結果は、実施例1ないし実施例4のLED素子においては寄生直列抵抗が低くなっていることを表している。このことは、N面1b近傍にドーパントを導入してドーパント濃度を高めたことが、LED素子における寄生直列抵抗の低下に有効であることを示している。
【符号の説明】
【0089】
1 13族窒化物自立基板(GaN自立基板)
1a (13族窒化物自立基板の)13族元素面(GaN自立基板のGa面)
1b (13族窒化物自立基板の)15族元素面(GaN自立基板のN面)
2 n型導電層
3 活性層
4 p型導電層
5 アノード電極
6 カソード電極
10 LED素子
31 (活性層の)第1単位層
32 (活性層の)第2単位層
図1
図2
図3