特許第6386412号(P6386412)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 日立建機株式会社の特許一覧

<>
  • 特許6386412-運搬車両 図000003
  • 特許6386412-運搬車両 図000004
  • 特許6386412-運搬車両 図000005
  • 特許6386412-運搬車両 図000006
  • 特許6386412-運搬車両 図000007
  • 特許6386412-運搬車両 図000008
  • 特許6386412-運搬車両 図000009
  • 特許6386412-運搬車両 図000010
  • 特許6386412-運搬車両 図000011
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6386412
(24)【登録日】2018年8月17日
(45)【発行日】2018年9月5日
(54)【発明の名称】運搬車両
(51)【国際特許分類】
   G01S 7/40 20060101AFI20180827BHJP
   G08G 1/16 20060101ALI20180827BHJP
   G01S 13/86 20060101ALI20180827BHJP
   G01S 7/497 20060101ALI20180827BHJP
   G01S 13/93 20060101ALI20180827BHJP
   G01S 17/93 20060101ALI20180827BHJP
【FI】
   G01S7/40 130
   G08G1/16 C
   G01S13/86
   G01S7/497
   G01S13/93 220
   G01S17/93
【請求項の数】5
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2015-77863(P2015-77863)
(22)【出願日】2015年4月6日
(65)【公開番号】特開2016-197081(P2016-197081A)
(43)【公開日】2016年11月24日
【審査請求日】2017年4月11日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005522
【氏名又は名称】日立建機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000442
【氏名又は名称】特許業務法人 武和国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】藤田 浩二
(72)【発明者】
【氏名】大前 秀人
(72)【発明者】
【氏名】魚津 信一
(72)【発明者】
【氏名】武田 宏栄
(72)【発明者】
【氏名】倉持 祐一
【審査官】 安井 英己
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2012/0101681(US,A1)
【文献】 特開2000−258527(JP,A)
【文献】 特開2013−067302(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01S 7/00− 7/64,
G01S 13/00−13/95,
G01S 15/00−15/96,
G01S 17/00−17/95,
G08G 1/00− 1/16,
B60R 21/00,
CSDB
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
鉱山内を走行する運搬車両において、
自車両及び当該自車両に対向する対向車両の相対位置を測定する障害物センサであって、前記対向車両を検出できる基準取付位置及び基準取付角度で前記運搬車両に取り付けられた障害物センサと、
前記対向車両に搭載された、当該対向車両の自己位置を算出する位置測定装置が算出した前記対向車両の位置を受信する通信装置と、
前記障害物センサが測定した前記対向車両の相対位置、及び前記通信装置が受信した前記対向車両の自己位置を用いた比較演算の結果に基づいて、前記障害物センサの現在の取付位置又は取付角度が、前記基準取付位置及び前記基準取付角度の少なくとも一つからずれているかを判断するずれ検知部と、
前記ずれ検知部が、前記自車両の障害物センサがずれていると判断した場合に、ずれを検知したことを報知する報知制御部と、を備え
前記自車両及び前記対向車両の其々は、前記障害物センサとしてレーダセンサを有しており、
前記通信装置は、前記対向車両の障害物センサが検出した前記自車両の相対位置を受信し、
前記ずれ検知部は、前記自車両の障害物センサが検出した前記対向車両の相対位置と、前記通信装置が受信した、前記対向車両の障害物センサが検出した前記自車両の相対位置と、の乖離量を基に、前記自車両の障害物センサのずれを検知する、
ことを特徴とする運搬車両。
【請求項2】
前記ずれ検知部は、前記鉱山内に設置された往路及び復路を含む搬送路の直線区間を前記自車両及び前記対向車両が走行中に、前記障害物センサの基準取付位置及び基準取付角度からのずれを検出する、
ことを特徴とする請求項1に記載の運搬車両。
【請求項3】
前記自車両と前記対向車両とは、同じ車格を有する運搬車両である、
ことであることを特徴とする請求項1に記載の運搬車両。
【請求項4】
前記自車両は、複数台の前記対向車両の其々から、各対向車両に搭載された障害物センサから出力される前記自車両の相対位置を受信し、
前記ずれ検知部は、前記自車両の障害物センサが検出した前記各対向車両の相対位置と、前記通信装置が受信した、前記各対向車両の障害物センサが検出した前記自車両の相対位置と、の乖離量が、前記自車両の障害物センサのずれの有無を判定するための許容範囲を連続して超える回数をカウントし、その回数が、前記自車両の障害物センサのずれがあると判定するために予め定められた所定の回数を超えると、前記自車両の障害物センサのずれを検知する、
ことを特徴とする請求項に記載の運搬車両。
【請求項5】
前記自車両は、自車両のグローバル座標を測定する位置測定装置と、
前記自車両のグローバル座標、及び前記自車両の障害物センサが測定した相対位置に基づいて前記対向車両のグローバル座標で表された位置を推定する障害物位置推定部と、を更に備え、
前記対向車両の前記位置測定装置は、当該対向車両のグローバル座標を算出し、
前記通信装置は、前記対向車両のグローバル座標を受信し、
前記ずれ検知部は、前記受信した対向車両のグローバル座標と前記障害物位置推定部が推定した前記対向車両のグローバル座標との乖離量を基に、前記自車両の障害物センサのずれを検知する、
ことを特徴とする請求項に記載の運搬車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は運搬車両に係り、特に運搬車両に搭載された障害物センサの位置ずれの検出技術に関する。
【背景技術】
【0002】
車両の安全走行のために、障害物センサを搭載し、その出力値を用いて障害物までの相対距離を計測することが行われている。相対距離を正確に測定するためには障害物センサが正しく取り付けられていることが必要であり、万一、障害物センサの取り付け位置や角度がずれた場合は、それをできるだけ早く検知できることが望ましい。そのための技術として、特許文献1は、自車が走行中、車間距離センサにより検出した車間距離と相対速度との関係を用いて自車に搭載された車間距離センサのずれを検知する構成を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平11−64034号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
鉱山内を走行する運搬車両は車体が大きく、また鉱石や土砂の積載量も大きいため、停止するまでの制動距離が公道を走行する一般車両に比べて長くなる。更に、高速走行中は制動距離がより長くなることもある。そのため、自車両とその直前車両との車間距離は、一般車両に比べてより長く設けることが必要にある。ここで、特許文献1の車間距離センサのずれ検知技術を運搬車両に適用しようとすると、障害物センサの電磁波が届く距離範囲内に直前車両に接近する必要があるが、既述の通り、鉱山用の運搬車両の車間距離は十分長く開ける必要があるので、走行中に上記距離範囲内にまで直前車両に接近しようとすると安全上の観点から好ましくない。従って、特許文献1のセンサのずれ検知技術を鉱山用運搬車両に適用することは現実的ではない。
【0005】
本発明は、上記の実情に鑑みてなされたものであり、鉱山用運搬車両に搭載された障害物センサのずれ検知をより早いタイミングで行える運搬車両を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明は、鉱山内を走行する運搬車両において、自車両及び当該自車両に対向する対向車両の相対位置を測定する障害物センサであって、前記対向車両を検出できる基準取付位置及び基準取付角度で前記運搬車両に取り付けられた障害物センサと、前記対向車両に搭載された、当該対向車両の自己位置を算出する位置測定装置が算出した前記対向車両の位置を受信する通信装置と、前記障害物センサが測定した前記対向車両の相対位置、及び前記通信装置が受信した前記対向車両の自己位置を用いた比較演算の結果に基づいて、前記障害物センサの現在の取付位置又は取付角度が、前記基準取付位置及び前記基準取付角度の少なくとも一つからずれているかを判断するずれ検知部と、前記ずれ検知部が、前記自車両の障害物センサがずれていると判断した場合に、ずれを検知したことを報知する報知制御部と、を備え、前記自車両及び前記対向車両の其々は、前記障害物センサとしてレーダセンサを有しており、前記通信装置は、前記対向車両の障害物センサが検出した前記自車両の相対位置を受信し、前記ずれ検知部は、前記自車両の障害物センサが検出した前記対向車両の相対位置と、前記通信装置が受信した、前記対向車両の障害物センサが検出した前記自車両の相対位置と、の乖離量を基に、前記自車両の障害物センサのずれを検知する、ことを特徴とする。
【0007】
運搬車両(自車両)の障害物センサが基準取付位置や角度からずれると、障害物センサが出力した相対位置にずれ量が含まれたり、実際には存在する対向車両が検知できない(図3の(b)参照)。そのため、障害物センサがずれた状態で測定した対向車両の相対位置と、対向車両の位置測定装置が算出した対向車両の位置と、を比較すると、ずれ量に起因する対向車両の位置の乖離量が発生する。よって、この乖離量を基に、障害物センサのずれを検知することができる。そしてこの検知は、自車両が走行中に行えるので、例えば自車両が稼働中に土だまりに乗り上げたりして障害物センサがずれた場合にも、自車両を停止させて目視することなく、障害物センサのずれを検知できる。この結果、障害物センサのずれが生じてから検知するまでのタイムラグが短くなり、より安全に運搬車両を稼働させることができる。
【0008】
また本発明は上記構成において、前記ずれ検知部は、前記鉱山内に設置された往路及び復路を含む搬送路の直線区間を前記自車両及び前記対向車両が走行中に、前記障害物センサの基準取付位置及び基準取付角度からのずれを検出する、ことを特徴とする。
【0009】
例えば自車両がカーブ外側、対向車両がカーブ内側を走行中は、自車両の障害物センサの認識範囲が搬送路の外側を向いてしまい、搬送路の内側を走行中の対向車両を走行できない状態が生じうる。この場合、障害物センサにずれがなくても、ずれがあると誤って検知する。これに対し、自車両及び対向車両が共に直線区間を走行中は、自車両及び対向車両が、往路と復路との境界線を挟んで対向する。よって、自車両の障害物センサが基準取付位置及び基準取付角度から変位していなければ対向車両を捕捉することができるので、ずれの有無の判断に際し、誤検知を防いでより正しい検知が行える。
【0010】
また本発明は上記構成において、前記自車両と前記対向車両とは、同じ車格を有する運搬車両である、ことを特徴とする。
【0011】
自車両と対向車両とが同じ車格、例えば同車高及び同車幅であれば、自車両が大型の運搬車両の際に、対向車両が小型車であるため障害物センサが捕捉できないといった不具合に起因するずれの誤検知を抑止することができる。特に、同車格の複数の運搬車両が走行する鉱山では、好適である。
【0012】
また本発明は、上記に記載のとおり、前記自車両及び前記対向車両の其々は、前記障害物センサとしてレーダセンサを有しており、前記通信装置は、前記対向車両の障害物センサが検出した前記自車両の相対位置を受信し、前記ずれ検知部は、前記自車両の障害物センサが検出した前記対向車両の相対位置と、前記通信装置が受信した、前記対向車両の障害物センサが検出した前記自車両の相対位置と、の乖離量を基に、前記自車両の障害物センサのずれを検知する、ことを特徴とする。
【0013】
本発明は、レーダセンサの出力値を基にずれ量を判定できるので、特にGPS装置を搭載しない運搬車両において好適である。
【0014】
また本発明は上記構成において、前記自車両は、複数台の前記対向車両の其々から、各対向車両に搭載された障害物センサから出力される前記自車両の相対位置を受信し、前記ずれ検知部は、前記自車両の障害物センサが検出した前記各対向車両の相対位置と、前記通信装置が受信した、前記各対向車両の障害物センサが検出した前記自車両の相対位置と、の乖離量が、前記自車両の障害物センサのずれの有無を判定するための許容範囲を連続して超える回数をカウントし、その回数が、前記自車両の障害物センサのずれがあると判定するために予め定められた所定の回数を超えると、前記自車両の障害物センサのずれを検知する、ことを特徴とする。
【0015】
自車両及び対向車両のレーダセンサの出力値は、両車両の相対位置が測定できるが、両者に乖離が発生した場合にどちらの車両が原因であるかを特定することが困難である。そこで、複数台の結果を用いることで、自車両又は対向車両のどちらに原因があるかを特定することができる。また、この際、乖離量が許容範囲を超えるエラー連続回数を基にずれの有無を判断するので、例えば、カーブを走行中に偶発的に乖離量が許容範囲を超えたとしても、直線区間に復帰すると乖離量が許容範囲内に戻り、エラー連続回数の更新が止まる。よって、偶発的に生じた誤検知の報知を抑制することができる。
【0016】
また本発明は上記構成において、前記自車両は、自車両のグローバル座標を測定する位置測定装置と、前記自車両のグローバル座標、及び前記自車両の障害物センサが測定した相対位置に基づいて前記対向車両のグローバル座標で表された位置を推定する障害物位置推定部と、を更に備え、前記対向車両の前記位置測定装置は、当該対向車両のグローバル座標を算出し、前記通信装置は、前記対向車両のグローバル座標を受信し、前記ずれ検知部は、前記受信した対向車両のグローバル座標と前記障害物位置推定部が推定した前記対向車両のグローバル座標との乖離量を基に、前記自車両の障害物センサのずれを検知する、ことを特徴とする。
【0017】
自車両のグローバル座標及び障害物センサが測定した相対位置を基に、対向車両のグローバル座標を推定し、これと対向車両の位置測定装置が測定した対向車両のグローバル座とを比較するので、乖離量があった場合の原因を障害物センサの基準取付位置及び角度からのずれと特定できる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、鉱山用運搬車両に搭載された障害物センサのずれ検知をより早いタイミングで行える運搬車両を提供することができる。上記した以外の課題、構成及び効果は、以下の実施形態の説明により明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】ダンプの概略構成を示す側部外観図
図2】自車両及び対向車両を側方から俯瞰した状態を示す図であって、(a)は、自車両及び対向車両の其々に備えられた障害物センサが基準取付状態を維持した状況を図示し、(b)は、自車両の障害物センサにずれが生じた状況を図示する。
図3】自車両及び対向車両を上方から俯瞰した状態を示す図であって、(a)は、自車両及び対向車両の其々に備えられた障害物センサが基準取付状態を維持した状況を図示し、(b)は、自車両の障害物センサにずれが生じた状況を図示する。
図4】ダンプの駆動システムの概略構成を示す機能ブロック図
図5】第一実施形態に係るコントローラ41の処理を示す機能ブロック図
図6】第一実施形態に係るずれ検知処理の流れを示すフローチャート
図7】相対位置の算出処理を示す図
図8】第二実施形態に係るコントローラ41の処理を示す機能ブロック図
図9】第二実施形態に係るずれ検知処理の流れを示すフローチャート
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、実施の形態を説明するための全図において、同一の機能を有する部材には同一または関連する符号を付し、その繰り返しの説明は省略する。また、以下の実施の形態では、特に必要なとき以外は同一または同様な部分の説明を原則として繰り返さない。
【0021】
<第一実施形態>
第一実施形態は、自車両の障害物センサの基準取付状態(基準取付位置及び基準付角度)からのずれを、対向車両のグローバル座標を用いて検知する実施形態である。まず、図1を参照して本実施形態に係る鉱山用運搬車両(以下「ダンプ」と略記する)の概略構成について説明する。図1は、ダンプの概略構成を示す側部外観図である。
【0022】
図1において、ダンプ10は、車両本体1、路面と接触する唯一の部分である左右の前輪(タイヤ)2L、2R、及び後輪(タイヤ)3L、3R、車両本体1と前後左右輪2L、2R、3L、3R(2L:左前輪、2R:右前輪、3L:左後輪、3R:右後輪)、積荷を搭載するベッセル(荷台)4、自車両の位置を算出する位置算出装置としてのGPS(Global Positioning System)5(図5参照)及びGPSアンテナ5a、外部通信装置との間で無線通信を行う通信装置6(図5参照)及び無線アンテナ6a、及び走行方向前方に位置する障害物を検出し、自車両との相対位置を測定する障害物センサ7を備える。本実施形態では、障害物センサ7として自車両の走行方向に向けて電磁波7aを放射するミリ波レーダセンサを備えるが、LIDAR(Light Detection and Ranging)でもよい。なお、図1ではGPSアンテナ5aを一つだけ図示したが、実際には二つ備える。
【0023】
本実施形態のダンプ10は、運転手が搭乗して操舵するいわゆる有人ダンプでもよいし、無線通信回線を介して接続された運行管理サーバからの走行指令に従って自律走行する無人ダンプでもよい。有人ダンプの場合、自車両と対向車両との間で車車間通信を行う際には、外部通信装置は対向車両である。また無人ダンプの場合、外部通信装置は運行管理サーバである。
【0024】
更にダンプ10は、障害物センサ7の基準取付状態からのずれを検知する処理を始めとする、ダンプ10の各要素の制御処理を行う制御装置100を備える。ここでいう基準取付状態とは、ダンプ10の走行方向に位置する障害物を検出するための取付位置及び取付角度で車両本体1に障害物センサ7が取り付けられた状態をいう。
【0025】
次に図2及び図3を参照して、障害物センサ7が基準取付状態からずれた状態について説明する。図2は、自車両及び対向車両を側方から俯瞰した状態を示す図であって、(a)は、自車両及び対向車両の其々に備えられた障害物センサが基準取付状態を維持した状況を図示し、(b)は、自車両の障害物センサにずれが生じた状況を図示する。図3は、自車両及び対向車両を上方から俯瞰した状態を示す図であって、(a)は、自車両及び対向車両の其々に備えられた障害物センサが基準取付状態を維持した状況を図示し、(b)は、自車両の障害物センサにずれが生じた状況を図示する。
【0026】
鉱山内には、不図示の積込場及び放土場を接続する搬送路63が設置される(図2参照)。搬送路63は、往路61及び復路62の其々を形成する合計二車線を含む。自車両10−1は往路61を走行する。また、復路62には、自車両10−1と同じ車格(同車高、同車幅を有する同種類の車両)を有する対向車両10−2が走行しているものとする。以下、自車両10−1及び対向車両10−2は同車格の車両であるので、これらを区別する必要がない場合は、ダンプ10と称する。同様に、自車両10−1及び対向車両10−2のそれぞれに搭載される同一の構成について、自車両10−1又は対向車両10−2のいずれに搭載されているかを分けて記載する場合は、枝番−1、−2を各構成要素の符号に追加し、両者を区別する必要がない場合は、枝番を略記する。
【0027】
自車両10−1に搭載される障害物センサ7−1の電磁波7a―1の照射範囲は、照射軸方向(ダンプ10の車軸方向に相当)と直交する方向(ダンプ10の車幅方向)の幅が対向車線である復路62を走行する対向車両10−2を捕捉できるように設定される。対向車両10−2は、自車両10−1と同種の障害物センサ7−2が搭載される。
【0028】
図2の(a)及び図3の(a)に示すように、自車両10−1及び対向車両10−2の双方に備えられた障害物センサ7−1、7−2が共に基準取付状態を維持している場合、障害物センサ7−1の電磁波7a−1は対向車両10−2を捕捉し、対向車両10−2の障害物センサ7−2の電磁波7a−2は自車両10−1を捕捉する。
【0029】
これに対し、図2の(b)に示すように、自車両10−1の障害物センサ7−1の向き(取付角度)が搬送路63の外側に向くように基準取付状態から変位した場合や、図3の(b)に示すように、障害物センサ7−1の向きが仰角方向にずれた場合、基準取付状態を維持していれば捕捉できるはずの対向車両10−2を捕捉できない。一方、対向車両10−2は、障害物センサ7−2が基準取付状態を維持しているので、自車両10−1を捕捉している。
【0030】
図2図3では、障害物センサ7−1の基準取付状態からの変位が大きく、対向車両10−2が捕捉できていない状態を例に挙げて説明した。しかし、変位がより小さい場合、基準取付状態を維持している状態では、対向車両10−2の全車幅方向に亘って捕捉できる位置に対向車両10−2が位置する状態で、車幅方向の一部は捕捉し、残りの部分は捕捉できないような状態が生じる。
【0031】
本実施形態は、このように、自車両10−1に搭載した障害物センサ7−1のずれを、対向車線を走行する対向車両10−2の捕捉結果を踏まえて検知するに特徴がある。
【0032】
次に図4を参照して、ダンプ10の駆動システムの構成について説明する。図4は、ダンプの駆動システムの概略構成を示す機能ブロック図である。
【0033】
図4において、ダンプ10の駆動システムは、アクセルペダル11、リタードペダル12、シフトレバー13、前後加速度と横加速度とヨーレイトをセンシングするコンバインセンサ14、サスペンション内の圧力を計測するための圧力センサ15、エンジン21、交流発電機22、その他のエンジン負荷28、整流回路23、検出抵抗24、コンデンサ25、チョッパ回路26、グリッド抵抗27、電動モータ31R,31L、後輪3L、3R、電動モータ31L,31Rの出力軸31La,31Raに接続された減速機32L,32R、後輪3L、3Rの回転数を計測するための電磁ピックアップセンサ16L、16R、及び制御装置100を備えている。
【0034】
制御装置100は、コントローラ41、インバータ制御装置42、操舵制御装置43から成る。
【0035】
コントローラ41は、アクセルペダル11、リタードペダル12からの踏込み量、コンバインセンサ14にて計測される前後加速度、横加速度、ヨーレイト、電磁ピックアップセンサ16L、16Rにて計測される後輪3L、3Rの回転速度、エンジン21の現回転数、及び車速センサ8にて計測される車両の移動速度を基に、エンジン21、交流発電機22、チョッパ回路26、インバータ制御装置42に指令を与える。
【0036】
電磁ピックアップセンサ16L、16Rにて計測される後輪3L、3Rの回転速度から求まる車両の移動速度はタイヤスリップにより誤差が生じるが、車速センサ8はタイヤスリップによる影響は受けない点で有利である。
【0037】
更にコントローラ41には、障害物センサ7にて計測される障害物(対向車両10−2)の相対位置、GPSアンテナ5aが受信した測位電波を基にGSP5が測定した自車両の現在位置、及び無線アンテナ6aが外部通信装置としての対向車両10−2から車々間通信で受信した対向車両10−2の現在位置が入力される。この対応車両10−2の現在位置は、対向車両10−2に搭載されるGPS装置が算出したグローバル座標である。
【0038】
インバータ制御装置42は、コントローラ41からの指令と電磁ピックアップセンサ16L、16Rにて計測される後輪3L、3Rの回転速度から求まる車両の移動速度を基に各電動モータ31L、31Rを駆動させる。
【0039】
次に図5を参照して、制御装置100のうち、障害物センサ7の基準取付状態からのずれを検知する処理に関する構成について説明する。図5は、本実施形態に係るコントローラ41の処理を示す機能ブロック図である。
【0040】
図5に示すように、コントローラ41は、障害物センサ7が出力した対向車両10−2の相対位置、及びGPS装置5が測定した自車両10−1のグローバル座標を用いて、対向車両10−2のグローバル座標系の現在座標を推定する障害物位置推定部41aと、無線通信装置6から得た対向車両10−2のグローバル座標と、障害物位置推定部41aの推定値とを比較し、その比較結果を基に障害物センサ7のずれを検知するずれ検知部41bと、搬送路63を構成する往路61及び復路62上の各地点(ノード)の座標及び隣接するノードを接続するリンク情報を含む地図情報(各リンクの曲率を含む)を記憶する地図情報記憶部41cと、ずれ検知部41bがずれがあると判定した際に、制御装置100の外部に対してずれを検知したことを出力するための処理を行う報知制御部41dと、を含む。
【0041】
報知制御部41dは、ダンプ10の運転手に対して報知する報知装置、例えばモニタへの警告表示や、警告音の発生処理を行う。また、ダンプ10が運行管理サーバからの指示に従って自律走行する自律走行運搬車両である場合には、報知制御部41dは、無線通信装置6から運行管理サーバに対して障害物センサが基準取付状態からずれていることを示す無線信号を送信するための処理を行う。
【0042】
これら障害物位置推定部41a、ずれ検知部41b、地図情報記憶部41c、及び報知制御部41dは、コントローラ41を構成するCPU(Central Processing Unit)等の演算・制御装置の他、コントローラ41で実行されるプログラムを格納するROM(Read Only Memory)やHDD(Hard Disk Drive)等の記憶装置、また、CPUがプログラムを実行する際の作業領域となるRAM(Random Access Memory)を含むハードウェアと上記プログラムとが協働することにより構成される。また、障害物位置推定部41a、ずれ検知部41b、地図情報記憶部41c、及び報知制御部41dは、これらの機能を実現するための集積回路により構成されてもよい。障害物位置推定部41a、ずれ検知部41b、及び報知制御部41dはダンプ10に搭載されているコントローラ41内に組み込んでいるが、別のコントローラを用いても良い。
【0043】
以下図6及び図7を参照して、ずれ検知処理について説明する。図6は、ずれ検知処理の流れを示すフローチャートである。図7は、相対位置の算出処理を示す図である。以下、図6の各ステップ順に沿って説明する。なお、ずれ検知処理の開始に当たり、ダンプ10は走行開始とともに障害物センサ7による障害物検知処理、及びGPS装置5による自己位置の算出処理を実行しているものとする。
【0044】
GPS5は、走行中、一定の周期で自車両のグローバル座標(x1,y1)を測定し、ずれ検知部41bはそのグローバル座標(x1,y1)を取得する(S601)。
【0045】
そして、ずれ検知部41bは地図情報記憶部41cの地図情報を参照し、(x1,y1)が含まれるリンクの曲率と比較する。そして、自己位置が往路61の直線区間にあるかを判定する。直線区間でなければ(S602/No)、ステップS601へ戻り、直線区間に到達するまで待機する。
【0046】
直前区間を走行中(S602/Yes)、ずれ検知部41bは、無線通信装置6を介して対向車両10−2に搭載されたGPSが推定した自己位置のグローバル座標(x,y)の受信を待機する。グローバル座標を取得すると(S603)、ステップS602と同様、対向車両10−2が復路62の直線区間を走行しているかを判定する。対向車両10−2が直線区間を走行していなければ(S604/No)、ステップS601へ戻る。
【0047】
自車両10−1、対向車両10−2が共に直線区間を走行している場合(S604/Yes)、障害物位置推定部41aは、対向車両10−2の現在位置の推定処理を行う。より具体的には、障害物センサ7がミリ波レーダの場合、相対位置として自車両10−1から対向車両10−2までの距離sと、対向車両10−2からの反射波の受信角度θを取得する(S605)。
【0048】
図7に、自車両10−1と対向車両10−2との位置関係を示す。図7では説明の便宜のため、対向車両10−2に対する自車両10−1の相対速度を0とし、時刻t1における対向車両10−2の位置を点線で、時刻t2における対向車両10−2の位置を実線で図示する。対向車両10−2は、自車両10−1に近づく方向に走行しているので、自車両10−1の障害物センサ7は、時刻t1では相対位置として角度θ1、距離s1、時刻t2では角度θ2(θ2<θ1)、距離s2(s2<s1)を算出する。以下の対向車両の現在位置の推定では、ある時刻において角度θ、距離sが測定されたとして説明する。
【0049】
障害物位置推定部41aは、自車両10−1のグローバル座標と自車両10−1の障害物センサ7−1が算出した相対位置とを基に、対向車両10−2のグローバル座標を算出する(S606)。
【0050】
図7において、自車両10−1のGPSアンテナ5a、5bから得られるGPS推定位置の仮想中心点0から障害物センサ7までの距離dが、仮想中心点Oと障害物センサ7のx座標は等しいとする。この場合、障害物位置推定部41aは、下式(1)により対応車両の推定位置e(xest,yest)を算出する。
(xest,yest)=(x1+S・cosθ,y1+d+S・sinθ)・・・(1)
但し(x1,y1):自車両のGPS装置が測定したグローバル座標
【0051】
ずれ検知部41bは、(xest、yest)と、対向車両10−2から受信した対向車両10−2のグローバル座標(x,y)との差分(乖離量)δ1を下式(2)により算出し(S607)、差分δ1が予め定められた許容範囲P未満であるかを判定する(S608)。許容範囲Pは、乖離量δ1が(xest、yest)と(x,y)との二点間の距離を示す場合は距離閾値でもよいし、(x,y)を中心とする半径Pのエリア内に(xest、yest)が存在するかを判定基準としてもよい。例えば前者の場合は、δ1は下式で求められる。
【数1】
【0052】
δが許容範囲P未満であれば(S608/Yes)、ずれ検知部41bはずれがないと判定する。この場合、ステップS601へ戻り、引き続き、ずれ検知処理を続行する。
【0053】
δ1が許容範囲P以上であれば(S608/No)、ずれ検知部41bは、障害物センサ7が基準取付状態とずれがあると判定し、報知制御部41dに対して、ずれがあることを示す信号を出力する。報知制御部41dは、報知処理、例えば、ダンプ10の運転席に設けられたモニタにずれがあることを示す警告表示を行ったり、運行管理サーバに対する通信を行ったりする(S609)。これにより、運転手やダンプ10の保守員が障害物センサ7を基準取付状態に戻すための作業を行うことができる。
【0054】
本実施形態によれば、鉱山においては複数の同じ機能を有するダンプが往路及び復路を走行しているので、すれ違う時に、対向車両を障害物センサで検出した結果を用いて自車両の障害物センサの基準取付状態からの乖離を判定し、ずれを検知することができる。これにより、ダンプの走行中に治具等を用いることなく障害物センサのずれ検知を行うことができ、ずれが生じてからより早いタイミングでずれが生じたことを認識できる。
【0055】
<第二実施形態>
第二実施形態は、自車両の障害物センサの基準取付状態(取付位置や取付角度)からのずれを自車両及び対向車両において互いに相対位置を測定し、その結果を用いて障害物センサのずれを検知する実施形態である。
【0056】
鉱山では、複数台、例えば5台のダンプが一つのグループを形成して、積荷の搬送作業を行う。そこで、自車両とグループ内の他の車両とが互いに相対位置を測定する。そして、車車間通信で互いの測定した相対位置を送受信する。以下、図8及び図9を参照して第二実施形態について説明する。図8は、第二実施形態に係るコントローラ41の処理を示す機能ブロック図である。図9は、第二実施形態に係るずれ検知処理の流れを示すフローチャートである。
【0057】
図8に示すように、第二実施形態に係るコントローラ41は、連続エラーカウンタ41eを備えるが、第一実施形態に係るコントローラ41にはあった障害物位置推定部41a及び地図情報記憶部41cを備えない。連続エラーカウンタ41eは、対向車両10−2が測定した相対位置と自車両10−1が測定した相対位置との乖離が大きいと判定された連続回数をカウントするものである。以下、図9を参照して第二実施形態に係るずれ検知処理について説明する。
【0058】
走行中、自車両10−1の障害物センサ7−1が、対向車両10−2の相対位置を測定する(S901)。ここでは、相対位置として例えば相対距離を測定する。
【0059】
ずれ検知部41bが、通信装置6から対向車両10−2が測定した相対位置情報を受信ない場合(S902/No)、ステップS901へ戻る。
【0060】
ずれ検知部41bが、通信装置6から対向車両10−2が測定した相対位置情報を受信すると(S902/Yes)、ずれ検知部41bは、自車両10−1が測定した相対位置と対向車両10−2が測定した相対位置との距離の差分δ2を下式(3)により算出し(S903)、これがずれがないか否かを判定するための距離閾値Sth未満であるかを判定する(S904)。
δ=|S−S|・・・(3)
差分δ<Sth・・・(4)
【0061】
差分δ2が距離閾値Sth未満であれば(S904/Yes)、連続エラーカウンタ41eの値Nをリセット(N=0)し(S905)、ステップS901へ戻る。これにより、例えば、搬送路63のカーブ区間で対向車両10−2とすれ違ったため、一旦は差分δ2が距離閾値Sth以上と判定されて連続エラーカウンタ41eの値Nが1以上になっていた場合、その対向車両の後続車両と直線区間ですれ違い、正常にお互いが捕捉できた場合には、ずれが生じていないものとして、引き続きずれ検知処理を続行することができる。
【0062】
差分δ2が距離閾値Sth以上であれば(S904/No)、ずれ検知部41bは連続エラーカウンタ41eの値Nに1を加算する(0に戻す)(S906)。
【0063】
そしてずれ検知部41bは、距離の差分δ2が距離閾値Sth以上となる回数が所定回数n(nは自然数)以上であれば(S907/Yes)、自車両の障害物センサにずれが生じていると判断し、報知する(S908)。上記所定回数未満(S907/No)、またステップS908終了後、ステップS901へ戻り、ずれ検知処理を続行する。
【0064】
本実施形態によれば、ダンプがグローバル座標を検出する位置算出装置を備えていない場合も、対向車両の相対位置の差出結果を基に自車両の障害物センサのずれを検知することができる。
【0065】
以上、本発明の実施の形態を説明したが、本発明は上述の実施の形態に限定されず、発明の要旨を逸脱しない範囲の設計変更等があっても本発明に含まれる。
【0066】
例えば、第一実施例において、直線区間の判定を行わず、第二実施形態と同様、連続エラーカウンタを用いるなど、適宜変更してもよい。
【符号の説明】
【0067】
7:障害物センサ
7a:電磁波
10:ダンプ
10−1:自車両
10−2:対向車両
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9