(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
提灯は、現在では日常的に照明器具として使用されることはまれではあるが、特別な場面においては、やはり貴重な存在である。
例えば、日本の古来からの祭りや、盆等の宗教的行事においては、現在でも提灯が広く使用されている。また、居酒屋の店先において、装飾や目印として提灯が使用される場合も少なくない。
【0003】
提灯には種々の構造のものがあるが、そのうち代表的なものの基本的な構造は、次のとおりである。
提灯は、火袋(提灯本体)と、その上下に設けられた上方リング及び下方リング等を有している。
火袋は、筒状をなし、主として紙によって形成されているとともに、竹ひご等の多数の円環状又はらせん状の骨輪によって支持されている。
こうして、提灯(火袋)は、蛇腹状に伸縮可能である。すなわち、提灯は、本来の状態である伸長状態と、圧縮状態との間を変位可能である。
提灯は、使用される場合は伸長状態とされ、使用されない場合は圧縮状態とされて保管される。なお、圧縮状態とは幅のある概念である。
【0004】
そして、本来的に、圧縮状態においては、下方リングの上縁部よりも上方リングの下縁部の方が若干高い位置に位置し、高さ方向における両者の間に火袋(その下縁部近傍)が挟まれた状態で存在することとなる。
【0005】
ところで、一般的に、上方リングは、下方リングよりも若干大径である。正確には、上方リングの内径は、下方リングの外径よりも若干大径である。
【0006】
このため、提灯が乱雑に扱われて上下方向に圧縮されすぎた場合には、下方リングが、その高さ方向において部分的に又は全面的に、上方リングの内部に嵌合してしまう場合がある(その状態を過圧縮状態ということとする)。
過圧縮状態では、下方リングの上縁部よりも上方リングの下縁部の方が低い位置に位置することとなり、その場合は、前述したように両者間に挟まれた状態で存在する火袋の下縁部近傍に剪断力が作用し、当該部分が損傷することとなる。
こうして、提灯(火袋)は、大半が損傷しない状況でも、その部分のみが損傷することによって使用不可状態となってしまう。これは非常に不経済である。
【0007】
特に、祭りの場合には、大量の提灯が使用される場合が多く、祭りの終了後にその大量の提灯が片付けられる際には、乱雑に扱われることも多い。また、圧縮状態の大量の提灯が上下に重ねて収容される際に、上下方向に過大な力が加えられてしまうこともある。こうして、提灯は過圧縮状態となって、火袋の下縁部近傍が損傷するのである。
【0008】
また、上述のことを防止するために、下方リングの上に厚紙を載置した状態で火袋を圧縮し、圧縮状態の際に、高さ方向において下方リングと上方リングとの間に厚紙が挿入された状態とすることもされている。
しかしながら、その作業は煩雑であり、祭りのように大量の提灯を扱う場合は、それが顕著なものとなる。
【0009】
なお、この分野における先行技術の一例としては、特許文献1に開示されているものがある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、過圧縮状態になることを防止して、火袋の損傷を容易に防止することができる提灯を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
この課題を解決するために、請求項1に係る発明は、
伸縮可能な筒状の火袋の上下に上方リング及び下方リングを有し、前記上方リングと前記下方リングとが離隔した伸長状態と、前記上方リングと前記下方リングとが近接した圧縮状態との間を変位可能な提灯であって、さらに、上方取付部材を有し、
前記上方リングの内径は前記下方リングの外径よりも大径であり、前記上方リングは、上方内側リングと上方外側リングとが嵌合状態で形成されており、前記上方取付部材は、上方脚部と、上方内側突出部とを有し、当該上方脚部が前記上方内側リングと前記上方外側リングとの間に挿入されて前記上方リングに取り付けられ、
前記上方内側突出部は、前記上方リングの内側方向に突出し、当該提灯が圧縮状態において前記下方リングに当接して前記下方リングが前記上方リングの内部に嵌合することを阻止する嵌合阻止部である、提灯である。
【0013】
ここで、「当接」とは、直接的に当接する場合に限らず、間接的に当接する(すなわち、他のものを挟んだ状態で当接する)場合を含むものである。このことは、請求項2に係る発明においても同様である。
なお、「当該上方リングの内側方向に突出し」の「内側方向」には、「内側方向成分を有する方向」も含まれる。
【0014】
この発明の提灯では、上方リングに設けられた上方内側突出部(嵌合阻止部)が上方リングの内側方向に突出している。このため、この発明の提灯が圧縮状態になった際に、上方内側突出部が下方リングに対して当接し、それ以上上方リングが下降することが防止され、下方リングが上方リングの内部に嵌合することが防止される。
こうして、この発明の提灯では過可圧縮状態になることが防止され、火袋が損傷することが防止される。
【0015】
また、この発明の提灯では、上方脚部が上方内側リングと上方外側リングとの間に挿入されて上方取付部材が上方リングに取り付けられることによって、上方内側突出部が上方リングに取り付けられている。
このため、上方内側突出部が上方リングに容易に取り付けられ得る。
【0016】
請求項2に係る発明は、
伸縮可能な筒状の火袋の上下に上方リング及び下方リングを有し、前記上方リングと前記下方リングとが離隔した伸長状態と、前記上方リングと前記下方リングとが近接した圧縮状態との間を変位可能な提灯であって、さらに、下方取付部材を有し、
前記上方リングの内径は前記下方リングの外径よりも大径であり、前記下方リングは、下方内側リングと下方外側リングとが嵌合状態で形成されており、前記下方取付部材は、下方脚部と、下方外側突出部とを有し、当該下方脚部が前記下方内側リングと前記下方外側リングとの間に挿入されて前記下方リングに取り付けられ、
前記下方外側突出部は、前記下方リングの外側方向に突出し、当該提灯が圧縮状態において前記上方リングに当接して前記下方リングが前記上方リングの内部に嵌合することを阻止する嵌合阻止部である、提灯である。
【0017】
なお、「当該下方リングの外側方向に突出し」の「外側方向」には、「外側方向成分を有する方向」も含まれる。
【0018】
この発明の提灯では、下方リングに設けられた下方外側突出部(嵌合阻止部)が下方リングの外側方向に突出している。このため、この発明の提灯が圧縮状態になった際に、下方外側突出部が上方リングに対して当接し、それ以上上方リングが下降することが防止され、下方リングが上方リングの内部に嵌合することが防止される。
こうして、この発明の提灯では過可圧縮状態になることが防止され、火袋が損傷することが防止される。
【0019】
また、この発明の提灯では、下方脚部が下方内側リングと下方外側リングとの間に挿入されて下方取付部材が下方リングに取り付けられることによって、下方外側突出部が下方リングに取り付けられている。
このため、下方外側突出部が下方リングに容易に取り付けられ得る。
【0020】
請求項3に係る発明は、
請求項1に係る発明の提灯であって、各前記上方取付部材は、1本の針金が折り曲げられて形成されており、少なくともほぼ平行に延びる一対の前記上方脚部と、前記上方内側突出部を有する、提灯である。
【0021】
この発明の提灯では、
請求項1に係る発明の提灯の作用効果に加えて、次の作用効果が得られる。
すなわち、この発明の提灯では、1本の針金が折り曲げられて各上方取付部材が形成されているため、容易にかつ安価に上方取付部材が製造され、
請求項1に係る発明の提灯が安価にかつ容易に製造され得る。
【0022】
なお、この発明は、
請求項2に係る発明にも応用され得る。すなわち、
請求項2に係る発明を限定したものとして、次のものが考えられる。
「
請求項2に係る発明の提灯であって、
各前記下方取付部材は、1本の針金が折り曲げられて形成されており、少なくともほぼ平行に延びる一対の前記下方脚部と、前記下方外側突出部を有する、提灯。」
【0023】
請求項4に係る発明は、
請求項3に係る発明の提灯であって、前記上方取付部材における前記一対の上方脚部の長さが同一ではない、提灯である。
【0024】
この発明の提灯では、
請求項3に係る発明の提灯の作用効果に加えて、次の作用効果が得られる。
すなわち、この発明の提灯では、一対の上方脚部の長さが同一ではないため、まずは、長い方の上方脚部を所定の位置に位置づけて上方リングに取り付けて、次に短い方の上方脚部を所定の位置に位置づけて上方リングに取り付ける、というように、1本ずつ上方リングに対して取り付けることができる。
このため、上方取付部材が上方リングにより容易に取り付けられ、
請求項3に係る発明の提灯がより容易に製造され得る。
なお、この発明も、前述の
請求項2に係る発明の改良発明にも応用され得る。
【0025】
請求項5に係る発明は、
伸縮可能な筒状の火袋の上下に上方リング及び下方リングを有し、前記上方リングと前記下方リングとが離隔した伸長状態と、前記上方リングと前記下方リングとが近接した圧縮状態との間を変位可能な提灯であって、さらに、一体型上方取付部材を有し、
前記上方リングの内径は前記下方リングの外径よりも大径であり、前記一体型上方取付部材は、上方取付本体部と、複数の上方内側突出部とを有し、前記上方取付本体部は、前記上方リングの内周にほぼ対応する長さを有し、自身の弾性復元力に基づいて前記上方リングの内周面に対して押圧し、その押圧力に基づく摩擦力によって前記上方リングに対して取り付けられ、前記上方内側突出部は、前記上方取付本体部の下縁部から前記上方リングの内側方向に向けて折り曲げられて形成されて
おり、当該提灯が圧縮状態において前記下方リングに当接して前記下方リングが前記上方リングの内部に嵌合することを阻止する嵌合阻止部である、提灯である。
【0026】
この発明の提灯では、請求項1に係る発明と同様の作用効果が得られる。すなわち、上方リングに設けられた上方内側突出部(嵌合阻止部)が上方リングの内側方向に突出している。このため、この発明の提灯が圧縮状態になった際に、上方内側突出部が下方リングに対して当接し、それ以上上方リングが下降することが防止され、下方リングが上方リングの内部に嵌合することが防止される。
こうして、この発明の提灯では過可圧縮状態になることが防止され、火袋が損傷することが防止される。
【0027】
また、この発明の提灯では、上方取付本体部が弾性的に変形された状態で上方リングの内周面に沿わされることによって、上方取付本体部が自身の弾性復元力に基づいて上方リングの内周面に対して押圧し、その押圧力に基づく摩擦力によって上方リングに取り付けられている。なお、必要に応じて接着剤が使用されてもよい。
このため、上方内側突出部が上方リングに容易に取り付けられ得る。
【0028】
なお、この発明に関連して、次の発明も考えられる。
「
伸縮可能な筒状の火袋の上下に上方リング及び下方リングを有し、前記上方リングと前記下方リングとが離隔した伸長状態と、前記上方リングと前記下方リングとが近接した圧縮状態との間を変位可能な提灯であって、
さらに、一体型下方取付部材を有し、
前記上方リングの内径は前記下方リングの外径よりも大径であり、
前記一体型下方取付部材は、下方取付本体部と、複数の下方外側突出部とを有し、
前記下方取付本体部は、前記下方リングの内周にほぼ対応する長さを有し、自身の弾性復元力に基づいて前記下方リングの内周面に対して押圧し、その押圧力に基づく摩擦力によって前記下方リングに対して取り付けられ、
前記下方外側突出部は、前記下方取付本体部の上縁部から前記下方リングの外側方向に向けて折り曲げられて形成されて
おり、当該提灯が圧縮状態において前記上方リングに当接して前記下方リングが前記上方リングの内部に嵌合することを阻止する嵌合阻止部である、提灯。
【発明を実施するための形態】
【0030】
[実施例1]
次に、本発明の実施例1の提灯について、
図1〜
図6Cに基づいて説明する。
図1〜
図4Aに示すように、この提灯は、火袋(提灯本体)10,上方リング20,下方リング30を有している。
【0031】
図1及び
図2に示すように、火袋10は、竹ひご等による多数の円環状又はらせん状の骨輪15に対して和紙等の紙又は合成樹脂のフィルムが貼着されて、筒状に形成されている。こうして、火袋10は骨輪15によって支持されている。なお、図面(
図5以外)においては、
骨輪15は、簡略的に、太さを有さない一本
線状に記載してある。
図4A及び
図4B等に示すように、提灯(火袋10)は、蛇腹状に伸縮可能である。すなわち、提灯は、本来の状態である伸長状態(
図4A等)と、圧縮状態(
図4B)との間を変位可能である。
【0032】
図1〜
図5に示すように、この提灯においては、火袋10は、そのいずれの高さ位置においても同心的な円形断面を有している。すなわち、中心軸線を基準として、いわゆる回転体の形状を有している。
そして、火袋10(伸長状態)は、上方及び下方に開口部(符号省略)を有するほぼ球状をしており、ほぼ中央高さ位置が最も大径である(その部位を「最大径部」ということとする)。すなわち、火袋10は、その上縁部から下方に向けて急激に大径となるとともに、その下縁部から上方に向けても急激に大径となり、最大径部及びその近傍においては、緩やかな曲線状の縦断面を有している。
なお、火袋10の形状は、これに限らず、種々のものが適用され得る。例えば、高さ方向における中央近傍において、最大径部が上下方向に長く延びていてもよい。
【0033】
図1〜
図4Aに示すように、上方リング20は、無蓋状の円環状(扁平な円筒状)をしており、
図2〜
図4Aに示すように、いずれも木製の円環状(扁平な円筒状)の上方内側リング21及び上方外側リング22(いずれも無蓋状)を有している。
図3に示すように、火袋10の上部は上方被貼着部12であり、上方被貼着部12は、上方内側リング21(その外周面)に貼着されている。それに対して、上方外側リング22が嵌合されて、釘等によって固定されている。
こうして、
図1及び
図4に示すように、上方リング20が形成されているとともに、火袋10に上方リング20が同心的に結合されている。
【0034】
図2〜
図4Aに示すように、下方リング30は有底円環状(扁平な有底円筒状)をしており、いずれも木製の円環状(扁平な円筒状)の下方内側リング31及び下方外側リング32を有している。下方内側リング31は無底状である一方、下方外側リング32は有底状をしている。
図3に示すように、火袋10の下部は下方被貼着部13であり、下方被貼着部13は、下方内側リング31(その外周面)に貼着されている。それに対して、下方外側リング32が嵌合されて、釘等によって固定されている。
こうして、
図1及び
図4に示すように、下方リング30が形成されているとともに、火袋10に下方リング30が同心的に結合されている。
【0035】
なお、火袋10の上方被貼着部12及び下方被貼着部13は、
図3においては図示されているが、非常に薄いものであるため、その他の図においては省略されている。
【0036】
図1〜
図4Aに示すように、上方リング20には、吊り下げ部25が設けられている。
図2〜
図4Aに基づいて前述したように、下方リング30(下方外側リング32)は有底状をしており、下方リング30(下方外側リング32)の底部34には、ろうそく立て部35が設けられている。
【0037】
前述したように火袋10は回転体状をしており、同じく前述のように円環状の上方リング20及び下方リング30は火袋10に対して同心的である。このため、
図5に示すように、提灯(上方リング20,火袋10,下方リング30)全体としても中心軸線を基準に回転体状をしており、上方リング20及び下方リング30は相互に同心的である。
【0038】
図4A〜
図5に示すように、上方リング20は、下方リング30よりも若干大径である。正確にいえば、上方リング20(上方内側リング21)の内径は、下方リング30(下方外側リング32)の外径よりも若干大径である。
【0039】
図1,
図2,
図5に示すように、上方リング20に
は、複数(例えば3つ)の上方取付部材50が取り付けられている。3つの上方取付部材50は、等角度間隔を隔てて上方リング20に固定されている。
【0040】
図2,
図6A〜
図6Cに示すように、各上方取付部材50は、1本の針金が折り曲げられて形成されている。すなわち、1本の針金が、その中央近傍を基準に180度折り曲げられてほぼU字状とされるとともに、それがさらにほぼ垂直に折り曲げられて形成されている。
こうして、各上方取付部材50は、一対の上方脚部52と、上方内側突出部55を有している。
すなわち、一対の上方脚部52は、相互にほぼ平行に延びている。上方内側突出部55は緩やかなV字状(又はU字状)をなすとともに、一対の上方脚部52とは垂直に延びている。
また、一対の上方脚部52のうち、一方の上方脚部52aは長く、他方の上方脚部52bは短く形成されている。
【0041】
そして、
図3〜
図5に示すように、各上方取付部材50は、一対の上方脚部52が、上方内側リング21と上方外側リング22との間の部分に対して、その下側から強制的に挿入されるとともに、必要に応じて接着剤によって上方内側リング21及び上方外側リング22に接着されて、上方リング20に固定されている。
こうして、一対の上方脚部52は上方リング20の内部に内蔵されるとともに、上方内側突出部55は、上方リング20の内側(提灯の中心軸線の側)にほぼ水平に突出している。この上方内側突出部55が、本発明の「嵌合阻止部」に該当する。
そして、上方内側突出部55の先端部(上方リング20の最も内側に位置する部分)は、下方リング30(その内縁部)よりも内側(提灯の中心軸線の側)に位置している。すなわち、上方内側突出部55の先端部は、下方リング30の外縁部よりも内側であるとともに、さらに、下方リング30の内縁部よりも内側である。
【0042】
次に、この提灯の作用効果について説明する。
この提灯を使用する場合は、
図1及び
図4A等に示すように、上方リング20と下方リング30とが離隔した伸長状態とされる。
一方、この提灯の使用を終了して保管しようとする際には、
図4Bに示すように、上方リング20と下方リング30とが近接した圧縮状態とされる。なお、この圧縮状態(
図4B)は、圧縮状態(過圧縮状態を含まない)のうち、ほぼ最も圧縮された状態である。
【0043】
図4B及び
図5に示すように、その圧縮状態において、上方内側突出部55が下方リング30(その上縁部)に対して当接する。正確にいうと、火袋10の下縁部を挟んだ状態で間接的に当接する。こうして、上方リング20がそれ以上下降する(下方リング30の内部に嵌合する)ことが阻止される。
このようにして、この提灯では、過圧縮状態になることが有効に防止され、火袋10の下縁部近傍が損傷することが防止される。
【0044】
また、この提灯では、次の作用効果も得られる。
図6A〜
図6C等に基づいて前述したように、各上方取付部材50の一対の上方脚部52のうち、一方の上方脚部52aは長く、他方の上方脚部52bは短い。このため、各上方取付部材50は、次のようにして上方リング20に取り付けられる。
まずは、
図6A→
図6Bに示すように、長い方の上方脚部52aのみが上方リング20(上方内側リング21と上方外側リング22との間)に取り付けられ、その後に、
図6B→
図6Cに示すように、短い方の上方脚部52bが取り付けられる。
このため、上方取付部材50を容易に上部リング20に取り付けることができる。
【0045】
すなわち、仮に両上方脚部52の長さが同じであると、両上方脚部52を同時又はほぼ同時に取り付けることとなる。この場合は、両上方脚部52とも同時又はほぼ同時に所定の位置(上方内側リング21と上方外側リング22との間)に位置づけられて取り付けられる必要がある。
しかしながら、この上方取付部材50では2本の上方脚部52(52a,52b)の長さが異なるため、上述のように上方脚部52a,52bが1本ずつ位置づけられて取り付けられる。このため、上方取付部材50を容易に取り付けることができるのである。
【0046】
[実施例2]
次に、本発明の実施例2の提灯について、実施例1との相違点を中心に、
図7〜
図8Bに基づいて説明する。実施例1と共通する要素については、同一の符号を付して、適宜その説明を省略する(このことは以下同様である)。
【0047】
この提灯は、実施例1における複数の上方取付部材50の代わりに、複数(例えば3つ)の下方取付部材60を有している。
各下方取付部材60は、上方取付部材50と同様に、1本の針金が折り曲げられて形成されており、一対の下方脚部62と、下方外側突出部65を有している。
一対の下方脚部62は、相互にほぼ平行に延びている。下方外側突出部65は緩やかなV字状(又はU字状)をなすとともに、一対の下方脚部62と鈍角の角度を挟んでいる。
【0048】
そして、各下方取付部材60は、一対の下方脚部62が、下方内側リング31と下方外側リング32との間の部分に対して、その上側から強制的に挿入されるとともに、必要に応じて接着剤によって下方内側リング31及び下方外側リング32に接着されて、下方リング30に固定されている。
こうして、一対の下方脚部62は下方リング30の内部に内蔵されるとともに、下方外側突出部65は、下方リング30の
外側(提灯の中心軸線
から離隔する方向の側)に向かうにつれて徐々に上方に向かうように水平から傾斜して突出している。その傾斜角度は、火袋10の下縁部近傍の縦断面に対応している。この下方外側突出部65が、本発明の「嵌合阻止部」に該当する。
そして、下方外側突出部65の先端部は、上方リング20(その外縁部)よりも外側(提灯の中心軸線から離隔する方向の側)に位置している。
【0049】
次に、この提灯の作用効果について説明する。
この提灯を使用する場合は、
図8Aに示すように、上方リング20と下方リング30とが離隔した伸長状態とされる。
一方、この提灯の使用を終了して保管しようとする際には、
図8Bに示すように、上方リング20と下方リング30とが近接した圧縮状態とされる。なお、この圧縮状態(
図8B)は、圧縮状態(過圧縮状態を含まない)のうち、最も圧縮された状態よりも若干伸長した状態である。
【0050】
図8Bに示すように、その圧縮状態において、下方外側突出部65が上方リング20(その下縁部)に対して当接する。正確にいうと、火袋10の上縁部を挟んだ状態で間接的に当接する。こうして、上方リング20がそれ以上下降する(下方リング30の内部に嵌合する)ことが阻止される。
このようにして、この提灯でも、過圧縮状態になることが有効に防止され、火袋10の下縁部近傍が損傷することが防止される。
【0051】
[実施例3]
次に、本発明の実施例3の提灯について、実施例1との相違点を中心に、
図9及び
図10に基づいて説明する。
この提灯においても、実施例1と同様に、複数(例えば3つ)の上方取付部材150が取り付けられている。
各上方取付部材150は、金属板が打ち抜き等によって切断されて、又は、合成樹脂によって形成されている。
各上方取付部材150は、上方脚部152と、上方内側突出部155を有している。
上方脚部152は、幅細の帯板状をしている。上方内側突出部155は、上方脚部152と垂直のほぼ円形状の平板状をなすとともに、中央に孔(符号省略)が形成されている。
【0052】
そして、上方取付部材150は、上方脚部152が、上方内側リング21と上方外側リング22との間の部分に対して、その下側から強制的に挿入されるとともに、必要に応じて接着剤によって上方内側リング21及び上方外側リング22に接着されて、上方リング20に固定されている。
こうして、上方脚部152は上方リング20の内部に内蔵されるとともに、上方内側突出部155は、上方リング20の内側(提灯の中心軸線の側)にほぼ水平に突出している。この上方内側突出部155が、本発明の「嵌合阻止部」に該当する。
そして、上方内側突出部155の先端部(上方リング20の最も内側に位置する部分)は、下方リング30(その内縁部)よりも内側(提灯の中心軸線の側)に位置している。 そして、実施例1における作用効果と同様の作用効果が得られる。
【0053】
[実施例4]
次に、本発明の実施例
4の提灯について、実施例1との相違点を中心に、
図11及び
図12に基づいて説明する。
上方リング20に、1つの一体型上方取付部材250が取り付けられている。
一体型上方取付部材250は、弾性を有する1枚のほぼ帯状の金属板が折り曲げられて形成されている。すなわち、帯板状の上方取付本体部252の下縁部には、例えば4つの上方内側突出部255が形成されている。上方内側突出部255は、上方取付本体部252から90度折り曲げられて形成されている。
一体型上方取付部材250(上方取付本体部252)は弾性を有し、上方リング20(上方内側リング21)の内周にほぼ対応する長さ(同一又は若干短い長さ)を有している。
【0054】
そして、一体型上方取付部材250は、上方内側突出部255が内側方向を向くように弾性的に湾曲され、上方リング20の内側に挿入され、自身の弾性復元力によって上方リング20の内周面(上方内側リング21の内周面)に対して押圧する。その押圧力に基づく摩擦力とともに、必要に応じて接着剤によって、一体型上方取付部材250は上方リング20に対して取り付けられている。
その際、4つの上方内側突出部255が上方リング20の下縁部とほぼ同一高さ位置に位置するように、取り付けられる。
こうして、上方内側突出部255は、上方リング20の内側(提灯の中心軸線の側)にほぼ水平に突出している。この上方内側突出部255が、本発明の「嵌合阻止部」に該当する。
そして、実施例1における作用効果と同様の作用効果が得られる。
【0055】
なお、上記のものはあくまで本発明の数例の実施例にすぎず、当業者の知識に基づいて種々の変更を加えた態様で本発明を実施できることはもちろんである。
例えば、上方内側突出部(55,155,255)/下方外側突出部(65)の数については、種々のものがあり得る。
さらには、上方内側突出部(55,155,255)/下方外側突出部(65)の構造についても、種々のものがあり得る。