(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6386448
(24)【登録日】2018年8月17日
(45)【発行日】2018年9月5日
(54)【発明の名称】ブタインターフェロンアルファ及びブタインターフェロンガンマを同時に発現する組換えアデノウィルス
(51)【国際特許分類】
C12N 7/00 20060101AFI20180827BHJP
C12N 15/861 20060101ALI20180827BHJP
A61K 35/76 20150101ALI20180827BHJP
A61K 48/00 20060101ALI20180827BHJP
A61P 31/12 20060101ALI20180827BHJP
C07K 14/56 20060101ALN20180827BHJP
C07K 14/57 20060101ALN20180827BHJP
C07K 7/08 20060101ALN20180827BHJP
【FI】
C12N7/00ZNA
C12N15/861 Z
A61K35/76
A61K48/00
A61P31/12 171
!C07K14/56
!C07K14/57
!C07K7/08
【請求項の数】5
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2015-514906(P2015-514906)
(86)(22)【出願日】2013年5月31日
(65)【公表番号】特表2015-523858(P2015-523858A)
(43)【公表日】2015年8月20日
(86)【国際出願番号】KR2013004784
(87)【国際公開番号】WO2013180501
(87)【国際公開日】20131205
【審査請求日】2016年5月24日
(31)【優先権主張番号】10-2012-0058410
(32)【優先日】2012年5月31日
(33)【優先権主張国】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】514304865
【氏名又は名称】大韓民国(マネージメント:ミニストリー オブ アグリカルチャー、フード アンド ルーラル アフェアーズ、アニマル アンド プラント クァランティン エージェンシー)
【氏名又は名称原語表記】REPUBLIC OF KOREA (MANAGEMENT MINISTRY OF AGRICULTURE, FOOD AND RURAL AFFAIRS, ANIMAL AND PLANT QUARANTINE AGENCY)
(74)【代理人】
【識別番号】100132230
【弁理士】
【氏名又は名称】佐々木 一也
(74)【代理人】
【識別番号】100082739
【弁理士】
【氏名又は名称】成瀬 勝夫
(74)【代理人】
【識別番号】100087343
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 智廣
(74)【代理人】
【識別番号】100198269
【弁理士】
【氏名又は名称】久本 秀治
(72)【発明者】
【氏名】キム ス ミ
(72)【発明者】
【氏名】パク ジョン ヒョン
(72)【発明者】
【氏名】リー クァン ニョン
(72)【発明者】
【氏名】コー ヨウン ジョン
(72)【発明者】
【氏名】リー ヒャン シム
(72)【発明者】
【氏名】シン ユン キュン
(72)【発明者】
【氏名】キム ビョウン ハン
【審査官】
飯室 里美
(56)【参考文献】
【文献】
米国特許出願公開第2009/0269372(US,A1)
【文献】
国際公開第2007/059461(WO,A1)
【文献】
国際公開第2002/087336(WO,A1)
【文献】
Biologicals,2010年 9月,vol. 38, issue. 5,page. 586-593
【文献】
Gene Therapy, 2001, Vol.8, p.864-873
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 7/00
C12N 15/00−15/90
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ブタインターフェロンアルファ遺伝子、配列番号1の塩基配列を有する口蹄疫ウィルス2A遺伝子、及びブタインターフェロンガンマ遺伝子の順に配列された、配列番号2の塩基配列を含むことを特徴とする組換えアデノウィルス。
【請求項2】
前記ブタインターフェロンアルファ及びブタインターフェロンガンマ遺伝子を同時に発現することを特徴とする請求項1に記載の組換えアデノウィルス。
【請求項3】
前記組換えアデノウィルスは、アデノウィルスベクターであることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の組換えアデノウィルス。
【請求項4】
前記組換えアデノウィルスは、口蹄疫ウィルスを抑制することを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の組換えアデノウィルス。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか一項に記載の組換えアデノウィルスを含む口蹄疫ウィルス抑制剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、口蹄疫ウィルスの抑制効果を示す組換えウィルスに係り、さらに詳しくは、口蹄疫2A遺伝子の挿入を通じてブタインターフェロンアルファ及びインターフェロンガンマを同時に発現させてブタインターフェロンアルファ及びガンマを一括処理して口蹄疫ウィルスに対する抑制効果を増強させることのできる組換えアデノウィルスに関する。
【背景技術】
【0002】
口蹄疫(Foot−and−mouth disease;FMD)は、蹄が二つに分かれた動物に感染されるウィルス水疱性疾病であり、速い複製及び速い伝播力が特徴である。この疾病は、その経済的な重要性により、国際獣疫事務局(OIE)によりリストA(List A)疾病として分類されており、畜産物の国家間交易において非常に重要な要素として働いている。病原体は一本鎖の両極性RNAウィルスであり、ピコルナウイルス科(Picornaviridae)及びアフトウイルス(Apthovirus)属に属し、7つの異なる血清型(A、O、C、Asia1、SAT1、SAT2、SAT3)に分類されている。
【0003】
口蹄疫は、突発時に防御対策として用いられている緊急ワクチンを豚に接種した場合(緊急ワクチン接種)、平均7日後に口蹄疫ウィルス感染に対する防御能が形成される(J.S.Salt et al, 1998, Vaccine 16:746−754)。しかしながら、豚の場合、ワクチンによる抗体形成が遅く、排出するウィルス量が牛よりも遥かに多い。なお、豚は、感染後24時間以内にウィルスを呼吸器に排出するため、ワクチンの接種後から防御能の形成前までウィルスの伝播の危険性は一層高くなる。
【0004】
このため、これに対する対備策として、口蹄疫ウィルス抑制剤が提示されている。中でも、組換えアデノウィルスを伝達システムとして用いたインターフェロンアルファを含むタイプIインターフェロンを適用して口蹄疫ウィルスを効果的に防御した研究結果が報告されて以来(Chinsangaram, J. et al., 2001, Journal of Virology 75:5498−5503)、インターフェロンガンマを発現する組換えアデノウィルスをインターフェロンアルファ発現アデノウィルスと混用して向上した抑制効果を確認した(Maraes MP et al., 2007, Journal of Virology 81:7124−7135)。インターフェロンアルファは、最も広く知られている直接的なウィルス抑制物質であり、インターフェロンガンマは、補助T細胞(T−helper cell)及びナチュラルキラー細胞(natural killer cell)においてサイトカイン(cytokine)の分泌を誘導する役割を果たしてウィルスに対する直間接的な抑制効果を示す。このようにインターフェロンアルファ及びガンマを併用することから様々な免疫誘導に有利であるメリットがあるにも関わらず、インターフェロンガンマの抗ウィルス効果がアルファよりも相対的に低いため単に混用する場合に抑制効率が下がるという欠点がある。
【0005】
一方、口蹄疫ウィルス2Aシーケンスは、口蹄疫ウィルス遺伝子内において自己開裂(self cleavage)が起こる部分であり、遺伝子内に挿入した場合に遺伝子転写後に自己開裂を引き起こして2つのタンパク質の発現を可能にする。2Aシーケンスは、同じ役割を果たす配列内リボソーム進入部位(IRES:Internal ribosomal entry site)シーケンスよりも遺伝子が小さいだけではなく、遺伝子が開裂されて2つのタンパク質となる効率が約9倍ほど高いという研究結果が報告されている(SH Ha et al, 2010, Plant biotech, 8:928−938)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そこで、本発明者らは、現在、動物への適用に最適であり、抑制効果に対する可能性が高いインターフェロンを用いてより安価に且つ手軽にウィルスを動物においてより効果的に抑制することのできる抑制剤を開発して提示しようとしており、口蹄疫2Aシーケンスを挿入することにより、ブタインターフェロンアルファ及びブタインターフェロンガンマを同時に発現すると、これらのインターフェロンを一括で処理する効果があり、より効率よく口蹄疫ウィルス抑制効果が得られるということを見出し、本発明を完成するに至った。
【0007】
したがって、本発明の目的は、ブタインターフェロンアルファ及びブタインターフェロンガンマを同時に発現することのできる組換えウィルスを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記目的を達成するために、本発明は、ブタインターフェロンアルファ、口蹄疫ウィルス2A及びブタインターフェロンガンマ遺伝子の順に配列された、配列番号2の塩基配列を含む組換えアデノウィルスまたはプラスミドを提供する。
【発明の効果】
【0009】
本発明の組換えアデノウィルスは、ブタインターフェロンアルファ及びブタインターフェロンガンマを同時に発現することができて、ブタインターフェロンアルファ及びブタインターフェロンガンマを一括で処理することができ、且つ、これらのそれぞれのインターフェロンを単独でまたは組み合わせて使用するときよりもさらに経済的であり、簡単に使用することができ、より効率的であり、しかも、高いレベルの口蹄疫ウィルス抑制効果を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】
図1は、ブタインターフェロンアルファ及びガンマを同時に発現する組換えアデノウィルスの産生のためのデザイン戦略を示す図である。
【
図2】
図2は、組換えアデノウィルスにおけるブタインターフェロンアルファ及びガンマの発現をウェスターンブロット(Western blot)により確認した写真である。
【
図3】
図3は、組換えアデノウィルス力価別の口蹄疫ウィルスの抑制度を比較したグラフである。
【
図4】
図4は、ブタインターフェロンアルファ及びガンマを同時に発現する組換えアデノウィルスの方がそれぞれを単独で発現する組換えアデノウィルスよりもマウスにおける口蹄疫ウィルス抑制効果が増強されていることを示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明は、ブタインターフェロンアルファ及びブタインターフェロンガンマの遺伝子を一つの遺伝子に挿入し、口蹄疫2Aシーケンスを前記インターフェロン遺伝子の間に挿入して2種類のインターフェロンが同時に発現されるように講じられた組換えウィルスを提供し、特に、ウィルスベクターとしてアデノウィルスベクターが使用可能である。
【0012】
また、本発明は、ブタインターフェロンアルファ及びブタインターフェロンガンマの遺伝子を一つの遺伝子に挿入し、口蹄疫2Aシーケンスを前記インターフェロン遺伝子の間に挿入して2種類のインターフェロンが同時に発現されるように講じられたタンパク質発現ベクターを提供し、特に、タンパク質発現ベクターとしてプラスミドが使用可能である。
【0013】
本発明の組換えウィルスまたはプラスミドは、ブタインターフェロンアルファ及びブタインターフェロンガンマを同時に発現することから、インターフェロンを単独でまたは組み合わせて使用するときよりもさらに経済的であり、簡単に使用することができ、より効率的に口蹄疫ウィルスを抑制することができる。
【0014】
また、本発明は、上記の組換えウィルスまたはプラスミドを含む口蹄疫ウィルス抑制剤を提供する。本発明の組換えウィルスは、同じ力価を適用するときに、インターフェロンアルファ及びガンマをそれぞれ別々に発現する組換えウィルスを利用する場合と比較して遥かに高い口蹄疫ウィルス抑制効果を示す。この理由から、本発明の組換えウィルスは、一つのウィルスで2種類の効果を出すことが可能であり、小さな力価で同じ効果を提供することができて、効能が増大された新規な口蹄疫抑制剤として利用することができる。また、インターフェロンアルファ及びガンマをそれぞれ別々に発現する組換えウィルスを用いる場合よりも半分の組換えウィルス力価を使用するので、2倍の経済的な費用節減性及び簡便性を図ることができ、しかも、高力価のウィルス接種により起こる副作用を低減することができる。さらに、インターフェロンの広範な抗ウィルス効果を考慮したとき、種々のウィルス疾病に適用可能であると予想される。
【0015】
以下、本発明を下記の実施例を挙げてより具体的に説明する。これらの実施例は本発明の内容を理解するために提示されるものであり、本発明の権利範囲がこれらの実施例に限定されることはなく、当業界において通常的に知られている変形、置換及び挿入などを行うことができ、これに対するものも本発明の範囲に含まれる。
【実施例】
【0016】
[実施例1] 組換えアデノウィルスの製作
CMVプロモータの後ろにブタインターフェロンアルファ及びブタインターフェロン
ガンマシーケンスを挿入し、両遺伝子の間に口蹄疫ウィルス2A遺伝子を入れて同時に発現させ、これについては、
図1に例示されている。
【0017】
より具体的に、ブタインターフェロンアルファ遺伝子は、Porcine interferon alpha 1であり、Genebank no.NM_214393の遺伝情報を採用し、ブタインターフェロンガンマ遺伝子はGenebank no.AY293733の遺伝情報を採用した。なお、配列番号1に示す口蹄疫ウィルス2Aシーケンス(CAGCTGTTGAACTTTGACCTGCTCAAGTTGGCAGGAGACGTCGAGCCCAACCCTGGGCCC:配列番号1)を二つのブタインターフェロン遺伝子の間に配置して配列番号2に示す遺伝子を(株)Bioneerにおいて合成した。このとき、合成遺伝子配列の5’末端にはNheI制限酵素部位を、3’末端にはXbaI制限酵素部位を入れてクローニング可能なようにし、インターフェロンアルファ部分の終止コドンは除去し、インターフェロンガンマの3’末端に終止コドンを配置した。なお、インターフェロン遺伝子部分の豚における効果的なタンパク質の発現のためにコドン出現頻度(codon usage)の評価を行った。
【0018】
<ブタインターフェロンアルファ及びガンマを同時に発現するための遺伝子配列(両端にNheI、XbaI制限酵素配列を含む;配列番号2)>
ATTTGCTCTCTGGGCTGTGATCTGCCACAGACCCACAGCCTGGCTCACACCCGGGCCCTGCGGCTCCTGGCACAGATGCGGAGAATATCCCCGTTTTCCTGTCTGGACCACCGAAGGGACTTCGGATCCCCTCATGAGGCTTTCGGGGGCAACCAGGTACAGAAGGCTCAGGCCATGGCTCTGGTGCATGAGATGCTCCAGCAGACCTTTCAGCTCTTCAGCACAGAGGGCTCGGCTGCGGCCTGGAATGAGAGCCTCCTGCACCAGTTCTGCACTGGACTGGATCAGCAGCTGCGCGATCTGGAAGCCTGCGTCATGCAGGAAGCAGGGCTGGAAGGGACCCCCCTGTTGGAGGAAGACTCCATCCTGGCTGTGCGGAAGTACTTCCACAGGCTCACCCTCTATCTGCAAGAGAAGTCCTACAGCCCCTGTGCCTGGGAGATCGTCAGGGCCGAGGTGATGCGCTCGTTCTCTTCCAGCAGAAACCTGCAGGATAGACTTCGCAAGAAGGAGCAGCTGTTGAACTTTGACCTGCTCAAGTTGGCAGGAGACGTCGAGCCCAACCCTGGGCCCATGAGCTACACAACTTATTTCTTAGCCTTTCAGCTTTGCGTGACTTTGTGTTTCTCCGGCTCTTACTGCCAGGCGCCCTTTTTTAAGGAGATCACGATCCTAAAGGACTATTTTAACGCAAGTACCTCAGATGTCCCTAACGGTGGCCCTCTTTTCTTAGAAATTTTGAAGAATTGGAAAGAGGAGAGTGACAAGAAAATCATCCAGAGCCAGATCGTTTCCTTCTACTTTAAATTCTTTGAGATCTTCAAAGACAACCAGGCCATTCAAAGGAGTATGGACGTGATTAAGCAAGACATGTTTCAGCGCTTCCTTAACGGTAGCTCTGGCAAACTGAATGACTTCGAGAAGCTGATTAAAATCCCGGTTGATAATCTGCAGATCCAGCGCAAAGCGATCAGCGAACTCATCAAGGTGATGAATGATCTGTCACCACGTTCTAACCTAAGGAAGCGGAAGCGAAGTCAGACAATGTTCCAGGGCCAGAGAGCATCAAAATAATCTAGA
【0019】
組換えアデノウィルスの製作のために、pShuttleベクター(クローンテック社製)にNheI、XbaI制限酵素部分を介して遺伝子クローニングを行った後、遺伝子分析(シーケンシング)を通じて確認した。次いで、このクローニングされたpShuttleベクタープラスミドを、非常に稀に存在するPI−SceI及びI−Ceuに対する制限酵素サイトをPI−SceI及びI−Ceuを用いて切断し、線形化された目的遺伝子断片をAdeno−X Viral DNA(PI−SceI及びI−Ceu前処理)に結さつ(ライゲーション)した。次いで、制限酵素Swa Iで処理して未挿入の自己連結(セルフライゲーション)や非組換えアデノウィルスDNAを除去した。次いで、形質転換(トランスフォーメーション)及び遺伝子プレップを行った組み換えられたプラスミド(発現しようとする遺伝子がアデノウィルスDNAと組み換えられる)を選択した。確認された遺伝子をPac I酵素で処理して線形化させた後、293 A細胞に形質感染(トランスフェクション)させた。細胞において80%以上の細胞変性効果(cytopathic effect;CPE)が見られると、組換えアデノウィルスを収穫した。産生されたアデノウィルスは、Virabind Adenovirus Purification Mini Kit(セルバイオラブス社製)を用いてウィルスのみを精製した後、力価(TCID
50)を測定して保管した。
【0020】
[実施例2] ブタインターフェロンアルファまたはガンマの発現確認
組換えアデノウィルスにおけるブタインターフェロンアルファ及びガンマの発現有無を確認するためにウェスターンブロット方法を利用した。ウェスターンブロットを行う前日にIBRS−2(豚腎臓細胞)を準備して75cm
2のフラスコに敷き、翌日に90%の細胞断層が形成されれば、新たな培地に希釈した約1×10
8TCIDのアデノウィルスをそれぞれ接種した。接種48時間後に培地を回収してAmicon ultra centrifugal filter(ミリポア社製)を用いて濃縮した後にウェスターンブロットに供した。タンパク質発現の比較のために、ブタインターフェロンアルファを発現するアデノウィルス(Ad−porcine IFN-α)、ブタインターフェロンガンマを発現するアデノウィルス(Ad−porcine IFN-γ)、ブタインターフェロンアルファ及びガンマを同時に発現するアデノウィルス(Ad−porcine IFN-αγ)を一緒に実験した。ブタインターフェロンアルファの確認のために抗IFNアルファ単一クローン抗体K9(サーモサイエンティフィック社製)を500倍に希釈して使用し、ブタインターフェロンガンマの確認のためには抗ブタIFN−ガンマ多重クローン抗体(サーモサイエンティフィック社製)を500倍に希釈して使用した。ECL
TMプライムウェスターンブロット検出試薬(GEヘルスケアライフサイエンス社製)を用いて発色し、Imagequant LAS 4000 system(GEヘルスケア社製)を用いてイメージを得、これを
図2に示す。
【0021】
[実施例3] ELISAを用いたブタインターフェロンアルファまたはガンマの定量及びタンパク質の確認
前記製造した組換えアデノウィルスにおいて発現されるブタインターフェロンアルファ及びガンマをPorcine IFN-α ELISA(酵素結合免疫吸着測定法) Kit(ユーエスシーエヌライフサイエンス社製)及びPorcine IFN-γ ELISA Kit(サーモサイエンティフィック社製)を用いて定量した。その結果を下記表1に示す。
【0022】
【表1】
【0023】
前記表1に示すように、1×10
4力価のAd−porcine IFNαγにおいてAd−porcine IFN-αまたはAd−porcine IFN-γにおけるタンパク質量と同等なレベルでタンパク質が発現されることが確認され、Ad−porcine IFNαγにおいては意図の通りにインターフェロンアルファ及びガンマが両方とも発現されることが確認された。
【0024】
[実施例4] 組換えアデノウィルスの力価別の口蹄疫ウィルスの抑制度の評価(試験管内分析)
組換えアデノウィルスの力価別の口蹄疫ウィルスの抑制度を評価した。このために、IBRS−2(豚腎臓細胞)を準備して75cm
2のフラスコに敷き、翌日に90%の細胞断層が形成されたときに、各力価別に10倍に段階的に希釈して組換えアデノウィルスを接種した。翌日に上澄液を除去した後に600 TCID
50の口蹄疫ウィルスを接種し、接種1時間後に培地を交換した。口蹄疫ウィルス接種48時間後に上澄液を回収してリアルタイムRT−PCRで口蹄疫ウィルスの複製数を測定した。リアルタイムRT−PCRは、口蹄疫の3D部分を目的とするプライマーセンス5’−GGAACYGGGTTTTAYAAACCTGTRAT−3’(配列番号3)、アンチセンス5’−CCTCTCCTTTGCACGCCGTGGGA−3’(配列番号4)と、プローブ5’−FAM−CCCADCGCAGGTAAAGYGATCTGTA−TAMRA−3’(配列番号5)及びABI 7500 Real−time PCR system(アプライドバイオシステムズ社製)を用いて行った(Su−Mi Kim et al., Multiple shRNAs driven by U6 and CMV promoter enhances efficiency of antiviral effects against foot−and−mouth disease virus, 2010, Antiviral Research 87:307−317)。その結果を
図3に示す。
【0025】
図3を参照すると、Ad−porcine IFNαγは、力価値とは無関係に、Ad−porcine IFN-γよりも優れた口蹄疫ウィルスの抑制効果を示し、1000TCID
50以下ではAd−porcine IFN-αよりも優れた口蹄疫ウィルスの抑制効果を示し、特に、100TCID
50においては、Ad−porcine IFN-α及びAd−porcine IFN-γと比較して遥かに優れた口蹄疫ウィルスの抑制効果を示すということを確認することができる。
【0026】
[実施例5] 組換えアデノウィルスによる口蹄疫ウィルスの抑制効果の評価(生体内分析)
この実験のために、実験群当たりに15匹または14匹(Ad−null対照群)にして、合計59匹のICRマウス6日齢個体を準備し、個体当たりに2×10
7 TCID
50のアデノウィルスを接種した。接種24時間後に口蹄疫ウィルスを250LD
50接種した後、7日間の生存率を観察し、その結果を
図4に示す。
【0027】
図4から明らかなように、観察したところ、初期である3日目からAd−porcine IFNαγを接種したマウス群(80%生存率)の方が、Ad−porcine IFN-α(60%生存率)またはAd−porcine IFN-γ(33%生存率)の接種群よりも高い生存率を示し、接種7日目にはAd−porcine IFNαγが約40%の生存率を示すのに対し、Ad−porcine IFN-α及びAd−porcine IFN-γの接種群は20%代の生存率を示した。したがって、本発明の産生物であるAd−porcine IFNαγの接種時に、同じ力価のインターフェロンを別途に接種したときよりも向上した口蹄疫抗ウィルス効果を示すということがマウス実験においても証明された。
【配列表フリーテキスト】
【0028】
配列番号1:口蹄疫ウィルス2Aシーケンス
配列番号2:ブタインターフェロンアルファ及びガンマを同時に発現するための遺伝子配列(両端にNheI、XbaI制限酵素配列を含む)
配列番号3:RT−PCRに用いるセンスプライマーの配列
配列番号4:RT−PCRに用いるアンチセンスプライマーの配列
配列番号5:RT−PCRに用いるプローブの配列
【配列表】
[この文献には参照ファイルがあります.J-PlatPatにて入手可能です(IP Forceでは現在のところ参照ファイルは掲載していません)]