(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記吹き返し防止板(20)は、前記突出部(34)が当接する前記開口(16)側の第1面(20a)と、前記第1面(20a)とは反対側の第2面(20b)とを有し、
前記第2面(20b)には、補強用のリブ(21)が設けられている、請求項1または2に記載のチョークバルブ構造。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1の構造では、作動時にチョークプレートの突起がリブ上を移動することにより、チョークプレートがチョーク着座面に押し付けられるようにし、密閉度を保持することが目的とされている。しかしながら、クリーナカバーの取付け誤差やたわみ等が生じやすいため、クリーナカバーの裏面に設けられたリブの位置を、チョークプレートの突起に合わせることは容易ではない。突起とリブとが合わない状態でクリーナカバーが取り付けられてしまうと、上記した着座面への押し付け効果は得られなくなる。
【0006】
本発明は、密閉性を確実に保つことができるチョークバルブ構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様に係るチョークバルブ構造(1)は、エンジン(100)に設けられた気化器(10)に連通する空気吸入路(9)の入口側の開口(16)を開閉するためのチョークバルブ構造(1)であって、気化器(10)に接続され、端壁(7a)と、端壁(7a)に設けられて空気吸入路(9)の少なくとも一部を構成する吸入管部(14)とを有するエアクリーナボディ(7)と、開口(16)の周囲に形成されたシール面(18)に密着可能な弁体(32)を有するチョークバルブ(30)と、弁体(32)が開口(16)を閉じる閉方向および開口(16)を開ける開方向に移動するように、シール面(18)に平行な方向に沿ってチョークバルブ(30)を移動自在な移動機構(22)と、を備え、エアクリーナボディ(7)には、吸入管部(14)の軸線(L)上に配置されて開口(16)に対面する吹き返し防止板(20)が一体に設けられており、
軸線(L)方向に延在し、端壁(7a)と吹き返し防止板(20)とを連結する連結部(19)を更に備え、チョークバルブ(30)の弁体(32)には、弁体(32)から軸線(L)方向に突出し、移動機構(22)が作動し弁体(32)が閉方向に移動するときに吹き返し防止板(20)に当接可能とされた突出部(34)が設けられており、吹き返し防止板(20)に突出部(34)が当接することで、弁体(32)がシール面(18)に押圧されて密着するように構成されて
おり、連結部(19)は、吸入管部(14)の軸線(L)の下側に位置すると共に、上方に向けて開放された円筒面形状をなしている。
【0008】
このチョークバルブ構造(1)によれば、エンジン(100)の運転時において、開口(16)に対面する吹き返し防止板(20)は、吸入管部(14)を通じて気化器(10)から逆流する燃料を受け止め、燃料の更なる逆流・拡散を抑制する。一方、エンジン(100)の始動時等において、移動機構(22)が作動してチョークバルブ(30)が移動させられると、弁体(32)が閉方向に移動することで開口(16)が閉じられる。弁体(32)が閉方向に移動するとき、突出部(34)は吹き返し防止板(20)に当接し、これによって弁体(32)がシール面(18)に押圧されて密着する。吹き返し防止板(20)はエアクリーナボディ(7)に一体に設けられているので、開口(16)もしくはシール面(18)と、吹き返し防止板(20)との位置関係は不変である。よって、突出部(34)しいては弁体(32)をシール面(18)へ確実に押圧することができ、その結果として、密閉性を確実に保つことができる。
また、吹き返した燃料が吹き返し防止板(20)に当たった後に落下すると、燃料は連結部(19)の円筒面上に溜まる。すなわち、連結部(19)は、受け皿となって、燃料の拡散を防止する。連結部(19)は端壁(7a)につながっているので、燃料は、開口(16)および吸入管部(14)を通じて気化器(10)へ戻ることができる。エアクリーナボディ(7)の下部に吹き返し燃料が溜まることがないので、燃料だれを防止することができる。
【0009】
吹き返し防止板(20)は、突出部(34)が当接する開口(16)側の第1面(20a)を有し、第1面(20a)は、弁体(32)が閉方向に移動するにつれて弁体(32)をシール面(18)に押圧するように、シール面(18)に平行な方向に対して傾斜していてもよい。この構成によれば、第1面(20a)が傾斜面になっていることで、弁体(32)をシール面(18)に対してより確実に押圧することができる。チョークバルブ(30)の形状や剛性に頼ることなく、良好な密閉性を得ることができる。
【0010】
吹き返し防止板(20)は、突出部(34)が当接する開口(16)側の第1面(20a)と、第1面(20a)とは反対側の第2面(20b)とを有し、第2面(20b)には、補強用のリブ(21)が設けられてもよい。この構成によれば、吹き返し防止板(20)の剛性を高めることができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明のいくつかの態様によれば、弁体(32)をシール面(18)へ確実に押圧することができ、密閉性を確実に保つことができる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながら説明する。以下の実施形態では、チョークバルブ構造1が2ストロークエンジン100(以下、単にエンジン100という)に適用される場合について説明する。
【0015】
図1および
図2を参照して、エンジン100について説明する。
図1および
図2に示されるように、エンジン100は、たとえば小型の(すなわち小排気量の)2ストロークエンジンである。エンジン100は、シリンダ2と、シリンダ2の下部に連結されたクランクケース4と、クランクケース4から突出するクランク軸3と、を備える。エンジン100は、さらに、吸入される空気を浄化するエアクリーナ6と、エアクリーナ6に連結されて、燃料を気化すると共に空気と混合して混合気を生成する気化器(キャブレタ)10と、シリンダ2と気化器10とを接続するインシュレータ11とを備える。エンジン100は、たとえば農業機械に適用され得る。エンジン100は、吸入空気と燃料との混合気をシリンダ2内で燃焼させ、クランクケース4内のクランク機構により回転駆動力を発生させ、クランク軸3を介してその回転駆動力を伝達する。
【0016】
エアクリーナ6は、気化器10に接続されている。エアクリーナ6は、有底円筒状のエアクリーナボディ7と、空気吸入口を有するエアクリーナカバー(図示せず)とを備えており、これらの周縁部が嵌め合わされることにより、エアクリーナエレメント8(
図2参照)の収容空間を形成している。
【0017】
エアクリーナボディ7は、たとえば樹脂製であり、気化器10に対向する円盤状の端壁7aと、端壁7aの外周部に連結された円筒状の周壁7bとを備える。端壁7aの中央部には、気化器10内の流路に連通する円筒状の吸入管部14(
図5および
図6参照)が設けられている。エアクリーナボディ7は、吸入管部14の両側部に設けられた2つの貫通孔7d,7d(
図4参照)と2本のスリーブ13,13とに挿入される2本のボルト12,12(
図3参照)により、気化器10に対して固定される。
【0018】
吸入管部14の入口側の端部に設けられた開口16(
図3参照)は、エアクリーナ6内に向けて開放されている。吸入管部14の出口側の端部に設けられた開口17(
図4参照)は、気化器10内に接続されている。この吸入管部14は、エンジン100に吸入される空気が通る空気吸入路9の少なくとも一部(一部または全部)を構成している。空気吸入路9は、気化器10に連通している。
図6に示されるように、吸入管部14の中心軸線L(以下、単に軸線Lという)は、たとえば、端壁7aに略直交する方向に延びる。なお、吸入管部14が設けられる方向は、これに限られず、適宜変更可能である。
【0019】
図1に示されるように、エアクリーナ6には、空気吸入路9を通る空気の量を調整するためのチョークバルブ30が設けられている。チョークバルブ30は、たとえば樹脂製である。チョークバルブ30は、移動機構22を用いて操作されてエアクリーナ6内で移動し、空気吸入路9の入口側の開口16を開閉する。より詳しくは、チョークバルブ30は、開口16の周囲に形成されたシール面18に密着することにより、開口16を閉鎖する。シール面18は、軸線Lに垂直に形成されており、軸線Lを中心とする円環状をなしている。チョークバルブ30は、たとえばエンジンの始動時において開口16を閉鎖することで、吸入空気量を絞る(減少させる)。これにより、混合気中の燃料比率が高められる。
【0020】
次に、チョークバルブ30がエアクリーナ6に取り付けられたチョークバルブ構造1について説明する。チョークバルブ構造1は、気化器10に連通する空気吸入路9の上記開口16を開閉するための構造である。本実施形態のチョークバルブ構造1は、以下に説明する独自の構造を有することにより、チョークバルブ30を閉じる際、簡便な操作で、確実に高い密閉性を保つことを可能にしている。
【0021】
図1および
図3に示されるように、チョークバルブ30は、端壁7aの円筒状の軸受部7cを介してレバー23の軸部23aに結合される基部31と、端壁7aのシール面18に密着可能な円板状の弁体32と、基部31と弁体32とを連結するアーム部33とを有する。軸受部7cとレバー23との間にはワッシャ24が介在している。ワッシャ24、軸受部7c、および基部31の貫通孔31aに挿入された軸部23aに対して、スクリュ26がねじ込まれることにより、レバー23が端壁7aに取り付けられる。
【0022】
軸部23aは軸受部7c内で回転自在である。レバー23が操作者によって上げ下げされることにより、チョークバルブ30は、シール面18に平行な方向(すなわちシール面18に平行な仮想の平面)に沿って移動する。より詳しくは、アーム部33および弁体32は、円弧状の軌跡を描いて揺動する。
【0023】
弁体32は、それぞれ平坦な両面を有している。移動機構22は、弁体32が開口16を閉じる方向である閉方向(具体的には下方)、および、弁体32が開口16を開ける方向である開方向(具体的には上方)に移動するように、チョークバルブ30を移動自在である。チョークバルブ30の移動範囲は、開口16が完全に開放される開放位置(
図6参照)と、開口16が完全に閉鎖される閉鎖位置(
図5参照)との間の範囲である。移動機構22によれば、これらの開放位置および閉鎖位置の中間の適宜の位置にチョークバルブ30を停止させることもできる。
【0024】
チョークバルブ構造1は、エアクリーナ6内に逆流する燃料(いわゆる吹き返し燃料)を制止するための吹き返し防止板20を備えている。吹き返し防止板20は、所定の厚みを有する円板状をなしている。吹き返し防止板20は、吸入管部14の軸線L上に配置されており、かつ、開口16に対面している。吹き返し防止板20は、吸入管部14の開口16よりも外部側(エアクリーナエレメント8側)に設けられている。吹き返し防止板20は、その中央部が軸線L上に位置するように配置されている。吹き返し防止板20は、たとえば、軸線Lに垂直に延在している。言い換えれば、吹き返し防止板20は、シール面18に平行に設けられる。なお、吹き返し防止板20が設けられる位置および向きは、上記の態様に限られない。吹き返し防止板20は、その中央部からずれた部分が軸線L上に位置するように配置されてもよい。吹き返し防止板20は、軸線Lに対して傾斜するように設けられてもよい。吹き返し防止板20の一部のみが開口16に正対していてもよい。
【0025】
上記の吹き返し防止板20は、エアクリーナボディ7に一体に設けられている。より詳しくは、吹き返し防止板20は、端壁7aに一体に設けられている。本実施形態のチョークバルブ構造1では、吹き返し防止板20は、軸線L方向に延在する連結部19によって端壁7aに連結されている。連結部19は、端壁7aの吸入管部14と吹き返し防止板20との間に配置されて、これらを連結している。吹き返し防止板20と、連結部19と、端壁7aとは一体に成形されてもよいし、個別に成形された後に、接着または溶接等により互いに接合されてもよい。このような一体構造により、吹き返し防止板20と、シール面18もしくは開口16との位置関係すなわち距離は、一定であり不変になっている。
【0026】
図2、
図3および
図6に示されるように、吹き返し防止板20は、吸入管部14すなわち開口16側の第1面20aと、第1面20aとは反対側の第2面20bとを有する。第2面20bには、上下方向に延びる補強用の1本のリブ21が設けられている。第2面20bの直径に相当する範囲に設けられたリブ21は、吹き返し防止板20の剛性を高めている。なお、第2面20bに設けられるリブは、1本の直線状のリブである場合に限られない。平行な複数本のリブが設けられてもよいし、十字状または格子状のリブが設けられてもよい。
【0027】
連結部19についてより詳しく説明する。
図3および
図6に示されるように、連結部19は、上方に向けて開放された円筒面形状をなしている。連結部19は、円筒の周方向の一部と同じ形状をなす。連結部19は、上方に面する凹状の円筒面19bを有する。連結部19および円筒面19bは、軸線Lの下側に位置している。連結部19および円筒面19bが設けられる範囲は、円筒の中心角を基準とし、180度未満である。言い換えれば、連結部19は、円筒において180度以上の中心角に相当する範囲が切り欠かれた形状をなしている。
【0028】
本実施形態では、連結部19は、端壁7aの吸入管部14に連続するように形成されている。円筒面19bの曲率半径と、吸入管部14の半径とは同一である。
図6に示されるように、吸入管部14の下部の厚みと連結部19の厚みとは同一である。軸線L方向において、シール面18の位置(すなわち開口16の位置)に段差は形成されていない。よって、吸入管部14の下部の内面と、連結部19の円筒面19bとは面一になっており、滑らかに連続している。言い換えれば、吸入管部14および連結部19は、共通の軸線Lを中心とする1つの円筒状に形成されている。連結部19は、シール面18よりも軸線L方向の外方側(吹き返し防止板20側)において、吸入管部14の中心角180度以上の部分が切り欠かれた形状をなしている。特に、端壁7aと連結部19とが一体成形される場合、軸線L方向において、シール面18の位置に継目は形成されない。
【0029】
このような構成により、シール面18は、中心角180度以上の範囲(上方の部分)において、軸線Lに垂直な面として表れている。連結部19が設けられた下部の範囲では、シール面18は途切れており、軸線Lに垂直な面として表われていない。シール面18と吹き返し防止板20との間で且つ連結部19上には、円柱状の空間Sが形成される。
【0030】
以上のように、連結部19は、樋形状をなしている。連結部19と吸入管部14、および、連結部19と吹き返し防止板20は、互いに連接している。したがって、吹き返し防止板20に当たった燃料は、第1面20aを落下して連結部19の円筒面19bに溜まる。円筒面19bに溜まった燃料は、連結部19を通じて気化器10に戻され得る。特に、吸入管部14の下部の内面と連結部19の円筒面19bとが面一である場合、吹き返し燃料は気化器10に戻り易くなるため、吹き返し燃料の戻し効率が高められる。
【0031】
次に、チョークバルブ構造1におけるチョークバルブ30の構成についてより詳細に説明する。
図3に示されるように、円板状の弁体32には、軸線L方向に突出する突出部34が一体に設けられている。突出部34は、弁体32の下部に設けられており、弁体32に対して垂直に(すなわち軸線Lに平行に)突出している。弁体32と突出部34とは一体に成形されてもよいし、個別に成形された後に、接着または溶接等により互いに接合されてもよい。
【0032】
突出部34は、上方に向けて開放された円筒面形状をなしている。突出部34は、円筒の周方向の一部と同じ形状をなす。突出部34は、上方に面する凹状の円筒面34bを有する。突出部34および円筒面34bは、弁体32と同心状に形成されている。突出部34および円筒面34bが設けられる範囲は、円筒の中心角を基準とし、180度未満である。言い換えれば、突出部34は、円筒において、180度以上の中心角に相当する範囲が切り欠かれた形状をなしている。したがって、突出部34の先端部34aは、所定の幅を有する円弧の一部と同じ形状をなす。
【0033】
ここで、
図5に示されるように、弁体32の半径は、シール面18の最外周部の半径に略等しい。弁体32および突出部34に共通する中心線を基準として、突出部34の曲率半径は、弁体32の半径よりも小さい。さらに、弁体32の下部は、突出部34の下端で終端しており、突出部34の下面と面一の下縁部32bが現れている(
図4参照)。突出部34の下面の曲率半径すなわち下縁部32bの曲率半径は、連結部19の円筒面19bの曲率半径に略等しい。
【0034】
移動機構22によりチョークバルブ30が開放位置から閉鎖位置に移動させられるとき、弁体32および突出部34は、上記の空間S内を移動し、空間Sに収まる。上記した曲率半径の関係(略等しいこと)により、チョークバルブ30が閉鎖位置にあるとき、弁体32の下縁部32bは、連結部19の円筒面19bに密着するようになっている(
図5参照)。チョークバルブ30が閉鎖位置にあるとき、突出部34および円筒面34bは、吸入管部14の軸線Lの下側に位置しており、突出部34および円筒面34bの中心線は、軸線Lに略一致している。
【0035】
移動機構22によりチョークバルブ30が開放位置から閉鎖位置に移動させられるとき、すなわち、移動機構22が作動し弁体32が閉方向に移動するとき、突出部34の先端部34aは、吹き返し防止板20の第1面20aに当接可能である。言い換えれば、弁体32の厚みに突出部34の長さを加えた軸線L方向の全体の長さ(以下、チョークバルブ30の軸線L方向の全長という)は、吹き返し防止板20とシール面18との間の距離よりも僅かに小さくなっている。
【0036】
吹き返し防止板20の第1面20aに先端部34aが当接することにより、突出部34は、軸線L方向の押圧力を受け、これによって弁体32の周縁部がシール面18に押圧されて密着する。これと同時に、弁体32の下縁部32bは、連結部19の円筒面19bに密着する。すなわち、上述したように、シール面18の下部は途切れているが、連結部19の円筒面19bが、シール面18に連続してシールされる部分(被シール部分)になっている。弁体32および突出部34は、端壁7a側における被シール部分の形状に対応した形状になっており、その被シール部分に隙間なく合わさる。合わさる部分は、線状ではなく、所定の幅すなわち面積をもつ合わせ面である。
【0037】
図1および
図5に示されるように、閉鎖位置にあるチョークバルブ30は、弁体32の周縁部と下縁部32bとによって、開口16を閉鎖する。なお、弁体32の中心には、開口16の閉鎖状態、すなわち弁体32によるシールがなされて燃料比率がもっとも高められた状態において、最低限の空気吸入量を確保するための空気吸入孔32aが設けられている。
【0038】
本実施形態のチョークバルブ構造1では、特に、第1面20aが傾斜面とされている。第1面20aは、シール面18に平行な方向(すなわちシール面18に平行な仮想の平面)に対して傾斜している。第1面20aは、上部から下部に向かうにつれて、軸線L方向においてシール面18に近づくように傾斜している。言い換えれば、吹き返し防止板20の厚みは、上部から下部に向かうにつれて増大している。これにより、第1面20aは、移動機構22が作動し弁体32が閉方向に移動するにつれて、弁体32をシール面18に押圧するように傾斜している。
【0039】
第1面20aが傾斜している態様において、第1面20aの上部とシール面18との間の距離は、チョークバルブ30の軸線L方向の全長よりも一定距離だけ長い。よって、突出部34の先端部34aが第1面20aの上部に対面するとき、これらの間には、僅かな隙間または遊びが存在する。一方、第1面20aの下部とシール面18との間の距離は、チョークバルブ30の軸線L方向の全長と略等しいか、極僅かに長い。よって、突出部34の先端部34aが第1面20aの下部に対面し当接するとき、これらの間には、隙間や遊びは存在しない。このように、チョークバルブ30の下降に伴い、突出部34は第1面20aに接触しながら、第1面20aによって徐々にシール面18側に押し付けられることになる。これにより、シール面18に対する弁体32の密着は確実なものとなり、十分な密閉性が実現される。
【0040】
チョークバルブ構造1が適用されたエンジン100の動作について説明する。エンジン100の始動時には、レバー23が引き上げられ、チョークバルブ30が移動して弁体32がシール面18と同一芯上へ移動する。この際、チョークバルブ30に一体に設けられた突出部34の先端部34aが、エアクリーナボディ7に一体に設けられた吹き返し防止板20の第1面20aに接触しながら、チョークバルブ30が下降する。チョークバルブ30が下がれば下がるほど、弁体32の表面はシール面18に押し当てられ、チョークバルブ30は閉鎖位置まで移動する(
図1および
図5参照)。これにより、チョークバルブ30の形状や剛性に頼ることなく、安定的に良好な密閉性・シール性が確保される。空気吸入孔32aを通じての最低限の吸入空気と、気化器10から吸い上げられたエンジン始動用燃料とによって、燃料比率の高い混合気が生成される。エンジン100の始動時における密閉性の確保は重要である。この観点で、チョークバルブ構造1は大きな効果を発揮する。
【0041】
エンジン100の定常運転時に移行する際は、レバー23は引き下げられ、チョークバルブ30は開放位置まで移動する(
図6参照)。吸入管部14(空気吸入路9)および開口16を介して燃料が逆流した場合、燃料は、吹き返し防止板20に衝突して落下し、皿形状の
連結部19に溜まる。溜まった燃料は、吸入管部14を通じて気化器10に戻される。
【0042】
本実施形態のチョークバルブ構造1によれば、エンジン100の運転時において、開口16に対面する吹き返し防止板20は、吸入管部14を通じて気化器10から逆流する燃料を受け止め、燃料の更なる逆流・拡散を抑制する。一方、エンジン100の始動時等において、移動機構22が作動してチョークバルブ30が移動させられると、弁体32が閉方向に移動することで開口16が閉じられる。弁体32が閉方向に移動するとき、突出部34は吹き返し防止板20に当接し、これによって弁体32がシール面18に押圧されて密着する。吹き返し防止板20はエアクリーナボディ7に一体に設けられているので、開口16もしくはシール面18と吹き返し防止板20との位置関係は一定かつ不変である。よって、突出部34しいては弁体32をシール面18へ確実に押圧することができ、その結果として、密閉性を確実に保つことができる。さらには、エアクリーナボディ7内のエアクリーナエレメント8に、燃料が付着して出力低下を招くといった事態が防止される。エアクリーナカバーにリブを設ける特許文献1のような、構造上の不安定さは解消されている。また、従来、樹脂製であるエアクリーナボディやチョークバルブの剛性が十分でない場合に、弁体とシール面との良好な密閉が得られず、エンジンの始動性の悪化を招く可能性があったが、チョークバルブ構造1によれば、そのような事態は防止されている。
【0043】
吹き返し防止板20がエアクリーナボディ7に一体に設けられているため、部品点数が減少しており、コストが低減されている。吹き返し防止板がエアクリーナボディ7と別体であると、組付け時に誤組や組み忘れの可能性があるが、一体の吹き返し防止板20によればそのような可能性が排除される。
【0044】
また、吹き返し防止板20の第1面20aが傾斜面になっていることで、弁体32をシール面18に対してより確実に押圧することができる。チョークバルブ30の形状や剛性に頼ることなく、良好な密閉性を得ることができる。
【0045】
また、吹き返し防止板20の第2面20bに補強用のリブ21が設けられているため、吹き返し防止板20の剛性が高められている。吹き返し防止板20が樹脂製である場合も、リブ21によって剛性が高められていることにより、チョークバルブ30を確実に押圧することができる。
【0046】
軸線Lの下側に位置する連結部19が、上方に向けて開放された円筒面形状をなしていているため、逆流した燃料が吹き返し防止板20に当たった後に落下すると、燃料は、連結部19の円筒面19b上に溜まる。すなわち連結部19は受け皿となって、燃料の拡散を防止する。連結部19は端壁7aにつながっているので、燃料は、開口16および吸入管部14を通じて気化器10へ戻ることができる。エアクリーナボディ7の下部に吹き返し燃料が溜まることがないので、エアクリーナ6からの燃料だれを防止することができる。円筒面形状の連結部19によれば、連結部19が樹脂製である場合も、連結部19の剛性が高められる。
【0047】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限られない。たとえば、吹き返し防止板の形状は、円板状に限られない。吹き返し防止板は、矩形の板状であってもよい。吹き返し防止板の第2面20bにおいてリブを省略してもよい。吹き返し防止板の板厚を大きくすることで剛性を向上させてもよい。第1面20aは、傾斜面でなくてもよく、シール面18に平行な面であってもよい。
【0048】
チョークバルブは上方から下方に回動する場合に限られない。たとえば、チョークバルブが下方から上方に向けて回動するような構成を採用してもよいし、チョークバルブが横方向にスライド移動するような構成を採用してもよい。第1面に傾斜面が設けられる場合、弁体の移動方向に対応して傾斜が設けられる態様とすることができる。
【0049】
連結部は、半円筒状(中心角で180度)であってもよい。連結部は、円筒面形状である場合に限られない。連結部は、軸線Lに垂直な断面がコ字状であってもよい。連結部が端壁7aに設けられる場合に限られず、周壁7bに設けられてもよい。この場合、吹き返し防止板20は、周壁7bに対して一体的に設けられる。吹き返し防止板20は、エアクリーナボディ7に対して一体的に設けられていればよい。
【0050】
弁体に設けられる突出部は、円筒面形状でなくてもよい。突出部は、平坦な板状であってもよいし、棒状でもよい。連結部が断面コ字状である場合には、突出部も一回り小さな断面コ字状として、連結部内に突出部が収まるように構成してもよい。
【0051】
吸入管部14の軸線L方向の長さは、非常に短くてもよい。吸入管部14の当該長さは、端壁7aの板厚程度であってもよい。移動機構は、手動による移動機構22に限られず、自動制御による移動機構であってもよい。
【0052】
エンジンは、2ストロークエンジンに限られず、4ストロークエンジンであってもよい。エンジンの排気量も特に限定されない。本発明は、吹き返しが生じ得るあらゆる内燃機関に適用可能である。