(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6386451
(24)【登録日】2018年8月17日
(45)【発行日】2018年9月5日
(54)【発明の名称】ギアをラッピングする方法であって、アクティブトルクの方法
(51)【国際特許分類】
B23F 19/04 20060101AFI20180827BHJP
B24B 37/02 20120101ALI20180827BHJP
B23F 23/12 20060101ALI20180827BHJP
【FI】
B23F19/04
B24B37/02
B23F23/12
【請求項の数】17
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2015-518541(P2015-518541)
(86)(22)【出願日】2013年6月19日
(65)【公表番号】特表2015-520039(P2015-520039A)
(43)【公表日】2015年7月16日
(86)【国際出願番号】US2013046498
(87)【国際公開番号】WO2013192280
(87)【国際公開日】20131227
【審査請求日】2016年3月29日
(31)【優先権主張番号】61/661,382
(32)【優先日】2012年6月19日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】500094370
【氏名又は名称】ザ グリーソン ワークス
(74)【代理人】
【識別番号】110001243
【氏名又は名称】特許業務法人 谷・阿部特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ウィリアム ディー.マクグラッソン
(72)【発明者】
【氏名】マーク ティー.ストラング
【審査官】
津田 健嗣
(56)【参考文献】
【文献】
特開平11−000821(JP,A)
【文献】
特開2003−117726(JP,A)
【文献】
特開2007−203459(JP,A)
【文献】
特開平04−315517(JP,A)
【文献】
特開昭63−99124(JP,A)
【文献】
米国特許第5299390(US,A)
【文献】
米国特許第4788476(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23F 19/04
B23F 23/12
B24B 37/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ギアセットの第1部材であって該ギアセットの第2部材と互いに噛み合っている第1部材を、前記ギアセットの前記第1及び第2部材に研磨剤混合物を付与している間、前記第1部材と前記第2部材の間のあるトルク量で回転させることを含む、ギアをラッピングする方法において、さらに、
前記ギアセットの実時間における運動伝動エラーを測定すること、
前記測定された運動伝動エラーからランアウトの実時間測定値を獲得すること、
1または複数の予め定められた周期で、前記測定された運動伝動エラーの特定の成分を是正するための是正トルク成分を決定し、該是正トルク成分を含むアクティブトルク信号を生成すること、
前記ランアウトを減らすために、前記アクティブトルク信号の前記是正トルク成分を取り入れること、及び、
前記アクティブトルク信号の前記是正トルク成分にしたがって調整された、前記トルク量によって定められたトルクで前記ギアセットをラッピングすること
を備えること特徴とする方法。
【請求項2】
前記ギアセットの前記第1及び第2部材は、それぞれ駆動側とコースト側を有する歯を備え、前記ラッピングする方法は、前記駆動側と前記コースト側のいずれか一方に適用された後、前記駆動側と前記コースト側の他方に適用されることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記ランアウトの実時間測定値は、前記ギアセットを取り外し可能に締め付ける被加工物保持機材に起因するランアウトを除外することを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記ギアセットの前記第1及び第2部材は、それぞれ、前記ラッピングの間、歯の表面の接触位置において互いに接触する歯の表面を有する歯を備え、前記歯の表面の接触位置は、前記ラッピングの間、前記歯の表面における複数の場所に移動され、
前記測定、獲得、決定、取り入れの各ステップは、前記歯の表面の接触位置の前記複数の場所のそれぞれに対して繰り返されることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記測定、獲得、決定及び取り入れのステップは、1から20秒の間の間隔で繰り返されることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記是正トルク成分は、回転する前記ギアセットに対し位相が合った状態で取り入れられることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記是正トルク成分は、回転する前記ギアセットに対し位相がずれた状態で取り入れられることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項8】
第1スピンドル及び第2スピンドルを、該第1スピンドルに回転のために取り付けられたギアセットの第1部材及び前記第2スピンドルに回転のために取り付けられた前記ギアセットの第2部材とともに備えるギアラッピング機械上で、ギアをラッピングする方法であって、
前記ギアセットの前記第1部材を、前記ギアセットの前記第1及び第2部材に研磨剤混合物を付与している間、前記ギアセットの前記第2部材と互いに噛み合わせて前記第1部材と前記第2部材の間の初期トルク量で回転させること、
前記ギアセットの実時間における運動伝動エラーを測定すること、
前記測定された運動伝動エラーからランアウトの実時間測定値を獲得すること、
1または複数の予め定められた頻度で、前記測定された運動伝動エラーの特定の成分を是正するための是正トルク成分を決定し、該是正トルク成分を含むアクティブトルク信号を生成すること、
前記ランアウトを減らすために、是正されたトルク量を生み出すように前記初期トルク量に前記アクティブトルク信号の前記是正トルク成分を付加すること、及び、
前記ギアセットの前記第1及び第2部材を前記是正されたトルク量でラッピングすること
を備える方法。
【請求項9】
前記第1スピンドルは第1スピンドルモータによって回転可能であり、前記第2スピンドルは第2スピンドルモータによって回転可能であり、前記初期トルク量は、前記第1スピンドルモータと前記第2スピンドルモータの一方によって生み出され、前記是正トルク成分が前記第1スピンドルモータと前記第2スピンドルモータの少なくとも一方に加えられて初期トルクを生み出すことを特徴とする請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記第1スピンドルは第1スピンドルモータによって回転可能であり、前記第2スピンドルは第2スピンドルモータによって回転可能であり、前記初期トルク量は前記第1スピンドルモータと前記第2スピンドルモータの一方によって生み出され、前記是正トルク成分が前記第1スピンドルと前記第2スピンドルの一方に一体化された個々のモータにもたらされて初期トルクを生み出すことを特徴とする請求項8に記載の方法。
【請求項11】
前記測定、獲得、決定、及び付加の各ステップは、所定間隔で繰り返されることを特徴とする請求項8に記載の方法。
【請求項12】
前記所定間隔は1から20秒の間であることを特徴とする請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記頻度は、時間ベースの頻度と空間頻度の少なくとも一方を備え、該空間は前記第1部材及び前記第2部材の一方もしくは両方の回転位置を意味していることを特徴とする請求項8に記載の方法。
【請求項14】
前記頻度は、前記第1部材の1回転につき1回、前記第1部材の1回転につき2回、前記第2部材の1回転につき1回、または、前記第2部材の1回転につき2回の少なくとも一つであることを特徴とする請求項13に記載の方法。
【請求項15】
コンピュータ制御、第1スピンドルモータを介して第1軸周りに回転可能な第1スピンドル、及び、第2スピンドルモータを介して第2軸周りに回転可能な第2スピンドルを備えたギアラッピング機械であって、前記第1スピンドルモータが前記コンピュータ制御と伝達し、及び、前記第2スピンドルモータが前記コンピュータ制御と伝達し、前記第1スピンドルモータと前記第2スピンドルモータは、前記第1スピンドルに取り付けられたギアセットの第1部材及び前記第2スピンドルに取り付けられた前記ギアセットの第2部材を、前記ギアセットの前記第1及び第2部材の間で所定のトルク量で噛み合って回転させるように動作可能である、ギアラッピング機械において、さらに、
前記ギアセットのランアウトを決定するための運動伝動エラー測定データ獲得システムであって、前記第1スピンドル及び前記第2スピンドルと伝達する運動伝動エラー測定データ獲得システムと、
前記第1スピンドル及び前記第2スピンドルの少なくとも一方と伝達するトルクコマンド発生器と、
前記運動伝動エラー測定データ獲得システム及び前記トルクコマンド発生器と通信するアクティブトルク処理コントローラであって、是正トルク信号の決定のための変数であって、前記運動伝動エラー測定データ獲得システムが獲得した運動伝動エラーの特定の成分を是正するために用いる変数を、測定されたランアウトに基づいて前記トルクコマンド発生器に提供するアクティブトルク処理コントローラと
を備えており、
それにより、前記トルクコマンド発生器が前記所定のトルク量への付加のための前記是正トルク信号を提供し、前記ギアセットのランアウトを減らすための是正されたトルク量を結果として得ることを特徴とするギアラッピング機械。
【請求項16】
前記運動伝動エラー測定データ獲得システム、前記アクティブトルク処理コントローラ、及び、前記トルクコマンド発生器は、それぞれ、分離された個々のデバイスに存在することを特徴とする請求項15に記載のギアラッピング機械。
【請求項17】
前記運動伝動エラー測定データ獲得システム、前記アクティブトルク処理コントローラ、及び、前記トルクコマンド発生器はすべて単一のデバイスに存在することを特徴とする請求項15に記載のギアラッピング機械。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願の請求項は、2012年6月19日に出願された米国仮特許出願No.61/661,382の利益を得、その開示全ては、参照によってここに組み込まれる。
【0002】
本発明は、ギアラッピングに向けられ、そして、とりわけギアラッピング機械
、及び
、ラッピング
処理の間にトルクをアクティブに制御するための方法に向けられている。
【背景技術】
【0003】
ラッピングは、ベベルギアの歯表面の仕上げのための定評のある
処理である。ラッピングの目的は、ギアセット運動ノイズ(gearset running noise)(運動伝
動エラー:motion transmission errors)を改善するために、ギア歯面(gear tooth flanks)を変質させたり、精錬することである。これらの運動伝
動エラーは、短
期間(一歯
につき1回や、それらの倍(harmonics thereof))と
、長
期間(1回転
につき1回のランアウト(once-per-revolution run-out)ごとや、それらの倍(harmonics thereof))として特徴付けられ得る。
【0004】
ラッピング
処理において、ベベルギアセットの部材、すなわちピニオン及びリングギアは、適切な被加工物保持機材(workholding equipment)を通して、ラッピング機械での、個々のスピンドルに取り付けられる。ラッピング中、ギアセットの回転が最大量の場合において、ピニオンは駆動部材であり、リングギアは、ピニオンとリングギアとの間にある量のトルクが生まれることによってブレーキとなる。ギア部材は、噛み合うように回転し、ラッピング合成物、すなわち、オイル(または水)とシリコンカーバイド、またはシリコン研磨剤の混合物からなるものが、噛み合う空間内に、噴射され、射出され、注がれる。この典型的なラッピングサイクルにおいて、ギアの第1側(例えば、コースト側coast side)は、ギアの他の側(例えば駆動側drive side)のラッピングに
追従してラッ
ピングされる。ギアラッピング機械の例は、米国特許6120355号(Stadtfeld et al)に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】米国特許6120355号明細書
【発明の概要】
【0006】
多くのラッピング機械は、リングギアとピニオンの間の実際の相互動作に対して3段階の自由度を有している。第1の自由度はリングギア軸(ギア円錐距離)の方向への相対的な移動であり、これは方向GすなわちG軸を基準とされるであろう。第2の自由度は、ピニオン軸(ピニオン円錐距離)の方向への相対的移動であり、これは方向HすなわちH軸を基準とされるであろう。そして第3の自由度は、リングギアとピニオン軸との間の距離であり、方向V、すなわちV軸を基準とされるであろう。方向Vはまた「ハイポイドオフセット(hypoid offset)」または「ピニオンオフセット(pinion offset)」として知られている。
【0007】
ラッピング
処理で、V,HおよびG方向の相対的移動は、接触パターンの結果修正での、ギアセットの部材の接触パターンの位置変化
に影響する。ラッピングは、
ギア部材を、歯表面の所望の位置での接触
を伴
ない、噛み合
って回転
させることを含む。したがって、部材は、特定の
Vの位置及びHの位置において、特定のG軸位置に沿って位置され、所望のバックラッシュ(backlash)をもたらす。
【0008】
特に、V,HとGの移動はそれぞれ、局地的な歯接触パターンの長さ方向と深さ方向の位置の両方での結果(影響)を有し、V軸移動の主な結果(影響)は、接触パターンの相対的な長さ方向の位置でのものであり、H軸移動の主な結果(影響)は、接触パターンの相対的な深さ方向の位置でのものであり、G軸移動の主な結果(影響)は、バックラッシュ(backlash)によるものである。
【0009】
ギアセットがラッピングされているとき、接触は通常、歯の中央から、歯表面の外側(かかとheel)または内側(つま先toe)部分のいずれかに向かって、接触位置のシフトといったものをもたらす上で必要なV及びHの設定を変更することによって、なめらかかつ段階的にシフトされる。V及びHはシフトをもたらすために変えられると、G軸位置はまた、所定のバックラッシュ(backlash)を維持するためになめらかかつ段階的に変更されるべきである。所定のかかとまたはつま先位置に到達されたとき、VとH軸位置は、VとH位置の変化がバックラッシュを維持するためのG軸の適切な変化によって成し遂げられるとともに、かかとまたはつま先位置の他方へのシフト接触に再び変化される。そして、接触位置は、歯の中央において最初の位置に戻される。
【0010】
機械スピンドルモータによってトルクが発展し、その結果、所望の速度および負荷は、ギアセットにおいて、研磨用動作が負荷の
関数であることによる物質除去
率で生み出される。負荷、すなわち、ギアセットトルクはまた、ラッピング作業のセットアップのときにユーザーによって定められた平均レベル(例えば、10 Newton-meters)を有していてもよい。この平均トルクレベルは、様々な周知の方法、例えば、米国特許6481508号(McGlasson et al.)に開示されているような方法にしたがって、機械による
処理で保持されている。
【0011】
しかし、ギアセットトルクはまた、積極的(能動的)に制御されない動的成分を有している。そのような動的成分は、不可避の存在であり、結果として、スピンドルの
質量(masses)、剛性(stiffness)、
制振(damping)及び他の機械要素(例えば、機械の受動的物理)によって影響されたギアセット運動エラーに対応したものである。ギアセット運動エラーから主に始動されたこれらの動的成分は、実際のラッピングトルクを構成する平均トルクを増す。したがって、どの瞬間においても、ラッピングトルクは、おおむね、力学を基礎とする
要求され
る平均値よりも高いか、または低い。ラッピング機械のパフォーマンスとパフォーマンス限界は、挙動を基礎とするそれらの受動的物理に大部分が依存し、ラッピング中、より速くスピンドルが回転されると、そのより主要な結果(影響)が生まれる傾向にある。
【0012】
したがって、重要な限定的結果が、ラッピング機械システムの受動的動的成分/トルク挙動から起きる。最良の歯の修正
性能を生み出すラッピング機械変数(機械の設計、制御特性、
処理選択)は、最良の間隔及び/またはランアウトパフォーマンス(run-out performance)
を同時には生み出さないかもしれない
ことが分かっており、逆もまた同様である。他の言葉で言えば、歯面形状での最適の改良のための機械設計は、平均において、ただランアウト(run-out)を保持するか、より悪くするかもしれない。そして、一貫して改良された機械の部分ランアウト(run-out)は、次に最適な
歯間伝動特性を実現するかもしれない。
【0013】
特定の歯の特性の一例は、
Ginierによる米国特許4788476号明細
書に見られ、
ここでは、干渉ベースのラッピングアプローチ
(二つのスピンドルの速度及び/または位置モードにおける
動作から生じる)の間欠的な接触を
、歪んだまたは位置ずれしたギア歯を選択的にラッピングするために利用
し、及び
、操作する
方法が開示され
ている。
処理の制御は、
結局のところ、ラッピングトルクを生
み出している命令された干渉状態を
いつ進める
か、そして、いつ保持する
かのタイミング
に行き着く。結果としてラッピングサイクルは概して生産で使用されるのには遅く、いくつかの歯の過剰なラッピング(使用不能なギアセットのレンダリング)は、もし事前のラッピング空間エラーが影響されるならば、予想される。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明は、ギア
をラッピン
グする方法及び装置を備え、
この装置は
、ランアウト
および他の長
期の運動伝
動エラーに関
する歯間伝動性能(tooth-to-tooth performance)を損なうこと無しに、実質的にラッピング
処理を改善するための
アクティブトルクシステムを含んでいる。運動伝
動エラー測定は、スピンドルモータまたはブレーキによって達成され
る1または複数の
アクティブな是
正トルク
成分を計算
するための基礎をもたらし、そして、ギアセット運動伝
動エラーの部分ランアウト(part run-out)や他の要素を減らすまたは除去するための従来の
処理トルクと組み合わされる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】
図1は、ギアラッピング機械の周知の構成を図示する。
【
図2】
図2は、ギアラッピング機械の
アクティブトルクシステムを図示する。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本明細書中で使用される「発明」、「この発明」及び「本発明」の用語は、本明細書及び以下の請求の範囲の内容の全てを、広く参照することを意図されている。これらの用語が含む言明は、ここに述べる内容を限定するもの、もしくは、以下の特許請求の範囲の意味や範囲を限定するものとして理解されるべきでない。さらに、この明細書は、本出願のいかなる特定の部分や段落や陳述や図において、請求項によって包括された内容を述べること、または限定することを求めるものではない。この内容は、明細書及び全ての図、以下の請求の範囲の参照によって理解されるべきである。本発明は、他の構成や様々な方法での試行や実行が可能である。ここに用いられる表現及び専門用語は、詳述を目的とするものであり、限定する意図で考えられるべきでない。
【0017】
本発明の詳細は、例示した方法のみによって本発明を図示する添付の図を参照することによって、今、論じられるであろう。この図において、類似の特徴及び構成要素は、同じ参照番号によって参照されるであろう。本発明のよりよい理解と、見易さのために、ドアといかなる内部または外部の防護は、いずれの機械図から省略されている。
【0018】
「含む」、「有する」、「備える」、及びこれらの変形の使用は、ここでは、追加の項目と同様に、それ以降提示された項目やその均等物を包括することを意図する。方法や
処理の要素を特定するための用語の使用は、単に特定のためであり、この要素が特定の
順序で実行されるべきであることを示す
ことを意
見するわけではない。
【0019】
図を述べる上で、参照番号は、上方、下方、上向き、下向き、後ろ向き、底、上部、前、後ろといった方向に対して後述されるかもしれないが、この参照は、簡便のために、図(一般的な見方での)に関してなされるものである。これらの方向は、ある形において本発明を文字通りとされることを意図するのではなく、また、ある形に本発明を限定することを意図するのではない。加えて、「第1」、「第2」、「第3」などといった用語は、ここに記述のために使用されており、重要性や重大性を暗に示すことを意図するものではない。
【0020】
米国特許6120355号にすでに述べられているラッピング機械が
図1に図示され、20によってほぼ指し示されている。様々な機械構成要素を示す上で簡易にするために、
図1は、ドア、支持システム、外装シート金属を除いて、本発明の機械を図示している。機械20は、単一支柱22を備え、これは、機械の枠として考えられてもよい。支柱22は、少なくとも3つの側面、好ましくは4つの側面を備えており、この側面の少なくとも2つ、すなわち第1側面24と第2側面26は互いに直交している。第1側面と第2側面のそれぞれは、(
図1に示すように)幅と高さを備えている。
【0021】
第1側面24は、第1被加工スピンドル(first workpiece spindle)28を含み、これは、軸AGに対して回転可能であり、そして、好ましくは、直接駆動モータ30によって動かされ、好ましくは、液で冷やされ、前と後ろの軸ベアリング(図示しない)の間に配置される。スピンドル28は、支柱22に直接取り付けられた道(ways)32で、第1側面24の幅に沿って方向Gに、移動可能である。スピンドル28の方向Gでの移動は、直結式ボールねじ(図示しない)を介したモータ34によってもたらされる。好ましくは、べべルリングギア部材36(bevel ring gear member)は、周知の適当な被加工物保持機材(workholding equipment)によって、スピンドル28に取り外し可能に取り付けられる。
【0022】
第2側面26は、第2被加工スピンドル(second workpiece spindle)38を含み、これは、軸AHに対して回転可能であり、好ましくは、直接駆動モータ40によって駆動され、好ましくは液で冷やされ、前と後ろの軸ベアリング(図示しない)の間に、約4000RPMのピニオン回転を達成可能なモータ40とともに配置される。(モータ30のRPMは、ギアセットのピニオンRPM率となるであろう)。
【0023】
スピンドル38は、スライド44に取り付けられた道(ways)42に、第2側面26の幅に沿って方向Hに移動可能である。方向Hでの軸38の移動は、直結式ボールねじ(図示しない)を介してモータ46によってもたらされる。好ましくは、ピニオン部材48が、周知の適当な被加工物保持機材によって、取り外し可能にスピンドル38に取り付けられている。直結式ボールねじ(図示しない)を介したモータ52によってもたらされる移動とともに、スライド44が道(ways)50を介してV方向に移動可能であるので、被加工スピンドル38は、また側面26の高さに沿って、方向Vに移動可能である。方向G、HおよびVは、互いにそれぞれに対して直交している。図示の意図と同様に実質的な意図にとって、
図1のV方向は垂直である。
【0024】
第1スピンドル回転及び第2スピンドル回転と同様に、方向Gにおける第1被加工スピンドル28、方向Hにおける第2被加工スピンドル38、方向Vにおけるスライド44の移動は、それぞれ独立した駆動モータ34、46、52、30、及び40によって与えられる。上述の構成要素は、お互いに独立した移動を可能とし、あるいは、互いに並行して移動してもよい。ファナックモデル18i(Fanuc model 18i)といったコンピュータコントローラへの指示入力に関して、駆動モータの操作を管理するCNCシステムの一部として、個々のモータはそれぞれ、リニアまたはロータリーエンコーダ(例えば、エンコーダ29,39)といったフィードバック装置に連携される。
【0025】
本発明に関し、短期の歯
間伝動性能を損なうことなく、ランアウト(run-out)や、ほかの
より長期の運動エラーに関するラッピング
処理を実質的に改善するため
のラッピング機械は、
アクティブトルクシステムを含む。本発明は、ラッピング機械の一部として、実時間運動伝
動エラー
(MTE)測定システムを備える。そして、このシステムを使用して、ランアウトの実時間測定を獲得し、このランアウトを減らす
アクティブな是正トルクコマンド成分を取り入れる。したがって、もし機械の受動物理が、ランアウトを補強する、もしくは増やす傾向の動的なトルク成分を生み出すなら、本発明に係るシステムによって生み出され
るアクティブなトルク成分は、
受動的な成分を制御可能で是正するための方法で打ち消す傾向があるため、その結果、噛み合いの
正味の結果が改良される、またはそのランアウトの選択された
成分の実質的な除去と
なる。例えば、与えられたランアウト成分に対する噛み合いの
正味の結果は、ゼロまたはゼロでない(すなわち能動的な)量となるであろう。好ましくは、是正トルク成分は、低地点よりも厳しく動作エラー高地点をラップする。
【0026】
本発明は、機械上での、ギアセットの動作エラーの測定を含む。
コンピュータベースのデータ取得システム
は、ピニオンとギアスピンドルとに置かれたエンコーダから回転情報を収集する。このデータは、ギアセットの運動エラーを特定するために処理され、好ましくは、多くの
成分頻度の
大きさと位相として表現される。ギアセット運動伝
動エラー(MTE)の決定は、
本来、ギア
のテスト機械とテスト方法に関する熟練
者に知られていること
に注
意すべきである。しかしながら、発明者たちは、
そのようなMTEの決定
をギアラッピング処理および機械
中に組み込むことは、以前は意図されていなかったと信じる。
【0027】
この決定された運動伝
動エラー測定値は、ギアおよび/またはピニオンの
、1またはそれ以上
の所定の頻度(例えば、1回転
につき1回のランアウト、または
1回転
につき2回のランアウト)
で是正トルク成分を計算する
ための基礎となる。
【0028】
本発明は、さらに、計算されたMTE成分から
アクティブトルク信号を決定することを含む。好ましい実施形態において、
アクティブトルク信号は、NCコントロールユニット
、また
は、主リングギアスピンドルモータのため
のドライブに出力され、そして、
アクティブトルク信号は、
通常のスピンドル制御用に
すでに生成され
ているトルクに
関するコマンドに付加される。他の実施形態において、
アクティブトルク信号は、主リングギアスピンドルモータ
とは別個のモータであり、このリングギアスピンドルの中に一体化
もさ
れる「
アクティブトルク」モータ
に供給するドライブに出力
される。
【0029】
ラッピング
処理中、測定されたMTEは様々な理由により変化可能である。第1として、駆動側のMTE特性は、コースト側(the coast side)のそれと異なっていてもよく、したがって、適用され
るアクティブトルク信号は、目下ラップされている側に依存するであろう。典型的なラッピングサイクルにおいて、これは、一方側と同時に他方側をラッピングすることを含む。また、このMTEは、
ラッピングによって歯を全体にわたってアクティブに再形成しているため、サイクルの開始から終点にわたって変化可能であ
る。さらに、MTEは、歯の接触位置の
関数として変化可能である。歯の接触位置は、ラッピング
処理全体
を通じてゆっくりと移動され、
その結果、一般的に歯の表面の部分のみに対する時間のいかなる瞬間で
もローカライズされるラッピング動作は、歯面(tooth flank)のほとんどを最終的に覆うであろう。この接触パターン運動は、機械のV,HおよびG軸を用いる二つのギアセット部材の相対的な位置に対するわずかで連続的な調整を行うことによって成し遂げられる。したがって、上記の理由にとって、是正ラッピングに必要な
アクティブトルク成分は、固定でなく、または一定でなく、ラッピングサイクルの全体を通して、通常の期間または間隔で更新されるべきである。この終了に向けて、MTEシステムは、繰り返し、測定値を形成し、エラー成分を分析し、
アクティブトルクコマンドを計算する。この繰り返しサイクルの期間は、例えば1から20秒の間、または部分回転の間といった、使用に対して最適となるように決定された値でセットされてもよい。
【0030】
解放可能に、ギアセット部材をそのそれぞれのスピンドルに締め付ける(clamp)被加工物保持機材(workholding equipment)と、スピンドルそれ自身さえ、ギアセットMTEエラーに加えて、ランアウトの根源となるかもしれない。もしエラーのそれら根源は、重要で、十分に繰り返し可能であるならば、それらは、ラッピング開始の前に決定され、是正信号が生成されるときに考慮される。言い換えると、これらの根源からの貢献は、
生のMTE信号から取り去られることが可能であり、是正トルク信号は、総合的に組み合わされたランアウト成分のアドレスでなく、ギアセットに帰する成分のみのアドレスによって構成されてもよい。
【0031】
図2は、本発明の方法を実行するシステムの好ましい変形を示す。ギアラッピング機械20(
図1参照)は、スピンドル28、38が
個々のドライブ60、62と伝達されるように示されており、このドライブ60、62は、
NCコントローラ64に折り返し伝達するものである。ユーザーインターフェースとラッピングコントローラ66は、
NCコントローラ64に伝達される。上述したように、コンピュータを基礎にしたMTE測定データ取得システム68は、ピニオンおよびギアスピンドル38、28にそれぞれ取り付けられたエンコーダ39、29から回転情報を収集する。このデータは、ギアセットの運動伝
動エラーを特定するため
に処理される。
【0032】
先に言及した期間と間隔のそれぞれの範囲内で、この
アクティブトルク信号は、
アクティブトルク
処理コントローラ70の
ロジックおよび計算からもたらされるパラメータ
に基
づいて、トルクコマンド発生器72によって構成される。これらのパラメータは、
アクティブトルク信号の1またはそれ以上の繰り返し成分を示し、
ここで、各成分
は典型的には関心のある
特定の頻度において
指示され
る。例えば、
アクティブトルク信号は、4つの成分で
、1つはリングギア
1回転につき
1回の頻度、他
の1つはリングギア
1回転につき2回の頻度
、他
の1つはピニオン
1回転につき1回の頻度、最後
はピニオン
1回転につき2回の頻度
で、できていても良い。
【0033】
この
アクティブトルク信号の目的は、ラッピング
処理進行中のギアセット運動エラーを改善する(減らす)ことに関するそのような特質のトルクを提供することにあり、
アクティブトルク信号の成分は「
是正成分」として参照される。各
是正成分を特定するパラメータは、その頻度、
大きさ、
位相、形状を示す。できれば、各
是正成分は、その頻度
を持つ正弦曲線の形であり、
大きさおよび
位相は測定されたMTE成分のパラメータに関して特定され、計算される。これら
是正成分は、各ギアセット部材の現在活動位置に対して集められ、付与され、それらによって、MTE成分と
是正成分との間の、ギア部材に基づく空間上連携が保持される。
是正成分の正弦曲線の形が好ましい一方、他の形は、例えば、箱形の波や
矩形波や三
角波といったものを意図されたものである。
【0034】
是正成分のパラメータを導く
ロジックおよび計算は、熟練者によって正当に評価され得る様々な要素に基づくことが可能であり、測定されたMTEデータだけでなく、例えば
処理のスピード、ギアセット部材の慣性、および/または他の回転機械成分、サイズ、タイプ、ギアセットの性質、ラッピング機械モデル等といったほかの考慮すべきことに依存してもよい。さらに、
ロジックまたは計算は、他の機械上の測定値、例えば、振動、温度、ラッピング材料、送り速度等といったものに依存していてもよい。例えば、
ロジックは、
ピニオン部材是正成分が、同じ頻度におけるピニオンMTE成分
に対して20
rad(マイクロラジアン
)につき1N−m(N-m per 20 rad (micro radians))といった関係
で大きさにおいて関係し、および、相対位相
が20度進んだ正弦となることを要求することがある。
【0035】
アクティブトルク
処理コントローラ70は、ユーザ
ーによって指示され、および/または
、MTEデータの
どの成分
を是正
すべきかを判定する
ようにプログラ
ムされる。その
ロジックおよび計算は、上述の入力パラメータに基づ
いて、適切な
是正成分のパラメータを確立する。この入力パラメータは、例えば、リングギアまたはピニオン、
1回転につき1回または2回の頻度、
大きさ、
位相角、アップデー
ト周期等を含む。
是正成分のパラメータ
はトルクコマンド発生器72に送られ
、ここで、是正トルク信号が生成され
てリングギアドライブ60に送られ、ここで、それは、NCコントロー
ラ64から来る
、通常
のプログラムされたスピンドル制御トルクに加えられる
。代替的に、
是正トルク信号はピニオンドライブ62に送られてもよく、あるいは、
協調したトルク信号がドライブ60、62の両方に同時に送られてもよい。
是正トルク信号
は、アクティブトルクドライブに
、および、主ギアスピンドルモータ(または主ピニオンスピンドルモータ)から分離
しているが、ギアスピンドル(またはピニオンスピンドル)
中に一体化され
ているモータに送られてもよいこと
にも注
意すべきである。
【0036】
是正トルクパラメータの更新されたセットが
MTE測定データ取得システム68およびエンコーダ39,29から受けた更新された測定値に基づいてアクティブトルク
処理コントローラ70によって確立されるまで
の間は、
是正トルクパラメータの特定のセットがトルクコマンド発生器72によって使用されて、ドライブ60に絶え間なく送られる
アクティブトルクコマンド信号を構成す
る。更新の間隔はいかなる時間、期間または間隔であってもよいが、1から20秒の範囲が好ましい。
【0037】
本発明は、
図1のラッピング機械の構成に関して議論されている一方、本発明の
アクティブトルクシステムはまた、例えば、角ラッパー、揺動ピニオン円錐ラッパー、および直接駆動スピンドルを持たないラッピング機械などを含む他のタイプのラッピング機械に適用可能である。
【0038】
測定データ取得システム68、
アクティブトルク
処理コントローラ70およびトルクコマンド発生器は
図2にそれぞれ分離された要素で示されている一方、これらの機能は、ラッピングコントローラ66の一部となり得る単一の
アクティブトルク
処理コントローラに組み込まれていてもよい。一方、測定データ取得システム68、
アクティブトルク
処理コントローラ70およびトルクコマンド発生器72は互いに分離したコンピュータや他の電子デバイスに帰属してもよい。本発明において「頻度」という用語の使用は、時間
ベースの頻度と空間頻度(「空間」という用語は、ギアセット部材の一方もしくは両方の回転位置
を意味している)との両方を包括することを意図する。
【0039】
本発明は、好ましい実施形態の参照とともに述べられているが、本発明はそれらの特徴に限定されるのではないことが理解される。本発明は、当業者に明らかであり、添付の請求の範囲の精神および範疇から外れることなく主旨が属する変形を含むと意図される。