特許第6386444号(P6386444)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6386444環状ホスホネート化合物およびその製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6386444
(24)【登録日】2018年8月17日
(45)【発行日】2018年9月5日
(54)【発明の名称】環状ホスホネート化合物およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
   C07F 9/6574 20060101AFI20180827BHJP
   C07B 61/00 20060101ALI20180827BHJP
   C08K 5/53 20060101ALI20180827BHJP
   C08L 101/00 20060101ALI20180827BHJP
   C09K 21/12 20060101ALI20180827BHJP
【FI】
   C07F9/6574 ZCSP
   C07B61/00 300
   C08K5/53
   C08L101/00
   C09K21/12
【請求項の数】10
【全頁数】21
(21)【出願番号】特願2015-508744(P2015-508744)
(86)(22)【出願日】2014年3月20日
(86)【国際出願番号】JP2014059059
(87)【国際公開番号】WO2014157598
(87)【国際公開日】20141002
【審査請求日】2015年8月20日
【審判番号】不服2017-5444(P2017-5444/J1)
【審判請求日】2017年4月17日
(31)【優先権主張番号】特願2013-69061(P2013-69061)
(32)【優先日】2013年3月28日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000003001
【氏名又は名称】帝人株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100169085
【弁理士】
【氏名又は名称】為山 太郎
(72)【発明者】
【氏名】山中 克浩
【合議体】
【審判長】 佐々木 秀次
【審判官】 瀬良 聡機
【審判官】 瀬下 浩一
(56)【参考文献】
【文献】 特開2004−18382(JP,A)
【文献】 特開2004−35469(JP,A)
【文献】 特開2004−18383(JP,A)
【文献】 特開2004−35470(JP,A)
【文献】 特開2001−253888(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07F,C07B61/00
CAPLUS,REGISTRY STN
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)で表される環状ホスホネート化合物の混合物であって、該化合物の混合物の全含有ハロゲン分が80ppm以下であることを特徴とする環状ホスホネート化合物の混合物。
【化1】
(式中、X、Xは同一もしくは異なり、下記一般式(2)で表される芳香族置換アルキル基である。)
【化2】
(式中、ALは不飽和結合を含有しても良い炭素数2〜3の脂肪族炭化水素基であり、Arは水酸基を有しても良いフェニル基である。nは1〜2の整数を示し、ArはAL中の任意の炭素原子に結合することができる。)
【請求項2】
前記一般式(1)記載の環状ホスホネート化合物の混合物が下記一般式(9)および下記一般式(10)で表される環状ホスホネート化合物の混合物であることを特徴とする請求項1記載の環状ホスホネート化合物の混合物。
【化3】
(式中、R31、R33は同一又は異なっていても良く、水素原子、炭素数1〜2の脂肪族炭化水素基またはフェニル基であり、その芳香環に水酸基を有していてもよい。R32、R34は同一又は異なっていても良く、炭素数1〜2の脂肪族炭化水素基またはフェニル基であり、その芳香環に水酸基を有していてもよい。式中、R35は水素原子である。式中、R36は水素原子または水酸基である。式中lおよびmは1〜4の整数を示し、l+m=5である。)
【化4】
(式中、R37、R38、R39、R40は同一又は異なっていても良く、水素原子、炭素数1〜2の脂肪族炭化水素基またはフェニル基であり、その芳香環に水酸基を有していてもよい。式中、R35は水素原子である。式中、R36は水素原子または水酸基である。式中lおよびmは1〜4の整数を示し、l+m=5である。)
【請求項3】
下記一般式(1)で表されるペンタエリスリトールジヒドロホスホネートのジフェニルアセチレン付加物である環状ホスホネート化合物であって、該化合物の全含有ハロゲン分が80ppm以下であることを特徴とする環状ホスホネート化合物。
【化5】
(式中、X、Xは同一であり、下記一般式(2)で表される芳香族置換アルキル基である。)
【化6】
(式中、ALは不飽和結合を含有する炭素数2の脂肪族炭化水素基であり、Arはフェニル基である。nは2の整数を示し、ArはAL中のそれぞれの炭素原子に結合する。
【請求項4】
ペンタエリスリトールに三塩化リンを反応させ下記一般式(5)で表されるペンタエリスリトールジクロロホスファイトを製造する工程、下記一般式(5)で表されるペンタエリスリトールジクロロホスファイトに水素導入剤を反応させ下記一般式(6)で表されるペンタエリスリトールジヒドロホスホネートを製造する工程、および下記一般式(6)で表されるペンタエリスリトールジヒドロホスホネートに下記一般式(7)または下記一般式(8)で表される不飽和炭化水素化合物を反応させ下記一般式(1)で表される環状ホスホネート化合物の混合物を製造する工程を含むことを特徴とする請求項1記載の環状ホスホネート化合物の混合物の製造方法。
【化7】
【化8】
【化9】
(式中、R21、R22、R23、R24は同一又は異なっていても良く、水素原子、炭素数1の脂肪族炭化水素基またはフェニル基であり、その芳香環に水酸基を有していてもよい。)
【化10】
(式中、R21、R23は同一又は異なっていても良く、水素原子またはフェニル基であり、その芳香環に水酸基を有していてもよい。)
【化11】
(式中、X、Xは同一もしくは異なり、下記一般式(2)で表される芳香族置換アルキル基である。)
【化12】
(式中、ALは不飽和結合を含有しても良い炭素数2〜3の脂肪族炭化水素基であり、Arは水酸基を有しても良いフェニル基である。nは1〜2の整数を示し、ArはAL中の任意の炭素原子に結合することができる。)
【請求項5】
前記一般式(6)で表されるペンタエリスリトールジヒドロホスホネートに前記一般式(7)または前記一般式(8)で表される不飽和炭化水素化合物を反応させ前記一般式(1)で表される環状ホスホネート化合物の混合物を製造する工程において、金属錯体化合物を触媒として用いる付加反応工程を含むことを特徴とする請求項記載の環状ホスホネート化合物の混合物の製造方法。
【請求項6】
前記一般式(1)記載の環状ホスホネート化合物の混合物が下記一般式(9)および下記一般式(10)で表される環状ホスホネート化合物の混合物であることを特徴とする請求項記載の環状ホスホネート化合物の混合物の製造方法。
【化13】
(式中、R31、R33は同一又は異なっていても良く、水素原子、炭素数1〜2の脂肪族炭化水素基またはフェニル基であり、その芳香環に水酸基を有していてもよい。R32、R34は同一又は異なっていても良く、炭素数1〜2の脂肪族炭化水素基またはフェニル基であり、その芳香環に水酸基を有していてもよい。式中、R35は水素原子である。式中、R36は水素原子または水酸基である。式中lおよびmは1〜4の整数を示し、l+m=5である。)
【化14】
(式中、R37、R38、R39、R40は同一又は異なっていても良く、水素原子、炭素数1〜2の脂肪族炭化水素基またはフェニル基であり、その芳香環に水酸基を有していてもよい。式中、R35は水素原子である。式中、R36は水素原子または水酸基である。式中lおよびmは1〜4の整数を示し、l+m=5である。)
【請求項7】
ペンタエリスリトールに三塩化リンを反応させ下記一般式(5)で表されるペンタエリスリトールジクロロホスファイトを製造する工程、下記一般式(5)で表されるペンタエリスリトールジクロロホスファイトに水素導入剤を反応させ下記一般式(6)で表されるペンタエリスリトールジヒドロホスホネートを製造する工程、および下記一般式(6)で表されるペンタエリスリトールジヒドロホスホネートに下記一般式(8)で表されるジフェニルアセチレンである不飽和炭化水素化合物を反応させ下記一般式(1)で表されるペンタエリスリトールジヒドロホスホネートのジフェニルアセチレン付加物である環状ホスホネート化合物を製造する工程を含むことを特徴とする請求項記載の環状ホスホネート化合物の製造方法。
【化15】
【化16】
【化17】
(式中、R21、R23は同一で、フェニル基であ。)
【化18】
(式中、X、Xは同一であり、下記一般式(2)で表される芳香族置換アルキル基である。)
【化19】
(式中、ALは不飽和結合を含有する炭素数2の脂肪族炭化水素基であり、Arはフェニル基である。nは2の整数を示し、ArはAL中のそれぞれの炭素原子に結合する。
【請求項8】
有機重合体100重量部に対して請求項1記載の環状ホスホネート化合物の混合物または請求項3記載の環状ホスホネート化合物を0.1〜100重量部添加することを特徴とする難燃性樹脂組成物。
【請求項9】
請求項記載の難燃性樹脂組成物より形成された成形品。
【請求項10】
請求項記載の難燃性樹脂組成物より形成されたシート、フィルムまたは繊維。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特定の構造を有するペンタエリスリトールジホスホネート化合物およびその製造方法に関する。更に詳しくは、難燃剤、結晶核剤、可塑剤等の添加剤として使用でき、殊に難燃剤として優れた効果を有する新規なペンタエリスリトールジホスホネート化合物およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリカーボネート樹脂、ポリフェニレンオキシド樹脂、ポリエステル樹脂、ABS樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリアミド樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂等の樹脂は、その優れた諸物性を活かし、機械部品、電気部品、自動車部品等の幅広い分野に利用されている。一方、これらの樹脂は本質的に可燃性である為、上記用途として使用するには一般の化学的、物理的諸特性のバランス以外に、火炎に対する安全性、すなわち、高度な難燃性が要求される場合が多い。
【0003】
樹脂に難燃性を付与する方法としては、難燃剤としてハロゲン系化合物、さらに難燃助剤としてアンチモン化合物を樹脂に添加する方法が一般的である。しかしながら、この方法は成形加工時あるいは燃焼時に、多量の腐食性ガスを発生させる等の問題がある。また、特に近年、製品廃棄時における環境影響等が懸念されている。そこで、ハロゲンを全く含まない難燃剤や難燃処方が強く望まれている。
【0004】
ハロゲン系難燃剤を使用しないで熱可塑性樹脂を難燃化する方法としては、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウムなどの金属水和物を添加することが広く知られている。しかし、充分な難燃性を得る為には、上記金属水和物を多量に添加する必要があり、樹脂本来の特性が失われるという欠点を有していた。
【0005】
また、トリアリールリン酸エステルモノマーや縮合リン酸エステルオリゴマーの芳香族リン酸エステルも、熱可塑性樹脂に難燃性を付与するための難燃剤として頻繁に用いられてきた。しかし、トリフェニルホスフェートに代表されるトリアリールリン酸エステルモノマーは、樹脂組成物の耐熱性を著しく低下させ、かつ、揮発性が高い為に、押出し時や成形加工時にガスの発生量が多く、ハンドリング性に問題があった。さらに、この化合物は樹脂を高温に加熱するとその少なくとも一部が揮発、あるいはブリード等によって樹脂中から失われるという問題点を有していた。また、縮合リン酸エステルオリゴマーは、揮発性が改善されているものの、その多くが液体であることから、樹脂との混練には液注装置が必要となり、押出し混練時のハンドリング性に問題があった。
【0006】
一方、二置換ペンタエリスリトールジホスホネートは、樹脂用難燃剤を中心に種々の検討がなされている。この化合物を熱可塑性樹脂に配合することにより、熱可塑性樹脂の難燃化を達成することができる。このホスホネート化合物が配合された熱可塑性樹脂組成物は、難燃剤の配合による耐熱性、および耐衝撃性等の特性が低下することなく、しかも混練の際に化合物が揮発、あるいはブリード等により樹脂中から失われることのない特徴を有する。
【0007】
また、上記二置換ペンタエリスリトールジホスホネートの製造法についてはいくつか開示されている。例えば、特許文献1においては、ペンタエリスリトールとフェニルホスホン酸ジクロライドとの反応により、ジフェニルペンタエリスリトールジホスホネートを得る製造例の記載がある。
【0008】
特許文献2においては、ジエチルペンタエリスリトールジホスファイトとハロゲン化誘導体(例えばベンジルクロライド)との反応により、対応する二置換ペンタエリスリトールジホスホネートを得る製造例の記載がある。
【0009】
しかしながら、本発明の特定の構造を有するペンタエリスリトールジホスホネートに関して、必ずしも従来通りの製造方法ではかかる目的物を高収率で回収できないという問題があった。また、当該特許でも製造法の詳細は詳述されておらず、目的物の純度に関する記載もなく、工業的な製造法の見地からも種々の問題が内在していた。さらにこれらの製造法で得られたペンタエリスリトールジホスホネート化合物は多量のハロゲン系化合物を含有しており、樹脂組成物とした際に色相の悪化、樹脂分解による各種機械物性の低下等を招き、樹脂添加剤としては不十分な性能であった。
【0010】
さらにこれらの問題を解決する手段として、特許文献3では全残留ハロゲン分を3000ppm以下としたペンタエリスリトールジホスホネート化合物に関する記載がある。しかしながら、当該特許に記載の製造方法は最終工程で高沸点の臭素系化合物を多量に用いたアルブゾフ転移反応を利用しており、根本的に当該化合物中のハロゲン化合物を低減できる方法ではない。また、本発明では全残留ハロゲン分を3000ppm以下に低減するために洗浄を繰り返しており、工業的には多大なエネルギーを使用するため不利である。
【0011】
一方、特許文献4および特許文献5では、P−H結合を有する化合物に対してアルケンやアルキン等の不飽和炭化水素化合物を金属錯体触媒存在下付加反応させることによって、ホスホネート化合物を得る方法に関して記載がある。しかしながら当該特許文献に記載されているP−H結合含有化合物は特定の化合物に限定されており、本発明記載のP−H結合含有化合物に関してはなんら記載が無く、その反応性に関しても示唆されていない。さらに当該特許公報に記載されている不飽和炭化水素化合物はアセチレンに代表されるアルキン化合物のみの例示であり、アルケン化合物に対する反応性に関してはなんら記載が無い。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開平5−163288号公報
【特許文献2】米国特許第4174343号明細書
【特許文献3】特許第4287095号公報
【特許文献4】国際公開第2009/051025号パンフレット
【特許文献5】特開2010−202718号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
以上のような背景技術を鑑み、本発明は、上記従来技術の問題点を解決し、工業的に有利な生産性に優れた方法により、樹脂に混合した際に大きな問題点となるハロゲン系ガス発生、或いはそれに起因するヤケ現象の如き耐熱性を向上させ、かつ高度に難燃性を付与することができる実質的にハロゲン分を含有しない特性を保有するペンタエリスリトールジホスホネート化合物およびその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明者は、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、特に、環状ホスホネートのハロゲン分を特定含有量以下に低減することによって、当該化合物含有の樹脂組成物を形成する時点での操作性、環境対策上に利点が発現すると共に、物性、外観色相に悪影響を与えない事を見出し、同時に、高度な難燃性を付与することができることを見出し、本発明に到達した。
【0015】
すなわち本発明は、下記1〜8項の環状ホスホネート化合物またはその混合物もしくはその製造方法が提供される。
1.下記一般式(1)で表される環状ホスホネート化合物またはその混合物であって、該化合物またはその混合物の全含有ハロゲン分が80ppm以下であることを特徴とする環状ホスホネート化合物またはその混合物
【化1】
(式中、X、Xは同一もしくは異なり、下記一般式(2)で表される芳香族置換アルキル基である。)
【化2】
(式中、ALは不飽和結合を含有しても良い炭素数2〜3の脂肪族炭化水素基であり、Arは水酸基を有しても良いフェニル基である。nは1〜2の整数を示し、ArはAL中の任意の炭素原子に結合することができる。)
【0016】
2.前記一般式(1)記載の環状ホスホネート化合物またはその混合物が下記一般式(9)または下記一般式(10)で表される環状ホスホネート化合物またはその混合物であることを特徴とする前項1記載の環状ホスホネート化合物またはその混合物
【化3】
(式中、R31、R33は同一又は異なっていても良く、水素原子、炭素数1〜2の脂肪族炭化水素基またはフェニル基であり、その芳香環に水酸基を有していてもよい。R32、R34は同一又は異なっていても良く、炭素数1〜2の脂肪族炭化水素基またはフェニル基であり、その芳香環に水酸基を有していてもよい。式中、R35は水素原子である。式中、R36は水素原子または水酸基である。式中lおよびmは1〜4の整数を示し、l+m=5である。)
【化4】
(式中、R37、R38、R39、R40は同一又は異なっていても良く、水素原子、炭素数1〜2の脂肪族炭化水素基またはフェニル基であり、その芳香環に水酸基を有していてもよい。式中、R35は水素原子である。式中、R36は水素原子または水酸基である。式中lおよびmは1〜4の整数を示し、l+m=5である。)
【0017】
3.ペンタエリスリトールに三塩化リンを反応させ下記一般式(5)で表されるペンタエリスリトールジクロロホスファイトを製造する工程、下記一般式(5)で表されるペンタエリスリトールジクロロホスファイトに水素導入剤を反応させ下記一般式(6)で表されるペンタエリスリトールジヒドロホスホネートを製造する工程、および下記一般式(6)で表されるペンタエリスリトールジヒドロホスホネートに下記一般式(7)または下記一般式(8)で表される不飽和炭化水素化合物を反応させ下記一般式(1)で表される環状ホスホネート化合物またはその混合物を製造する工程を含むことを特徴とする前項1記載の環状ホスホネート化合物またはその混合物の製造方法。
【0018】
【化5】
【化6】
【化7】
(式中、R21、R22、R23、R24は同一又は異なっていても良く、水素原子、炭素数1の脂肪族炭化水素基またはフェニル基であり、その芳香環に水酸基を有していてもよい。)
【化8】
(式中、R21、R23は同一又は異なっていても良く、水素原子またはフェニル基であり、その芳香環に水酸基を有していてもよい。)
【化9】
(式中、X、Xは同一もしくは異なり、下記一般式(2)で表される芳香族置換アルキル基である。)
【化10】
(式中、ALは不飽和結合を含有しても良い炭素数2〜3の脂肪族炭化水素基であり、Arは水酸基を有しても良いフェニル基である。nは1〜の整数を示し、ArはAL中の任意の炭素原子に結合することができる。)
【0019】
4.前記一般式(6)で表されるペンタエリスリトールジヒドロホスホネートに前記一般式(7)または前記一般式(8)で表される不飽和炭化水素化合物を反応させ前記一般式(1)で表される環状ホスホネート化合物またはその混合物を製造する工程において、金属錯体化合物を触媒として用いる付加反応工程を含むことを特徴とする前項3記載の環状ホスホネート化合物またはその混合物の製造方法。
5.前記一般式(1)記載の環状ホスホネート化合物またはその混合物が下記一般式(9)または下記一般式(10)で表される環状ホスホネート化合物またはその混合物であることを特徴とする前項3記載の環状ホスホネート化合物またはその混合物の製造方法。
【0020】
【化11】
(式中、R31、R33は同一又は異なっていても良く、水素原子、炭素数1〜2の脂肪族炭化水素基またはフェニル基であり、その芳香環に水酸基を有していてもよい。R32、R34は同一又は異なっていても良く、炭素数1〜2の脂肪族炭化水素基またはフェニル基であり、その芳香環に水酸基を有していてもよい。式中、R35は水素原子で。式中、R36は水素原子または水酸基である。式中lおよびmは1〜4の整数を示し、l+m=5である。)
【化12】
(式中、R37、R38、R39、R40は同一又は異なっていても良く、水素原子、炭素数1〜2の脂肪族炭化水素基またはフェニル基であり、その芳香環に水酸基を有していてもよい。式中、R35は水素原子で。式中、R36は水素原子または水酸基である。式中lおよびmは1〜4の整数を示し、l+m=5である。)
【0021】
6.有機重合体100重量部に対して前項1記載の環状ホスホネート化合物またはその混合物を0.1〜100重量部添加することを特徴とする難燃性樹脂組成物。
7.前項6記載の難燃性樹脂組成物より形成された成形品。
8.前項6記載の難燃性樹脂組成物より形成されたシート、フィルムまたは繊維。
【発明の効果】
【0022】
本発明の製造方法により得られる環状ホスホネートは、ハロゲン分を特定含有量以下に低減することができ、当該化合物含有の樹脂組成物を形成する時点での操作性、環境対策上に利点が発現すると共に、物性、外観色相に悪影響を与えず、同時に、高度な難燃性を付与することができ、成形品やシート、フィルムまたは繊維などの各種用途に利用できその奏する効果は格別である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明の環状ホスホネート化合物は、ペンタエリスリトールに三塩化リンを反応させ前記一般式(5)で表されるペンタエリスリトールジクロロホスファイトを得、前記一般式(5)で表されるペンタエリスリトールジクロロホスファイトに水素導入剤を反応させ前記一般式(6)で表されるペンタエリスリトールジヒドロホスホネートを得、および前記一般式(6)で表されるペンタエリスリトールジヒドロホスホネートに前記一般式(7)または/および前記一般式(8)で表される不飽和炭化水素化合物を反応させ前記一般式(1)で表される環状ホスホネート化合物を得ることにより提供される。
【0024】
ペンタエリスリトールに三塩化リンを反応させ前記一般式(5)で表されるペンタエリスリトールジクロロホスファイトを得る反応は特に限定されるものではなく、例えば、米国特許5,103,035明細書、特公昭61−165397号、特開2004−18408号公報に記載される方法を用いることができる。すなわち、溶媒中に分散したペンタエリスリトール1モルに対して、塩基性触媒存在下、2モルの三塩化リンを滴下することによってペンタエリスリトールジクロロホスファイトを得る方法である。
【0025】
本反応に使用される溶媒として、炭化水素、ハロゲン含有炭化水素、含酸素炭化水素から選ばれる1種又は2種以上からなる不活性溶媒を挙げられる。かかる溶媒は、ペンタエリスリトール、三塩化リン及び/又は有機窒素含有塩基化合物と反応しない不活性な溶媒であれば良く、芳香族炭化水素、脂肪族炭化水素、ハロゲン含有炭化水素および含酸素炭化水素からなる群より選ばれる1種又は2種以上からなる不活性溶媒が挙げられる。中でも反応の進行を潤滑にし、原料、及び、反応生成物が溶解するものが望ましい。更には本発明で得られたペンタエリスリトールジクロロホスファイトの溶液または懸濁液を原料とする反応においても不活性なものが好ましい。この様なものとしては、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、デカン、ドデカン、ジエチルエーテル、ジプロピルエーテル、ジブチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン、塩化メチレン、クロロホルム、四塩化炭素、酢酸エチル、ベンゼン、クロロベンゼン、オルトジクロロベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、プロピルベンゼン、ブチルベンゼン等が挙げられる。好ましくは、ヘキサン、デカン、ドデカン、ジエチルエーテル、ジブチルエーテル、ジオキサン、クロロベンゼン、オルトジクロロベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン等が挙げられる。更に好ましくは、ヘキサン、ドデカン、クロロベンゼン、オルトジクロロベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼンが挙げられる。
【0026】
これらの溶媒の含水率は1000ppm以下であることが望ましい。この含水率以上では、原料の三塩化リンの加水分解が、特に加熱条件下では促進することが認められるため好ましくない。かかる観点から、反応系の含水率としては、500ppm以下、さらに望ましくは、200ppm以下が好ましい。
【0027】
本反応に用いられる三塩化リンは、その純度が98%以上であることが望ましい。高純度の三塩化リンは、例えば市販品を不活性気体雰囲気下で蒸留することにより得られる。三塩化リンの純度はガスクロマトグラフィーで定量することができ、またJIS K8404−1887に示される様に、化学反応での定量が可能である。
【0028】
本反応に用いられるペンタエリスリトールは、その純度が98%以上であり、かつ、含水率が1000ppm以下であることが望ましい。高純度のペンタエリスリトールは、主として市販品を水から再結晶して、高分子量の不純物を除去することにより得ることができる。また、低含水率のペンタエリスリトールは、反応に用いる直前に加熱乾燥させることにより得ることができる。ペンタエリスリトールの純度はガスクロマトグラフィーで定量可能であり、JIS K1510−1993に示される様に、化学反応での定量化も可能である。ペンタエリスリトールの含水率は、カールフィッシャー法で定量可能であり、前記JIS規格に示されている乾燥減量からも定量が可能である。
【0029】
本反応におけるペンタエリスリトールに対する三塩化リンのモル比は、195モル%〜240モル%が好ましい。より好ましくは200モル%〜220モル%である。
三塩化リンとペンタエリスリトールとの反応方法として、ペンタエリスリトールの懸濁液に三塩化リンを滴下する、三塩化リンにペンタエリスリトールの懸濁液を滴下する、三塩化リンにペンタエリスリトール粉末を添加する等、種々の方法が適用できる。中でも、ペンタエリスリトールの懸濁液に三塩化リンを滴下することが作業効率の点から好ましい。本反応では、反応系内の温度を、−10℃〜90℃、より好ましくは、0℃〜80℃になるように保てばよい。
【0030】
本反応を効率よく進行させるためには、触媒が必要である。かかる触媒として、リン−塩素結合と反応しない有機塩基化合物が好ましく用いられる。本発明に用いられるリン−塩素結合と反応しない有機塩基化合物とは、例えば窒素−水素結合及び、または酸素−水素結合を有しない有機塩基化合物である。これらの結合を有しないとは、該化合物中の窒素−水素結合及び酸素−水素結合量が5000ppm以下好ましくは1000ppm以下さらに好ましくは500ppm以下しか含まれていないということである。
【0031】
リン−塩素結合と反応しない有機塩基化合物としては、脂肪族又は芳香族の、非環状又は環状アミン類、アミド類が挙げられる。これらの化合物の一例としては、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリ−n−プロピルアミン、トリ−イソプロピルアミン、トリ−n−ブチルアミン、トリイソブチルアミン、トリ−t−ブチルアミン、トリヘキシルアミン、トリ−n−オクチルアミン、メチルジエチルアミン、N,N−ジメチルシクロヘキシルアミン、N,N−ジメチルベンジルアミン、トリフェニルアミン、トリベンジルアミン、トリフェネチルアミン、N,N−ジメチルアニリン、N,N,N’,N’−テトラエチルメタンジアミン、N,N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミン、N,N,N’,N’−テトラメチル−1,4−ブタンジアミン、N,N,N’,N’−テトラメチル−1,3−ブタンジアミン、1−メチルピロール、1−エチルピロール、1−メチルピロリジン、1−エチルピロリジン、オキサゾール、チアゾール、1−メチルイミダゾール、1−エチルイミダゾール、1−ブチルイミダゾール、1−メチルピラゾール、1−メチルピペリジン、1−エチルピペリジン、N,N’−ジメチルピペラジン、ピリジン、N,N−ジメチル−4−アミノピリジン、N,N−ジエチル−4−アミノピリジン、2−メトキシピリジン、4−メトキシピリジン、2−メチルピリジン、4−メチルピリジン、2,6−ジメチルピリジン、2,4,6−トリメチルピリジン、ピリダジン、ピリミジン、ピラジン、キノリン、イソキノリン、キヌクリジン、キナゾリン、9−メチルカルバゾール、アクリジン、フェナントリジン、ヘキサメチレンテトラミン、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]−7−ウンデセン、1,5−ジアザビシクロ[4.3.0]−5−ノネン、1,4−ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジエチルアセトアミド、N,N−ジエチルプロパンアミド、N,N−ジメチルベンズアミド、N−メチル−2−ピロリジノン、N−メチル−2−ピロリドン、N−メチル−2−ピペリドンなどが挙げられる。
【0032】
中でもトリエチルアミン、トリイソプロピルアミン、トリ−n−ブチルアミン、N,N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミン、N,N−ジメチルアニリン、ピリジン、N,N−ジメチル−4−アミノピリジン、4−メチルピリジン、2,4,6−トリメチルピリジン、キノリン、N,N−ジメチルホルムアミド、4−ビニルピリジンとスチレンの共重合体が好ましく、特にトリエチルアミン、ピリジン、N,N−ジメチルホルムアミドが好ましい。
【0033】
また、上記の化合物がポリマー中に化学的に結合された化合物でもよい。例えばポリ(4−ビニルピリジン)、ポリ(2−ビニルピリジン)、4−ビニルピリジンとスチレンの共重合体などが挙げられる。
該有機塩基化合物の存在割合は、三塩化リンに対して0.1モル%〜100モル%である。実用上、この量比は、1〜20モル%が望ましい。
【0034】
反応系は、常時不活性気体雰囲気下に保つことが必要である。かかる目的のためには、窒素、アルゴンらの不活性気体を反応系内に流せばよい。更には、この一部気体が系外に出ることで、発生するハロゲン化水素を同時に除去できるので、不活性気体を反応系内に滞留させるよりも反応系内から反応系外へ流す方が好ましい。
【0035】
前記一般式(5)で表されるペンタエリスリトールジクロロホスファイトに水素導入剤を反応させ前記一般式(6)で表されるペンタエリスリトールジヒドロホスホネートを得る反応は特に限定されるものではなく、例えば、特開平10−17585号公報、米国特許4,086,205号明細書、特開昭61−247795号公報、特開2004−35472号公報に記載される方法を用いることができる。
【0036】
本反応に使用される水素導入剤は、ペンタエリスリトールジクロロホスファイトのリン−塩素結合を、リン−ヒドロキシル基結合に変換させるものである。かかる水素導入剤として、水、アルコール、カルボン酸などの水酸基含有の化合物が挙げられ、生成したペンタエリスリトールジヒドロホスホネートに対する反応性の観点から、第三級アルコールまたは低分子量カルボン酸が好ましく使用される。中でも、tert−ブチルアルコールまたはぎ酸が、生成したペンタエリスリトールジヒドロホスホネートを安定に回収するという観点から好ましく使用される。
【0037】
これら水素導入剤は、ペンタエリスリトールジクロロホスファイトに対して190〜220モル%(1.90〜2.20当量)使用することが好ましい。使用量が1.90当量より少ないと、ペンタエリスリトールジクロロホスファイトを十分に変換できない。また、使用量が2.20当量を超えると、生成したペンタエリスリトールジヒドロホスホネートと水素導入剤との反応が顕著となり、回収率が低下する。
【0038】
本反応に使用される溶媒としては、芳香族炭化水素、脂肪族炭化水素、ハロゲン含有炭化水素および含酸素炭化水素からなる群より選ばれる1種又は2種以上からなる不活性溶媒が挙げられ、ペンタエリスリトールジクロロホスファイト、及びペンタエリスリトールジヒドロホスホネートと反応しない不活性な溶媒であれば良い。更には、先の反応であるペンタエリスリトールジクロロホスファイトの合成反応においても不活性なもの、さらに、本反応で得られたペンタエリスリトールジヒドロホスホネートを原料とする反応においても不活性なものが好ましい。
【0039】
本反応では、反応系内の温度を、−20℃〜80℃に保つことが必要である。この温度範囲では、ペンタエリスリトールジクロロホスファイトとt−ブチルアルコールやぎ酸等の水素導入剤との反応で生成した、ペンタエリスリトールジヒドロホスホネートの安定性が高く、また、副生物のt−ブチルクロライドや塩化水素、一酸化炭素が系外へ除去されやすいため好ましい。より好ましくは、0℃〜60℃になるように保てばよい。
【0040】
本反応系は、常時不活性雰囲気下に保つことが望ましい。かかる目的のためには、窒素、アルゴンらの不活性気体を反応系内に流せばよい。更には、この不活性気体が系外に出ることで、t−ブチルアルコールやぎ酸を水素導入剤として用いた時に発生する、t−ブチルクロライドや塩化水素、一酸化炭素を同時に除去できるので、不活性気体を反応系内に滞留させるよりも反応系内から反応系外へ流す方が好ましい。
【0041】
本反応で生成したペンタエリスリトールジヒドロホスホネートは、反応後のスラリーを、不活性雰囲気下で濾過し、洗浄することにより回収することもできる。かかる目的のためには、窒素、アルゴンらの不活性気体で濾取物の周囲を満たせばよい。反応後のスラリーを濾過することは、t−ブチルアルコールやぎ酸等の水素導入剤の使用の結果発生した、t−ブチルクロライドや塩化水素、一酸化炭素などの不純物の大部分を除去できるため好ましい。
【0042】
また、洗浄溶媒は、ペンタエリスリトールジヒドロホスホネートの溶解度、リン系副生成物の溶解度を勘案して決定されるが、特に、ペンタエリスリトールジヒドロホスホネートを原料とする反応においても不活性なものが好ましい。このような溶媒として、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、デカン、ドデカン、ジエチルエーテル、ジプロピルエーテル、ジブチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン、塩化メチレン、クロロホルム、四塩化炭素、酢酸エチル、ベンゼン、クロロベンゼン、オルトジクロロベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、プロピルベンゼン、ブチルベンゼン等が挙げられる。
【0043】
本反応で生成したペンタエリスリトールジヒドロホスホネートは、溶媒湿潤の状態のままで使用することが好ましい。ペンタエリスリトールジヒドロホスホネートは、加熱乾燥により残留溶媒を除去し、白色粉末として回収できる。しかしながら、加熱乾燥によってペンタエリスリトールジヒドロホスホネートは熱劣化されやすく、また、回収した白色粉末は空気中で容易に加水分解、並びに酸化分解される。このため、次反応に使用する際には、ペンタエリスリトールジヒドロホスホネートはもはや十分な純度を保持しておらず、次反応の反応収率の低下を招いていた。加熱乾燥による残留溶媒の除去をせず、逆に溶媒湿潤の状態でペンタエリスリトールジヒドロホスホネートを回収することによって、熱履歴による純度低下がなく、高純度のペンタエリスリトールジヒドロホスホネートを高収率で回収できる。さらに、含浸している溶媒のために、次反応の仕込時等におけるペンタエリスリトールジヒドロホスホネートと空気との接触による劣化を極力防ぐことができ、次反応の反応収率の低下を抑えることができる。
【0044】
前記一般式(6)で表されるペンタエリスリトールジヒドロホスホネートに前記一般式(7)および/または前記一般式(8)で表される不飽和炭化水素化合物を反応させ前記一般式(1)で表される環状ホスホネート化合物を得る反応は特に限定されるものではなく、例えば、国際公開第WO2009/051025号パンフレット、特開2010−202718号公報に記載される方法を用いることができる。
【0045】
本反応にて使用される触媒種は金属錯体であり、金属種としては触媒活性があれば特に限定されないが、好適に用いられる金属種としてはパラジウム、ロジウム、ニッケル等が挙げられる。中でも、ニッケルが汎用性、価格等の面で優位である。
【0046】
本発明の範囲が本例示に限定されるものではないが、具体的な触媒種として、金属種にニッケルを用いた例を挙げる。金属種にニッケルを用いた場合は、Ni(PR、[HNi(PR]+X−または[HNi(RP(CHPR)]で示される錯体化合物(ここで、R、R、R、RおよびRは、それぞれ独立して、置換されたまたは置換されていない炭化水素基であり、Xはヒドリド供与体である酸(たとえば、無機酸または有機酸)の陰イオンであり、xは正の整数である。)が挙げられる。
【0047】
本触媒種に用いられる、炭化水素基としては、アルキル基、シクロアルキル基、アリル基、アリール基、アラルキル基などを挙げることができる。
炭化水素基の炭素数としては、触媒作用がある限り任意の数を用いることができるが、単離する必要がある場合は、炭素数は少ないほうがよい。
【0048】
たとえば、アルキル基が置換基として使用される場合、好ましくは、炭素数18以下、より好ましくは6以下、さらに好ましくは3以下、さらにより好ましくは2以下、もっとも好ましくは1(すなわちメチル基)である。そして、いったん炭素数1または別の炭素数のものでアルキル基置換体が触媒として作用することが判明したならば、任意の炭素数のアルキル基のもので置換したものもまた、触媒として作用することが理解される。その理論的説明としては、これに束縛されるものではないが、金属ニッケルとホスフィンとの結合はホスフィンの不対電子のニッケルへの電子供用に伴うシグマ性結合形成とニッケル上の電子のホスフィンへの逆供用によるπ結合形成によるものであることから、不対電子を持つ三価のホスフィンであれば、基本的に上記機能を有し、類似の挙動を示すことから、触媒作用がアルキルの炭素数に左右されることは考えられにくい。
【0049】
たとえば、アリール基が置換基として使用される場合、好ましくは炭素数18以下、より好ましくは12以下、さらに好ましくは8以下、さらにより好ましくは7以下、もっとも好ましくは6(すなわちフェニル基)である。そして、いったん炭素数6または別の炭素数のものでアリール基置換体が触媒として作用することが判明したならば、任意の炭素数のアリール基のもので置換したものもまた、触媒として作用することが理解される。その理論的説明としては、これに束縛されるものではないが、金属ニッケルとホスフィンとの結合はホスフィンの不対電子のニッケルへの電子供用に伴うシグマ性結合形成とニッケル上の電子のホスフィンへの逆供用によるπ結合形成によるものであることから、不対電子を持つ三価のホスフィンであれば、基本的に上記機能を有し、類似の挙動を示すことから、触媒作用がアルキルの炭素数に左右されることは考えられにくい。
また、炭化水素基であれば、別の種類のものであっても、置換することができ、置換体が触媒として作用することが理解される。
【0050】
本触媒種において、R、R、R、RおよびRは、互いに同じであっても異なっていてもよい。同じものを含む触媒は、合成が容易であるという利点があるが、触媒としては、すべてが同じであっても異なる置換基が混入していてもほぼ同等であり、影響がないことが判明している。また、R、R、R、RおよびRが互いに同じである利点としては、これらのホスフィンを比較的容易に合成できるため、したがって触媒をより安価であるなどを挙げることができる。他方、R、R、R、RおよびRが異なることの利点としては、ホスフィン類の物性制御がしやすいこと、反応の選択性など異なる置換基を有するホスフィンを用いることにより、よりコントロールしやすいなどの利点を挙げることができる。
【0051】
また、本触媒種の錯体化合物の置換基としては、アルキル基、アリール基のほか、シクロアルキル基、アリル基、アルケニル基、アラルキル基なども用いることができる。いったんアルキル基置換体またはアリール基置換体が触媒として作用することが判明したならば、シクロアルキル基、アリル基、アルケニル基、アラルキル基のもので置換したものもまた、触媒として作用することが理解される。その理論的説明としては、これに束縛されることを望まないが、金属ニッケルとホスフィンとの結合はホスフィンの不対電子のニッケルへの電子供用に伴うシグマ性結合形成とニッケル上の電子のホスフィンへの逆供用によるπ結合形成によるものであることから、不対電子を持つ三価のホスフィンであれば、基本的に上記機能を有し、類似の挙動を示すことから、触媒作用がアルキルの炭素数に左右されことは考えられにくい。
【0052】
好ましい実施形態では、炭化水素基は、メチル基、エチル基、フェニル基などを使用することができる。理論に束縛されることを望まないが、これらのメチル基、エチル基、フェニル基を含む触媒を用いることが好ましい理由としては、扱いが簡単なこと、合成が容易であること、触媒反応性が高いこと、などが挙げられる。
【0053】
1つの実施形態では、本発明の錯体化合物は、炭化水素基がC1〜C2アルキル基、またはC6アリール基である[HNi(PRであるか、または前記炭化水素基がC1アルキル基でありxが2である[HNi(RP(CHPR)]である。本発明内容が本例示に限定されるものではないが、これらの特定の触媒を用いることが好ましい理由としては、扱いが簡単なこと、合成が容易であること、触媒反応性が高いこと、などが挙げられる。
【0054】
本明細書において、Xとしては任意の酸を用いることができることが理解される。たとえば、1つの実施形態では、ヒドリド供与体である酸の陰イオンは、無機オキソ酸アニオンであり得る。
好ましい実施形態では、ヒドリド供与体である酸の陰イオンは、硫酸イオン、リン酸イオン、O−P(O)RO−P(O)(OR、ClO、RCOなどである。(ここで、Rは、置換されたまたは置換されていない炭化水素基である。)
そして、いったん特定の酸(たとえば、リン酸など)が触媒として作用することが判明したならば、このグループに属する任意の酸を含む触媒もまた、触媒として作用することが理解される。
【0055】
より好ましい実施形態では、無機酸の陰イオンは、硫酸イオン、リン酸イオン、O−P(O)RO−P(O)(ORなどである。
好ましい実施形態の無機酸は、HPO、HSO、(CO)POHまたは(CHである。
好ましい実施形態の有機酸は、酢酸、安息香酸、サリチル酸であり、より好ましくは酢酸である。
【0056】
1つの実施形態では、XとR〜Rの組み合わせとしては、任意の物を使用することができる。
〜Rがアルキル基の場合のアルキル基としては、例えば炭素数1〜6、好ましくは1〜4のアルキル基が挙げられ、その具体例としては、例えば、メチル基、エチル基、n−又はiso−プロピル基、n−、iso−、sec−又はtert−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基などが挙げられる。
【0057】
〜Rがシクロアルキル基の場合のシクロアルキル基としては、例えば炭素数3〜12、好ましくは5〜12のシクロアルキル基が挙げられ、その具体例としては、例えば、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロオクチル基、シクロドデシル基などが挙げられる。
【0058】
〜Rがアリール基の場合のアリール基としては、例えば炭素数6〜14、好ましくは6〜10のアリール基が挙げられ、その具体例としては、例えば、フェニル基、ナフチル基などが挙げられ、さらにそれらの置換体(トリル基、キシリル基、ベンジルフェニル基など)も包含される。
【0059】
〜Rがアラルキル基の場合のアラルキル基としては、例えば炭素数7〜15、好ましくは7〜11のアラルキル基が挙げられ、その具体例としては、例えばベンジル基、フェネチル基、ナフチルメチル基などが挙げられる。
【0060】
〜Rで示されるアルキル基、シクロアルキル基、アリール基又はアラルキル基は、反応に不活性な置換基、例えば、メトキシ基、メトキシカルボニル基、シアノ基、ジメチルアミノ基、フルオロ基、クロロ基、ヒドロキシ基などで置換されていてもよい。
【0061】
本触媒種に用いられるホスフィン酸の具体例としては、例えばジフェニルホスフィン酸やジメチルホスフィン酸などが挙げられる。その使用量は、用いるP−H化合物に対して等モル以下、好ましくは、0.1〜10モル%である。
【0062】
より具体的な触媒種としては、Ni(PMe、Ni[P(n−Bu)、Ni(PEt、[HNi(PMe(HPO、[HNi(PMe(HSO4)、[HNi(PMe[PO(OC、[HNi(PMe[PO(C、[HNi(PPhMe(HPO、[HNi(PEt(HPO、[HNi(PMe((PhPO、[HNi(PMe((PhO)PO、[HNi(PMe(HSO、[HNi(PMe(HPOなどが挙られる。
【0063】
前記一般式(7)および前記一般式(8)で表される不飽和炭化水素化合物としては、特に限定されるものではないが、炭素数2〜8の不飽和炭化水素が好ましい。本不飽和炭化水素は直鎖状、分岐状の何れも選択でき、置換基としてはフェニル基、ナフチル基、アントリル基等の芳香族基が好ましい。特に好ましい置換基としてはフェニル基が挙げられる。当該芳香族基はさらに置換基を有してもよく、置換基としては芳香族置換基を有しても良い炭素数1〜5の分岐状または直鎖状の脂肪族炭化水素基、フェニル基、ナフチル基もしくはアントリル基、水酸基から選択される。
【0064】
特に水酸基が導入された芳香族置換不飽和炭化水素化合物を用いた場合は、最終生成物である環状ホスホネート化合物に水酸基を導入することができ、反応型の化合物として、殊にポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂等の縮合型ポリマーやエポキシ樹脂、フェノール樹脂等の熱硬化型ポリマーに対して有効である。
【0065】
本発明は、本具体例に限定されるものではないが、不飽和炭化水素化合物の例としては、スチレン、α−メチルスチレン、ビニルフェノール等が挙げられる。
【0066】
本発明にて得られる、前記一般式(1)で表される環状ホスホネート化合物は、実質的にハロゲン分を含まず、難燃剤として良好な特性が得られる。本発明の環状ホスホネート化合物中の全含有ハロゲン分は300ppm以下であり、好ましくは100ppm以下、より好ましくは80ppm以下である。
【0067】
当該環状ホスホネート中の全含有ハロゲン分が300ppmよりも多い場合、難燃剤として有機重合体に添加した場合、色相の悪化、各種物性の低下が見られ、殊に成形品作成時に成形機内で滞留が発生した場合に成形品色相の悪化が顕著に見られる。
【0068】
本発明の環状ホスホネート化合物を有機重合体に添加することによって難燃性樹脂組成物が得られる。当該難燃性樹脂組成物の調製は、特に限定されるものではないが、有機重合体に、環状ホスホネート化合物および必要に応じてその他成分を、V型ブレンダー、スーパーミキサー、スーパーフローター、ヘンシェルミキサーなどの混合機を用いて予備混合し、かかる予備混合物は混練機に供給し、溶融混合する方法が好ましく採用される。混練機としては、種々の溶融混合機、例えばニーダー、単軸または二軸押出機などが使用でき、なかでも二軸押出機を用いて樹脂組成物を溶融して、サイドフィーダーにより液体成分を注入し、押出し、ペレタイザーによりペレット化する方法が好ましく使用される。
【0069】
本発明の環状ホスホネート化合物は、有機重合体100重量部に対して好ましくは0.1〜100重量部、より好ましくは1〜50重量部、さらに好ましくは3〜30重量部添加される。
【0070】
また、反応型の環状ホスホネート化合物を縮合型ポリマーまたは熱硬化性ポリマー等の有機重合体に反応させる場合は、各種有機重合体原料中に当該環状ホスホネート化合物を添加し、一般の重合条件によって重合させることにより、難燃性樹脂組成物を得ることができる。
【0071】
得られた難燃性樹脂組成物は成形品やシート、フィルムまたは繊維として各種用途に利用できる。
【実施例】
【0072】
以下に実施例を挙げて本発明を説明する。これらの実施例は、本発明の範囲をこれらの実施例に限定するものではない。
【0073】
実施例中の各種特性の測定は以下の方法で行った。
(1)三塩化リンの純度
JIS K8404−1887に準拠し、三塩化リンを加水分解させた後、0.1mol/L硝酸銀水溶液で電位差滴定を行い、算出した。
(2)ペンタエリスリトールの純度
JIS K1510−1993に準拠し、ペンタエリスリトール水溶液にベンズアルデヒド−メタノール溶液と塩酸を加え、生じた沈殿の重量から算出した。
(3)含水率
(A)ペンタエリスリトール
三菱化成工業株式会社製の微量水分測定装置:CA−05型、水分気化装置:VA−05型を用いて電量滴定で試薬の含水率を求めた。
(B)触媒・溶媒
三菱化学株式会社製の電量滴定式水分測定装置:CA−06型を用いて電量滴定により試薬の含水率を求めた。
(4)生成物の構造同定および選択率
日本電子株式会社製400MHz NMR測定装置を用いて求めた。
(5)環状ホスホネートの全含有ハロゲン分測定
炭酸カリウム法により測定を行った。ハロゲン分の検出限界は80ppmであった。
【0074】
実施例で使用した各原料は以下に示したとおりである。
(1)ペンタエリスリトール
広栄化学工業株式会社のペンタリット−S(純度99.4%)を、予め乾燥させたものを使用した。含水率は38ppmであった。
(2)三塩化リン
キシダ化学株式会社から購入した純度99%以上の三塩化リンを、予め窒素気流下で蒸留したものを用いた。
(3)ピリジン
和光純薬工業株式会社から購入した特級グレードを用い、予め含水率を50ppm以下にしたものを用いた。
(4)キシレン
和光純薬工業株式会社から購入した特級グレードを、含水率が50ppm以下になるように乾燥させてから用いた。
(5)ターシャリーブチルアルコール
和光純薬工業株式会社から購入した特級グレードを用いた。
(6)不飽和炭化水素
スチレン:和光純薬工業株式会社から購入した特級グレードを用いた。
α−メチルスチレン:和光純薬工業株式会社から購入した特級グレードを用いた。
4−ビニルフェノール:和光純薬工業株式会社から購入した試薬を用いた。
ジフェニルアセチレン:和光純薬工業株式会社から購入した試薬を用いた。
【0075】
[実施例1]
撹拌装置、還流冷却管、滴下漏斗、オイルバスを備えた10リットル三つ口フラスコに、ペンタエリスリトール681g(5.0mol)、ピリジン15.9g(0.2mol)、キシレン2Lを仕込んだ。窒素気流下、室温で滴下漏斗より三塩化リン1377g(10.0mol)を約2時間かけて滴下し、その後60℃に加熱し、30分更に反応させた。発生する塩化水素は、還流冷却管を通して反応系外の水酸化ナトリウム水溶液に吸収させた。その後放冷し、生じた白色懸濁液についてNMRを測定したところ、ペンタエリスリトールジクロロホスファイトの生成が確認できた(選択率97%)。
【0076】
次に、容器を氷浴に付けて5℃まで冷却した後、滴下漏斗からt−ブチルアルコール741g(10.0mol、ペンタエリスリトールジクロロホスファイトに対して206mol%)と塩化メチレン40mL(0.6mol)の溶液を1時間かけて滴下し、更に室温で2時間反応させた。生じた白色懸濁液についてNMRを測定したところ、ペンタエリスリトールジヒドロホスホネートが90%の選択率で検出された。
【0077】
次に、得られた白色懸濁液に、Ni[PMeを18.2g(0.05mol、1mol%)添加し、スチレンを1041.5g(10.0mol)添加し、70℃で3時間攪拌を行ったところ、白色沈殿物が生成した。
【0078】
得られた白色沈殿物をメタノールにて洗浄し、真空乾燥機にて120℃、5時間乾燥させたところ、白色結晶が1963g得られた。得られた白色結晶のNMRを測定したところ、ペンタエリスリトールジヒドロホスホネートのスチレン付加物であることが確認できた(収率90%、FR−1と称する)。さらに得られた白色結晶の含有ハロゲン分を測定したところ、ハロゲン分は検出されなかった(80ppm以下)。
【0079】
[実施例2]
実施例1のスチレンをα−メチルスチレン1181.8g(10.0mol)とした以外は同様の反応を行い、白色結晶が2066g得られた。得られた白色結晶のNMRを測定したところ、ペンタエリスリトールジヒドロホスホネートのα−メチルスチレン付加物であることが確認できた(収率89%、FR−2と称する)。さらに得られた白色結晶の含有ハロゲン分を測定したところ、ハロゲン分は検出されなかった(80ppm以下)。
【0080】
[実施例3]
実施例1のスチレンを4−ビニルフェノール1201.5g(10.0mol)とした以外は同様の反応を行い、白色結晶が1990g得られた。得られた白色結晶のNMRを測定したところ、ペンタエリスリトールジヒドロホスホネートの4−ビニルフェノール付加物であることが確認できた(収率85%)。さらに得られた白色結晶の含有ハロゲン分を測定したところ、ハロゲン分は検出されなかった(80ppm以下)。
【0081】
[実施例4]
実施例1のスチレンをジフェニルアセチレン1782.3g(10.0mol)とした以外は同様の反応を行い、白色結晶が2192g得られた。得られた白色結晶のNMRを測定したところ、ペンタエリスリトールジヒドロホスホネートのジフェニルアセチレン付加物であることが確認できた(収率75%)。さらに得られた白色結晶の含有ハロゲン分を測定したところ、ハロゲン分は検出されなかった(80ppm以下)。
【0082】
[比較例1]
温度計、コンデンサー、滴下ロートを備えた反応容器にペンタエリスリトール816.9g(6.0mol)、ピリジン19.0g(0.24mol)、トルエン2250.4g(24.4mol)を仕込み、攪拌した。該反応容器に三塩化リン1651.8g(12.0mol)を該滴下ロートを用い添加し、添加終了後、60℃にて加熱攪拌を行った。反応後、室温まで冷却し、得られた反応物に塩化メチレン26.50部を添加し、氷冷しながらターシャリーブタノール889.4g(12.0mol)および塩化メチレン150.2g(1.77mol)を滴下した。得られた結晶をトルエンおよび塩化メチレンにて洗浄しろ過した。得られたろ取物を80℃、1.33×102Paで12時間乾燥し、白色の固体1341.1g(5.88mol)を得た。得られた固体はNMR測定により2,4,8,10−テトラオキサ−3,9−ジホスファスピロ[5.5]ウンデカン,3,9−ジヒドロ−3,9−ジオキサイドである事を確認した。
【0083】
温度計、コンデンサー、滴下ロートを備えた反応容器に得られた2,4,8,10−テトラオキサ−3,9−ジホスファスピロ[5.5]ウンデカン,3,9−ジヒドロ−3,9−ジオキサイド1341.0g(5.88mol)、DMF6534.2g(89.39mol)を仕込み、攪拌した。該反応容器に氷冷下ナトリウムメトキシド648.7g(12.01mol)を添加した。氷冷にて2時間攪拌した後に、室温にて5時間攪拌を行った。さらにDMFを留去した後に、DMF2613.7g(35.76mol)を添加し、該反応混合物に氷冷にてα−メチルベンジルブロマイド2204.06g(11.91mol)滴下した。氷冷下3時間攪拌した後、DMFを留去し、水8Lを加え、析出した固体を濾取、水2Lで2回洗浄した。得られた粗精製物とメタノール4Lをコンデンサー、攪拌機を備えた反応容器に入れ、約2時間還流した。室温まで冷却後、結晶をろ過により分離し、メタノール2Lで洗浄した後、得られたろ取物を120℃の真空乾燥機にて19時間乾燥し、白色の鱗片状結晶2984.8g(6.84mol、FR−3と称する)を得た。得られた固体のNMR測定の結果、2,4,8,10−テトラオキサ−3,9−ジホスファスピロ[5,5]ウンデカン,3,9−ジα−メチルベンジル−3,9−ジオキサイドである事を確認した。また、得られた白色結晶の全含有ハロゲン分を測定したところ320ppmであった。
【0084】
[実施例5、6および比較例2]
FR−1:実施例1にて得られた白色個体
FR−2:実施例2にて得られた白色個体
FR−3:比較例1にて得られた白色個体
HIPS(PSジャパン株式会社製スタイロンH9152を用いた)100重量部に対してFR−1〜FR−3を10重量部添加し、タンブラーにて配合し、15mmφ二軸押出機(テクノベル製、KZW15)にてペレット化し、得られたペレットを70℃の熱風乾燥機にて4時間乾燥を行った。該ペレットを射出成形機((株)日本製鋼所製、J75Si)にて成形した。射出成形時に230℃、20分間滞留させた後に得られた成形板の色相を目視にて観察した。評価基準および評価結果を下記に示す。
○:着色無し
×:ヤケ状の着色あり
【0085】
【表1】
【産業上の利用可能性】
【0086】
本発明の環状ホスホネート化合物は、有機重合体用の難燃剤として有用である。