(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記制御部は、前記検出器が前記移動体を、前記移動体の出現周期と前記検出装置の観測周期との最小公倍数である最大検出時間以内に検出しない場合は、前記外部I/Fを介して外部に異常を知らせる信号を出力すること、
を特徴とする請求項1又は2に記載の移動体の検出装置。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態の、周期的に出現する移動体を非同期に周期的に検出する検出装置について説明する。
【0013】
[1.実施形態]
[1−1.構成]
図1は、本実施形態に係る検出装置が適用されるシステムの概念図である。
図2は、検出装置が適用されたシステムを説明するための図である。本システムは、移動体1と、移動体1を検出する検出装置2とから構成される。
【0014】
移動体1は、検出装置2により検出される対象である。移動体1としては、周期的に出現するものであれば、有体物であっても良いし、無体物であっても良い。なお、「出現」とは、検出装置2により移動体1の観測が可能な状態をいう。
【0015】
移動体1としては、例えば、空間を物理的に移動する物体や、電磁波、音波、又は、定期的に生成、消滅する情報などが挙げられる。より詳細には、移動体1は、周期的に移動する車や、無線送信機から周期的に発信された電波、環境センサーが検出し周期的に発信された温度、湿度、ガス濃度等の情報などを挙げることができる。本明細書にいう「移動」には、有体物の物理的な移動の他、電磁波や情報などの無体物の伝播、照射、放射、発信なども含まれる。
【0016】
移動体1は、出現周期と出現期間を有する。
図3は、移動体1と検出装置2の関係を示す図である。
図3に示すように、出現周期は、移動体1が出現してから次に出現するまでの期間であり、出現期間は、移動体1が出現している期間である。例えば、
図2(a)に示すように、移動体1が空間的に定周期移動する場合には、障壁11の隙間12から移動体1が周期的に出現する。一度隙間12から出現して次に出現するまでの期間が出現周期であり、隙間12から出現して姿を消すまでの期間が出現期間である。また、
図2(b)に示すように、移動体1が定期的に発生、消滅する電波や情報である場合には、ある発生から次の発生までの期間が出現周期であり、発生してから消滅するまでが出現期間である。
【0017】
本明細書では、無線送信機から発生される電波や、センサーによって得られた情報を移動体1として想定し、説明する。
【0018】
移動体1は、それ自身を識別する識別子1aを有している。識別子1aは、移動体1の検出により、検出装置2が検出する。識別子1aは、移動体1が例えば電波や情報である場合はこれらに重畳されて検出装置2により検出される。
【0019】
検出装置2は、定間隔の観測周期にて移動体1を観測する。この定間隔の観測周期は、例えば検出装置2が周期的に移動、自転又は間欠動作することで実現される。各周期内での観測期間が定められており、この期間でのみ移動体1を観測可能とする。従って、基本的には、観測期間は観測周期より短い。観測期間が観測周期以上であれば常に観測状態となる。
【0020】
具体的には、この検出装置2は、移動体1を検出する検出器2aと、検出器2aを機械的に駆動させるアクチュエータ2bと、検出器2a及びアクチュエータ2bを制御する制御部2cと、検出装置2外部との各情報のやりとりを行うための外部I/F2dと、所定の値や情報を記憶する記憶部2eとを備える。
【0021】
外部I/F2dは、制御部2c及び記憶部2eと接続されている。外部I/F2dは、検出器2aが検出した検出情報を検出装置2の外部に出力し、検出装置2の外部からの入力を受け付けるインターフェイスである。記憶部2eは、移動体1の出現周期p
a、検出装置2の観測周期p
o、最小観測期間s
ol,及び最大観測期間s
omを予め記憶し、或いは、外部I/F2dを介して外部から入力された情報を記憶する。また、記憶部2eは、検出器2aにより検出された検出情報を記憶しても良い。
【0022】
ここで、
図3に示すように、観測周期p
oとは、検出装置2がある特定の移動体1の観測の開始から当該移動体1の次の観測開始までの期間である。最小観測期間s
olとは,移動体1の検出に最低限必要な観測時間であり、最大観測期間s
omとは、検出装置2による移動体1の観測を持続可能な最大時間である。なお、本明細書において「観測」とは、移動体1の検出を試みることをいい、「検出」とは、移動体1の観測の結果、当該移動体1を検出装置2が見つけ出したことをいう。
【0023】
検出器2aは、移動体1を検出する機器であり、例えば、光(電磁波)を検出するカメラ、音波によって物体を検出するソナー、電波を検出する無線受信機、温度、湿度、ガス濃度等を検出する環境センサーなどが挙げられる。検出器2aは、アクチュエータ2bに取り付けられている。アクチュエータ2bは、検出器2aを機械的に駆動させる駆動機構である。
【0024】
制御部2cは、検出器2a、アクチュエータ2b、外部I/F2d及び記憶部2eと接続されている。制御部2cは、予め設定された検出器2aの観測周期と観測期間に基づいて、検出器2aの動作を制御する。この検出器2aの観測周期と観測時間は、記憶部2eに記憶された初期値、又は外部I/F2dを介して外部から入力された値を用いることができる。
【0025】
制御部2cは、アクチュエータ2bの動作を制御する駆動制御部21を備えている。駆動制御部21は、アクチュエータ2bを動作制御する信号を生成し、アクチュエータ2bに出力する。これにより、検出器2aを定期的に特定の方向に向ける等、検出器2aの動作が制御される。
【0026】
検出器2aの動作制御について一例を示すと、
図2(a)、(b)に示すように、アクチュエータ2bが回転軸23を有し、当該回転軸23に検出器2aが取り付けられる。回転軸23が回転することにより、検出器2aが定期的に特定の方向に向けられる。2つの検出器2aが回転軸23を中心として背中合わせに取り付けられている場合は、検出方向は180度異なるので、特定の方向には1回転する間に2回検出器2aが向けられる。この場合、観測周期は、検出器2aが1回転する時間であり、観測期間は、当該1回転中に移動体1が観測可能な時間である。
【0027】
なお、検出装置2が間欠動作する場合、すなわち物理的な運動をせず位置不動で移動体1の検出を定期的に行う場合にはアクチュエータ2bは不要である。この場合、制御部2の駆動制御部21は、検出器2aの検出を間欠的になるよう制御する。
【0028】
検出装置2は、移動体1の出現周期p
a、移動体1の出現期間をs
a、検出装置2が移動体1を検出する最小観測時間をs
ol、検出装置2が移動体1を観測する最大観測時間をs
om、検出装置2が移動体1を観測する観測周期をp
oとすると、予め設定されたp
a、s
aに対して、パラメータs
ol、s
om、p
oが、s
a+s
om−2s
ol≧gcd(p
a、p
o)・・・(※)を満たして移動体1を観測する。但し、移動体1の出現周期p
aと検出装置2の観測周期p
oは実数であり、gcd(p
a、p
o)は、移動体1の出現周期p
aと検出装置2の観測周期p
oの実数に拡張した最大公約数である。なお、式(※)は下記の式(8)である。
【0029】
制御部2cは、式(※)を満たし、上記パラメータs
ol、s
om、p
oのいずれかを固定した制約下で、検出時間が最小となる最適化問題を解く演算部22を備える。固定するパラメータ以外の変動させるパラメータは、例えば外部I/F2dを介して設定する。最適化問題の解法は公知の方法を採用することができる。
【0030】
制御部2cは、検出器2aが検出した情報を外部I/F2dを介して検出装置2外部に出力する。この出力は、制御部2cが逐次自発的に行っても良いし、記憶部2eに時系列で蓄積しておき、外部からの要求に応じて出力しても良い。
【0031】
また、制御部2cは、所定のタイミングで各部の動作を制御する。制御部2cは、外部I/F2d経由で外部からのリセット要求又は検出装置2の内部状態の異常を検出した場合に、検出装置2を初期化処理する。初期化処理とは、検出装置2の観測周期、観測期間の設定或いは再設定である。例えば、記憶部2eに予め記憶された観測周期、観測期間を初期値とする。或いは、外部I/F2d経由で外部から受け付けた観測周期、観測期間を、検出装置2が動作するための設定値とする。初期化処理により、検出装置2は、動作可能な状態となる。
【0032】
[1−2.移動体の検出原理]
本発明の検出装置2が移動体1と非同期で移動体1を観測するときの、移動体1の検出原理について、以下で説明する。移動体1と検出装置2は、非同期で移動、自転又は間欠動作することから、検出装置2の観測周期と移動体1の移動周期とが重なり合わなければ、永久に移動体1が検出されないことになる。そこで、いかなるタイミングで観測を開始したとしても移動体1を検出可能な条件を定める。
【0033】
[1−2−1.移動体の前提条件]
移動体1の出現周期をp
a、出現期間をs
aとしたとき、式(1)が成立するものとする。
【数1】
なお、s
a=p
aならば、移動体1は常時観測可能な状態となる。
【0034】
[1−2−2.検出装置の前提条件]
検出装置2の観測周期をp
o、最小観測期間をs
ol、最大観測期間をs
omとしたとき、式(2)が成立するものとする。ここで、最小観測期間とは、移動体1の検出に最小限必要な観測期間であり、最大観測期間とは、移動体1の観測を持続可能な最大時間である。検出装置2は、最小観測期間から最大観測期間まで連続して観測を行えるものとする。
【数2】
s
ol=0,s
om=p
oならば、検出装置2は常時観測状態となる。
【0035】
[1−2−3.検出の前提条件]
移動体1を検出するために、検出装置2は、最低限s
olの期間を要することから、移動体1の出現期間s
aとの間に式(3)の関係が成り立たなければならない。
【数3】
【0036】
さらに、移動体1の出現期間s
aにおいて、検出装置2はs
olからs
omまでの観測期間のうち、少なくともs
olの期間に亘って移動体1を観測可能ならば、当該移動体1を検出することができる。これら期間の関係により、
図4に示すように移動体1を検出可能な期間s
dを求めることができる。
【0037】
すなわち、出現期間s
aが出現開始時刻t
aから出現終了時刻t
bまでの期間とすると、検出に必要な最小期間がs
olであるから、出現終了時刻t
bからs
ol前から観測を開始すれば移動体1を検出可能である(s
a−s
ol)。一方、出現開始時刻t
aと同時に観測を開始しても最小時間s
olで移動体1を検出可能であるが、出現開始時刻t
aからs
ol進んだ時刻よりs
om前の時刻から観測を開始しても移動体1を検出可能である。言い換えると、出現開始時刻t
aより(s
om−s
ol)前の時点で観測を開始しても移動体1を検出可能である。
【0038】
この検出可能な期間s
dは、式(4)で表すことができ、s
dを移動体検出余裕と呼ぶ。
【数4】
【0039】
この移動体検出余裕s
dは、移動体1の各出現周期において検出装置2が当該移動体1を検出可能な最大の観測開始タイミング幅と解釈することができる。
【0040】
式(2)及び式(3)より移動体検出余裕s
dは、0又は正数に定まる。s
d=0のときとは、式(4)から明らかなように、
図3に示すA(=s
a−s
ol)と、B(=s
om−s
ol)が等しくなるとき、すなわち式(2)及び式(3)よりA≧0、B≧0であることを加味するとs
a=s
ol=s
omのときであり、移動体1の出現タイミングと検出装置2の観測タイミングがちょうど同時刻に揃ったときのみ移動体1を検出可能なクリティカルな状態を示す。
【0041】
移動体1の出現タイミングと検出装置2の観測タイミングが適切な関係になければ、移動体1を検出はおろか、観測することすらできない。さらに、観測できたとして、移動体検出余裕s
dに応じて両タイミングが更なる条件を満足しなければ、当該移動体1を検出することはできない。
【0042】
そこで、移動体1を検出可能な時間条件について求めると、移動体1の出現開始時刻をt
a、検出装置2の観測開始時刻t
oとした場合、式(5)となる。
【数5】
【0043】
すなわち、出現タイミングと観測タイミングとの差の幅が移動体検出余裕s
d以下の時に限り、移動体1を検出することができる。この式(5)を動的検出条件と呼ぶ。
【0044】
[1−2−4.移動体検出可能性]
移動体1の出現開始タイミングと検出装置2の観測開始タイミングとが同期か非同期かに依らず、一旦移動体1を検出してから次にその移動体1を検出するまでの最大検出時間を知ることが、この移動体1の検出システムの特性の表現に必要となる。
【0045】
さらに、検出装置2がいかなるタイミングで観測を開始したとしても、対象となる移動体1を検出可能でなければ、検出装置2として完備でない。そのため、任意のタイミングで観測を開始したとしても移動体1を検出可能な条件を求める必要がある。当該条件を静的条件と呼ぶこととする。
【0046】
式(5)の動的検出条件より、移動体1の出現開始時刻t
aを基準とすれば、相対的には瞬間的な移動体出現点(移動体出現開始点)が移動体検出余裕期間で観測されるならば、当該移動体1を検出可能である。
図5に示すように、移動体出現点は、移動体1の出現開始点であるため出願周期p
a毎に、移動体検出余裕s
dは、1回の出現期間s
aにおいて算出したものであるため観測周期p
o毎に、周期的に発生すると解釈できる。
【0047】
[1−2−5.最大検出時間]
最大検出時間について考えると、移動体1と検出装置2とがそれぞれ定間隔で周期的に動作するため、ある移動体1の検出時点から次にその移動体1を検出できるまでの期間が最大検出時間となる。
【0048】
ここで、出現周期p
aと観測周期p
oの最大公約数をG=gcd(p
a,p
o)、最小公倍数をL=lcm(p
a,p
o)とする。これらは整数のみならず実数へ拡張可能とする。例えば、gcd(5.0,2.7)=0.1,lcm(5.0,2.7)=135と求めることができる。
【0049】
最大検出時間は、問題の性質から、移動体1の出現周期p
aと検出装置2の観測周期p
oとの最小公倍数Lに等しいことが分かる。
【0050】
[1−2−6.静的検出条件]
次に、検出装置2がいかなるタイミングで観測を開始しても移動体1を検出可能な静的検出条件について考える。移動体1の出現開始点を移動体出現点と称すると、隣接する移動体出現点間(すなわち出現周期p
a)に存在する相対的な観測時間t
dは、適切な負でない2整数a,bにより、式(6)の通り表すことができる。但し、この相対時刻t
dは移動体出現点を基準とし、0≦t
d<p
aとして計測されるものとする。
【数6】
【0051】
最小公倍数の性質から、互いに素な2整数k
a,k
oにより、L=k
a×p
a=k
o×p
oと表せるので、相対時刻t
dは、式(7)の通りに展開できる。
【数7】
【0052】
式(7)の最右辺p
aの係数分子は、k
a,k
oが互いに素であるため、a,bの取り方により、整数論的に負でない任意の整数を構成することができることが知られている。また、最大検出時間の条件から、k
o回の観測により移動体1が検出されるため、さらには相対時刻t
dの計測条件からも、0≦a×k
a−b×k
o<k
oとなるため、同係数分子は、0からk
o−1の整数を取ることが言える。
【0053】
ここで、同係数分子を1とすると、式(7)はt
d=(1/k
o)×p
aとなるから、
図6に示すように、移動体出現点間を均等にk
o分割し、そのすべての分割点において移動体1の検出を開始することが分かる。さらに、最小公倍数と最大公約数の関係式から、L=k
a×k
o×G=k
a×p
aより、p
a=k
o×Gを導くことができる。この式から、移動体1の出現周期p
aを、観測周期p
oと出現期間p
aとの最大公約数であるG単位でk
o分割するとも言える。
【0054】
このようなことから、
図7に示すように、出現周期p
aすべてに亘ってこの分割点を基準に移動体検出余裕s
dを隙間なく配置することができれば、移動体1を検出不能な確率を0にできることが分かる。
【0055】
従って、いかなる時点からも移動体1を検出可能とする条件は、式(8)の通り移動体検出余裕s
dが出現周期p
aと観測周期p
oの最大公約数G以上となることである。当該条件が静的検出条件である。
【数8】
【0056】
すなわち、検出装置2は、移動体1に関するパラメータp
a、s
aは固定であるので、最小観測可能時間s
ol,最大観測可能時間s
om,観測周期p
oをパラメータとして式(8)を満たす条件の下、観測すれば任意のタイミングで観測を開始したとしても必ず移動体1を検出することができる。
【0057】
この静的検出条件を満足する場合、観測開始時刻の存在確率が出現周期p
aに亘って一様であるならば、移動体1の検出までの平均観測回数<N
o>は、式(9)の通り求めることができる。式(9)を用いて平均観測時間は、<N
o>×p
oと求められる。
【数9】
【0058】
[1−3.作用]
図8を参照し、本発明の検出装置の動作について説明する。
図8は、検出装置2の動作フローチャートである。なお、
図8に示す動作やその順序は一例であり、これに限定されるものではない。
【0059】
検出装置2の動作は、主としてリセット、観測、移動体1の検出、検出情報の出力からなる。前提として、検出装置2の観測開始の際には、移動体1は、所定の出現周期p
aと出現期間s
aで動作しているものとする。出現周期p
aと出現周期s
aは、検出装置2の記憶部2eに外部I/F2d経由などにより予め記憶されているものとする。
【0060】
まず、検出装置2の初期化処理としてリセットを行う(ステップS01)。すなわち、検出装置2が行う観測周期p
o、最小観測期間s
ol、及び最大観測期間s
omを設定する。この設定は、検出装置2の記憶部2eに予め記憶された各初期値とするか、或いは、検出装置2外部から外部I/F2d経由で記憶部2eに記憶された各値とする。ここでは、各パラメータの設定は、後者であるものとする。
【0061】
次に、検出装置2の制御部2cは、アクチュエータ2bを動作させ、設定された観測周期p
o及び観測期間s
ol,s
omに基づいて、検出器2aで移動体1の観測を開始する(ステップS02)。このとき、検出装置2は、周期的に移動又は自転する。或いは、アクチュエータ2bを無くして検出器2aを直接制御部2cが間欠動作させても良い。
【0062】
観測を開始すると、検出器2aは、検出装置2の所定の回数以内の観測期間で移動体1を検出する(ステップS03)。検出装置2は、上記式(8)を満たしているので最大検出時間までに検出可能であり、例えば観測開始が一様であれば平均すると(k
o+1)/2回の観測で移動体1を検出する。検出器2aは、移動体1の検出情報を記憶部2eを介して、或いは直接外部I/F2dを介して、検出装置2の外部へ出力する(ステップS04)。この出力タイミングは、観測周期p
o毎としても良いし、検出情報を記憶部2eに時系列に記憶しておき、外部からの要求に応じたものとしても良い。
【0063】
また、外部からのリセット要求又は制御部2cが内部状態の異常を検出した場合(ステップS05のYes)、ステップS01に戻り、リセットする。当該要求又は異常検出がない場合(ステップS05のNo)、検出装置2の外部からの終了要求の有無を確認し、終了要求がなければ(ステップS06のNo)、ステップS02に戻り、観測を継続する。終了要求があれば(ステップS06のYes)、検出装置2の観測を終了する。
【0064】
[1−4.実施例]
次に、本発明の検出装置2の適用例について、説明する。すなわち、移動体1や検出装置2の具体例を示しつつ、その動作例やメリットについて説明する。
【0065】
(1) 正常系1
移動体1は、環境センサーが検出した測定対象物の温度、湿度、ガス濃度等の環境情報である。すなわち、環境センサーはバッテリーで駆動するものであり、低消費電力とするため、定期的に間欠にセンシングするとともに、当該センサーに設けられた無線I/Fにより、検出した情報を定期的に間欠に外部へ出力する。当該間欠動作の周期が移動体1の出現周期であり、検出した環境情報を出力している間の時間が出現期間である。無線I/Fは複数のチャンネルを有し、運用に先立っていずれか1チャンネルを選択し、環境情報を当該チャンネル上で出力するものとする。
【0066】
検出装置2は、環境情報収集装置である。環境情報収集装置は、検出器2aである無線I/Fを介して環境センサーが出力した環境情報を受け付け、記憶部2eでの記憶や制御部2cでの加工を行っても良い。環境情報収集装置は、受け付けた環境情報の解析や外部への配信、中継などの再出力を行う。なお、検出装置2にアクチュエータ2bは不要であり、制御部2cが検出器2aである無線I/Fを間欠動作するよう制御する。
【0067】
無線I/Fは複数のチャンネルを有し、定期的にチャンネルを順に切り替えて環境情報の入力、すなわち観測を試みる。例えば、チャンネル数が60で、その切替時間が1秒とすると、観測周期は1分、観測期間は1秒ということになる。
【0068】
なお、装置構成が複雑化するため、同時に複数のチャンネルからの入力は行わないことが好ましい。
【0069】
環境センサーの間欠動作と環境情報収集装置のチャンネル切替の周期が一定であるとき、環境情報収集装置は複数の環境センサーからの環境情報を収集することができる。
【0070】
本発明によれば、環境センサーによる環境情報の出力と、環境情報収集装置のチャンネル切替が非同期であっても、出力された環境情報を必ず検出することができる。また、環境センサーと環境情報収集装置との間で、有線、無線を問わず情報伝送のための専用の同期信号路を設ける必要がないので、省インフラや低コストを実現することができる。
【0071】
環境センサーは、センシングのみならず検出した環境情報の出力も間欠的に行うので、省エネルギーであり、バッテリー容量が限られている状況下で特に実益がある。環境情報収集装置は、全チャンネルから同時に入力を行わず、単一チャンネルのみを使用することにより、装置構成を簡略化でき、低コスト化を実現することができる。
【0072】
(2) 正常系2
正常系2は、正常系1と基本的には同様であるので、異なる点のみ説明する。環境センサーの無線I/Fと環境情報収集装置の無線I/Fはそれぞれ単一のチャンネルのみ有し、これらは同一チャンネルである。環境センサーは複数あり、各環境センサーの出力周期は、それぞれ間欠で同じである。各環境センサーの出力周期はそれぞれ同期していても、非同期であってもよい。当該出力周期が、移動体1の出現周期であり、出力している間の時間が出現期間である。
【0073】
環境情報収集装置は、バッテリーで駆動する。低消費電力とするため、定期的に間欠動作する。すなわち、この間欠動作の周期が観測周期であり、動作中の時間が観測期間である。
【0074】
このような例でも、環境情報収集装置は、複数の環境センサーからの環境情報を収集することができる。
【0075】
(3) 正常系3
移動体1は、サーチライトによる光である。サーチライトは自身に設けられたアクチュエータによりライトを定周期で回転動作させ、投光する。サーチライトの回転周期が光の出現周期であり、光が観測できる期間が出現期間である。
【0076】
検出装置2は、サーチライト保全装置である。サーチライト保全装置は、検出器2aとして受光器を備え、同装置が設置された場所にサーチライトからの放射光が正しく照射されるかを検査する装置である。受光器は、アクチュエータにより回転し、定周期でその受光面を移動でき、各方位からの放射光を受光する。この場合、アクチュエータによる受光器の回転周期が観測周期であり、その一部が観測期間である。
【0077】
サーチライトとサーチライト保全装置のアクチュエータの各回転周期が一定であれば、サーチライト保全装置は複数のサーチライトからの放射光を受光することができる。そのため、サーチライトとその保全装置との間で、放射面と受光面の法線を一致させるための専用の同期信号路を設ける必要がなく、省インフラや低コストを実現することができる。また、1台の保全装置で複数のサーチライトを保守できるため、システムを簡素化し、低コストを実現することができる。
【0078】
(4) 異常系
検出装置2は、異常を検出することも可能である。例えば、上記の正常系1のシステムにおいて、環境センサーの間欠出力周期(すなわち出現周期)と、環境情報収集装置のチャンネルの切替周期(すなわち一チャンネルにおける観測周期)の最小公倍数の期間を経過しても、環境情報収集装置が環境情報を収集できない場合、当該環境センサーの故障や外来ノイズ等による無線チャンネルの品質劣化が発生した可能性が疑われる。上記のように当該最小公倍数の期間が環境情報収集装置の最大検出時間だからである。
【0079】
(5) 適応型
例えば、正常系2のシステムにおいて、ある環境センサーの間欠動作周期(出現周期p
a)が不明であるとする。但し、出現期間s
a(環境情報出力期間)は既知であるとする。
【0080】
当該環境センサーからの環境情報を、環境情報収集装置が無線I/Fを介して初めて入力した時刻と2度目に入力した時刻とを記憶部2eに記憶し、制御部2cによりこれら時刻の差分を求める。この差分を検出間隔時間τと称すると、制御部2cは、この検出間隔時間τと既知の出現期間s
a、観測周期p
oに基づいて、式(8)を満たす間欠動作周期(出現周期p
a)を求める。
【0081】
その求め方の一例を説明すると、検出間隔時間τは、最大検出時間L以下である(τ≦L)。最大検出時間LはL=k
o×p
o=k
a×p
aで表せるため、τ≦k
o×p
o=k
a×p
aとなる不等式が導かれ、この不等式を満たす複数の間欠動作周期(出現周期p
a)が仮定される。言い換えると、整数k
aと間欠動作周期p
aの積がLを満たす組み合わせが複数仮定される。但し、k
oとk
aは互いに素な整数であるという制約があるため、仮定される間欠動作周期(出現周期p
a)の数は限定的に絞られる。
【0082】
さらに、次のような制約もある。すなわち、仮定された間欠動作周期p
aは、上記で示した式(1)(s
a≦p
a)、式(8)(s
d≧G)、p
a=k
0×Gより、s
a≦p
a≦k
o×s
dを満たさなければならない。検出間隔時間τと最大検出時間Lの不等式τ≦k
o×p
oを用いて書き直せば、s
a≦p
a≦(τ/p
o)×s
dを満たさなければならない。
【0083】
ここで、下限値の出現期間s
aは既知である。さらに、移動体検出余裕s
dは既知の出現周期s
a、最大観測期間s
om,最小観測期間s
olで表されるため、既知である。また、検出間隔時間τと観測期間p
oが既知である。よって、上限値の(τ/p
o)×s
dも既知である。従って、既知の下限値及び上限値で挟み込まれるため、仮定された間欠動作周期p
aの候補はさらに絞られる。
【0084】
このような制約から間欠動作周期p
aが仮定される。この仮定された間欠動作周期p
aが、式(8)を満足するかを検査する。すなわち、最大公約数G=gcd(p
a’,p
o)に仮定するp
a’を代入することで、検査することができる。そして、式(8)を満足する仮定のみ抽出する。
【0085】
以上の環境情報の入力時刻の差分、仮定、検査及び抽出は、環境情報収集装置の制御部2cによって行う。制御部2cとしては、例えば、上記差分を求める算出部、上記差分と観測周期p
oとから導かれる不等式(τ≦k
o×p
o=k
a×p
a)と、各制約(k
oとk
aは互いに素な整数であること、s
a≦p
a≦(τ/p
o)×s
d)を満たす出現周期p
a’を仮定する仮定部と、仮定した出現周期p
a’のうち、式(8)を満たす出現周期p
a’を抽出する抽出部とを有するようにする。
【0086】
抽出された仮定が1つの場合は、出現周期が不明な環境センサーの間欠動作周期を推定できたとする。一方、複数の仮定が抽出される場合もある。その場合は、各仮定された出現周期で実際に検出する試験を複数回行う。上記の各式(例えば、式(1)、(8))を満たしているか、抽出部で検査し、いずれかの式を満たさない場合は仮定から除外し、全て満たす仮定の出現周期のみに絞り、1つの出現周期を推定する。例えば、複数回検出試験を行って、検出までの観測回数の平均を求め、式(9)と合っているかを検査し、1つの出現周期に絞り込むことができる。
【0087】
[1−5.効果]
(1)本実施形態の移動体1の検出装置2は、周期的に出現する移動体を非同期に周期的に検出する移動体の検出装置であって、移動体1を検出する検出器2aと、検出器2aが取り付けられ、当該検出器2aを駆動させるアクチュエータ2bと、アクチュエータ2bを制御し、検出器2aの動作を制御する制御部2cと、を備え、制御部2cは、移動体1の出現周期をp
a、移動体1の出現期間をs
a、検出装置2が移動体1を検出する最小観測期間をs
ol、検出装置2が移動体を観測する最大観測期間をs
om、検出装置2が移動体1を観測する観測周期をp
oとすると、予め設定された出現周期p
a、出現期間s
aに対して、各パラメータs
ol、s
om、p
oが、s
a+s
om−2s
ol≧gcd(p
a、p
o) …(8)を満たすようにアクチュエータ2bを制御し、検出器2aに移動体1を観測させるようにした。但し、移動体1の出現周期p
aと検出装置2の観測周期p
oは実数であり、gcd(p
a、p
o)は、移動体1の出現周期p
aと検出装置2の観測周期p
oの実数に拡張した最大公約数である。
【0088】
また、アクチュエータ2bを無くして、制御部2cが検出部2aの動作を制御し、式(8)を満たすように検出器2aに移動体1を観測させるようにしても良い。
【0089】
これにより、どのタイミングで移動体1を観測しても必ず移動体1を検出することができる。また、専用の同期信号路を設ける必要がないので、省インフラ及び低コストを実現することができる。
【0090】
(2)出現周期p
a、出現期間s
a、観測周期p
o、最小観測期間s
ol、及び最大観測期間s
omを記憶する記憶部2eと、外部との通信を行うための外部I/F2dと、を備え、記憶部2eには、出現周期p
a、出現期間s
a、観測周期p
o、最小観測期間s
ol、及び最大観測期間s
omの少なくとも何れかが外部I/F2dを介して記憶され、制御部2cは、記憶部2eに記憶されたこれらの周期及び期間と、上記式(8)に基づいて、検出器2aに移動体1を観測させるようにした。
【0091】
これにより、移動体1の検出に必要なパラメータとして、予め設定された出現周期p
a、出現期間s
a、観測周期p
o、及び観測期間s
ol、s
omだけでなく、外部からのこれらの入力を受け付けることができるので、外部からの要求に適した検出を行うことができる。
【0092】
(3)記憶部2eには、移動体1の出現期間が記憶され、移動体1の出現周期が不明で記憶されていない場合に、記憶部2eは、検出器2aが移動体1を検出した時刻と、その次に当該移動体1を検出した時刻とを記憶し、制御部2cは、記憶部2eに記憶された両時刻の差分を算出し、当該差分と観測周期p
oに基づいて、式(8)を満たす出現周期p
aを求めるようにした。
【0093】
これにより、検出対象の移動体1の出現周期が不明である場合であっても、移動体1の検出時刻情報から当該移動体1の出現周期を推定できる。この推定した出現周期は式(8)を満たしているので、任意のタイミングで観測を開始しても、当該移動体1を必ず検出することができる。
【0094】
(4)制御部2cは、検出器2aが移動体1を、移動体1の出現周期と検出装置2の観測周期との最小公倍数である最大検出時間以内に検出しない場合は、外部I/F2dを介して外部に異常を知らせる信号を出力するようにした。
【0095】
これにより、本検出装置2が最大検出時間内に移動体1を検出可能であることから、当該時間内に検出されない場合には、検出対象の移動体1に故障が生じたか、検出器2aが外来ノイズの影響を受けている等の異常であると判定できる。そのため、いつまでも移動体1の観測をすることなく、他の対処に移ることができる。
【0096】
(5)記憶部2eには、観測周期、最小観測期間、及び最大観測期間のいずれか2つが外部I/F2dを介して記憶され、制御部2cは、記憶部2eに記憶された出現周期、出現期間と、観測周期、最小観測期間、最大観測期間のいずれか2つを固定した制約下で、上記式(8)を満たし、かつ、移動体1の検出時間が最小となる残りの観測周期、最小観測期間、最大観測期間のいずれかを求める演算部22を有するようにした。
【0097】
これにより、移動体1を検出するための時間を最短にすることができる。
【0098】
[2.他の実施形態]
本発明は上記実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより、種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。
【0099】
上記の実施形態では、本発明を移動体1の検出装置2として説明したが、検出装置2のプログラムとして捉えることもできる。すなわち、検出装置2の制御部2cが行う制御を実行するためのプロクラムである。
【0100】
例えば、次のプログラムが本発明の態様に含まれる。すなわち、周期的に出現する移動体1を非同期に周期的に検出する検出装置2のプログラムであって、検出装置2は、移動体1を検出する検出器2aと、検出器2aが取り付けられ、当該検出器2aを駆動させるアクチュエータ2bと、コンピュータとを備え、当該コンピュータに、移動体1の出現周期をp
a、移動体1の出現期間をs
a、検出装置2が移動体1を検出する最小観測期間をs
ol、検出装置2が移動体1を観測する最大観測期間をs
om、検出装置2が移動体1を観測する観測周期をp
oとすると、予め設定された出現周期p
a、出現期間s
aに対して、各パラメータs
ol、s
om、p
oが、s
a+s
om−2s
ol≧gcd(p
a、p
o) …(8)を満たすように検出器2aを制御する信号を生成する処理を実行させるプログラムである。
【0101】
また、演算部22の処理を実行するプログラムや、不明な出現周期p
aを推定するプログラムも本発明の態様の一つである。