特許第6386437号(P6386437)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6386437
(24)【登録日】2018年8月17日
(45)【発行日】2018年9月5日
(54)【発明の名称】車両用ヘッドランプ
(51)【国際特許分類】
   F21S 41/67 20180101AFI20180827BHJP
   F21V 7/00 20060101ALI20180827BHJP
   F21V 29/503 20150101ALI20180827BHJP
   F21V 29/70 20150101ALI20180827BHJP
   F21V 29/67 20150101ALI20180827BHJP
   F21S 45/10 20180101ALI20180827BHJP
   F21S 45/47 20180101ALI20180827BHJP
   F21S 45/42 20180101ALI20180827BHJP
   F21S 41/30 20180101ALI20180827BHJP
   F21Y 115/10 20160101ALN20180827BHJP
【FI】
   F21S41/67
   F21V7/00 590
   F21V29/503
   F21V29/70
   F21V29/67 100
   F21S45/10
   F21S45/47
   F21S45/42
   F21S41/30
   F21Y115:10
【請求項の数】3
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2015-239432(P2015-239432)
(22)【出願日】2015年12月8日
(65)【公開番号】特開2017-107691(P2017-107691A)
(43)【公開日】2017年6月15日
【審査請求日】2017年5月11日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000001133
【氏名又は名称】株式会社小糸製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100079049
【弁理士】
【氏名又は名称】中島 淳
(74)【代理人】
【識別番号】100084995
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 和詳
(74)【代理人】
【識別番号】100099025
【弁理士】
【氏名又は名称】福田 浩志
(72)【発明者】
【氏名】毛利 文彦
(72)【発明者】
【氏名】仲田 裕介
(72)【発明者】
【氏名】中西 快之
【審査官】 竹中 辰利
(56)【参考文献】
【文献】 特開2015−138763(JP,A)
【文献】 特開2005−141065(JP,A)
【文献】 特開2014−102988(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F21S 41/67
F21S 41/30
F21S 45/10
F21S 45/42
F21S 45/47
F21V 7/00
F21V 29/503
F21V 29/67
F21V 29/70
F21Y 115/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の前端部に設けられたヘッドランプユニットに搭載され、光源から照射された光をMEMSミラーによって車両前側へ反射させることで所定の配光パターンを形成する路面描画ユニットと、
前記ヘッドランプユニットに設けられ、前記MEMSミラーに付着する埃を除去する埃除去装置と、
を備え
前記MEMSミラーは、前記光源から照射された光を反射させるミラー本体部と、前記ミラー本体部を車両前側から覆う透明のカバーと、を含んで構成されており、
前記埃除去装置が、前記カバーを振動させる振動器によって構成されている車両用ヘッドランプ。
【請求項2】
前記カバーの上端部が前記振動器に連結されている請求項1に記載の車両用ヘッドランプ。
【請求項3】
前記振動器が、前記MEMSミラーに対して前記光源とは反対側に配置されている請求項1又は請求項2に記載の車両用ヘッドランプ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用ヘッドランプに関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1に記載された車両用灯具では、二次元画像表示装置によって所定の配光パターンが形成されるようになっている。この二次元画像表示装置(MEMSミラー)は、表示部と、表示部から投影レンズ側に離間して配置された透明部材と、を有している。これにより、二次元画像表示装置の表示部に埃が直接付着することを透明部材によって防止することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2015−138763号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記車両用灯具では、二次元画像表示装置の表示部に、埃が直接付着することを透明部材によって防止できるものの、透明部材には埃が付着する。これにより、光源から照射された光又は表示部によって反射された光が、透明部材に付着した埃に当たると、投影レンズへ照射されるべき光が散乱する。このため、埃による影響によって配光パターンを良好に形成することができなくなる虞がある。
【0005】
本発明は、上記事実を考慮して、配光パターンを良好に形成することができる車両用ヘッドランプを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に記載の車両用ヘッドランプは、車両の前端部に設けられたヘッドランプユニットに搭載され、光源から照射された光をMEMSミラーによって車両前側へ反射させることで所定の配光パターンを形成する路面描画ユニットと、前記ヘッドランプユニットに設けられ、前記MEMSミラーに付着する埃を除去する埃除去装置と、を備え、前記MEMSミラーは、前記光源から照射された光を反射させるミラー本体部と、前記ミラー本体部を車両前側から覆う透明のカバーと、を含んで構成されており、前記埃除去装置が、前記カバーを振動させる振動器によって構成されている
【0007】
請求項1に記載の車両用ヘッドランプでは、車両の前端部に設けられたヘッドランプユニットに路面描画ユニットが搭載されている。この路面描画ユニットは、光源から照射された光をMEMSミラーによって車両前側へ反射させることで、所定の配光パターンを形成する。
【0008】
ここで、ヘッドランプユニットには、埃除去装置が設けられている。そして、MEMSミラーに付着する埃が、埃除去装置によって除去される。これにより、仮にMEMSミラーに埃が付着しても、当該埃が埃除去装置によって除去されるため、路面描画ユニットによって配光パターンを良好に形成することができる。
【0015】
また、埃がミラー本体部に直接付着することをカバーによって防止することができる。また、振動器によってカバーを振動させることで、カバーに付着した埃がカバーから落下する。これにより、カバーに付着した埃をカバーから除去することができる。
【0016】
請求項に記載の車両用ヘッドランプは、請求項に記載の発明において、前記カバーの上端部が前記振動器に連結されている。
【0017】
請求項に記載の車両用ヘッドランプでは、カバーに付着した埃をカバーの下側へ容易に落とすことができる。また、仮に振動器がMEMSミラーに対して車両下側に配置された場合と比べて、振動器に埃が溜まることを抑制できる。
【0018】
請求項に記載の車両用ヘッドランプは、請求項又は請求項に記載の発明において、前記振動器が、前記MEMSミラーに対して前記光源とは反対側に配置されている。
【0019】
請求項に記載の車両用ヘッドランプでは、振動器が、MEMSミラーに対して光源とは反対側に配置されているため、振動器と光源との離間距離を比較的長く設定させることができる。このため、振動器によって発生される振動を光源に伝達させ難くすることができる。これにより、光源から照射される光が振れることを抑制できる。
【発明の効果】
【0020】
請求項1に記載の車両用ヘッドランプによれば、路面描画ユニットによって配光パターンを良好に形成することができる。
【0023】
また、請求項に記載の車両用ヘッドランプによれば、埃がミラー本体部に直接付着することを防止しつつ、カバーに付着した埃を除去することができる。
【0024】
請求項に記載の車両用ヘッドランプによれば、カバーに付着した埃をカバーの下側へ容易に落とすことができる。
【0025】
請求項に記載の車両用ヘッドランプによれば、光源から照射される光が振れることを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1図1は、第1の実施の形態に係る車両用ヘッドランプにおける路面描画ユニットを示す車両中央側から見た側断面図(図2の1−1線断面図)である。
図2図2は、第1の実施の形態に係る車両用ヘッドランプが適用された車両の前側部分を示す正面図である。
図3図3は、第2の実施の形態に係る車両用ヘッドランプにおける路面描画ユニットを示す図1に対応する側断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
(第1の実施の形態)
以下、図1及び図2を用いて第1の実施の形態に係る車両用ヘッドランプ10について説明する。なお、図面に示される矢印UP、矢印FR、矢印RHは、車両用ヘッドランプ10が適用された車両Vの車両上側、車両前側、車両Vが進行方向を向いた状態の車両右側をそれぞれ示している。以下、単に上下、前後、左右の方向を用いて説明する場合は、特に断りのない限り、車両上下方向の上下、車両前後方向の前後、車両左右方向(車幅方向)の左右、を示すものとする。
【0028】
(車両用ヘッドランプ10について)
図2に示されるように、車両用ヘッドランプ10は、左右一対のヘッドランプユニット12R,12Lを備えている。ヘッドランプユニット12Rは、車両Vの前端部における右側端部に配置され、ヘッドランプユニット12Lは、車両Vの前端部における左側端部に配置されている。そして、ヘッドランプユニット12R,12Lは、車幅方向において左右対称に構成されている。このため、ヘッドランプユニット12R,12Lの構成の説明では、右側のヘッドランプユニット12Rについて説明し、左側のヘッドランプユニット12Lについての説明は省略する。
【0029】
ヘッドランプユニット12Rは、ヘッドランプユニット12Rの車幅方向外側部分を構成するローハイビームユニット14と、ヘッドランプユニット12Rの車幅方向内側部分を構成する路面描画ユニット20と、を含んで構成されている。
【0030】
ローハイビームユニット14は、図示しない光源を有しており、当該光源によって、車両Vの前方を照射するように構成されている。当該光源は、ロービーム用及びハイビーム用の光源として構成されている。つまり、ローハイビームユニット14は、主として車両Vの前方の路面領域(ロービーム配光エリア)を照射するロービームと、ロームビームによって照射される領域よりも上側の領域(ハイビーム配光エリア)を照射するハイビームと、に切替可能に構成されている。なお、ローハイビームユニット14の光源として、LED(発光ダイオード)、ハロゲンランプ、ディスチャージランプ、半導体レーザ(LD:Laser Diode)等が用いられる。
【0031】
図1に示されるように、路面描画ユニット20は、車両Vの前側の路面(詳しくは、ロービーム配光エリア)に所定の配光パターンを描画するユニットとして構成されている。この路面描画ユニット20は、光源ユニット22と、反射鏡30と、MEMS(Micro Electro Mechanical system)ミラー36と、「埃除去装置」及び「送風機」としての送風ファン38と、を含んで構成されている。
【0032】
光源ユニット22は、ヒートシンク24と、光源26と、を含んで構成されている。ヒートシンク24は、路面描画ユニット20の後部を構成すると共に、後述する光源26によって発生する熱を放熱する放熱部材として構成され、アルミニウム合金等で製作されている。ヒートシンク24は、側面視で略矩形ブロック状に形成されて、図示しない位置において、ヘッドランプユニット12Rのハウジング(図示省略)に固定されている。また、ヒートシンク24の前面には、その上部において、後述する光源26を保持(固定)するための保持面24Aが形成されており、保持面24Aは、側面視で上側へ向かうに従い後側へ傾斜されている。
【0033】
光源26は、発光ダイオード、半導体レーザ(LD:Laser Diode)などの複数の高輝度光源によって構成されており、光源26は、制御部28に電気的に接続されている。これにより、制御部28の制御によって光源26から所定の配色の光Bが発光される構成となっている。また、光源26は、ヒートシンク24の保持面24Aに保持(固定)されている。そして、前述したように、保持面24Aは、側面視で上側へ向かうに従い後側へ傾斜されているため、光源26によって発光された光Bが、前側斜め上方に照射されて、後述する反射鏡30に入射される構成になっている。
【0034】
反射鏡30は、光源26の前側に設けられると共に、前側へ凸に湾曲された板状に形成されている。また、反射鏡30の後面が反射面30Aとされており、反射面30Aは、後側へ開放された凹曲面状に形成されている。そして、光源26によって発光された光Bを反射面30Aによって後側斜め上方側へ反射させて、当該反射された光Bを後述するMEMSミラー36に入射させる構成となっている。
【0035】
また、反射鏡30の上側には、ヘッドランプユニット12Rの前端部を構成するレンズ34を保持するレンズ保持部32が一体に形成されている。このレンズ保持部32は、前後方向を軸方向とした略筒状に形成されており、レンズ保持部32の前端部における下部が、反射鏡30の上部前面に結合されている。また、レンズ保持部32の後側の部分(前端部を除く部分)は、下側へ開放されており、前述した反射鏡30によって反射された光Bが、レンズ保持部32に干渉することなく、後述するMEMSミラー36に入射される構成になっている。
【0036】
また、レンズ保持部32には、レンズ34が保持されており、レンズ34は、後述するMEMSミラー36の前側に配置されている。そして、レンズ34の後側部分が、レンズ保持部32の前端部の内部に収容された状態で、レンズ34がレンズ保持部32によって保持されている。また、レンズ34の前面は、レンズ34の下端から上端に亘って、側面視で前側へ凸となるように湾曲されている。一方、レンズ34の後面は、後側へ突出された突出面34Aとされており、突出面34Aは、側面視で前側へ開放された略U字形状に形成されている。これにより、後述するMEMSミラー36によって前側へ反射された光Bが、突出面34Aによって集光されると共にレンズ34を透過して車両Vの前方側を照射する構成になっている。
【0037】
MEMSミラー36は、前述した光源ユニット22(詳しくは、ヒートシンク24)の上側に設けられると共に、レンズ34の後側に配置されている。このMEMSミラー36は、ミラー本体部36Aと、ミラー本体部36Aを支持する支持部36Bと、を含んで構成されている。支持部36Bは、略直方体状に形成される共に、ヒートシンク24の上側において、ヘッドランプユニット12Rのハウジング(図示省略)に保持(固定)されている。そして、ミラー本体部36Aが、支持部36Bの前面に固定(支持)されている。このミラー本体部36Aは、二次元状に配列された複数の微小可動ミラーによって構成されており、複数の微小可動ミラーの各々は、半導体プロセスにより半導体基板上に形成されている。また、ミラー本体部36Aには、制御部28が電気的に接続されて、制御部28の制御によって各微小可動ミラーが駆動する構成になっている。そして、制御部28の制御によって各微小可動ミラーが駆動すると、各微小可動ミラーの反射面の角度が変更されて、微小可動ミラーがオン状態又はオフ状態になる構成とされている。具体的には、オン状態にされた微小可動ミラーでは、反射鏡30から微小可動ミラーへ入射された光Bが、微小可動ミラーによって反射されて(以下、この反射された光を「オン光B1」という)、反射されたオン光B1がMEMSミラー36から前側へ照射されてレンズ34を透過する構成になっている。これにより、オン状態の微小可動ミラーによって反射されたオン光B1によって、所定の配光パターンを形成する構成になっている。
【0038】
一方、ミラー本体部36Aにおけるオフ状態にされた微小可動ミラーでは、反射鏡30から微小可動ミラーへ入射された光Bが、微小可動ミラーによって反射されて(以下、この反射された光を「オフ光B2」という)、当該反射されたオフ光B2がミラー本体部36Aから前側斜め上方側に反射されて、前述したレンズ保持部32を照射する構成となっている。これにより、オフ光B2が、レンズ保持部32によって吸収されて、レンズ34を透過しないように構成されている。
【0039】
送風ファン38は、ミラー本体部36A及びヒートシンク24の上側に配置されると共に、前後方向において、MEMSミラー36の支持部36Bとレンズ保持部32との間に配置されている。詳しくは、送風ファン38がMEMSミラー36(ミラー本体部36A)の上方側の側方に配置されている。そして、送風ファン38は、図示しないブラケット等を介して、レンズ保持部32に固定されている。この送風ファン38は、略上下方向を軸方向とした回転軸を有するモータ(図示省略)と、モータの回転軸に固定された羽根38Aと、を含んで構成されている。また、送風ファン38は、制御部28に電気的に接続されており、制御部28の制御によって送風ファン38が作動する構成になっている。そして、制御部28の制御によって送風ファン38が作動すると、羽根38Aが回転軸の軸回りに回転して、送風ファン38が、送風ファン38の上側の空気をミラー本体部36A及びヒートシンク24へ向けて下側へ送風するように構成されている(図1の点線で示された矢印を参照)。これにより、送風ファン38によって送風された空気がミラー本体部36A(の微小可動ミラー)及びヒートシンク24に当たり、ミラー本体部36A(の微小可動ミラー)に付着した埃を除去するように構成されている。なお、本実施の形態では、乗員の操作によって車両用ヘッドランプ10の作動が開始されたときに、制御部28によって送風ファン38の作動が開始するように設定されている。また、乗員の操作によって車両用ヘッドランプ10の作動が停止されたときに、制御部28によって送風ファン38の作動を停止させるように設定されている。すなわち、車両用ヘッドランプ10の作動中は、送風ファン38が常時作動するように設定されている。さらに、図1において点線で示される送風ファン38による送風は、模式的に図示しており、本実施の形態では、上述のように、送風ファン38によって送風された空気がミラー本体部36Aに当たるように構成されている。
【0040】
次に、本実施の形態の作用及び効果について説明する。
【0041】
上記のように構成された車両用ヘッドランプ10では、左右一対のヘッドランプユニット12R,12Lに路面描画ユニット20がそれぞれ設けられている。そして、車両Vの前側の路面に所定の配光パターンを描画するときには、制御部28の制御によって、左右の路面描画ユニット20における光源26及びMEMSミラー36を駆動させて、所定の配光パターンを路面に描画する。
【0042】
具体的には、制御部28によって路面描画ユニット20の光源26が駆動される。このため、光源26から照射された光Bが反射鏡30によって反射されて、MEMSミラー36に入射される。また、制御部28は、MEMSミラー36のミラー本体部36Aにおける各微小可動ミラーを駆動させて、各微小可動ミラーを配光パターンに対応するオン状態又はオフ状態にする。このため、光Bがミラー本体部36Aに入射されると、配光パターンに応じた光が、ミラー本体部36Aによって反射されて、レンズ34を透過して前側へ照射される。これにより、路面描画ユニット20によって配光パターンが形成されて、当該配光パターンが路面に描画される。
【0043】
ここで、車両用ヘッドランプ10では、ヘッドランプユニット12R,12Lの内部に送風ファン38が設けられており、送風ファン38は、ヘッドランプユニット12R,12L内の空気を、MEMSミラー36(詳しくは、ミラー本体部36Aの微小可動ミラー)に向けて送風する。具体的には、送風ファン38の上側の空気が、送風ファン38によってミラー本体部36A(下側)へ向けて送風されて、ミラー本体部36Aの微小可動ミラーに当たる。このため、ミラー本体部36Aの微小可動ミラーに埃が付着しても、送風ファン38により送風された空気によって当該埃が除去される。これにより、ミラー本体部36Aによって反射されるオン光B1の散乱が抑制されるため、配光パターンを路面描画ユニット20によって良好に形成することができる。
【0044】
また、送風ファン38が、ミラー本体部36Aの前側で且つ上側に配置されている。そして、送風ファン38が、MEMSミラー36(ミラー本体部36A)の上方側の側方からミラー本体部36Aへ向けて空気を送風する。このため、送風ファン38をミラー本体部36Aの前側に配置することなく、送風ファン38により送風された、ミラー本体部36Aの前側を横切る空気によってミラー本体部36Aの微小可動ミラーに付着した埃を除去することができる。これにより、ミラー本体部36Aによって反射されたオン光B1の光路を妨げることなく、微小可動ミラーに付着された埃を、送風ファン38により送風された空気によって除去することができる。
【0045】
また、微小可動ミラーに付着された埃を、送風ファン38により送風された空気によって除去しているため、背景技術のような透明部材をMEMSミラー36の前側に配置する必要がなくなる。このため、当該透明部材を透過することで生じる光の損失を抑制しつつ、MEMSミラー36(ミラー本体部36A)によって反射されたオン光B1を前側へ照射させることができる。
【0046】
さらに、光源ユニット22のヒートシンク24が、送風ファン38の送風方向において、送風ファン38と対向して配置されている。このため、送風ファン38によって送風された空気を活用して、光源ユニット22(ヒートシンク24)を冷却することができる。これにより、光源26に対するヒートシンク24の放熱効果を高めることができると共に、送風ファン38を冷却ファンとしても活用できる。
【0047】
また、車両用ヘッドランプ10の作動中は、送風ファン38が制御部28によって常時作動するように設定されている。このため、車両用ヘッドランプ10の作動中において、ヘッドランプユニット12R,12L内の空気が常時循環される。これにより、レンズ34の後面を構成する突出面34A(の上面)に埃が溜まることを抑制できると共に、突出面34Aに埃が付着することを抑制できる。
【0048】
なお、第1の実施の形態では、ミラー本体部36Aへ向けて空気を送風する送風機が、送風ファン38として構成されているが、送風機の構成はこれに限らない。例えば、送風機を、複数のフィンを有するブロア等としてもよい。
【0049】
また、第1の実施の形態では、送風ファン38がミラー本体部36Aに対して上側に配置されているが、送風ファン38の設定位置は適宜変更可能である。例えば、送風ファン38をミラー本体部36Aに対して、下側、右側、左側の何れかに配置してもよい。
【0050】
また、第1の実施の形態では、ヒートシンク24(光源ユニット22)が、送風ファン38の送風方向において、送風ファン38と対向して配置されているが、光源ユニット22の位置は、各種車両に応じて適宜変更可能である。例えば、光源ユニット22の全体を第1の実施の形態の配置位置に対して後側にずらして、送風ファン38によって送風された空気を、光源26へ向けて送風するように構成してもよい。
【0051】
また、第1の実施の形態では、車両用ヘッドランプ10の作動中において、送風ファン38が制御部28によって常時作動するように設定されているが、送風ファン38の作動タイミングは適宜変更可能である。例えば、送風ファン38を所定時間毎に作動させるように設定してもよいし、路面描画ユニット20の作動中に送風ファン38を作動させるように設定してもよい。
【0052】
(第2の実施の形態)
次に、図3を用いて、第2の実施の形態の車両用ヘッドランプ100について説明する。第2の実施の形態では、第1の実施の形態と比べて、以下に示す点を除いて同様に構成されている。なお、図3では、第1の実施の形態と同様に構成されている部材については、同一の符号を付している。
【0053】
すなわち、第2の実施の形態では、MEMSミラー36が、ミラー本体部36Aを前側から覆う透明のカバー36Cを有している。これにより、MEMSミラー36の前端部がカバー36Cによって構成されている。このカバー36Cは、例えば、樹脂材によって構成されると共に、板厚の比較的薄いシート状に形成されている。このカバー36Cは、略前後方向を板厚方向として(詳しくは、ミラー本体部36Aと平行を成すように)ミラー本体部36Aの前側に近接して配置されている。また、カバー36Cの外周部と支持部36Bとの間には、弾性を有する枠状のシール部材36Dが設けられており、シール部材36Dはカバー36Cと支持部36Bとの間をシールした状態で両者を連結している。これにより、シール部材36Dが上下方向に弾性変形することで、カバー36Cが上下方向に変位可能に構成されている。また、カバー36Cと支持部36Bとの間の空間がシール部材36Dによって密閉された状態となっており、当該空間内にミラー本体部36Aが配置されている。さらに、カバー36Cの上端側の部分は、ミラー本体部36Aの形状に対応して、側面視で後側へ略クランク状に屈曲されている。
【0054】
また、第2の実施の形態では、車両用ヘッドランプ100は、第1の実施の形態の送風ファン38を備えておらず、ヘッドランプユニット12R,12L内には、圧電素子などによって構成された「振動器」としての振動アクチュエータ102が設けられている。この振動アクチュエータ102は、MEMSミラー36に対して上側(詳しくは、MEMSミラー36に対して光源ユニット22とは反対側)に配置されて、図示しないブラケット等を介してレンズ保持部32に固定されている。そして、振動アクチュエータ102にカバー36Cの上端部が連結されている。
【0055】
さらに、振動アクチュエータ102は、制御部28に電気的に接続されており、制御部28の制御によって振動アクチュエータ102が作動する構成になっている。具体的には、振動アクチュエータ102が作動すると、カバー36Cが上下方向に単振動するように構成されている。また、第2の実施の形態においても、乗員の操作によって車両用ヘッドランプ100の作動が開始されたときに、制御部28によって振動アクチュエータ102の作動が開始するように設定されている。また、乗員の操作によって車両用ヘッドランプ100の作動が停止されたときに、制御部28によって振動アクチュエータ102の作動を停止するように設定されている。すなわち、第2の実施の形態においても、車両用ヘッドランプ100の作動中は、振動アクチュエータ102が常時作動するように設定されている。
【0056】
そして、制御部28によって振動アクチュエータ102が作動すると、カバー36Cの前面(MEMSミラー36の前面)に付着した埃が下側へ落下する。これにより、第2の実施の形態においても、振動アクチュエータ102によってカバー36Cが振動することで、MEMSミラー36の前面に付着した埃を除去することができる。したがって、第2の実施の形態においても、ミラー本体部36Aによって反射されるオン光B1の散乱が抑制されるため、路面描画ユニット20によって配光パターンを良好に形成することができる。
【0057】
また、第2の実施の形態では、MEMSミラー36のミラー本体部36Aがカバー36Cによって前側から覆われている。このため、埃がミラー本体部36Aに直接付着することを防止することができる。
【0058】
さらに、第2の実施の形態では、カバー36Cの上端部が振動アクチュエータ102に連結されている。このため、カバー36Cに付着した埃をカバー36Cの下側へ容易に落とすことができる。また、仮に振動アクチュエータ102をMEMSミラー36に対して下側に配置した場合と比べて、カバー36Cから下側へ落下した埃が振動アクチュエータ102に溜まることを抑制できる。
【0059】
また、第2の実施の形態では、MEMSミラー36に対して上側に振動アクチュエータ102が配置されている。換言すると、MEMSミラー36に対して振動アクチュエータ102とは反対側に光源ユニット22(光源26とヒートシンク24)が配置されている。このため、MEMSミラー36とヒートシンク24との間に振動アクチュエータ102を配置した比較例と比べて、光源ユニット22(光源26とヒートシンク24)と振動アクチュエータ102との離間距離を長くすることができる。これにより、上記比較例と比べて、振動アクチュエータ102によって発生する振動を光源ユニット22(光源26とヒートシンク24)に伝達させ難くすることができる。したがって、上記比較例に比べて、光源26から照射される光Bが振れることを抑制できる。
【0060】
また、第2の実施の形態では、光源26が半導体レーザで構成された場合に生じる配光パターンのスペックル(斑点模様が生じる現象)を低減することができる。すなわち、光源26が半導体レーザで構成された場合には、光源26からレーザ光が照射される。このレーザ光はコヒーレント光であるため、レーザ光では、路面に描画される配光パターンにスペックルが生じる。これに対して、第2の実施の形態では、ミラー本体部36Aの前側において、透明のカバー36Cを振動アクチュエータ102によって振動させている。そして、上記スペックルに対して、レーザ光が投下される拡散板やレンズなどを、振動させることで、スペックルが低減されることが知られている。したがって、カバー36Cを特定の周波数で振動させることで、配光パターンのスペックルを低減することができる。
【0061】
また、第2の実施の形態では、振動アクチュエータ102によってカバー36Cを上下方向に振動させて、カバー36Cに付着した埃を除去している。このため、カバー36Cの振幅が上下方向となるため、カバー36Cの振動中にカバー36Cがミラー本体部36Aに干渉することを抑制できる。
【0062】
なお、第2の実施の形態では、振動アクチュエータ102による振動の周波数は、特に規定していないが、当該振動の周波数は適宜変更可能である。例えば、当該振動の周波数を、カバー36Cの固有振動数と一致させてもよい。これにより、カバー36Cに付着した埃を効果的に除去することができる。また、上述のように、配光パターンのスペックルを低減する周波数に設定してもよい。
【0063】
また、振動アクチュエータ102による振動が上下方向の単振動であるが、当該振動をホワイトノイズ等のランダム振動にしてもよい。例えば、当該振動をホワイトノイズのランダム振動にする場合には、広帯域の周波数を有するランダム振動となるため、カバー36Cに付着した埃を有効に除去することができる。
【0064】
また、第2の実施の形態では、車両用ヘッドランプ10の作動中において、振動アクチュエータ102が制御部28によって常時作動するように設定されているが、振動アクチュエータ102の作動タイミングは適宜変更可能である。例えば、振動アクチュエータ102を所定時間毎に作動させるように設定してもよいし、路面描画ユニット20の作動中に送風ファン38を作動させるように設定してもよい。
【0065】
また、第2の実施の形態では、振動アクチュエータ102がMEMSミラー36に対して上側に配置されているが、振動アクチュエータ102をMEMSミラー36に対して、下側、右側、左側の何れかの位置に配置してもよい。
【符号の説明】
【0066】
10 車両用ヘッドランプ
12L ヘッドランプユニット
12R ヘッドランプユニット
20 路面描画ユニット
22 光源ユニット
24 ヒートシンク
26 光源
36 MEMSミラー
36A ミラー本体部
36C カバー
38 送風ファン(埃除去装置、送風機)
100 車両用ヘッドランプ
102 振動アクチュエータ(埃除去装置、振動器)
図1
図2
図3