特許第6386442号(P6386442)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6386442
(24)【登録日】2018年8月17日
(45)【発行日】2018年9月5日
(54)【発明の名称】セルラーゼをコードする遺伝子
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/09 20060101AFI20180827BHJP
   C12N 15/62 20060101ALI20180827BHJP
   C12N 15/63 20060101ALI20180827BHJP
   C12N 1/21 20060101ALI20180827BHJP
   C12N 9/42 20060101ALI20180827BHJP
   C12N 9/26 20060101ALI20180827BHJP
   C12N 9/96 20060101ALI20180827BHJP
   C12N 9/14 20060101ALI20180827BHJP
   C12N 9/10 20060101ALI20180827BHJP
   A23K 20/189 20160101ALI20180827BHJP
   C12N 9/06 20060101ALI20180827BHJP
   C07G 99/00 20090101ALN20180827BHJP
   C12P 19/14 20060101ALN20180827BHJP
   E21B 43/00 20060101ALN20180827BHJP
【FI】
   C12N15/09 ZZNA
   C12N15/62 Z
   C12N15/63 Z
   C12N1/21
   C12N9/42
   C12N9/26 A
   C12N9/96
   C12N9/14
   C12N9/10
   A23K20/189
   C12N9/06 B
   !C07G99/00 C
   !C12P19/14 Z
   !C12P19/14 A
   !E21B43/00
【請求項の数】16
【全頁数】39
(21)【出願番号】特願2015-503257(P2015-503257)
(86)(22)【出願日】2013年3月12日
(65)【公表番号】特表2015-514401(P2015-514401A)
(43)【公表日】2015年5月21日
(86)【国際出願番号】US2013030527
(87)【国際公開番号】WO2013148163
(87)【国際公開日】20131003
【審査請求日】2016年2月23日
(31)【優先権主張番号】61/618,610
(32)【優先日】2012年3月30日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】61/704,368
(32)【優先日】2012年9月21日
(33)【優先権主張国】US
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】508268621
【氏名又は名称】ビーエーエスエフ エンザイムズ エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】110002572
【氏名又は名称】特許業務法人平木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】タン,シュチウ
(72)【発明者】
【氏名】バレット,ケネス イー.
(72)【発明者】
【氏名】リー,リチャード エス.
【審査官】 西村 亜希子
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2009/020459(WO,A1)
【文献】 特表2009−538622(JP,A)
【文献】 特開昭61−089202(JP,A)
【文献】 特表2015−519877(JP,A)
【文献】 Microbial Cell Factories,2006年,No.5(Suppl.1),S28
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 15/09
C12N 1/21
C12N 9/06
C12N 9/10
C12N 9/14
C12N 9/26
C12N 9/42
C12N 9/96
C12N 15/62
C12N 15/63
A23K 20/189
C07G 99/00
C12P 19/14
E21B 43/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/BIOSIS/EMBASE(STN)
GenBank/EMBL/DDBJ/GeneSeq
UniProt/GeneSeq
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
配列番号1のヌクレオチド配列を含む、単離、組換え、又は合成により得られた核酸分子
【請求項2】
前記ヌクレオチド配列が配列番号2のポリペプチドをコードし、且つ配列番号2のポリペプチドをコードする参照ヌクレオチド配列に対して変異を有し、その結果前記ヌクレオチド配列による前記ポリペプチドの発現が、前記参照ヌクレオチド配列にコードされるポリペプチドの発現と比べて高レベルとなる、請求項1記載の単離、組換え、又は合成により得られた核酸分子。
【請求項3】
セルラーゼ活性を有するポリペプチドをコードする、請求項1又は2記載の単離、組換え、又は合成により得られた核酸分子
【請求項4】
請求項3記載の単離、組換え、又は合成により得られた核酸分子を含む、細菌発現系。
【請求項5】
セルラーゼが前記細菌発現系において少なくとも1.0g/L、2.0g/L、3.0g/L、4.0g/L、5.0g/L、6.0g/L、7.0g/L、8.0g/L、9.0g/L、10.0g/L、11.0g/L、12.0g/L、13.0g/L、14.0g/L、15.0g/L、16.0g/L、17.0g/L、18.0g/L、19.0g/L、20.0g/L、21.0g/L、22.0g/L、23.0g/L、24.0g/L、25.0g/L、26.0g/L、27.0g/L、28.0g/L、29.0g/L、30.0g/L、31.0g/L、32.0g/L、33.0g/L、34.0g/L又は35.0g/Lの量で生産される、請求項4記載の細菌発現系。
【請求項6】
細菌発現系がグラム陰性菌発現系である、請求項4記載の細菌発現系。
【請求項7】
グラム陰性菌発現系がPseudomonas、E.coli、Ralstonia又はCaulobacter発現系である、請求項6記載のグラム陰性菌発現系。
【請求項8】
グラム陰性菌系が組換えPseudomonas fluorescens発現系である、請求項7記載のグラム陰性菌発現系。
【請求項9】
請求項1記載の核酸によってコードされるポリペプチドであって、
(a)シグナル配列及び/又はプロタンパク質配列を欠いていること;
(b)さらに異種のアミノ酸配列を含む(a)のポリペプチドであること;
(c)前記異種のアミノ酸配列が、シグナル配列、タグ、エピトープ、N末端伸長、C末端伸長、第2の酵素、及びこれらの任意の組合せから成る群から選択される(b)のポリペプチドであること;又は
(d)組換えPseudomonas fluorescens発現系で産生されること
を特徴とする、前記ポリペプチド。
【請求項10】
(a)請求項1〜3のいずれか1項記載の核酸によってコードされるポリペプチド;
(b)請求項9記載のポリペプチド;
(c)請求項4〜8のいずれか1項記載の細菌発現系によって生産されるポリペプチド;又は
(d)ラクターゼ、リパーゼ、プロテアーゼ、カタラーゼ、キシラナーゼ、セルラーゼ、グルカナーゼ、マンナナーゼ、アミラーゼ、アミダーゼ、エポキシドヒドロラーゼ、エステラーゼ、ホスホリパーゼ、トランスアミナーゼ、アミンオキシダーゼ、セロビオヒドロラーゼ、アンモニアリアーゼ、及びこれらの任意の組合せから成る群から選択される第2の酵素をさらに含む、(a)、(b)、若しくは(c)のポリペプチド
を含む組成物。
【請求項11】
石油又はガスの操業における戻り流体を処理する方法であって、
(a)請求項1〜3のいずれか1項記載の核酸にコードされるポリペプチド又は請求項4〜8のいずれか1項記載の細菌発現系によって生産されるポリペプチドを含む酵素又は酵素処理剤を戻り流体に供給することと、
(b)前記ポリペプチドによって、前記戻り流体中の多糖又はデンプンを含む物質を分解させることと
を含み、
前記ポリペプチドが前記戻り流体中の前記多糖又はデンプンを含む物質の分解又は加水分解に有効である、前記方法。
【請求項12】
(a)アミラーゼ及び/又はセルラーゼを供給すること;
(b)配列番号2、配列番号6、配列番号8、配列番号10、配列番号12及び/若しくは配列番号14と少なくとも約90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%若しくは100%の配列同一性を有するアミノ酸配列を有するポリペプチド又は酵素活性を有するそのフラグメントを含むセルラーゼを供給すること、又は
(c)配列番号16と少なくとも約90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%若しくは100%の配列同一性を有するアミノ酸配列を有するポリペプチド又は酵素活性を有するそのフラグメントを含むアミラーゼを供給すること
を含む、請求項11記載の方法。
【請求項13】
重合体増粘剤、界面活性剤、熱安定剤、及び請求項1〜3のいずれか1項記載の単離、組換え、若しくは合成により得られた核酸分子にコードされるポリペプチド、又は請求項4〜8のいずれか1項記載の細菌発現系によって生産されるポリペプチドを含む組成物。
【請求項14】
前記ポリペプチドがセルラーゼの変異体であり、pH6.5では野生型セルラーゼの融点より少なくとも華氏20度高い融点を有し、pH10.5では野生型セルラーゼの融点より少なくとも華氏10度高い融点を有する、請求項13記載の組成物。
【請求項15】
エステルをさらに含む、請求項13又は14記載の組成物。
【請求項16】
請求項1〜3のいずれか1項記載の単離、組換え、若しくは合成により得られた核酸分子にコードされるポリペプチド、又は請求項4〜8のいずれか1項記載の細菌発現系によって生産されるポリペプチドを含む、飼料又は飼料用添加剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
本出願は、米国特許法第119条(e)に基づき、2012年3月30日に出願した米国仮出願61/618,610号および2012年9月21に出願した米国仮出願61/704,368号の優先権を主張するものであり、両出願は参照によりその全体が本明細書に援用される。
【0002】
セルラーゼをコードするポリヌクレオチド配列を提供する。具体的には、前記ポリヌクレオチド配列は、耐熱性および圧力安定性を有する特定の酵素の発現、たとえばセルラーゼの発現を増加させうるものである。
配列表
【0003】
本出願は、MPEP§502.05によって認可・規定されている通りにUSPTO EFS−WEBサーバを介して電子出願されたものであり、電子提出された配列表を含む。この配列表は、参照によりその全体が本出願の明細書に援用される。この配列表は、以下の電子出願ASCII(.txt)ファイルにより同定される。
【背景技術】
【0004】
O−グリコシル加水分解酵素(EC3.2.1.〜)は、2以上の炭水化物の間、または炭水化物と非炭水化物部分との間に存在するグリコシド結合を加水分解する、天然に存在する酵素を幅広く含む酵素群である。国際生化学分子生物学連合(IUBMB)によるグリコシル加水分解酵素(またはグリコシラーゼ)の酵素命名法は、主として酵素の基質特異性に基づくが、まれに酵素の分子機構に基づく場合もある(国際生化学分子生物学連合の命名法委員会(NC−IUBMB)、アクセス日:2011年10月24日)。
【0005】
IUBMBによる酵素名称EC3.2.1.4は、「セルラーゼ」と呼ばれる、グリコシラーゼ型酵素のサブグループのために定められたものである。このグループに属する酵素に用いられる別名としては、エンドグルカナーゼ、エンド−1,4−β−グルカナーゼ、カルボキシメチルセルラーゼ、およびβ−1,4−グルカナーゼが挙げられる。このグループに属する酵素によって触媒される反応は、セルロース、リケニン、および穀物β−D−グルカン(大麦β−グルカン等)における1,4−β−D−グルコシド結合のエンド加水分解である。本発明にて開示されるセルラーゼの主たる活性は大麦β−グルカンおよびカルボキシメチルセルロースのエンド加水分解であるため、IUBMBによる酵素名称EC3.2.1.4に帰することが適切である。
【0006】
グリコシル加水分解酵素の別の分類は、アミノ酸配列の類似性に基づくものである(Henrissat,B.,UniProtへのアクセス日:2011年10月26日)。この分類体系によれば、グリコシル加水分解酵素は70を超えるファミリーに分類することができる。本発明にて開示されるセルラーゼのアミノ酸1次配列を公開データベースに存在する他のグリコシル加水分解酵素の配列と比較した結果、本発明にて開示されるセルラーゼはグリコシル加水分解酵素ファミリー5に割り当てることができる。このファミリーは20を超えるエンドグルカナーゼ(IUBMBによる酵素名称EC3.2.1.4)を含み、これらの酵素の有する主たる触媒活性は、セルロース基質中のβ−1,4−グリコシド結合のエンド加水分解である。この第2の酵素分類法を用いることにより、本発明にて開示されるセルラーゼがIUBMBによる酵素名称EC3.2.1.4に帰するという結論をさらに裏付けることができる。
【0007】
セルラーゼは、研究目的の他、多様な産業上、商業上の目的に使用され、用途としては、石油やガスの探査、食物および飲料、飲用または燃料用アルコールの製造、たとえば、醸造、エタノール、ワイン、香味料、香料、繊維製品、洗剤、紙、パルプ、環境、農業等が含まれるが、これらに限定はされない(Rebecca S.Bryant,Erle C.Donaldson,Teh Fu Yen,George V.Chilingarian,Chapter 14 Microbial Enhanced Oil Recovery,In:Erle C.Donaldson,George V.Chilingarian and Teh Fu Yen,Editor(s),Developments in Petroleum Science,Elsevier,1989,Volume 17(B):423−450)(M.Karmakar and R.R.Ray,2011,Current Trends in Research and Application of Microbial Cellulases,Research Journal of Microbiology,6:41−53.)。
【0008】
石油やガスの発見および掘削作業によって発生する典型的な作業および代償とは、そのような作業において使用した、または生じた流体の処理である。作業としては、たとえば坑井掘削、坑井の洗浄および準備(「坑井仕上」)、水圧破砕作業、ならびに石油やガスの処理が挙げられ、これらはいずれも、通常何千ガロンもの汚染された副産物流体を生じさせる。このような作業によって生じる副産物流体はしばしば「戻り流体」と呼ばれるが、これは、このような液体が通常、裸孔から地表へと戻ることによる。この副産物流体すなわち戻り流体は、一般に、廃棄または再使用のために処理する必要がある。
戻り流体を処理するための、より効率的な手段の必要性
【0009】
ガスの発見および掘削の業界における戻り流体の処理には相当な費用および時間がかかるため、戻り流体を処理するための効率的な方法または組成物が必要とされる。さらに、ガスの発見および掘削の作業は、一般に新鮮な(たとえば清浄化され濾過された)流体を必要とするため、戻り流体を処理し、さらなるガスの発見および掘削の作業に再使用できるようにするための方法の必要性は大きい。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0010】
酵素とは、触媒として作用するタンパク質を言う。タンパク質とは、アミノ酸が脱水反応によってペプチド結合でつながった重合体である。タンパク質の作用は、個々のアミノ酸の種類とそれらがつながっている順序によって決まる。アミノ酸がタンパク質へと組み立てられる順序(タンパク質の「配列」)は、究極的にはそのタンパク質を「コード」するDNA鎖の配列によって決まる。
【0011】
タンパク質へと組み立てられるアミノ酸を指定する、3つのヌクレオチドからなる配列は、「コドン」と呼ばれる。タンパク質を構成する20種類のアミノ酸は、全部で64種類ある3ヌクレオチド配列(コドン)によりコードされる。タンパク質を指定する連続したコドンを「オープンリーディングフレーム」と言う。1つのアミノ酸を指定するコドンは、1〜6種類存在する。指定されるアミノ酸に影響を与えない、コドンの3ヌクレオチド配列における変化(変異)を「サイレント」変異と言う。
【0012】
その結果、互いに「サイレント」な変異においてのみ異なり、そのため同一のタンパク質をコードできるDNA配列が、多数存在する。所与のタンパク質をコードする1以上のコドンを変化させることにより、遺伝子から作られるタンパク質の量を、コードされるタンパク質の配列に影響を与えることなく大幅に増加させることができるかもしれない。
【0013】
いくつかの実施形態では、本発明は配列番号1を含む。いくつかの実施形態では、本発明は配列番号1のポリヌクレオチド配列を含む。いくつかの実施形態では、この配列はタンパク質をコードする。いくつかの実施形態では、このタンパク質はセルラーゼ活性を有する酵素である。
【0014】
本明細書に開示される改善されたヌクレオチド配列は配列番号1として示されるが、これは、Thermotoga maritimaの菌株MSB8に由来するDNAライブラリから単離された親セルラーゼ酵素に変化を加えた、以前開示されたセルラーゼ酵素(配列番号2)をコードするものである。上述の開示された配列番号2のセルラーゼは、国際公開第2009/020459号パンフレットに配列番号9として記載されたもの(同文献に記載された配列番号8(本明細書では配列番号3として記載)のポリヌクレオチドにコードされるセルラーゼ)である。いくつかの実施形態では、本発明は配列番号1のポリヌクレオチド配列またはそのフラグメントを含む。いくつかの実施形態では、これらの配列はタンパク質をコードする。いくつかの実施形態では、このタンパク質はセルラーゼ活性を有する酵素である。
【0015】
本発明は配列番号3における複数のヌクレオチド塩基の変化を含む。これらの変化は、コードされたタンパク質に関してはサイレントである。この14の塩基の変化については、以下で説明する。「位置」は、配列番号1のオープンリーディングフレーム内のヌクレオチドの番号を示し、第1のコドンの第1のヌクレオチドが1となるようナンバリングする。配列番号1のオープンリーディングフレームがその5’末端で別の核酸配列と接続され、配列番号1の5’末端を越えて続く場合、「位置」はそのまま、各塩基が配列番号1のオープンリーディングフレームの5’末端を起点とするようナンバリングされる。同様に、配列番号1のオープンリーディングフレームが切断されて配列番号1に関連する配列の5’末端から開始されない場合、ナンバリングシステムの起点はそのまま、配列番号1のオープンリーディングフレームの5’末端に対応する該配列の5’末端であり続ける。
【0016】
ヌクレオチド塩基の変化すなわち変異は、「(置換前のヌクレオチド)(位置)(置換後のヌクレオチド)」という表記法を用いて指定される。前記変異は、T6C、T9C、T15G、A22C、G24T、A33C、A39C、A40C、A42C、A54C、A57C、T66C、G81A、A84Cであり、単独またはこれらのすべてもしくは一部の任意の組合せで、1つの配列中に見出されうる。
【0017】
配列番号1は、開示のセルラーゼをコードする以前報告された配列において複数の塩基が変化したものであり、これらの変化により、全体的にまた個別に、オープンリーディングフレームが変化し、同じタンパク質をコードする以前に使用されたヌクレオチド配列よりもタンパク質の発現レベルが高くなる。
【0018】
いくつかの実施形態において、Thermotoga maritimaに由来するセルラーゼをコードするヌクレオチド配列が開示され、このヌクレオチド配列には、T6C、T9C、T15G、A22C、G24T、A33C、A39C、A40C、A42C、A54C、A57C、T66C、G81A、A84C、A6C、G6C、A9C、G9C、A15G、C15G、T22C、G22C、A24T、C24T、T33C、G33C、T39C、G39C、T40C、G40C、T42C、G42C、T54C、G54C、T57C、G57C、A66C、G66C、C81A、T81A、T84C、G84C、またはこれらのすべてまたは一部の任意の組合せから選択される少なくとも1つが、1つの配列中に含まれる。これらの実施形態のうちいくつかの態様において、少なくとも1つの変異は、コードされたタンパク質の配列に関してサイレントである。別の態様においては、少なくとも1つの変異の結果、該ヌクレオチド配列による前記セルラーゼの発現が、少なくとも1つの前記変異を欠くもののそれ以外は上記ヌクレオチド配列と同一である配列と比べて高レベルとなる。
【0019】
いくつかの実施形態において、セルラーゼをコードするヌクレオチド配列が開示され、このヌクレオチド配列には配列番号3が含まれ、かつ、T6C、T9C、T15G、A22C、G24T、A33C、A39C、A40C、A42C、A54C、A57C、T66C、G81A、A84C、A6C、G6C、A9C、G9C、A15G、C15G、T22C、G22C、A24T、C24T、T33C、G33C、T39C、G39C、T40C、G40C、T42C、G42C、T54C、G54C、T57C、G57C、A66C、G66C、C81A、T81A、T84C、G84C、またはこれらのすべてまたは一部の任意の組合せから選択される少なくとも1つが、1つの配列中に含まれる。
【0020】
いくつかの実施形態において、Thermotoga maritimaに由来するヌクレオチド配列であって、少なくとも1つの変異を有し、自体がコードするタンパク質の発現が、Thermotoga maritimaのゲノム配列と比べて高レベルであるヌクレオチド配列が開示される。いくつかの態様において、少なくとも1つの変異はサイレントである。
【0021】
いくつかの実施形態において、配列番号2のポリペプチドをコードする第1のヌクレオチド配列であって、配列番号2のポリペプチドをコードする第2のヌクレオチド配列に対して変異を有し、その結果前記タンパク質の発現が、該第2のヌクレオチド配列にコードされる前記タンパク質の発現と比べて高レベルとなっているヌクレオチド配列が開示される。
【0022】
本発明は、石油やガスの発見および掘削作業によって発生した戻り流体を処理するための組成物および方法を提供する。いくつかの態様において、本明細書に開示される組成物および方法は、戻り流体を処理して環境的に適切な廃棄をする目的で使用される。いくつかの態様において、本明細書に開示される組成物および方法は、戻り流体を処理して石油やガスの発見および掘削作業にさらに使用できるようにするため、換言すれば、戻り流体を再生利用する目的で使用される。
【0023】
いくつかの実施形態において、本発明を実施するために酵素が用いられ、このような酵素としては、たとえば配列番号2として開示される任意のアミラーゼおよび/またはセルラーゼが挙げられ、本明細書に記載の酵素および/または他の酵素の「カクテル」の使用も含まれる。
【0024】
いくつかの実施形態において、本発明は、たとえば石油やガスの発見および掘削作業によって発生した戻り流体への、たとえば配列番号2として開示される任意のアミラーゼおよび/またはセルラーゼの添加を提供する。
【0025】
別の実施形態には、本明細書に記載のアミラーゼおよび/またはセルラーゼが含まれる。
【0026】
本明細書に開示される組成物および方法は、配列番号1、配列番号5、配列番号7、配列番号9、配列番号11、配列番号13、および/または配列番号15を含む、本発明を実施するために使用される典型的な核酸と、少なくとも約10、15、20、25、30、35、40、45、50、75、100、150、200、250、300、350、400、450、500、550、600、650、700、750、800、850、900、950、1000、1050、1100、1150、1200残基、またはそれ以上の長さの範囲にわたって、少なくとも約50%、51%、52%、53%、54%、55%、56%、57%、58%、59%、60%、61%、62%、63%,64%、65%、66%、67%、68%、69%、70%、71%、72%、73%、74%、75%、76%、77%、78%、79%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%もしくはそれ以上の、または完全な(100%の)配列同一性を有する核酸配列を含む、単離、合成、または組み換えされた核酸の使用を含み、これらの核酸は、セルラーゼ活性を有する少なくとも1つのポリペプチド、特には、典型的な配列番号2、配列番号6、配列番号8、配列番号10、配列番号12、配列番号14に基づくポリペプチド、および/またはアミラーゼ活性を有する少なくとも1つのポリペプチド、特には、典型的な配列番号16に基づくポリペプチドをコードする。
【0027】
本明細書に開示される組成物および方法は、セルラーゼ活性を有する単離、合成、または組み換えされたポリペプチド、特には、典型的な配列番号2、配列番号6、配列番号8、配列番号10、配列番号12、および/または配列番号14に基づくポリペプチド、および/またはアミラーゼ活性を有する単離、合成、または組み換えされたポリペプチド、特には、典型的な配列番号16に基づくポリペプチドの使用を含む。
【0028】
いくつかの態様において、本発明を実施するために使用されるポリペプチドは、アミラーゼ活性またはセルラーゼ活性を有し、その活性は熱に対して安定である。前記ポリペプチドは、約−100℃〜約−80℃、約−80℃〜約−60℃、−60℃〜約−40℃、約−80℃〜約−40℃、約−40℃〜約−20℃、約−20℃〜約0℃、約0℃〜約37℃、約0℃〜約5℃、約5℃〜約15℃、約15℃〜約25℃、約25℃〜約37℃、約37℃〜約45℃、約45℃〜約55℃、約55℃〜約70℃、約70℃〜約75℃、約75℃〜約85℃、約85℃〜約90℃、約90℃〜約95℃、約95℃〜約100℃、約100℃〜約105℃、約105℃〜約110℃、約110℃〜約120℃の温度範囲、または95℃、96℃、97℃、98℃、99℃、100℃、101℃、102℃、103℃、104℃、105℃、106℃、107℃、108℃、109℃、110℃、111℃、112℃、113℃、114℃、115℃、116℃、117℃、118℃、119℃、120℃、121℃、122℃、123℃、124℃、125℃、またはそれ以上の温度を含む条件下でアミラーゼ活性またはセルラーゼ活性を保持することができる。前記ポリペプチドは、約−100℃〜約−80℃、約−80℃〜約−40℃、約−80℃〜約−60℃、−60℃〜約−40℃、約−80℃〜約−40℃、約−40℃〜約−20℃、約−20℃〜約0℃、約0℃〜約5℃、約5℃〜約15℃、約15℃〜約25℃、約25℃〜約37℃、約37℃〜約45℃、約45℃〜約55℃、約55℃〜約70℃、約70℃〜約75℃、約75℃〜約85℃、約85℃〜約90℃、約90℃〜約95℃、約95℃〜約100℃、約100℃〜約105℃、約105℃〜約110℃、約110℃〜約120℃の温度範囲、または95℃、96℃、97℃、98℃、99℃、100℃、101℃、102℃、103℃、104℃、105℃、106℃、107℃、108℃、109℃、110℃、111℃、112℃、113℃、114℃、115℃、116℃、117℃、118℃、119℃、120℃、121℃、122℃、123℃、124℃、125℃、またはそれ以上の温度でアミラーゼ活性またはセルラーゼ活性を保持することができる。
【0029】
いくつかの態様において、本発明を実施するために使用されるポリペプチドは、アミラーゼ活性またはセルラーゼ活性を有し、その活性は耐熱性である。前記ポリペプチドは、37℃より高く約95℃以下の範囲または55℃より高く約85℃以下の範囲の任意の温度に曝された後も、アミラーゼ活性またはセルラーゼ活性を保持することができる。本発明のポリペプチドは、約−100℃〜約−80℃、約−80℃〜約−40℃、約−80℃〜約−60℃、−60℃〜約−40℃、約−80℃〜約−40℃、約−40℃〜約−20℃、約−20℃〜約0℃、約0℃〜約5℃、約5℃〜約15℃、約15℃〜約25℃、約25℃〜約37℃、約37℃〜約45℃、約45℃〜約55℃、約55℃〜約70℃、約70℃〜約75℃、約75℃〜約85℃、約85℃〜約90℃、約90℃〜約95℃、約95℃〜約100℃、約100℃〜約105℃、約105℃〜約110℃、約110℃〜約120℃の温度範囲、または95℃、96℃、97℃、98℃、99℃、100℃、101℃、102℃、103℃、104℃、105℃、106℃、107℃、108℃、109℃、110℃、111℃、112℃、113℃、114℃、115℃、116℃、117℃、118℃、119℃、120℃、121℃、122℃、123℃、124℃、125℃、またはそれ以上の温度に曝された後も、アミラーゼ活性またはセルラーゼ活性を保持することができる。
【0030】
いくつかの態様において、本発明のポリペプチドは、pH約3.0、約3.5、約4.0、約4.5、約5.0、約5.5、約6.0、約6.5、約7.0、約7.5、約8.0、約8.5、約9.0、約9.5、約10.0、約10.5、約11.0、約11.5、約12.0またはそれ以上において、約−100℃〜約−80℃、約−80℃〜約−40℃、約−80℃〜約−60℃、−60℃〜約−40℃、約−80℃〜約−40℃、約−40℃〜約−20℃、約−20℃〜約0℃、約0℃〜約5℃、約5℃〜約15℃、約15℃〜約25℃、約25℃〜約37℃、約37℃〜約45℃、約45℃〜約55℃、約55℃〜約70℃、約70℃〜約75℃、約75℃〜約85℃、約85℃〜約90℃、約90℃〜約95℃、約95℃〜約100℃、約100℃〜約105℃、約105℃〜約110℃、約110℃〜約120℃の温度範囲、または95℃、96℃、97℃、98℃、99℃、100℃、101℃、102℃、103℃、104℃、105℃、106℃、107℃、108℃、109℃、110℃、111℃、112℃、113℃、114℃、115℃、116℃、117℃、118℃、119℃、120℃、121℃、122℃、123℃、124℃、125℃、またはそれ以上の温度に曝された後も、アミラーゼ活性またはセルラーゼ活性を保持することができる。
【0031】
本発明は、アミラーゼ活性またはセルラーゼ活性を有するポリペプチドをコードする核酸であって、ストリンジェントな条件下で、配列番号1、配列番号5、配列番号7、配列番号9、配列番号11、配列番号13および/または配列番号15に記載の配列とハイブリダイズする配列を含む核酸を用いて実施することができる。いくつかの態様において、本発明の核酸は、アミラーゼ活性またはセルラーゼ活性を有するポリペプチドをコードする。本発明の核酸は、前記遺伝子または転写産物のうちの少なくとも約10、15、20、25、30、35、40、45、50、75、100、150、200、250、300、350、400、450、500、550、600、650、700、750、800、850、900、950、1000、1050、1100、1150、1200残基、もしくはそれ以上の長さ、またはその全長であってよい。いくつかの態様において、ストリンジェントな条件には、0.2×SSC中、約65℃にて約15分間の洗浄工程が含まれる。本明細書に開示される組成物および方法は、配列番号2、配列番号6、配列番号8、配列番号10、配列番号12、配列番号14、および/または配列番号16と少なくとも約50%、51%、52%、53%、54%、55%、56%、57%、58%、59%、60%、61%、62%、63%,64%、65%、66%、67%、68%、69%、70%、71%、72%、73%、74%、75%、76%、77%、78%、79%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%もしくはそれ以上の、もしくは完全な(100%の)配列同一性を有するアミノ酸配列を含む、単離、合成、または組み換えされたポリペプチドまたは酵素活性を有するそのフラグメントの使用を含み、このようなフラグメントは、少なくとも約10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、100、125、150、175、200、225、250、275、300、325、350残基、もしくはそれ以上の長さであるか、または前記ポリペプチドの全長である。いくつかの態様において、本発明のポリペプチドは、セルラーゼ活性またはアミラーゼ活性を有する。
【0032】
本発明を実施するために使用される典型的なポリペプチドまたはペプチド配列としては、配列番号2、配列番号6、配列番号8、配列番号10、配列番号12、配列番号14、および/または配列番号16が挙げられ、さらにこれらの部分配列(酵素活性を有するフラグメント)および変異体、たとえば少なくとも約10、15、20、25、30、35、40、45、50、75、80、85、90、95、100、150、200、250、300、350、400、450、500、550、600残基、もしくはそれ以上の長さのフラグメントや酵素の全長も含まれる。
【0033】
アミラーゼ活性またはセルラーゼ活性を測定するための、たとえばポリペプチドが所望の活性を有しているかどうかを判断するための分析は、当技術分野でよく知られており、本明細書の開示の範囲に含まれる。たとえば、Baker WL,Panow A,Estimation of cellulase activity using aglucose−oxidase−Cu(II) reducing assay for glucose,J Biochem Biophys Methods.1991 Dec,23(4):265−73;Sharrock KR,Cellulase assay methods:a review,J Biochem Biophys Methods.1988 Oct,17(2):81−105;Carder JH,Detection and quantitation of cellulase by Congo red staining of substrates in a cupplate diffusion assay,Anal Biochem.1986 Feb 15,153(1):75−9;Canevascini G.,A cellulase assay coupled to cellobiose dehydrogenase,Anal Biochem.1985 Jun,30 147(2):419−27;Huang JS,Tang J,Sensitive assay for cellulase and dextranase.Anal Biochem.1976 Jun,73(2):369−77を参照のこと。
【0034】
いくつかの実施形態において、本発明を実施するために使用されるポリペプチドは、単独あるいは本明細書に開示された「カクテル」とともに、デンプン(1,4−α結合または1,6−α結合でつながったグルコース単量体の重合体)等の、グルコース単量体を含む多糖の加水分解を触媒することが可能なアミラーゼを含む。いくつかの態様において、本発明のポリペプチドは、アミラーゼ活性(たとえばαアミラーゼ活性、エンドアミラーゼ活性、グルコアミラーゼ活性等)を有する。本明細書において、用語「アミラーゼ」は、多糖(たとえばデンプン)の加水分解を触媒する酵素活性をも含む。本発明を実施するために使用されるアミラーゼとしては、α−アミラーゼ活性、グルコアミラーゼ活性、1,4−α−D−グルカングルコヒドロラーゼ活性、エキソアミラーゼ活性、グルカンα−マルトテトラヒドロラーゼ活性、マルターゼ活性、イソマルターゼ活性、グルカン1,4−α−グルコシダーゼ活性、α−グルコシダーゼ活性、スクラーゼ活性、またはアガラーゼ活性(たとえばα−アガラーゼ活性)を有するポリペプチド等が挙げられる。たとえば、本発明を実施するために使用されるアミラーゼは、デンプン内部のα−1,4−グルコシド結合を加水分解して分子量のより小さなマルトデキストリンを生成する能力を含むα−アミラーゼ活性を有するポリペプチドを含む。いくつかの態様において、前記α−アミラーゼ活性は、デンプンのα−1,4−グルコシド結合をランダムに加水分解する能力を含む。本発明を実施するために使用されるアミラーゼの1つは、α−1,4−グルコシド結合またはα−1,6−グルコシド結合でつながったグルコース重合体を加水分解する能力等のグルコアミラーゼ活性を有するポリペプチドを含む。いくつかの態様において、本発明を実施するために使用されるアミラーゼは、内部のα−1,4−グルコシド結合を加水分解して分子量のより小さなマルトデキストリンを生成するグルコアミラーゼ活性を有するポリペプチドを含む。本発明を実施するために使用されるアミラーゼの1つは、グルカン1,4−α−グルコシダーゼ活性を有するポリペプチド、すなわち、一般にグルコアミラーゼと呼ばれアミログルコシダーゼおよびα−アミラーゼとも呼ばれる1,4−α−D−グルカングルコヒドロラーゼを含み、一態様において、1,4−α−結合、1,6−α−結合、および1,3−α−結合したグルカンからα−D−グルコースを遊離させる。本発明を実施するために使用されるアミラーゼの1つは、エキソアミラーゼ活性を有するポリペプチドを含む。
【0035】
いくつかの実施形態において、本発明を実施するために使用されるポリペプチドは、単独あるいは本明細書に開示された「カクテル」とともに、たとえばグァーガム(1,4−α結合または1,6−α結合でつながったグルコース単量体の重合体)等の、グルコース単量体を含む多糖の加水分解を触媒することが可能なセルラーゼを含む。いくつかの態様において、本発明を実施するために使用されるポリペプチドは、単独あるいは本明細書に開示された「カクテル」とともに、本明細書に記載のセルラーゼを含み、グルカナーゼ(たとえばエンドグルカナーゼ、マンナナーゼ、キシラナーゼ)の活性、またはこれらの活性の組合せを有する。いくつかの態様において、前記グルカナーゼ活性はエンドグルカナーゼ活性(たとえばエンド−1,4−β−D−グルカン4−グルカノヒドロラーゼ活性)であり、セルロース、セルロース誘導体(たとえば、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース)、リケニンに含まれる1,4−β−D−グルコシド結合、ならびにたとえば穀物β−Dグルカンやキシログルカンとセルロース部分を有するその他の植物原料とで構成される混合β−1,3グルカンにおけるβ−1,4結合の加水分解を含む。別の態様において、これらのグルカナーゼ、たとえばエンドグルカナーゼ、マンナナーゼ、キシラナーゼ等は、pHや温度の増減にかかわらず、より強い活性およびより高い安定性(耐熱性や熱安定性等)を有する。
【0036】
適切な多糖基質としては、ガラクトマンナンガム、グァー、グァー誘導体、セルロースおよびセルロース誘導体、デンプン、デンプン誘導体、キサンタン、キサンタン誘導体、ならびにこれらの混合物が挙げられる。具体例としては、グァーガム、グァーガム誘導体、ローカストビーンガム、カラヤガム、キサンタンガム、セルロース、セルロース誘導体等が挙げられるが、これらに限定はされない。開示の酵素が対象とする典型的な重合体増粘剤またはゲル化剤としては、グァーガム、ヒドロキシプロピルグァー、カルボキシメチルヒドロキシプロピルグァー、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ジアルキルカルボキシメチルセルロース等が挙げられる。重合体の別の例としては、ホスホマンノース、スクレログルカン、デキストラン、および他のタイプの重合体が挙げられるが、これらに限定はされない。いくつかの実施形態において、重合体基質はカルボキシメチルヒドロキシプロピルグァーである。いくつかの実施形態において、開示の酵素はバイオガム(たとえば、デーツシロップやスクロースから作られたサクシノグリカンバイオガム)の加水分解にも効果的である。いくつかの実施形態において、開示の酵素をセルロース含有重合体、またはセルロース誘導体含有重合体の加水分解に使用してもよい。このような酵素は、典型的には、セルロースの主鎖のグルコシド結合を攻撃する。開示の酵素は、重合体をほぼ単糖単位へと分解することに適しているかもしれない。この分解は、場合によっては、任意のセロビオースフラグメントの(1,4)−β−D−グルコシド結合における単糖単位とセルロースの主鎖との間のエキソ(1,4)−β−D−グルコシド結合およびエンド(1,4)−β−D−グルコシド結合の特異的加水分解によって行われる。
【0037】
本明細書に開示される酵素含有組成物は、本明細書に記載の多糖分解酵素の1つ、または本明細書に記載の多糖分解ポリヌクレオチドのうち任意の1種、2種、3種、4種、もしくはそれ以上の混合物(「カクテル」)を含むことができ、該ポリペプチドとしては、配列番号2、配列番号6、配列番号8、配列番号10、配列番号12、配列番号14および/または配列番号16に基づくポリペプチドが挙げられる。本発明を実施するために使用される組成物は、配列番号2、配列番号6、配列番号8、配列番号10、配列番号12、配列番号14および/または配列番号16に基づくポリペプチドを含む、本明細書に記載のポリペプチドの1種、2種、3種、もしくはそれ以上、ならびに、トリプトファナーゼ、チロシンデカルボキシラーゼ、ラッカーゼ、カタラーゼ、ラッカーゼ、他のセルラーゼ、エンドグリコシダーゼ、エンド−β−1,4−ラッカーゼ、アミログルコシダーゼ、他のグルコシダーゼ、グルコースイソメラーゼ、グリコシルトランスフェラーゼ、リパーゼ、ホスホリパーゼ、リポキシゲナーゼ、β−ラッカーゼ、エンド−β−1,3(4)−ラッカーゼ、クチナーゼ、ペルオキシダーゼ、アミラーゼ、キサンタナーゼ、グルコアミラーゼ、ペクチナーゼ、レダクターゼ、オキシダーゼ、デカルボキシラーゼ、フェノールオキシダーゼ、リグニナーゼ、プルラナーゼ、アラビナナーゼ、ヘミセルラーゼ、マンナナーゼ、キシロラッカーゼ、キシラナーゼ、ペクチンアセチルエステラーゼ、ラムノガラクツロナンアセチルエステラーゼ、プロテアーゼ、ペプチダーゼ、プロテイナーゼ、ポリガラクツロナーゼ、ラムノガラクツロナーゼ、ガラクタナーゼ、ペクチンリアーゼ、トランスグルタミナーゼ、ペクチメチルエステラーゼ、その他のセロビオヒドロラーゼ、および/またはトランスグルタミナーゼ等の、他の酵素の任意の組合せを含むことができる。
【0038】
本明細書に開示される組成物および方法は、単離、合成、または組み換えされたポリペプチドの使用を含み、該ポリペプチドはこれらのポリペプチド(例えば上述のポリペプチド等)とシグナル配列とを含むものである。シグナル配列は、別のアミラーゼ、キサンタナーゼ、および/またはグリコシダーゼ(たとえばセルラーゼ、エンドグルカナーゼ、セロビオヒドロラーゼ、マンナナーゼ、および/またはβ−グルコシダーゼ酵素)または非セルラーゼ(たとえば非エンドグルカナーゼ、非セロビオヒドロラーゼ、および/または非β−グルコシダーゼ酵素(異種酵素))に由来するものであってもよい。
【0039】
本明細書に開示される組成物および方法は、単離、合成、または組み換えされたポリペプチドの使用を含み、該ポリペプチドはシグナル配列を含まない、またはシグナル配列の一部または全部を欠いているか、または異種のシグナル配列、たとえば異種のアミラーゼ、キサンタナーゼ、グリコシダーゼ、セルラーゼ(たとえば、エンドグルカナーゼ、セロビオヒドロラーゼ、マンナナーゼ、および/またはβ−グルコシダーゼ酵素)のシグナル配列、または、非アミラーゼ、非キサンタナーゼ、非セルラーゼ(たとえば非エンドグルカナーゼ、非セロビオヒドロラーゼ、および/または非β−グルコシダーゼ酵素)のシグナル配列を含むものである。
【0040】
本明細書に開示される組成物および方法は、シグナル配列を含む第1のドメインと、上述のポリペプチドを含む少なくとも1つの第2のドメインとを含む、単離、合成、または組み換えされたキメラタンパク質の使用を含む。前記タンパク質は融合タンパク質であってもよい。前記第2のドメインは、複数の酵素または活性を含んでもよい。前記酵素は、非酵素であってもよい。本明細書に開示される組成物および方法は、単離、合成、または組み換えされたキメラタンパク質の使用を含み、該キメラタンパク質は、上述のポリペプチド、シグナルペプチド(SP)、プレプロ配列、および/または酵素ドメイン(CD)を含み、別の一実施形態においては、異種のポリペプチドまたはペプチドを含む少なくとも1つのまた別のドメインを含むが、該異種のポリペプチドまたはペプチドは、シグナルペプチド(SP)、プレプロ配列、および/または触媒ドメイン(CD)と生来の関連性を有するものではない。いくつかの態様において、前記異種のポリペプチドまたはペプチドは、アミラーゼでもキサンタナーゼでもセルラーゼ(たとえば、エンドグルカナーゼ、セロビオヒドロラーゼ、マンナナーゼ、および/またはβ−グルコシダーゼ)でもない。前記異種のポリペプチドまたはペプチドは、シグナルペプチド(SP)、プレプロ配列、および/または触媒ドメイン(CD)のアミノ末端、カルボキシ末端、または両末端に位置していてもよい。
【0041】
いくつかの態様において、本発明を実施するために使用されるアミラーゼおよび/またはセルラーゼは、およそpH6.5、pH6、pH5.5、pH5、pH4.5、pH4.0、pH3.5、pH3.0、またはそれ以下のpH(より酸性)を含む条件下で酵素活性を保持することができるか、およそpH7、pH7.5、pH8.0、pH8.5、pH9、pH9.5、pH10、pH10.5、pH11.0、pH11.5、pH12、pH12.5、またはそれ以上のpH(よりアルカリ性)を含む条件下で活性を保持することができるか、およそpH6.5、pH6、pH5.5、pH5、pH4.5、pH4.0、pH3.5、pH3.0、またはそれ以下のpH(より酸性)を含む条件に曝された後も酵素活性を保持することができるか、およそpH7、pH7.5、pH8.0、pH8.5、pH9、pH9.5、pH10、pH10.5、pH11.0、pH11.5、pH12、pH12.5、またはそれ以上のpH(よりアルカリ性)を含む条件に曝された後も酵素活性を保持することができるか、あるいは、アルカリ性の条件下で活性を保持することができる。ある種の態様において、反応はpH約3.0〜9.0の範囲で行われる。別の態様では、反応はpH約4.5、約7.5、または約9で行われる。アルカリ条件下の反応条件も、たとえば本明細書に開示された酵素のいくつかの産業上の利用において、有利になることがある。
【0042】
本発明は、本明細書に記載の数種のポリペプチド(ペプチドを含む)のいずれかを含むタンパク質製剤を提供する。該タンパク質製剤は、液体、固体、またはゲルを含み、該タンパク質製剤において、本発明を実施するために使用される前記数種のポリペプチド(ペプチドを含む)は本明細書に記載のポリペプチドを含むヘテロダイマーであってよく、該ヘテロダイマーの第2のメンバーは、異なるアミラーゼ、キサンタナーゼ、セルラーゼ(たとえば、エンドグルカナーゼ、セロビオヒドロラーゼ、マンナナーゼ、および/またはβ−グルコシダーゼ酵素)、異なる酵素、または別のタンパク質であってもよい。いくつかの態様において、前記第2のドメインはポリペプチドであってもよく、また前記ヘテロダイマーは融合タンパク質であってもよい。いくつかの態様において、前記第2のドメインはエピトープまたはタグであってもよい。いくつかの態様において、本発明は、本発明を実施するために使用されるポリペプチドを含むホモダイマーを提供する。
【0043】
本発明は、本明細書に記載のアミラーゼおよび/またはセルラーゼの酵素活性を有する固定化ポリペプチド(ペプチドを含む)を使用することにより実施可能であり、ポリペプチドは少なくとも1つのさらなる(第2の)ドメインを有しうる。いくつかの態様において、前記ポリペプチドは、細胞、金属、樹脂、重合体、セラミック、ガラス、微小電極、黒鉛粒子、ビーズ、ゲル、プレート、アレイまたは毛細管上に固定化されうる。
【0044】
本発明を実施するために使用されるアミラーゼおよび/またはセルラーゼは、該酵素をコードするポリヌクレオチドを任意の生物、たとえば細菌、酵母、植物、昆虫、菌類、および/または動物において発現させることによって調製できる。前記生物は、たとえば、P.flourescencs、S.pombe、S.cerevisiae、Pichia pastoris、E.coli、Streptomyces sp.、Bacillus sp.、またはLactobacillus sp.であってもよい。
【0045】
本発明を実施するために使用されるアミラーゼおよび/またはセルラーゼは、たとえば熱安定性組み換え酵素等を含む任意の酵素送達マトリックスとして製剤化することが可能であり、たとえば粒状担体と熱安定性組み換え酵素とを含むペレット剤の形態の酵素送達マトリックスとして製剤化することができる。このようなペレット剤は、自体が含有する酵素を水性溶媒に容易に分散させ、所望の環境(たとえば戻り流体)に対して前記酵素送達マトリックスを投与するものである。
【0046】
本発明は、様々な形態および剤形で使用される組成物および酵素を提供する。本明細書に開示される方法において、これらの酵素は様々な形態および剤形で使用される。たとえば、精製されたポリペプチドは、掘削または破砕の用途に活用される酵素製剤に使用することができる。
【0047】
別の実施形態において、本発明は配列番号1を含み、該配列はタンパク質をコードする。本発明の別の実施形態において、本発明は、Thermotoga maritimaに由来するセルラーゼをコードするヌクレオチド配列すなわち配列番号3であって、T6C、T9C、T15G、A22C、G24T、A33C、A39C、A40C、A42C、A54C、A57C、T66C、G81A、A84C、A6C、G6C、A9C、G9C、A15G、C15G、T22C、G22C、A24T、C24T、T33C、G33C、T39C、G39C、T40C、G40C、T42C、G42C、T54C、G54C、T57C、G57C、A66C、G66C、C81A、T81A、T84C、G84C、またはこれらの任意の組合せから選択される少なくとも1つの変異を含むヌクレオチド配列を含み、該変異はサイレントであってもよい。本発明のさらなる実施形態において、少なくとも1つの変異の結果、該ヌクレオチド配列による前記セルラーゼの発現が、少なくとも1つのそのような変異を欠いたヌクレオチド配列と比べて高レベルとなる。
【0048】
本発明の別の実施形態において、本発明は、Thermotoga maritimaに由来するヌクレオチド配列であって、少なくとも1つの変異を有し、自体がコードするタンパク質の発現が、Thermotoga maritimaの野生型ゲノム配列と比べて高レベルであるヌクレオチド配列を含み、該変異はサイレントであってもよい。
【0049】
本発明の別の実施形態において、本発明は、配列番号2のポリペプチドをコードする第1のヌクレオチド配列であって、配列番号2をコードする第2のヌクレオチド配列に対して変異を有し、その結果前記タンパク質の発現が、該第2のヌクレオチド配列にコードされる前記タンパク質の発現と比べて高レベルとなっているヌクレオチド配列を含む。
【0050】
本発明の別の実施形態において、本発明は、配列番号2と少なくとも50%、60%、70%、80%、90%、95%、97%、98%、99%もしくは100%一致する、タンパク質またはそのフラグメントをコードするヌクレオチド配列であって、T6C、T9C、T15G、A22C、G24T、A33C、A39C、A40C、A42C、A54C、A57C、T66C、G81A、A84C、A6C、G6C、A9C、G9C、A15G、C15G、T22C、G22C、A24T、C24T、T33C、G33C、T39C、G39C、T40C、G40C、T42C、G42C、T54C、G54C、T57C、G57C、A66C、G66C、C81A、T81A、T84C、G84C、またはこれらの任意の組合せから選択される少なくとも1つの変異を含む、ヌクレオチド配列を含む。
【0051】
本発明の別の実施形態において、本発明の任意のタンパク質は細菌発現系において発現され、該細菌発現系は、たとえばPseudomonas、E.coli、RalstoniaまたはCaulobacter等の発現系であるグラム陰性菌発現系である。
【0052】
本発明の別の実施形態において、本発明のセルラーゼは、少なくとも1.0g/L、2.0g/L、3.0g/L、4.0g/L、5.0g/L、6.0g/L、7.0g/L、8.0g/L、9.0g/L、10.0g/L、11.0g/L、12.0g/L、13.0g/L、14.0g/L、15.0g/L、16.0g/L、17.0g/L、18.0g/L、19.0g/L、20.0g/L、21.0g/L、22.0g/L、23.0g/L、24.0g/L、25.0g/L、26.0g/L、27.0g/L、28.0g/L、29.0g/L、30.0g/L、31.0g/L、32.0g/L、33.0g/L、34.0g/Lまたは35.0g/L発現するよう産生される。
【0053】
本発明の別の実施形態において、本発明のセルラーゼは第2の酵素と組み合わされ、該第2の酵素は、ラクターゼ、リパーゼ、プロテアーゼ、カタラーゼ、キシラナーゼ、セルラーゼ、グルカナーゼ、マンナナーゼ、アミラーゼ、アミダーゼ、エポキシドヒドロラーゼ、エステラーゼ、ホスホリパーゼ、トランスアミナーゼ、アミンオキシダーゼ、セロビオヒドロラーゼ、アンモニアリアーゼ、およびこれらの任意の組合せからなる群から選択される。
【0054】
本発明の別の実施形態において、本発明は、配列番号1を含む核酸配列を有する、単離、組み換え、または合成により得られたヌクレオチドを含み、該核酸配列は、セルラーゼ活性を有するポリペプチドをコードするものである。
【0055】
本発明の別の実施形態において、本発明は、配列番号1の核酸配列を含む、単離、組み換え、または合成により得られたヌクレオチドであって、該核酸配列がセルラーゼ活性を有するポリペプチドをコードし、該ポリペプチドが配列番号2のアミノ酸配列または酵素活性を有するそのフラグメントを含む、ヌクレオチドを含む。
【0056】
本発明の別の実施形態において、本発明は、配列番号1を含む、単離、組み換え、または合成により得られた、セルラーゼ活性を有するポリペプチドをコードする核酸配列を含み、該ポリペプチドは配列番号2のアミノ酸配列を含み、組み換えPseudomonas fluorescens発現系で産生される。
【0057】
本発明のさらなる実施形態において、本発明は、石油またはガスの操業によって使用されたまたは生じた戻り流体を処理する方法であって、(a)戻り流体に酵素または酵素処理剤を供給することと、(b)前記酵素または酵素処理剤によって、戻り流体中の多糖またはデンプンを含む物質を分解することとを含み、前記酵素または酵素処理剤が、前記多糖またはデンプンを含む物質の分解または加水分解に有効である方法、を含み、この酵素は任意選択でセルラーゼまたはアミラーゼであってもよい。戻り流体を処理するための方法のさらなる実施形態において、前記酵素または酵素処理剤はアミラーゼを含み、該アミラーゼは、配列番号16と少なくとも約50%、51%、52%、53%、54%、55%、56%、57%、58%、59%、60%、61%、62%、63%,64%、65%、66%、67%、68%、69%、70%、71%、72%、73%、74%、75%、76%、77%、78%、79%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%もしくはそれ以上の、もしくは完全な(100%の)配列同一性を有するアミノ酸配列を有するポリペプチドまたは酵素活性を有するそのフラグメントを含む。戻り流体を処理するための方法のさらなる実施形態において、前記酵素または酵素処理剤はセルラーゼを含み、該セルラーゼは、配列番号4、配列番号6、配列番号8、配列番号10、配列番号12および/または配列番号14と少なくとも約50%、51%、52%、53%、54%、55%、56%、57%、58%、59%、60%、61%、62%、63%,64%、65%、66%、67%、68%、69%、70%、71%、72%、73%、74%、75%、76%、77%、78%、79%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%もしくはそれ以上の、もしくは完全な(100%の)配列同一性を有するアミノ酸配列を有するポリペプチドまたは酵素活性を有するそのフラグメントを含む。
【0058】
本発明のさらなる実施形態において、本発明は、重合体増粘剤、界面活性剤、熱安定剤、および超好熱性細菌に由来する野生型セルラーゼまたはその変異体を含む酵素分解剤を含む組成物を含む。前記組成物のさらなる実施形態において、前記増粘剤は、直鎖グァー、架橋グァー、またはこれらの混合物を含むグァーゲルである。前記組成物のさらなる実施形態において、前記酵素分解剤は前記グァーゲル中のβ−1,4−グリコシド結合を特異的に加水分解する。前記組成物のさらなる実施形態において、前記酵素分解剤は、前記グァーゲル中のα−1,6−グリコシド結合の特異的な加水分解をしない。前記組成物のさらなる実施形態において、前記酵素分解剤は、前記グァーゲル中のβ−1,4−グリコシド結合に対する加水分解能を、華氏約275度以下の温度において保持する。前記組成物のさらなる実施形態において、前記酵素分解剤は、前記グァーゲル中のβ−1,4−グリコシド結合に対する加水分解能を、約11以下のpHにおいて保持する。前記組成物のさらなる実施形態において、前記酵素分解剤は配列番号2を有する。前記組成物のさらなる実施形態において、前記酵素分解剤は配列番号1を有するポリヌクレオチドにコードされる。前記のいずれかの組成物のさらなる実施形態において、前記酵素分解剤は野生型セルラーゼの変異体であり、pH約6.5では野生型セルラーゼの融点より少なくとも華氏20度高い融点を有し、pH約10.5では野生型セルラーゼの融点より少なくとも華氏10度高い融点を有する。前記のいずれかの組成物のさらなる実施形態において、前記エステルは、酢酸エチル、酢酸2−エトキシエチル、アセト酢酸エチル、安息香酸メチル、ギ酸エチル、酢酸メチルおよびフタル酸ジメチルからなる群から選択されてもよい。
【0059】
別の実施形態において、本発明は、配列番号1にコードされたポリペプチドを含む飼料または飼料用添加剤を含む。別の実施形態において、前記飼料または飼料用添加剤は、飼料の消化を助ける。
【0060】
本願明細書に引用された刊行物、特許、特許出願、GenBank配列、およびATCC寄託物はすべて、目的を問わず参照によりその全体が本願に明示的に援用される。
【図面の簡単な説明】
【0061】
図1】実施例1に記載の、2つのグァー溶液の時間対粘度測定結果を示すレオロジーグラフである。
図2】実施例3に記載の、様々なレベルのタンパク質発現を示すSDS PAGEゲル電気泳動の画像である。
図3】実施例4に記載の、タンパク質調合液の活性レベルを示す棒グラフである。
図4】配列番号1、すなわち配列番号3と比較して、14のサイレント変異:T6C、T9C、T15G、A22C、G24T、A33C、A39C、A40C、A42C、A54C、A57C、T66C、G81A、A84Cを有するポリヌクレオチドを示す。
図5】配列番号2、すなわち配列番号1、3および4によってコードされるポリペプチドを示す。
図6】配列番号3、すなわち配列番号1および4の親配列である非修飾ポリヌクレオチド配列を示す。
図7】配列番号4、すなわち配列番号3と比較して、14のサイレント変異:T6C、T9C、T15G、A22C、G24T、A33C、A39C、A40C、A42C、A54C、A57C、T66C、G81A、A84Cに加えて、さらに1つの点変異を開始コドンの上流に有するポリヌクレオチドを示す(さらなる上流配列を示す)。
図8】配列番号5の核酸を示す。
図9】配列番号6のポリペプチドを示す。
図10】配列番号7の核酸を示す。
図11】配列番号8のポリペプチドを示す。
図12】配列番号9の核酸を示す。
図13】配列番号10のポリペプチドを示す。
図14】配列番号11の核酸を示す。
図15】配列番号12のポリペプチドを示す。
図16】配列番号13の核酸を示す。
図17】配列番14のポリペプチドを示す。
図18】配列番号15の核酸を示す。
図19】配列番号16のポリペプチドを示す。
【発明を実施するための形態】
【0062】
Thermotoga maritimaは、極端に高い塩濃度(すなわち、NaCl0.25%〜6.00%)において増殖できることを特徴とする、好熱性の真正細菌である。Thermotoga maritimaは、好熱性の嫌気性グラム陰性桿菌が属するテルモトガ目のメンバーである。増殖に必要な最低温度は約55℃、最適温度は80〜85℃、また最高温度は約90℃である。いくつかの実施形態では、最低温度は55℃よりも低く、最高温度は90℃を超える。これらの細菌は、真正細菌界で最も深い分岐のうち1つからゆっくり進化した。テルモトガ目のメンバーは、“wide−spread and cosmopolitan”(Huber,R.et al.,2006)に記載されており、地熱地帯に生息している。Thermotoga maritimaは、Thermotoga neapolitana、Thermotoga petrophila、およびThermotoga naphthophilaの近縁種である。Thermotoga maritimaの標本はイタリアのヴルカーノ、アゾレス諸島のリベイラ・クエンテおよびサンミゲル島、インドネシアのサンゲアン島、およびフィジー島の海底から採取されている(Huber,R.et al.,2006)。
【0063】
菌株MSB8は、イタリア,ヴルカーノの地熱で加熱された海底堆積物から単離された(Huber,1986)。採取場所の温度は70〜100℃、pHは6.5〜7.0であった。この菌株は、Deutsche Sammlung von MikroorganismenにDSM3109として、またATCCにATCC43589として寄託されている(Huber,R.et al.,2006)。
【0064】
Thermotoga maritimaの菌株MSB8は、産生する酵素が並外れた熱安定性を有することから、その酵素をコードする遺伝子に関して長く研究されてきた。Liebl(Liebl,W.et al.,1996)は“Analysis of a Thermotoga maritima DNA fragment encoding two similar thermostable cellulases,CelA and CelB,and characterization of the recombinant enzymes”を発表している。さらに、デンプン分解性酵素(Bibel,M.et al.,1998)、リバースギラーゼ(Bouthier de la Tour,C.et al.,1998)、α−アミラーゼ(Liebl,W.et al.,1997)、α−グルクロニダーゼ(Ruile,P.et al.,1997)、キシラナーゼ(Winterhalter,C.et al.,1995)、β−グルコシダーゼ(Liebl,W.et al.,1994)、グルカノトランスフェラーゼ(Liebl,W.et al.,1992)の遺伝子も、単離され分析されている。Bronnenmeierの研究(Bronnenmeier,K.et al.,1995)、すなわち“Purification of Thermotoga maritima enzymes for the degradation of cellulosic materials”により、セルロースおよびキシランの分解におけるこれらの酵素の有用性が示されている。
発現系
【0065】
いくつかの実施形態において、本発明のセルラーゼをコードするDNAを、プラスミド上に導入してもよく、また、たとえばE.coli、Pseudomonas fluorescens、Pseudomonas putida、Pseudomonas aeruginosa等のシュードモナス種、緑膿菌、またはコーロバクター種等の任意の数のグラム陰性菌細菌系のゲノムに導入して安定した形質転換体を作出してもよい。同様に、セルラーゼは、Bacillus subtilis、Bacillus megaterium、Bacillus brevis等のバチルス種、Lactococcus lactis等のラクトコッカス種、ラクトバチルス種、Streptomyces lividans等のストレプトミセス種のような任意の数のグラム陽性菌発現系に導入されてもよい。他のグラム陰性菌、グラム陽性菌または別の真正細菌、古細菌の発現系を用いてセルラーゼを発現させてもよい。
【0066】
本発明を実施するために使用されるポリペプチドは、当技術分野で知られている手順により、微生物中で発現させることができる。他の態様において、本発明を実施するために使用されるポリペプチドは、本明細書に開示された方法により、使用に先立って固体支持体上に固定化することができる。酵素を固体支持体上に固定化する方法は当技術分野で知られており、たとえば、J.Mol.Cat.B:Enzymatic 6(1999)29−39、Chivata et al.Biocatalysis:Immobilized cells and enzymes,J Mol.Cat.37(1986)1−24、Sharma et al.,Immobilized Biomaterials Techniques and Applications,Angew.Chem.Int.Ed.Engl.21(1982)837−854、Laskin(Ed.),Enzymes and Immobilized Cells in Biotechnologyに記載されている。本発明を実施するために使用されるポリペプチドは、組み換え技術によって発現させることができる。本発明を実施するために使用されるポリペプチドは、(たとえば、配列番号2、配列番号6、配列番号8、配列番号10、配列番号12、配列番号14、および/または配列番号16をコードする)配列番号1、配列番号5、配列番号7、配列番号9、配列番号11、配列番号13、および/または配列番号15に基づく核酸によってコードされる組み換えタンパク質を含むことができる。
【0067】
本発明の典型的なポリペプチドまたはペプチドである配列番号2、配列番号6、配列番号8、配列番号10、配列番号12、配列番号14、および/または配列番号16(それぞれ、たとえば配列番号1、配列番号5、配列番号7、配列番号9、配列番号11、配列番号13、および/または配列番号15にコードされる)はβ結合した炭水化物、たとえば、グァーガム、グァー誘導体(ヒドロキシプロピルグァー、カルボキシメチルグァー、カルボキシメチルヒドロキシプロピルグァー)、およびヒドロキシメチルセルロース等を分解するために有用でありうる。酵素の活性パターンとしてはエンドグリコシダーゼ活性とエクソグリコシダーゼ活性の両方があり、多糖内で長い鎖の途中を切断することによって、また重合体の末端から二糖単位を切断することによって、効果的に粘度を低下させることができる。また、これらは広域スペクトルマンナナーゼ活性を有する。
【0068】
いくつかの実施形態において、配列番号1は、開示されたセルラーゼタンパク質を発現させることが可能な複数の系において、該セルラーゼタンパク質をより高いレベルで発現させるために使用される。配列番号1は開示されたセルラーゼをより高い蓄積レベルで発現させるために、任意の数の発現系に導入されてもよい。たとえば、配列番号1を、プラスミド上に導入してもよく、また、たとえばE.coli、Pseudomonas fluorescens、Pseudomonas putida、Pseudomonas aeruginosa等のシュードモナス種、緑膿菌、またはコーロバクター種等の任意の数のグラム陰性菌細菌系のゲノムに導入して安定した形質転換体を作出してもよい。同様に、配列番号1は、Bacillus subtilis、Bacillus megaterium、Bacillus brevis等のバチルス種、Lactococcus lactis等のラクトコッカス種、ラクトバチルス種、Streptomyces lividans等のストレプトミセス種のような任意の数のグラム陽性菌発現系に導入されてもよい。他のグラム陰性菌、グラム陽性菌または別の真正細菌、古細菌の発現系を用いて配列番号1を発現させてもよい。さらなる実施形態において、配列番号1を任意の数の、Saccharomyces、Schizosaccharomyces pombe、Pichia pastoris、Hansanuela polymorpha等の真核細胞発現系に導入してもよい。
【0069】
より具体的に言えば、配列番号1はプラスミドに導入して発現させてもよい。配列番号1を導入してもよいプラスミドとしては、たとえば、E.coli発現ベクターであるpQE、pET、pASKのファミリー、Pseudomonas発現ベクターであるpCN51 LT8、RSF1010、pWZ112T、pMYCのファミリー、Bacillus発現ベクターであるpBAX、pHT01、pHIS1525のファミリー、Streptomyces発現ベクターであるpIJ6021、pIJ2460のファミリー、およびLactococcus発現ベクターであるpNZ9530、pNZ8148のファミリー等が挙げられる。これらの例は説明のために挙げたものに過ぎず、配列番号1のポリヌクレオチド配列を発現させることのできるベクターをすべて示したものではない。
【0070】
いくつかの実施形態において、発現系は、当技術分野で知られている任意のPseudomonas fluorescens発現系、たとえば、Dow Global Technologies社から市販されているPseudomonas fluorescens発現系である菌株DC454であってもよい(米国特許出願公開第20050130160号明細書および第20050186666号明細書)。本発明のセルラーゼまたはポリペプチドをコードする核酸配列は、pMYCベクター(Dow Global Technologies社,米国特許出願公開第20050130160号明細書)またはpDOW1169ベクター(Dow Global Technologies社,米国特許出願公開第20080058262号明細書)に導入し、次いで電気穿孔法を用いて宿主であるPseudomonas fluorescensに導入する。当業者は、本発明の実施形態として使用することができる代替ベクターを理解するであろう。
【0071】
いくつかの実施形態において、セルラーゼは、少なくとも1.0g/L、2.0g/L、3.0g/L、4.0g/L、5.0g/L、6.0g/L、7.0g/L、8.0g/L、9.0g/L、10.0g/L、11.0g/L、12.0g/L、13.0g/L、14.0g/L、15.0g/L、16.0g/L、17.0g/L、18.0g/L、19.0g/L、20.0g/L、21.0g/L、22.0g/L、23.0g/L、24.0g/L、25.0g/L、26.0g/L、27.0g/L、28.0g/L、29.0g/L、30.0g/L、31.0g/L、32.0g/L、33.0g/L、34.0g/L、35.0g/L、またはそれ以上の発現レベルで発現される。
核酸
【0072】
本発明は、本明細書に開示される核酸配列に完全に相補的な配列(以下、相補的(非コード)配列もコード配列も「本明細書に開示される核酸配列」と総称する)を含む、単離、合成、または組み換えされた核酸を提供する。
【0073】
本発明は、セルロース分解活性を有する少なくとも1つのポリペプチドをコードする核酸であって、配列番号1、配列番号5、配列番号7、配列番号9、配列番号11、配列番号13、および/または配列番号15の配列を含む本明細書に開示される典型的な配列と少なくとも約50%、51%、52%、53%、54%、55%、56%、57%、58%、59%、60%、61%、62%、63%、64%、65%、66%、67%、68%、69%、70%、71%、72%、73%、74%、75%、76%、77%、78%、79%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%もしくはそれ以上の、もしくは完全な(100%の)配列同一性(相同性)を有する配列を含む核酸を含む、単離、合成、または組み換えされた核酸を提供する。たとえば、本発明は、配列番号1の核酸配列(本発明の典型的なポリヌクレオチド配列)を含む、単離、合成、または組み換えされた核酸を提供する。本発明は、配列番号2、配列番号6、配列番号8、配列番号10、配列番号12、配列番号14、および/または配列番号16に記載の配列(本発明の典型的なポリペプチド配列)ならびに酵素活性を有するそのフラグメントを含むポリペプチドをコードする、単離、合成、または組み換えされた核酸を提供する。
ポリペプチド
【0074】
本明細書に開示されたポリペプチドおよびペプチドは、単離、合成、または組み換えされたポリペプチドである。ペプチドおよびタンパク質は、インビトロまたはインビボで組み換え技術によって発現させることができる。本明細書に開示されたペプチドおよびポリペプチドは、当技術分野で知られた任意の方法によって作製して単離することができる。本明細書に開示されたポリペプチドおよびペプチドは、当技術分野でよく知られた化学的方法を用いて、その全体または一部を合成することもできる。たとえば、セルラーゼポリペプチドは、(本明細書に記載されるような)標準的な組み換え発現系で産生させたり、化学的に合成したり、または自然に発現している生物から単離したりすることができる。
【0075】
本発明は、本明細書に開示された典型的なアミノ酸配列(たとえば、配列番号2、配列番号6、配列番号8、配列番号10、配列番号12、配列番号14、および/または配列番号16)と少なくとも約50%、51%、52%、53%、54%、55%、56%、57%、58%、59%、60%、61%、62%、63%,64%、65%、66%、67%、68%、69%、70%、71%、72%、73%、74%、75%、76%、77%、78%、79%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%もしくはそれ以上の、もしくは100%の(完全な)配列同一性を有するアミノ酸配列を含み、セルロース分解活性を有する単離、合成、または組み換えされたポリペプチド、または酵素活性を有するそのフラグメントを提供する。
【0076】
本発明は、配列番号2、配列番号6、配列番号8、配列番号10、配列番号12、配列番号14、および/または配列番号16に記載の配列を含む、単離、合成、または組み換えされたポリペプチド、酵素活性を有するそのフラグメント、ならびにその変異体を提供する。
【0077】
別の実施形態において、本発明は、セルロース分解活性を有するが、シグナル配列、プレプロドメイン、ドッケリンドメイン、および/または炭水化物結合モジュール(CBM)を欠くポリペプチド(およびそれらをコードする核酸)を提供し、1つの態様において該炭水化物結合モジュール(CBM)は、セルロース結合モジュール、リグニン結合モジュール、キシラン結合モジュール、キシロース結合モジュール、マンノース結合モジュール、キシログルカン特異的モジュール、および/またはアラビノフラノシド結合モジュールを含むか、またはこれらからなる。
【0078】
別の実施形態において、本発明は、セルロース分解活性を有し、さらに異種配列を含むポリペプチド(およびそれらをコードする核酸)を提供し、1つの態様において、該異種配列は、(i)異種のシグナル配列、異種の炭水化物結合モジュール、異種のドッケリンドメイン、異種の触媒ドメイン(CD)、もしくはこれらの組合せ;(ii)前記異種のシグナル配列、炭水化物結合モジュール、もしくは触媒ドメイン(CD)が異種の酵素に由来する、(i)の配列;または(iii)タグ、エピトープ、ターゲティングペプチド、開裂配列、検出可能部分、もしくは酵素を含むか、またはこのような配列からなり、1つの態様において、該異種の炭水化物結合モジュール(CBM)は、セルロース結合モジュール、リグニン結合モジュール、キシラン結合モジュール、キシロース結合モジュール、マンノース結合モジュール、キシログルカン特異的モジュール、および/またはアラビノフラノシド結合モジュールを含むか、またはこれらからなり、1つの態様において、該異種のシグナル配列は前記コードされたタンパク質を液胞、小胞体、葉緑体、またはデンプン粒へとターゲティングするものである。
酵素作用
【0079】
本明細書に開示されたセルラーゼによるpNP−β−D−ラクトピラノシドの酵素加水分解は、配列番号2、配列番号6、配列番号8、配列番号10、配列番号12のような、ここに開示された酵素の活性の評価基準として使用することができる。p−ニトロフェノールの遊離は、分光測色法により405nmにおいて追跡することができる。405nmにおける吸光度の増加は、所定の条件下での基準吸光量を使用することによってp−ニトロフェノールのミリモル数に変換できる。活性の1単位は、pH7.00、80℃において2mMのpNP−β−D−ラクトピラノシドから1分間に0.42μmolのp−ニトロフェノールを遊離させるのに必要な酵素の量として定義される。(Advances in Carbohydrate Chemistry and Biochemistry,Academic Press,1999)
熱安定性
【0080】
いくつかの態様において、本発明の組み換えられた核酸は、熱安定性のあるセルロース分解活性を有するポリペプチドをコードする。たとえば、本明細書に開示されたポリペプチド、すなわち配列番号2、配列番号6、配列番号8、配列番号10、配列番号12、配列番号14、および/もしくは配列番号16、またはその変異体によって生じた酵素は熱安定性でありうる。本発明による熱安定性のポリペプチドは、その結合活性および/または酵素活性(たとえばセルロース分解活性等)を、37℃より高く約95℃以下の範囲、または、約55℃〜約85℃、約70℃〜約75℃、約70℃〜約95℃、約90℃〜約95℃、約95℃〜約105℃、もしくは約95℃〜約110℃の温度を含む条件下で保持することができる。いくつかの態様において、本発明による熱安定性のポリペプチドは、その結合活性および/または酵素活性(たとえばセルロース分解活性等)を、約1℃〜約5℃、約5℃〜約15℃、約15℃〜約25℃、約25℃〜約37℃を含む条件下で保持することができる。いくつかの態様において、本明細書に開示されたポリペプチドは、その結合活性および/または酵素活性(たとえばセルロース分解活性等)を、90℃、91℃、92℃、93℃、94℃、95℃、96℃、97℃、98℃、99℃、100℃、101℃、102℃、103℃、103.5℃、104℃、105℃、107℃、108℃、109℃、110℃、またはそれ以上の温度を含む条件下で保持することができる。いくつかの態様において、本発明による熱安定性ポリペプチドは、その活性(たとえばセルロース分解活性等)を、およそpH6.5、pH6、pH5.5、pH5、pH4.5、pH4.0、もしくはそれ以下のpH(より酸性)を含む酸性条件下で上記の温度範囲において酵素活性を保持するか、およそpH6.5、pH6、pH5.5、pH5、pH4.5、pH4、もしくはそれ以下のpH(より酸性)を含む酸性条件に曝された後もセルロース分解活性を保持するか、およそpH7、pH7.5、pH8.0、pH8.5、pH9、pH9.5、pH10、pH10.5、pH11、pH11.5、pH12、pH12.5、もしくはそれ以上のpH(よりアルカリ性)を含むアルカリ条件下で活性を保持するか、またはおよそpH7、pH7.5、pH8.0、pH8.5、pH9、pH9.5、pH10、pH10.5、pH11、pH11.5、pH12、pH12.5、もしくはそれ以上のpH(よりアルカリ性)を含むアルカリ条件に曝された後もセルロース分解活性を保持する。
耐熱性
【0081】
いくつかの態様において、本発明の組み換えられた核酸は、耐熱性のあるセルロース分解活性を有するポリペプチドをコードする。たとえば、本明細書に開示されたポリペプチド、すなわち配列番号2、配列番号6、配列番号8、配列番号10、配列番号12、配列番号14、および/もしくは配列番号16、またはその変異体によって生じた酵素は耐熱性でありうる。いくつかの態様において、前記セルロース分解活性は耐熱性であり、前記ポリペプチドは、そのセルロース分解活性を、37℃より高く約95℃以下の範囲、または、約55℃〜約85℃、約70℃〜約75℃、約70℃〜約95℃、約90℃〜約95℃、約95℃〜約105℃、もしくは約95℃〜約110℃の範囲の温度に曝された後も保持する。いくつかの態様において、前記ポリペプチドは、そのセルロース分解活性を、約1℃〜約5℃、約5℃〜約15℃、約15℃〜約25℃、約25℃〜約37℃の温度範囲を含む条件に曝された後も保持する。いくつかの態様において、本明細書に開示されたポリペプチドは、そのセルロース分解活性を、90℃、91℃、92℃、93℃、94℃、95℃、96℃、97℃、98℃、99℃、100℃、101℃、102℃、103℃、103.5℃、104℃、105℃、107℃、108℃、109℃、110℃、またはそれ以上の温度に曝された後も保持することができる。いくつかの態様において、本明細書に開示された核酸にコードされるポリペプチドは、そのセルロース分解活性を、およそpH6.5、pH6、pH5.5、pH5、pH4.5、pH4、もしくはそれ以下(より酸性)を含む酸性条件下で保持するか、およそpH6.5、pH6、pH5.5、pH5、pH4.5、pH4、もしくはそれ以下(より酸性)を含む酸性条件に曝された後もセルロース分解活性を保持するか、およそpH7、pH7.5、pH8.0、pH8.5、pH9、pH9.5、pH10、pH10.5、pH11、pH11.5、pH12、pH12.5、もしくはそれ以上(よりアルカリ性)を含むアルカリ条件下で活性を保持する。
セルロース消化
【0082】
いくつかの態様において、本明細書に開示された組成物および方法は、バイオマスの酵素消化において使用され、セルラーゼやヘミセルラーゼを含む様々な酵素の使用を含みうる。本発明を実施するために使用されるセルラーゼは、セルロースをグルコースへと消化することができる。いくつかの態様において、本発明を実施するために使用される組成物は、たとえばキシラナーゼ、キシロシダーゼ(たとえばβ−キシロシダーゼ)、セロビオヒドロラーゼ、および/またはアラビノフラノシダーゼ等の酵素、またはヘミセルロース、セルロースおよびリグノセルロース物質を発酵性糖および/または単糖へと消化することができるその他の酵素の混合物を含有しうる。
【0083】
本明細書に開示された酵素、たとえばエンドグルカナーゼ等は、セルロースまたは任意のβ−1,4−結合したグルカンを含有する合成物質または天然物質(任意の植物原料中に見出されるものを含む)を消化するために使用される。本明細書に開示された酵素、たとえばエンドグルカナーゼ等は、たとえばトウモロコシ、穀類、芝(たとえばSorghastrum nutans等のインディアングラス、もしくはPanicum virgatum等のキビ属等のスイッチグラス)等の植物バイオマス等のあらゆる生物源または木材もしくは木材加工副産物含む任意の供給源から得られたセルロースを消化するための市販酵素として、たとえば木材加工業、パルプ・製紙業、織物業において、また家庭用や産業用の洗浄剤中で、および/またはバイオマス廃棄物処理において使用される。
食品
【0084】
いくつかの実施形態において、本発明のセルラーゼは、動物用またはヒト用の、食品、食品添加物または栄養補助食品の前処理、改良、または消化のために使用してもよい。いくつかの実施形態において、本発明のセルラーゼは、動物用またはヒト用の、食品、食品添加物または栄養補助食品として使用してもよい。いくつかの態様において、前記セルラーゼは、消化器疾患を治療したり、あるいはその予防剤として作用する。本発明のいくつかの態様において、前記セルラーゼは消化を変化させたり、あるいは促進する。本発明のいくつかの態様において、前記セルラーゼは食物の消化を促進したり、変化させたり、あるいは補助する。本明細書に開示されるさらなる態様において、前記セルラーゼは食物の栄養価を高めたり、補助したり、あるいは変化させる。さらなる態様において、前記セルラーゼは消化管、たとえば胃および/または腸において活性を示す。
【0085】
いくつかの実施形態において、本明細書に開示されたセルラーゼは、動物用飼料または飼料用添加剤として使用してもよい。いくつかの実施形態において、本発明のセルラーゼの熱安定性および耐熱性により、塩やワックス等の第2の物質を必要とすることなくペレット形成が可能である。セルラーゼを含む飼料は、当業者に既知の任意の形態で動物に供給することができる。飼料の形態としては、送達マトリックス、ペレット、錠剤、ゲル、液剤、スプレー、細粒または散剤が挙げられるが、これらに限定はされない。
【0086】
本発明は、たとえば本明細書に開示されたポリペプチド等の熱安定性組み換えセルラーゼを含む食用酵素送達マトリックスを提供する。本発明は、セルラーゼ補助食品を動物に送達する方法を提供し、該方法は、粒状食用担体と熱安定性組み換えセルラーゼとを含むペレット(このペレットは、自体が含有するセルラーゼを水性溶媒に容易に分散させる)の形態にある食用酵素送達マトリックスを調製すること、および該酵素送達マトリックスを動物に対して投与することを含む。組み換えセルラーゼは、本明細書に開示されたポリペプチドを含むことができる。粒状食用担体は、穀物胚芽、油抽出後の胚芽、干し草、アルファルファ、オオアワガエリ、大豆皮、ヒマワリ種子粉末および小麦ミドリング粉からなる群から選択される担体を含むことができる。食用担体は、油抽出後の穀物胚芽を含むことができる。セルラーゼは、ペレット製造条件下で熱安定性を提供するために糖化することができる。送達マトリックスは、穀物胚芽とセルラーゼとを含む混合物のペレット化により形成することができる。ペレット化条件は、スチームの適用を含むことがある。いくつかの実施形態において、ペレット化条件は約80℃を超える温度の約5分間の適用を含むことがあり、この条件下で酵素は、酵素1mg当たり少なくとも約350〜900単位の比活性を保持する。
エタノールを生産する方法
【0087】
本発明は、エタノールを生産する方法を提供し、該方法は、デンプンを含有する組成物を、配列番号2、配列番号6、配列番号8、配列番号10、配列番号12、および/または配列番号14の酵素等のセルロース分解活性を有するポリペプチドと接触させることを含み、該ポリペプチドは本明細書に開示された配列を有するか、または本明細書に開示された配列を含む核酸によってコードされるポリペプチド、または酵素活性を有するそのフラグメントである。本発明は、デンプンとセルロース分解活性を有するポリペプチドとを含む組成物を提供し、該ポリペプチドは本明細書に開示された配列を有するか、または本明細書に開示された配列を含む核酸によってコードされるポリペプチド、または酵素活性を有するそのフラグメントである。
醸造および発酵
【0088】
本発明は、本明細書に開示されたセルラーゼを含む、ビールを醸造(たとえば発酵)する方法を提供する。1つの典型的な方法では、デンプンを含有する原料を分解し、処理して麦芽を形成する。本明細書に開示された酵素は、発酵プロセス中のいずれの時点で使用されてもよい。本明細書に開示されたセルラーゼは、醸造業においてβ−グルカンの分解のために使用することができる。いくつかの態様において、本明細書に開示されたセルラーゼは、醸造業において飲料の清澄化のために使用される。本明細書に開示された酵素は、たとえば米国特許第4,746,517号明細書に記載されているように、醸造業において、麦汁またはビールの濾過性を改善するために使用することができる。
【0089】
いくつかの態様において、本明細書に開示されたセルラーゼは、糖化工程および転換工程において使用される。発酵醸造業において、糖化工程および転換工程は、低い温度で行われるため、水溶性グルカン、マンナン、アラビノキシラン、キシラン、または他の多糖を十分に分解することができない。これらの重合体は、糖化麦汁の高粘度化を引き起こすことのある粘着性物質を形成し、その結果、マッシュの濾過に時間がかかり、不十分な濾過のために最終ビール製品に濁りや沈殿物が残り、抽出収量が低くなる。
【0090】
いくつかの態様において、本明細書に開示されたセルラーゼは麦芽製造所における作業に使用され、たとえば発芽時間の短縮および/または低品質の大麦から許容可能な麦芽への転換を促進したりする目的で、グルカナーゼがプロセス水に添加される。いくつかの態様において、本明細書に開示された酵素は糖化に使用され、たとえば麦汁の濾過性の向上および/または麦汁濾過(マッシュからの麦汁の分離)の改善を目的として添加される。いくつかの態様において、本明細書に開示された酵素は、たとえば濁りの除去および/または濾過性の向上を目的として発酵装置および/または沈殿槽において使用される。いくつかの態様において、本発明の酵素は付加醸造で用いられ、例えば本明細書に開示されたグルカナーゼは、オオムギ、コムギおよび/または他の穀類由来のグルカン、マンナン、アラビノキシラン、キシラン、または他の多糖(麦芽由来のグリカンもその一例である)を分解するために添加される。いくつかの態様において、本明細書に開示された酵素は麦芽の醸造に使用され、たとえば本明細書に開示されたグルカナーゼは、グルカンの含有量の高い低品質モルトの改変のために添加される。
【0091】
本明細書に開示されたセルラーゼは、たとえば米国特許第5,762,991号明細書、第5,536,650号明細書、第5,405,624号明細書、第5,021,246号明細書、第4,788,066号明細書に記載されているように、ビールやその他のアルコール飲料の任意の製造工程に使用することができる。これらの文献は、参照によりその全体が本明細書に援用される。
食品の処理および食品加工
【0092】
本明細書に開示されたセルラーゼは、食品加工業において多数の用途を有する。たとえば、1つの態様において、本明細書に開示された酵素は、たとえば油を豊富に含む種子等の、油を豊富に含む植物原料からの油の抽出(たとえば大豆からの大豆油の抽出、オリーブからのオリーブオイルの抽出、菜種からの菜種油の抽出、および/またはひまわりの種子からのひまわり油の抽出)を改善するために使用される。
【0093】
本明細書に開示されたセルラーゼは、植物細胞原料の成分を分離するために使用できる。たとえば、本明細書に開示された酵素は、グルカンを豊富に含む原料(たとえば植物細胞等)の成分を分離するために使用できる。いくつかの態様において、本明細書に開示された酵素は、グルカンを豊富に含む穀物または油を豊富に含む穀物を、価値あるタンパク質および油と外皮分画とに分離するために使用できる。分離工程は当技術分野で既知の方法を使用して実施してもよい。
【0094】
本明細書に開示されたセルラーゼは、果実や野菜のジュース、シロップ、抽出物等の調製において収量を増加させるために使用することができる。本明細書に開示された酵素は、様々な植物の細胞壁に由来する(たとえば、穀物、ワインやジュースの製造、または野菜の外皮、豆の外皮、甜菜の茎髄、オリーブの茎髄、じゃがいもの茎髄等の農業廃棄物からの)原料または廃棄物の酵素処理(たとえばグルカン含有植物原料の加水分解)において使用することができる。本明細書に開示された酵素は、加工した果実や野菜の濃度および外観を改変するために使用できる。本明細書に開示された酵素は、食物を含む植物原料の加工の迅速化、植物成分の精製または抽出の迅速化等を目的として植物原料を処理するために使用できる。本明細書に開示されたセルラーゼは、飼料の価値を高めたり、水との結合能を低下させたり、廃水プラントにおける分解性を向上させたり、植物原料のサイロ貯蔵物への変換を改善したりするために使用することができる。本明細書に開示されたセルラーゼは、果実醸造業において設備の洗浄および維持のために使用することができる。
洗剤組成物
【0095】
本発明は、本明細書に開示されたポリペプチドを1以上含む洗剤組成物、ならびにそのような組成物を製造する方法および使用する方法を提供する。本発明は、洗剤組成物を製造および使用するためのあらゆる方法を包含する。(たとえば、米国特許第6,413,928号明細書、第6,399,561号明細書、第6,365,561号明細書、第6,380,147号明細書を参照のこと。これらは参照によりその全体が本明細書に援用される。)前記洗剤組成物は、1つまたは2つの部分からなる水性組成物、非水性液体組成物、成型固体、顆粒状、微粒子状、圧縮錠剤、ゲル状および/またはペースト状、およびスラリー状であってよい。本発明はまた、これらの洗剤組成物を用いて、食物によるひどい汚れ、食物残渣の膜、およびその他の微量の食物成分を迅速に除去できる方法を提供する。本明細書に開示された酵素は、デンプン多糖の触媒的加水分解によってデンプン質の汚れの除去を促進することができる。本明細書に開示された酵素は、繊維製品用洗剤および食器用洗剤に含有させて使用することができる。実際の活性酵素含有量は洗剤組成物の製造方法に依存するが、洗剤溶液が所望の酵素活性を有するのであれば、この含有量は重要ではない。いくつかの態様において、最終溶液中に存在するグルコシダーゼの量は、洗剤組成物1g当たり約0.001〜0.5mgである。本発明の方法および製品において使用するために選択される具体的な酵素は、最終的な使用条件、たとえば製品の物理的形態、使用時のpH、使用温度、および分解または改変される汚れの種類に依存する。前記酵素は、いかなる所与の使用条件に対しても、最適な活性および安定性を提供するよう選択することができる。本明細書に開示された洗剤は、たとえば、陽イオン性、半極性非イオン性、または両性イオン性の界面活性剤またはこれらの混合物を含むことができる。
【0096】
本発明は、硬質面を洗浄する洗剤組成物、繊維製品を洗浄する洗剤組成物、食器洗浄組成物、口内洗浄組成物、義歯洗浄組成物、およびコンタクトレンズ洗浄溶液を含む洗浄組成物を提供する。いくつかの態様において、本発明は、対象物を洗浄する方法を提供し、該方法は、対象物を洗浄に十分な条件下で本明細書に開示されたポリペプチドと接触させることを含む。本明細書に開示されたポリペプチドは、洗剤用添加剤として含まれていてもよい。本明細書に開示された洗剤組成物は、たとえば、本明細書に開示されたポリペプチドを含む手洗い用または洗濯機洗い用の洗濯洗剤組成物として処方されてもよい。染みのついた繊維製品の前処理に適した洗濯用添加剤は、本明細書に開示されたポリペプチドを含むことができる。柔軟仕上げ剤組成物は、本明細書に開示されたポリペプチドを含むことができる。あるいは、本明細書に開示されたポリペプチドを、家庭での一般的な硬質面洗浄作業に使用する洗剤組成物として処方することもできる。
石油およびガスの探査および処分
【0097】
石油およびガスの坑井およびシェールガス貯留層の生産性を上げるために、「水圧破砕」と呼ばれる高度に専門的な技術が利用されるようになってきている。典型的な水圧破砕の作業では、大量のグァーベースの流体(ゲル状であり、「破砕流体」と呼ばれる)を、非常に高い静水圧下で裸坑へと注入する。加圧流体は裸坑の周囲の地層に新たな割れ目や裂け目を作り出す。破砕流体に含まれる砂の粒子は、新たに作られた割れ目や裂け目へと入り込み、これらの通路を支えて開いた状態に保ち、石油やガスの流出量を増加させる。砂が割れ目に沈着したところで、石油やガスの流れを妨げる閉塞が生じることのないよう、ゲルは分解されて地表へと戻されなければならない。業界では、粘度降下剤(酸化剤、酸、酵素等)を使用することによって破砕流体を分解し、固体状のゲル残渣を割れ目や裂け目からすべて除去している。
【0098】
典型的な石油およびガスの掘削作業において、液体はドリルシャフトを通って注入され、ドリルビットの上から出るが、このような液体を一般に「掘削流体」と呼ぶ。掘削流体は、ビットを冷却し、ビットに圧力を加え、ドリルビットを潤滑し、また掘削地点から掘削屑を除去する役割を果たす。掘削屑は、循環してドリルシャフトから出て地表へと戻る流体により、地表へと運ばれる。掘削屑を運ぶ掘削流体を、しばしば「泥水」、「スラッジ」、または「フローバック」と呼ぶ。
【0099】
泥水、スラッジ、またはフローバック中に見出される一般的な物質は、岩、砂、および掘削流体中に存在する油や石油のような種々の炭化水素である。泥水やスラッジはしばしば多くの塩分を含むが、この含有量は掘削の行われる場所に依存する。掘削流体に含まれる塩分は、海の平均塩分(1000部当たりおよそ35部)に近いか、それよりもさらに高いことが多い。さらに、泥水やスラッジは毒素や重金属を含むことがわかっており、これらもまたスラッジを汚染している。
【0100】
平均的な掘削工程では、2週間の期間にわたって1日当たり300,000バレルの泥水、スラッジ、フローバックが生じ、これは、掘削した1つの坑井当たり4,200,000バレルの泥水やスラッジに相当する。掘削工程で生じた泥水、スラッジ、またはフローバックに対しては、一般に、船による輸送、一時的貯蔵、処理、および/または挿入井への投棄等がなされる。
【0101】
いくつかの実施形態において、本明細書に開示されたセルラーゼは、石油やガスの作業を促進するための高温粘度降下剤として使用してもよい。より具体的には、本発明において開示されたセルラーゼは、石油やガスの坑井において水圧破砕が実施される際の破砕流体に適用される。
【0102】
配列番号1にコードされる酵素のみならず、本明細書に開示されたその他のポリヌクレオチド、たとえば配列番号5、配列番号7、配列番号9、配列番号11、配列番号13、および/または配列番号15によってコードされるセルラーゼおよびアミラーゼ、または本明細書に開示された方法により得られる酵素は、広範囲の多糖の加水分解に使用できる可能性があり、その多くが石油やガスの掘削、破砕、および坑井浄化作業において有用である。開示されたセルラーゼは、広範囲のβ−グリコシダーゼ活性、たとえばグァー、ヒドロキシプロピルグァー、カルボキシメチルグァー、カルボキシメチルヒドロキシプロピルグァー、カルボキシメチルセルロース、大麦β−グルカン、およびローカストビーンガムに対するβ−グリコシダーゼ活性を示す。酵素の活性パターンはエンドとエクソの両方であることが好ましく、これにより、多糖内で長い鎖の途中を切断することによって、また重合体の末端から二糖単位を切断することによって、多糖、たとえばグァーやグァー誘導体の溶液の粘度を効果的に低下させることができる。前述の多糖に加えて、開示された酵素の他の基質には、直鎖または架橋のゲルを形成することの可能な基質が含まれる。適切な多糖基質としては、ガラクトマンナンガム、グァー、グァー誘導体、セルロースおよびセルロース誘導体、デンプン、デンプン誘導体、キサンタン、キサンタン誘導体、ならびにこれらの混合物が挙げられる。具体例としては、グァーガム、グァーガム誘導体、ローカストビーンガム、カラヤガム、キサンタンガム、セルロース、セルロース誘導体等が挙げられるが、これらに限定はされない。開示の酵素が対象とする典型的な重合体またはゲル化剤としては、グァーガム、ヒドロキシプロピルグァー、カルボキシメチルヒドロキシプロピルグァー、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ジアルキルカルボキシメチルセルロース等が挙げられる。重合体の別の例としては、ホスホマンノース、スクレログルカン、デキストラン、および他のタイプの重合体が挙げられるが、これらに限定はされない。いくつかの実施形態において、重合体基質はカルボキシメチルヒドロキシプロピルグァーである。いくつかの実施形態において、開示の酵素はバイオガム(たとえば、デーツシロップやスクロースから作られたサクシノグリカンバイオガム)の加水分解にも効果的である。いくつかの実施形態において、開示の酵素をセルロース含有重合体、またはセルロース誘導体含有重合体の加水分解に使用してもよい。このような酵素は、典型的には、セルロースの主鎖のグルコシド結合を攻撃する。開示の酵素は、重合体をほぼ単糖単位へと分解することに適しているかもしれない。この分解は、場合によっては、任意のセロビオースフラグメントの(1,4)−β−D−グルコシド結合における単糖単位とセルロースの主鎖との間のエキソ(1,4)−β−D−グルコシド結合およびエンド(1,4)−β−D−グルコシド結合の特異的加水分解によって行われる。
【0103】
開示されたセルラーゼを使用する各破砕作業において、現場の作業者が一般的に最初に行うことは、産業研究所において酵素使用量の最適化を検討することであろう。このような研究は、セルラーゼを10〜400ppmの濃度に希釈して直鎖または架橋のグァーガム(25〜60ポンド/1,000ガル)と混合することを含んでもよい。実際の使用条件によっては、架橋剤を使用してグァーガムを架橋してもよく、これは特に高温、高圧、かつpHの高い条件下の坑井に当てはまる。このような最適化検討から得られた酵素使用量に関する情報を、次いで実際の破砕作業に使用してもよい。
【0104】
開示されたセルラーゼに特有の活性は、高温かつ高pH条件の存在する深井戸中でグァーベースの破砕流体を制御下でスムーズに加水分解することを可能にする。化学的な分解剤と比較して、本発明において開示されたセルラーゼは、非選択的な強い化学的分解剤の代わりに、非腐食性の、環境に無害な代替手段を提供する。
【0105】
本発明のいくつかの実施形態において、前記セルラーゼは、石油やガスの探査活動において使用された流体の処理、洗浄、または改変に使用してもよい。さらなる態様において、本発明のセルラーゼは、流体を部分的にまたは完全に処理または改変し、その結果、該流体の再使用、再生使用、さらなる石油やガスの探査活動における使用、または環境にやさしい方法での処分が可能となる。
【0106】
本発明は、石油やガスの探査および掘削作業によって発生した戻り流体を処理するための組成物および多糖分解酵素の使用方法を提供する。いくつかの態様において、本明細書に開示される組成物および方法は、戻り流体中に存在する、デンプンおよびグァーガムであってもよい多糖を、戻り流体に多糖分解酵素を添加することによって分解するために使用される。
【0107】
いくつかの実施形態において、本発明の方法に使用される酵素は、石油やガスの探査および掘削作業によって発生した戻り流体を処理するためのセルラーゼ、アミラーゼ、またはこれらの組合せである。
【0108】
いくつかの実施形態において、本明細書に説明されたアミラーゼおよびセルラーゼを含む本明細書に開示された組成物が、戻り流体に添加される。いくつかの実施形態において、本明細書に開示された組成物および方法は環境的トリガー工程(たとえばpH、塩分または機械的処理系工程)を含み、該トリガー工程により、本明細書に説明されたアミラーゼおよびセルラーゼを含む本明細書に開示された組成物が活性化される。
【0109】
本明細書に開示された酵素含有組成物は、様々な形態、たとえば、液剤、ゲル剤、丸剤、錠剤、スプレー剤、散剤、ペレット剤、またはナノカプセルの形態を含むカプセル形態で製剤化することができる。
坑井仕上
【0110】
油やガスを含む地層の壁は、掘削孔を掘る工程の間、露出状態にある。裸孔を首尾よく完成させるためには、裸孔の壁を低透過性の濾過ケークで被覆し、掘削ビットによって露出した透過性の地層をシールすることが必要である。濾過ケークは、裸孔からの掘削流体の損失を制限し、また裸孔に浸透する流体によって起こりうる損傷から天然の地層を保護することができる。戻り流体中の固体(具体的には掘削による微粉)もまた、地層を損傷するおそれがある。ケークが確立されていく間に地層に入り込む微粒子の懸濁液は「噴出泥水」として知られ、その後に入り込む液体は「濾液」として知られている。濾過ケークを形成するには、掘削流体は、地層の孔の開口部よりわずかに小さいサイズの粒子を含んでいる必要がある。このような粒子は架橋粒子として知られており、表面の孔に捕捉されることによって地層の孔を覆うように架橋する。濾過ケークを形成する流体は、架橋粒子を封入することによって固体を懸濁させ、また濾過ケークを通過する液体の損失を減少させるための重合体を含むこともできる。この重合体は天然の重合体であっても合成された重合体であってもよい。重合体としては、その流動特性から選択されるキサンタンのような第1の重合体および流体損失を減少させる目的で選択される第2の重合体(たとえばデンプン)を含むことができる。掘削またはその他の坑井処理の完了時には、地層流体の産生および地層へのセメントの接着を可能にするため、濾過ケークを除去する必要がある。沈着した濾過ケークの除去は、地層内の透過率を回復させるために、できる限り完全に実施されなければならない。一般に、濾過ケークが裸孔から除去される際、濾過ケークを形成するために使用された重合体のうちいくつかは、元の状態のまま戻り流体に含まれて地表へと運ばれる。
水圧破砕
【0111】
水圧破砕法では、水性の破砕流体が、圧力下で掘削孔に注入される。注入された流体は、圧力によって地層の亀裂、割れ目、裂け目に入り込み、そのような開口部をさらに押し拡げる。押し拡げられた亀裂、割れ目、裂け目に、流体に含まれていたプロパント物質が食い込み、その結果、圧力が低下した後も、亀裂、割れ目、裂け目は開かれた状態に保たれ、地層の透過性は向上する。注入された破砕流体は、地下水、ガス、および地下環境に存在するその他の物質と混じり合う。
【0112】
圧力が除去されると、この混合流体は地表へと戻り、そこからガスが抽出される。抽出後の破砕流体混合物は「戻り流体」と呼ばれるが、これは石油やガスの掘削破砕作業を経て戻り、回収された水および破砕流体である。この戻り流体は、典型的には坑井に注入された流体の体積の10〜60%となり、破砕後数日、数週間、またはそれより長い期間をかけて戻る。破砕流体のかなりの量が地層中に残りうる。ある時点において、破砕流体の回収から生成した水の回収へと移行する。マーセラスシェール層における典型的な破砕作業では、ポンプで送る段階の数によるが、20,000〜150,000バレルの破砕流体が必要とされる。40,000バレルの破砕流体を送るプロジェクトにおいて、回収される戻り流体は50%、すなわち20,000バレルとなりうる。破砕後数週間の初期の回収の後、さらに10,000〜30,000バレルの戻り液体が、2年間にわたって坑井から流れて来るかもしれない。
【0113】
戻り液体は、水と坑井に注入された破砕化学物質とからなり、このような化学物質にはグァーガム、プロパント、および架橋剤、さらには岩石層の水中に存在する不純物も含まれるが、これらに限定はされない。地層に含まれる水に自然の塩分が存在することに加えて、破砕工程で坑井に注入される水が地層に含まれる塩類を溶かす傾向にあることから、戻り液体の塩分は増加することとなる。
処理システム
【0114】
米国特許第4,536,293号明細書、米国特許第5,093,008号明細書、米国特許第6,132,619号明細書、米国特許第4,896,665号明細書、米国特許第6,110,382号明細書、米国特許第4,465,598号明細書、および米国特許第7,754,080号明細書は、参照によりその全体が本明細書に援用され、掘削工程および石油発見工程による戻り液体の処理方法を開示する。この方法、および戻り流体を処理するために使用される他の濾過方法には、詰まりを引き起こす可能性がある。戻り流体を処理するシステムおよび/またはフィルタ(逆浸透フィルタを含むが、これに限定はされない)は、戻り流体を処理する際に、戻り流体の粘度および/または流量が原因となって詰まりを引き起こしたり、処理が非効率的になったりする傾向がある。
戻り流体の処理
【0115】
本発明は、本明細書に記載の1以上の酵素または酵素カクテルを使用する方法を提供し、該方法は、粘性のあるデンプン含有成分または多糖成分を分解することによって、掘削および探査の作業によって生じた戻り流体を処理する、または処理の1工程となるものである。したがって、この方法は、戻り流体の粘度および/または流量を減少させる。
【0116】
いくつかの態様において、本発明は、水性流体と本発明を実施するためのポリペプチドとを混合することによって(本発明を実施するために使用される酵素を用いた)酵素処理剤を処方すること、戻り流体に該酵素処理剤を添加すること、および該酵素処理剤によって戻り流体中の粘度の高い多糖物質を分解することを含み、該酵素処理剤は、そのような流体のデンプン成分および/または多糖成分の分解または加水分解に有効なものである。
【0117】
いくつかの実施形態において、本発明を実施するために使用されるポリペプチドは、回収された流体すなわち戻り流体中の結合を切断する能力を有してもよい。いくつかの実施形態において、酵素は粘度を減少させたり戻り流体の流量を増加させる能力を有してもよい。
【0118】
いくつかの実施形態において、本発明を実施するために使用されるポリペプチドは、戻り流体を処理するために使用されるシステムにおける詰まりの可能性を減少させる。
【0119】
いくつかの実施形態において、本発明を実施するために使用されるポリペプチドは、戻り流体を処理するために使用されるシステムまたは装置に添加される。いくつかの実施形態において、本発明を実施するために使用されるポリペプチドは、既知の戻り流体処理剤を強化するために、戻り流体に添加される。
【0120】
いくつかの実施形態において、本明細書に開示された発明を実施するために使用されるポリペプチドは、戻り流体を処理するために使用される微生物と組み合わせて使用される。
【0121】
いくつかの実施形態において、酵素は戻り流体中の物質を分解するために使用される。
【0122】
別の一実施形態において、酵素は濾過ケークまたは戻り流体中の破砕物質を分解するために使用される。
【0123】
いくつかの実施形態において、記載の本発明を実施するために使用されるポリペプチドは、酵素を安定化させるため、熱安定性およびアルカリpH耐性を向上させるため、ならびに制御放出を提供するために封入されてもよい。分解剤封入組成物およびその方法の例は、米国特許第5,164,099号明細書、米国特許第6,163,766号明細書、米国特許第5,373,901号明細書、米国特許第5,437,331号明細書、および米国特許第6,357,527号明細書に記載され、これらの開示内容は参照により本明細書に援用される。
【0124】
いくつかの実施形態において、本発明を実施するために使用されるポリペプチドは、加水分解される被覆または膜に封入されており、それによってこれまで得られなかったような良好な放出時間制御および扱いやすさが実現される。たとえば、本発明を実施するために使用されるポリペプチドは、単に水中に溶解または分散されているのではなく、水と反応する物質に封入されているため、その放出は、被覆と水との反応速度によって制御できる。また、本発明を実施するために使用されるポリペプチドは、厳しい条件(高温および高pH)から一定時間防護されるので、分解を遅延させることができる。当業者は、採用する封入重合体の化学的性質に依存して、被覆の反応速度(およびそれによる分解剤放出プロファイル)を幅広く変えられることを理解するであろう。
【0125】
いくつかの実施形態において、セルラーゼやアミラーゼ等の本明細書で開示された酵素は耐熱性および/または熱安定性を有し、たとえば、95℃に2分間曝された後に、少なくとも75%の残存活性(たとえばグルカナーゼ活性)を保持し、別の一態様においては、95℃で30分間加熱された後に、100%の活性を保持している。また別の一態様において、前記酵素は、96℃、97℃、98℃または99℃で30分間加熱された後に、100%の活性を保持している。また別の一態様において、開示のセルラーゼは、100℃で30分間加熱された後に、少なくとも90%の活性を保持している。
【0126】
いくつかの実施形態において、本明細書に記載されたセルラーゼは、グルカナーゼ活性、たとえばエンドグルカナーゼ、マンナナーゼ、キシラナーゼの活性、またはこれらの活性の組合せを有する。いくつかの態様において、前記グルカナーゼ活性はエンドグルカナーゼ活性(エンド−1,4−β−D−グルカン4−グルカノヒドロラーゼ活性)であり、セルロース、セルロース誘導体(たとえば、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース)、リケニンに含まれる1,4−β−D−グルコシド結合、ならびにたとえば穀物β−Dグルカンやキシログルカンとセルロース部分を有するその他の植物原料とで構成される混合β−1,3グルカンにおけるβ−1,4結合の加水分解を含む。別の態様において、これらのグルカナーゼ、たとえばエンドグルカナーゼ、マンナナーゼ、キシラナーゼ等は、pHや温度の増減にかかわらず、より強い活性およびより高い安定性(耐熱性や熱安定性等)を有する。
【0127】
本明細書に開示された適切な多糖基質としては、ガラクトマンナンガム、グァー、グァー誘導体、セルロースおよびセルロース誘導体、デンプン、デンプン誘導体、キサンタン、キサンタン誘導体、ならびにこれらの混合物が挙げられる。具体例としては、グァーガム、グァーガム誘導体、ローカストビーンガム、カラヤガム、キサンタンガム、セルロース、セルロース誘導体等が挙げられるが、これらに限定はされない。開示の酵素が対象とする典型的な重合体増粘剤またはゲル化剤としては、グァーガム、ヒドロキシプロピルグァー、カルボキシメチルヒドロキシプロピルグァー、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ジアルキルカルボキシメチルセルロース等が挙げられる。重合体の別の例としては、ホスホマンノース、スクレログルカン、デキストラン、および他のタイプの重合体が挙げられるが、これらに限定はされない。いくつかの実施形態において、重合体基質はカルボキシメチルヒドロキシプロピルグァーである。いくつかの実施形態において、開示の酵素はバイオガム(たとえば、デーツシロップやスクロースから作られたサクシノグリカンバイオガム)の加水分解にも効果的である。いくつかの実施形態において、開示の酵素をセルロース含有重合体、またはセルロース誘導体含有重合体の加水分解に使用してもよい。このような酵素は、典型的には、セルロースの主鎖のグルコシド結合を攻撃する。開示の酵素は、重合体をほぼ単糖単位へと分解することに適しているかもしれない。この分解は、場合によっては、任意のセロビオースフラグメントの(1,4)−β−D−グルコシド結合における単糖単位とセルロースの主鎖との間のエキソ(1,4)−β−D−グルコシド結合およびエンド(1,4)−β−D−グルコシド結合の特異的加水分解によって行われる。
用語の定義:
【0128】
「セルラーゼ」とは、セルラーゼ、エンドグルカナーゼ、セロビオヒドロラーゼ、β−グルコシダーゼ、キシラナーゼ、マンナナーゼ、β−キシロシダーゼ、アラビノフラノシダーゼおよび/またはオリゴメラーゼの活性を有する酵素を言う。
【0129】
「セルロース分解活性」とは、セルラーゼ、エンドグルカナーゼ、セロビオヒドロラーゼ、β−グルコシダーゼ、キシラナーゼ、マンナナーゼ、β−キシロシダーゼ、アラビノフラノシダーゼおよび/またはオリゴメラーゼの活性を有する酵素を言う。
【0130】
「コドン」とは、3つのヌクレオチドからなる配列を言い、これによってタンパク質に付加されるアミノ酸が特定される。
【0131】
「サイレント変異」とは、アミノ酸の指定に影響を与えない、コドンの変異を言う。
【0132】
「オープンリーディングフレーム」とは、タンパク質中のアミノ酸配列を指定する連続したコドンを言う。
【0133】
塩基「位置」とは、ポリヌクレオチド配列における塩基の位置を数値的に表したものであり、オープンリーディングフレームの開始位置または他の何らかの指示標識から数えた通し番号を言う。
【0134】
タンパク質を「コードする」とは、タンパク質中のアミノ酸配列を指定することを意味する。
【0135】
「変異」とは、ヌクレオチド配列またはアミノ酸配列における、基準からの変化を言う。
【0136】
「ヌクレオチド」とは、DNA配列を構成する4つの塩基、すなわちアデニン(A)、チミジン(T)、グアニジン(G)、シトシン(C)のいずれかを指す。
【0137】
「Thermotoga maritimaのゲノム配列」とは、GenBankの登録番号AE000512によって指定される、Thermotoga maritimaの菌株MSB8のゲノムの配列を言う。
【0138】
タンパク質の「発現レベル」とは、形質転換細胞培養物のような発現系によって産生され、細胞培養物の単位体積当りで測定されたタンパク質の量を言う。
【0139】
酵素の「発現レベル」とは、形質転換細胞培養物のような発現系によって産生され、細胞培養物の単位体積当りで測定された酵素活性の量を言う。
【0140】
「野生型」とは、自然界において得ることのできるタンパク質または核酸配列を言う。
以下、本発明の実施形態を示す。
(1)配列番号1のヌクレオチド配列。
(2)タンパク質をコードする、(1)に記載のヌクレオチド配列。
(3)Thermotoga maritimaに由来するセルラーゼをコードするヌクレオチド配列であって、T6C、T9C、T15G、A22C、G24T、A33C、A39C、A40C、A42C、A54C、A57C、T66C、G81A、A84C、A6C、G6C、A9C、G9C、A15G、C15G、T22C、G22C、A24T、C24T、T33C、G33C、T39C、G39C、T40C、G40C、T42C、G42C、T54C、G54C、T57C、G57C、A66C、G66C、C81A、T81A、T84C、G84C、またはこれらの任意の組合せから選択される少なくとも1つの変異を含むヌクレオチド配列。
(4)T6C、T9C、T15G、A22C、G24T、A33C、A39C、A40C、A42C、A54C、A57C、T66C、G81A、A84C、A6C、G6C、A9C、G9C、A15G、C15G、T22C、G22C、A24T、C24T、T33C、G33C、T39C、G39C、T40C、G40C、T42C、G42C、T54C、G54C、T57C、G57C、A66C、G66C、C81A、T81A、T84C、G84C、またはこれらの任意の組合せから選択される少なくとも1つの変異を含む、配列番号3のヌクレオチド配列。
(5)少なくとも1つの変異がサイレントである、(3)または(4)に記載のヌクレオチド配列。
(6)(3)または(4)のヌクレオチド配列であって、少なくとも1つの変異の結果、該ヌクレオチド配列による前記セルラーゼの発現が、少なくとも1つの前記変異を欠くもののそれ以外は(3)または(4)のヌクレオチド配列と同一である配列と比べて高レベルとなっているヌクレオチド配列。
(7)Thermotoga maritimaに由来するヌクレオチド配列であって、少なくとも1つの変異を有し、自体がコードするタンパク質の発現が、Thermotoga maritimaの野生型ゲノム配列と比べて高レベルであるヌクレオチド配列。
(8)前記変異がサイレントである、(7)に記載のヌクレオチド配列。
(9)配列番号2のポリペプチドをコードする第1のヌクレオチド配列であって、配列番号2をコードする第2のヌクレオチド配列に対して変異を有し、その結果前記タンパク質の発現が、該第2のヌクレオチド配列にコードされる前記タンパク質の発現と比べて高レベルとなっているヌクレオチド配列。
(10)配列番号2と少なくとも50%、60%、70%、80%、90%、95%、97%、98%、99%もしくは100%一致するタンパク質またはそのフラグメントをコードするヌクレオチド配列であって、T6C、T9C、T15G、A22C、G24T、A33C、A39C、A40C、A42C、A54C、A57C、T66C、G81A、A84C、A6C、G6C、A9C、G9C、A15G、C15G、T22C、G22C、A24T、C24T、T33C、G33C、T39C、G39C、T40C、G40C、T42C、G42C、T54C、G54C、T57C、G57C、A66C、G66C、C81A、T81A、T84C、G84C、またはこれらの任意の組合せから選択される少なくとも1つの変異を含む、ヌクレオチド配列。
(11)セルラーゼ活性を有するポリペプチドをコードする、(1)、(2)、(3)、(4)、(5)、(6)、(7)、(8)、(9)または(10)のヌクレオチド配列。
(12)(11)のヌクレオチド配列を含む細菌発現系。
(13)グラム陰性菌発現系である、(12)に記載の細菌発現系。
(14)グラム陰性菌がPseudomonas、E.coli、RalstoniaまたはCaulobacter発現系である、(13)に記載のグラム陰性菌発現系。
(15)Pseudomonas発現系がPseudomonas fluorescens発現系である、(14)に記載のグラム陰性菌発現系。
(16)セルラーゼが少なくとも1.0g/L、2.0g/L、3.0g/L、4.0g/L、5.0g/L、6.0g/L、7.0g/L、8.0g/L、9.0g/L、10.0g/L、11.0g/L、12.0g/L、13.0g/L、14.0g/L、15.0g/L、16.0g/L、17.0g/L、18.0g/L、19.0g/L、20.0g/L、21.0g/L、22.0g/L、23.0g/L、24.0g/L、25.0g/L、26.0g/L、27.0g/L、28.0g/L、29.0g/L、30.0g/L、31.0g/L、32.0g/L、33.0g/L、34.0g/Lまたは35.0g/L生成される、(12)に記載の発現系。
(17)シグナル配列、前駆タンパク質配列、プロモーター配列およびこれらの任意の組合せをいずれも含まないアミノ酸配列を有する、配列番号2のポリペプチド。
(18)異種配列をさらに含む、配列番号2に記載のポリペプチド。
(19)前記異種配列が、シグナル配列、タグ、エピトープ、プロモーター配列、N末端伸長、C末端伸長、およびこれらの任意の組合せからなる群から選択される、(18)に記載のポリペプチド。
(20)少なくとも1つの第2の酵素をさらに含む、(18)に記載のポリペプチド。
(21)配列番号2のポリペプチドを含み、第2の酵素をさらに含む、組成物。
(22)前記第2の酵素が、ラクターゼ、リパーゼ、プロテアーゼ、カタラーゼ、キシラナーゼ、セルラーゼ、グルカナーゼ、マンナナーゼ、アミラーゼ、アミダーゼ、エポキシドヒドロラーゼ、エステラーゼ、ホスホリパーゼ、トランスアミナーゼ、アミンオキシダーゼ、セロビオヒドロラーゼ、アンモニアリアーゼ、およびこれらの任意の組合せからなる群から選択される、(21)に記載の組成物。
(23)配列番号1を含む核酸配列を有する、単離、組み換え、または合成により得られたヌクレオチドであって、該核酸配列が、セルラーゼ活性を有するポリペプチドをコードする、ヌクレオチド。
(24)配列番号1の核酸配列を含む、単離、組み換え、または合成により得られたヌクレオチドであって、該核酸配列がセルラーゼ活性を有するポリペプチドをコードし、該ポリペプチドが配列番号2のアミノ酸配列または酵素活性を有するそのフラグメントを含む、ヌクレオチド。
(25)単離、組み換え、または合成により得られた、セルラーゼ活性を有するポリペプチドをコードする、配列番号1を含む核酸配列であって、該ポリペプチドが配列番号2のアミノ酸配列を含み、組み換えPseudomonas fluorescens発現系で産生される、核酸配列。
(26)石油またはガスの操業によって使用されたまたは生じた戻り流体を処理する方法であって、
(a)戻り流体に酵素または酵素処理剤を供給することと、
(b)前記酵素または酵素処理剤によって、戻り流体中の多糖またはデンプンを含む物質を分解することとを含み、
前記酵素または酵素処理剤が、前記戻り流体中の前記多糖またはデンプンを含む物質の分解または加水分解に有効である、方法。
(27)前記酵素がアミラーゼおよび/またはセルラーゼである、(26)に記載の方法。
(28)前記アミラーゼが、配列番号16と少なくとも約50%、51%、52%、53%、54%、55%、56%、57%、58%、59%、60%、61%、62%、63%,64%、65%、66%、67%、68%、69%、70%、71%、72%、73%、74%、75%、76%、77%、78%、79%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%もしくはそれ以上の、もしくは完全な(100%の)配列同一性を有するアミノ酸配列を有するポリペプチドまたは酵素活性を有するそのフラグメントを含む、(27)に記載の方法。
(29)前記セルラーゼが、配列番号4、6、8、10、12および/または14と少なくとも約50%、51%、52%、53%、54%、55%、56%、57%、58%、59%、60%、61%、62%、63%,64%、65%、66%、67%、68%、69%、70%、71%、72%、73%、74%、75%、76%、77%、78%、79%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%もしくはそれ以上の、もしくは完全な(100%の)配列同一性を有するアミノ酸配列を有するポリペプチドまたは酵素活性を有するそのフラグメントを含む、(27)に記載の方法。
(30)重合体増粘剤、界面活性剤、熱安定剤、および超好熱性細菌に由来する野生型セルラーゼまたはその変異体を含む酵素分解剤を含む、組成物。
(31)前記増粘剤が、直鎖グァー、架橋グァー、またはこれらの混合物を含むグァーゲルである、(30)に記載の組成物。
(32)前記酵素分解剤が前記グァーゲル中のβ−1,4−グリコシド結合を特異的に加水分解する、(30)に記載の組成物。
(33)前記酵素分解剤が前記グァーゲル中のα−1,6−グリコシド結合の特異的な加水分解をしない、(30)に記載の組成物。
(34)前記酵素分解剤が、前記グァーゲル中のβ−1,4−グリコシド結合に対する加水分解能を、華氏約275度以下の温度において保持する、(30)〜(33)のいずれかに記載の組成物。
(35)前記酵素分解剤が、前記グァーゲル中のβ−1,4−グリコシド結合に対する加水分解能を、約11以下のpHにおいて保持する、(32)〜(34)のいずれかに記載の組成物。
(36)前記酵素分解剤が配列番号2を有する、(30)に記載の組成物。
(37)前記酵素分解剤が配列番号1を有するポリヌクレオチドにコードされる、(30)に記載の組成物。
(38)前記酵素分解剤が野生型セルラーゼの変異体であり、pH約6.5では野生型セルラーゼの融点より少なくとも華氏20度高い融点を有し、pH約10.5では野生型セルラーゼの融点より少なくとも華氏10度高い融点を有する、(30)〜(35)のいずれかに記載の組成物。
(39)エステルをさらに含む、(30)〜(38)のいずれかに記載の組成物。
(40)前記エステルが、酢酸エチル、酢酸2−エトキシエチル、アセト酢酸エチル、安息香酸メチル、ギ酸エチル、酢酸メチルおよびフタル酸ジメチルからなる群から選択される、(30)〜(38)のいずれかに記載の組成物。
(41)配列番号1にコードされるポリペプチドを含む、飼料または飼料用添加剤。
【実施例】
【0141】
実施例1−配列番号2とエステルとの使用
レオロジー試験として、GraceM5600 HPHTレオメータを使用し、2つの試料について分析を行った。試料の一方は配列番号2によってコードされたセルラーゼを含み、他方は酵素を含まない対照である。分析条件は、次の通りである。
試料1:配列番号2によってコードされたセルラーゼ200ppm、エステル0.25pptg、および架橋グァー25pptgを含有、pH10.5、華氏180度
試料2:エステル0.25pptgおよび架橋グァー25pptgを含有、pH10.5、華氏180度
図1に示すように、配列番号2によってコードされたセルラーゼとエステルとを含むpH10.5、華氏180度の試料(下側の線)は、ほぼ0センチポアズ(cP)に達したが、酵素を含まない対照試料(上側の線)は、500cPの粘度を維持した。
実施例2−高発現変異体の作成方法
【0142】
DNAレベルにおける変異によって遺伝子発現を増強させるため、配列番号3に基づいて2つの変異体(配列番号1および配列番号4)を設計した。設計に際し、遺伝子発現に影響を及ぼしうる多くの要因を考慮した。変異の導入は、当技術分野において既知であるPCRの技術により、PCRプライマーを用いて実施した。2つの遺伝子をPCRによって増幅し、標準的な分子クローニング技術を用いて、シュードモナスベクターpDOW1169(DOW AgroSciences社、インディアナ州)にクローニングした。得られた発現コンストラクトをPseudomonas fluorescens)DC454(DOW AgroSciences社、インディアナ州)に導入して、形質転換体を作製した。配列番号1を有する形質転換体を、発現が最も増強されたことからリードと名づけた。
実施例3−配列番号1、配列番号3、および配列番号4を含むコンストラクトによって発現された配列番号2のポリペプチドの発現レベルを視覚化するための、SDS−PAGEゲル電気泳動法および非特異タンパク質染色法の使用
【0143】
Criterion(登録商標)プレキャストTris−HClポリアクリルアミドゲル(Bio−rad Laboratories社)を用いてタンパク質を分離した。ゲル泳動は、トリス/グリシンバッファーを用い、150Vで実行した(図1を参照のこと)。ロードするタンパク質をノーマライズするため、各レーンに対し、OD600が0.33となる細胞のタンパク質をロードした。SeeBlue(登録商標)染色タンパク質標準(Life Technologies社)を使用した。ゲルを非特異的染料によって染色し、各レーンの約37キロダルトンにおける、配列番号2のサイズのバンドの有無を目視で確認した。
【0144】
その結果、試料ごとに蓄積レベルが異なる1つのバンドが検出され、このバンドは陰性対照では検出されなかった。このバンドは、配列番号2であることが見込まれるサイズを有している。
【0145】
このバンドの蓄積レベルは、配列番号1を含むコンストラクトを有する細胞から得たタンパク質抽出物に相当するレーンにおいて顕著に高く、配列番号4では低下し、配列番号3や陰性対照ではさらに低い。
実施例4−変異体の相対発現レベルを測定する方法
【0146】
配列番号1、配列番号3、および配列番号4の遺伝子を含む核酸配列それぞれを適切な宿主細胞に導入し、配列番号2のタンパク質を発現させるための形質転換体を得た。コードされたタンパク質が発現するよう、細胞をフラスコ内で培養した。培養物は、設計された複合培地中、OD600が0.9になるまで30℃、220rpmで増殖させ、0.3mM IPTG(イソプロピルβ−D−1−チオガラクトピラノシド)による誘導を24時間実施した。細胞を採取し、超音波処理または80℃における1時間の熱処理によって溶解させた。セルラーゼ活性は、基質としてpNP−β−D−ラクトピラノシドを用いたp−ニトロフェニル(pNP)に基づく分析によって測定した(Advances in Carbohydrate Chemistry and Biochemistry,Academic Press,1999)。図2に示すように、活性レベルはU/mlとして測定し、各培養物の相対発現レベルを決定した。
【0147】
その結果、配列番号1を含むコンストラクトを有する細胞が配列番号4を有するものよりも配列番号2の活性において顕著に高値を示すこと、ならびに配列番号1および4がいずれも配列番号3を有する細胞よりも高い活性を示すことがわかった。
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【配列表】
[この文献には参照ファイルがあります.J-PlatPatにて入手可能です(IP Forceでは現在のところ参照ファイルは掲載していません)]