特許第6386429号(P6386429)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6386429
(24)【登録日】2018年8月17日
(45)【発行日】2018年9月5日
(54)【発明の名称】映像信号伝送システム
(51)【国際特許分類】
   H04N 21/238 20110101AFI20180827BHJP
   H04L 12/803 20130101ALI20180827BHJP
   H04L 12/891 20130101ALI20180827BHJP
   H04L 12/953 20130101ALI20180827BHJP
   H04N 21/61 20110101ALI20180827BHJP
【FI】
   H04N21/238
   H04L12/803
   H04L12/891
   H04L12/953
   H04N21/61
【請求項の数】7
【全頁数】22
(21)【出願番号】特願2015-178774(P2015-178774)
(22)【出願日】2015年9月10日
(65)【公開番号】特開2017-55305(P2017-55305A)
(43)【公開日】2017年3月16日
【審査請求日】2016年9月1日
【審判番号】不服2017-7675(P2017-7675/J1)
【審判請求日】2017年5月29日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】599083318
【氏名又は名称】株式会社メディアリンクス
(74)【代理人】
【識別番号】110001243
【氏名又は名称】特許業務法人 谷・阿部特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中村 和則
(72)【発明者】
【氏名】成田 和生
【合議体】
【審判長】 鳥居 稔
【審判官】 小池 正彦
【審判官】 樫本 剛
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2014/181381(WO,A1)
【文献】 特開2014−230057(JP,A)
【文献】 特開2015−138990(JP,A)
【文献】 特開2005−277915(JP,A)
【文献】 特開2007−60494(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04N21/00-21/858
G06F13/00
H04L12/00-12/955
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
映像信号を受信装置に送信する送信装置であって、前記送信装置と前記受信装置とは、ネットワークを介して接続され、前記受信装置は、複数の受信側伝送経路にそれぞれ接続され、各々が送信先識別子を有する複数の送信先ネットワークインタフェースを含み、前記送信装置は、
複数の送信側伝送経路にそれぞれ接続され、各々が送信元識別子を有する複数の送信元ネットワークインタフェースと、
前記映像信号を複数のデータに分割する映像信号分割部と、
前記分割した複数のデータのそれぞれを、複数の送信側伝送経路グループのいずれか、および複数の受信側伝送経路グループのいずれかに割り当てるグループ割当部と、
前記複数の送信側伝送経路グループに割り当てられた前記複数のデータに、前記送信元識別子を付加する送信元識別子割当部と、
前記複数の受信側伝送経路グループに割り当てられた前記複数のデータに、前記送信先識別子を付加する送信先識別子割当部と、
前記送信元識別子および前記送信先識別子が付加された前記複数のデータのそれぞれに、IPヘッダを付加して複数のIPパケットを生成するIPパケット生成部と、
前記生成した複数のIPパケットのそれぞれにシーケンス番号を割り当てるシーケンス番号割当部と、
前記シーケンス番号が割り当てられた複数のIPパケットを、前記付加した送信元識別子に従って、前記複数の送信元ネットワークインタフェースのそれぞれを通じて、個々のIPパケットごとに送信する送信部と
を備え、
前記送信した複数のIPパケットは、前記付加した送信先識別子に従って、前記複数の送信先ネットワークインタフェースのそれぞれを通る
ことを特徴とする送信装置。
【請求項2】
前記送信元識別子は、仮想LAN識別子、送信元IPアドレス、および送信元MACアドレスのうちの少なくとも1つであり、前記送信先識別子は、仮想LAN識別子、送信先IPアドレス、および送信先MACアドレスのうちの少なくとも1つであることを特徴とする請求項1に記載の送信装置。
【請求項3】
前記シーケンス番号割当部は、前記複数の送信側伝送経路グループのうち同一の送信側伝送経路グループに割り当てられた前記複数のIPパケットに対し第1のシーケンス番号を割り当て、同一の第1のシーケンス番号が割り当てられた前記複数のIPパケットに対し第2のシーケンス番号を割り当てることを特徴とする請求項1または2に記載の送信装置。
【請求項4】
前記グループ割当部は、
前記複数の送信側伝送経路の帯域に応じて、前記分割した複数のデータのそれぞれを、前記複数の送信側伝送経路グループのいずれかに割り当て、
前記複数の受信側伝送経路の帯域に応じて、前記分割した複数のデータのそれぞれを、前記複数の受信側伝送経路グループのいずれかに割り当てる
ことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載の送信装置。
【請求項5】
前記複数の送信側伝送経路うち障害が発生した送信側伝送経路および/または前記複数の受信側伝送経路のうち障害が発生した受信側伝送経路に関する障害情報を受信する受信部をさらに備え、
前記グループ割当部は、
前記障害が発生した送信側伝送経路に関する障害情報を受信したことに応答して、前記分割した複数のデータのそれぞれを、前記障害が発生した送信側伝送経路に対応する送信側伝送経路グループを除いて、前記複数の送信側伝送経路グループのうちいずれかに割り当て、
前記障害が発生した受信側伝送経路に関する障害情報を受信したことに応答して、前記分割した複数のデータのそれぞれを、前記障害が発生した受信側伝送経路に対応する受信側伝送経路グループを除いて、前記複数の受信側伝送経路グループのうちいずれかに割り当てる
ことを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一項に記載の送信装置。
【請求項6】
映像信号を送信装置から受信装置に伝送する映像信号伝送システムであって、前記送信装置と前記受信装置とは、ネットワークを介して接続され、
前記送信装置は、
複数の送信側伝送経路にそれぞれ接続され、各々が送信元識別子を有する複数の送信元ネットワークインタフェースと、
前記映像信号を複数のデータに分割する映像信号分割部と、
前記分割した複数のデータのそれぞれを、複数の送信側伝送経路グループのいずれか、および複数の受信側伝送経路グループのいずれかに割り当てるグループ割当部と、
前記複数の送信側伝送経路グループに割り当てられた前記複数のデータに、前記送信元識別子を付加する送信元識別子割当部と、
前記複数の受信側伝送経路グループに割り当てられた前記複数のデータに、送信先識別子を付加する送信先識別子割当部と、
前記送信元識別子および前記送信先識別子が付加された前記複数のデータのそれぞれに、IPヘッダを付加して複数のIPパケットを生成するIPパケット生成部と、
前記生成した複数のIPパケットのそれぞれにシーケンス番号を割り当てるシーケンス番号割当部と、
前記シーケンス番号が割り当てられた複数のIPパケットを、前記付加した送信元識別子に従って、前記複数の送信元ネットワークインタフェースのそれぞれを通じて、個々のIPパケットごとに送信する送信部と
を備え、
前記受信装置は、
複数の受信側伝送経路にそれぞれ接続され、各々が前記送信先識別子を有する複数の送信先ネットワークインタフェースと、
前記複数の送信先ネットワークインタフェースのそれぞれを介して、個々のIPパケットごとに送信された前記複数のIPパケットを受信する受信部であって、前記受信した複数のIPパケットは、前記付加された送信先識別子に従って、前記複数の送信先ネットワークインタフェースのそれぞれを通る、受信部と、
前記割り当てられたシーケンス番号に基づいて、前記受信した複数のIPパケットを並び替えて、映像信号を生成する映像信号生成部と
を備えたことを特徴とする映像信号伝送システム。
【請求項7】
映像信号を送信装置から受信装置に伝送する映像信号伝送方法であって、前記送信装置と前記受信装置とは、ネットワークを介して接続され、
前記送信装置は、複数の送信側伝送経路にそれぞれ接続され、各々が送信元識別子を有する複数の送信元ネットワークインタフェースを備え、
前記受信装置は、複数の受信側伝送経路にそれぞれ接続され、各々が送信先識別子を有する複数の送信先ネットワークインタフェースを備え、
前記方法は、
前記送信装置が、
前記映像信号を複数のデータに分割するステップと、
前記分割した複数のデータのそれぞれを、複数の送信側伝送経路グループのいずれか、および複数の受信側伝送経路グループのいずれかに割り当てるステップと、
前記複数の送信側伝送経路グループに割り当てられた前記複数のデータに、前記送信元識別子を付加するステップと、
前記複数の受信側伝送経路グループに割り当てられた前記複数のデータに、前記送信先識別子を付加するステップと、
前記送信元識別子および前記送信先識別子が付加された前記複数のデータのそれぞれに、IPヘッダを付加して複数のIPパケットを生成するステップと、
前記生成した複数のIPパケットのそれぞれにシーケンス番号を割り当てるステップと、
前記シーケンス番号が割り当てられた複数のIPパケットを、前記付加した送信元識別子に従って、前記複数の送信元ネットワークインタフェースのそれぞれを通じて、個々のIPパケットごとに送信するステップと、
前記受信装置が、
前記複数の送信先ネットワークインタフェースのそれぞれを介して、個々のIPパケットごとに送信された前記複数のIPパケットを受信するステップであって、前記受信した複数のIPパケットは、前記付加された送信先識別子に従って、前記複数の送信先ネットワークインタフェースのそれぞれを通る、ステップと、
前記割り当てられたシーケンス番号に基づいて、前記受信した複数のIPパケットを並び替えて、映像信号を生成するステップと
を備えたことを特徴とする映像信号伝送方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、映像信号伝送システムに関し、特に、映像信号を複数の伝送経路で分散する映像信号伝送システムに関する。
【背景技術】
【0002】
スタジアムに設置されたカメラによって撮影された映像を放送局に伝送する場合、または放送局から映像を伝送する場合など、映像信号をマルチキャストで伝送することが行われている。このような映像信号を伝送する場合、その映像信号はIPパケットに変換されて、IPネットワークを経由して伝送される。従来、このような映像信号をIP伝送する場合、1つのネットワークインタフェースで複数の映像ストリームを伝送することを前提としていた。例えば、10Gbpsの帯域を有するイーサネット(登録商標)では、最大6つのHD(high definition)非圧縮伝送ストリームを伝送することができる。
【0003】
しかしながら、近年、4K/8Kといったより高精細かつ大容量の映像規格が定まりつつあり、これらの映像信号のビットレートが、従来のネットワーク環境におけるビットレートを上回りつつある。例えば、4Kは12Gbpsのビットレートに相当し、10Gbpsのイーサネットでは伝送することができない。8Kに関しては、140Gbps超のビットレートに相当し、100Gbpsのイーサネットでさえ、伝送することができない。
【0004】
上述したような問題に対処するために、複数の伝送経路(イーサネット)を仮想的に1個の伝送経路と見なすことによって、通信速度および耐故障性を向上させる「リンクアグリゲーション」技術が存在する。リンクアグリゲーションでは、複数の伝送経路を1つの伝送経路と見なすので、並列にパケットを伝送することによってビットレートを向上させることができる。例えば、100Gbpsの帯域を有するイーサネットであっても、それらを3つのイーサネットで束ねることによって、300Gbpsのビットレートを実現することができる(非特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2010−278799号公報
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】株式会社KDDI研究所、テクノロジーの交差点、”リンクアグリゲーション無線技術”(2012年8月)、[online]、株式会社KDDI研究所ホームページ、[平成27年7月22日検索]、インターネット(URL:http://www.kddilabs.jp/assets/files/technology/72.pdf)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
リンクアグリゲーションは、伝送する映像信号を複数のパケットに分割して、複数の伝送経路で分散することによって、仮想的な1つの伝送経路を実現しているが、以下のような問題を有している。
【0008】
リンクアグリゲーションでは、伝送するパケットの送信元MACアドレスもしくは送信先MACアドレス(データリンク層)、または送信元IPアドレスもしくは送信先IPアドレス(ネットワーク層)などの単位で伝送経路を分散させている。この方式では、例えば、大容量の映像信号を複数のパケットに分割しても、その複数のパケットの送信先MACアドレスは同一であるので、結局は同一の伝送経路を通ることになる。このことから、大容量パケットを伝送する場合に、適切に分散させることができないといった問題が生じる。
【0009】
また、映像伝送は、WANを経由した伝送であるため、映像信号伝送システムに接続されるスイッチなどのネットワーク機器までの伝送経路だけでなく、そのネットワーク機器から受信装置までの伝送経路の全ての経路についてリンクアグリゲーションを実装する必要がある。このことは大規模な物理環境を必要とし、現実的ではない。
【0010】
さらに、リンクアグリゲーションでは、使用している複数の伝送経路の1つに障害が発生した場合、残りの伝送経路を使用することによって伝送を行う(自動縮退)。これは、例えば、100Gbpsの帯域幅を有するイーサネットの2つを束ねた200Gbpsの仮想伝送経路1、および3つを束ねた300Gbpsの仮想伝送経路2が存在する環境において、仮想伝送経路1の1つのイーサネットに障害が発生した場合、仮想伝送経路1は100Gbpsのビットレートで伝送を継続することになる(つまり、仮想伝送経路1を通るパケットを、障害の発生に応じて仮想伝送経路2に切り替えることができない)。
【0011】
特許文献1は、映像品質を劣化させないコンテンツ送信装置およびコンテンツ受信装置を開示している。特許文献1に係る発明では、ある一定の伝送経路でのコンテンツの伝送中に、経路上に障害が発生しその伝送性能が劣化した時に、コンテンツ送信装置はコンテンツ受信装置へ向けて、コンテンツにシーケンス番号を付与して全ての伝送経路にコンテンツデータを送信する。一方コンテンツ受信装置は全ての伝送経路からコンテンツデータを受信し、シーケンス番号毎に一番早く到達したコンテンツデータを選択し受信処理を行っている。また、特許文献1に係る発明は、コンテンツを分散させることで、特定の伝送経路に負担を掛けることなくコンテンツの伝送を可能にしている。
【0012】
しかしながら、特許文献1に係る発明によって、映像品質を劣化させないことが可能であるが、伝送するコンテンツを効率的に分散するものではない。また、大容量の映像信号を分散して伝送するものではない。加えて、特許文献1に係る発明では、上述したような、リンクアグリゲーションの問題を解決するものではない。
【0013】
本発明は上述した問題に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、映像信号を独立したIPパケットとして、複数の伝送経路を介して伝送することによって、大容量映像信号を効率的に負荷分散することができる映像信号伝送システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記の課題を解決するために、本発明に係る映像信号伝送システムは、映像信号を受信装置に送信する送信装置であって、前記送信装置と前記受信装置とは、IPネットワークを介して複数の伝送経路で接続され、前記複数の伝送経路の第1の伝送経路と接続された第1の送信元ネットワークインタフェースと、前記複数の伝送経路の第Nの伝送経路と接続された第Nの送信元ネットワークインタフェースと、前記映像信号を複数のデータに分割する映像信号分割部と、前記分割した複数のデータのそれぞれにシーケンス番号を割り当てるシーケンス番号割当部と、前記シーケンス番号が割り当てられた複数のデータに、IPヘッダを付加して複数のIPパケットを生成するIPパケット生成部と、前記生成した複数のIPパケットを、前記第1の送信元ネットワークインタフェースから前記第Nの送信元ネットワークインタフェースのそれぞれに割り当てて、個々のIPパケットごとに送信する送信部とを備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明に係る映像信号伝送システムによれば、リンクアグリゲーションのような大規模な物理的環境を必要とすることなく、映像信号を効率的に負荷分散することによって、大容量の映像伝送が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の一実施形態に係る映像信号伝送システムの構成の例を示すブロック図である。
図2】本発明の第1の実施形態に係る映像信号伝送システムの伝送経路の例を示す図である。
図3】本発明の第1の実施形態に係る映像信号伝送システムの送信装置側で実行される各処理の概略を示す図である。
図4】本発明の第1の実施形態に係る映像信号伝送システムにおいて伝送されるIPパケットの例を示す図である。
図5】本発明の第2の実施形態に係る映像信号伝送システムの送信装置側で実行される各処理の概略を示す図である。
図6】本発明の第2の実施形態に係る映像信号伝送システムにおいて伝送されるIPパケットの例を示す図である。
図7】本発明の第3の実施形態に係る映像信号伝送システムの伝送経路の例を示す図である。
図8】本発明の第3の実施形態に係る映像信号伝送システムの送信装置側で実行される各処理の概略を示す図である。
図9】本発明の第3の実施形態に係る映像信号伝送システムにおいて伝送されるIPパケットの例を示す図である。
図10】本発明の一実施形態に係る映像信号伝送システムにおける障害時の縮退構成を実現する構成の例を示す図である。
図11】本発明の一実施形態に係る映像信号伝送システムにおける縮退時の伝送されるIPパケットの例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、添付図面を参照しながら、本発明の映像信号伝送システムを説明する。本発明に係る映像信号伝送システムは、12G−SDI、3G−SDIおよびHD−SDIなどの映像信号を伝送する場合に適用されるが、必ずしもそのような形態に限定されない。
【0018】
<装置構成>
図1は、本発明の一実施形態に係る映像信号伝送システムの構成の例を示すブロック図である。映像信号伝送システムは、送信装置100および受信装置200を備えており、IPネットワーク300を介して接続されている。送信装置100は、映像信号をIPパケットに変換して、受信装置200にIP伝送する装置である。受信装置200は、送信装置100からIPパケットを受信して、元の映像装置を生成する装置である。
【0019】
送信装置100は、ネットワークインタフェースカード(NIC)101a、NIC101b、・・・NIC101n(nは、任意の数)、映像信号分割部102、グループ割当部103、IPパケット生成部104、送信元/送信先識別子割当部105、シーケンス番号割当部106、および送信部/受信部107を備えている。
【0020】
ネットワークインタフェースカード(NIC)101aないしNIC101nは、送信装置100と、それに接続されたスイッチなどのネットワーク機器(以下、「ネットワーク機器」)との間の物理的な伝送経路(イーサネット)を介して信号を送受信するネットワークアダプタである。各NICには、同一の仮想LAN(VLAN)IDもしくはIPアドレスが割り当てられてもよく、または別個のVLAN IDもしくはIPアドレスが割り当てられてもよい。なお、当然ながら、各NICには別個のMACアドレスが割り当てられている。
【0021】
映像信号分割部102は、映像信号を複数の固定長のデータに分割する。グループ割当部103は、映像信号分割部102によって分割された複数のデータを、1または複数のデータごとにグループ化する。
【0022】
IPパケット生成部104は、分割されたデータをIP伝送するために、分割されたデータからRTP/IPプロトコルで定められたIPパケットを生成する。具体的には、TCP/IPスイートで定められた各層において、RTPヘッダ(アプリケーション層)、IPヘッダ(ネットワーク層)、およびMACヘッダ(データリンク層)を付加して、IPパケットを生成する。この場合に、必要に応じて、所定のVLAN ID(ネットワーク層および/またはデータリンク層)も付加する。
【0023】
送信元/送信先識別子割当部105は、IPパケット生成部104によってIPヘッダおよびMACヘッダを付加する際に、送信元識別子および/または送信先識別子を割り当てる。送信元識別子とは、例えば、送信元(送信装置100)のVLAN ID、IPアドレス、および/またはMACアドレスである。送信先識別子とは、例えば、送信先(受信装置200)のVLAN ID、IPアドレス、および/またはMACアドレスである。割り当てられた送信元識別子および/または送信先識別子は、対応する各層のヘッダに設定される。
【0024】
シーケンス番号割当部106は、IPパケット生成部104によって生成されたIPパケットのそれぞれにシーケンス番号を割り当てる。シーケンス番号の割り当ての具体的な例は後述する。
【0025】
送信部/受信部107は、IPパケット生成部104によって生成されたIPパケットを、NIC101aないしNIC101nのいずれかを介して、パケット単位で送信する。この際に、IPパケットをどのようにしてNIC101aないしNIC101nのいずれかに割り当てるかの具体的な例は後述する。また、送信部/受信部107は、受信装置200から、ACK/NACKなどの制御信号を受信する。
【0026】
受信装置200は、NIC201a、NIC201b、・・・NIC201n(nは、任意の数)、受信部/送信部202、IPパケット復号部203、および映像信号生成部204を備えている。
【0027】
NIC201aないしNIC201nは、受信装置200と、それに接続されたネットワーク機器との間の物理的な伝送経路(イーサネット)を介して信号を送受信するネットワークアダプタである。各NICには、同一の仮想LAN(VLAN)IDもしくはIPアドレスが割り当てられてもよく、または別個のVLAN IDもしくはIPアドレスが割り当てられてもよい。なお、当然ながら、各NICには別個のMACアドレスが割り当てられている。
【0028】
受信部/送信部202は、送信装置100から送信されたIPパケットを、NIC201aないしNIC201nのいずれかを介して受信する。また、受信部/送信部202は、ACK/NACKなどの制御信号を送信装置100に送信する。
【0029】
IPパケット復号部203は、受信したIPパケットのIPヘッダなどを除去する。この処理によって、受信したIPパケットから、送信装置100によって映像信号から分割された複数のデータが取り出される。
【0030】
映像信号生成部204は、上述した処理によって取り出された複数のデータを、送信装置100において割り当てられたシーケンス番号に基づいて並び替えて、映像信号を生成する(復号する)。このデータの並び替えの詳細な処理の例については後述する。
【0031】
<第1の実施形態>
次に、本発明の第1の実施形態に係る映像信号伝送システムの例を説明する。図2は、本発明の第1の実施形態に係る映像信号伝送システムの伝送経路の例を示している。図2に示すように、送信装置100と受信装置200とは、IPネットワーク300を介して相互に接続されている。送信装置100とIPネットワーク300(ネットワーク機器)との間には、送信側伝送経路301a、301bおよび301cが存在し、NIC101aないし101cにそれぞれ接続されている。送信側伝送経路301aないし301cはそれぞれ、同一の容量の帯域を有している。
【0032】
受信装置200とIPネットワーク300との間には、受信側伝送経路302a、302b、302cおよび302dが存在し、NIC201aないし201dにそれぞれ接続されている。受信側伝送経路302aないし302dはそれぞれ、同一の容量の帯域を有している。
【0033】
本実施形態では、3つの送信側伝送経路と4つの受信側伝送経路とで接続された、3:4の経路構成となっているが、このような送信側−受信側の伝送経路構成は例示的なものにすぎず、同一の数の送信側伝送経路および受信側伝送経路で構成されてもよく、100:200などの構成で両者が構成されてもよい。
【0034】
送信装置100において、NIC101aないし101cに対し、VLAN ID、IPアドレス、およびMACアドレスを含む送信元識別子が、表1に示すように設定されている。
【0035】
【表1】
【0036】
受信装置200においては、NIC201aないし201dに対し、VLAN ID、IPアドレス、およびMACアドレスを含む送信先識別子が、表2に示すように設定されている。
【0037】
【表2】
【0038】
本実施形態では、NIC101aないし101c、およびNIC201aないし201dにはそれぞれ、異なるVLAN IDおよびIPアドレスが設定されているが、両者ともに同一のVLAN IDおよびIPアドレスが設定されてもよい。またVLANは設定されなくてもよい。
【0039】
次に、図3を参照して、送信装置100において実行される各処理の例を説明する。まず、映像信号分割部102が、映像信号VSを、固定長の12のデータD1ないしD12に分割する。本実施形態では、便宜上、映像信号VSを12のデータに分割しているが、その分割したデータ数は例示的なものにすぎない。以下、第2の実施形態および第3の実施形態においても同様である。
【0040】
次に、グループ割当部103は、分割されたデータD1ないしD12を、1または複数の数のデータごとに送信側伝送経路301aないし301cにそれぞれ対応するグループ(以下、「送信側伝送経路グループ」)TG1ないしTG3にグループ化する。また、グループ割当部103は、分割されたデータD1ないしD12を、1または複数の数のデータごとに受信側伝送経路302aないし302dにそれぞれ対応するグループ(以下、「受信側伝送経路グループ」)RG1ないしRG4にグループ化する。分割されたデータD1ないしD12に対する、送信側伝送経路グループにおけるグループ化は、表3に示す通りである。
【0041】
【表3】
【0042】
また、分割されたデータD1ないしD12に対する、受信側伝送経路グループにおけるグループ化は、表4に示す通りである。
【0043】
【表4】
【0044】
グループ割当部103によって、データD1ないしD12のそれぞれが属する送信側伝送経路グループおよび受信側伝送経路グループは、後述する送信元/送信先識別子割当部105が、送信元識別子および送信先識別子をそれぞれ割り当てる際に使用される。つまり、送信元識別子が、送信側伝送経路グループごとに割り当てられ、送信先識別子が、受信側伝送経路グループごとに割り当てられる。
【0045】
送信側伝送経路グループTG1ないしTG3、および受信側伝送経路グループRG1ないしRG4をそれぞれ識別するために、各グループに属するデータD1ないしD12のそれぞれに、対応するグループ識別子が設定されたヘッダが付加されてもよく、またはペイロード部分の予備項目にグループ識別子が設定されてもよい。
【0046】
次に、送信元/送信先識別子割当部105は、データD1ないしD12のそれぞれが属する送信側伝送経路グループTG1ないしTG3のそれぞれに対し、送信元識別子を割り当てる。ここで、送信元識別子は、上述したNIC101aないし101cのそれぞれに設定されたVLAN ID、IPアドレス、およびMACアドレスが割り当てられる。NIC101aないし101cのそれぞれに設定されたVLAN IDおよびIPアドレスは、同一であってもよく、異なってもよいことは、上述した通りである。送信先識別子についても、送信元識別子と同様に、データD1ないしD12のそれぞれが属する受信側伝送経路グループRG1ないしRG4のそれぞれに対し、上述したNIC201aないし201dのそれぞれに設定されたVLAN ID、IPアドレス、およびMACアドレスが割り当てられる。
【0047】
送信側伝送経路グループのそれぞれに対する送信元識別子の割当方法は、本実施形態ではラウンドロビン方式で割り当てられる。つまり、表5に示すように、送信側伝送経路グループTG1からTG3の順序で、NIC101aないし101cに設定された送信元識別子を割り当てる。
【0048】
【表5】
【0049】
また、送信先識別子についても、表6に示すように受信側伝送経路グループRG1からRG4の順序で、NIC201aないし201dに設定された送信先識別子を割り当てる。割り当てられた送信元識別子および送信先識別子は、IPパケット生成部104によって、IPヘッダなどの各層のヘッダに設定され、そのヘッダがデータD1ないしD12のそれぞれに付加されて、IPパケットP1ないしP12を構成する。
【0050】
【表6】
【0051】
上述したように、送信元識別子が割り当てられたことによって、送信装置100とIPネットワーク300との間での、IPパケットを伝送する送信側伝送経路が決まる。つまり、NIC101aの送信元識別子が割り当てられたIPパケットP1、P4、P7およびP10は、送信側伝送経路301aを通ることになる(IPパケットP2、P5、P8およびP11は送信側伝送経路301bを通り、IPパケットP3、P6、P9およびP11は送信側伝送経路301cを通る)。
【0052】
また、送信先識別子が割り当てられたことによって、受信装置200とIPネットワーク300との間での、IPパケットを伝送する受信側伝送経路が決まる。つまり、NIC201aの送信先識別子が割り当てられたIPパケットP1、P5、およびP9は、受信側伝送経路302aを通ることになる(IPパケットP2、P6およびP10は受信側伝送経路302bを通り、IPパケットP3、P7およびP11は受信側伝送経路302cを通り、IPパケットP4、P8およびP12は受信側伝送経路302dを通る)。
【0053】
なお、上述したように、本実施形態では、送信側伝送経路301aないし301cのそれぞれに、異なる値を有するVLAN ID、IPパケット、およびMACアドレスの全てを割り当てているが、必ずしもその必要はない。つまり、異なる値を有するVLAN ID、IPアドレス、およびMACアドレスのいずれかを、送信側伝送経路301aないし301cのそれぞれに割り当てることによって、各IPパケットの送信側伝送経路を割り当てることができる(受信側伝送経路302aないし302dについても同様)。このことは、後述する第2の実施形態および第3の実施形態についても同様に当てはまる。
【0054】
送信元識別子および送信先識別子が割り当てられると、次に、シーケンス番号割当部106は、送信側伝送経路グループTG1ないしTG3ごとにシーケンス番号を割り当てて、伝送するIPパケットP1ないしP12のそれぞれに付加する。ここで、シーケンス番号は、2種類のシーケンス番号が割り当てられ、第1のシーケンス番号については、3つの送信側伝送経路グループTG1ないしTG3のそれぞれにおいて、連番が割り当てられる。また、第2のシーケンス番号については、同一の第1のシーケンス番号が割り当てられたIPパケットごとに連番が割り当てられる。表7には、第1のシーケンス番号および第2のシーケンス番号の割り当てルールを示す。
【0055】
【表7】
【0056】
表7に示すように、IPパケットP1、P4、P7およびP10は、送信側伝送経路グループTG1に属しているので、送信側伝送経路G1においてそれぞれ第1のシーケンス番号1から4がそれぞれ割り当てられる。その他のIPパケットも、それぞれの送信側伝送経路グループにおいて、第1のシーケンス番号1から4が割り当てられる。また、IPパケットP1ないしP3には、第1のシーケンス番号1が割り当てられているので、第2のシーケンス番号1から3がそれぞれ割り当てられる(その他のIPパケットも同様に第2のシーケンス番号が割り当てられる)。
【0057】
上述したシーケンス番号について、RTPヘッダのRTPシーケンス番号を使用してもよく、またはIPヘッダ、MACヘッダもしくはペイロードなどの予備項目を使用して、設定してもよい。このことは、後述する第2の実施形態および第3の実施形態についても同様に当てはまる。
【0058】
シーケンス番号が割り当てられたそれぞれのIPパケットは、送信部/受信部107によって、図4に示すように、送信側伝送経路および受信側伝送経路のそれぞれを介して受信装置200に伝送される。つまり、各IPパケットは、表5で割り当てられた送信元識別子に従った送信側伝送経路を通り、かつ表6で割り当てられた送信先識別子に従った受信側伝送経路を通って、受信装置200に伝送される。
【0059】
このようにして、同一の映像信号を分割してそれぞれの送信元識別子および送信先識別子を割り当ててIPパケットを生成しているので、各IPパケットが独立したIPパケットとしてIPネットワーク300を通ることになる。そして、送信元識別子および送信先識別子をラウンドロビン方式で割り当てているので、3つの送信側伝送経路301aないし301cの間で、および4つの受信側伝送経路302aないし302d間で、IPパケットを均等に分散させることができる。
【0060】
上述したように、送信装置100が伝送したそれぞれのIPパケットは、独立してIPネットワーク300を通ることになるので、受信装置200がそれぞれのIPパケットを受信する順番はバラバラとなる。これを、受信装置200が、送信装置100で割り当てた第1および第2のシーケンス番号に基づいて、表7に示すルールに従って各IPパケットを並び替えることによって、元の映像信号を生成する。
【0061】
なお、第1の実施形態では、次に、送信側伝送経路グループのそれぞれにおいて第1のシーケンス番号を割り当て、同一の第1のシーケンス番号が割り当てられたIPパケットごとに第2のシーケンス番号を割り当てているがそのような形式に限定されない。例えば、第2のシーケンス番号を割り当てる代わりに、映像信号を分割する際に各データにタイムスタンプを設定してもよい。受信装置200側では、第1のシーケンス番号に基づいて、同一の送信側伝送経路グループに属する分割されたデータを並び替え、設定されたタイムスタンプに基づいて、その並び替えたデータを再並び替えする。
【0062】
以上説明したように、元の映像信号を分割して独立したIPパケットとして、受信装置200に伝送しているので、リンクアグリゲーションと比較して、大容量の映像信号をより効率的に負荷分散して伝送することができる。
【0063】
<第2の実施形態>
次に、図5を参照して、本発明の第2の実施形態に係る映像信号伝送システムの例を説明する。第2の実施形態においても、第1の実施形態で説明した伝送経路の構成を使用する。図5は、本発明の第2の実施形態に映像信号伝送システムにおける、送信装置側で実行される各処理の概略を示す図である。
【0064】
まず、映像信号分割部102が、第1の実施形態と同様に、映像信号VSを、固定長の12のデータD1ないしD12に分割する。
【0065】
次に、シーケンス番号割当部106は、映像信号分割部102によって分割されたデータD1ないしD12のそれぞれに対し、時系列の順序で連番となる1から12までのシーケンス番号を割り当てる。ここで、第1の実施形態では、2種類のシーケンス番号を割り当てていたが、第2の実施形態では、単一のシーケンス番号を割り当てることになる。
【0066】
次に、グループ割当部103は、第1の実施形態と同様に、分割されたデータD1ないしD12を、表8および9に示すように、送信側伝送経路グループおよび受信側伝送経路グループのそれぞれにグループ化する。
【0067】
【表8】
【0068】
【表9】
【0069】
次に、送信元/送信先識別子割当部105は、データD1ないしD12のそれぞれが属する送信側伝送経路グループTG1ないしTG3のそれぞれに対し、送信元識別子を割り当てる(受信側伝送経路グループRG1ないしRG4においても同様)。送信元識別子および送信先識別子は、上記示した表5および表6に従って割り当てられる。送信元識別子および送信先識別子が割り当てられたデータは、IPヘッダなどが付加されてIPパケットとなる。第1の実施形態では、シーケンス番号と、送信元識別子および送信先識別番号とを関連付けて割り当てていたが、第2の実施形態では、それらを関連付ける必要がなく、独立してランダムに割り当てることができる。
【0070】
送信元識別子および送信先識別番号が割り当てられたIPパケットP1ないしP12のそれぞれは、送信部/受信部107によって、図6に示すように、送信側伝送経路および受信側伝送経路のそれぞれを介して受信装置200に送信される。そして、受信装置200が、送信装置100のシーケンス番号割当部106によって割り当てたシーケンス番号に基づいて、各IPパケットを並び替えることによって、元の映像信号を生成する。
【0071】
第2の実施形態では、元の映像信号から分割されたデータのそれぞれに対して、時系列にシーケンス番号を割り当てているので、第1の実施形態のように、送信側伝送経路および受信側伝送経路と関連付けてシーケンス番号を割り当てる必要がない。このことから、第1の実施形態と比較して、よりランダムかつ効率的にIPパケットを分散させることができる。
【0072】
<第3の実施形態>
次に、本発明の第3の実施形態に係る映像信号伝送システムの例を説明する。図7は、本発明の第3の実施形態に係る映像信号伝送システムの伝送経路の例を示している。図7に示すように、送信装置100と受信装置200とは、IPネットワーク300を介して相互に接続されている。送信装置100とIPネットワーク300(ネットワーク機器)との間には、送信側伝送経路301a、301bおよび301cが存在し、NIC101aないし101cにそれぞれ接続されている。ここで、第1の実施形態に係る伝送経路構成と異なる点は、送信側伝送経路301aないし301cがそれぞれ、異なる容量の帯域を有していることである。つまり、第3の実施形態に係る伝送経路構成では、例えば、送信側伝送経路301aが100Gbpsの帯域を有し、送信側伝送経路301bおよび301cが10Gbpsの帯域を有している。
【0073】
受信装置200とIPネットワーク300との間には、受信側伝送経路302a、302b、302cおよび302dが存在し、NIC201aないし201dにそれぞれ接続されている。受信側伝送経路302aないし302dのそれぞれも異なる帯域を有し、例えば、受信側伝送経路302aおよび302bが100Gbpsの帯域を有し、受信側伝送経路302cおよび302dが10Gbpsの帯域を有している。
【0074】
NIC101aないし101cには、第1の実施形態と同一の送信元識別子が割り当てられており、またNIC201aないし201dには、第1の実施形態と同一の送信先識別子が割り当てられている。
【0075】
次に、図8を参照して、送信装置100において実行される各処理の例を説明する。送信装置100においては、上記説明した送信側伝送経路301aないし301c、および受信側伝送経路302aないし302dが有するそれぞれの帯域の情報を有している(以下、「帯域情報テーブル」と称する。帯域情報テーブルは、表10を参照。)。
【0076】
【表10】
【0077】
まず、映像信号分割部102は、第1および第2の実施形態と同様に、映像信号VSを、固定長の12のデータD1ないしD12に分割する。
【0078】
次に、シーケンス番号割当部106は、映像信号分割部102によって分割されたデータD1ないしD9のそれぞれに対し、時系列の順序で連番となる1から12までのシーケンス番号を割り当てる。ここで、第3の実施形態では、第2の実施形態で説明したのと同一の方法でシーケンス番号を割り当てているが、第1の実施形態で説明したような、2種類のシーケンス番号を伝送経路と関連付けて割り当ててもよい。
【0079】
次に、グループ割当部103は、帯域情報テーブルを参照して、分割されたデータD1ないしD12のそれぞれに対し、送信側伝送経路301aないし301cが有するそれぞれの帯域に基づいて、送信側伝送経路グループTG1ないしTG3のそれぞれにグループ化する。例えば、本実施形態では、送信側伝送経路301aないし301cの帯域が、10:1:1の比率であり、受信側伝送経路302aないし302dの帯域が、10:10:1:1の比率であるので、表11に示すようにグループ化する。
【0080】
【表11】
【0081】
表11に示すように、送信側伝送経路301aは、送信側伝送経路301bおよび301cと比較して10倍の帯域を有するので、その経路を通じて伝送されるデータを、他の経路よりも4倍多く割り当てることになる。このデータの割り当ての比率は例示的なものにすぎず、例えば、実際の帯域の比率に従って、10:1:1の比率でデータを割り当ててもよい。
【0082】
また、受信側伝送経路グループにおいても、表12に示すように、受信側伝送経路302aないし302dが有するそれぞれの帯域に基づいてグループ化する。
【0083】
【表12】
【0084】
次に、送信元/送信先識別子割当部105は、データD1ないしD12のそれぞれが属する送信側伝送経路グループTG1ないしTG3のそれぞれに対し、送信元識別子を割り当てる(受信側伝送経路グループRG1ないしRG4においても同様)。送信元識別子および送信先識別子は、上記示した表5および表6に従って割り当てられる。送信元識別子および送信先識別子が割り当てられたデータは、IPヘッダなどが付加されてIPパケットとなる。
【0085】
送信元識別子および送信先識別番号が割り当てられたそれぞれのIPパケットは、送信部/受信部107によって、図9に示すように、送信側伝送経路および受信側伝送経路のそれぞれを介して受信装置200に送信される。そして、受信装置200が、送信装置100で割り当てたシーケンス番号に基づいて、各IPパケットを並び替えることによって、元の映像信号を生成する。
【0086】
第3の実施形態では、送信側伝送経路および受信側伝送経路のぞれぞれの帯域に応じて、分割されたデータを割り当てる(つまり、帯域に応じて伝送されることになるIPパケットの数を変更する)。よって、複数の伝送経路のそれぞれが異なる帯域を有している場合でも、伝送パケットを効率的に分散することができる。
【0087】
なお、第3の実施形態では、固定長の分割したデータを、伝送経路のそれぞれの帯域に応じてグループ化しているが、そのような方式に限定されない。例えば、映像信号分割部102によって、伝送経路のそれぞれの帯域に応じたデータ長を有するように、映像信号を分割してもよい。
【0088】
<伝送経路障害>
次に、送信側伝送経路および受信側伝送経路のいずれかにおいて障害が発生した場合の、縮退動作について説明する。図10に示すように、送信装置100と受信装置200とは、IPネットワーク300を介して接続されている。また、管理装置400が、送信装置100と受信装置200と、IPネットワーク300を介して接続されている(障害情報通信経路303を介して)。送信側伝送経路301aないし301c、および受信側伝送経路302aないし302dの構成は、図7で説明した構成と同一であるものとする。
【0089】
管理装置400は、送信側伝送経路301aないし301c、および受信側伝送経路302aないし302dのいずれに障害が発生した場合に、その障害通知を受信する。この障害情報は、例えば、送信側伝送経路301aないし301c、および受信側伝送経路302aないし302dのいずれかと接続されたネットワーク機器によって、管理装置400にSNMP(Simple Network Management Protocol)などを使用して送信される。また、管理装置400が、各ネットワーク機器と定期間隔でポーリングを行い、ネットワーク機器からの応答がない場合に、当該機器に接続された伝送経路に障害が発生したものと見なしてもよい。障害情報は、少なくとも、送信側伝送経路301aないし301cおよび受信側伝送経路302aないし302dのいずれかにおいて障害が発生したかを特定することができる情報を含む。
【0090】
障害通知を受信した管理装置400は、障害情報通信経路303を通じて、送信装置100にその障害通知を送信する。この構成によって、送信装置100は、伝送経路のいずれかにおいて障害が発生した場合に、その伝送経路を特定することができる。本実施形態では、送信側伝送経路301cおよび受信側伝送経路302aに障害が発生したものとする。
【0091】
次に、障害通知を受信した送信装置100において、表10で示した帯域情報テーブルから、表13に示すように、送信側伝送経路301cおよび受信側伝送経路302aを除外して、帯域情報テーブルを更新する。
【0092】
【表13】
【0093】
次に、グループ割当部103は、更新された帯域情報テーブルを参照して、映像信号分割部102によって分割されたデータD1ないしD12のそれぞれに対し、それぞれの送信側伝送経路グループにグループ化する。受信側伝送経路グループにおいても同様である。そのグループ化の例を表14および15に示す。
【0094】
【表14】
【0095】
【表15】
【0096】
分割されたデータがグループ化されると、送信元/送信先識別子割当部105によって、送信側伝送経路グループTG1およびTG2に属する分割されたデータの各々に、送信側伝送経路301aおよび301bに対応する送信元識別子がそれぞれ割り当てられる。受信側伝送経路グループRG2ないしRG3に属する分割されたデータの各々も同様に、受信側伝送経路302bないし302dに対応する送信先識別子がそれぞれ割り当てられる。送信元識別子および送信先識別子が割り当てられたデータは、IPヘッダなどが付加されてIPパケットとなる。
【0097】
送信元識別子および送信先識別番号が割り当てられたIPパケットP1ないしP12のそれぞれは、送信部/受信部107によって、図11に示すように、それぞれの送信側伝送経路および受信側伝送経路を介して受信装置200に送信される。このようにして、送信側伝送経路および受信側伝送経路のいずれかで障害が発生した場合でも、伝送経路を縮退してIPパケットを分散することができる。
【0098】
なお、この実施形態では、固定長の分割したデータを、縮退構成での伝送経路のそれぞれの帯域に応じてグループ化しているが、そのような方式に限定されない。例えば、映像信号分割部102によって、縮退構成での伝送経路のそれぞれの帯域に応じたデータ長を有するように、映像信号を分割してもよい。
【0099】
上記説明した障害発生時の縮退構成は、第1の実施形態ないし第3の実施形態のいずれにも適用することができる。なお、本実施形態では、管理装置400を介して障害通知を行っているが、このような構成に限定されない。例えば、送信装置100と受信装置200とが、各伝送経路でのポーリングを行うことによって、障害を検出してもよい。例えば、特定の伝送経路でのポーリングにおいて一定の時間内に応答がない場合に、その伝送経路に障害が発生したものと見なしてもよく、また受信装置200が送信装置100に、特定の伝送経路の障害情報を送信してもよい。
【0100】
以上のように、本発明に係る映像信号伝送システムを説明した。上記説明した各構成要素が実行する処理、およびその処理の順序は例示的なものであることに留意されたい。例えば、映像信号から分割されたデータにシーケンス番号を割り当てること、およびグループ化すること、および送信元/送信先識別子を割り当てることなどの処理の順序は変更されてもよく、また、それらの処理は同時に実行されてもよい。
【符号の説明】
【0101】
301a 送信側伝送経路
301b 送信側伝送経路
301c 送信側伝送経路
302a 受信側伝送経路
302b 受信側伝送経路
302c 受信側伝送経路
303 障害情報通信経路
302d 受信側伝送経路
VS 映像信号
D1〜D12 データ
TG1〜TG3 送信側伝送経路グループ
RG1〜RG4 受信側伝送経路グループ
P1〜P12 IPパケット
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11