(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6386449
(24)【登録日】2018年8月17日
(45)【発行日】2018年9月5日
(54)【発明の名称】ガソリンパーティキュレートフィルタの上流側で使用するための始動時触媒
(51)【国際特許分類】
B01J 23/58 20060101AFI20180827BHJP
B01D 53/94 20060101ALI20180827BHJP
F01N 3/10 20060101ALI20180827BHJP
F01N 3/28 20060101ALI20180827BHJP
F01N 3/24 20060101ALI20180827BHJP
F01N 3/025 20060101ALI20180827BHJP
【FI】
B01J23/58 AZAB
B01D53/94 245
F01N3/10 A
F01N3/28 301P
F01N3/24 B
F01N3/24 E
F01N3/025 101
【請求項の数】12
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2015-515421(P2015-515421)
(86)(22)【出願日】2013年6月5日
(65)【公表番号】特表2015-520024(P2015-520024A)
(43)【公表日】2015年7月16日
(86)【国際出願番号】EP2013001644
(87)【国際公開番号】WO2013182302
(87)【国際公開日】20131212
【審査請求日】2016年5月23日
(31)【優先権主張番号】12171015.6
(32)【優先日】2012年6月6日
(33)【優先権主張国】EP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】505446895
【氏名又は名称】ユミコア アクチェンゲゼルシャフト ウント コンパニー コマンディートゲゼルシャフト
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【弁護士】
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】クリングマン, ラオウル
(72)【発明者】
【氏名】デプレ, ジョエル
(72)【発明者】
【氏名】ロッシュ, マルティン
(72)【発明者】
【氏名】リヒター, イェルク−ミヒャエル
(72)【発明者】
【氏名】シュピース, シュテファーニエ
【審査官】
森坂 英昭
(56)【参考文献】
【文献】
特開2009−000648(JP,A)
【文献】
特開2008−168278(JP,A)
【文献】
特表平09−500570(JP,A)
【文献】
特開2003−326170(JP,A)
【文献】
特表2011−525579(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01J 21/00 − 38/74
B01D 53/86
B01D 53/94
F01N 3/00 − 3/38
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
不活性触媒担体上の2層型三元触媒であって、ここで、前記2層型三元触媒は、
活性アルミナ、セリウム/ジルコニウム複合酸化物および触媒活性を有する貴金属としてのパラジウムを含む、前記不活性触媒担体上の第1層と、
活性アルミナおよび触媒活性を有する貴金属としてのロジウムを含み、そしてネオジム/ジルコニウム複合酸化物を含む、前記第1層に適用された、浄化すべき排ガスと直接接触する第2層と
を含み、
前記第2層がセリウムもセリウム含有物質も含まず、かつロジウム以外の触媒活性を有する貴金属を一切含まないことを特徴とする、2層型三元触媒。
【請求項2】
前記第1層の前記セリウム/ジルコニウム複合酸化物における酸化セリウム対酸化ジルコニウムの重量比が0.1〜1.2であることを特徴とする、請求項1に記載の2層型三元触媒。
【請求項3】
前記第1層がパラジウム以外の触媒活性を有する貴金属を一切含まないことを特徴とする、請求項1または2に記載の2層型三元触媒。
【請求項4】
前記第2層のロジウムが、活性アルミナおよびネオジム/ジルコニウム複合酸化物の両方の上に付着していることを特徴とする、請求項1に記載の2層型三元触媒。
【請求項5】
前記第2層の前記ネオジム/ジルコニウム複合酸化物における酸化ネオジム対酸化ジルコニウムの重量比が0.2〜0.5であることを特徴とする、請求項1に記載の2層型三元触媒。
【請求項6】
前記第2層が前記第1層を完全に覆っていることを特徴とする、請求項1〜5のいずれか一項に記載の2層型三元触媒。
【請求項7】
前記不活性触媒担体と前記第1層との間に中間層を含むことを特徴とする、請求項1〜6のいずれか一項に記載の2層型三元触媒。
【請求項8】
前記中間層が活性アルミナを含み、かつ白金族金属を含まないことを特徴とする、請求項7に記載の2層型三元触媒。
【請求項9】
前記不活性触媒担体が、ハニカム構造を有するフロースルー型モノリス体であることを特徴とする、請求項1〜8のいずれか一項に記載の2層型三元触媒。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれか一項に記載の2層型三元触媒の、ガソリンエンジンを搭載した自動車の排ガスを浄化するための使用。
【請求項11】
請求項1〜9のいずれか一項に記載の2層型三元触媒およびガソリンパーティキュレートフィルタ(GPF)を含む排ガス処理システム。
【請求項12】
前記ガソリンパーティキュレートフィルタが、ハニカム構造を有するウォールフロー型モノリス体であることを特徴とする、請求項11に記載の排ガス処理システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガソリンエンジンの排ガスの浄化に使用するための三元触媒に関する。
【背景技術】
【0002】
燃焼機関において、燃料は完全に燃焼するわけではなく、未燃焼炭化水素(HC)、一酸化炭素(CO)、窒素酸化物(NO
x)および粒子状物質(PM)等の汚染物質が排出されることは当該分野においてよく知られている。空気質を改善することを目的として、定置用途および移動発生源から排出される汚染物質を削減するために排出上限を定めた法律が制定されている。乗用車等の移動発生源に関しては、主要な対策を講じることによって汚染物質排出量の削減を達成することができた。主要な対策として、燃料と空気の混合を改善することによって汚染物質がかなり削減された。しかしながら、法律は年々厳しくなっており、不均一触媒の使用が避けられなくなっている。
【0003】
ガソリンエンジンの場合は、いわゆる三元触媒(TWC)を用いることによって、HC、COおよびNO
xを除去することが可能である。TWCは、ラムダを1±0.005近傍とし、空気/燃料比を14.56として使用するのが最適である。これらの値を超えると排ガスはリーンと呼ばれ、COおよびHCは接触酸化されて二酸化炭素および水となる。この値を下回ると、排ガスはリッチと呼ばれ、主としてNO
xが、例えばCOを還元剤として還元されて窒素N
2となる。
【0004】
HC、COおよびNO
xの転化率はラムダ=1の場合に最適となる。しかし、ガソリンエンジンはわずかにリーンな状態とわずかにリッチな状態との間を行き来する条件で運転される。完全にリッチな条件下になると炭化水素および一酸化炭素の転化率は急激に低下する。TWCが最大限に機能する幅を広くするために、TWCを配合する際にCe複合酸化物の形態にある酸素貯蔵物質(OSM)が組み込まれていた。
【0005】
最近では、ガソリンエンジンから排出される粒子状物質(PM)の方に関心が高まりつつある。今後登場する新型のガソリン車には、PMの排出量を低減すると同時に、HC、COおよびNO
xを転化する所定の三元活性も有する、触媒付きガソリンパーティキュレートフィルタ(GPF)の使用が求められる可能性がある。生憎なことに、GPFは触媒として単独で使用することができない。その理由は、GPFのライトオフ性能が通常は劣っていることにあり、そのため、特に冷間始動時はHCが排出されるので、HCの排出量が許容できないほど増加してしまう。
【0006】
したがって、この問題に対処することが必要であり、本発明は、GPFを含む排ガス浄化システムのHCライトオフ性能を改善することを目的とする。
【0007】
国際公開第2008/000449A2号パンフレットには、従来の2層型三元触媒が記載されている。この発明において、第1層は活性酸化アルミニウムおよび第1Ce/Zr複合酸化物を含み、どちらもパラジウムで活性化されている。第2層は、活性酸化アルミニウムおよび第2Ce/Zr複合酸化物を含み、どちらもロジウムで活性化されている。この発明の特徴は、第1複合酸化物のCe/Zr比が第2複合酸化物のCe/Zr比よりも高いことにある。
【0008】
国際公開第2008/113445A1号パンフレットにも2層型三元触媒が開示されており、どちらの層も活性アルミナ、Ce/Zr複合酸化物およびパラジウムを含んでいる。これらの層の違いは、第2層が白金に加えてロジウムを含むことと、第1層の複合酸化物のCe/Zr比が第2層の複合酸化物のCe/Zr比よりも高いこととにある。
【0009】
米国特許第6,044,644号明細書および米国特許第6,254,842号明細書には、冷間始動時にガソリンエンジンから排出される炭化水素を低減するように設計された直結型触媒が開示されている。これは、酸化セリウムおよび酸化プラセオジウムを実質的に含んでいないことを除いてTWC触媒組成物に使用される種類の構成成分を含んでいる。
欧州特許出願公開第2042225A1号明細書には、触媒付きガソリンパーティキュレートフィルタの上流側に三元触媒を備えたシステムが記載されている。最適な濾過を達成するために、GPF上流のTWCは酸素吸蔵物質を100g/L未満で含有している。GPFの上流に三元触媒を備えたシステムは米国特許出願公開第2009/193796号明細書および米国特許出願公開第2011/030346号明細書にも開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】国際公開第2008/000449号
【特許文献2】国際公開第2008/113445号
【特許文献3】米国特許第6,044,644号明細書
【特許文献4】米国特許第6,254,842号明細書
【特許文献5】欧州特許出願公開第2042225号明細書
【特許文献6】米国特許出願公開第2009/193796号明細書
【特許文献7】米国特許出願公開第2011/030346号明細書
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、
活性アルミナ、セリウム/ジルコニウム複合酸化物および触媒活性を有する貴金属としてのパラジウムを含む、不活性触媒担体上の第1層と、
第1層上に適用された、浄化すべき排ガスと直接接触する、活性アルミナおよび触媒活性を有する貴金属としてのロジウムを含む第2層と
を備える不活性触媒担体上の2層型三元触媒であって、
第2層がセリウムもセリウム含有物質も含まず、かつロジウム以外に触媒活性を有する貴金属を一切含まないことを特徴とする、三元触媒を提供する。
【0012】
第1層は、パラジウム以外に、さらなる触媒活性を有する貴金属として、白金および/またはロジウムを含むことができる。
【0013】
本発明の好ましい実施形態においては、第1層にはパラジウム以外に白金が存在する。
【0014】
本発明のさらなる好ましい実施形態においては、第1層は、パラジウム以外に触媒活性を有する貴金属を一切含まない。
【発明を実施するための形態】
【0015】
触媒活性を有する貴金属は、具体的な運転要件を考慮して選択された量で使用され、この量は、所望の汚染物質転化率に依存する。通常、パラジウムは、不活性触媒担体の体積を基準として0.1〜15g/Lの量で使用される。ロジウムの含有量は、通常は、不活性触媒担体の体積を基準として0.01〜1g/Lである。第1層中に白金が存在する場合、その使用量は、通常は、不活性触媒担体の体積を基準として0.01〜1g/Lである。
【0016】
触媒活性を有する貴金属は、触媒の1種または複数種の他の成分の上に付着している。例えば、第1層の触媒活性を有する貴金属は、活性アルミナ上またはセリウム/ジルコニウム複合酸化物上またはその両方の上に付着させることができる。
【0017】
第1層および第2層の活性アルミナは、通常、酸化ランタンをアルミナの総重量を基準として1〜10重量%、好ましくは3〜6重量%、より好ましくは3.5〜4.5重量%添加することによって安定化される。
【0018】
第1層に使用されるセリウム/ジルコニウム複合酸化物は、酸化セリウム対酸化ジルコニウムの重量比で特徴付けられる。このような重量比は幅広い範囲内で変化させることができ、この触媒によって解決することが想定されている特定の技術的課題に依存する。通常は、酸化セリウム対酸化ジルコニウムの重量比は0.1〜1.2、好ましくは0.8〜1.2である。
【0019】
セリウム/ジルコニウム複合酸化物は、好ましくは不活性触媒担体の体積を基準として40〜60g/Lの量で使用される。
【0020】
本発明における「セリウムもセリウム含有物質も含まない」という語は、本発明の触媒の第2層が、セリウムもセリウム含有物質も有意な量で含まないことを意味する。但し、この語は、本発明の触媒の第2層が、不純物の形態で存在する可能性がある、あるいは第1層から第2層へと移行した可能性がある少量のセリウムもセリウム含有物質も含む可能性がないことを意味するものではない。
【0021】
本発明の好ましい実施形態においては、第2層は、ネオジム/ジルコニウム複合酸化物を含む。
【0022】
この種の複合酸化物における酸化ネオジム対酸化ジルコニウムの重量比は、好ましくは0.2〜0.5である。
【0023】
ネオジム/ジルコニウム複合酸化物は、好ましくは、不活性触媒担体の体積を基準として50〜80g/Lの量で使用される。
【0024】
ネオジム/ジルコニウム複合酸化物が第2層中に存在する場合、ロジウムは、活性アルミナ上またはネオジム/ジルコニウム複合酸化物上またはその両方の上に付着させることができる。好ましくは、ロジウムは、活性アルミナおよびネオジム/ジルコニウム複合酸化物の両方の上に付着している。
【0025】
本発明のさらなる実施形態においては、第2層は第1層を完全に覆っている。この場合、第1層は、浄化すべき排ガスと直接接触しない。
【0026】
本発明のさらなる実施形態においては、本発明の触媒は、不活性触媒担体と第1層との間に中間層を備える。
【0027】
通常、上記中間層は、活性アルミナを含み、白金族金属は含まない。中間層は、好ましくは、不活性触媒担体の体積を基準として20〜60g/Lの量で使用される。
【0028】
好ましい不活性触媒担体は、内燃機関の排ガスを流通させるための平行な流路を有する、体積Vを有するセラミックまたは金属のモノリス体である。流路の壁面は本発明による2つの層でコーティングされている。好ましくは、不活性触媒担体は、ハニカム構造を有するフロースルー型モノリス体である。
【0029】
本発明の触媒は、公知の方法で製造することができる。特に層は、担体上に、ウォッシュコート法によりコーティングされている。したがって、特定の層に使用することが意図された固体を水中に懸濁させる。第1層の場合、これらは活性酸化アルミニウムおよびセリウム/ジルコニウム複合酸化物である。水に可溶な貴金属塩から生成するパラジウムならびに場合により白金および/またはロジウムをこれらの材料に付着させる。パラジウムの場合は、米国特許第6,103,660号明細書に記載されたプロセスを用いて、好ましくは硝酸パラジウムを使用し、塩基として水酸化バリウムまたは水酸化ストロンチウムを使用する。こうして得られた懸濁液は、触媒担体のコーティングにそのまま使用することができる。適用された層は、次いで乾燥され、場合により焼成される。
【0030】
硝酸パラジウムを析出させるための塩基として水酸化バリウムまたは水酸化ストロンチウムを使用することにより、最終的な焼成を行った後の活性酸化アルミニウムの表面およびセリウム/ジルコニウム複合酸化物の表面に酸化バリウムまたは酸化ストロンチウムが付着したまま残留する。
【0031】
第1層に触媒活性を有する貴金属の混合物を使用する場合、混合物中の全ての種類の金属を1回の操作で同時に付着させることも、異なる操作で連続して付着させることも可能である。
【0032】
その後、第2コーティングを適用する。この目的のために、活性酸化アルミニウムおよび場合によりネオジム/ジルコニウム複合酸化物を水中に懸濁させ、その上にロジウムを付着させる。これは、硝酸ロジウムを導入することにより達成することができる。
【0033】
最後に、第1層および第2層を担持している担体を乾燥および焼成すると、使用可能な状態になる。
【0034】
上述した手順に替えて、触媒活性を有する貴金属を、触媒の任意の固体成分上に別々に付着させることもできる。そのようにしてから、例えば、パラジウムで活性化された酸化アルミニウムおよびパラジウムで活性化されたセリウム/ジルコニウム複合酸化物を一緒に水中に懸濁させて、触媒担体に適用する。このような手順により、一方では、触媒活性を有する貴金属を酸化アルミニウム上に集中させることが可能になり、他方では、例えば、セリウム/ジルコニウム複合酸化物またはネオジム/ジルコニウム複合酸化物を制御しながら構築することが可能になる。貴金属を酸化アルミニウムおよびジルコニウム複合酸化物上に別々に付着させる場合は、欧州特許第957064号明細書に記載されたプロセスを用いることが好ましい。
【0035】
本発明の触媒は、ガソリンエンジンを搭載した自動車の排ガスを浄化するための三元触媒として適しており、この目的のために、当業者に知られている方法で使用することができる。
【0036】
したがって、さらに本発明は、本発明の触媒の、ガソリンエンジンを搭載した自動車の排ガスを浄化するための使用を提供する。
【0037】
本発明の触媒は、床下用のメイン触媒として使用することもできるが、本発明の触媒をガソリンパーティキュレートフィルタ(GPF)の上流側の始動時触媒として使用すると特に有利である。本発明の触媒をこの構成で用いることにより上述した問題が解決する。すなわち、GPFを備えた車両の冷間始動時のHC排出量を十分に低減することができる。
【0038】
したがって本発明は、上述した本発明の触媒およびガソリンパーティキュレートフィルタ(GPF)を備える排ガス処理システムをさらに提供する。当業者は、本発明の触媒がGPFの上流側に位置する場合に限って、本発明の排ガス処理システムによって上述した問題が解決されることを知っており理解している。
【0039】
本発明の排ガス処理システムに使用するGPFの選択は重要ではなく、解決すべき具体的な技術的課題に依存する。好適なGPFは、例えば欧州特許出願公開第2042225A1号明細書および米国特許出願公開第2011/030346号明細書に記載されている。
【0040】
本発明の好ましい実施形態においては、ガソリンパーティキュレートフィルタは、ハニカム構造を有するウォールフロー型モノリス体である。
【実施例】
【0041】
本発明に関する試験を行うために、直径101.6mm、長さ101.6mmの円筒形のコーディエライト基材を使用した。セル数は600cpsiであり、隔壁の厚みは4.3milであった。
【0042】
比較例A:
国際公開第2008/000449A2号パンフレットに従い2層型三元触媒を参照用試料として使用し、上記出願公開に記載されている方法に従い、次に示すように作製した:
a)第1層の場合は、酸化ランタンで安定化されたアルミナ(La
2O
3を3重量%含み、比表面積が140m
2/gである)を、ZrO
2含有率が50%である第1Ce/Zr複合酸化物および塩基性成分としての水酸化ストロンチウムと混合することにより水性懸濁液を調製した。Pd(NO
3)
2を貴金属前駆体として使用し、全ての酸化物上に付着させた。懸濁液を最終処理(finalize)した後、生のコーディエライト基材に第1層をコーティングし、次いで乾燥ステップに付した。焼成後の第1層の組成を次に示す。
80g/L La安定化アルミナ
55g/L 第1Ce/Zr複合酸化物
10g/L 酸化ストロンチウム(全成分上)
2.72g/L パラジウム(全成分上)
【0043】
b)第2層の場合は、酸化ランタンで安定化されたアルミナ(La
2O
33重量%、比表面積140m
2/g)およびZrO
2含有率が70%である第2のCe−Zr複合酸化物を含む水性懸濁液を調製した。Rh(NO
3)
2水溶液をこの懸濁液に導入した。第2層を第1層の外側にコーティングした。乾燥ステップおよび焼成ステップを経た後の第2層の組成を次に示す。
70g/L La安定化アルミナ
65g/L 第2Ce/Zr複合酸化物
0.11g/L ロジウム(全成分上)
【0044】
得られた触媒を、次に記載する試験においてCC1と称する。
【0045】
実施例1:
a)比較例Aのステップa)と全く同様にしてコーディエライト基材に接する第1層を調製し、同一組成物を得た。
【0046】
b)第2層の場合は、酸化ランタンで安定化されたアルミナ(La
2O
33重量%、比表面積140m
2/g)およびZrO
2含有率が73%であるZr/Nd複合酸化物を含む水性懸濁液を調製した。Rh(NO
3)
2水溶液を懸濁液に導入した。第2層を第1層の外側にコーティングした。乾燥ステップおよび焼成ステップを経た後の第2層の組成を次に示す。
66g/L La安定化アルミナ
68g/L Zr/Nd複合酸化物
0.11g/L ロジウム(全成分上)
【0047】
得られた触媒を、次に記載する試験においてC1と称する。
【0048】
比較例A(CC1)および実施例1の触媒を2種類の試験で比較した:
第1の試験:C1およびCC1のライトオフ性能を求めるためにエンジンベンチで評価を行った。この試験のために、C1およびCC1の単一ブロックをエンジンベンチで38時間燃料カットを行うことによりエージングした後、試験を行った。
【0049】
供試体上流の排ガスは、排ガス流量を110Kg/hとし、HCを450ppm、NO
xを3000ppmおよびCOを0.79%含有するものとした。触媒の手前のラムダ値を0.999に設定した。昇温速度を22℃/分として触媒活性を250℃〜500℃で測定した。
【0050】
次に示す結果を得た。
【0051】
【表1】
【0052】
エージング後の本発明によるC1の活性は先行技術によるCC1と比較して驚くほど改善されており、3種の汚染物質であるHC、COおよびNO
x全てに関しライトオフが大幅に低下した。
【0053】
第2の試験:C1およびCC1をガソリンパーティキュレートフィルタと組み合わせてエンジンベンチでNEDCサイクルを行った。この試験を行うために、パラジウムを0.071g/Lおよびロジウムを0.035g/Lを含むGPFを使用した。GPFは直径を118.4mm、長さを152.4mmとした。セル数および壁厚はそれぞれ300cpsiおよび12milとした。ライトオフ触媒(それぞれC1およびCC1)およびガソリンパーティキュレートフィルタの距離を50cmに設定した。この試験のために、ラムダ制御センサをライトオフ触媒およびGPFの間に配置した。NEDCサイクルに使用したエンジンはEuro 4に従うキャリブレーションを行った1.4L直噴エンジンであった。
【0054】
試験を行う前に、C1、CC1およびガソリンパーティキュレートフィルタをエンジンベンチで38時間燃料カットを行うことによりエージングした。
【0055】
次に示す結果を得た。
【0056】
【表2】
【0057】
COおよびNO
xの排出量はC1およびCC1でほぼ等しいが、ブロックの手前にTWCとして本発明によるC1を使用した場合はHCの排出量が大幅に低下する。
【0058】
比較例B:
2層型三元触媒を次に示すように調製した:
a)第1層の場合は、酸化ランタンで安定化されたアルミナ(La
2O
3を3重量%含み、比表面積が140m
2/gである)を、塩基性成分としての水酸化バリウム50%と混合することにより水性懸濁液を調製した。Pd(NO
3)
2を貴金属前駆体として使用して、全ての酸化物上に付着させた。懸濁液を最終処理した後、生のコーディエライト基材に第1層をコーティングし、次いで乾燥ステップに付した。焼成後の第1層の組成を次に示す。
110g/L La安定化アルミナ
10g/L 酸化バリウム
2.72g/L パラジウム(全成分上)
【0059】
b)第2層の場合は、酸化ランタンで安定化されたアルミナ(La
2O
33重量%、比表面積140m
2/g)およびZrO
2含有率が約70%であるCe−Zr複合酸化物を含む水性懸濁液を調製した。Rh(NO
3)
2水溶液を懸濁液に導入した。第2層を第1層の外側にコーティングした。乾燥ステップおよび焼成ステップを経た後の第2層の組成を次に示す。
70g/L La安定化アルミナ
65g/L Ce/Zr複合酸化物
0.11g/L ロジウム(全成分上)
【0060】
得られた触媒を、次に示す試験においてCC2と称する。C1と同様に、CC2についてもエンジンベンチで38時間燃料カットを行うことによりエージングした後に試験を行った。
【0061】
C1およびCC2を比較するためにNEDCサイクルを上述したように行った。CC2に関し得られた結果を100%と定め、C1に関し得られた結果を相対的に表した。
【0062】
次に示す結果を得た。
【0063】
【表3】
【0064】
この場合もやはり、ブロックの手前に本発明によるC1をTWCとして使用した場合はHC排出量が大幅に低下する。
本発明の好ましい実施形態によれば、例えば、以下が提供される。
(項1)
活性アルミナ、セリウム/ジルコニウム複合酸化物および触媒活性を有する貴金属としてのパラジウムを含む、不活性触媒担体上の第1層と、
活性アルミナおよび触媒活性を有する貴金属としてのロジウムを含む、前記第1層に適用された、浄化すべき排ガスと直接接触する第2層と
を含む、前記不活性触媒担体上の2層型三元触媒であって、
前記第2層がセリウムもセリウム含有物質も含まず、かつロジウム以外の触媒活性を有する貴金属を一切含まないことを特徴とする、2層型三元触媒。
(項2)
前記第1層の前記セリウム/ジルコニウム複合酸化物における酸化セリウム対酸化ジルコニウムの重量比が0.1〜1.2であることを特徴とする、上記項1に記載の2層型三元触媒。
(項3)
前記第1層がパラジウム以外の触媒活性を有する貴金属を一切含まないことを特徴とする、上記項1または2に記載の2層型三元触媒。
(項4)
前記第2層がネオジム/ジルコニウム複合酸化物を含むことを特徴とする、上記項1〜3のいずれか一項に記載の2層型三元触媒。
(項5)
前記第2層のロジウムが、活性アルミナおよびネオジム/ジルコニウム複合酸化物の両方の上に付着していることを特徴とする、上記項4に記載の2層型三元触媒。
(項6)
前記第1層の前記ネオジム/ジルコニウム複合酸化物における酸化ネオジム対酸化ジルコニウムの重量比が0.2〜0.5であることを特徴とする、上記項4または5に記載の2層型三元触媒。
(項7)
前記第2層が前記第1層を完全に覆っていることを特徴とする、上記項1〜6のいずれか一項に記載の2層型三元触媒。
(項8)
前記不活性触媒担体と前記第1層との間に中間層を含むことを特徴とする、上記項1〜7のいずれか一項に記載の2層型三元触媒。
(項9)
前記中間層が活性アルミナを含み、かつ白金族金属を含まないことを特徴とする、上記項8に記載の2層型三元触媒。
(項10)
前記不活性触媒担体が、ハニカム構造を有するフロースルー型モノリス体であることを特徴とする、上記項1〜9のいずれか一項に記載の2層型三元触媒。
(項11)
上記項1〜10のいずれか一項に記載の2層型三元触媒の、ガソリンエンジンを搭載した自動車の排ガスを浄化するための使用。
(項12)
上記項1〜10のいずれか一項に記載の2層型三元触媒およびガソリンパーティキュレートフィルタ(GPF)を含む排ガス処理システム。
(項13)
前記ガソリンパーティキュレートフィルタが、ハニカム構造を有するウォールフロー型モノリス体であることを特徴とする、上記項12に記載の排ガス処理システム。