特許第6386465号(P6386465)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6386465
(24)【登録日】2018年8月17日
(45)【発行日】2018年9月5日
(54)【発明の名称】抗ヘマグルチニン抗体及び使用方法
(51)【国際特許分類】
   C07K 16/08 20060101AFI20180827BHJP
   C12N 15/13 20060101ALI20180827BHJP
   C12N 5/10 20060101ALI20180827BHJP
   C12N 1/15 20060101ALI20180827BHJP
   C12N 1/19 20060101ALI20180827BHJP
   C12N 1/21 20060101ALI20180827BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20180827BHJP
   A61P 31/16 20060101ALI20180827BHJP
【FI】
   C07K16/08ZNA
   C12N15/13
   C12N5/10
   C12N1/15
   C12N1/19
   C12N1/21
   A61K39/395 N
   A61P31/16
【請求項の数】17
【全頁数】100
(21)【出願番号】特願2015-541997(P2015-541997)
(86)(22)【出願日】2013年11月12日
(65)【公表番号】特表2016-503413(P2016-503413A)
(43)【公表日】2016年2月4日
(86)【国際出願番号】US2013069567
(87)【国際公開番号】WO2014078268
(87)【国際公開日】20140522
【審査請求日】2016年11月11日
(31)【優先権主張番号】61/725,859
(32)【優先日】2012年11月13日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】509012625
【氏名又は名称】ジェネンテック, インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】シュイ, ミン
(72)【発明者】
【氏名】バラージュ, メルセデス
(72)【発明者】
【氏名】チャイ, ニン
(72)【発明者】
【氏名】チェン, ナンシー
(72)【発明者】
【氏名】チウ, ヘンリー
(72)【発明者】
【氏名】チン, チャオユイ
(72)【発明者】
【氏名】リン, チョンホア
(72)【発明者】
【氏名】ルパーダス, パトリック ジェー.
(72)【発明者】
【氏名】ナカムラ, ジェラルド アール.
(72)【発明者】
【氏名】パク, ヒョンジュ
(72)【発明者】
【氏名】スウェム, リー アール.
【審査官】 太田 雄三
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2012/029997(WO,A1)
【文献】 特表2011−528902(JP,A)
【文献】 SCIENCE,2011年 8月,Vol. 333 (6044),p. 850-856
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07K 16/00
C12N 15/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
WPIDS/WPIX(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
三つの重鎖超可変領域(HVR−H1、HVR−H2及びHVR−H3)及び三つの軽鎖超可変領域(HVR−L1、HVR−L2、及びHVR−L3)を含む単離された抗ヘマグルチニン抗体であって、
(a)HVR−H1は、配列番号191及び192からなる群から選択されるアミノ酸配列を含み;
(b)HVR−H2は、配列番号193のアミノ酸配列を含み;
(c)HVR−H3は、配列番号194のアミノ酸配列を含み;
(d)HVR−L1は、配列番号195のアミノ酸配列を含み;
(e)HVR−L2は、配列番号196のアミノ酸配列を含み;且つ
(f)HVR−L3は、配列番号197、198及び199からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む、
抗ヘマグルチニン抗体。
【請求項2】
抗体が、配列番号136、140、144、146、150、152、及び235からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域を含む、請求項1に記載の単離された抗ヘマグルチニン抗体。
【請求項3】
抗体が、配列番号134、138、142、148、及び234からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む重鎖可変領域を含む、請求項1に記載の単離された抗ヘマグルチニン抗体。
【請求項4】
抗体が、重鎖可変領域及び軽鎖可変領域を含み、重鎖可変領域は、配列番号134、138、142、148,及び234からなる群から選択されるアミノ酸配列を含み、軽鎖可変領域は、配列番号136、140、144、146、150、152、及び235からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む、請求項1に記載の単離された抗ヘマグルチニン抗体。
【請求項5】
抗体が、配列番号135、139、143、145、149、及び151からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む軽鎖を含む、請求項1に記載の単離された抗ヘマグルチニン抗体。
【請求項6】
抗体が、配列番号133、137、141、及び147からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む重鎖を含む、請求項1に記載の単離された抗ヘマグルチニン抗体。
【請求項7】
抗体が、重鎖及び軽鎖を含み、重鎖は、配列番号133、137、141、及び147からなる群から選択されるアミノ酸配列を含み、軽鎖は、配列番号135、139、143、145、149、及び151からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む、請求項1に記載の単離された抗ヘマグルチニン抗体。
【請求項8】
必要とする個体において、A型インフルエンザウイルス感染を治療、抑制、又は予防するための医薬であって、請求項1からの何れか一項に記載の抗ヘマグルチニン抗体を含む組成物の有効量を含む、医薬。
【請求項9】
医薬が、追加の治療剤を更に含む、請求項に記載の医薬。
【請求項10】
追加の治療剤が、ノイラミニダーゼ阻害剤、抗ヘマグルチニン抗体、又は抗M2抗体である、請求項に記載の医薬。
【請求項11】
請求項1からの何れか一項に記載の抗体を含む組成物。
【請求項12】
請求項1からの何れか一項に記載の抗体及び薬学的に許容される担体を含む、薬学的組成物。
【請求項13】
請求項1からの何れか一項に記載の抗体をコードする単離された核酸。
【請求項14】
請求項13に記載の核酸を含む宿主細胞。
【請求項15】
抗体が産生されるように、請求項14に記載の宿主細胞を培養することを含む、抗体を産生する方法。
【請求項16】
医薬の製造における、請求項1からの何れか一項に記載の抗ヘマグルチニン抗体の使用。
【請求項17】
医薬は、A型インフルエンザウイルス感染の治療、抑制、又は予防のためである、請求項16に記載の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
本出願は、2012年11月13日に出願された米国仮出願第61/725859号の利益を主張し、それは参照によりその全体が本明細書に援用される。
【0002】
配列表
本出願は、ASCIIフォーマットで電子的に提出された配列表を含み、その全体が本明細書中で参照することにより援用される。2013年10月31日に作成された、前記ASCIIコピーは、P4982RlWO_PCTSequenceListing.txtと命名され、227598バイトの大きさである。
【0003】
発明の分野
本発明は、抗ヘマグルチニン抗体、抗ヘマグルチニン抗体を含む組成物、及びそれを使用する方法を提供する。
【背景技術】
【0004】
インフルエンザウイルスの感染は、世界中で毎年、3から5百万の間の重篤疾患の症例と250000から50000人の死亡を引き起こしている。米国だけで、人口の5%から20%が毎年インフルエンザウイルスに感染し、これらの感染の大部分はA型インフルエンザウイルスに起因する。(例えば、Dushoff et al, (2006) Am J Epidemiology 163: 181-187; Thompson et al, (2004) JAMA 292: 1333-1340; Thompson et al, (2003) JAMA 289: 179-186)。米国では、毎年およそ20万人がインフルエンザ関連の合併症で入院し、7000から30000人の死亡をもたらしている。医療費におけるインフルエンザウイルス感染に関連した負担と生産性の損失は甚大である。入院及び死亡は、高齢者、子供、及び慢性の疾患などの高リスクのグループで主に発生する。
【0005】
インフルエンザウイルスは、オルトミクソウイルス科に属するセグメント化された膜エンベロープ型のマイナス鎖RNAウイルスである。A型インフルエンザウイルスは、9つの構造タンパク質及び1つの非構造タンパク質からなり、ヘマグルチニン(HA又はH)、ノイラミニダーゼ(NA又はN)、及びマトリックスタンパク質2(M2)の3つのウイルス表面タンパク質が含まれる。インフルエンザウイルスゲノムのセグメント化された性質は、異なるインフルエンザウイルス株を用いた細胞の混合感染の間に、遺伝子再集合のメカニズム(即ち、ゲノムセグメントの交換)が起きることを可能にする。ウイルス表面タンパク質のヘマグルチニン及びノイラミニダーゼの抗原特性が改変されると、毎年恒例のインフルエンザの流行が発生する。改変された抗原性のメカニズムは2つある:パンデミックを引き起こす可能性がある、少なくとも2つのウイルスのサブタイプによる、宿主細胞の同時感染後に、ヒトと動物ウイルス間の遺伝子再配列によって引き起こされる抗原シフト;及び、インフルエンザの流行を引き起こす可能性がある、ウイルス表面上のヘマグルチニン及びノイラミニダーゼタンパク質の小さな変化によって引き起こされる抗原ドリフト。
【0006】
A型インフルエンザウイルスは更に、それらの表面上に提示される、別のヘマグルチニン及びノイラミニダーゼのウイルスタンパク質に応じて、種々のサブタイプに分類することができる。各A型インフルエンザウイルスサブタイプは、そのヘマグルチニン及びノイラミニダーゼタンパク質の組み合わせによって同定される。16の既知のHAサブタイプ(H1−H16)及び9つの既知のNAサブタイプ(N1−N9)がある。16のヘマグルチニンサブタイプは更に2つの系統学的グループに分類される:グループ1は、ヘマグルチニンH1、H2、H5、H6、H8、H9、H11、H12、H13、及びH16のサブタイプを含み;グループ2はヘマグルチニンH3、H4、H7、H10、H14及びH15のサブタイプを含む。
【0007】
ヘマグルチニンは宿主細胞へのウイルスの付着及び侵入を促進する;ノイラミニダーゼは、感染細胞からのウイルス出芽のために必要とされる。A型インフルエンザウイルスのヘマグルチニンは、二つの構造的に異なる領域−球状頭部領域及びストーク又はステム領域−を含む。球状頭部領域は、標的細胞へのウイルス付着に関与する受容体結合部位を含む。ヘマグルチニンのストーク(又はステム)領域は、ウイルスエンベロープと、感染した細胞のエンドソーム膜との間の膜融合に必要である融合ペプチドを含む。(例えば、Bouvier and Palese (2008) Vaccine 26 Suppl 4: D49-53; Wiley et al, (1987) Ann Rev Biochem 556:365-394を参照)。
【0008】
インフルエンザウイルス感染のための現在の治療は、オセルタミビル及びザナミビルなどのノイラミニダーゼ阻害剤を含む。オセルタミビルは、A型インフルエンザウイルス感染のために、広く使用されている予防的及び早期治療の治療の選択肢である。(例えば、Kandel and Hartshorn (2001) BioDrugs: Clinical Immunotherapy, Biopharmaceuticals and Gene Therapy 15:303-323;Nicholson et al, (2000) Lancet 355: 1845-1850; Treanor et al, (2000) JAMA 283: 1016-1024; and Welliver et al., (2001) JAMA 285:748-754を参照)。しかし、オセルタミビルによる治療は、有意な臨床上の利益を提供するためには、発症から48時間以内に開始しなければならない。(例えば、Aoki et al (2003) J Antimicrobial Chemotherapy 51 : 123-129を参照)。この義務は、治療を求める時点で、最適な48時間の治療ウィンドウを典型的には超えている重症患者を治療するオセルタミビルの性能を危うくしている。従って、重要な焦点は、インフルエンザウイルスに感染した入院患者を治療するインフルエンザウイルス治療薬を同定することに置かれている。一つの戦略は、A型インフルエンザウイルスのヘマグルチニンのストーク上の高度に保存されたエピトープを標的とするヒトモノクローナル抗体(mAbs)の開発に(モノクローナル抗体)に焦点をあてている。(例えば、Corti et al, (2011) Science 333:850-856; Ekiert et al., (2009) Science 324:246-251; Ekiert et al., (2011) Science 333:843-850; Sui et al., (2009) Nature Structural & Molecular Biology 16:265-273; Dreyfus et al., (2012) Science 337: 1343-1348; Wu et al., (2012) J Virology 2012.09.034; Clementi et al., (2011) PLoS One 6: 1-10を参照。国際特許出願公開番号:国際公開第2009/115972号、国際公開第2011/117848号、国際公開第2008/110937号、国際公開第2010/010466号、国際公開第2008/028946号、国際公開第2010/130636号、国際公開第2012/021786号、国際公開第2010/073647号、国際公開第2011/160083号、国際公開第2011/111966号、国際公開第2002/46235号及び国際公開第2009/053604号;米国特許第5631350号及び第5589174号も参照のこと)。
【0009】
幾つかの報告は、ヘマグルチニンに結合し、広くA型インフルエンザウイルスを中和するモノクローナル抗体(mAb)を記載している。例えば、Cortiら(上記)は、ヒト血漿細胞からクローニングされ、グループ1及びグループ2のヘマグルチニンサブタイプの両方に属するヒトA型インフルエンザウイルスを中和することが示された抗体FI6v3を記載している。FI6v3 mAbは、約104000人のヒト形質細胞を分析した壮大なる努力の結果として発見された。更に、Dreyfusら(上記)は、最近、ファージディスプレイパニングによる抗体CR9114の同定を記載しており;抗体CR9114は、A型インフルエンザウイルス及びインフルエンザB型ウイルスのヘマグルチニンの間で共有される高度に保存されたストークのエピトープに結合することが示された。
【0010】
これらの報告にもかかわらず、必要性が、グループ1とグループ2のA型インフルエンザウイルスサブタイプに対して有効である、新規なA型インフルエンザウイルス治療法のために当該技術分野において依然として存在する。本発明は、この必要性を満たし、A型インフルエンザウイルス感染の治療のための他の利点を提供する。
【発明の概要】
【0011】
本発明は、抗ヘマグルチニン抗体、抗ヘマグルチニン抗体を含む組成物、及びそれを使用する方法を提供する。
【0012】
幾つかの実施態様において、本発明の単離された抗ヘマグルチニン抗体は、三つの重鎖超可変領域(HVR−H1、HVR−H2及びHVR−H3)及び三つの軽鎖超可変領域(HVR−L1、HVR−L2、及びHVR−L3)を含み、ここで、
(a)HVR−H1は、配列番号178のアミノ酸配列を含み;
(b)HVR−H2は、配列番号179のアミノ酸配列を含み;
(c)HVR−H3は、配列番号180及び181からなる群から選択されるアミノ酸配列を含み;
(d)HVR−L1は、配列番号182、183、184、185、及び186からなる群から選択されるアミノ酸配列を含み;
(e)HVR−L2は、配列番号187のアミノ酸配列を含み;且つ
(f)HVR−L3は、配列番号188、189及び190からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む。
【0013】
幾つかの実施態様において、本発明は、少なくとも一つ、二つ、三つ、四つ、五つ及び/又は六つの超可変領域(HVR)配列を含む単離された抗ヘマグルチニン抗体を提供し、ここで、
(a)HVR−H1は、配列番号178のアミノ酸配列を含み;
(b)HVR−H2は、配列番号179のアミノ酸配列を含み;
(c)HVR−H3は、配列番号180及び181からなる群から選択されるアミノ酸配列を含み;
(d)HVR−L1は、配列番号182、183、184、185、及び186からなる群から選択されるアミノ酸配列を含み;
(e)HVR−L2は、配列番号187のアミノ酸配列を含み;且つ
(f)HVR−L3は、配列番号188、189、及び190からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む。
【0014】
幾つかの実施態様において、本発明は、三つの軽鎖超可変領域(HVR−L1、HVR−L2、及びLVR−L3)を含む単離された抗ヘマグルチニン抗体を提供し、ここで、
(a)HVR−L1は、配列番号182、183、184、185、及び186からなる群から選択されるアミノ酸配列を含み;
(b)HVR−L2は、配列番号187のアミノ酸配列を含み;且つ
(c)HVR−L3は、配列番号188、189及び190からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む。
【0015】
幾つかの実施態様において、本発明は、三つの重鎖超可変領域(HVR−H1、HVR−H2、及びLVR−H3)を含む単離された抗ヘマグルチニン抗体を提供し、ここで、
(a)HVR−H1は、配列番号178のアミノ酸配列を含み;
(b)HVR−H2は、配列番号179のアミノ酸配列を含み;且つ
(c)HVR−H3は、配列番号180及び181からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む。
【0016】
幾つかの実施態様において、本発明は、少なくとも一つ、二つ、及び/又は三つの軽鎖超可変領域(HVR)配列を含む単離された抗ヘマグルチニン抗体を提供し、ここで、
(a)HVR−L1は、配列番号182、183、184、185、及び186からなる群から選択されるアミノ酸配列を含み;
(b)HVR−L2は、配列番号187のアミノ酸配列を含み;且つ
(c)HVR−L3は、配列番号188、189及び190からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む。
【0017】
幾つかの実施態様において、本発明は、少なくとも一つ、二つ、及び/又は三つの重鎖超可変領域(HVR)配列を含む単離された抗ヘマグルチニン抗体を提供し、ここで、
(a)HVR−H1は、配列番号178のアミノ酸配列を含み;
(b)HVR−H2は、配列番号179のアミノ酸配列を含み;且つ
(c)HVR−H3は、配列番号180及び181からなる群から選択されるアミノ酸配列を含み;
【0018】
幾つかの実施態様において、本発明の単離された抗ヘマグルチニン抗体は、重鎖可変領域及び軽鎖可変領域を含み、ここで、重鎖可変領域は、配列番号111及び115からなる群から選択されるアミノ酸配列を含み、軽鎖可変領域は、配列番号113、117、119、122、124、126、128、130、及び132からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む。
【0019】
幾つかの実施態様において、本発明の単離された抗ヘマグルチニン抗体は、配列番号113、117、119、122、124、126、128、130、及び132からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域を含む。
【0020】
幾つかの実施態様において、本発明の単離された抗ヘマグルチニン抗体は、配列番号111及び115からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む重鎖可変領域を含む。
【0021】
幾つかの実施態様において、本発明の単離された抗ヘマグルチニン抗体は、重鎖及び軽鎖を含み、ここで、重鎖は、配列番号110、114、及び120からなる群から選択されるアミノ酸配列を含み、軽鎖は、配列番号112、116、118、121、123、125、127、129、及び131からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む。
【0022】
幾つかの実施態様において、本発明の単離された抗ヘマグルチニン抗体は、配列番号112、116、118、121、123、125、127、129、及び131からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む軽鎖を含む。
【0023】
幾つかの実施態様において、本発明の単離された抗ヘマグルチニン抗体は、配列番号110、114及び120からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む重鎖を含む。
【0024】
幾つかの実施態様において、本発明の単離された抗ヘマグルチニン抗体は、三つの重鎖超可変領域(HVR−H1、HVR−H2及びHVR−H3)及び三つの軽鎖超可変領域(HVR−L1、HVR−L2、及びHVR−L3)を含み、ここで、
(a)HVR−H1は、配列番号191及び192からなる群から選択されるアミノ酸配列を含み;
(b)HVR−H2は、配列番号193のアミノ酸配列を含み;
(c)HVR−H3は、配列番号194のアミノ酸配列を含み;
(d)HVR−L1は、配列番号195のアミノ酸配列を含み;
(e)HVR−L2は、配列番号196のアミノ酸配列を含み;且つ
(f)HVR−L3は、配列番号197、198及び199からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む。
【0025】
幾つかの実施態様において、本発明は、少なくとも一つ、二つ、三つ、四つ、五つ及び/又は六つの超可変領域(HVR)配列を含む単離された抗ヘマグルチニン抗体を提供し、ここで、
(a)HVR−H1は、配列番号191及び192からなる群から選択されるアミノ酸配列を含み;
(b)HVR−H2は、配列番号193のアミノ酸配列を含み;
(c)HVR−H3は、配列番号194のアミノ酸配列を含み;
(d)HVR−L1は、配列番号195のアミノ酸配列を含み;
(e)HVR−L2は、配列番号196のアミノ酸配列を含み;且つ
(f)HVR−L3は、配列番号197、198及び199からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む。
【0026】
幾つかの実施態様において、本発明は、三つの軽鎖超可変領域(HVR−L1、HVR−L2、及びLVR−L3)を含む単離された抗ヘマグルチニン抗体を提供し、ここで、
(a)HVR−L1は、配列番号195のアミノ酸配列を含み;
(b)HVR−L2は、配列番号196のアミノ酸配列を含み;且つ
(c)HVR−H3は、配列番号197、198、及び199からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む。
【0027】
幾つかの実施態様において、本発明は、三つの重鎖超可変領域(HVR−H1、HVR−H2、及びLVR−H3)を含む単離された抗ヘマグルチニン抗体を提供し、ここで、
(a)HVR−Hlは、配列番号191及び192からなる群から選択されるアミノ酸配列を含み;
(b)HVR−H2は、配列番号193のアミノ酸配列を含み;且つ
(c)HVR−H3は、配列番号194のアミノ酸配列を含む。
【0028】
幾つかの実施態様において、本発明は、少なくとも一つ、二つ、及び/又は三つの軽鎖超可変領域(HVR)配列を含む単離された抗ヘマグルチニン抗体を提供し、ここで、
(a)HVR−L1は、配列番号195のアミノ酸配列を含み;
(b)HVR−L2は、配列番号196のアミノ酸配列を含み;且つ
(c)HVR−L3は、配列番号197、198、及び199からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む。
【0029】
幾つかの実施態様において、本発明は、少なくとも一つ、二つ、及び/又は三つの重鎖超可変領域(HVR)配列を含む単離された抗ヘマグルチニン抗体を提供し、ここで、
(a)HVR−H1は、配列番号191及び192からなる群から選択されるアミノ酸配列を含み;
(b)HVR−H2は、配列番号193のアミノ酸配列を含み;且つ
(c)HVR−H3は、配列番号194のアミノ酸配列を含む。
【0030】
幾つかの実施態様において、本発明の単離された抗ヘマグルチニン抗体は、重鎖可変領域及び軽鎖可変領域を含み、ここで、重鎖可変領域は、配列番号134、138、142、148、及び234からなる群から選択されるアミノ酸配列を含み、軽鎖可変領域は、配列番号136、140、144、146、150、152、及び235からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む。
【0031】
幾つかの実施態様において、本発明の単離された抗ヘマグルチニン抗体は、配列番号136、140、144、146、150、152、及び235からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域を含む。
【0032】
幾つかの実施態様において、本発明の単離された抗ヘマグルチニン抗体は、配列番号134、138、142、148、及び234からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む重鎖可変領域を含む。
【0033】
幾つかの実施態様において、本発明の単離された抗ヘマグルチニン抗体は、重鎖及び軽鎖を含み、ここで、重鎖は、配列番号133、137、141からなる群から選択されるアミノ酸配列を含み、及び、軽鎖は、配列番号135、139、143、145、149,及び151からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む。
【0034】
幾つかの実施態様において、本発明の単離された抗ヘマグルチニン抗体は、配列番号135、139、143、145、149及び151からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む軽鎖を含む。
【0035】
幾つかの実施態様において、本発明の単離された抗ヘマグルチニン抗体は、配列番号133、137、141及び147からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む重鎖を含む。
【0036】
幾つかの実施態様において、本発明の単離された抗ヘマグルチニン抗体は、三つの重鎖超可変領域(HVR−H1、HVR−H2及びHVR−H3)及び三つの軽鎖超可変領域(HVR−L1、HVR−L2及びHVR−L3)を含み、ここで、
(a)HVR−H1は、配列番号200のアミノ酸配列を含み;
(b)HVR−H2は、配列番号201のアミノ酸配列を含み;
(c)HVR−H3は、配列番号202のアミノ酸配列を含み;
(d)HVR−L1は、配列番号203のアミノ酸配列を含み;
(e)HVR−L2は、配列番号204のアミノ酸配列を含み;且つ
(c)HVR−L3は、配列番号205のアミノ酸配列を含む。
【0037】
幾つかの実施態様において、本発明は、少なくとも一つ、二つ、三つ、四つ、五つ及び/又は六つの超可変領域(HVR)配列を含む単離された抗ヘマグルチニン抗体を提供し、ここで、
(a)HVR−H1は、配列番号200のアミノ酸配列を含み;
(b)HVR−H2は、配列番号201のアミノ酸配列を含み;
(c)HVR−H3は、配列番号202のアミノ酸配列を含み;
(d)HVR−L1は、配列番号203のアミノ酸配列を含み;
(e)HVR−L2は、配列番号204のアミノ酸配列を含み;且つ
(c)HVR−L3は、配列番号205のアミノ酸配列を含む。
【0038】
幾つかの実施態様において、本発明は、三つの軽鎖超可変領域(HVR−L1、HVR−L2及びLVR−L3)を含む単離された抗ヘマグルチニン抗体を提供し、ここで、
(a)HVR−L1は、配列番号203のアミノ酸配列を含み;
(b)HVR−L2は、配列番号204のアミノ酸配列を含み;且つ
(c)HVR−H3は、配列番号205のアミノ酸配列を含む。
【0039】
幾つかの実施態様において、本発明は、三つの重鎖超可変領域(HVR−H1、HVR−H2及びLVR−H3)を含む単離された抗ヘマグルチニン抗体を提供し、ここで、
(a)HVR−H1は、配列番号200のアミノ酸配列を含み;
(b)HVR−H2は、配列番号201のアミノ酸配列を含み;且つ
(c)HVR−H3は、配列番号202のアミノ酸配列を含む。
【0040】
幾つかの実施態様において、本発明は、少なくとも一つ、二つ、及び/又は三つの軽鎖超可変領域(HVR)配列を含む単離された抗ヘマグルチニン抗体を提供し、ここで、
(a)HVR−L1は、配列番号203のアミノ酸配列を含み;
(b)HVR−L2は、配列番号204のアミノ酸配列を含み;且つ
(c)HVR−H3は、配列番号205のアミノ酸配列を含む。
【0041】
幾つかの実施態様において、本発明は、少なくとも一つ、二つ、及び/又は三つの重鎖超可変領域(HVR)配列を含む単離された抗ヘマグルチニン抗体を提供し、ここで、
(a)HVR−H1は、配列番号200のアミノ酸配列を含み;
(b)HVR−H2は、配列番号201のアミノ酸配列を含み;且つ
(c)HVR−H3は、配列番号202のアミノ酸配列を含む。
【0042】
幾つかの実施態様において、本発明の単離された抗ヘマグルチニン抗体は、重鎖可変領域及び軽鎖可変領域を含み、ここで、重鎖可変領域は、配列番号154及び158からなる群から選択されるアミノ酸配列を含み、軽鎖可変領域は、配列番号156のアミノ酸配列を含む。
【0043】
幾つかの実施態様において、本発明の単離された抗ヘマグルチニン抗体は、配列番号156のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域を含む。
【0044】
幾つかの実施態様において、本発明の単離された抗ヘマグルチニン抗体は、配列番号154及び158からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む重鎖可変領域を含む。
【0045】
幾つかの実施態様において、本発明の単離された抗ヘマグルチニン抗体は、重鎖及び軽鎖を含み、ここで、重鎖は、配列番号153及び157からなる群から選択されるアミノ酸配列を含み、軽鎖は、配列番号155のアミノ酸配列を含む。
【0046】
幾つかの実施態様において、本発明の単離された抗ヘマグルチニン抗体は、配列番号155のアミノ酸配列を含む軽鎖を含む。
【0047】
幾つかの実施態様において、本発明の単離された抗ヘマグルチニン抗体は、配列番号153及び157からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む重鎖を含む。
【0048】
幾つかの実施態様において、本発明の単離された抗ヘマグルチニン抗体は、三つの重鎖超可変領域(HVR−H1、HVR−H2及びHVR−H3)及び三つの軽鎖超可変領域(HVR−L1、HVR−L2及びHVR−L3)を含み、ここで、
(a)HVR−H1は、配列番号206のアミノ酸配列を含み;
(b)HVR−H2は、配列番号207のアミノ酸配列を含み;
(c)HVR−H3は、配列番号208のアミノ酸配列を含み;
(d)HVR−L1は、配列番号209のアミノ酸配列を含み;
(e)HVR−L2は、配列番号210のアミノ酸配列を含み;且つ
(c)HVR−L3は、配列番号211のアミノ酸配列を含む。
【0049】
幾つかの実施態様において、本発明は、少なくとも一つ、二つ、三つ、四つ、五つ及び/又は六つの超可変領域(HVR)配列を含む単離された抗ヘマグルチニン抗体を提供し、ここで、
(a)HVR−H1は、配列番号206のアミノ酸配列を含み;
(b)HVR−H2は、配列番号207のアミノ酸配列を含み;
(c)HVR−H3は、配列番号208のアミノ酸配列を含み;
(d)HVR−L1は、配列番号209のアミノ酸配列を含み;
(e)HVR−L2は、配列番号210のアミノ酸配列を含み;且つ
(c)HVR−L3は、配列番号211のアミノ酸配列を含む。
【0050】
幾つかの実施態様において、本発明は、三つの軽鎖超可変領域(HVR−L1、HVR−L2及びLVR−L3)を含む単離された抗ヘマグルチニン抗体を提供し、ここで、
(a)HVR−L1は、配列番号209のアミノ酸配列を含み;
(b)HVR−L2は、配列番号210のアミノ酸配列を含み;且つ
(c)HVR−H3は、配列番号211のアミノ酸配列を含む。
【0051】
幾つかの実施態様において、本発明は、三つの重鎖超可変領域(HVR−H1、HVR−H2、及びLVR−H3)を含む単離された抗ヘマグルチニン抗体を提供し、ここで、
(a)HVR−H1は、配列番号206のアミノ酸配列を含み;
(b)HVR−H2は、配列番号207のアミノ酸配列を含み;且つ
(c)HVR−H3は、配列番号208のアミノ酸配列を含む。
【0052】
幾つかの実施態様において、本発明は、少なくとも一つ、二つ、及び/又は三つの軽鎖超可変領域(HVR)配列を含む単離された抗ヘマグルチニン抗体を提供し、ここで、
(a)HVR−L1は、配列番号209のアミノ酸配列を含み;
(b)HVR−L2は、配列番号210のアミノ酸配列を含み;且つ
(c)HVR−H3は、配列番号211のアミノ酸配列を含む。
【0053】
幾つかの実施態様において、本発明は、少なくとも一つ、二つ、及び/又は三つの重鎖超可変領域(HVR)配列を含む単離された抗ヘマグルチニン抗体を提供し、ここで、
(a)HVR−H1は、配列番号206のアミノ酸配列を含み;
(b)HVR−H2は、配列番号207のアミノ酸配列を含み;且つ
(c)HVR−H3は、配列番号208のアミノ酸配列を含む。
【0054】
幾つかの実施態様において、本発明の単離された抗ヘマグルチニン抗体は、重鎖可変領域及び軽鎖可変領域を含み、ここで、重鎖可変領域は、配列番号160のアミノ酸配列を含み、軽鎖可変領域は、配列番号162のアミノ酸配列を含む。
【0055】
幾つかの実施態様において、本発明の単離された抗ヘマグルチニン抗体は、配列番号162のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域を含む。
【0056】
幾つかの実施態様において、本発明の単離された抗ヘマグルチニン抗体は、配列番号160のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域を含む。
【0057】
幾つかの実施態様において、本発明の単離された抗ヘマグルチニン抗体は、重鎖及び軽鎖を含み、ここで、重鎖は、配列番号159のアミノ酸配列を含み、軽鎖は、配列番号161のアミノ酸配列を含む。
【0058】
幾つかの実施態様において、本発明の単離された抗ヘマグルチニン抗体は、配列番号161のアミノ酸配列を含む軽鎖を含む。
【0059】
幾つかの実施態様において、本発明の単離された抗ヘマグルチニン抗体は、配列番号159のアミノ酸配列を含む重鎖を含む。
【0060】
幾つかの実施態様において、本発明の単離された抗ヘマグルチニン抗体は、三つの重鎖超可変領域(HVR−H1、HVR−H2及びHVR−H3)及び三つの軽鎖超可変領域(HVR−L1、HVR−L2、及びHVR−L3)を含み、ここで、
(a)HVR−H1は、配列番号212のアミノ酸配列を含み;
(b)HVR−H2は、配列番号213のアミノ酸配列を含み;
(c)HVR−H3は、配列番号214のアミノ酸配列を含み;
(d)HVR−L1は、配列番号215のアミノ酸配列を含み;
(e)HVR−L2は、配列番号216のアミノ酸配列を含み;且つ
(c)HVR−L3は、配列番号217のアミノ酸配列を含む。
【0061】
幾つかの実施態様において、本発明は、少なくとも一つ、二つ、三つ、四つ、五つ及び/又は六つの超可変領域(HVR)配列を含む単離された抗ヘマグルチニン抗体を提供し、ここで、
(a)HVR−H1は、配列番号212のアミノ酸配列を含み;
(b)HVR−H2は、配列番号213のアミノ酸配列を含み;
(c)HVR−H3は、配列番号214のアミノ酸配列を含み;
(d)HVR−L1は、配列番号215のアミノ酸配列を含み;
(e)HVR−L2は、配列番号216のアミノ酸配列を含み;且つ
(c)HVR−L3は、配列番号217のアミノ酸配列を含む。
【0062】
幾つかの実施態様において、本発明は、三つの軽鎖超可変領域(HVR−L1、HVR−L2及びLVR−L3)を含む単離された抗ヘマグルチニン抗体を提供し、ここで、
(a)HVR−L1は、配列番号215のアミノ酸配列を含み;
(b)HVR−L2は、配列番号216のアミノ酸配列を含み;且つ
(c)HVR−H3は、配列番号217のアミノ酸配列を含む。
【0063】
幾つかの実施態様において、本発明は、三つの重鎖超可変領域(HVR−H1、HVR−H2、及びLVR−H3)を含む単離された抗ヘマグルチニン抗体を提供し、ここで、
(a)HVR−H1は、配列番号212のアミノ酸配列を含み;
(b)HVR−H2は、配列番号213のアミノ酸配列を含み;且つ
(c)HVR−H3は、配列番号214のアミノ酸配列を含む。
【0064】
幾つかの実施態様において、本発明は、少なくとも一つ、二つ、及び/又は三つの軽鎖超可変領域(HVR)配列を含む単離された抗ヘマグルチニン抗体を提供し、ここで、
(a)HVR−L1は、配列番号215のアミノ酸配列を含み;
(b)HVR−L2は、配列番号216のアミノ酸配列を含み;且つ
(c)HVR−H3は、配列番号217のアミノ酸配列を含む。
【0065】
幾つかの実施態様において、本発明は、少なくとも一つ、二つ、及び/又は三つの重鎖超可変領域(HVR)配列を含む単離された抗ヘマグルチニン抗体を提供し、ここで、
(a)HVR−H1は、配列番号212のアミノ酸配列を含み;
(b)HVR−H2は、配列番号213のアミノ酸配列を含み;且つ
(c)HVR−H3は、配列番号214のアミノ酸配列を含む。
【0066】
幾つかの実施態様において、本発明の単離された抗ヘマグルチニン抗体は、重鎖可変領域及び軽鎖可変領域を含み、ここで、重鎖可変領域は、配列番号164のアミノ酸配列を含み、軽鎖可変領域は、配列番号166のアミノ酸配列を含む。
【0067】
幾つかの実施態様において、本発明の単離された抗ヘマグルチニン抗体は、配列番号166のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域を含む。
【0068】
幾つかの実施態様において、本発明の単離された抗ヘマグルチニン抗体は、配列番号164のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域を含む。
【0069】
幾つかの実施態様において、本発明の単離された抗ヘマグルチニン抗体は、重鎖及び軽鎖を含み、ここで、重鎖は、配列番号163のアミノ酸配列を含み、軽鎖は、配列番号165のアミノ酸配列を含む。
【0070】
幾つかの実施態様において、本発明の単離された抗ヘマグルチニン抗体は、配列番号165のアミノ酸配列を含む軽鎖を含む。
【0071】
幾つかの実施態様において、本発明の単離された抗ヘマグルチニン抗体は、配列番号163のアミノ酸配列を含む重鎖を含む。
【0072】
幾つかの実施態様において、本発明の単離された抗ヘマグルチニン抗体は、三つの重鎖超可変領域(HVR−H1、HVR−H2及びHVR−H3)及び三つの軽鎖超可変領域(HVR−L1、HVR−L2、及びHVR−L3)を含み、ここで、
(a)HVR−H1は、配列番号218のアミノ酸配列を含み;
(b)HVR−H2は、配列番号219のアミノ酸配列を含み;
(c)HVR−H3は、配列番号220のアミノ酸配列を含み;
(d)HVR−L1は、配列番号221のアミノ酸配列を含み;
(e)HVR−L2は、配列番号222のアミノ酸配列を含み;且つ
(c)HVR−L3は、配列番号223のアミノ酸配列を含む。
【0073】
幾つかの実施態様において、本発明は、少なくとも一つ、二つ、三つ、四つ、五つ及び/又は六つの超可変領域(HVR)配列を含む単離された抗ヘマグルチニン抗体を提供し、ここで、
(a)HVR−H1は、配列番号218のアミノ酸配列を含み;
(b)HVR−H2は、配列番号219のアミノ酸配列を含み;
(c)HVR−H3は、配列番号220のアミノ酸配列を含み;
(d)HVR−L1は、配列番号221のアミノ酸配列を含み;
(e)HVR−L2は、配列番号222のアミノ酸配列を含み;且つ
(c)HVR−L3は、配列番号223のアミノ酸配列を含む。
【0074】
幾つかの実施態様において、本発明は、三つの軽鎖超可変領域(HVR−L1、HVR−L2及びLVR−L3)を含む単離された抗ヘマグルチニン抗体を提供し、ここで、
(a)HVR−L1は、配列番号221のアミノ酸配列を含み;
(b)HVR−L2は、配列番号222のアミノ酸配列を含み;且つ
(c)HVR−H3は、配列番号223のアミノ酸配列を含む。
【0075】
幾つかの実施態様において、本発明は、三つの重鎖超可変領域(HVR−H1、HVR−H2、及びLVR−H3)を含む単離された抗ヘマグルチニン抗体を提供し、ここで、
(a)HVR−H1は、配列番号218のアミノ酸配列を含み;
(b)HVR−H2は、配列番号219のアミノ酸配列を含み;且つ
(c)HVR−H3は、配列番号220のアミノ酸配列を含む。
【0076】
幾つかの実施態様において、本発明は、少なくとも一つ、二つ、及び/又は三つの軽鎖超可変領域(HVR)配列を含む単離された抗ヘマグルチニン抗体を提供し、ここで、
(a)HVR−L1は、配列番号221のアミノ酸配列を含み;
(b)HVR−L2は、配列番号222のアミノ酸配列を含み;且つ
(c)HVR−H3は、配列番号223のアミノ酸配列を含む。
【0077】
幾つかの実施態様において、本発明は、少なくとも一つ、二つ、及び/又は三つの重鎖超可変領域(HVR)配列を含む単離された抗ヘマグルチニン抗体を提供し、ここで、
(a)HVR−H1は、配列番号218のアミノ酸配列を含み;
(b)HVR−H2は、配列番号219のアミノ酸配列を含み;且つ
(c)HVR−H3は、配列番号220のアミノ酸配列を含む。
【0078】
幾つかの実施態様において、本発明の単離された抗ヘマグルチニン抗体は、重鎖可変領域及び軽鎖可変領域を含み、ここで、重鎖可変領域は、配列番号168のアミノ酸配列を含み、軽鎖可変領域は、配列番号170のアミノ酸配列を含む。
【0079】
幾つかの実施態様において、本発明の単離された抗ヘマグルチニン抗体は、配列番号170のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域を含む。
【0080】
幾つかの実施態様において、本発明の単離された抗ヘマグルチニン抗体は、配列番号168のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域を含む。
【0081】
幾つかの実施態様において、本発明の単離された抗ヘマグルチニン抗体は、重鎖及び軽鎖を含み、ここで、重鎖は、配列番号167のアミノ酸配列を含み、軽鎖は、配列番号169のアミノ酸配列を含む。
【0082】
幾つかの実施態様において、本発明の単離された抗ヘマグルチニン抗体は、配列番号169のアミノ酸配列を含む軽鎖を含む。
【0083】
幾つかの実施態様において、本発明の単離された抗ヘマグルチニン抗体は、配列番号167のアミノ酸配列を含む重鎖を含む。
【0084】
本発明はまた、本発明の抗ヘマグルチニン抗体をコードする単離された核酸を提供する。本発明はまた、本発明の抗ヘマグルチニン抗体をコードする核酸を含むベクターを提供する。本発明はまた、本発明の核酸又はベクターを含む宿主細胞を提供する。ベクターは、任意のタイプのもの、例えば、発現ベクターなどの組み換えベクターであって良い。種々の宿主細胞の何れかを使用することができる。一実施態様において、宿主細胞は、原核細胞、例えば大腸菌である。別の実施態様において、宿主細胞は真核細胞、例えば、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞などの哺乳動物細胞である。
【0085】
本発明は更に、本発明の抗ヘマグルチニン抗体を産生する方法を提供する。例えば、本発明は、(本明細書で定義されるように、完全長抗体及びその断片を含む)、抗ヘマグルチニン抗体を作製するための方法であって、適切な宿主細胞中で抗体又はその断片が産生されるように、抗ヘマグルチニン抗体又はその断片をコードする本発明の組み換えベクターを発現させることを含む方法を提供する。幾つかの実施態様において、本方法は、核酸が発現されるように、本発明の抗ヘマグルチニン抗体(又はその断片)をコードする核酸を含む宿主細胞を培養することを含む。本方法は更に、宿主細胞培養物又は宿主細胞培養培地から、抗ヘマグルチニン抗体又はその断片を回収することを含み得る。
【0086】
本発明はまた、本発明の抗ヘマグルチニン抗体及び薬学的に許容される担体を含む薬学的製剤を提供する。薬学的製剤は更に、追加の治療薬(例えば、オセルタミビル又はザナミビルなどのノイラミニダーゼ阻害剤;別の抗ヘマグルチニン抗体又は抗M2抗体などの別の抗体;その他)を含んでも良い。
【0087】
本発明はまた、本発明の抗ヘマグルチニン抗体を含む組成物を提供する。組成物は更に、追加の治療薬(例えば、オセルタミビル又はザナミビルなどのノイラミニダーゼ阻害剤;別の抗ヘマグルチニン抗体又は抗M2抗体などの別の抗体;その他)を含んでも良い。
【0088】
また、本発明は、A型インフルエンザウイルス感染の予防に使用のための本発明の抗ヘマグルチニン抗体を含む組成物を提供する。幾つかの実施態様において、本発明は、A型インフルエンザウイルス感染の予防に使用のための本発明の抗ヘマグルチニン抗体を含む薬学的組成物を提供する。本発明は更に、A型インフルエンザウイルス感染の治療に使用のための本発明の抗ヘマグルチニン抗体を含む組成物を提供する。幾つかの実施態様において、本発明は、A型インフルエンザウイルス感染の治療に使用のための本発明の抗ヘマグルチニン抗体を含む薬学的組成物を提供する。本発明は更に、A型インフルエンザウイルス感染の抑制に使用のための本発明の抗ヘマグルチニン抗体を含む組成物を提供する。幾つかの実施態様において、本発明は、A型インフルエンザウイルス感染の抑制に使用のための本発明の抗ヘマグルチニン抗体を含む薬学的組成物を提供する。
【0089】
本発明の抗ヘマグルチニン抗体を含む組成物はまた、医薬の製造に使用することができる。医薬は、A型インフルエンザウイルス感染の抑制、治療、又は予防において使用のためであり得る。ある実施態様において、医薬は更に、追加の治療薬(例えば、オセルタミビル又はザナミビルなどのノイラミニダーゼ阻害剤;別の抗ヘマグルチニン抗体又は抗M2抗体などの別の抗体;その他)を含んでも良い。
【0090】
本発明はまた、A型インフルエンザウイルス感染を抑制するための方法であって、本発明の抗ヘマグルチニン抗体を含む組成物の有効量を、それを必要とする患者に投与することを含み、それによってA型インフルエンザウイルス感染を抑制する方法を提供する。本発明はまた、A型インフルエンザウイルス感染を治療するための方法であって、本発明の抗ヘマグルチニン抗体を含む組成物の有効量を、それを必要とする患者に投与することを含み、それによってA型インフルエンザウイルス感染を治療する方法を提供する。本発明はまた、A型インフルエンザウイルス感染を予防するための方法であって、本発明の抗ヘマグルチニン抗体を含む組成物の有効量を、それを必要とする患者に投与することを含み、それによってA型インフルエンザウイルス感染を予防する方法を提供する。
【0091】
本発明はまた、A型インフルエンザウイルス感染を抑制、治療、又は予防するための方法であって、本発明の抗ヘマグルチニン抗体を含む組成物の有効量を、それを必要とする患者に投与し、及び、患者に追加の治療薬の有効量を投与することを含み、それによってA型インフルエンザウイルス感染を抑制、治療、又は予防する方法を提供する。幾つかの実施態様において、追加の治療薬は、オセルタミビル又はザナミビルなどのノイラミニダーゼ阻害剤である。他の実施態様において、追加の治療薬は別の抗ヘマグルチニン抗体である。更に他の実施態様において、追加の治療薬は抗M2抗体である。このような併用療法の様々な態様において、治療薬は、およそ同時に投与される、一緒に投与されるか、又は逐次的に又は連続的に投与される。特定の実施態様において、抗ノイラミニダーゼ阻害剤は、本発明の抗ヘマグルチニン抗体の投与前に投与される。
【0092】
別の実施態様において、本発明は、医薬の製造における本発明の抗ヘマグルチニン抗体の使用を提供する。医薬は、A型インフルエンザウイルス感染の抑制、治療、又は予防において使用のためであり得る。ある実施態様において、医薬は更に、追加の治療薬(例えば、オセルタミビル又はザナミビルなどのノイラミニダーゼ阻害剤;別の抗ヘマグルチニン抗体又は抗M2抗体などの別の抗体;その他)を含んでも良い。
【0093】
別の態様において、本発明は、医薬の製造における本発明の核酸の使用を提供する。医薬は、A型インフルエンザウイルス感染の抑制、治療、又は予防において使用のためであり得る。ある実施態様において、医薬は更に、追加の治療薬(例えば、オセルタミビル又はザナミビルなどのノイラミニダーゼ阻害剤;別の抗ヘマグルチニン抗体又は抗M2抗体などの別の抗体;その他)を含んでも良い。
【0094】
別の態様において、本発明は、医薬の製造における本発明の発現ベクターの使用を提供する。医薬は、A型インフルエンザウイルス感染の抑制、治療、又は予防において使用のためであり得る。ある実施態様において、医薬は更に、追加の治療薬(例えば、オセルタミビル又はザナミビルなどのノイラミニダーゼ阻害剤;別の抗ヘマグルチニン抗体又は抗M2抗体などの別の抗体;その他)を含んでも良い。
【0095】
別の態様において、本発明は、医薬の製造における本発明の宿主細胞の使用を提供する。医薬は、A型インフルエンザウイルス感染の抑制、治療、又は予防において使用のためであり得る。ある実施態様において、医薬は更に、追加の治療薬(例えば、オセルタミビル又はザナミビルなどのノイラミニダーゼ阻害剤;別の抗ヘマグルチニン抗体又は抗M2抗体などの別の抗体;その他)を含んでも良い。
【0096】
別の態様において、本発明は、医薬の製造における本発明の製造品の使用を提供する。医薬は、A型インフルエンザウイルス感染の抑制、治療、又は予防において使用のためであり得る。ある実施態様において、医薬は更に、追加の治療薬(例えば、オセルタミビル又はザナミビルなどのノイラミニダーゼ阻害剤;別の抗ヘマグルチニン抗体又は抗M2抗体などの別の抗体;その他)を含んでも良い。
【0097】
別の態様において、本発明は、医薬の製造における本発明のキットの使用を提供する。医薬は、A型インフルエンザウイルス感染の抑制、治療、又は予防において使用のためであり得る。ある実施態様において、医薬は更に、追加の治療薬(例えば、オセルタミビル又はザナミビルなどのノイラミニダーゼ阻害剤;別の抗ヘマグルチニン抗体又は抗M2抗体などの別の抗体;その他)を含んでも良い。
【0098】
様々な態様において、本発明の抗ヘマグルチニン抗体はヘマグルチニンに結合する。幾つかの態様において、本発明の抗ヘマグルチニン抗体は、グループ1のヘマグルチニンに結合し、グループ2のヘマグルチニンに結合し、又はグループ1及びグループ2のヘマグルチニンに結合する。他の態様において、本発明の抗ヘマグルチニン抗体はヘマグルチニンに結合し、A型インフルエンザウイルスを中和する。幾つかの実施態様において、本発明の抗ヘマグルチニン抗体は、インビトロ、インビボ、又はインビトロ及びインビボで、A型インフルエンザウイルスを中和する。
【図面の簡単な説明】
【0099】
図1A-1B】図1A及び図1Bは、SCID/ベージュマウスでの濃縮に先立って、ワクチン接種後7日目のヒト末梢血単核細胞(PBMC)からの(図1A)、及び、抗原プレミックスを含む場合及び含まない場合でのSCID/ベージュマウスでの濃縮後8日目からの(図1B)、抗ヘマグルチニン陽性(ヘマグルチニンH3+及びヘマグルチニンH1+)形質芽細胞のFACS分析を示すデータを、それぞれ上のパネル及び下のパネルで説明する。
図2図2は、PBMC/抗原プレミックスを含まない場合(円)及びPBMC/抗原プレミックス含む場合(四角)における、個々のSCID/ベージュマウス由来のPBMCの脾臓内注入後8日目から得られた脾細胞の分析を、ヘマグルチニン(H1)/CD38highのパーセントとして示すデータを説明する。長方形は、ヘマグルチニンH1+形質芽細胞を提示したマウスを示している。
図3図3は、本発明の抗ヘマグルチニン抗体による、様々なインフルエンザAグループ1及びグループ2のウイルス株のインビトロ中和を示すデータを説明する。
図4A-4B】図4A及び4Bは、モノクローナル抗体39.29 NWPP(配列番号177として開示された「NWPP」)による、様々なインフルエンザAグループ1(図4A)及びグループ2(図4B)のウイルス株のインビトロ中和を示すデータを説明する。
図5A-5B】図5A及び5Bは、モノクローナル抗体81.39 SVSH−NYP(配列番号171として開示された「SVSH」)による、様々なインフルエンザAグループ1(図5A)及びグループ2(図5B)のウイルス株のインビトロ中和を示すデータを説明する。
図6図6は、モノクローナル抗体39.18 B 11による、様々なインフルエンザAグループ1のウイルス株のインビトロ中和を示すデータを説明する。
図7図7は、モノクローナル抗体36.89による、様々なインフルエンザAグループ1及びグループ2のウイルス株のインビトロ中和を示すデータを説明する。
図8図8は、モノクローナル抗体mAb9 01F3による、様々なインフルエンザAグループ1及びグループ2のウイルス株のインビトロ中和を示すデータを説明する。
図9図9は、モノクローナル抗体mAb23 06C2による、様々なインフルエンザAグループ1及びグループ2のウイルス株のインビトロ中和を示すデータを説明する。
図10図10は、モノクローナル抗体39.29 NCv1による、ヘマグルチニンH5発現性の偽ウイルスのインビトロ中和を示すデータを説明する。
図11図11は、モノクローナル抗体39.29 NWPP(配列番号177として開示された「NWPP」)による、H7N7ウマインフルエンザウイルスのインビトロ中和を示すデータを説明する。
図12A-12B-12C-12D】図12A、12B、12C、及び12Dは、様々なA型インフルエンザウイルス株(A/PR/8/1934(PR8)、図12A;A/Port Chalmers/1/1973(PC73)、図12B;A/Hong Kong/1/1968(HK68)、図12C);及びA/Aichi/2/1968 (Aichi68)、図12D)により感染され、モノクローナル抗体39.29 NWPP(配列番号177として開示された「NWPP」)の様々な量を投与されたマウスの生存パーセントを示すデータを説明する。
図13図13は、A/PR/8/1934A型インフルエンザウイルス株により感染され、モノクローナル抗体39.29 NCv1の様々な量を投与されたマウスの生存パーセントを示すデータを説明する。
図14図14は、A/Hong Kong/1/1968A型インフルエンザウイルス株(高いIC50を有するA型インフルエンザウイルス)により感染され、モノクローナル抗体39.29 NCv1の様々な量を投与されたマウスの生存パーセントを示すデータを説明する。
図15図15は、A/Port Chalmers/1/1973ンフルエンザA型ウイルス株により感染され、モノクローナル抗体39.29 NCv1の様々な量を投与されたマウスの生存パーセントを示すデータを説明する。
図16図16は、A/Aichi/2/1968A型インフルエンザウイルス株により感染され、モノクローナル抗体39.29 NCv1の様々な量を投与されたマウスの生存パーセントを示すデータを説明する。
図17図17は、A型インフルエンザウイルス株A/PR/8/1934により感染され、モノクローナル抗体39.29 D8C2とモノクローナル抗体39.29 NWPP(配列番号177として開示された「NWPP」)又はオセルタミビル(タミフル(登録商標))との50:50混合物を投与されたマウスの生存パーセントを比較するデータを説明する。
図18図18は、A型インフルエンザウイルス株A/PR/8/1934により感染され、モノクローナル抗体39.29 NWPP(配列番号177として開示された「NWPP」)、オセルタミビル(タミフル(登録商標))、又はモノクローナル抗体39.29 NWPP(配列番号177として開示された「NWPP」)とオセルタミビル(タミフル(登録商標))との組合せを投与されたマウスの生存パーセントの比較を示すデータを説明する。
図19A-19B】図19A及び19Bは、A型インフルエンザウイルス株A/Vietnam/1203/04(H5N1)により感染され、感染後48時間又は72時間で、モノクローナル抗体39.29 D8C2(図19A)、モノクローナル抗体81.39 B1C1(時19B)、又はオセルタミビル(タミフル(登録商標))を投与されたフェレットの生存パーセントの比較を示すデータを説明する。
図20図20は、ヘマグルチニンH1、H2、H3、H5及びH7からのヘマグルチニンアミノ酸配列のアミノ酸配列アラインメントを示し、モノクローナル抗体39.29 NCv1とヘマグルチニン結合性エピトープとのヘマグルチニン接触残基(影付き)を示している。
図21A-21B】図21A及び21Bは、ビオチン標識化モノクローナル抗体39.29のA/NWS/1933からのヘマグルチニンH1(図21A)及びA/HK/8/1968からのヘマグルチニンH3(図21B)への結合と競合する、本発明の様々なモノクローナル抗体の競合ELISA実験からのデータを説明する。
図22A-22B】図22A及び22Bは、モノクローナル抗体81.39 B1C1の軽鎖可変領域及び重鎖可変領域(それぞれ配列番号113及び111)の、免疫グロブリンカッパ可変3−15*01生殖系列(IGKV3−15*01)及び免疫グロブリン重鎖可変3−30*01生殖系列(IGHV3−30*01)(それぞれ配列番号236及び237)とのアミノ酸配列アラインメントを示す。アミノ酸は、Kabatの番号付けによる番号である。Kabat、Chothia、及び接触CDRが示されている。
図23A-23B】図23A及び23Bは、モノクローナル抗体81.39 SVSH−NYP(配列番号171として開示された「SVSH」)の軽鎖可変領域及び重鎖可変領域(それぞれ配列番号117及び115)の、免疫グロブリンカッパ可変3−15*01生殖系列(IGKV3−15*01)及び免疫グロブリン重鎖可変3−30*01生殖系列(IGHV3−30*01)(それぞれ配列番号236及び237)とのアミノ酸配列アラインメントを示す。アミノ酸は、Kabatの番号付けによる番号である。Kabat、Chothia、及び接触CDRが示されている。
図24A-24B】図24A及び24Bは、モノクローナル抗体81.39 B1F1の軽鎖可変領域及び重鎖可変領域(それぞれ配列番号119及び111)の、免疫グロブリンカッパ可変3−15*01生殖系列(IGKV3−15*01)及び免疫グロブリン重鎖可変3−30*01生殖系列(IGHV3−30*01)(それぞれ配列番号236及び237)とのアミノ酸配列アラインメントを示す。アミノ酸は、Kabatの番号付けによる番号である。Kabat、Chothia、及び接触CDRが示されている。
図25A-25B】図25A及び25Bは、モノクローナル抗体81.39 SVDS(配列番号172として開示された「SVDS」)の軽鎖可変領域及び重鎖可変領域(それぞれ配列番号113及び115)の、免疫グロブリンカッパ可変3−15*01生殖系列(IGKV3−15*01)及び免疫グロブリン重鎖可変3−30*01生殖系列(IGHV3−30*01)(それぞれ配列番号236及び237)とのアミノ酸配列アラインメントを示す。アミノ酸は、Kabatの番号付けによる番号である。Kabat、Chothia、及び接触CDRが示されている。
図26A-26B】図26A及び26Bは、モノクローナル抗体81.39 SVSS(配列番号173として開示された「SVSS」)の軽鎖可変領域及び重鎖可変領域(それぞれ配列番号122及び115)の、免疫グロブリンカッパ可変3−15*01生殖系列(IGKV3−15*01)及び免疫グロブリン重鎖可変3−30*01生殖系列(IGHV3−30*01)(それぞれ配列番号236及び237)とのアミノ酸配列アラインメントを示す。アミノ酸は、Kabatの番号付けによる番号である。Kabat、Chothia、及び接触CDRが示されている。
図27A-27B】図27A及び27Bは、モノクローナル抗体81.39 SVDH(配列番号174として開示された「SVDH」)の軽鎖可変領域及び重鎖可変領域(それぞれ配列番号124及び115)の、免疫グロブリンカッパ可変3−15*01生殖系列(IGKV3−15*01)及び免疫グロブリン重鎖可変3−30*01生殖系列(IGHV3−30*01)(それぞれ配列番号236及び237)とのアミノ酸配列アラインメントを示す。アミノ酸は、Kabatの番号付けによる番号である。Kabat、Chothia、及び接触CDRが示されている。
図28A-28B】図28A及び28Bは、mAb 81.39 SVSH(配列番号171として開示された「SVSH」)の軽鎖可変領域及び重鎖可変領域(それぞれ配列番号126及び115)の、免疫グロブリンカッパ可変3−15*01生殖系列(IGKV3−15*01)及び免疫グロブリン重鎖可変3−30*01生殖系列(IGHV3−30*01)(それぞれ配列番号236及び237)とのアミノ酸配列アラインメントを示す。アミノ酸は、Kabatの番号付けによる番号である。Kabat、Chothia、及び接触CDRが示されている。
図29A-29B】図29A及び29Bは、モノクローナル抗体81.39 SVSH.NFP(配列番号171として開示された「SVSH」)の軽鎖可変領域及び重鎖可変領域(それぞれ配列番号128及び115)の、免疫グロブリンカッパ可変3−15*01生殖系列(IGKV3−15*01)及び免疫グロブリン重鎖可変3−30*01生殖系列(IGHV3−30*01)(それぞれ配列番号236及び237)とのアミノ酸配列アラインメントを示す。アミノ酸は、Kabatの番号付けによる番号である。Kabat、Chothia、及び接触CDRが示されている。
図30A-30B】図30A及び30Bは、モノクローナル抗体81.39 SVDS.F(配列番号172として開示された「SVDS」)の軽鎖可変領域及び重鎖可変領域(それぞれ配列番号130及び115)の、免疫グロブリンカッパ可変3−15*01生殖系列(IGKV3−15*01)及び免疫グロブリン重鎖可変3−30*01生殖系列(IGHV3−30*01)(それぞれ配列番号236及び237)とのアミノ酸配列アラインメントを示す。アミノ酸は、Kabatの番号付けによる番号である。Kabat、Chothia、及び接触CDRが示されている。
図31A-31B】図31A及び31Bは、モノクローナル抗体81.39 SVDS.Y(配列番号172として開示された「SVDS」)の軽鎖可変領域及び重鎖可変領域(それぞれ配列番号132及び115)の、免疫グロブリンカッパ可変3−15*01生殖系列(IGKV3−15*01)及び免疫グロブリン重鎖可変3−30*01生殖系列(IGHV3−30*01)(それぞれ配列番号236及び237)とのアミノ酸配列アラインメントを示す。アミノ酸は、Kabatの番号付けによる番号である。Kabat、Chothia、及び接触CDRが示されている。
図32A-32B】図32A及び32Bは、モノクローナル抗体39.29 D2C4の軽鎖可変領域及び重鎖可変領域(それぞれ配列番号136及び134)の、免疫グロブリンカッパ可変3−15*01生殖系列(IGKV3−15*01)及び免疫グロブリン重鎖可変3−30*01生殖系列(IGHV3−30*01)(それぞれ配列番号236及び245)とのアミノ酸配列アラインメントを示す。アミノ酸は、Kabatの番号付けによる番号である。Kabat、Chothia、及び接触CDRが示されている。
図33A-33B】図33A及び33Bは、モノクローナル抗体39.29 D8C2の軽鎖可変領域及び重鎖可変領域(それぞれ配列番号140及び138)の、免疫グロブリンカッパ可変3−15*01生殖系列(IGKV3−15*01)及び免疫グロブリン重鎖可変3−30*01生殖系列(IGHV3−30*01)(それぞれ配列番号236及び245)とのアミノ酸配列アラインメントを示す。アミノ酸は、Kabatの番号付けによる番号である。Kabat、Chothia、及び接触CDRが示されている。
図34A-34B】図34A及び34Bは、モノクローナル抗体39.29 NCv1の軽鎖可変領域及び重鎖可変領域(それぞれ配列番号144及び142)の、免疫グロブリンカッパ可変3−15*01生殖系列(IGKV3−15*01)及び免疫グロブリン重鎖可変3−30*01生殖系列(IGHV3−30*01)(それぞれ配列番号236及び245)とのアミノ酸配列アラインメントを示す。アミノ酸は、Kabatの番号付けによる番号である。Kabat、Chothia、及び接触CDRが示されている。
図35A-35B】図35A及び35Bは、モノクローナル抗体39.29 D8E7の軽鎖可変領域及び重鎖可変領域(それぞれ配列番号146及び138)の、免疫グロブリンカッパ可変3−15*01生殖系列(IGKV3−15*01)及び免疫グロブリン重鎖可変3−30*01生殖系列(IGHV3−30*01)(それぞれ配列番号236及び245)とのアミノ酸配列アラインメントを示す。アミノ酸は、Kabatの番号付けによる番号である。Kabat、Chothia、及び接触CDRが示されている。
図36A-36B】図36A及び36Bは、モノクローナル抗体39.29 NFPP(配列番号175として開示された「NFPP」)の軽鎖可変領域及び重鎖可変領域(それぞれ配列番号150及び148)の、免疫グロブリンカッパ可変3−15*01生殖系列(IGKV3−15*01)及び免疫グロブリン重鎖可変3−30*01生殖系列(IGHV3−30*01)(それぞれ配列番号236及び245)とのアミノ酸配列アラインメントを示す。アミノ酸は、Kabatの番号付けによる番号である。Kabat、Chothia、及び接触CDRが示されている。
図37A-37B】図37A及び37Bは、モノクローナル抗体39.29 NYPP(配列番号176として開示された「NYPP」)の軽鎖可変領域及び重鎖可変領域(それぞれ配列番号152及び148)の、免疫グロブリンカッパ可変3−15*01生殖系列(IGKV3−15*01)及び免疫グロブリン重鎖可変3−30*01生殖系列(IGHV3−30*01)(それぞれ配列番号236及び245)とのアミノ酸配列アラインメントを示す。アミノ酸は、Kabatの番号付けによる番号である。Kabat、Chothia、及び接触CDRが示されている。
図38A-38B】図38A及び38Bは、モノクローナル抗体39.29 NWPP(配列番号177として開示された「NWPP」)の軽鎖可変領域及び重鎖可変領域(それぞれ配列番号235及び234)の、免疫グロブリンカッパ可変3−15*01生殖系列(IGKV3−15*01)及び免疫グロブリン重鎖可変3−30*01生殖系列(IGHV3−30*01)(それぞれ配列番号236及び245)とのアミノ酸配列アラインメントを示す。アミノ酸は、Kabatの番号付けによる番号である。Kabat、Chothia、及び接触CDRが示されている。
図39A-39B】図39A及び39Bは、モノクローナル抗体39.18 B11の軽鎖可変領域及び重鎖可変領域(それぞれ配列番号156及び154)の、免疫グロブリンカッパ可変3−15*01生殖系列(IGKV3−15*01)及び免疫グロブリン重鎖可変1−69*01生殖系列(IGHV1−69*01)(それぞれ配列番号236及び238)とのアミノ酸配列アラインメントを示す。アミノ酸は、Kabatの番号付けによる番号である。Kabat、Chothia、及び接触CDRが示されている。
図40A-40B】図40A及び40Bは、モノクローナル抗体39.18 E12の軽鎖可変領域及び重鎖可変領域(それぞれ配列番号156及び158)の、免疫グロブリンカッパ可変3−15*01生殖系列(IGKV3−15*01)及び免疫グロブリン重鎖可変1−69*01生殖系列(IGHV1−69*01)(それぞれ配列番号236及び238)とのアミノ酸配列アラインメントを示す。アミノ酸は、Kabatの番号付けによる番号である。Kabat、Chothia、及び接触CDRが示されている。
図41A-41B】図41A及び41Bは、モノクローナル抗体36.89の軽鎖可変領域及び重鎖可変領域(それぞれ配列番号162及び160)の、免疫グロブリンカッパ可変1−5*03生殖系列(IGKV1−5*03)及び免疫グロブリン重鎖可変1−18*01生殖系列(IGHV1−18*01)(それぞれ配列番号239及び240)とのアミノ酸配列アラインメントを示す。アミノ酸は、Kabatの番号付けによる番号である。Kabat、Chothia、及び接触CDRが示されている。
図42A-42B】図42A及び42Bは、モノクローナル抗体9.01F3の軽鎖可変領域及び重鎖可変領域(それぞれ配列番号166及び164)の、免疫グロブリン軽鎖可変1−44*01生殖系列(IGKV1−44*01)及び免疫グロブリン重鎖可変1−2*02*01生殖系列(IGHV1−2*02)(それぞれ配列番号241及び242)とのアミノ酸配列アラインメントを示す。アミノ酸は、Kabatの番号付けによる番号である。Kabat、Chothia、及び接触CDRが示されている。
図43A-43B】図43A及び43Bは、モノクローナル抗体23.06C2の軽鎖可変領域及び重鎖可変領域(それぞれ配列番号170及び168)の、免疫グロブリンカッパ可変2−30*01生殖系列(IGKV2−30*01)及び免疫グロブリン重鎖可変4−39*01生殖系列(IGHV4−39*01)(それぞれ配列番号243及び244)とのアミノ酸配列アラインメントを示す。アミノ酸は、Kabatの番号付けによる番号である。Kabat、Chothia、及び接触CDRが示されている。
【発明を実施するための形態】
【0100】
本発明の実施態様の詳細な記述
I.定義
本明細書における目的のための「アクセプターヒトフレームワーク」とは、下記に定義されるように、ヒト免疫グロブリンフレームワーク又はヒトコンセンサスフレームワークから得られる軽鎖可変ドメイン(VL)フレームワーク又は重鎖可変ドメイン(VH)フレームワークのアミノ酸配列を含有するフレームワークである。ヒト免疫グロブリンのフレームワーク又はヒトコンセンサスフレームワーク「に由来する」アクセプターヒトフレームワークは、その同一のアミノ酸配列を含んでもよく、又はそれはアミノ酸配列の改変を含み得る。幾つかの実施態様において、アミノ酸変化の数は、10以下、9以下、8以下、7以下、6以下、5以下、4以下、3以下、又は2以下である。幾つかの実施態様において、VLアクセプターヒトフレームワークは、Vはヒト免疫グロブリンのフレームワーク配列又はヒトコンセンサスフレームワーク配列に、配列が同一である。
【0101】
「親和性」とは、分子(例えば、抗体)の単一結合部位とその結合パートナー(例えば、抗原)との間の非共有結合相互作用の総和の強度を指す。本明細書で使用する場合、特に断らない限り、「結合親和性」は、結合対(例えば、抗体と抗原)のメンバー間の1:1の相互作用を反映している本質的な結合親和性を指す。そのパートナーYに対する分子Xの親和性は、一般的に解離定数(Kd)で表すことができる。親和性は、本明細書に記載したものを含む、当技術分野で知られている一般的な方法によって測定することができる。結合親和性を測定するための具体的な例示であって典型的な実施態様は、以下で説明される。
【0102】
「親和性成熟」抗体とは、その改変を有していない親抗体と比較して、抗原に対する抗体の親和性に改良を生じせしめる、その一又は複数の超可変領域(HVR)において一又は複数の改変を持つものである。
【0103】
用語「抗ヘマグルチニン抗体」及び「ヘマグルチニンに結合する抗体」は、抗体が、インフルエンザウイルスのヘマグルチニンを標的とすることを含む、ヘマグルチニンを標的とすることにおいて、診断薬剤及び/又は治療的薬剤として有用であるように、十分な親和性でヘマグルチニンに結合する抗体を指す。一実施態様において、抗ヘマグルチニン抗体の、無関係な、非ヘマグルチニンタンパク質への結合の程度は、例えば、ラジオイムノアッセイ(RIA)によって測定される場合、抗体のヘマグルチニンへの結合の約10%未満である。ある実施態様において、ヘマグルチニンへ結合する抗体は、解離定数(Kd)が、≦1μM、≦100nM、≦10nM、≦1nM、≦0.1nM、≦0.01nM、又は≦0.001nM(例えば、10−8M未満、例えば、10−8Mから10−13M、例えば、10−9Mから10−13M)である。ある実施態様において、抗ヘマグルチニン抗体は、A型インフルエンザウイルスの異なる株、サブタイプ及び分離株由来のヘマグルチニン間で保存されているヘマグルチニンのエピトープに結合する。
【0104】
用語「抗体」は最も広い意味で用いられ、様々な抗体構造を包含し、限定されないが、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、多特異性抗体(例えば二重特異性抗体)、及び、所望の抗原結合活性を示す限り、抗体断片を含む。
【0105】
「抗体断片」は、インタクトな抗体が結合する抗原を結合するインタクトな抗体の一部を含むインタクトな抗体以外の分子を指す。「抗体断片」はまた、ヘマグルチニンに結合し、A型インフルエンザウイルスを中和するインタクトな抗体の一部を含む、インタクトな抗体以外の分子を指す。抗体断片の例としては、限定されないが、Fv、Fab、Fab’、Fab’−SH、F(ab’);ダイアボディ;直鎖状抗体;単鎖抗体分子(例えばscFv);及び抗体断片から形成された多重特異性抗体を含む。
【0106】
参照抗体として「同一のエピトープに結合する抗体」とは、競合アッセイにおいて50%以上、参照抗体のその抗原への結合をブロックする抗体、逆に競合アッセイにおいて50%以上、その抗体のその抗原への結合をブロックするその参照抗体を指す。典型的な競合アッセイが、本明細書において提供される。
【0107】
用語「キメラ」抗体は、重鎖及び/又は軽鎖の一部分が特定の起源又は種から由来し、一方重鎖及び/又は軽鎖の残りが異なる起源又は種から由来する抗体を指す。
【0108】
抗体の「クラス」は、その重鎖が保有する定常ドメイン又は定常領域のタイプを指す。抗体の5つの主要なクラス:IgA、IgD、IgE、IgG及びIgMがあり、これらの幾つかは更に、サブクラス(アイソタイプ)、例えば、IgG、IgGに、IgG、IgG、IGA、及びIgAに分けることができる。免疫グロブリンの異なるクラスに対応する重鎖定常ドメインは、それぞれα、δ、ε、γ、及びμと呼ばれる。
【0109】
本明細書で用いられる「細胞傷害性薬物」という用語は、細胞の機能を阻害又は阻止し及び/又は細胞死又は破壊を生ずる物質を指す。細胞傷害性薬物は、限定されないが、放射性同位体(例えば、At211、I131、I125、Y90、Re186、Re188、Sm153、Bi212、P32、Pb212及びLuの放射性同位体);化学療法剤又は薬物(例えば、メトトレキセート、アドリアマイシン、ビンカアルカロイド(ビンクリスチン、ビンブラスチン、エトポシド)、ドキソルビシン、メルファラン、マイトマイシンC、クロラムブシル、ダウノルビシン又は他の挿入剤);増殖阻害剤;酵素及びその断片、例えば核酸分解酵素など;抗生物質;小分子毒素などの毒素、又は細菌、真菌、植物又は動物由来の酵素活性毒素(それらの断片及び/又はその変異体を含む);及び以下に開示される様々な抗腫瘍剤又は抗癌剤を包含する。
【0110】
「エフェクター機能」とは、抗体のアイソタイプにより変わる、抗体のFc領域に起因する生物学的活性を指す。抗体のエフェクター機能の例には、C1q結合及び補体依存性細胞障害(CDC);Fcレセプター結合;抗体依存性細胞媒介性細胞障害(ADCC);貪食作用;細胞表面レセプター(例えば、B細胞レセプター)のダウンレギュレーション;及びB細胞活性化が含まれる。
【0111】
薬剤、例えば、薬学的製剤の「有効量」とは、所望の治療的又予防的結果を達成するために必要な用量及び期間での、有効な量を指す。
【0112】
用語「Fc領域」は、定常領域の少なくとも一部を含む、免疫グロブリン重鎖のC末端領域を定義するために使用される。その用語は、天然配列Fc領域と変異体Fc領域を含む。一実施態様において、ヒトIgG重鎖Fc領域はCys226又はPro230から重鎖のカルボキシル末端まで伸長する。しかし、Fc領域のC末端リジン(Lys447)は存在しているか、又は存在していない場合がある。本明細書に明記されていない限り、Fc領域又は定常領域内のアミノ酸残基の番号付けは、Kabat et al., Sequences of Proteins of Immunological Interest, 5th Ed. Public Health Service, National Institutes of Health, Bethesda, MD, 1991に記載されるように、EUインデックスとも呼ばれるEU番号付けシステムに従う。
【0113】
「フレームワーク」又は「FR」は、超可変領域(HVR)残基以外の可変ドメイン残基を指す。可変ドメインのFRは、一般的に4つのFRのドメイン:FR1、FR2、FR3、及びFR4からなる。従って、HVR及びFR配列は一般にVH(又はVL)の以下の配列に現れる:FR1−H1(L1)−FR2−H2(L2)−FR3−H3(L3)−FR4。
【0114】
用語「完全長抗体」、「インタクトな抗体」及び「全抗体」は、本明細書中で互換的に使用され、天然型抗体構造と実質的に類似の構造を有するか、又は本明細書で定義されるFc領域を含む重鎖を有する抗体を指す。
【0115】
用語「宿主細胞」、「宿主細胞株」及び「宿主細胞培養」は互換的に使用され、外因性の核酸が導入された細胞を指し、そのような細胞の子孫を含める。宿主細胞は、「形質転換体」及び「形質転換された細胞」を含み、継代の数に関係なく、それに由来する一次形質転換細胞及び子孫が含まれる。子孫は親細胞と核酸含量が完全に同一ではないかもしれないが、突然変異が含まれる場合がある。最初に形質転換された細胞においてスクリーニング又は選択されたものと同じ機能又は生物活性を有する変異型子孫が本明細書において含まれる。
【0116】
「ヒト抗体」は、ヒト又はヒト細胞により産生されるか、又はヒト抗体のレパートリー又は他のヒト抗体をコードする配列を利用した非ヒト起源に由来する抗体のそれに対応するアミノ酸配列を有するものである。ヒト抗体のこの定義は、非ヒト抗原結合残基を含むヒト化抗体を特に除外する。
【0117】
「ヒトコンセンサスフレームワーク」とは、ヒト免疫グロブリンVL又はVHフレームワーク配列の選択において最も一般的に存在するアミノ酸残基を表すフレームワークである。一般的には、ヒト免疫グロブリンVL又はVH配列の選択は、可変ドメイン配列のサブグループからのものである。一般的には、配列のサブグループは、 Kabat et al., Sequences of Proteins of Immunological Interest, Fifth Edition, NIH Publication 91-3242, Bethesda MD (1991), vols. 1-3にあるサブグループである。一実施態様において、VLについて、サブグループは上掲のKabatらにあるサブグループカッパIである。一実施態様において、VHについて、サブグループは上掲のKabatらにあるサブグループIIIである。
【0118】
「ヒト化」抗体は、非ヒトHVR由来のアミノ酸残基、及びヒトFR由来アミノ酸残基を含むキメラ抗体を指す。所定の実施態様において、ヒト化抗体は、少なくとも一つ、典型的には2つの可変ドメインの全てを実質的に含み、HVR(例えば、CDR)の全て又は実質的に全てが、非ヒト抗体のものに対応し、全て又は実質的にFRの全てが、ヒト抗体のものに対応する。ヒト化抗体は、任意で、ヒト抗体由来の抗体定常領域の少なくとも一部を含んでもよい。抗体の「ヒト化型」、例えば、非ヒト抗体は、ヒト化を遂げた抗体を指す。
【0119】
本明細書で使用される用語「超可変領域」又は「HVR」は、配列が超可変(「相補性決定領域」又は「CDR」)であるか、及び/又は構造的に定義されたループ(「超可変ループ」)を形成するか、及び/又は抗原接触残基(「抗原接触」)を含む抗体可変ドメインの各領域を指す。一般的に、抗体は、VH(H1、H2、H3)に3つ、及びVL(L1、L2、L3)に3つの6つのHVRを含む。本明細書における典型的なHVRは、
(a)アミノ酸残基26−32(L1)、50−52(L2)、91−96(L3)、26−32(H1)、53−55(H2)、及び96−101(H3)で生じる超可変ループ(Chothia and Lesk, J. Mol. Biol. 196:901-917 (1987));
(b)アミノ酸残基24−34(L1)、50−56(L2)、89−97(L3)、31−35b(H1)、50−65(H2)、及び95−102(H3)で生じるCDR(Kabat et al., Sequences of Proteins of Immunological Interest, 5th Ed.Public Health Service, National Institutes of Health, Bethesda, MD (1991));
(c)アミノ酸残基27c−36(L1)、46−55(L2)、89−96(L3)、30−35b(H1)、47−58(H2)、及び93−101(H3)で生じる抗原接触(MacCallum et al.J. Mol.Biol.262:732-745 (1996));
(d)HVRのアミノ酸残基46−56(L2)、47−56(L2)、48−56(L2)、49−56(L2)、26−35(H1)、26−35b(H1)、49−65(H2)、93−102(H3)、及び94−102(H3)を含む、(a)、(b)、及び/又は(c)の組合せを含む。
【0120】
特に断らない限り、可変ドメイン内のHVR残基及び他の残基(例えば、FR残基)は、上掲のKabatらに従い、本明細書において番号が付けられる。
【0121】
「イムノコンジュゲート」は、一以上の異種分子にコンジュゲートした抗体であり、限定されないが、細胞傷害性薬物を含む。
【0122】
「個体」又は「被検体」は、哺乳動物である。哺乳動物は、限定されないが、家畜動物(例えば、ウシ、ヒツジ、ネコ、イヌ、ウマ)、霊長類(例えば、ヒト、及びサルなどの非ヒト霊長類)、ウサギ、げっ歯類(例えば、マウス及びラット)を含む。所定の実施態様において、個体又は被検体はヒトである。
【0123】
「単離された」抗体は、その自然環境の成分から分離されたものである。幾つかの実施態様において、抗体は、例えば、電気泳動(例えば、SDS−PAGE、等電点電気泳動(IEF)、キャピラリー電気泳動)又はクロマトグラフィー(例えば、イオン交換又は逆相HPLC)により決定されるように、95%又は99%を超える純度にまで精製される。抗体純度の評価法の総説としては、例えば、Flatman et al., J. Chromatogr. B 848:79-87 (2007)を参照のこと。
【0124】
「単離された」核酸は、その自然環境の成分から分離された核酸分子を指す。単離された核酸は、核酸分子を通常含む細胞に含まれる核酸分子を含むが、しかし、その核酸分子は、染色体外又はその自然の染色体上の位置とは異なる染色体位置に存在している。
【0125】
「抗ヘマグルチニン抗体をコードする単離された核酸」は、抗体の重鎖及び軽鎖(又はその断片)をコードする一以上の核酸分子を指し、単一のベクター又は別個のベクター内のそのような核酸分子、及び宿主細胞の一以上の位置に存在するそのような核酸分子を含む。
【0126】
本明細書で使用される用語「モノクローナル抗体」とは、実質的に均一な抗体の集団から得られる抗体を意味し、すなわち、例えば、天然に生じる変異を含み、又はモノクローナル抗体製剤の製造時に発生し、一般的に少量で存在している変異体などの、可能性のある変異体抗体を除き、集団を構成する個々の抗体は同一であり、及び/又は同じエピトープに結合する。異なる決定基(エピトープ)に対する異なる抗体を典型的に含むポリクローナル抗体の調製物とは異なり、モノクローナル抗体の調製物の各モノクローナル抗体は、抗原の単一の決定基に対するものである。「モノクローナル」なる修飾語句は、抗体の、実質的に均一な抗体の集団から得られたものであるという特性を示し、抗体を何か特定の方法で生産しなければならないと解釈されるべきものではない。例えば、本発明に従って使用されるモノクローナル抗体は、限定されないが、ハイブリドーマ法、組換えDNA法、ファージディスプレイ法、ヒト免疫グロブリン遺伝子座の全部又は一部を含むトランスジェニック動物を利用する方法を含む様々な技術によって作成され、モノクローナル抗体を作製するためのそのような方法及び他の例示的な方法は、本明細書に記載されている。
【0127】
「ネイキッド抗体」とは、異種の部分(例えば、細胞傷害性部分)又は放射性標識にコンジュゲートしていない抗体を指す。ネイキッド抗体は薬学的製剤中に存在してもよい。
【0128】
「天然型抗体」は、様々な構造を有する、天然に生じる免疫グロブリンを指す。例えば、天然型IgG抗体は、ジスルフィド結合している2つの同一の軽鎖と2つの同一の重鎖から成る、約150000ダルトンのヘテロ四量体糖タンパク質である。N末端からC末端に、各重鎖は、可変重鎖ドメイン又は重鎖可変ドメインとも呼ばれる可変領域(VH)を有し、3つの定常ドメイン(CH1、CH2及びCH3)が続く。同様に、N末端からC末端に、各軽鎖は、可変軽鎖ドメイン又は軽鎖可変ドメインとも呼ばれる可変領域(VL)、続いて軽鎖定常領域とも呼ばれる定常軽鎖(CL)ドメインを有する。抗体の軽鎖は、その定常ドメインのアミノ酸配列に基づいて、カッパ(κ)とラムダ(λ)と呼ばれる、2つのタイプのいずれかに割り当てることができる。
【0129】
用語「パッケージ挿入物」は、効能、用法、用量、投与、併用療法、禁忌についての情報、及び/又はそのような治療用製品の使用に関する警告を含む、治療用製品の商用パッケージに慣習的に含まれている説明書を指すために使用される。
【0130】
「参照ポリペプチド配列に関する「パーセント(%)アミノ酸配列同一性」は、配列を整列させ、最大のパーセント配列同一性を得るために必要ならば間隙を導入した後、如何なる保存的置換も配列同一性の一部と考えないとした、参照ポリペプチドのアミノ酸残基と同一である候補配列中のアミノ酸残基のパーセントとして定義される。パーセントアミノ酸配列同一性を決定する目的のためのアラインメントは、当業者の技量の範囲にある種々の方法、例えばBLAST、BLAST−2、ALIGN、又はMegalign(DNASTAR)ソフトウェアのような公に入手可能なコンピュータソフトウェアを使用することにより達成可能である。当業者であれば、比較される配列の全長に対して最大のアラインメントを達成するために必要な任意のアルゴリズムを含む、アラインメントを測定するための適切なパラメータを決定することができる。しかし、ここでの目的のためには、%アミノ酸配列同一性値は、配列比較コンピュータプログラムALIGN−2を用いて得られる。ALIGN−2配列比較コンピュータプログラムはジェネンテク社によって作成され、ソースコードは米国著作権庁、Washington D.C.、20559に使用者用書類とともに提出され、米国著作権登録番号TXU510087の下で登録されている。ALIGN−2プログラムはジェネンテック社、South San Francisco、Californiaを通して公的に入手可能であり、ソースコードからコンパイルしてもよい。ALIGN−2プログラムは、UNIXオペレーティングシステム、特にデジタルUNIX V4.0Dでの使用のためにコンパイルされる。全ての配列比較パラメータは、ALIGN−2プログラムによって設定され変動しない。
【0131】
アミノ酸配列比較にALIGN−2が用いられる状況では、与えられたアミノ酸配列Aの、与えられたアミノ酸配列Bとの、又はそれに対する%アミノ酸配列同一性(或いは、与えられたアミノ酸配列Bと、又はそれに対して所定の%アミノ酸配列同一性を持つ又は含む与えられたアミノ酸配列Aと言うこともできる)は次のように計算される:
分率X/Yの100倍
ここで、Xは、A及びBのプログラムアラインメントにおいて、配列アラインメントプログラムALIGN−2によって同一であると一致したスコアのアミノ酸残基の数であり、YはBの全アミノ酸残基の全数である。アミノ酸配列Aの長さがアミノ酸配列Bの長さと一致しない場合、AのBに対する%アミノ酸配列同一性は、BのAに対する%アミノ酸配列同一性とは一致しないと評価されるであろう。特に断らない限りは、ここで使用される全ての%アミノ酸配列同一性値は、直前のパラグラフに記載したように、ALIGN−2コンピュータプログラムを用いて得られる。
【0132】
用語「薬学的製剤」は、その中に有効で含有される活性成分の生物学的活性を許容するような形態であって、製剤を投与する被検体にとって許容できない毒性である他の成分を含まない調製物を指す。
【0133】
「薬学的に許容される担体」は、被検体に非毒性であり、有効成分以外の薬学的製剤中の成分を指す。薬学的に許容される担体は、限定されないが、緩衝剤、賦形剤、安定剤、又は保存剤を含む。
【0134】
本明細書で用いられる用語「ヘマグルチニン」は、特に断らない限り、任意のインフルエンザウイルス源からの任意の天然型ヘマグルチニンを指す。その用語は、「完全長」、未処理のヘマグルチニン、並びに、インフルエンザウイルス又はインフルエンザウイルス感染細胞内でのプロセシングから生じた任意の形態のヘマグルチニンを包含する。その用語はまた、ヘマグルチニンの天然に生じる変異体、例えば、スプライス変異体又は対立遺伝子変異体を含む。様々なA型インフルエンザウイルス株からの例示的なヘマグルチニンタンパク質のアミノ酸配列は、配列番号225(A/Japan/305/1957からのH2)、226(A/Perth/16/2009からのH3)、227(A/Vietnam/1203/2004からのH5)、228(A/chicken/NSW/1/1997からのH7)、229(A/California/07/2009からのH1)、230(A/NSW/1933からのH1)、231(A/Hong Kong/8/1968からのH3)、232(A/Netherlands/219/2003からのH7)、及び233(A/South Carolina/1918)に示される。
【0135】
本明細書で用いられるように、「治療」(及び「治療する(treat)」又は「治療している(treating)」など文法上の変形)は、治療されている個体の自然経過を変えようと試みる臨床的介入を指し、予防のために、又は臨床病理の過程においてのいずれかで実行できる。治療の望ましい効果は、限定されないが、疾患の発症又は再発を予防すること(例えば、A型インフルエンザウイルス感染の発生又は再発を予防すること)、症状の軽減(軽減すること)又は緩和、疾患の任意の直接的又は間接的な病理学的帰結の縮小、疾患の進行の速度を遅らせること、疾患状態の改善又は緩和、及び寛解又は予後の改善を含む。幾つかの実施態様において、本発明の抗体は、疾患の発症を遅延させるか又は疾患の進行を遅くするために使用される。
【0136】
用語「可変領域」又は「可変ドメイン」は、抗体の抗原への結合に関与する抗体の重鎖又は軽鎖のドメインを指す。天然型抗体の可変重鎖ドメイン及び軽鎖(それぞれVH及びVL)は、4つの保存されたフレームワーク領域(FR)と3つの超可変領域(HVR)を含む各ドメインを持ち、一般的に似たような構造を有する。(例えば、Kindt, T.J., et al., Kuby Immunology、第6版、 W.H. Freeman and Co., N.Y. (2007), 91頁)を参照)。単一のVH又はVLドメインは、抗原結合特異性を付与するのに十分であり得る。更に、特定の抗原に結合する抗体は、相補的なVL又はVHドメインのそれぞれのライブラリーをスクリーニングするために、抗原に特異的に結合する抗体由来のVH又はVLドメインを用いて単離することができる。例えば、Portolano et al., J. Immunol. 150:880-887 (1993); Clarkson et al., Nature 352:624-628 (1991)を参照。
【0137】
本明細書で使用される、用語「ベクター」は、それがリンクされている別の核酸を伝播することができる核酸分子を指す。この用語は、自己複製核酸構造としてのベクター、並びにそれが導入された宿主細胞のゲノムに組み込まれたベクターを含む。ある種のベクターは、それらが動作可能なようにリンクされている核酸の発現を指示することができる。このようなベクターは、本明細書では「発現ベクター」と言う。
【0138】
II.組成物及び方法
一態様において、本発明は、抗ヘマグルチニン抗体及びその使用に部分的に基づいている。所定の実施態様において、ヘマグルチニンに結合する抗体が提供される。本発明の抗体は、例えば、A型インフルエンザウイルス感染の診断、治療又は予防のために有用である。
【0139】
A.典型的な抗ヘマグルチニン抗体
一態様において、本発明は、ヘマグルチニンに結合する単離された抗体を提供する。ある実施態様において、本発明の抗ヘマグルチニン抗体は、ヘマグルチニンに結合し、グループ1のヘマグルチニンに結合し、グループ2のヘマグルチニンに結合し、又はグループ1及びグループ2のヘマグルチニンに結合する。他の実施態様において、本発明の抗ヘマグルチニン抗体は、インビトロでA型インフルエンザウイルスを中和する。他の実施態様において、本発明の抗ヘマグルチニン抗体は、インビボでA型インフルエンザウイルスを中和する。更に他の実施態様において、本発明の抗ヘマグルチニン抗体は、A型インフルエンザウイルス感染を減少させ、A型インフルエンザウイルス感染を予防し、A型インフルエンザウイルス感染を抑制し、又はA型インフルエンザウイルス感染を治療する。幾つかの実施態様において、本発明の抗ヘマグルチニン抗体は、インフルエンザウイルスの膜と感染細胞のエンドソーム膜との間のヘマグルチニン媒介性の融合を、阻止、抑制、又は減少させる(従って、ウイルスRNAの感染細胞の細胞質への侵入を阻止、抑制、又は減少させ、よって、インフルエンザウイルス感染の更なる伝播を阻止、抑制、又は減少させる)。
【0140】
一態様において、本発明は、(a)配列番号178のアミノ酸配列を含むHVR−H1;(b)配列番号179のアミノ酸配列を含むHVR−H2;(c)配列番号180のアミノ酸配列を含むHVR−H3;(d)配列番号182のアミノ酸配列を含むHVR−L1;(e)配列番号187のアミノ酸配列を含むHVR−L2;及び(f)配列番号188のアミノ酸配列を含むHVR−L3から選択される、少なくとも一つ、二つ,三つ、四つ、五つ、又は六つのHVRを含む抗ヘマグルチニン抗体を提供する。
【0141】
一態様において、本発明は、(a)配列番号178のアミノ酸配列を含むHVR−H1;(b)配列番号179のアミノ酸配列を含むHVR−H2;(c)配列番号181のアミノ酸配列を含むHVR−H3;(d)配列番号183のアミノ酸配列を含むHVR−L1;(e)配列番号187のアミノ酸配列を含むHVR−L2;及び(f)配列番号189のアミノ酸配列を含むHVR−L3から選択される、少なくとも一つ、二つ、三つ、四つ、五つ、又は六つのHVRを含む抗ヘマグルチニン抗体を提供する。
【0142】
一態様において、本発明は、(a)配列番号178のアミノ酸配列を含むHVR−H1;(b)配列番号179のアミノ酸配列を含むHVR−H2;(c)配列番号181のアミノ酸配列を含むHVR−H3;(d)配列番号182のアミノ酸配列を含むHVR−L1;(e)配列番号187のアミノ酸配列を含むHVR−L2;及び(f)配列番号188のアミノ酸配列を含むHVR−L3から選択される、少なくとも一つ、二つ、三つ、四つ、五つ、又は六つのHVRを含む抗ヘマグルチニン抗体を提供する。
【0143】
一態様において、本発明は、(a)配列番号178のアミノ酸配列を含むHVR−H1;(b)配列番号179のアミノ酸配列を含むHVR−H2;(c)配列番号181のアミノ酸配列を含むHVR−H3;(d)配列番号184のアミノ酸配列を含むHVR−L1;(e)配列番号187のアミノ酸配列を含むHVR−L2;及び(f)配列番号188のアミノ酸配列を含むHVR−L3から選択される、少なくとも一つ、二つ、三つ、四つ、五つ、又は六つのHVRを含む抗ヘマグルチニン抗体を提供する。
【0144】
一態様において、本発明は、(a)配列番号178のアミノ酸配列を含むHVR−H1;(b)配列番号179のアミノ酸配列を含むHVR−H2;(c)配列番号181のアミノ酸配列を含むHVR−H3;(d)配列番号185のアミノ酸配列を含むHVR−L1;(e)配列番号187のアミノ酸配列を含むHVR−L2;及び(f)配列番号188のアミノ酸配列を含むHVR−L3から選択される、少なくとも一つ、二つ、三つ、四つ、五つ、又は六つのHVRを含む抗ヘマグルチニン抗体を提供する。
【0145】
一態様において、本発明は、(a)配列番号178のアミノ酸配列を含むHVR−H1;(b)配列番号179のアミノ酸配列を含むHVR−H2;(c)配列番号181のアミノ酸配列を含むHVR−H3;(d)配列番号183のアミノ酸配列を含むHVR−L1;(e)配列番号187のアミノ酸配列を含むHVR−L2;及び(f)配列番号188のアミノ酸配列を含むHVR−L3から選択される、少なくとも一つ、二つ、三つ、四つ、五つ、又は六つのHVRを含む抗ヘマグルチニン抗体を提供する。
【0146】
一態様において、本発明は、(a)配列番号178のアミノ酸配列を含むHVR−H1;(b)配列番号179のアミノ酸配列を含むHVR−H2;(c)配列番号181のアミノ酸配列を含むHVR−H3;(d)配列番号183のアミノ酸配列を含むHVR−L1;(e)配列番号187のアミノ酸配列を含むHVR−L2;及び(f)配列番号190のアミノ酸配列を含むHVR−L3から選択される、少なくとも一つ、二つ、三つ、四つ、五つ、又は六つのHVRを含む抗ヘマグルチニン抗体を提供する。
【0147】
一態様において、本発明は、(a)配列番号178のアミノ酸配列を含むHVR−H1;(b)配列番号179のアミノ酸配列を含むHVR−H2;(c)配列番号181のアミノ酸配列を含むHVR−H3;(d)配列番号182のアミノ酸配列を含むHVR−L1;(e)配列番号187のアミノ酸配列を含むHVR−L2;及び(f)配列番号190のアミノ酸配列を含むHVR−L3から選択される、少なくとも一つ、二つ、三つ、四つ、五つ、又は六つのHVRを含む抗ヘマグルチニン抗体を提供する。
【0148】
一態様において、本発明は、(a)配列番号178のアミノ酸配列を含むHVR−H1;(b)配列番号179のアミノ酸配列を含むHVR−H2;(c)配列番号181のアミノ酸配列を含むHVR−H3;(d)配列番号186のアミノ酸配列を含むHVR−L1;(e)配列番号187のアミノ酸配列を含むHVR−L2;及び(f)配列番号189のアミノ酸配列を含むHVR−L3から選択される、少なくとも一つ、二つ、三つ、四つ、五つ、又は六つのHVRを含む抗ヘマグルチニン抗体を提供する。
【0149】
一態様において、本発明は、(a)配列番号178のアミノ酸配列を含むHVR−H1;(b)配列番号179のアミノ酸配列を含むHVR−H2;(c)配列番号180及び181のアミノ酸配列を含むHVR−H3;(d)配列番号182、183、184、185及び186からなる群から選択されるアミノ酸配列を含むHVR−L1;(e)配列番号187のアミノ酸配列を含むHVR−L2;及び(f)配列番号188、189、及び190からなる群から選択されるアミノ酸配列を含むHVR−L3から選択される、少なくとも一つ、二つ、三つ、四つ、五つ、又は六つのHVRを含む抗ヘマグルチニン抗体を提供する。
【0150】
一態様において、本発明は、(a)配列番号178のアミノ酸配列を含むHVR−H1;(b)配列番号179のアミノ酸配列を含むHVR−H2;及び(c)配列番号180及び181からなる群から選択されるアミノ酸配列を含むHVR−H3から選択される、少なくとも一つ、二つ、又は三つ全てのVH HVR配列を含む抗体を提供する。
【0151】
別の態様において、本発明は、(a)配列番号182、183、184、185、及び186からなる群から選択されるアミノ酸配列を含むHVR−L1;(b)配列番号187のアミノ酸配列を含むHVR−L2;及び(c)配列番号188、189、及び190からなる群から選択されるアミノ酸配列を含むHVR−L3から選択される、少なくとも一つ、二つ、又は三つ全てのVL HVR配列を含む抗体を提供する。
【0152】
別の態様において、本発明は、(a)配列番号178のアミノ酸配列を含むHVR−H1;(b)配列番号179のアミノ酸配列を含むHVR−H2;(c)配列番号180のアミノ酸配列を含むHVR−H3;(d)配列番号182のアミノ酸配列を含むHVR−L1;(e)配列番号187のアミノ酸配列を含むHVR−L2;及び(f)配列番号188から選択されるアミノ酸配列を含むHVR−L3を含む抗体を提供する。
【0153】
別の態様において、本発明は、(a)配列番号178のアミノ酸配列を含むHVR−H1;(b)配列番号179のアミノ酸配列を含むHVR−H2;(c)配列番号181のアミノ酸配列を含むHVR−H3;(d)配列番号183のアミノ酸配列を含むHVR−L1;(e)配列番号187のアミノ酸配列を含むHVR−L2;及び(f)配列番号189から選択されるアミノ酸配列を含むHVR−L3を含む抗体を提供する。
【0154】
別の態様において、本発明は、(a)配列番号178のアミノ酸配列を含むHVR−H1;(b)配列番号179のアミノ酸配列を含むHVR−H2;(c)配列番号181のアミノ酸配列を含むHVR−H3;(d)配列番号182のアミノ酸配列を含むHVR−L1;(e)配列番号187のアミノ酸配列を含むHVR−L2;及び(f)配列番号188から選択されるアミノ酸配列を含むHVR−L3を含む抗体を提供する。
【0155】
別の態様において、本発明は、(a)配列番号178のアミノ酸配列を含むHVR−H1;(b)配列番号179のアミノ酸配列を含むHVR−H2;(c)配列番号181のアミノ酸配列を含むHVR−H3;(d)配列番号184のアミノ酸配列を含むHVR−L1;(e)配列番号187のアミノ酸配列を含むHVR−L2;及び(f)配列番号188から選択されるアミノ酸配列を含むHVR−L3を含む抗体を提供する。
【0156】
別の態様において、本発明は、(a)配列番号178のアミノ酸配列を含むHVR−H1;(b)配列番号179のアミノ酸配列を含むHVR−H2;(c)配列番号181のアミノ酸配列を含むHVR−H3;(d)配列番号185のアミノ酸配列を含むHVR−L1;(e)配列番号187のアミノ酸配列を含むHVR−L2;及び(f)配列番号188から選択されるアミノ酸配列を含むHVR−L3を含む抗体を提供する。
【0157】
別の態様において、本発明は、(a)配列番号178のアミノ酸配列を含むHVR−H1;(b)配列番号179のアミノ酸配列を含むHVR−H2;(c)配列番号181のアミノ酸配列を含むHVR−H3;(d)配列番号183のアミノ酸配列を含むHVR−L1;(e)配列番号187のアミノ酸配列を含むHVR−L2;及び(f)配列番号188から選択されるアミノ酸配列を含むHVR−L3を含む抗体を提供する。
【0158】
別の態様において、本発明は、(a)配列番号178のアミノ酸配列を含むHVR−H1;(b)配列番号179のアミノ酸配列を含むHVR−H2;(c)配列番号181のアミノ酸配列を含むHVR−H3;(d)配列番号183のアミノ酸配列を含むHVR−L1;(e)配列番号187のアミノ酸配列を含むHVR−L2;及び(f)配列番号190から選択されるアミノ酸配列を含むHVR−L3を含む抗体を提供する。
【0159】
別の態様において、本発明は、(a)配列番号178のアミノ酸配列を含むHVR−H1;(b)配列番号179のアミノ酸配列を含むHVR−H2;(c)配列番号181のアミノ酸配列を含むHVR−H3;(d)配列番号182のアミノ酸配列を含むHVR−L1;(e)配列番号187のアミノ酸配列を含むHVR−L2;及び(f)配列番号190から選択されるアミノ酸配列を含むHVR−L3を含む抗体を提供する。
【0160】
別の態様において、本発明は、(a)配列番号178のアミノ酸配列を含むHVR−H1;(b)配列番号179のアミノ酸配列を含むHVR−H2;(c)配列番号181のアミノ酸配列を含むHVR−H3;(d)配列番号186のアミノ酸配列を含むHVR−L1;(e)配列番号187のアミノ酸配列を含むHVR−L2;及び(f)配列番号189から選択されるアミノ酸配列を含むHVR−L3を含む抗体を提供する。
【0161】
別の態様において、本発明は、配列番号111及び115からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む重鎖可変領域を含む抗体を提供する。
【0162】
別の態様において、本発明は、配列番号113、117、119、122、124、126、128、130、及び132からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域を含む抗体を提供する。
【0163】
別の態様において、本発明は、配列番号111及び115からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む重鎖可変領域及び配列番号113、117、119、122、124、126、128、130、及び132からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域を含む抗体を提供する。
【0164】
一実施態様において、本発明は、配列番号111のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域及び配列番号113のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域を含む抗体を提供する。
【0165】
一実施態様において、本発明は、配列番号115のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域及び配列番号117のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域を含む抗体を提供する。
【0166】
一実施態様において、本発明は、配列番号111のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域及び配列番号119のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域を含む抗体を提供する。
【0167】
一実施態様において、本発明は、配列番号115のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域及び配列番号113のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域を含む抗体を提供する。
【0168】
一実施態様において、本発明は、配列番号115のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域及び配列番号122のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域を含む抗体を提供する。
【0169】
一実施態様において、本発明は、配列番号115のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域及び配列番号124のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域を含む抗体を提供する。
【0170】
一実施態様において、本発明は、配列番号115のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域及び配列番号126のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域を含む抗体を提供する。
【0171】
一実施態様において、本発明は、配列番号115のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域及び配列番号128のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域を含む抗体を提供する。
【0172】
一実施態様において、本発明は、配列番号115のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域及び配列番号130のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域を含む抗体を提供する。
【0173】
一実施態様において、本発明は、配列番号115のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域及び配列番号132のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域を含む抗体を提供する。
【0174】
別の態様において、本発明は、配列番号110、114、及び120からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む重鎖を含む抗体を提供する。
【0175】
別の態様において、本発明は、配列番号112、116、118、121、123、125、127、129、及び131からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む軽鎖を含む抗体を提供する。
【0176】
別の態様において、本発明は、配列番号110、114、及び120からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む重鎖、及び配列番号112、116、118、121、123、125、127、129、及び131からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む軽鎖を含む抗体を提供する。
【0177】
一実施態様において、本発明は、配列番号110のアミノ酸配列を含む重鎖及び配列番号112のアミノ酸配列を含む軽鎖を含む抗体を提供する。
【0178】
一実施態様において、本発明は、配列番号114のアミノ酸配列を含む重鎖及び配列番号116のアミノ酸配列を含む軽鎖を含む抗体を提供する。
【0179】
一実施態様において、本発明は、配列番号110のアミノ酸配列を含む重鎖及び配列番号118のアミノ酸配列を含む軽鎖を含む抗体を提供する。
【0180】
一実施態様において、本発明は、配列番号114のアミノ酸配列を含む重鎖及び配列番号112のアミノ酸配列を含む軽鎖を含む抗体を提供する。
【0181】
一実施態様において、本発明は、配列番号120のアミノ酸配列を含む重鎖及び配列番号121のアミノ酸配列を含む軽鎖を含む抗体を提供する。
【0182】
一実施態様において、本発明は、配列番号114のアミノ酸配列を含む重鎖及び配列番号123のアミノ酸配列を含む軽鎖を含む抗体を提供する。
【0183】
一実施態様において、本発明は、配列番号114のアミノ酸配列を含む重鎖及び配列番号125のアミノ酸配列を含む軽鎖を含む抗体を提供する。
【0184】
一実施態様において、本発明は、配列番号114のアミノ酸配列を含む重鎖及び配列番号127のアミノ酸配列を含む軽鎖を含む抗体を提供する。
【0185】
一実施態様において、本発明は、配列番号114のアミノ酸配列を含む重鎖及び配列番号129のアミノ酸配列を含む軽鎖を含む抗体を提供する。
【0186】
一実施態様において、本発明は、配列番号114のアミノ酸配列を含む重鎖及び配列番号131のアミノ酸配列を含む軽鎖を含む抗体を提供する。
【0187】
一態様において、本発明は、(a)配列番号191のアミノ酸配列を含むHVR−H1;(b)配列番号193のアミノ酸配列を含むHVR−H2;(c)配列番号194のアミノ酸配列を含むHVR−H3;(d)配列番号195のアミノ酸配列を含むHVR−L1;(e)配列番号196のアミノ酸配列を含むHVR−L2;及び(f)配列番号197のアミノ酸配列を含むHVR−L3から選択される、少なくとも一つ、二つ、三つ、四つ、五つ、又は六つのHVRを含む抗ヘマグルチニン抗体を提供する。
【0188】
一態様において、本発明は、(a)配列番号192のアミノ酸配列を含むHVR−H1;(b)配列番号193のアミノ酸配列を含むHVR−H2;(c)配列番号194のアミノ酸配列を含むHVR−H3;(d)配列番号195のアミノ酸配列を含むHVR−L1;(e)配列番号196のアミノ酸配列を含むHVR−L2;及び(f)配列番号197のアミノ酸配列を含むHVR−L3から選択される、少なくとも一つ、二つ、三つ、四つ、五つ、又は六つのHVRを含む抗ヘマグルチニン抗体を提供する。
【0189】
一態様において、本発明は、(a)配列番号191のアミノ酸配列を含むHVR−H1;(b)配列番号193のアミノ酸配列を含むHVR−H2;(c)配列番号194のアミノ酸配列を含むHVR−H3;(d)配列番号195のアミノ酸配列を含むHVR−L1;(e)配列番号196のアミノ酸配列を含むHVR−L2;及び(f)配列番号198のアミノ酸配列を含むHVR−L3から選択される、少なくとも一つ、二つ、三つ、四つ、五つ、又は六つのHVRを含む抗ヘマグルチニン抗体を提供する。
【0190】
一態様において、本発明は、(a)配列番号191のアミノ酸配列を含むHVR−H1;(b)配列番号193のアミノ酸配列を含むHVR−H2;(c)配列番号194のアミノ酸配列を含むHVR−H3;(d)配列番号195のアミノ酸配列を含むHVR−L1;(e)配列番号196のアミノ酸配列を含むHVR−L2;及び(f)配列番号199のアミノ酸配列を含むHVR−L3から選択される、少なくとも一つ、二つ、三つ、四つ、五つ、又は六つのHVRを含む抗ヘマグルチニン抗体を提供する。
【0191】
一態様において、本発明は、(a)配列番号191及び192からなる群から選択されるアミノ酸配列を含むHVR−H1;(b)配列番号193のアミノ酸配列を含むHVR−H2;及び(c)配列番号194のアミノ酸配列を含むHVR−H3から選択される、少なくとも一つ、二つ、又は三つ全てのVH HVR配列を含む抗体を提供する。
【0192】
別の態様において、本発明は、(a)配列番号195のアミノ酸配列を含むHVR−L1;(b)配列番号196のアミノ酸配列を含むHVR−L2;及び(c)配列番号197、198、及び199からなる群から選択されるアミノ酸配列を含むHVR−L3から選択される、少なくとも一つ、二つ、又は三つ全てのVL HVR配列を含む抗体を提供する。
【0193】
別の態様において、本発明は、(a)配列番号191のアミノ酸配列を含むHVR−H1;(b)配列番号193のアミノ酸配列を含むHVR−H2;(c)配列番号194のアミノ酸配列を含むHVR−H3;(d)配列番号195のアミノ酸配列を含むHVR−L1;(e)配列番号196のアミノ酸配列を含むHVR−L2;及び(f)配列番号197から選択されるアミノ酸配列を含むHVR−L3を含む抗体を提供する。
【0194】
別の態様において、本発明は、(a)配列番号192のアミノ酸配列を含むHVR−H1;(b)配列番号193のアミノ酸配列を含むHVR−H2;(c)配列番号194のアミノ酸配列を含むHVR−H3;(d)配列番号195のアミノ酸配列を含むHVR−L1;(e)配列番号196のアミノ酸配列を含むHVR−L2;及び(f)配列番号197から選択されるアミノ酸配列を含むHVR−L3を含む抗体を提供する。
【0195】
別の態様において、本発明は、(a)配列番号191のアミノ酸配列を含むHVR−H1;(b)配列番号193のアミノ酸配列を含むHVR−H2;(c)配列番号194のアミノ酸配列を含むHVR−H3;(d)配列番号195のアミノ酸配列を含むHVR−L1;(e)配列番号196のアミノ酸配列を含むHVR−L2;及び(f)配列番号198から選択されるアミノ酸配列を含むHVR−L3を含む抗体を提供する。
【0196】
別の態様において、本発明は、(a)配列番号191のアミノ酸配列を含むHVR−H1;(b)配列番号193のアミノ酸配列を含むHVR−H2;(c)配列番号194のアミノ酸配列を含むHVR−H3;(d)配列番号195のアミノ酸配列を含むHVR−L1;(e)配列番号196のアミノ酸配列を含むHVR−L2;及び(f)配列番号199から選択されるアミノ酸配列を含むHVR−L3を含む抗体を提供する。
【0197】
別の態様において、本発明は、配列番号134、138、142、148、及び234からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む重鎖可変領域を含む抗体を提供する。
【0198】
別の態様において、本発明は、配列番号136、140、144、146、150、152、及び235からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域を含む抗体を提供する。
【0199】
別の態様において、本発明は、配列番号134、138、142、148、及び234,からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む重鎖可変領域及び配列番号136、140、144、146、150、152、及び235からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域を含む抗体を提供する。
【0200】
一実施態様において、本発明は、配列番号134のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域及び配列番号136のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域を含む抗体を提供する。
【0201】
一実施態様において、本発明は、配列番号138のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域及び配列番号140のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域を含む抗体を提供する。
【0202】
一実施態様において、本発明は、配列番号142のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域及び配列番号144のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域を含む抗体を提供する。
【0203】
一実施態様において、本発明は、配列番号138のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域及び配列番号146のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域を含む抗体を提供する。
【0204】
一実施態様において、本発明は、配列番号148のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域及び配列番号150のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域を含む抗体を提供する。
【0205】
一実施態様において、本発明は、配列番号148のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域及び配列番号152のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域を含む抗体を提供する。
【0206】
一実施態様において、本発明は、配列番号148のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域及び配列番号140のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域を含む抗体を提供する。
【0207】
一実施態様において、本発明は、配列番号234のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域及び配列番号235のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域を含む抗体を提供する。
【0208】
別の態様において、本発明は、配列番号133、137、141、及び147からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む重鎖を含む抗体を提供する。
【0209】
別の態様において、本発明は、配列番号135、139、143、145、149、及び151からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む軽鎖を含む抗体を提供する。
【0210】
別の態様において、本発明は、配列番号133、137、141、及び147からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む重鎖及び配列番号135、139、143、145、149、及び151からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む軽鎖を含む抗体を提供する。
【0211】
一実施態様において、本発明は、配列番号133のアミノ酸配列を含む重鎖及び配列番号135のアミノ酸配列を含む軽鎖を含む抗体を提供する。
【0212】
一実施態様において、本発明は、配列番号137のアミノ酸配列を含む重鎖及び配列番号139のアミノ酸配列を含む軽鎖を含む抗体を提供する。
【0213】
一実施態様において、本発明は、配列番号141のアミノ酸配列を含む重鎖及び配列番号143のアミノ酸配列を含む軽鎖を含む抗体を提供する。
【0214】
一実施態様において、本発明は、配列番号137のアミノ酸配列を含む重鎖及び配列番号145のアミノ酸配列を含む軽鎖を含む抗体を提供する。
【0215】
一実施態様において、本発明は、配列番号147のアミノ酸配列を含む重鎖及び配列番号149のアミノ酸配列を含む軽鎖を含む抗体を提供する。
【0216】
一実施態様において、本発明は、配列番号147のアミノ酸配列を含む重鎖及び配列番号151のアミノ酸配列を含む軽鎖を含む抗体を提供する。
【0217】
一実施態様において、本発明は、配列番号147のアミノ酸配列を含む重鎖及び配列番号139のアミノ酸配列を含む軽鎖を含む抗体を提供する。
【0218】
一態様において、本発明は、(a)配列番号200のアミノ酸配列を含むHVR−H1;(b)配列番号201のアミノ酸配列を含むHVR−H2;(c)配列番号202のアミノ酸配列を含むHVR−H3;(d)配列番号203のアミノ酸配列を含むHVR−L1;(e)配列番号204のアミノ酸配列を含むHVR−L2;及び(f)配列番号205のアミノ酸配列を含むHVR−L3から選択される、少なくとも一つ、二つ、三つ、四つ、五つ、又は六つのHVRを含む抗ヘマグルチニン抗体を提供する。
【0219】
一態様において、本発明は、(a)配列番号200のアミノ酸配列を含むHVR−H1;(b)配列番号201のアミノ酸配列を含むHVR−H2;及び(c)配列番号202のアミノ酸配列を含むHVR−H3から選択される、少なくとも一つ、二つ、又は三つ全てのVH HVR配列を含む抗体を提供する。
【0220】
別の態様において、本発明は、(a)配列番号203のアミノ酸配列を含むHVR−L1;(b)配列番号204のアミノ酸配列を含むHVR−L2;及び(c)配列番号205のアミノ酸配列を含むHVR−L3から選択される、少なくとも一つ、二つ、又は三つ全てのVL HVR配列を含む抗体を提供する。
【0221】
別の態様において、本発明は、(a)配列番号200のアミノ酸配列を含むHVR−H1;(b)配列番号201のアミノ酸配列を含むHVR−H2;(c)配列番号202のアミノ酸配列を含むHVR−H3;(d)配列番号203のアミノ酸配列を含むHVR−L1;(e)配列番号204のアミノ酸配列を含むHVR−L2;及び(f)配列番号205のアミノ酸配列を含むHVR−L3を含む抗体を提供する。
【0222】
別の態様において、本発明は、配列番号154及び158からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む重鎖可変領域を含む抗体を提供する。
【0223】
別の態様において、本発明は、配列番号156のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域を含む抗体を提供する。
【0224】
別の態様において、本発明は、配列番号114及び158からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む重鎖可変領域及び配列番号156のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域を含む抗体を提供する。
【0225】
一実施態様において、本発明は、配列番号154のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域及び配列番号156のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域を含む抗体を提供する。
【0226】
一実施態様において、本発明は、配列番号158のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域及び配列番号156のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域を含む抗体を提供する。
【0227】
別の態様において、本発明は、配列番号153及び157からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む重鎖を含む抗体を提供する。
【0228】
別の態様において、本発明は、配列番号155のアミノ酸配列を含む軽鎖を含む抗体を提供する。
【0229】
別の態様において、本発明は、配列番号153及び157からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む重鎖可変及び配列番号155のアミノ酸配列を含む軽鎖を含む抗体を提供する。
【0230】
一実施態様において、本発明は、配列番号153のアミノ酸配列を含む重鎖及び配列番号155のアミノ酸配列を含む軽鎖を含む抗体を提供する。
【0231】
一実施態様において、本発明は、配列番号157のアミノ酸配列を含む重鎖及び配列番号155のアミノ酸配列を含む軽鎖を含む抗体を提供する。
【0232】
一態様において、本発明は、(a)配列番号206のアミノ酸配列を含むHVR−H1;(b)配列番号207のアミノ酸配列を含むHVR−H2;(c)配列番号208のアミノ酸配列を含むHVR−H3;(d)配列番号209のアミノ酸配列を含むHVR−L1;(e)配列番号210のアミノ酸配列を含むHVR−L2;及び(f)配列番号211のアミノ酸配列を含むHVR−L3から選択される、少なくとも一つ、二つ、三つ、四つ、五つ、又は六つのHVRを含む抗ヘマグルチニン抗体を提供する。
【0233】
一態様において、本発明は、(a)配列番号206のアミノ酸配列を含むHVR−H1;(b)配列番号207のアミノ酸配列を含むHVR−H2;及び(c)配列番号208のアミノ酸配列を含むHVR−H3から選択される、少なくとも一つ、二つ、又は三つ全てのVH HVR配列を含む抗体を提供する。
【0234】
別の態様において、本発明は、(a)配列番号209のアミノ酸配列を含むHVR−L1;(b)配列番号210のアミノ酸配列を含むHVR−L2;及び(c)配列番号211のアミノ酸配列を含むHVR−L3から選択される、少なくとも一つ、二つ、又は三つ全てのVL HVR配列を含む抗体を提供する。
【0235】
別の態様において、本発明は、(a)配列番号206のアミノ酸配列を含むHVR−H1;(b)配列番号207のアミノ酸配列を含むHVR−H2;(c)配列番号208のアミノ酸配列を含むHVR−H3;(d)配列番号209のアミノ酸配列を含むHVR−L1;(e)配列番号210のアミノ酸配列を含むHVR−L2;及び(f)配列番号211のアミノ酸配列を含むHVR−L3を含む抗体を提供する。
【0236】
別の態様において、本発明は、配列番号160のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域を含む抗体を提供する。
【0237】
別の態様において、本発明は、配列番号162のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域を含む抗体を提供する。
【0238】
一実施態様において、本発明は、配列番号160のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域及び配列番号162のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域を含む抗体を提供する。
【0239】
別の態様において、本発明は、配列番号159のアミノ酸配列を含む重鎖を含む抗体を提供する。
【0240】
別の態様において、本発明は、配列番号161のアミノ酸配列を含む軽鎖を含む抗体を提供する。
【0241】
別の態様において、本発明は、配列番号159のアミノ酸配列を含む重鎖及び配列番号161のアミノ酸配列を含む軽鎖を含む抗体を提供する。
【0242】
一態様において、本発明は、(a)配列番号212のアミノ酸配列を含むHVR−H1;(b)配列番号213のアミノ酸配列を含むHVR−H2;(c)配列番号214のアミノ酸配列を含むHVR−H3;(d)配列番号215のアミノ酸配列を含むHVR−L1;(e)配列番号216のアミノ酸配列を含むHVR−L2;及び(f)配列番号217のアミノ酸配列を含むHVR−L3から選択される、少なくとも一つ、二つ、三つ、四つ、五つ、又は六つのHVRを含む抗ヘマグルチニン抗体を提供する。
【0243】
一態様において、本発明は、(a)配列番号212のアミノ酸配列を含むHVR−H1;(b)配列番号213のアミノ酸配列を含むHVR−H2;及び(c)配列番号214のアミノ酸配列を含むHVR−H3から選択される、少なくとも一つ、二つ、又は三つ全てのVH HVR配列を含む抗体を提供する。
【0244】
別の態様において、本発明は、(a)配列番号215のアミノ酸配列を含むHVR−L1;(b)配列番号216のアミノ酸配列を含むHVR−L2;及び(c)配列番号217のアミノ酸配列を含むHVR−L3から選択される、少なくとも一つ、二つ、又は三つ全てのVL HVR配列を含む抗体を提供する。
【0245】
別の態様において、本発明は、(a)配列番号212のアミノ酸配列を含むHVR−H1;(b)配列番号213のアミノ酸配列を含むHVR−H2;(c)配列番号214のアミノ酸配列を含むHVR−H3;(d)配列番号215のアミノ酸配列を含むHVR−L1;(e)配列番号216のアミノ酸配列を含むHVR−L2;及び(f)配列番号217のアミノ酸配列を含むHVR−L3を含む抗体を提供する。
【0246】
別の態様において、本発明は、配列番号164のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域を含む抗体を提供する。
【0247】
別の態様において、本発明は、配列番号166のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域を含む抗体を提供する。
【0248】
一実施態様において、本発明は、配列番号164のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域及び配列番号166のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域を含む抗体を提供する。
【0249】
別の態様において、本発明は、配列番号163のアミノ酸配列を含む重鎖を含む抗体を提供する。
【0250】
別の態様において、本発明は、配列番号165のアミノ酸配列を含む軽鎖を含む抗体を提供する。
【0251】
別の態様において、本発明は、配列番号163のアミノ酸配列を含む重鎖及び配列番号165のアミノ酸配列を含む軽鎖を含む抗体を提供する。
【0252】
一態様において、本発明は、(a)配列番号218のアミノ酸配列を含むHVR−H1;(b)配列番号219のアミノ酸配列を含むHVR−H2;(c)配列番号220のアミノ酸配列を含むHVR−H3;(d)配列番号221のアミノ酸配列を含むHVR−L1;(e)配列番号222のアミノ酸配列を含むHVR−L2;及び(f)配列番号223のアミノ酸配列を含むHVR−L3から選択される、少なくとも一つ、二つ、三つ、四つ、五つ、又は六つのHVRを含む抗ヘマグルチニン抗体を提供する。
【0253】
一態様において、本発明は、(a)配列番号218のアミノ酸配列を含むHVR−H1;(b)配列番号219のアミノ酸配列を含むHVR−H2;及び(c)配列番号220のアミノ酸配列を含むHVR−H3から選択される、少なくとも一つ、二つ、又は三つ全てのVH HVR配列を含む抗体を提供する。
【0254】
別の態様において、本発明は、(a)配列番号221のアミノ酸配列を含むHVR−L1;(b)配列番号222のアミノ酸配列を含むHVR−L2;及び(c)配列番号223のアミノ酸配列を含むHVR−L3から選択される、少なくとも一つ、二つ、又は三つ全てのVL HVR配列を含む抗体を提供する。
【0255】
その他の態様において、本発明は、(a)配列番号218のアミノ酸配列を含むHVR−H1;(b)配列番号219のアミノ酸配列を含むHVR−H2;(c)配列番号220のアミノ酸配列を含むHVR−H3;(d)配列番号221のアミノ酸配列を含むHVR−L1;(e)配列番号222のアミノ酸配列を含むHVR−L2;及び(f)配列番号223のアミノ酸配列を含むHVR−L3を含む抗体を提供する。
【0256】
別の態様において、本発明は、配列番号168のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域を含む抗体を提供する。
【0257】
別の態様において、本発明は、配列番号170のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域を含む抗体を提供する。
【0258】
一実施態様において、本発明は、配列番号168のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域及び配列番号170のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域を含む抗体を提供する。
【0259】
別の態様において、本発明は、配列番号167のアミノ酸配列を含む重鎖を含む抗体を提供する。
【0260】
別の態様において、本発明は、配列番号169のアミノ酸配列を含む軽鎖を含む抗体を提供する。
【0261】
別の態様において、本発明は、配列番号167のアミノ酸配列を含む重鎖及び配列番号169のアミノ酸配列を含む軽鎖を含む抗体を提供する。
【0262】
上記実施形態の何れにおいても、本発明の抗ヘマグルチニン抗体はヒト化されている。一実施態様において、抗ヘマグルチニン抗体は、上記実施態様の何れかにおけるHVRを含み、更に、アクセプターヒトフレームワーク、例えばヒト免疫グロブリンのフレームワーク又はヒトコンセンサスフレームワークを含む。
【0263】
その他の態様において、抗ヘマグルチニン抗体は、配列番号111、115、134、138、142、148、154、158、160、164、168、及び234からなる群から選択されるアミノ酸配列に対して、少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、又は100%の配列同一性を有する重鎖可変ドメイン(VH)配列を含む。所定の実施態様において、少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、又は99%の同一性を有するVH配列は、参照配列に対して置換(例えば、保存的置換)、挿入、又は欠失を含むが、その配列を含む抗ヘマグルチニン抗体は、ヘマグルチニンへ結合する能力を保持する。所定の実施態様において、配列番号111、115、134、138、142、148、154、158、160、164、168、又は234において、合計1から10のアミノ酸が、置換、挿入及び/又は欠失している。所定の実施態様において、置換、挿入、又は欠失は、HVR外の(すなわちFR内の)領域で生じる。任意で、抗ヘマグルチニン抗体は、配列番号111、115、134、138、142、148、154、158、160、164、168、又は234のVH配列を、その配列の翻訳後修飾を含み、含む。
【0264】
その他の態様において、抗ヘマグルチニン抗体が提供され、その抗体は、配列番号113、117、119、122,、124、126、128、130、132、136、140、144、146、150、152、156、162、166、170、及び235からなる群から選択されるアミノ酸配列に対して、少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、又は100%の配列同一性を有する軽鎖可変ドメイン(VL)を含む、所定の実施態様において、少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、又は99%の同一性を有するVL配列は、参照配列に対して置換(例えば、保存的置換)、挿入、又は欠失を含むが、その配列を含む抗ヘマグルチニン抗体は、ヘマグルチニンへ結合する能力を保持する。所定の実施態様において、配列番号113、117、119、122、124、126、128、130、132、136、140、144、146、150、152、156、162、166、170、又は235において、合計1から10のアミノ酸が、置換、挿入及び/又は欠失している。所定の実施態様において、置換、挿入、又は欠失は、HVR外の(すなわちFR内の)領域で生じる。任意で、抗ヘマグルチニン抗体は、配列番号113、117、119、122,、124、126、128、130、132、136、140、144、146、150、152、156、162、166、170、又は235のVL配列を、その配列の翻訳後修飾を含み、含む。
【0265】
別の態様において、抗ヘマグルチニン抗体が提供され、その抗体は、上記に与えられた実施態様の何れかにあるVH、及び上記に与えられた実施態様の何れかにあるVLを含む。一実施態様において、抗体は、配列番号111、115、134、138、142、148、154、158、160、164、168、又は234、及び配列番号113、117、119、122,、124、126、128、130、132、136、140、144、146、150、152、156、162、166、170、又は235のそれぞれのVH及びVL配列を、それらの配列の翻訳後修飾を含み、含む。
【0266】
更なる態様において、本発明は、本明細書に与えられた抗ヘマグルチニン抗体と同一エピトープに結合する抗体を提供する。例えば、ある実施態様において、配列番号111のVH配列及び配列番号113のVL配列;配列番号115のVH配列及び配列番号117のVL配列;配列番号111のVH配列及び配列番号119のVL配列;配列番号115のVH配列及び配列番号113のVL配列;配列番号115のVH配列及び配列番号122のVL配列;配列番号115のVH配列及び配列番号124のVL配列;配列番号115のVH配列及び配列番号126のVL配列;配列番号115のVH配列及び配列番号128のVL配列;配列番号115のVH配列及び配列番号130のVL配列;配列番号115のVH配列及び配列番号132のVL配列;配列番号134のVH配列及び配列番号136のVL配列;配列番号138のVH配列及び配列番号140のVL配列;配列番号142のVH配列及び配列番号144のVL配列;配列番号138のVH配列及び配列番号146のVL配列;配列番号148のVH配列及び配列番号150のVL配列;配列番号148のVH配列及び配列番号152のVL配列;配列番号148のVH配列及び配列番号140のVL配列;配列番号234のVH配列及び配列番号235のVL配列;配列番号154のVH配列及び配列番号156のVL配列;配列番号158のVH配列及び配列番号156のVL配列;配列番号160のVH配列及び配列番号162のVL配列;配列番号164のVH配列及び配列番号166のVL配列;又は配列番号168のVH配列及び配列番号170のVL配列を含む、抗ヘマグルチニン抗体と同じエピトープに結合する抗体が提供される。
【0267】
本発明の更なる態様では、上記実施態様の何れかに記載の抗ヘマグルチニン抗体は、キメラ、ヒト化又はヒト抗体を含むモノクローナル抗体である。一実施態様において、抗ヘマグルチニン抗体は、抗体断片、例えば、Fv、Fab、Fab’、scFv、ダイアボディ、又はF(ab’)断片である。その他の態様において、抗体は、全長抗体、例えば、インタクトなIgG1抗体、又は本明細書において定義された他の抗体クラス又はアイソタイプである。
【0268】
更なる態様にて、以下のセクション1−7で説明されるように、上記実施態様のいずれかに記載の抗ヘマグルチニン抗体は、単独又は組み合わせで、任意の特徴を組み込むことができる:
【0269】
1.抗体親和性
ある実施態様において、本明細書において提供される抗体は、解離定数(Kd)が、≦1μM、≦100nM、≦10nM、≦1nM、≦0.1nM、≦0.01nM、又は≦0.001nM(例えば、10−8M未満、例えば、10−8Mから10−13M、例えば、10−9Mから10−13M)を有する。
【0270】
一実施態様において、Kdは放射性標識抗原結合アッセイ(RIA)によって測定される。一実施態様において、RIAは、目的の抗体のFabバージョン及びその抗原により実施される。例えば、非標識抗原の力価測定系の存在下で、最小濃度の(125I)−標識抗原にてFabを均衡化して、抗Fab抗体コートプレートと結合した抗原を捕獲することによって抗原に対するFabの溶液結合親和性を測定する(例としてChen, et al., J. Mol. Biol. 293:865-881(1999)を参照)。アッセイ条件を確立するために、MICROTITER(登録商標)マルチウェルプレート(Thermo Scientific)を、5μg/mlの捕捉抗Fab抗体(Cappel Labs)を含む50mM炭酸ナトリウム(pH9.6)にて一晩コートして、その後2%(w/v))のウシ血清アルブミンを含むPBSにて室温(およそ23℃)で2〜5時間ブロックする。非吸着プレート(Nunc #269620)に、100pM又は26pMの[125I]抗原を段階希釈した所望のFabと混合する(例えば、Presta et al, Cancer Res. 57:4593-4599 (1997)の抗VEGF抗体、Fab−12の評価と一致する)。ついで目的のFabを一晩インキュベートする;しかし、インキュベーションは平衡状態に達したことを確認するまでに長時間(例えばおよそ65時間)かかるかもしれない。その後、混合物を捕獲プレートに移し、室温で(例えば1時間)インキュベートする。次いで、溶液を取り除き、プレートを0.1%のポリソルベート20(TWEEN−20(登録商標))を含むPBSにて8回洗浄する。プレートが乾燥したら、150μl/ウェルの閃光物質(MICROSCINT−20TM;Packard)を加え、プレートをTOPCOUNTTMガンマカウンター(Packard)で10分間計測する。最大結合の20%か又はそれ以下濃度のFabを選択してそれぞれ競合結合測定に用いる。
【0271】
別の実施態様によれば、Kdは、BIACORE(登録商標)表面プラズモン共鳴アッセイを用いて測定される。例えば、BIACORE(登録商標)−2000又はBIACORE(登録商標)−3000(BIAcore、Inc.、Piscataway、NJ)を用いるアッセイが、〜10反応単位(RU)で固定した抗原CM5チップを用いて25℃で実施される。一実施態様において、カルボキシメチル化デキストランバイオセンサーチップ(CM5、BIACORE、Inc.)を、供給業者の指示書に従ってN−エチル−N’−(3−ジメチルアミノプロピル)−カルボジイミド塩酸塩(EDC)及びN−ヒドロキシスクシニミド(NHS)で活性化する。抗原を10mM酢酸ナトリウム(pH4.8)で5μg/ml(〜0.2μM)に希釈し、結合したタンパク質の反応単位(RU)がおよそ10になるように5μl/分の流速で注入する。抗原の注入後、反応しない群をブロックするために1Mのエタノールアミンを注入する。動力学的な測定のために、Fabの2倍の段階希釈(0.78nMから500nM)を、25℃で、およそ25μl/分の流速で0.05%ポリソルベート20(TWEEN−20TM)界面活性剤(PBST)を含むPBSに注入する。会合及び解離のセンサーグラムを同時にフィットさせることによる単純一対一ラングミュア結合モデル(BIACORE(登録商標)エバリュエーションソフトウェアバージョン3.2)を用いて、会合速度(kon)と解離速度(koff)を算出する。平衡解離定数(Kd)をkoff/kon比として算出した。例えば、Chen et al., J. Mol. Biol. 293:865-881 (1999)を参照。上記の表面プラスモン共鳴アッセイによる会合速度が10−1を上回る場合、会合速度は、分光計、例えばストップフローを備えた分光光度計(ストップフロー)又は撹拌キュベットを備えた8000シリーズSLM−AMINCOTM分光光度計(ThermoSpectronic)で測定される漸増濃度の抗原の存在下、25℃で、PBS(pH7.2)中20nM抗抗原抗体(Fab型)の蛍光放出強度(励起=295nm;放出=340nm、帯域通過=16nm)の増加又は減少を測定する、蛍光消光技術を用いて測定することができる。
【0272】
2.抗体断片
所定の実施態様において、本明細書で提供される抗体は抗体断片である。抗体断片は、限定されないが、Fab、Fab’、Fab’−SH、F(ab’)、Fv、及びscFv断片、及び下記の他の断片を含む。所定の抗体断片の総説については、Hudson et al. Nat. Med. 9:129-134 (2003)を参照。scFv断片の総説については、例えば、Pluckthun, in The Pharmacology of Monoclonal Antibodies, vol. 113, Rosenburg and Moore eds., (Springer-Verlag, New York), pp. 269-315 (1994)を参照;また、国際公開第93/16185号;及び米国特許第5571894号及び第5587458号も参照。サルベージ受容体結合エピトープ残基を含み、かつインビボ半減期を増加させたFab及びF(ab’)断片の議論については、米国特許第5869046号を参照のこと。
【0273】
ダイアボディーは、二価又は二重特異性であってもよい2つの抗原結合部位を有する抗体断片である。例えば、欧州特許第404097号;国際公開第1993/01161号; Hudson et al., Nat. Med. 9:129-134 (2003);及びHollinger et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 90: 6444-6448 (1993)を参照。トリアボディ及びテトラボディはまた Hudson et al., Nat. Med. 9:129-134 (2003)に記載されている。
【0274】
単一ドメイン抗体は、抗体の、重鎖可変ドメインの全て又は一部を含む抗体断片、又は軽鎖可変ドメインの全て又は一部を含む抗体断片である。ある実施態様において、単一ドメイン抗体は、ヒト単一ドメイン抗体である(Domantis、Inc.、Waltham、MA;例えば、米国特許第6248516号(B1)を参照)。
【0275】
抗体断片は様々な技術で作成することができ、限定されないが、本明細書に記載するように、インタクトな抗体の分解、並びに組換え宿主細胞(例えば、大腸菌又はファージ)による生産を含む。
【0276】
3.キメラ及びヒト化抗体
ある実施態様において、本明細書で提供される抗体はキメラ抗体である。所定のキメラ抗体は、例えば、米国特許第4816567号、及びMorrison et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 81:6851-6855 (1984))に記載されている。一例において、キメラ抗体は、非ヒト可変領域(例えば、マウス、ラット、ハムスター、ウサギ、又はサル等の非ヒト霊長類由来の可変領域)及びヒト定常領域を含む。更なる例において、キメラ抗体は、クラス又はサブクラスが親抗体のものから変更された「クラススイッチ」抗体である。キメラ抗体は、その抗原結合断片を含む。
【0277】
所定の実施態様において、キメラ抗体は、ヒト化抗体である。典型的には、非ヒト抗体は、ヒトに対する免疫原性を低減するために、親の非ヒト抗体の特異性と親和性を保持したまま、ヒト化されている。一般に、ヒト化抗体は、HVR、例えば、CDR(又はその一部)が、非ヒト抗体から由来し、FR(又はその一部)がヒト抗体配列に由来する、一以上の可変ドメインを含む。ヒト化抗体はまた、任意で、ヒト定常領域の少なくとも一部をも含む。幾つかの実施態様において、ヒト化抗体の幾つかのFR残基は、例えば抗体特異性又は親和性を回復もしくは改善するめに、非ヒト抗体(例えば、HVR残基が由来する抗体)由来の対応する残基で置換されている。
【0278】
ヒト化抗体及びそれらの製造方法は、例えば、Almagro and Fransson, Front. Biosci. 13:1619-1633 (2008)に総説され、更に、 Riechmann et al., Nature 332:323-329 (1988); Queen et al., Proc. Nat'l Acad. Sci. USA 86:10029-10033 (1989);米国特許第5821337号、第7527791号、第6982321号、及び7087409号; Kashmiri et al., Methods 36:25-34 (2005) (特異性決定領域(SDR)グラフティングを記述); Padlan, Mol. Immunol. 28:489-498 (1991) (「リサーフェシング」を記述); Dall'Acqua et al., Methods 36:43-60 (2005) (「FRシャッフリング」を記述);及びOsbourn et al., Methods 36:61-68 (2005) 及びKlimka et al., Br. J. Cancer, 83:252-260 (2000) (FRのシャッフリングへの「誘導選択」アプローチを記述)に記載されている。
【0279】
ヒト化に用いられ得るヒトフレームワーク領域は、限定されないが、「ベストフィット」法を用いて選択されるフレームワーク領域(例えば、Sims et al. J. Immunol. 151:2296 (1993));軽鎖又は重鎖の可変領域の特定のサブグループのヒト抗体のコンセンサス配列由来のフレームワーク領域(例えば、Carter et al. Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 89:4285 (1992);及びPresta et al. J. Immunol., 151:2623 (1993)を参照);ヒト成熟(体細胞変異)フレームワーク領域又はヒト生殖細胞系フレームワーク領域(例えば、Almagro and Fransson, Front. Biosci. 13:1619-1633 (2008)を参照);及びFRライブラリースクリーニング由来のフレームワーク領域(例えば、Baca et al., J. Biol. Chem. 272:10678-10684 (1997)及び Rosok et al., J. Biol. Chem. 271:22611-22618 (1996)を参照)を含む。
【0280】
4.ヒト抗体
所定の実施態様において、本明細書で提供される抗体はヒト抗体である。ヒト抗体は、当技術分野で周知の様々な技術を用いて、又は本明細書に記載される技術を用いて生成することができる。ヒト抗体は一般的にvan Dijk and van de Winkel, Curr. Opin. Pharmacol. 5: 368-74 (2001) 及びLonberg, Curr. Opin. Immunol. 20:450-459 (2008)に記載されている。
【0281】
ヒト抗体は、抗原チャレンジに応答して、インタクトなヒト抗体又はヒト可変領域を持つインタクトな抗体を産生するように改変されたトランスジェニック動物に、免疫原を投与することにより調製することができる。このような動物は、典型的には、内因性免疫グロブリン遺伝子座を置換するか、又は染色体外に存在するかもしくは動物の染色体にランダムに組み込まれている、ヒト免疫グロブリン遺伝子座の全て又は一部を含む。このようなトランスジェニックマウスでは、内因性免疫グロブリン遺伝子座は一般的に不活性化される。トランスジェニック動物からヒト抗体を得るための方法の総説については、 Lonberg, Nat. Biotech. 23:1117-1125 (2005)を参照。また、例えば、XENOMOUSETM技術を記載している、米国特許第6075181号及び6150584号;HuMab(登録商標)技術を記載している米国特許第5770429号;K−M MOUSE(登録商標)技術を記載している米国特許第870号及び、VelociMouse(登録商標)技術を記載している米国特許出願公開第2007/0061900号)も参照のこと。このような動物で生成されたインタクトな抗体由来のヒト可変領域は、例えば、異なるヒト定常領域と組み合わせることにより、更に改変される可能性がある。
【0282】
ヒト抗体は、ハイブリドーマベース法によって作成することができる。ヒトモノクローナル抗体の産生のためのヒト骨髄腫及びマウス−ヒトヘテロ細胞株が記載されている。(例えば、Kozbor J. Immunol., 133: 3001 (1984); Brodeur et al., Monoclonal Antibody Production Techniques and Applications, pp. 51-63 (Marcel Dekker, Inc., New York, 1987);及びBoerner et al., J. Immunol., 147: 86 (1991)を参照)。また、ヒトB細胞ハイブリドーマ技術を介して産生されたヒト抗体が、Li et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 103:3557-3562 (2006)に記載されている。更なる方法は、例えば、米国特許第189826号(ハイブリドーマ細胞株からのモノクローナルヒトIgM抗体の産生を記載している)及びNi, Xiandai Mianyixue, 26(4):265-268 (2006) (ヒト−ヒトハイブリドーマを記載している)に記載されたものを含む。ヒトハイブリドーマ技術(トリオーマ技術)はまた、Vollmers and Brandlein, Histology and Histopathology, 20(3):927-937 (2005) 及びVollmers and Brandlein, Methods and Findings in Experimental and Clinical Pharmacology, 27(3):185-91 (2005)に記載される。
【0283】
ヒト抗体はまた、ヒト由来のファージディスプレイライブラリーから選択されたFvクローン可変ドメイン配列を単離することによって生成され得る。このような可変ドメイン配列は、次に所望のヒト定常ドメインと組み合わせてもよい。抗体ライブラリーからヒト抗体を選択するための技術を以下に説明する。
【0284】
5.ライブラリー由来の抗体
本発明の抗体は、所望の活性又は活性(複数)を有する抗体についてコンビナトリアルライブラリーをスクリーニングすることによって単離することができる。例えば、様々な方法が、ファージディスプレイライブラリーを生成し、所望の結合特性を有する抗体についてのライブラリーをスクリーニングするために、当該技術分野で知られている。そのような方法は、例えば、Hoogenboom et al. in Methods in Molecular Biology 178:1-37 (O'Brien et al., ed., Human Press, Totowa, NJ, 2001)に総説され、更に、例えば、McCafferty et al., Nature 348:552-554; Clackson et al., Nature 352: 624-628 (1991); Marks et al., J. Mol. Biol. 222: 581-597 (1992); Marks and Bradbury, in Methods in Molecular Biology 248:161175 (Lo, ed., Human Press, Totowa, NJ, 2003); Sidhu et al., J. Mol. Biol. 338(2): 299-310 (2004); Lee et al., J. Mol. Biol. 340(5): 1073-1093 (2004); Fellouse, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 101(34): 12467-12472 (2004); 及びLee et al., J. Immunol. Methods 284(1-2): 119-132(2004)に記載されている。
【0285】
所定のファージディスプレイ法において、VH及びVL遺伝子のレパートリーがポリメラーゼ連鎖反応(PCR)により個別にクローニングされ、ファージライブラリーにランダムに再結合され、その後、Winter et al., Ann. Rev. Immunol., 12: 433-455 (1994)に記載されるように、抗原結合ファージについてスクリーニングすることができる。ファージは、通常、抗体断片を、単鎖Fv(scFv)断片、又はFab断片のいずれかとして提示する。免疫された起源からのライブラリーは、ハイブリドーマを構築する必要性を伴うことなく免疫原に高親和性抗体を提供する。代わりに、Griffiths et al., EMBO J, 12: 725-734 (1993)に記載されるように、ナイーブなレパートリーが、任意の免疫感作無しで、広範囲の非自己抗原及び自己抗原に対して、抗体の単一起源を提供するために、(例えば、ヒトから)クローン化することができる。最後に、ナイーブなライブラリーはまた、Hoogenboom and Winter, J. Mol. Biol., 227: 381-388 (1992)に記載されるように、非常に可変なCDR3領域をコードし、インビトロで再構成を達成するために、幹細胞由来の非再配列V遺伝子セグメントをクローニングし、ランダム配列を含むPCRプライマーを使用することにより合成することができる。ヒト抗体ファージライブラリーを記述する特許公報は、例えば、米国特許第5,750,373号、及び米国特許出願公開第2005/0079574号、第2005/0119455号、第2005/0266000号、第2007/0117126号、第2007/0160598号、第2007/0237764号、第2007/0292936号及び第2009/0002360号を含む。
【0286】
ヒト抗体ライブラリーから単離された抗体又は抗体断片は、本明細書でヒト抗体又はヒト抗体の断片とみなされる。
【0287】
6.多重特異性抗体
ある実施態様において、本明細書で提供される抗体は、多重特異性抗体、例えば二重特異性抗体である。多重特異性抗体は、少なくとも二つの異なる部位に対して結合特異性を有するモノクローナル抗体である。ある実施態様において、結合特異性の一つはヘマグルチニンに対してであり、他は、任意の他の抗原に対してである。ある実施態様において、二重特異性抗体は、ヘマグルチニンの2つの異なるエピトープに結合することができる。二重特異性抗体はまた、ヘマグルチニンを発現する細胞に細胞傷害性薬物を局所化するために用いることができる。二重特異性抗体は、全長抗体又は抗体断片として調製することができる。
【0288】
多重特異性抗体を作製するための技術は、限定されないが、異なる特異性を有する2つの免疫グロブリン重鎖−軽鎖対の組換え共発現(Milstein and Cuello, Nature 305: 537 (1983))、国際公開第93/08829号、及びTraunecker et al., EMBO J. 10: 3655 (1991)を参照)及び「ノブ・イン・ホール(knob−in−hole)」エンジニアリング(例えば、米国特許第5731168号を参照)を含む。多重特異抗体はまた、抗体のFc−ヘテロ2量体分子を作成するための静電ステアリング効果を操作すること(国際公開第2009/089004号(A1))、2つ以上の抗体又は断片を架橋すること(例えば米国特許第4676980号;及びBrennan et al., Science, 229: 81 (1985)を参照);2重特異性抗体を生成するためにロイシンジッパーを使用すること(例えば、Kostelny et al., J. Immunol., 148(5):1547-1553 (1992)を参照);二重特異性抗体フラグメントを作製するため、「ダイアボディ」技術を使用すること(例えば、Hollinger et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 90:6444-6448 (1993)を参照);単鎖Fv(sFv)ダイマーを使用すること(例えば、Gruber et al., J. Immunol., 152:5368 (1994)を参照);及び、例えばTutt et al. J. Immunol. 147: 60 (1991)に記載されているように、三重特異性抗体を調製することによって作成することができる。
【0289】
「オクトパス抗体」を含む、3つ以上の機能性抗原結合部位を持つ改変抗体もまた本明細書に含まれる(例えば、米国特許出願公開第2006/0025576号(A1)を参照)。
【0290】
本明細書中の抗体又は断片はまた、ヘマグルチニン並びにその他の異なる抗原(例えば米国特許出願公開第2008/0069820号参照)に結合する抗原結合部位を含む、「2重作用(Dual Acting)FAb」又は「DAF」を含む。
【0291】
7.抗体変異体
ある実施態様において、本明細書で提供される抗体のアミノ酸配列変異体が企図される。例えば、抗体の結合親和性及び/又は他の生物学的特性を改善することが望まれ得る。抗体のアミノ酸配列変異体は、抗体をコードするヌクレオチド配列に適切な改変を導入することにより、又はペプチド合成によって調製することができる。このような改変は、例えば、抗体のアミノ酸配列内における、残基の欠失、及び/又は挿入及び/又は置換を含む。最終コンストラクトが所望の特性、例えば、抗原結合を有していることを条件として、欠失、挿入、及び置換の任意の組み合わせが、最終構築物に到達させるために作成され得る。
【0292】
a)置換、挿入、及び欠失変異体
ある実施態様において、一以上のアミノ酸置換を有する抗体変異体が提供される。置換突然変異の対象となる部位は、HVRとFRを含む。
【0293】
保存的置換は、表1の「好ましい置換」の見出しの下に示されている。より実質的な変更が、表1の「例示的な置換」の見出しの下に与えられ、アミノ酸側鎖のクラスを参照して以下に更に説明される。アミノ酸置換は、目的の抗体に導入することができ、その産物は、所望の活性、例えば、抗原結合の保持/改善、免疫原性の減少、又はADCC又はCDCの改善についてスクリーニングされる。
【0294】
【0295】
アミノ酸は共通の側鎖特性に基づいてグループに分けることができる:
(1)疎水性:ノルロイシン、Met、Ala、Val、Leu、Ile;
(2)中性の親水性:Cys、Ser、Thr、Asn、Gln;
(3)酸性:Asp、Glu;
(4)塩基性:His、Lys、Arg;
(5)鎖配向に影響する残基:Gly、Pro;
(6)芳香族:Trp、Tyr、Phe.
【0296】
非保存的置換は、これらの分類の一つのメンバーを他の分類に交換することを伴うこととなる。
【0297】
置換変異体の一つのタイプは、親抗体(例えば、ヒト化又はヒト抗体など)の一以上の超可変領域残基の置換を含む。一般的には、更なる研究のために選択され得られた変異体は、親抗体と比較して、特定の生物学的特性の改変(例えば、改善)(例えば、親和性の増加、免疫原性を減少)を有し、及び/又は親抗体の特定の生物学的特性を実質的に保持しているであろう。典型的な置換型変異体は、親和性成熟抗体であり、例えば、本明細書に記載されるファージディスプレイに基づく親和性成熟技術を用いて、簡便に生成され得る。簡潔に言えば、一つ以上のHVR残基が変異し、変異体抗体は、ファージ上に表示され、特定の生物学的活性(例えば、結合親和性)についてスクリーニングされる。
【0298】
改変(例えば、置換)を、例えば抗体の親和性を向上させるために、HVRで行うことができる。このような改変は、HVRの「ホットスポット」、すなわち、体細胞成熟過程中に高頻度で変異を受けるコドンにコードされた残基で(例えばChowdhury, Methods Mol. Biol. 207:179196 (2008)を参照)、及び/又は抗原に接触する残基で行うことができ、得られた変異体VH又はVLが結合親和性について試験される。二次ライブラリーから構築し選択し直すことによる親和性成熟が、例えばHoogenboom et al. in Methods in Molecular Biology 178:1-37 (O'Brien et al., ed., Human Press, Totowa, NJ, (2001)に記載されている。親和性成熟の幾つかの実施態様において、多様性が、種々の方法(例えば、変異性PCR、鎖シャッフリング、又はオリゴヌクレオチドを標的とした突然変異誘発)の何れかにより、成熟のために選択された可変遺伝子中に導入される。次いで、二次ライブラリーが作成される。次いで、ライブラリーが、所望の親和性を持つ抗体変異体を同定するためにスクリーニングされる。多様性を導入するする別の方法は、幾つかのHVR残基(例えば、一度に4から6残基)がランダム化されたHVRを標的としたアプローチを含む。抗原結合に関与するHVR残基は、例えばアラニンスキャニング突然変異誘発、又はモデリングを用いて、特異的に同定され得る。特に、CDR−H3及びCDR−L3がしばしば標的にされる。
【0299】
所定の実施態様において、置換、挿入、又は欠失は、そのような改変が抗原に結合する抗体の能力を実質的に低下させない限りにおいて、一以上のHVR内で生じる可能性がある。例えば、実質的に結合親和性を低下させない保存的改変(例えば本明細書で与えられる保存的置換)をHVR内で行うことができる。そのような改変は、HVR中の抗原と接触する残基以外であってもよい。上記に与えられた変異体VH又はVL配列の所定の実施態様において、各HVRは不変であるか、又はわずか1個、2個又は3個のアミノ酸置換が含まれているかの何れかである。
【0300】
突然変異誘発のために標的とすることができる抗体の残基又は領域を同定するための有用な方法は、Cunningham and Wells (1989) Science, 244:1081-1085により説明されるように、「アラニンスキャニング変異誘発」と呼ばれる。この方法では、標的残基の残基又はグループ(例えば、arg、asp、his、lys及びgluなどの荷電残基)が同定され、抗原と抗体との相互作用が影響を受けるかどうかを判断するために、中性又は負に荷電したアミノ酸(例えば、アラニン又はポリアラニン)に置換される。更なる置換が、最初の置換に対する機能的感受性を示すアミノ酸の位置に導入され得る。
代わりに、又は更に、抗原抗体複合体の結晶構造が、抗体と抗原との接触点を同定する。そのような接触残基及び隣接残基が、置換の候補として標的とされるか又は排除され得る。変異体はそれらが所望の特性を含むかどうかを決定するためにスクリーニングされ得る。
【0301】
アミノ酸配列挿入は、一残基から百以上の残基を含有するポリペプチド長にわたるアミノ及び/又はカルボキシル末端融合、並びに単一又は複数のアミノ酸残基の配列内挿入を含む。末端挿入の例としては、N末端メチオニン残基を有する抗体が含まれる。抗体分子の他の挿入変異体は、酵素に対する抗体のN末端又はC末端への融合(例えばADEPTの場合)、又は抗体の血清半減期を増加させるポリペプチドへの融合を含む。
【0302】
b)グリコシル化変異体
所定の実施態様において、本明細書で提供される抗体は、抗体がグリコシル化される程度を増加又は減少するように改変される。抗体へのグリコシル化部位の付加又は欠失は、一以上のグリコシル化部位が作成又は削除されるようにアミノ酸配列を変えることによって簡便に達成することができる。
【0303】
抗体がFc領域を含む場合には、それに付着する糖を変えることができる。哺乳動物細胞によって生成された天然型抗体は、典型的には、Fc領域のCH2ドメインのAsn297にN−結合により一般的に付着した分岐鎖、二分岐オリゴ糖を含んでいる。例えばWright et al. TIBTECH 15:26-32 (1997)を参照。オリゴ糖は、様々な炭水化物、例えば、二分岐オリゴ糖構造の「幹」のGlcNAcに結合した、マンノース、N−アセチルグルコサミン(GlcNAc)、ガラクトース、シアル酸、並びにフコースを含み得る。幾つかの実施態様において、本発明の抗体におけるオリゴ糖の改変は、一定の改善された特性を有する抗体変異体を作成するために行われ得る。
【0304】
一実施態様において、抗体変異体は、Fc領域に(直接又は間接的に)付着されたフコースを欠いた糖鎖構造を有して提供される。例えば、このような抗体のフコース量は、1%から80%、1%から65%、5%から65%、又は20%から40%であり得る。フコースの量は、例えば、国際公開第2008/077546号に記載されているように、MALDI−TOF質量分析法によって測定されるAsn297に付着しているすべての糖構造の合計(例えば、複合体、ハイブリッド及び高マンノース構造)に対して、Asn297の糖鎖中のフコースの平均量を計算することによって決定される。Asn297は、Fc領域(Fc領域残基のEU番号付け)でおよそ297の位置に位置するアスパラギン残基を指し、しかし、Asn297もまた位置297の上流又は下流のおよそ±3アミノ酸に、すなわち抗体の軽微な配列変異に起因して、位置294と300の間に配置され得る。このようなフコシル化変異体はADCC機能を改善させた可能性がある。例えば、米国特許出願公開第2003/0157108号(Presta、L.);米国特許出願公開第2004/0093621号(協和発酵工業株式会社)を参照。「フコース非修飾」又は「フコース欠損」抗体変異体に関連する出版物の例としては、米国特許出願公開第2003/0157108号、国際公開第2000/61739号、国際公開第2001/29246号、米国特許出願公開第2003/0115614号、米国特許出願公開第2002/0164328号、米国特許出願公開第2004/0093621号、米国特許出願公開第2004/0132140号、米国特許出願公開第2004/0110704号、米国特許出願公開第2004/0110282号、米国特許出願公開第2004/0109865号、国際公開第2003/085119号、国際公開第2003/084570号、国際公開第2005/035586号、国際公開第2005/035778号、国際公開第2005/053742号、国際公開第2002/031140号、Okazaki et al. J. Mol. Biol. 336:1239-1249 (2004); Yamane-Ohnuki et al. Biotech. Bioeng. 87: 614 (2004)が含まれる。フコース非修飾抗体を産生する能力を有する細胞株の例としては、タンパク質フコシル化を欠損しているLec13 CHO細胞(Ripka et al. Arch. Biochem. Biophys. 249:533-545 (1986);米国特許出願公開第2003/0157108号(A1)、Presta、L;及び国際公開第2004/056312号(A1)、Adamsら、具体的には実施例11)、及びノックアウト細胞株、アルファ−1、6−フコシルトランスフェラーゼ遺伝子、FUT8、ノックアウトCHO細胞(例えば、Yamane-Ohnuki et al. Biotech. Bioeng. 87: 614 (2004); Kanda, Y. et al., Biotechnol. Bioeng., 94(4):680-688 (2006);及び国際公開第2003/085107号を参照)を含む。
【0305】
抗体変異体は、例えば、抗体のFc領域に結合した二分岐オリゴ糖がGlcNAcによって二分されている二分オリゴ糖を更に備えている。
【0306】
このような抗体変異体はフコシル化を減少させ、及び/又はADCC機能を改善している可能性がある。
【0307】
そのような抗体変異体の例は、例えば、国際公開第2003/011878号(Jean−Mairettら);米国特許第6,602,684号(Umanaら);及び米国特許出願公開第2005/0123546号(Umanaら)に記載されている。Fc領域に結合したオリゴ糖内に少なくとも1つのガラクトース残基を持つ抗体変異体も提供される。このような抗体変異体はCDC機能を改善させた可能性がある。このような抗体変異体は、例えば、国際公開第1997/30087号(Patelら);国際公開第1998/58964号(Raju、S.);及び国際公開第1999/22764号(Raju、S.)に記載されている。
【0308】
c)Fc領域変異体
ある実施態様において、一又は複数のアミノ酸修飾を、本明細書で提供される抗体のFc領域に導入することができ、それによってFc領域変異体を生成する。Fc領域の変異体は、1つ又は複数のアミノ酸位置においてアミノ酸修飾(例えば置換)を含むヒトFc領域の配列(例えば、ヒトIgG1、IgG2、IgG3又はIgG4のFc領域)を含んでもよい。
【0309】
ある実施態様において、本発明は、インビボにおける抗体の半減期が重要であるが、ある種のエフェクター機能(例えば補体及びADCCなど)が不要又は有害である用途のための望ましい候補とならしめる、全てではないが一部のエフェクター機能を有する抗体変異体を意図している。インビトロ及び/又はインビボでの細胞毒性アッセイを、CDC活性及び/又はADCC活性の減少/枯渇を確認するために行うことができる。例えば、Fc受容体(FcR)結合アッセイは、抗体がFcγR結合を欠くが(それゆえ、おそらくADCC活性を欠く)、FcRn結合能力を保持していることを確認するために行うことができる。ADCCを媒介する初代細胞、NK細胞は、FcγRIIIのみを発現するのに対し、単球はFcγRI、FcγRII及びFcγRIIIを発現する造血細胞におけるFcRの発現は、Ravetch and Kinet, Annu. Rev. Immunol. 9:457-492 (1991)の464頁の表3に要約されている。目的の分子のADCC活性を評価するためのインビトロアッセイの非限定的な例は、米国特許第5500362号(例えば、Hellstrom, I. et al. Proc. Nat'l Acad. Sci. USA 83:7059-7063 (1986)を参照)及びHellstrom, I et al., Proc. Nat'l Acad. Sci. USA 82:1499-1502 (1985);第5821337号(例えば、Bruggemann, M. et al., J. Exp. Med. 166:1351-1361 (1987)を参照)に説明される。あるいは、非放射性アッセイ法を用いることができる(例えば、フローサイトメトリー用のACTITM非放射性細胞傷害性アッセイ(CellTechnology、Inc. Mountain View、CA;及びCytoTox 96(登録商標)非放射性細胞傷害性アッセイ(Promega、Madison、WI)を参照。このようなアッセイに有用なエフェクター細胞には、末梢血単核細胞(PBMC)及びナチュラルキラー(NK)細胞が含まれる。代わりとして、又は更に、目的の分子のADCC活性は、Clynes et al. Proc. Nat'l Acad. Sci. USA 95:652-656 (1998)に開示されるように、インビボで、例えば動物モデルにおいて評価することができる。C1q結合アッセイはまた、抗体が体C1qを結合することができないこと、したがって、CDC活性を欠いていることを確認するために行うことができる。例えば、国際公開第2006/029879号及び国際公開第2005/100402号のC1q及びC3c結合ELISAを参照。補体活性化を評価するために、CDCアッセイを行うことができる(例えば、Gazzano-Santoro et al., J. Immunol. Methods 202:163 (1996); Cragg, M.S. et al., Blood 101:1045-1052 (2003);及びCragg, M.S. and M.J. Glennie, Blood 103:2738-2743 (2004)を参照)。FcRn結合、及びインビボでのクリアランス/半減期の測定もまた、当該分野で公知の方法を用いて行うことができる(例えば、Petkova, S.B. et al., Int'l. Immunol. 18(12):1759-1769 (2006)を参照)。
【0310】
エフェクター機能が減少した抗体は、Fc領域の残基238、265、269、270、297、327、329の一つ以上の置換を有するものが含まれる(米国特許第6737056号)。そのようなFc変異体は、残基265及び297のアラニンへの置換を有する、いわゆる「DANA」Fc変異体を含む、アミノ酸位置265、269、270、297及び327の2以上での置換を有するFc変異体を含む(米国特許第7332581号)。
【0311】
FcRへの改善又は減少した結合を持つ特定の抗体変異体が記載されている。(例えば、米国特許第6737056号;国際公開第2004/056312号、及びShields, R.L. et al., J. Biol. Chem. 276 (2001) 6591-6604を参照)。
【0312】
所定の実施態様において、抗体変異体はADCCを改善する1つ又は複数のアミノ酸置換、例えば、Fc領域の位置298、333、及び/又は334における置換(EUの残基番号付け)を含む。
【0313】
幾つかの実施態様において、改変された(即ち、改善され又は減少した)C1q結合及び/又は補体依存性細胞傷害(CDC)を生じる、Fc領域における改変がなされ、例えば、米国特許第6194551号、国際公開第99/51642号、及びIdusogie et al. J. Immunol. 164: 4178-4184 (2000)に説明される。
【0314】
増加した半減期を持ち、胎仔への母性IgGの移送を担う、新生児Fc受容体(FcRn)への結合が改善された抗体(Guyer et al., J. Immunol. 117:587 (1976) 及びKim et al., J. Immunol. 24:249 (1994))が、米国特許出願公開第2005/0014934号(A1)(Hintonら)に記載されている。
【0315】
これらの抗体は、FcRnへのFc領域の結合を改善する一以上の置換を有するFc領域を含む。このようなFc変異体は、Fc領域の残基:238、256、265、272、286、303、305、307、311、312、317、340、356、360、362、376、378、380、382、413、424又は434の一以上の置換、例えば、Fc領域の残基434の置換(米国特許第7371826号)を有するものが含まれる。
【0316】
Duncan & Winter, Nature 322:738-40 (1988); 米国特許第5648260号;米国特許第5624821号;及び、Fc領域の変異体の他の例に関しては国際公開第94/29351号も参照のこと。
【0317】
d)システイン操作抗体変異体
ある実施態様において、抗体の一以上の残基がシステイン残基で置換されている、システイン操作抗体、例えば、「thioMAbs」を作成することが望まれ得る。特定の実施態様において、置換された残基は、抗体のアクセス可能な部位で存在する。それらの残基をシステインで置換することにより、反応性チオール基は、それによって抗体のアクセス可能な部位に配置され、本明細書中で更に記載されるように、イムノコンジュゲーを作成するために、例えば薬物部分又はリンカー−薬剤部分などの他の部分に抗体をコンジュゲートするために使用することができる。ある実施態様において、一以上の以下の残基がシステインで置換され得る:軽鎖のV205(Kabatの番号付け);重鎖のA118(EU番号付け);及び重鎖Fc領域のS400(EU番号付け)。システイン改変抗体は、例えば、米国特許第7521541号に記載のように生成され得る。
【0318】
e)抗体誘導体
所定の実施態様において、本明細書で提供される抗体は、当技術分野で知られ、容易に入手可能な付加的な非タンパク質部分を含むように更に改変することができる。抗体の誘導体化に適した部分としては、限定されないが、水溶性ポリマーを含む。水溶性ポリマーの非限定的な例は、限定されないが、ポリエチレングリコール(PEG)、エチレングリコール/プロピレングリコールの共重合体、カルボキシメチルセルロース、デキストラン、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリ−1,3−ジオキソラン、ポリ−1,3,6−トリオキサン、エチレン/無水マレイン酸共重合体、ポリアミノ酸(単独重合体又はランダム共重合体の何れか)及びデキストラン又はポリ(n−ビニルピロリドン)ポリエチレングリコール、プロピレングリコール単独重合体、プロピレンオキシド/エチレンオキシド共重合体、ポリオキシエチル化ポリオール(例えばグリセロール)、ポリビニルアルコール及びこれらの混合物を包含する。ポリエチレングリコールプロピオンアルデヒドはその水中での安定性に起因して製造における利点を有し得る。ポリマーは何れかの分子量のものであってよく、そして分枝鎖又は未分枝鎖であってよい。抗体に結合するポリマーの数は変動してよく、そして、一以上の重合体が結合する場合は、それらは同じか又は異なる分子であってよい。一般的に、誘導体化に使用するポリマーの数及び/又は種類は、限定されないが、向上させるべき抗体の特定の特性又は機能、抗体誘導体が限定された条件下で治療に使用されるのか等を含む考慮に基づいて決定することができる。
【0319】
その他の実施態様において、放射線への曝露によって選択的に加熱されてもよい抗体、及び非タンパク質性部分とのコンジュゲートが提供される。一実施態様において、非タンパク質部分はカーボンナノチューブである(Kam et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 102: 11600-11605 (2005)。放射線は、任意の波長であって良いが、限定されないものの、通常の細胞に害を与えないが、抗体−非タンパク質部分の近位細胞が死滅される温度に非タンパク質部分を加熱する波長が含まれる。
【0320】
B.組換え方法及び組成物
抗体は、例えば米国特許第4816567号で説明したように、組換えの方法及び組成物を用いて製造することができる。一実施態様において、本明細書に記載される抗ヘマグルチニン抗体をコードする単離された核酸が提供される。このような核酸は、抗体のVLを含むアミノ酸配列、及び/又は抗体のVHを含むアミノ酸配列(例えば、抗体の軽鎖及び/又は重鎖)をコードし得る。更なる実施態様において、そのような核酸を含む一以上のベクター(例えば、発現ベクター)が提供される。更なる実施態様において、そのような核酸を含む宿主細胞が提供される。一実施態様において、宿主細胞は以下を含む(例えば、以下で形質転換される):(1)抗体のVLを含むアミノ酸配列、及び抗体のVHを含むアミノ酸配列をコードする核酸を含むベクター、又は(2)抗体のVLを含むアミノ酸配列をコードする核酸を含む第一ベクター、及び抗体のVHを含むアミノ酸配列をコードする核酸を含む第二ベクター。一実施態様において、宿主細胞は、真核生物、例えばチャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞、又はリンパ系細胞(例えば、Y0、NS0、Sp20細胞)である。一実施態様において、抗HER3抗体を作る方法が提供され、その方法は、上記のように、抗体の発現に適した条件下で、抗体をコードする核酸を含む宿主細胞を培養することを含み、及び必要に応じて、宿主細胞(又は宿主細胞培養培地)から抗体を回収することを含む。
【0321】
抗ヘマグルチニン抗体の組換え生産のために、例えば上述したように、抗体をコードする核酸が単離され、宿主細胞内での更なるクローニング及び/又は発現のために一以上のベクターに挿入される。このような核酸は、容易に単離され、従来の手順を用いて(例えば、抗体の重鎖と軽鎖をコードする遺伝子に特異的に結合できるオリゴヌクレオチドプローブを使用することによって)配列決定することができる。
【0322】
抗体をコードするベクターのクローニング又は発現に適切な宿主細胞は、本明細書に記載の原核細胞又は真核細胞を含む。例えば、特に、グリコシル化及びFcエフェクター機能が必要ない場合には、抗体は、細菌で産生することができる。細菌における抗体断片及びポリペプチドの発現については、例えば、米国特許第5648237号、第5789199号及び第5840523号を参照。(また、大腸菌における抗体の発現を説明している、Charlton, Methods in Molecular Biology, Vol. 248 (B.K.C. Lo, ed., Humana Press, Totowa, NJ, 2003), pp. 245-254も参照)。発現の後、抗体は可溶性画分において細菌の細胞ペーストから単離され、更に精製することができる。
【0323】
原核生物に加えて、糸状菌又は酵母菌のような真核微生物は、菌類や酵母菌株を含む抗体をコードするベクターのための、適切なクローニング宿主又は発現宿主であり、そのグリコシル化経路が、「ヒト化」されており、部分的又は完全なヒトのグリコシル化パターンを有する抗体の産生をもたらす。Gerngross, Nat. Biotech. 22:1409-1414 (2004)、及びLi et al., Nat. Biotech. 24:210-215 (2006)を参照。
【0324】
グリコシル化抗体の発現に適切な宿主細胞は、多細胞生物(無脊椎動物及び脊椎動物)から誘導される。無脊椎動物細胞の例としては、植物及び昆虫細胞が挙げられる。多数のバキュロウイルス株が同定され、これらは特にSpodoptera frugiperda細胞のトランスフェクションのために、昆虫細胞と組み合わせて使用することができる。
【0325】
植物細胞培養を宿主として利用することができる。例えば、米国特許第5959177号、第6040498号、第6420548号、第7125978号及び第6417429号(トランスジェニック植物における抗体産生に関するPLANTIBODIESTM技術を記載)を参照。
【0326】
脊椎動物細胞もまた宿主として用いることができる。例えば、懸濁液中で増殖するように適合されている哺乳動物細胞株は有用であり得る。有用な哺乳動物宿主細胞株の他の例は、SV40(COS−7)で形質転換されたサル腎臓CV1株;ヒト胚腎臓株(Graham et al., J. Gen Virol. 36:59 (1977)に記載された293又は293T細胞;ベビーハムスター腎臓細胞(BHK);マウスのセルトリ細胞(Mather, Biol. Reprod. 23:243-251 (1980)に記載されるTM4細胞);サル腎細胞(CV1);アフリカミドリザル腎細胞(VERO−76);ヒト子宮頚癌細胞(HELA);イヌ腎臓細胞(MDCK;バッファローラット肝臓細胞(BRL 3A);ヒト肺細胞(W138);ヒト肝細胞(HepG2);マウス乳腺腫瘍(MMT060562);例えばMather et al., Annals N.Y. Acad. Sci. 383:44-68 (1982)に記載されるTRI細胞;MRC5細胞;及びFS4細胞である。他の有用な哺乳動物宿主細胞株は、DHFR−CHO細胞(Urlaub et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 77:4216 (1980))を含むチャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞;及びY0、NS0及びSp2/0などの骨髄腫細胞株を含む。抗体産生に適した特定の哺乳動物宿主細胞系の評価については、例えば、Yazaki and Wu, Methods in Molecular Biology, Vol. 248 (B.K.C. Lo, ed., Humana Press, Totowa, NJ), pp. 255-268 (2003)を参照。
【0327】
C.アッセイ
本明細書において提供される抗ヘマグルチニン抗体は、それらの物理的/化学的特性及び/又は生物学的活性について、当技術分野で公知の様々なアッセイによって、同定され、スクリーニングされ、又は特徴づけることができる。
【0328】
1.結合アッセイ及びその他のアッセイ
一態様において、本発明の抗体は、例えばELISA、ウエスタンブロット法など公知の方法により、その抗原結合活性について試験される。
【0329】
その他の態様において、ヘマグルチニンの結合について、本発明に記載される任意の抗ヘマグルチニン抗体と競合する抗体を同定するために、競合アッセイが用いられる。所定の実施態様において、このような競合する抗体は、本発明に記載される抗ヘマグルチニン抗体により結合される同一のエピトープ(例えば、直鎖状又は立体構造エピトープ)に結合する(例えば、配列番号111のVH配列及び配列番号113のVL配列;配列番号115のVH配列及び配列番号117のVL配列;配列番号111のVH配列及び配列番号119のVL配列;配列番号115のVH配列及び配列番号113のVL配列;配列番号115のVH配列及び配列番号122のVL配列;配列番号115のVH配列及び配列番号124のVL配列;配列番号115のVH配列及び配列番号126のVL配列;配列番号115のVH配列及び配列番号128のVL配列;配列番号115のVH配列及び配列番号130のVL配列;配列番号115のVH配列及び配列番号132のVL配列;配列番号134のVH配列及び配列番号136のVL配列;配列番号138のVH配列及び配列番号140のVL配列;配列番号142のVH配列及び配列番号144のVL配列;配列番号138のVH配列及び配列番号146のVL配列;配列番号148のVH配列及び配列番号150のVL配列;配列番号148のVH配列及び配列番号152のVL配列;配列番号148のVH配列及び配列番号140のVL配列;配列番号234のVH配列及び配列番号235のVL配列;配列番号154のVH配列及び配列番号156のVL配列;配列番号158のVH配列及び配列番号156のVL配列;配列番号160のVH配列及び配列番号162のVL配列;配列番号164のVH配列及び配列番号166のVL配列;配列番号168のVH配列及び配列番号170のVL配列を含む抗ヘマグルチニン抗体)。
【0330】
抗体が結合するエピトープをマッピングするための詳細な典型的な方法が、Morris (1996) “Epitope Mapping Protocols," in Methods in Molecular Biology vol. 66 (Humana Press, Totowa, NJ)に提供されている。
【0331】
典型的な競合アッセイにおいて、固定化ヘマグルチニンは、ヘマグルチニンに結合する第一の標識された抗体、及びヘマグルチニンへの結合について第一の抗体と競合する能力について試験される第二の未標識の抗体を含む溶液中でインキュベートされる。第二抗体はハイブリドーマ上清中に存在してもよい。対照として、固定化ヘマグルチニンが、未標識の第二の抗体でなく、標識された第一の抗体を含む溶液中でインキュベートされる。ヘマグルチニンへの第一の抗体の結合を許容する条件下でインキュベートした後、過剰の非結合抗体が除去され、固定化されたヘマグルチニンに結合した標識の量が測定される。もし、固定化されたヘマグルチニンに結合した標識の量が、対照サンプルと比較して試験サンプル中で実質的に減少している場合、それは、第二抗体が、ヘマグルチニンへの結合において第一の抗体と競合していることを示している。Harlow and Lane (1988) Antibodies: A Laboratory Manual ch.14 (Cold Spring Harbor Laboratory, Cold Spring Harbor, NY)を参照。
【0332】
2.活性のアッセイ
一態様において、アッセイは、生物学的活性を有するそれらの抗ヘマグルチニン抗体及びその断片を同定するために与えられる。生物学的活性は、例えば、A型インフルエンザウイルスヘマグルチニンへ特異的に結合すること、A型インフルエンザウイルスを中和すること等を含み得る。インビボ及び/又はインビトロでこのような生物学的活性を有する抗体、及び抗体又はその断片を含む組成物もまた提供される。
【0333】
所定の実施態様において、本発明の抗体は、そのような生物学的活性について試験される。このようなアッセイの例示的な記述については、実施例4、5、6、7、8、9、10,及び13を参照。
【0334】
D.イムノコンジュゲート
本発明はまた、化学療法剤又は薬物、成長抑制剤、毒素(例えば、タンパク質毒素、細菌、真菌、植物、又は動物起源の酵素活性毒素、又はそれらの断片)、又は放射性同位元素など、一以上の細胞傷害性薬物にコンジュゲートした本明細書中の抗ヘマグルチニン抗体を含むイムノコンジュゲートを提供する。
【0335】
一実施態様において、イムノコンジュゲートは、抗体−薬物コンジュゲート(ADC)であって、そこでは抗体は、限定されないが、メイタンシノイド(米国特許第5208020号、第5416064号及び欧州特許EP0 425235 B1を参照);モノメチルアウリスタチン薬物部分DE及びDF(MMAE及びMMAF)(米国特許第5635483号及び5780588号及び7498298号を参照)などのアウリスタチン;ドラスタチン;カリケアマイシン又はその誘導体(米国特許第5712374号、第5714586号、第5739116号、第5767285号、第5770701号、第5770710号、第5773001号、及び第5877296号を参照;Hinman et al., Cancer Res. 53:3336-3342 (1993);及びLode et al., Cancer Res. 58:2925-2928 (1998));ダウノマイシン又はドキソルビシンなどのアントラサイクリン(Kratz et al., Current Med. Chem. 13:477-523 (2006); Jeffrey et al., Bioorganic & Med. Chem. Letters 16:358-362 (2006); Torgov et al., Bioconj. Chem. 16:717-721 (2005); Nagy et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 97:829-834 (2000); Dubowchik et al., Bioorg. & Med. Chem. Letters 12:1529-1532 (2002); King et al., J. Med. Chem. 45:4336-4343 (2002);及び米国特許第6630579号を参照);メトトレキサート;ビンデシン;ドセタキセル、パクリタキセル、ラロタキセル、テセタキセル、及びオルタタキセルなどのタキサン;トリコテセン;及びCC1065を含む一以上の薬物とコンジュゲートしている。
【0336】
その他の実施態様において、イムノコンジュゲートは、酵素的に活性な毒素又はその断片にコンジュゲートした、本明細書に記載の抗体を含み、限定されないが、ジフテリアA鎖、ジフテリア毒素の非結合活性断片、(緑膿菌からの)外毒素A鎖、リシンA鎖、アブリンA鎖、モデクシン(modeccin)A鎖、アルファ−サルシン、アレウリテス・フォーディ(Aleurites fordii)タンパク質、ジアンチン(dianthin)タンパク質、フィトラカ・アメリカーナ(Phytolaca americana)タンパク質(PAPI、PAPII、及びPAP−S)、モモルディカ・チャランチア(momordica charantia)インヒビター、クルシン(curcin)、クロチン(crotin)、サパオナリア・オフィシナリス(sapaonaria oficinalis)インヒビター、ゲロニン(gelonin)、ミトゲリン(mitogellin)、レストリクトシン(restrictocin)、フェノマイシン(phenomycin)、エノマイシン(enomycin)及びトリコテセン(tricothecene)が含まれる。
【0337】
その他の実施態様では、イムノコンジュゲートは、放射性コンジュゲートを形成するために放射性原子にコンジュゲートした本明細書に記載されるような抗体を含む。様々な放射性同位体が放射性コンジュゲートの生産のために入手可能である。例として、At211、I131、I125、Y90、Re186、Re188、Sm153、Bi212、P32、Pb212、及びLuの放射性同位元素を含む。検出のためにコンジュゲートを使用するとき、それはシンチグラフィー試験のための放射性原子、例えばtc99m又はI123、又は核磁気共鳴(NMR)画像化(磁気共鳴画像化mriとしても知られている)のためのスピン標識、例えば、再びヨウ素−123、ヨウ素−131、インジウム−111、フッ素−19、炭素−13、窒素−15、酸素−17、ガドリニウム、マンガン又は鉄を含んでよい。
【0338】
抗体と細胞障害剤のコンジュゲートは、種々の二官能性タンパク質カップリング剤、例えばN−スクシンイミジル−3−(2−ピリジルジチオ)プロピオナート(SPDP)、スクシンイミジル−4−(N−マレイミドメチル)シクロヘキサン−1−カルボキシラート(SMCC)、イミノチオラン(IT)、イミドエステル類の二官能性誘導体(例えばジメチルアジピミダートHCL)、活性エステル類(例えば、スベリン酸ジスクシンイミジル)、アルデヒド類(例えば、グルタルアルデヒド)、ビスアジド化合物(例えば、ビス(p−アジドベンゾイル)ヘキサンジアミン)、ビス−ジアゾニウム誘導体(例えば、ビス−(p−ジアゾニウムベンゾイル)エチレンジアミン)、ジイソシアネート(例えば、トリエン−2,6−ジイソシアネート)、及び二活性フッ素化合物(例えば、1,5−ジフルオロ−2,4−ジニトロベンゼン)を使用して作製することができる。Vitetta et al., Science 238:1098 (1987)に記載されるように、例えば、リシンイムノトキシンを調製することができる。カーボン−14−標識1−イソチオシアナトベンジル−3−メチルジエチレントリアミン五酢酸(MX−DTPA)は、放射性ヌクレオチドの抗体へのコンジュゲーションのためのキレート剤の例である国際公開第94/11026号を参照。リンカーは、細胞中に細胞毒性薬物の放出を容易にする「切断可能なリンカー」であり得る。例えば、酸に不安定なリンカー、ペプチダーゼ過敏性リンカー、光解離性リンカー、ジメチルリンカー又はジスルフィド含有リンカー(Chari et al. Cancer Res. 52:127-131 (1992);米国特許第5208020号)が使用され得る。
【0339】
本明細書において、イムノコンジュゲート又はADCは、限定されないが、市販の(例えば、Pierce Biotechnology、Inc.、Rockford、IL.、U.S.Aからの)、BMPS、EMCS、GMBS、HBVS、LC−SMCC、MBS MPBH、SBAP、SIA、SIAB、SMCC、SMPB、SMPH、スルホ−EMCS、スルホ−GMBS、スルホ−KMUS、スルホ−MBS、スルホ−SIAB、スルホ−SMCC、及びスルホ−SMPB、及びSVSB(スクシンイミジル(4−ビニルスルホン)ベンゾエート)を含むクロスリンカー試薬を用いて調製されるコンジュゲートを明示的に意図する。
【0340】
E.診断及び検出のための方法及び組成物
ある実施態様において、本明細書で提供される抗ヘマグルチニン抗体の何れかは、生物学的サンプル中のヘマグルチニン又はA型インフルエンザウイルスの存在を検出するのに有用である。本明細書で使用する「検出」という用語は、定量的又は定性的検出を包含する。ある実施態様において、生物学的サンプルは、例えば、肺、上気道、鼻管、血液、痰などの細胞若しくは組織を含み、又は鼻若しくは咽喉スワブによって得られた生物学的サンプルを含む。
【0341】
一実施態様において、診断又は検出の方法において使用のための抗ヘマグルチニン抗体が提供される。更なる態様において、生物学的サンプル中のヘマグルチニン又はA型インフルエンザウイルスの存在を検出する方法が提供される。所定の実施態様において、本方法は、抗ヘマグルチニン抗体のヘマグルチニンへの結合を許容する条件下で、本明細書に記載のように抗ヘマグルチニン抗体と生物学的サンプルを接触させること、及び複合体が抗ヘマグルチニン抗体とヘマグルチニンとの間に形成されているかどうかを検出することを含む。そのような方法は、インビトロ又はインビボでの方法であり得る。一実施態様において、例えばヘマグルチニンが患者の選択のためのバイオマーカーであるなど、抗ヘマグルチニン抗体が抗ヘマグルチニン抗体を用いた治療に好適な被検体を選択するために使用される。
【0342】
本発明の抗体を用いて診断され得る例示的な障害は、子供、幼児、成人、及び高齢者におけるA型インフルエンザウイルス感染を含む、A型インフルエンザウイルス感染を含む。
【0343】
ある実施態様において、標識された抗ヘマグルチニン抗体が提供される。標識は、限定されるものではないが、(例えば、蛍光標識、発色団標識、高電子密度標識、化学発光標識、放射性標識など)直接検出される標識又は部分、並びに、例えば、酵素反応又は分子間相互作用を介して間接的に検出される酵素又はリガンドのような部分が含まれる。典型的な標識は、限定されないが、ラジオアイソトープ32P、14C、125I、H、及び131I、フルオロフォア、例えば希土類キレート又はフルオレセイン及びその誘導体、ローダミン及びその誘導体、ダンシル、ウンベリフェロン、ルシェフェラーゼ、例えばホタルルシェフェラーゼ及び細菌ルシェフェラーゼ(米国特許第4737456号)、ルシェフェリン、2,3−ジヒドロフタルジネジオン、西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP)、アルカリフォスファターゼ、β−ガラクトシダーゼ、グルコアミラーゼ、リゾチーム、糖オキシダーゼ、例えばグルコースオキシダーゼ、ガラクトースオキシダーゼ、及びグルコース−6−リン酸デヒドロゲナーゼ、ヘテロサイクリックオキシダーゼ、例えばウリカーゼ及びキサンチンオキシダーゼ、色素前駆体を酸化する過酸化水素を利用する酵素、例えばHRP、ラクトペルオキシダーゼ、又はマイクロペルオキシダーゼと共役したもの、ビオチン/アビジン、スピンラベル、バクテリオファージラベル、安定な遊離ラジカルなどが含まれる。
【0344】
F.薬学的製剤
本明細書に記載の抗ヘマグルチニン抗体の薬学的製剤は、所望の程度の純度を有するその抗体と任意の薬学的に許容される一以上の担体(Remington's Pharmaceutical Sciences 16th edition, Osol, A. Ed.: Williams and Wilkins PA, USA (1980))とを、凍結乾燥製剤又は水性溶液の形態で混合することによって調製される。薬学的に許容される担体は、使用される投薬量及び濃度でレシピエントに毒性でなく、そしてこれには、限定しないが、リン酸塩、クエン酸塩及び他の有機酸のような緩衝液;アスコルビン酸及びメチオニンを含む抗酸化剤;防腐剤(例えば、オクタデシルジメチオルベンジルアンモニウムクロライド;ヘキサメトニウムクロライド;塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、フェノール、ブチル又はベンジルアルコール;アルキルパラベン、例えば、メチル又はプロピルパラベン;カテコール;レゾルシノール;シクロヘキサノール;3−ペンタノール;及びm−クレゾール);低分子量(約10残基未満)ポリペプチド;タンパク質、例えば、血清アルブミン、ゼラチン、又は免疫グロブリン;親水性ポリマー、例えば、ポリビニルピロリドン;アミノ酸、例えば、グリシン、グルタミン、アスパラギン、ヒスチジン、アルギニン又はリジン;マンノサッカライド、ジサッカライド、及びグルコース、マンノース又はデキストリンを含む他の炭水化物;キレート剤、例えば、EDTA;糖、例えば、スクロース、マンニトール、トレハロース又はソルビトール;塩形成対イオン、例えば、ナトリウム;金属錯体(例えば、Zn−タンパク質錯体);及び/又はポリエチレングリコール(PEG)等の非イオン性界面活性剤が挙げられる。本明細書における典型的な薬学的に許容される担体は、介在性薬物分散剤、例えば、水溶性の中性活性ヒアルロニダーゼ糖タンパク質(sHASEGP)、例えば、rhuPH20(HYLENEX(登録商標))、Baxter International、Inc.)などのヒト可溶性PH−20ヒアルロニダーゼ糖タンパク質を更に含む。所定の典型的なsHASEGP及び使用法は、rHuPH20を含み、米国特許出願公開第2005/0260186号及び第2006/0104968に開示されている。一態様において、sHASEGPは、コンドロイチナーゼなどの1つ又は複数の追加のグルコサミノグリカンと組み合わされる。
【0345】
典型的な凍結乾燥抗体製剤は、米国特許第6267958号に記載されている。水性の抗体製剤は、米国特許第6171586号及び国際公開第2006/044908号に記載されているものが含まれ、後者の製剤はヒスチジン−酢酸緩衝液を含む。
【0346】
本明細書の製剤はまた、治療を受けている特定の徴候のために必要な一以上の活性成分、好ましくは、互いに悪影響を及ぼさない相補的活性を持つものが含まれる場合がある。例えば、更に、ノイラミニダーゼ阻害剤、抗ヘマグルチニン抗体、抗M2抗体などを提供することが望ましい場合がある。このような活性成分は、意図した目的のために有効な量で組み合わされ適切に存在する。
【0347】
活性成分は、例えば、コアセルベーション技術又は界面重合法によって、例えばそれぞれヒドロキシメチルセルロース又はゼラチン−マイクロカプセル及びポリ(メチルメタクリレート(methylmethacylate))マイクロカプセル)、コロイド薬物送達系(例えばリポソーム、アルブミンミクロスフィア、ミクロエマルジョン、ナノ粒子及びナノカプセル)又はマクロ・エマルジョンなどの調製されたマイクロカプセルに封入されてもよい。このような技術は、Remington's Pharmaceutical Sciences 16th edition, Osol, A. Ed. (1980)に開示される。
【0348】
徐放性製剤が調製されてもよい。徐放性製剤の好適な例は、抗体を含有する固体疎水性ポリマーの半透性マトリクスを含み、そのマトリックスが成形品、例えばフィルム又はマイクロカプセルの形をしている。
【0349】
インビボ投与に使用される製剤は、一般的に無菌である。無菌性は、例えば、滅菌濾過膜を通して濾過することにより、達成することができる。
【0350】
G.治療的方法及び組成物
本明細書で提供される抗ヘマグルチニン抗体のいずれかを、治療方法で使用することができる。
【0351】
一態様では、医薬として使用するための抗ヘマグルチニン抗体が提供される。更なる態様において、A型インフルエンザウイルス感染の治療、予防、又は抑制における使用のための抗ヘマグルチニン抗体が提供される。ある実施態様において、治療の方法に使用される抗ヘマグルチニン抗体が提供される。所定の実施態様において、本発明は、個体に抗ヘマグルチニン抗体の有効量を投与することを含む、A型インフルエンザウイルス感染を有する個体を治療する方法における使用のための抗ヘマグルチニン抗体を提供する。一つのそのような実施態様において、本方法は、例えば後述するように、少なくとも1つの追加の治療薬の有効量を個体に投与することを更に含む。更なる実施態様において、本発明は、A型インフルエンザウイルス膜と感染細胞のエンドソーム膜との間のヘマグルチニン媒介性融合を、予防、抑制、又は減少させ、従って、感染細胞の細胞質へのウイルスRNAの侵入を阻止し、感染の更なる伝播を阻止することにおいて使用のための抗ヘマグルチニン抗体を提供する。ある実施態様において、本発明は、A型インフルエンザウイルス感染を予防、抑制、又は治療するために、抗ヘマグルチニン抗体の有効量を個体に投与することを含む、A型インフルエンザウイルス感染を予防、抑制、又は治療する方法における使用のための抗ヘマグルチニン抗体を提供する。上記実施態様のいずれかに記載の「個体」は、好ましくはヒトである。
【0352】
更なる態様にて、本発明は、医薬の製造又は調製における抗ヘマグルチニン抗体の使用を提供する。一実施態様において、医薬はA型インフルエンザウイルス感染の治療のためである。更なる実施態様において、本医薬は、A型インフルエンザウイルス感染を有する個体に、医薬の有効量を投与することを含む、A型インフルエンザウイルス感染を治療する方法における使用のためである。一つのそのような実施態様において、本方法は、例えば後述するように、少なくとも1つの追加の治療薬の有効量を個体に投与することを更に含む。更なる実施態様において、医薬は、A型インフルエンザウイルス膜と感染細胞のエンドソーム膜との間のヘマグルチニン媒介性融合を、予防、抑制、又は減少させ、従って、感染細胞の細胞質へのウイルスRNAの侵入を阻止し、感染の更なる伝播を阻止するためである。更なる実施態様において、医薬は、A型インフルエンザウイルス感染を予防、抑制、又は治療するために、医薬の有効量を個体に投与することを含む、A型インフルエンザウイルス感染を予防、抑制、又は治療する方法における使用のためである。上記実施態様の何れかに記載の「個体」は、ヒトであり得る。
【0353】
更なる態様にて、本発明は、A型インフルエンザウイルス感染を治療するための方法を提供する。一実施態様において、本方法は、このようなA型インフルエンザウイルス感染を有する個体に、抗ヘマグルチニン抗体の有効量を投与することを含む。一つのそのような実施態様において、この方法は、本明細書に記載するように、少なくとも一の追加の治療剤の有効量を個体に投与することを更に含む。上記実施態様の何れかに記載の「個体」は、ヒトであり得る。
【0354】
本発明は、個体(例えば、被験体又は患者)において、A型インフルエンザウイルス感染を、抑制、予防、又は治療するのに有効な抗ヘマグルチニン抗体を提供する。幾つかの態様において、本発明の抗ヘマグルチニン抗体は、個体のA型インフルエンザウイルス感染を予防するために、予防的に個体を治療するのに有効である。
【0355】
幾つかの態様において、本発明の抗ヘマグルチニン抗体を用いた治療に適した個体は、A型インフルエンザウイルス感染に罹患しているか又は罹患していると疑われる個体である。幾つかの実施態様において、そのような抗体は、子供、幼児、成人、及び高齢者を含む。幾つかの実施態様において、個体は、A型インフルエンザウイルス感染で入院している。他の実施態様において、A型インフルエンザウイルス感染に罹患している個体は、一以上の併存疾患、例えば、免疫不全、妊娠、肺疾患、心臓疾患、腎疾患、又は共感染(例えば、細菌性又はウイルス性肺炎などの細菌感染症又はウイルス感染症)に罹患している。
【0356】
幾つかの態様において、本発明の抗ヘマグルチニン抗体を用いた個体の治療は、A型インフルエンザウイルス感染の重症度を軽減させ、A型インフルエンザウイルス感染の期間を減少させ、又はA型インフルエンザウイルス感染性を低下させる。他の態様では、本発明の抗ヘマグルチニン抗体を用いたA型インフルエンザウイルス感染の治療は、入院期間の短縮、集中治療室(ICU)使用の必要性(ICU)の低下又は防止、補助された又は機械的換気の必要性の低下又は防止、補給用酸素使用の必要性の低下又は防止及び死亡率の低下を含む、付加的な利点を提供する。幾つかの態様において、入院期間の減少は、1日、2日間、3日間、4日間、5日間、又は5日以上である。幾つかの態様において、集中治療室(ICU)使用の必要性(ICU)の低下は、1日、2日間、3日間、4日間、5日間、又は5日以上である。幾つかの態様において、補助された又は機械的換気の必要性の低下は、1日、2日間、3日間、4日間、5日間、又は5日以上である。幾つかの態様において、補給用酸素使用の必要性の低下は、1日、2日間、3日間、4日間、5日間、又は5日以上である。幾つかの態様において、本発明の抗ヘマグルチニン抗体を用いた個体の治療は、A型インフルエンザウイルス感染疾患の症状、例えば、発熱、鼻炎、悪寒、喉の痛み、筋肉痛、体の痛み、頭痛、咳、鼻づまり、脱力感又は疲労、チカチカ痛む目又は流涙、及び一般的な不快感などを軽減させる。
【0357】
幾つかの態様において、本発明の抗ヘマグルチニン抗体を用いた個体の治療は、呼吸数の正常化までの時間の短縮又は酸素飽和度の正常化までの時間の短縮など、呼吸機能の正常化までの時間を短縮させる。幾つかの態様において、本発明の抗ヘマグルチニン抗体を用いた個体の治療は、補給用酸素投与を行わないで24時間にわたって測定される場合、通常の酸素飽和度に戻る時間、例えば、約92%以上の酸素飽和度までの時間を短縮する。他の態様において、本発明の抗ヘマグルチニン抗体を用いた個体の治療は、心拍数、血圧、呼吸数、及び体温などのバイタルサインの正常化までの時間を短縮させる。
【0358】
幾つかの態様において、本発明の抗ヘマグルチニン抗体を用いた個体の治療は、例えば、インフルエンザウイルスの力価などのウイルス学的評価項目を改善する。ウイルス力価は、当業者に周知の種々の方法、例えば、qPCR又は組織培養感染量(TCID50)によって測定される場合、例えばウイルスの曲線下面積(AUC)によって測定することができる。幾つかの実施態様において、治療は、qPCR又はTCID50により測定される場合、ウイルスのAUCにおいて50%以上の減少をもたらす。
【0359】
本発明の様々な態様において、本明細書中に提供される抗ヘマグルチニン抗体は、症状の発症(例えば、病気の発症)後、約12時間、約24時間、約36時間、約48時間、約60時間、約72時間、約84時間、及び約96時間で投与された場合、A型インフルエンザウイルス感染の治療において有効である。他の態様において、本明細書中に提供される抗ヘマグルチニン抗体は、症状の発症後約24時間から48時間の間に投与される場合(例えば、個体は24時間から48時間症候性である)、症状の発症後約48時間から72時間の間に投与される場合、又は症状の発症後約72時間から96時間の間に投与される場合、A型インフルエンザウイルス感染の治療において有効である。本発明のある実施態様において、本発明の抗ヘマグルチニン抗体は、A型インフルエンザウイルス感染を治療すること又は減少させることに有効であり、症状の発症後48時間を超えて、現在の標準治療(例えば、オセルタミビル)の治療ウィンドウを拡張する。
【0360】
更なる態様において、本発明は、例えば、上記の治療法のいずれかに使用される、本明細書で提供される抗ヘマグルチニン抗体のいずれかを含む薬学的製剤を提供する。一実施態様において、薬学的製剤は、本明細書で提供される抗ヘマグルチニン抗体のいずれか、及び薬学的に許容される担体を含む。その他の実施態様において、薬学的製剤は、本明細書で提供される抗ヘマグルチニン抗体のいずれかと、例えば後述されるような少なくとも1つの追加の治療剤とを含む。
【0361】
本発明の抗体は、治療において、単独で、又は他の薬剤と組み合わせて使用することができる。例えば、本発明の抗体は少なくとも一の追加の治療剤と同時投与され得る。ある実施態様において、追加の治療剤は、ノイラミニダーゼ阻害剤(例えば、ザナミビル、リン酸オセルタミビル、アマンタジン、リマンタジン)、抗M2抗体、抗ヘマグルチニン抗体などである。幾つかの態様において、ノイラミニダーゼ阻害剤と同時投与される、本発明の抗ヘマグルチニン抗体による、A型インフルエンザウイルスに罹患した個体の治療は、何れかの薬剤単独での治療と比較して、相乗的な治療効果を提供する。
【0362】
上記のこうした併用療法は、併用投与(2つ以上の治療剤が、同一又は別々の製剤に含まれている)、及び、本発明の抗体の投与が、追加の治療又は薬剤の投与の前、同時、及び/又はその後に起きうる分離投与を包含する。一実施態様において、抗ヘマグルチニン抗体の投与、及び追加の治療剤の投与は、お互いに、約1カ月以内、又は約1、2、若しくは3週間以内、約1、2、3、4、5、若しくは6日以内、又は約1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、12、16、20、24時間以内に生じる。
【0363】
本発明の抗体(及び任意の追加の治療剤)は、任意の適切な手段によって投与することができ、経口、肺内、及び鼻腔内、及び局所治療が所望される場合、病巣内投与が含まれる。非経口注入には、筋肉内、静脈内、動脈内、腹腔内、又は皮下投与が含まれる。投薬は、その投与が短期間か又は長期であるかどうかに部分的に依存し、任意の適切な経路、例えば、静脈内又は皮下注射などの注射により行うことができる。限定されないが、様々な時間点にわたる、単一又は複数回投与、ボーラス投与、パルス注入を含む様々な投与スケジュールが本明細書で考えられている。
【0364】
本発明の抗体は良好な医療行為に合致した方法で処方され、投与され、投薬される。この観点において考慮すべき要因は、治療すべき特定の障害、治療すべき特定の哺乳類、個々の患者の臨床状態、障害の原因、薬剤送達部位、投与方法、投与日程及び医療従事者が知る他の要因を包含する。抗体は、必要ではないが任意で、問題となる障害の予防又は治療のために、現在使用中の一又は複数の薬剤ともに処方される。そのような他の薬剤の有効量は製剤中に存在する抗体の量、障害又は治療の種類及び上記した他の要因に依存する。これらは一般的には本明細書に記載されるのと同じ用量及び投与経路において、又は、本明細書に記載された用量の1%から99%で、又は経験的に/臨床的に妥当であると決定された任意の用量及び任意の経路により使用される。
【0365】
疾患の予防又は治療のためには、本発明の抗体の適切な用量(単独で使用されるか、又は、一以上の更なる治療的薬剤との組み合わされる場合)は治療すべき疾患の種類、抗体の種類、疾患の重症度及び経過、抗体を予防又は治療目的のいずれにおいて投与するか、以前の治療、患者の臨床的履歴及び抗体に対する応答性、及び担当医の判断に依存する。抗体は、患者に対して、単回、又は一連の治療にわたって適切に投与される。疾患の種類及び重症度に応じて、例えば一回以上の別個の投与によるか、連続注入によるかに関わらず、抗体の約1μg/kgから45mg/kg(例えば1.0mg/kgから15mg/kg)が患者への投与のための初期候補用量となり得る。一つの典型的な1日の用量は、上記の要因に応じて、約1μg/kgから100mg/kg以上の範囲であろう。数日間以上に渡る反復投与の場合には、状態に応じて、治療は疾患症状の望まれる抑制が起こるまで持続するであろう。抗体の例示的な用量は、約1.0mg/kgから約45mg/kg、約1.0mg/kgから約30mg/kg、約1.0mg/kgから約15mg/kg、約1.0mg/kgから約10mg/kg、又は約1.0mg/kgから約5mg/kgの範囲であろう。このように、約1.0mg/kg、2.5mg/kg、5.0mg/kg、10mg/kg、15mg/kg、30mg/kg、又は45mg/kgの一又は複数(又はその何れかの組合せ)の用量が、患者に投与されうる。このような用量は、例えば、毎日、2日毎、3日毎など、間欠的に投与することができる。初期の高負荷投与量の後に一以上の低投与量が投与されても良い。投薬は、例えば、200mg、400mg、600mg、800mg、1000mg、1200mg、1400mg、1500mg、1600mg、1800mg、2000mg、2200mg、2400mg、2500mg、2600mg、2800mg、3000mg、3200mg、3400mg、3600mgなど固定用量とすることも可能である。この治療の進行は、従来技術及びアッセイにより容易にモニターされる。
【0366】
上記の製剤又は治療方法の何れかが、抗ヘマグルチニン抗体の代わりか又は抗ヘマグルチニン抗体に加えて、本発明のイムノコンジュゲートを用いて行うことができることが理解される。
【0367】
H.製造品
本発明の他の実施態様において、上述した障害の治療、予防、及び/又は診断に有用な物質を含む製造品が提供される。製造品は、容器と容器上ないしは容器に付随するラベルないしはパッケージ挿入物を具備する。好適な容器には、例えば、ビン、バイアル、シリンジ、IV液バッグ等々が含まれる。容器は、様々な材料、例えばガラス又はプラスチックから形成されうる。容器は、症状を治療、予防及び/又は診断するために有効な組成物単独又は他の組成物と組み合わせる組成物を収容し、滅菌アクセスポートを有しうる(例えば、容器は皮下注射針が貫通可能なストッパーを有するバイアル又は静脈内投与溶液バッグでありうる)。組成物中の少なくとも一の活性剤は本発明の抗体である。ラベル又はパッケージ挿入物は、組成物が特定の症状の治療のために使用されることを示している。更に、製造品は、(a)組成物が本発明の抗体を包含する組成物を含む第一の容器;及び(b)組成物が更なる細胞障害性又はその他の治療的薬剤を包含する組成物を含む第2の容器を含み得る。本発明の本実施態様における製造品は、組成物が特定の疾患を治療することに用いることができることを示すパッケージ挿入物をさらに含んでいてもよい。別法として、又は加えて、製造品は、薬学的に許容されるバッファー、例えば注射用静菌水(BWFI)、リン酸緩衝化塩水、リンガー溶液及びデキストロース溶液を含む第二(又は第三)の容器をさらに含んでもよい。更に、他のバッファー、希釈剤、フィルター、針、及びシリンジを含む、商業上及び使用者の見地から望ましい他の材料を含んでもよい。
【0368】
上記の製造品の何れかは、抗ヘマグルチニン抗体の代わりか又はそれに加えて、本発明のイムノコンジュゲートを含み得ることが理解される。
【実施例】
【0369】
III.
以下は本発明の方法及び組成物の例である。上記提供される一般的な説明を前提として、他の様々な実施態様が実施され得ることが理解される。
【0370】
実施例1:ファージディスプレイによる抗ヘマグルチニン抗体の同定
インフルエンザウイルスワクチン接種したヒトドナーからのファージライブラリーの構築
A型インフルエンザウイルスヘマグルチニンに対する抗体は、以下のように季節性インフルエンザウイルスワクチンを接種されたヒトドナーから単離された末梢血単核細胞(PBMC)から構築されたファージディスプレイライブラリーを用いて同定された。
【0371】
供血7日前に季節性インフルエンザFluvirin(登録商標)ワクチン(Novartis Lot#111796P1)を接種された正常なヒトのドナーからのロイコパック(Leukopacs)は、Blood Centers of the Pacific(San Francisco、CA)から入手された。PBMCは、標準的な方法論を用いてロイコパック(leukopacs)から単離された。PBMCは、FACSにより、CD19+/CD20形質芽球細胞に対して選別された。CD19+/CD20選択型形質芽細胞からのRNAは、RNeasy精製キット(Qiagen、USA)を使用して抽出され、cDNAは、SuperScript(登録商標)III逆転写酵素(Invitrogen、USA)を使用して逆転写により単離されたRNAから生成された。ヒト可変重鎖(VH)、可変カッパ(VK)、及び可変軽鎖(VL)遺伝子は、以下のバック(back)及びフォワード(forward)DNAプライマー混合物を用いて、cDNAからPCR増幅された。
【0372】
【0373】
得られた増幅されたcDNA産物は、以下の重複プライマーを用いて、オーバーラップPCRを使用してscFvへと組み立てられた。
【0374】
【0375】
精製されたscFv cDNA断片(1μg)及びファージミドベクターp2056BNN(2μg)は、BssHII及びNcoI制限エンドヌクレアーゼ(New England Biolabs、USA)を用いて消化された。ファージミドベクターp2056BNNは、BssHII、Nhel、及びNcol制限部位を含むように操作された、pS2025eの修飾バージョンである(Sidhu et al, (2004) J Mol Biol 338:299-310)。次いで、scFv cDNA断片は、T4 DNAリガーゼ酵素(New England Biolabs)を使用してp2056BNNベクターにライゲーションされた(6:1のM比)。得られたcDNA/ファージライゲーション生成物はPCR精製キット(Qiagen、USA)を用いて精製され、エレクトロコンピテントセルSS320大腸菌細胞に形質転換された。ファージライブラリーの大きさは、LB/カルベニシリンプレートに1:10希釈されたライブラリー培養物の10μlを蒔くことによって、推定された。ライブラリー培養物はその後さらに増幅され、60mlの2YT培地の全容量中で増殖され、ファージscFv発現は、M13K07ヘルパーファージによる同時感染により誘導された。カナマイシンは、後にライブラリー培養物に添加され、30℃で30時間振とうしながらインキュベートされた。次いで、ライブラリー培養物は、細胞をペレット化するために、遠心分離された。ファージ−scFvを含有する上清を、5×PEG/2.5MのNaClで沈殿させ、PBSに再懸濁した。
【0376】
抗ヘマグルチニン抗体を同定するためのファージライブラリー選別及びスクリーニング
(実施例2において、以下に記載のように生成された)A型インフルエンザウイルスヘマグルチニンのH1及びH3タンパク質が、ファージライブラリーの選別のための抗原として使用された。ヘマグルチニンH1及びH3抗原が、高結合性96ウェルマキシソーププレート上にコーティングされた。プレート及びファージライブラリーは、ファージブロッキング緩衝液(リン酸緩衝生理食塩水(PBS)、1%(w/v)のウシ血清アルブミン(BSA)、0.05%(v/v)Tween20(PBS−T))で予めブロックされ、室温で2時間インキュベートされた。ブロックされたファージライブラリー(100μl)は、ヘマグルチニンコーティングされたウェルに添加され、3時間インキュベートされた。結合していないファージは、0.05%PBS−Tweenを使用して、プレートから洗浄され、結合したファージは、30分間、100μlの50mMのHC1と500mMのNaClを用いて溶出され、続いて100μlの1MTris塩基(pH7.5)で中和された。回収されたファージを、大腸菌XL−1 Blue細胞中で増幅した。得られたファージを沈殿させ、ヘマグルチニンタンパク質に対するパニング/選択の別のラウンドに供された。続くパニング/選択ラウンドの間に、抗体ファージは、同一又は異なるヘマグルチニン抗原と共にインキュベートされた。プレート洗浄のストリンジェンシーは、15回の洗浄から40回の洗浄へと徐々に増加された。
【0377】
パニング及び選別の2〜3ラウンドの後、ヘマグルチニン特異的ファージの著しい濃縮が観察された。96のファージクローンが、それらがヘマグルチニンH1及び/又はH3に特異的に結合したかどうかを決定するために、ライブラリー選別から選択された。ヘマグルチニンタンパク質への特異的結合を提示するファージクローンの可変領域が、固有の免疫グロブリン核酸配列を含むファージクローンを同定するために配列決定された。バックグラウンドよりも少なくとも5倍でヘマグルチニンH1及び/又はH3に結合した固有のファージ抗体が、更に特徴付けられた。目的のファージ由来のクローンは、個々のクローンのVL及びVH領域を、LPG3及びLPG4発現ベクターにそれぞれクローニングすることにより、IgGに再フォーマットされ、哺乳動物293細胞において一過性に発現され、そしてプロテインAカラムを用いて精製された。二つの抗体(mAb9及びmAb23)が、更なる分析のために同定された。(下記の実施例5を参照)。
【0378】
実施例2:形質芽細胞の濃縮及び発現
A型インフルエンザウイルスヘマグルチニンに対する希な抗体を発見し、同定するために、以下の形質芽細胞の濃縮及び増殖技術が開発された。(その全体が参照により本明細書に援用される、同時係属中の特許出願、米国特許出願シリアル番号61/725764を参照のこと)。
【0379】
供血7日前に季節性インフルエンザFluvirin(登録商標)ワクチン(Novartis Lot#111796P1)を接種された正常なヒトのドナーからのロイコパック(Leukopacs)は、Blood Centers of the Pacific(San Francisco、CA)から入手された。末梢血単核細胞(PBMC)は、標準的な方法論を用いてロイコパック(leukopacs)から単離された。6から8週齢の雌SCID/ベージュマウスは、チャールズ・リバー・ラボラトリーズ(Hollister、CA)から購入され、実験動物管理に関する米国協会の指針(American Association of Laboratory Animal Care guidelines)に従って、Genentechで収容され、維持された。全ての実験的研究は、実験動物の管理と使用に関する指針及び関連法規に従って、AAALACi認定施設におけるGenentech実験動物研究の施設内動物管理使用委員会の承認の下で実施された。健常なヒトドナーからのロイコパック(Leukopac)又は血液は、書面によるインフォームドコンセントが提供され、倫理的承認が、施設内倫理委員会から付与された後に得られた。
【0380】
インビボでの抗原駆動型形質芽細胞の濃縮及び増殖は、次のようにPBMCの脾臓内移植を用いて行われた。単離されたPBMCは、ヘマグルチニン抗原(百万B細胞の各々に対して0.1−2μg)と共に再懸濁され、37℃で30分間インキュベートされた(PBMC/抗原プレミックス)。このインキュベーション後、PBMCは、非結合抗原を除去するために洗浄された。交差反応性ヘマグルチニン抗体を産生した形質芽細胞を濃縮するために、PBMC/抗原プレミックス及び単一細胞選別に使用されたヘマグルチニン抗原変異体が、インフルエンザFluvirin(登録商標)ワクチン中に含まれるヘマグルチニン抗原変異体と区別するために、具体的に選択された。従って、本研究で用いられたヘマグルチニン抗原は、A型インフルエンザウイルス分離株A/NWS/1933からのH1ヘマグルチニン(グループ1のA型インフルエンザウイルスヘマグルチニン)、A型インフルエンザウイルス分離株A/Hong Kong/8/1968からのH3ヘマグルチニン(グループ2のA型インフルエンザウイルスヘマグルチニン)、A型インフルエンザウイルス分離株A/Netherlands/219/2003からのH7ヘマグルチニン(グループ2のA型インフルエンザウイルスヘマグルチニン)を含んでいた。ヘマグルチニン抗原は、標準的な分子生物学的技術を使用してGenentechで生成された。
【0381】
6−8週齢の雌のSCID/ベージュマウス(Charles River Laboratories、Hollister、CA)は、セシウム137の供給源を使用して350ラドで亜致死的に照射された。ポリミキシンB(110mg/L)及びネオマイシン(1.1g/L)が、照射後7日間、飲料水に添加された。照射後4時間で、各マウスの左脇腹は剃毛され、Betadine(登録商標)(Purdue Pharma、Stamford、CT)と70%アルコールで調製された。外科的処置は、無菌の外科的手順を用いて麻酔下で行われた。1cmの皮膚切開が、各マウスの肋骨境界線のすぐ下でなされ、続いて腹壁及び腹膜の切開が行われた。各マウスの脾臓を慎重に露出させ、30μlのPBS中に再懸濁された50X10のヒトPBMCが注射された。切開部は、5−O Vicryl(登録商標)縫合糸(Ethicon、Somerville、NJ)及び外科用ステープルを使用して、筋肉層内及び皮膚において閉じられた。抗原特異的な細胞選別実験のために、マウスは、移植後8日目に屠殺され、その脾臓が採取された。
【0382】
マウスから得られた脾臓細胞の単一細胞懸濁液は、CD38high/IgG+発現としてヒトIgG+形質芽細胞を定義する、抗ヒトモノクローナル抗体CD38 PECy7 (BD Biosciences、San Jose、CA)及びIgG Dylight(Jackson ImmunoResearch Laboratories、Inc.、West Grove、PA)のカクテルで染色された。単離された脾臓細胞の懸濁液内のマグルチニン交差反応性形質芽細胞を同定するために、細胞は、Lightning−Link(登録商標)ラベリングキット(Innova Biosciences、Cambridge、UK)を用いて、以前にそれぞれ、FITC又はPEに結合された、A型インフルエンザウイルス分離株A/NWS/1933からのヘマグルチニンH1及びA型インフルエンザウイルス分離株A/Hong Kong/8/1968からのヘマグルチニンH3によって染色された。
【0383】
図1Aは、SCID/ベージュマウスの濃縮の前に(即ち、PBMC/抗原プレミックスの前に)、ワクチン接種されたPBMCの7日目からの抗ヘマグルチニン陽性形質芽細胞の代表的なFACSデータ分析を示す。図1Bは、SCID/ベージュマウス濃縮後の移植後の8日目からのヘマグルチニン陽性形質芽細胞の代表的FACSデータ分析を示し、上側及び下側のパネルはそれぞれ、プレミックス無しと抗原プレミックスとを比較している。図1A及び1Bに示すように、脾臓内注射前のPBMC/抗原プレミックスは、高頻度のH3/H1抗ヘマグルチニン形質芽細胞をもたらした。
【0384】
以下の表2は、本明細書に記載するように、SCID濃縮の前後における、抗H1/抗H3形質芽細胞の頻度の比較を示す。表2に示すように、抗H1/抗H3形質芽細胞の頻度は、SCID/ベージュマウスの濃縮を含まないで観察されたものと比較して、本発明のSCID/ベージュマウスの濃縮方法を用いて大幅に増加した。
【0385】
【0386】
次いで、試料は、アリア高速セルソーター(BD Biosciences、San Jose、CA)において、ヨウ化プロピジウム死細胞の排除の存在下で分析され、抗ヘマグルチニン特異的形質芽細胞は、5%の低IgGウシ胎児血清を補充した、50μlのRPMI細胞培養培地を含む、96ウェル組織培養プレート中に単一細胞の方法で選別された。(Gibco、Grand Island、NY)。5百万の生細胞は、全ての分析プロファイルについて記録された。プロファイルは、Flowjoバージョン9.4.11ソフトウェアによって分析された。
【0387】
図2は、プレミックス無し(丸)及び抗原プレミックス(四角)を比較した、確率論的応答を示す、個々のSCID/ベージュマウスからの、移植後8日目から得られた脾細胞の分析を示す。データは、抗H1/CD38high形質芽細胞のパーセントとして示されている。長方形は、抗H1形質芽細胞を提示したマウスを示している。
【0388】
これらの結果は、広範なヘマグルチニン交差反応性形質芽細胞が、インフルエンザウイルスA型グループ1(例えば、ヘマグルチニンH1)及びグループ2(例えば、ヘマグルチニンH3、ヘマグルチニンH7)のヘマグルチニン抗原が、脾臓内移植の前にPBMCとインキュベートされる場合に検出されたことを示している。これらの結果は、インフルエンザワクチン接種ドナーからの、ヘマグルチニン抗原に感作されたPBMCのインビトロ刺激は、SCID/ベージュマウスのレシピエント内で、形質芽細胞のヘマグルチニン抗原特異的濃縮を促進することを示していた。
【0389】
実施例3:単一形質芽細胞からのIgGクローニング
(上述の)ヘマグルチニンH1及びH3交差反応性ヒト形質芽細胞は、単一細胞に選別され、約950の形質芽細胞をもたらした。単一形質芽細胞は、5%の低IgG胎児ウシ血清を含む、50μlのRPMIを含む、U底の96−ウェルマイクロウェルプレートに直接選別された。プレートは、600×gで5分間遠心分離されBeckman Coulter、Brea、CA)、培地は、注意深く吸引することにより除去された。細胞は再懸濁され、同じ手順に従って、90μlのPBSで2回洗浄された。
【0390】
可変重鎖及び軽鎖可変をコードするcDNAを生成するために、各細胞は、2ユニットのRNaseout(Invitrogen、Grand Island、NY)、0.5mMの4dNTP(Perkin Elmer、Waltham、MA)、1.5mMのMgCl、37.5mMのKC1、10mMのDTT(ジチオスレイトール)、Nonidet P40(US Biological、Marblehead、MA)、0.1mg/mlのウシ血清アルブミン(Sigma−Aldrich)、25mMのトリスpH8.3、0.25pmolのIgG1−4定常、κ鎖定常及びλ鎖定常領域特異的オリゴヌクレオチド(下を参照)及び40UのSuperscript III(Invitrogen、Grand Island、NY)を含有する、逆転写酵素(RT)反応混合物の6μlに再懸濁された。
【0391】
【0392】
反応物は、45℃、50℃、55℃のそれぞれで、3×30分間隔でインキュベートされた。インキュベーション後、反応混合物は、TE緩衝液(10mMトリス、HCl、1mMのEDTA)で15μlまで希釈された。最初のポリメラーゼ連鎖反応(PCR)は、IgG重鎖、κ鎖及びλ鎖を増幅するために、製造業者によって提供されるプロトコルに従い、2μlの上記の希釈RTカクテル及びAdvantage−GC 2ポリメラーゼミックス(Clontech、Mountain View、CA)を使用して実施された。PCR増幅は、以下に示される、可変重鎖及び軽鎖生殖系列、及び定常領域の配列に基づく縮重オリゴヌクレオチドを用いて行われた。
【0393】
【0394】
重鎖及び軽鎖のPCR増幅反応は、それぞれ以下のように二つの反応に分けられた:重鎖ファミリーのVH.1,2,3(プライマーIGVH1a、IGVH1b、IGVH2、IGVH3)及びVH.4,5,6,7(プライマーIGVH4、IGVH5、IGVH6、及びIGVH7);κ鎖ファミリーのVK.1,2,3(プライマーIGKV1、IGKV2、及びIGKV3)及びVK.4,5,6(プライマーIGVK4、IGVK5、及びIGVK6);及びλ鎖ファミリーのVL.1,2,3,4,5(IGLV1、IGLV2、IGLV3、IGLV4、及びIGLV5)及びVL.6,7,8,9(プライマーIGLV6、IGLV7、IGLV8、及びIGLV9)。タッチダウンPCR増幅プロトコルが、温度サイクリングのために使用された。
【0395】
反応後、PCR増幅産物は、PCR増幅反応物の各々からの過剰のヌクレオチド及びプライマーを除去するために、エキソヌクレアーゼ1(Exo)及びエビアルカリホスファターゼ(SAP)で処理された(U.S. Biologicals、Marblehead、MA)。最初のPCR増幅産物は、サンガー配列決定を用いて、重鎖及び軽鎖の両方の可変配列を決定するために、直接配列決定された。二回目のネステッドPCR増幅は、以下のオリゴヌクレオチドプライマーを使用して哺乳動物シグナル配列及び定常領域のクローニング配列を挿入するために、生殖系列に一致した重鎖及び軽鎖可変オリゴヌクレオチドを使用して行われた。
【0396】
【0397】
PCR増幅反応は、GCを用いるPrimeStar HS DNAポリメラーゼ(Takara Bio、Shiga、Japan)を使用して、製造業者の推奨に従って、設定された。PCR増幅反応後、増幅産物は、上記のようにExo/SAPにより処理された。可変重鎖及び可変軽鎖をコードするPCR増幅産物は、制限エンドヌクレアーゼを含まない手順を使用して、哺乳動物発現ベクターに挿入された。20μlのPCR増幅産物が、Kunkel突然変異誘発プロトコルを使用して、IgG1、κ、及びλ鎖の一本鎖DNAのヒト鋳型にアニールされた。(Kunkel(1985)PNAS 82:488-492を参照)。正確に挿入された構築物は、DNA配列決定により確認された。重鎖及び軽鎖をコードする核酸を含有するプラスミドが、一過性発現のために、Fugeneトランスフェクション試薬(Roche Diagnostic、Indianapolis、IN)を使用して、293Tヒト胚腎臓細胞中に同時導入され、下の実施例4に記載されるように、発現及び結合ついて分析された。
【0398】
実施例4:ヘマグルチニンのELISAスクリーニングアッセイ
上記のように得られたモノクローナル抗ヘマグルチニン抗体の、様々なヘマグルチニンサブタイプに結合する能力が、以下のようにELISAによって試験された。上記のように、ヘマグルチニンを発現する様々なプラスミドが、293T細胞にトランスフェクトされた。これらは、A型インフルエンザウイルスの、HINl/South Carolina/1918からのヘマグルチニンH1、H3N2/Perth/2009からのヘマグルチニンH3、H5N l/Viet/2004からのヘマグルチニンH5、及びH7N7/Netherlands/2003からのヘマグルチニンH7を含んでいた。2日後、細胞は、50mMトリス、pH8、5mMのEDTA、150mMのNaCl、1%トリトンX−100+プロテアーゼインヒビターカクテル(Roche)中に溶解された。核は、遠心分離により清澄化され、得られた溶解物は−80℃で保存された。
【0399】
ELISAスクリーニングのために、384ウェルプレート(Nunc MaxiSorp)は、PBS中5μg/mlのスノードロップレクチン(Sigma)でコーティングされた。プレートは洗浄され、次いで、様々な発現されたヘマグルチニンを含む細胞溶解物の希釈物でコーティングされた。プレートは洗浄され、抗ヘマグルチニン抗体の様々な希釈物、その後ヤギ抗ヒトHRP二次抗体(Jackson)とともにインキュベートされた。プレートは洗浄され、TMB(3、3’、5、5’−テトラメチルベンジジン)基質の検出のために処理された。
【0400】
およそ950の形質芽細胞は、上の実施例2に記載される単一細胞選別から得られた。このうち、840のモノクローナル抗体が、一過性に293T細胞で発現され、ヘマグルチニンサブタイプH1、H3、H5、及びH7への結合についてELISAによりスクリーニングされ、A型インフルエンザウイルスのグループ1又はグループ2のヘマグルチニンに結合した82のモノクローナル抗体、及びA型インフルエンザウイルスのグループ1とグループ2のヘマグルチニンの両方に結合した20のモノクローナル抗体を生じた。
【0401】
実施例5:インビトロでのA型インフルエンザウイルスの中和
広範なヘマグルチニンサブタイプへの結合性、及びインビトロにおける、インフルエンザA型のグループ1とグループ2のウイルスの分離株のパネルの中和を誘発する、本発明の抗ヘマグルチニン抗体の能力が、以下のように調べられた。
【0402】
MDCK細胞を、透明底イメージングプレート付きの黒96ウェル(Costar 3904)中で、10%FBSを単一の25%のコンフルエントな単層として補充したDMEM培地中で増殖させた。各A型インフルエンザウイルスサブタイプ/株は、インフルエンザ培地中で(DMEM+0.2%BSA、2μg/mlのTPCK処理されたトリプシン)MOIが1まで希釈され、そして各抗体の種々の濃度(0.02nMから1600nMの範囲)で37℃で1時間インキュベートされた。各抗体/インフルエンザウイルス混合物は、5%COインキュベーター中で、37℃で16時間、MDCK細胞に感染させ、その後、細胞は冷却した100%エタノールで細胞を固定化された。
固定化細胞は、次いで、細胞核を可視化し、総細胞数を決定するために、Hoechst 33342(Invitrogen、Cat#H3570)で染色された。細胞はまた、感染した細胞の数を決定するために、A型インフルエンザウイルス核タンパク質に特異的な広範に反応性のモノクローナル抗体(Millipore Cat#MAB8258)で染色された。
【0403】
細胞は、Image Express Micro(Molecular Devices)を使用して画像化され、データ画像はMetaXpress3.1ソフトウェアを用いて分析された。感染細胞の割合は測定され、X軸上のLog10抗体濃度に対してY軸上にプロットされた。全ての中和アッセイは三通りに完了された。データは、非線形回帰用量応答曲線を用いて適合され、図3に、95%信頼区間(95%CI)による、nMでのIC50値として示されている。
【0404】
各A型インフルエンザウイルス株のヘマグルチニン(HA)サブタイプは、図3に示す表に提供される。
【0405】
インビトロでの中和の用量反応曲線は、インフルエンザA型グループ1ウイルス株とグループ2ウイルス株の広範なパネルに対して、本明細書に記載のモノクローナル抗体の様々な濃度を用いて作製された。図4A及び4Bは、インフルエンザA型グループ1ウイルス株とグループ2ウイルス株のパネルに対する、mAb 39.29 NWPP(配列番号177として開示された「NWPP」)の中和曲線をそれぞれ示している。図4A及び4Bに示すように、mAb 39.29 NWPP(配列番号177として開示された「NWPP」)は、試験されたA型インフルエンザウイルス株のインビトロでの中和において有効であった。(図3も参照)。更に、図5A及び5Bは、インフルエンザA型グループ1ウイルス株とグループ2ウイルス株のパネルに対する、mAb 81.39 SVSH−NYP(配列番号171として開示された「SVSH」)の中和曲線をそれぞれ示している。図5A及び5Bに示すように、mAb 81.39 SVSH−NYP(配列番号171として開示された「SVSH」)は、試験されたA型インフルエンザウイルス株のインビトロでの中和において有効であった。(図3も参照)。
【0406】
本発明の4つの抗ヘマグルチニン抗体(具体的には、mAb 39.18 B 11、mAb 36.89、mAb9.01F3、及びmAb23.06C2)は、グループ1又はグループ2のインフルエンザウイルス株の何れかの、しかし両方ではなく、インビトロでの中和に有効であった。具体的には、mAb 39.18 B11は、調べられたグループ1のA型インフルエンザウイルスパネル全体のインビトロでの中和に有効であったが、グループ2のA型インフルエンザウイルス株を中和することはできなかった。(図6及び図3を参照)。逆に、mAb 36.89、mAb9.01F3、及びmAb23.06C2は、調べられたグループ2のA型インフルエンザウイルスパネル全体を中和することができたが、試験されたグループ1のA型インフルエンザウイルス分離株を中和することはできなかった。(mAb 36.89、mAb9.01F3、及びmAb23.06C2についてのインビトロ中和曲線を示している、図7図8、及び図9を参照;図3も参照のこと)。
【0407】
まとめると、これらの結果は、本発明のモノクローナル抗体は、インビトロで、様々なA型インフルエンザウイルス分離株/株を、用量依存的に中和することができることを示した。更に、これらの結果は、本明細書に記載される形質芽細胞の濃縮方法は、950の単離された形質芽細胞のみから、グループ1及びグループ2のA型インフルエンザウイルス株の両方を中和することができるモノクローナル抗体の同定をもたらすことを示していた。
【0408】
H5N1A型インフルエンザウイルスを中和することにおいて、本発明の抗体の有効性を試験するために、ヘマグルチニンH5を発現するように操作された偽型ウイルスを使用して、インビトロでの中和実験も行われた。特に、H5ヘマグルチニン表面タンパク質を有するHIV偽型ウイルスは、293T細胞上のmAb 39.29 NCv1との中和について、以下のように試験された。H5偽型ウイルスは、3つのプラスミド:Δ8.9、FCMV−GFP、及び、A型インフルエンザウイルス分離株H5N1/Vietnam/1203/2004からのヘマグルチニンH5を発現するプラスミドによる293T細胞の同時導入により生成された。ウイルスは、20%スクロースを使用した超遠心によって精製された。感染のために、偽型ウイルスは、96ウェルプレートで培養された標的の293T細胞を添加する前に、様々な量のmAb 39.29 NCv1と共にインキュベートされた。2日後、感染した細胞の数は、GFP陽性細胞を計数することにより決定された。感染は、使用される最小の抗体濃度で、感染した細胞の数に対して正規化された。結果を図10に示す。図10に示すように、mAb 39.29 NCv1は、ヘマグルチニンH5表面タンパク質を発現する偽型ウイルスに対して用量依存性のインビトロ中和を示した。これらのデータは、本発明の抗体は、H5N1A型インフルエンザウイルス株の治療及び予防に有効であることを示唆した。
【0409】
ウマインフルエンザウイルスは、以下のように、インビトロで中和活性を示す本発明の抗体の能力について試験された。H7N7 A/Equine/1/Prague/56A型インフルエンザウイルスを、高度の感染性を達成するまで、MDCK細胞に感染させた。得られた、H7N7 A/Equine/1/Prague/56A型インフルエンザウイルスは、(mAb 39.29 NCv1について上述される方法を使用して)MDCK細胞における中和アッセイにおいて使用された。これらの実験の結果は図11に示される。図11に示すように、mAb 39.29 NWPP(配列番号177として開示された「NWPP」)は、ヘマグルチニンH7表面タンパク質を発現するH7N7 A/Equine/1/Prague/56インフルエンザウイルスに対して、用量依存性のインビトロでの中和を示した。
【0410】
まとめると、これらの結果は、本発明の抗ヘマグルチニン抗体は、様々なA型インフルエンザウイルス株に対する用量依存性の中和活性を示すことを示した。具体的には、2つの抗ヘマグルチニン抗体(mAb 39.29 NWPP(配列番号177として開示された「NWPP」)及びmAb 81.39 SVSH−NYP(配列番号171として開示された「SVSH」)は、グループ1のA型インフルエンザウイルス株(A/CA/7/2009、A/Brisbane/59/2007、A/Solomon/3/2006、A/New Caledonia/20/1999、A/PR/8/1934、及びA/Japan/305/1957)及びグループ2のA型インフルエンザウイルス株(AVictoria/361/2011、A/Perth/16/2009、A/Brisbane/10/2007、A/Wisconsin/67/2005、A/Victoria/3/1975、A/Port Chalmers/1/1973、A/HK/8/1968、及びA/Aichi/2/1968)の両方の中和を含む、調べられた全てのA型インフルエンザウイルス株を中和することにおいて有効であった。
【0411】
さらに、これらの結果は、本発明の抗ヘマグルチニン抗体(例えば、mAb 39.29 NWPP(配列番号177として開示された「NWPP」)(図4A及び4B)及びmAb 81.39 SVSH−NYP(配列番号171として開示された「SVSH」)(図5A及び5B))は、様々な異なる季節性H1N1インフルエンザウイルス株、H3N2A型インフルエンザウイルス株、H2N2A型インフルエンザウイルス株、1957年の日本でのパンデミックに関連付けられているA型インフルエンザウイルス株(A/Japan/305/1957)の中和において有効であることを示していた。これらの結果は、本発明の抗体は、季節性インフルエンザウイルス感染及びインフルエンザパンデミックに関連したA型インフルエンザウイルス株の治療及び予防に有効であることを示していた。
【0412】
実施例6:マウスにおけるmAb 39.29 NWPP(配列番号177として開示された「NWPP」)のインビボ有効性
マウスにおけるA型インフルエンザウイルス感染に対する、mAb 39.29 NWPP(配列番号177として開示された「NWPP」)のインビボ有効性は以下のように行われた。DBA/2Jマウス(Jackson Lab、Bar Harbor、ME)は、インフルエンザ培地(DMEM、0.2%BSA、2μg/mL TPCK−処置トリプシン)で希釈された様々なA型インフルエンザウイルス株の50μlにより、最小のLD100用量で、経鼻的に感染させた。ある範囲のインビトロでのIC50値を示す、4つの異なるA型インフルエンザウイルス株が、H1N1 A/PR/8/1934(Genentech;IC50 2.0nM)、マウスあたり40PFUで使用;H3N2 A/Hong Kong/1/1968(ViraPur、San Diego、CA;IC50 45.1nM)、マウスあたり3PFUで使用;H3N2 A/Port Chalmers/1/1973(ViraPur、San Diego、CA;IC50 2.2nM)、マウスあたり1.5×10PFUで使用;及びH3N2 A/Aichi/2/1968(ViraPur、San Diego、CA;IC50 35 nM)、マウスあたり2×10PFUで使用;を含む、この実験のシリーズにおいて使用された。インフルエンザウイルス感染は、mAb 39.29 NWPP(配列番号177として開示された「NWPP」)の静脈内投与の前に、72時間進行させた。
【0413】
A型インフルエンザウイルス感染後72時間後、様々な量のmAb 39.29 NWPP(配列番号177として開示された「NWPP」)が、PBS200μl中、900μg/マウス(およそ45mg/kg)、300μg/マウス(およそ15mg/kg)、及び100μg/マウス(およそ5mg/kg)の用量で、マウスに静脈内投与された。対照の処置動物は、mAb 39.29 NWPP(配列番号177として開示された「NWPP」)の試験された最高の等価な用量(即ち、およそ45mg/kg)で、mAb gD5237(単純ヘルペスウイルスのD糖タンパク質に特異的なモノクローナル抗体(HSV))を投与された。マウスは、感染後21日目まで、身体状態と生存について毎日モニターされ、また、毎日体重が測定された。全てのmAb 39.29 NWPP(配列番号177として開示された「NWPP」)投与対全ての4つのA型インフルエンザウイルス株に感染した対照は、P<0.01のログランク検定を与えた。
【0414】
図12A、12B、12C及び12Dは、A型インフルエンザウイルスのA/PR/8/1934、A/Port Chalmers/1/1973、A/Hong Kong/1/1968,及びA/Aichi/2/1968のそれぞれに感染後、72時間で、様々な量のmAb 39.29 NWPP(配列番号177として開示された「NWPP」)を投与されたマウスのパーセント生存率(経時的、日数で)を示す。図12A、12B、12C及び12Dに示されるように、100%の死亡率が、対照抗体を投与された感染したマウスにおいて14日目で観察された。しかし、本発明のモノクローナル抗体を投与された、感染したマウスは、生存率の増加を示した。特に、100%生存率は、インフルエンザウイルス A/Port Chalmers/1/1973又はインフルエンザウイルスA/Aichi/2/1968により感染されたマウスにおいて、mAb 39.29 NWPP(配列番号177として開示された「NWPP」)の全用量で観察された。(図12B及び12Dを参照)。
【0415】
これらの結果は、本発明のモノクローナル抗体は、種々のA型インフルエンザウイルス感染を治療するのに有効であることを示した。更に、これらのデータは、本発明のモノクローナル抗体は、A型インフルエンザウイルス感染後少なくとも72時間までに投与された場合に、A型インフルエンザウイルス感染を治療するのに有効であることを示した。
【0416】
実施例7:マウスにおけるmAb39.29 NCv1のインビボ有効性
マウスにおけるmAb39.29 NCv1のインビボ有効性を試験するために、抗体は、ある範囲のインビトロでIC50値を示す、4つの異なるA型インフルエンザウイルス分離株を感染させたマウスに静脈内投与された。DBA/2Jマウス(Jackson Lab、Bar Harbor、ME)は、インフルエンザ培地(DMEM、0.2%BSA、2μg/mL TPCK処置トリプシン)に希釈された異なるA型インフルエンザウイルス株の50μlにより、最小のLD100用量で、経鼻的に感染させた。
【0417】
一組の実験では、A型インフルエンザウイルス分離株H1N1 A/PR1934が、マウス当たり40PFUで使用された。感染後72時間で、抗ヘマグルチニンmAb 39.29 NCv1は、200μlのPBS中に、およそ15mg/kg、およそ5mg/kg、およそ1.7mg/kg、又はおよそ0.56mg/kgで、静脈内投与された。対照処置動物は、mAb 39.29 NCv1のの試験された最高の等価な用量で、HSVのD糖タンパク質に特異的である、mAb gD5237を与えられた。マウスは、感染後21日目まで、身体状態と生存についてモニターされ、また、体重が測定された。
【0418】
H1N1 A/PR/8/1934感染マウスにおいて、マウスあたり15mg/kgでのmAb 39.29 NCv1の単回静脈内投薬は、対照IgG抗体で観察されたものと比較して有効であった。(図13を参照)。具体的には、100%の死亡率は、12日目までに対照治療群において観察されたが、一方、mAb 39.29 NCv1の15mg/kgの単一用量は、感染したマウスの87.5%を救った。mAb 39.29 NCv1のマウスあたり100μgの三倍低い用量(およそ5mg/kg)は、いくばくかの有効性を示し、動物の25%を致死的攻撃から守ることができたが、およそ1.7mg/kg又はおよそ0.56mg/kgの用量では、対照処置群で観察されたものを超えて、最小限の有効性を示した。(図13を参照)。
【0419】
別の組の実験では、mAb 39.29 NCv1のインビボでの有効性は、A/PR8/1934よりも10倍高いインビトロでのIC50を有する、マウス適合型H3N2 Hong KongA型インフルエンザウイルス株(H3N2 A/Hong Kong/1/1968)に対して調べられた。上述の以前の実験で観察されたように、A型インフルエンザウイルス感染後、対照抗体で処置されたマウスは、12日目までに100%の死亡率を示した。(図14を参照)。mAb 39.29 NCv1のおよそ45mg/kg又はおよそ15mg/kgでの単一用量は、それぞれマウスの87.5%及び75%を守ることができた。A/PR8/1934及びA/Hong Kong/1/1968A型インフルエンザウイルス感染モデルの両方における、mAb 39.29 NCv1のインビボでの15mg/kgの最小有効用量は、これらの2つの株の間で、mAb 39.29 NCv1のインビトロでのIC50値に観察された対比にもかかわらず、非常に類似している。(図3及び図14を参照)。
【0420】
mAb 39.29 NCv1のインビボでの有効性を更に探究するために、mAb 39.29 NCv1の用量漸増が、2つの更なるA型インフルエンザウイルス株;Port Chalmers(H3N2 A/Port Chalmers/1/1973)及びAichi (H3N2 A/Aichi/2/1968)に対して試験された。
mAb 39.29 NCv1は、2.9nMのPort Chalmersに対してインビトロでのIC50を有し、それはA/PR8/1934のそれと非常に類似しており、一方、Aichiは、35.0nMのインビトロのIC50を有し、A/Hong Kong/1/1968のそれと近接した値である。図15及び図16に示すように、100%の死亡率は、対照処置動物において、Port Chalmers及びAichモデルのそれぞれに対して、12日目及び10日目までに観察された。モノクローナル抗体39.29 NCv1は、試験した全ての用量(例えば、45mg/kg、15mg/kg、5mg/kg、及び1.7mg/kg)で、両方のA型インフルエンザウイルス株に対して非常に有効性を示した。
【0421】
これらのデータは、一部に、mAb 39.29 NCv1のインビトロでのIC50とインビボでの最小有効用量との間にほとんど相関は存在しないことを示唆した。それにもかかわらず、感染後72時間で静脈内投与された15mg/kgの単回投与は、これらのインフルエンザウイルス株に対するインビトロIC50値の範囲にもかかわらず、4つ全てのA型インフルエンザウイルスのマウスモデルで有効であった。
【0422】
実施例8:マウスにおける重度のA型インフルエンザウイルス感染におけるmAb39.29及びオセルタミビルのインビボでの有効性
マウスにおいて、本発明の抗ヘマグルチニン抗体の有効性とリン酸オセルタミビル(タミフル(登録商標))のそれとを比較するために、以下の研究が行われた。6週齢のBalb/cマウス(Charles River Laboratories、Hollister、CA)は、致死量の100倍(5×10 PFU/マウス)での50μlのH1N1 A/PR/8/1934により、経鼻的に感染させられた。感染後48時間で、抗ヘマグルチニン抗体 39.29(mAb 39.29 D8C2とmAb 39.29 NWPP(配列番号177として開示された「NWPP」)の50:50混合物)が、200μlのPBS中でおよそ15mg/kg又は対照IgGの単一用量として静脈内投与された。これらの実験において、5日間1日2回(BID)2mgの投与からなるオセルタミビルの投薬レジメンは、mAb 39.29 NWPP(配列番号177として開示された「NWPP」)の単回の300μlgの静脈内投与量(〜15mg/kg)と比較された。mAb 39.29 NWPP(配列番号177として開示された「NWPP」)又はオセルタミビル対対照のログランク検定はp<0.01を与え、mAb 39.29 NWPP(配列番号177として開示された「NWPP」)対オセルタミビルの最大尤度検定はp<0.05を与えた。(オセルタミビル(即ち、タミフル(登録商標))は、Toronto Research Chemicals、Cat. No. 0701000.から入手された)。
【0423】
図17に示すように、100%の死亡率は、対照のIgG(mAb gD5237)で処置された動物において9日目までに観察された。オセルタミビルによる5日間のBID処置のみが、マウスの37.5%を致死から守った。しかしながら、mAb 39.29 NWPP(配列番号177として開示された「NWPP」)混合物の15mg/kgの単回投与量は、致死性のA型インフルエンザウイルスの曝露から感染した動物の87.5%を守った。(図17を参照)。mAb 39.29 NWPP(配列番号177として開示された「NWPP」)混合物の15mg/kgの単回投与量は、A型インフルエンザウイルスにより重篤に感染したマウスにおいて、オセルタミビルよりも良好に機能した。
【0424】
これらの結果は、本発明のモノクローナル抗体の単一用量は、オセルタミビルによる5日間の処置よりも、A型インフルエンザウイルス感染を治療することにおいていっそう有効であることを示した。
【0425】
実施例9:オセルタミビルの同時投与を含む場合及び含まない場合の、マウスにおけるmAb 39.29 NWPP(配列番号177として開示された「NWPP」)のインビボ有効性
オセルタミビルの投与は、症状の発症後48時間以内に与えられた場合、ヒトA型インフルエンザウイルス感染を低減させるのに有効である。不幸なことに、オセルタミビルは、48時間以上症候性であった患者では、最小限の有効性を示している。従って、本発明のモノクローナル抗体とオセルタミビルの同時投与は、何れかの治療単独に対して改善された有効性を示すかを試験するために以下の実験が実施された。
これらの実験は、実施例8に上述される重篤なマウスインフルエンザ感染モデルを用いて行われた。簡潔には、雌のBalb/Cマウス(Charles River Laboratories)は、A/PR/8/1934の100倍致死量(5×10pfu)で感染させられた。mAb 39.29 NWPP(配列番号177として開示された「NWPP」)の100μg(およそ6mg/kg、以前に決定された準有効用量)の単一用量、対照IgG、オセルタミビル2mgを1日2回(BID)、又はmAb 39.29 NWPP(配列番号177として開示された「NWPP」)の単一用量と5日間のオセルタミビル処置の組合せの静脈内投与の72時間前に、組合せ処置対mAb 39.29 NWPP(配列番号177として開示された「NWPP」)又はオセルタミビルのログランク検定は、p<0.01を与えた。
【0426】
予想されるように、IgGで処置された動物は、感染後9日目で100%の死亡率を示した。(図18を参照)。対照で処置された動物で観察された致死率は、オセルタミビルのみ又はmAb 39.29 NWPP(配列番号177として開示された「NWPP」)の準有効量を受けたグループと非常に類似していた。しかしながら、mAb 39.29 NWPP(配列番号177として開示された「NWPP」)の準有効量+オセルタミビルの同時投与は、何れかの処置単独で観察されたものに比べて、生存率を著しく改善し、87.5%の生存率をもたらした。(図18を参照)。
【0427】
これらの結果は、オセルタミビル、ノイラミニダーゼ阻害剤と組合わせて使用される本発明のモノクローナル抗体を使用した併用療法の間に、A型インフルエンザウイルス感染の処置への相乗効果が生じることを示した。
【0428】
実施例10:本発明の抗ヘマグルチニン抗体は、フェレットH5N1インフルエンザウイルス感染モデルにおいて、オセルタミビルよりも良好に機能する。
フェレットのA型インフルエンザウイルス感染モデルは、多くの場合、抗インフルエンザ治療薬の予防的及び治療的有効性を調べるために使用される。フェレットはヒトA型インフルエンザウイルス感染に対する臨床的に関連する動物モデルと考えられている。(Matsuoka et al., (2009) Current Protocols in Microbiology, Chapter 15, Unit 15G 12を参照)。
【0429】
フェレットにおいてH5N1A型インフルエンザウイルスのヒト分離株に対するmAb 39.29 D8C2 及びmAb 81.39 B1C1のインビボ有効性を調べるために、以下の研究が実施された。フェレットH5N1研究は、Lovelace Respiratory Research Institute(Albuquerque、NM)にて契約に基づいて完了された。雄のフェレット(Mustela putorius furo)は、強毒性H5N1 A/Vietnam/1203/04A型インフルエンザウイルス株の1×10pfu(LD90用量)の鼻腔内投与量で曝露された。動物は、静脈内投与による抗体、又は強制経口投与によるオセルタミビル(タミフル(登録商標))を受ける48又は72時間前に感染された。対照で処置された動物は、mAB gD5237、HSVのD糖タンパク質に特異的なモノクローナル抗体の25mg/kgの静脈内投与量を受けた。抗インフルエンザ処置された動物は、インフルエンザウイルス感染後、48又は72時間後に、39.29 D8C2又はmAb 81.39 B1C1の何れかの25mg/kgの静脈内投与量を受けた。各抗体投与群は、10匹のフェレットを含んだ。オセルタミビルで処置された動物は、5日間、25mg/kgの経口投与を1日2回受けた。動物は、体重減少、発熱、及び身体状態について毎日モニターされた。
【0430】
H5N1感染と一致して、感染したフェレットの大部分は、感染後48時間までに上気道疾患の初期徴候を示した。H5N1の致死量により予想されるように、陰性対照抗体処置群は、接種後14日までに90%の死亡率を示した。(図19A及び19Bを参照)。
【0431】
対照的に、インフルエンザウイルス感染後48又は72時間の何れかで、mAb 39.29 D8C2の単一用量を受けたフェレットは、それぞれ80%及び90%未満の生存率(20%未満及び10%未満の致死率)を示した。(図19Aを参照)。同様に、感染後48又は72時間の何れかで、mAb 81.39 B1C1の単一用量を受けたフェレットは、それぞれ100%及び80%の生存率(0%及び20%の致死率)を示した。(図19Bを参照)。処置開始時間にかかわらず、オセルタミビルを処置された群は、50%未満の致死率を示した。
【0432】
これらの結果は、本発明の広範に中和性の抗ヘマグルチニン抗体は、フェレットにおける重度のA型インフルエンザウイルスH5N1感染の治療において非常に保護的であって、A型インフルエンザウイルス感染後48及び72時間で投与されると、オセルタミビルよりも良好に機能することを示した。
【0433】
実施例11:結晶化及びデータ収集
本発明の抗体のヘマグルチニン交差反応性についての構造的基盤を調べるために、mAb 39.29 NCv1 Fab断片は、以下のようにヒトA型インフルエンザウイルス株A/Perth/16/2009からの組換えヘマグルチニンH3と共に共結晶化された。
【0434】
タンパク質の発現及び精製
ヘマグルチニン中和についての構造的基盤をより良く理解するために、ヘマグルチニンと複合体を形成したmAb 39.29 NCv1 Fab断片の結晶構造が決定された。Perth H3ヘマグルチニンの細胞外ドメインをコードする核酸(H3FJA,A/Perth/16/2009、アミノ酸残基25−520(全長ヘマグルチニンH3(H3HA)のアミノ酸残基について配列番号226))が、pACGP67ベクター(BD Biosciences)中に、インフレームで、トロンビン切断部位(LVPRGS、配列番号106)三量体化「フォールドン」配列(PGSGYIPEAPRDGQAYVRKDGEWVLLSTFLG、配列番号107)、及びC末端6×Hisタグ(配列番号108)と共にクローニングされた。組換えバキュロウイルスは、H3HA−pACGP67ベクター及び線状化バキュロウイルスDNA(Pharmingen)によるSf9細胞の同時導入によって作製された。
【0435】
H3HA組換えタンパク質を産生するために、Trichoplusia ni PRO細胞は、1の感染効率(MOI)を用いて組換えバキュロウイルスに感染させられ、27℃で72時間増殖された。細胞上清は、50mMのTris−HCl、pH7.5、5mMのCaCl、及び1mMのNiClで処理され、その後、遠心分離され、濾過された。次いで、培地は濃縮され、20mMイミダゾールを含有する、10mMトリス、pH8.0、150mMのNaCl(TBS)に、接線流濾過によってバッファー交換され、そしてタンパク質はNi−アガロースで捕獲され、200mMイミダゾールを含有するTBS中に溶出された。フォールドンタグは、一晩、トロンビンによって切断され、そしてH3HAは濃縮され、更に、TBSで平衡化したSuperdex20016/60サイズ排除カラムで精製された。
【0436】
ヘマグルチニン−Fab複合体を作成するために、mAb 39.29 NCv1 Fab(PhoAプロモーターの調節下にある)は、大腸菌中で30℃で一晩発現された。細胞は、15分間、6,000rpmで遠心分離によってペレット化され、25mMのEDTA及び1mMのPMSFを補充されたPBS中で顕微溶液化によって溶解された。細胞破片は、4℃で1時間、10,000rpmで遠心分離によって除去された。得られた上清は、プロテインGカラムに通され、Fabは0.58%酢酸で溶出された。mAb 39.29 NCv1 Fabの更なる精製が、20mMのMES、pHを5.5中で、0から1MのNaClの勾配を使用して、SPセファロースクロマトグラフィーによって達成された。HA/39.29複合体を作成するために、H3HAは、過剰のmAb 39.29 NCv1 Fabと共に一晩インキュベートされ、その後濃縮され、TBS中でS200サイズ排除クロマトグラフィーにかけられ、複合体を単離した。複合体は、結晶化試験のために10mg/mlに濃縮された。
【0437】
結晶化
H3HA/39.29 NCv1 Fab複合体の結晶の生成は、沈殿剤としてPEG30040%を使用して、0.1Mリン酸/クエン酸緩衝液、pH4.2(条件C6、JCSG+スパースマトリックススクリーン、Quiagen)で見いだされた。回折品質の結晶は、最終的に、0.1μlのタンパク質と0.1μl0.1Mリン酸/クエン酸、pH4.2、40%>PEG300、及び0.7%>1−ブタノールを含むシッティングドロップ中で19℃で増殖させた。結晶は、母液中で凍結保護され、その後瞬間冷凍され、液体窒素中で保管された。データはカナダの光源ビームラインCMCF−08IDで凍結冷却条件下で収集され、MOSFLMとSCALAを用いて処理された。結晶は空間群I213に属し、単位格子定数はa=b=c=200.4、α=β=γ=90°であった。
【0438】
構造決定
初期位相は、検索モデルとしてH3HA(PDB3SDY)の構造を用いて、PHASERによる分子置換によって得られた。続いて、FabのFc及びFv部分は、PHASERを用いて別々に配置され、Phenixによる剛体精密化の初回ラウンドを受けた。モデルは、COOTによる調整と、Phenixによるシミュレートアニーリングは、座標、及びB因子の精密化の複数の繰り返しラウンドが行われた。アスパラギン結合型グリコシル化部位で発見された糖分子がPhenixからCarboloadパッケージを使用して追加され、精密化の最終ラウンドはREFMAC5を用いて行われた。最終モデルは、3.1ÅでR/Rfree値がそれぞれ19.9及び25.5%まで精密化された。Molprobityによって計算されたラマチャンドラン統計は、残基の89.7%が好ましい領域にあり、1.1%が異常値にあることを示している。接触は、タンパク質界面、表面、及びアセンブリ(PISA)ソフトウェア使用して分析され、構造図は、PyMOLを用いて作成された。
【0439】
実施例12:H3ヘマグルチニン上の39.29エピトープの構造的特徴づけ
上記実施例11に記載されるように、mAb 39.29 NCv1 Fab断片は、ヒトA型インフルエンザウイルス株A/Perth/16/2009からの組換えH3ヘマグルチニンと共結晶化された。抗体/ヘマグルチニン複合体の結晶構造は、3.1Åの分解能で決定された。A/Perth/16/2009 H3ヘマグルチニンの全体構造は、HA2ヘリックス1/ヘリックス2のリンカーの僅かな再配置と乱れを除いて、以前に決定されたヘマグルチニンの構造に類似していた。これらの位置での乱れは、以前に低pHの結晶化条件下で確認されており、pH4.2で結晶化されているこの複合体と一致している(Ekiert et al, (2011) Science 333:843-850)。抗体/HA複合体は、未切断のH3 HA三量体の各単量体に結合した単一のmAb39.29 Fab分子を示していた。mAb 39.29 NCv1 Fab断片の軽鎖及び重鎖断片の両方とも全体を通じて良好に解像され、HAとのFvの相互作用の精密な検証を可能にしている。
【0440】
mAb 39.29 NCv1に対するエピトープは、H3ヘマグルチニンのストーク領域において、大まかにHA2ヘリックスA上にあると決定された。ヘマグルチニンストークのこの領域は、グループ1のヘマグルチニンサブタイプを発現するA型インフルエンザウイルスの広範なる中和エピトープとして最初に同定され(Ekiert et ah, (2009) Science 324:246-251; Sui et al, (2009) Nature Structural & Molecular Biology 16:265-273))、より最近では、グループ1及びグループ2のヘマグルチニンサブタイプを保有するA型インフルエンザウイルス株の中和エピトープとして同定された(Corti et al, (2011) Science 333:850-856)。mAb 39.29 NCv1抗体は、重鎖と軽鎖の広範な接触を、ヘマグルチニンのストーク表面積のおよそ1175Åを埋めるために使用している。mAb 39.29 NCv1の重鎖は、HA2ヘリックスAに近接し、Asn54で保存されたグループ2ヘマグルチニンのグリコシル化部位の下にある非極性の浅い溝へと挿入する、伸長した疎水性CDRH3ループを広く介する結合に寄与している。CDRH3ループは、Phe99側鎖の外へ伸長し、H3ヘマグルチニンのThr334、Ile390、及びIle393と相互作用し、一方、H3ヘマグルチニンのAsn54に結合したGlcNAcと主鎖の極性接触している。mAb 39.29 NCvのCDRH3ループは、Gly100でβターンを作り、Val98とIle100Aの間のループ間主鎖の接触により安定化されている可能性がある。Ile100Aは、保存されたH3ヘマグルチニンTrp366と相互作用するように下に向いており、一方でVal98及びPro100Cはまた、H3ヘマグルチニンストークとファンデルワールス接触している。重鎖/軽鎖界面に存在している、Pro100DとTrp100Eは長いCDRH3ループを終結させ、所定の位置にループを固定するように作用している。
【0441】
mAb 39.29 NCv1の軽鎖はまた、3つ全ての軽鎖CDRループ並びにフレームワーク残基によりH3ヘマグルチニンストークと接触しており、H3ヘマグルチニンストークとの相互作用に著しく寄与している。およそ1100Åのヘマグルチニンの埋もれた表面積のうち、約60%は軽鎖によってもたらされている(軽鎖及び重鎖においてそれぞれ640Å対480Å)。CDRL1のAsn32は、H3のHA2ヘリックスAの残基Asp391とAsn394と水素結合しており、CDRL1のHis31はH3ヘマグルチニンのAsn376側鎖に対してスタックしている。CDRL2ループにあるSer52はまた、Asn398と極性接触している。CDRL3ループ内で、Asn93の主鎖はAsp391と接触し、一方Trp94はHA2ヘリックスAのLys384とカチオン−π相互作用している。興味深いことに、mAb 39.29はまた、主にIgKV3のβ鎖6にあるSGSGSGリピート(配列番号109)のH3ヘマグルチニンポリペプチドのアミノ酸残基403から405との主鎖相互作用を介して、ヘマグルチニンと多くのフレームワーク接触している。mAb 39.29 NCv1のSer67はまた、H3ヘマグルチニンのAsp48とThr404と極性相互作用している。
【0442】
3つ全てのmAb39.89 NCv1軽鎖CDRループは、埋もれた全表面積の約60%を占めており、H3 HAストークエピトープの結合に寄与している。軽鎖接触のこの大きな依存性は、既知のヘマグルチニングループ1とグループ2の結合及び中和抗体の中でユニークであり、抗体F16v3軽鎖は埋もれた表面積に対してほんの20%の寄与であり、抗体CR9114軽鎖はエピトープと接触しない。
【0443】
構造的に保存されているが、グループ1とグループ2のヘマグルチニンサブタイプは、一次アミノ酸配列レベルで有意に異なっている。mAb39.29 NCv1 H3HA接触残基を他のヘマグルチニンサブタイプと比較するために、我々は、インフルエンザウイルスA/Perth/16/2009からのH3ヘマグルチニンのアミノ酸配列を、他のインフルエンザウイルス株由来の代表的なヘマグルチニンアミノ酸配列:A/California/07/2009からのH1HA;A/Japan/305/1957からのH2HA;A/Vietnam/1203/2004からのH5HA;及びA/chicken/NSW/1/1997からのH7HAとアラインした。結晶構造中で、A/Perth/16/2009からのH3ヘマグルチニンのアミノ酸番号付けは、アラインメントに使用されるヘマグルチニンH3配列と一致している。ヘマグルチニンの配列アラインメントは、clustalWと、A/California/07/2009からのヘマグルチニンH1;A/Japan/305/1957からのヘマグルチニンH2;A/Perth/19/2009からのヘマグルチニンH3;A/Vietnam/1203/2004からのH5;及びA/chicken/NSW/1/1997からのH7に対応するアミノ酸配列使用して作成された。結晶構造は、39.29 NCv1 Fab断片とヘマグルチニンH3のストークとの間の接触残基を決定するために使用された。
【0444】
アラインメントを図20に示す。ヘマグルチニン接触残基(灰色で影付き)は、mAb39.29 NCv1の4.5Å以内の残基として定義される。mAb39.29 NCv1のFabにより、その利用可能な表面積の50%以上が埋もれた各アミノ酸残基にはアスタリスクが表示されている。
【0445】
このエピトープに対するmAb39.29 NCv1の結合に大きく寄与する接触残基の間で、高度の配列保存が観察される(図20を参照)。この観察は、mAb 39.29 NCv1は、上記結晶構造に見られる同じストークエピトープを介して、グループ1とグループ2のヘマグルチニン分子に結合することを示唆している。このエピトープはFI6v3抗ヘマグルチニン抗体に対して同定されたヘマグルチニンエピトープに類似している(Cortiら(2011)、上記)。しかしながら、mAb 39.29 NCv1は、ヘマグルチニンストークに対してFI6v3とは異なる向きで結合する。HAとの複合体の39.29 NCvl、F16v3、及びCR9114構造の比較は、3つ全ての抗体は、HA2のヘリックスA及び隣接する非極性基を含むエピトープに結合することが明らかにした。しかし、3つの抗体の各々は特有の結合配向を有し、39.29 NCv1と比較した場合、各重鎖はHA上で同様の地形的位置に結合しているが、軽鎖の位置は、−60°(FI6v3)又は−120°(CR9114)だけ回転している。また、mAb 39.29 NCv1に特有なのは、β鎖6のフレームワークのIgKV3軽鎖SGSGSGリピート(配列番号109)は、H3 HAと接触していることである。従って、39.29構造は、この高度に保存されたエピトープの結合に対する第三の解決法を表し、A型インフルエンザウイルスの広範な中和についてHA2ヘリックスAに係合することの重要性を固めている。
【0446】
ヒトA型インフルエンザウイルス株A/Perth/16/2009からのH3ヘマグルチニンとの複合体のmAb 39.29の結晶学データは、以下の接触位置:34、36、54、70、292、294、305、307、334、363、364、365、366、379、380、382、383、384、386、387、390、391、393、394、395、397、398、401、403、404、及び405を明らかにした。抗体FI6v3は、以下の接触位置:334、352、356、363、364、365、366、381、383、384、386、387、388、390、391、393、394、397、398、401、及び402を明らかにした。アミノ酸残基の位置は、A型インフルエンザウイルス株A/Perth/16/2009からのH3ヘマグルチニン(配列番号226)に対応する。(国際出願公開番号:国際公開第2010/010466号及び国際公開第2013/011347号;Corti et al. (2011) Science 333:850-856を参照)。一部に重複が観察されるが、mAb 39.29は、FI6v3よりもヘマグルチニン内部で、より多くの接触位置を示した。
【0447】
mAb 39.29 NCv1及びFI6v3抗体のCDRは、配列相同性を有しておらず、両方の抗体は、類似しているが同一ではないストークエピトープに異なる方法で係合するという事実は、抗体には、保存されたストークのエピトープに結合し、広くA型インフルエンザウイルスを中和する様々な方法があることを示唆している。
【0448】
実施例13:競合ELISA
競合ELISAアッセイは、インフルエンザウイルスA/WSN/1933からのヘマグルチニンH1及びインフルエンザウイルスA/Hong Kong/8/1968.からのヘマグルチニンH3を用いて開発された。ヘマグルチニンをコーティングしたELISAプレートは、ビオチン標識化mAb 39.29の飽和濃度を添加する前に、試験抗体を種々の濃度(X軸)で結合させた。試験抗体がmAb39.29のヘマグルチニンエピトープを競合した場合、ビオチンELISAシグナル(Y軸)は増加する試験抗体濃度の関数として減少した。結合データは、nMで与えられたEC50値を決定するために、非線形用量反応曲線に適合させた。
【0449】
mAb39.29 IgGは、製造業者の推奨プロトコル(Sulfo−NHS−LC−LC、Pierce、Rockford、IL)に従って、アミンカップリングを介してビオチン化された。ビオチン化mAbの最終ストック濃度は13.2mMであった。使用のための最適濃度を決定するために、ビオチン化された39.29は、固定化された、A型インフルエンザウイルスA/WSN/1933からのH1ヘマグルチニン及びA型インフルエンザウイルスA/Hong Kong/8/1968からのH3ヘマグルチニンに対して連続的滴定された。組換えヘマグルチニンH1とH3タンパク質は、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)中で2μg/mlに希釈され、96ウェルのNunc Maxisorpプレート(Nunc、Rochester、NY)上に分注された(100μl)。プレートを、4℃で一晩コーティングし、PBSでリンスし、次いで1%ウシ血清アルブミン(BSA、Sigma−Aldrich、St. Louis、MO)を含むPBSによって室温で1時間ブロックした。
【0450】
次いで、各プレートは、連続希釈されたビオチン化mAb39.29の100μlを、1.0%BSA及び0.05%ポリソルベート20(Sigma−Aldrich)を含むPBS中での1/3希釈物を含む88nMの初期濃度で開始して与えられた。
1時間のインキュベーション後、プレートを洗浄し、次いでストレプトアビジン結合型西洋ワサビペルオキシダーゼ(Caltag Laboratories、Carlsbad、CA)の1:5000希釈物100μlと共に室温で30分間インキュベートされた。インキュベーション後、プレートは洗浄され、TMB基質100μlを用いて現像された(Kirkegaard and Perry Laboratories、Inc. Gaithersburg、MD)。プレートは、O.D.450nMで、SpectraMaxプレートリーダー(Molecular Devices、Sunnyvale、CA.)で読まれた。ビオチン化mAbの最適濃度は、1nMであると決定された。
【0451】
種々の濃度(x軸)の本発明のモノクローナル抗体39.18、36.89、81.39 39.29、mAb 9、mAb 23と対照IgGが、室温で30分間、ヘマグルチニンコーティングされたプレートを用いてインキュベートされた。初期濃度は、200nmであり、続いて3倍連続希釈がなされた。ビオチン化mAb39.29は、1nMでの最終的なサブ飽和濃度まで添加された。1時間のインキュベーション後、プレートは洗浄され、ストレプトアビジン結合型西洋ワサビペルオキシダーゼの1:5000希釈物100μlと共に45分間インキュベートされた。プレートは洗浄され、次いでTMB溶液を用いて現像された。試験抗体がmAb39.29のHAエピトープを競合した場合、ビオチンELISAシグナル(Y軸)は増加する試験抗体濃度の関数として減少した。結合データは、nMで与えられたEC50値を決定するために、非線形用量反応曲線に適合させた。
【0452】
図21Aと21Bは、A/NWS/1933からのH1HA(図21A)又はA/HK/8/1968からのH3HA(図21B)に対する結合についてのmAbsの競合ELISA解析の結果を示す。結果は、mAb 39.29、mAb 81.39、mAb 39.18、及びmAb 36.89の全てが、重複するヘマグルチニンストークエピトープに結合することを示していた(図21A及び21B)。具体的には、mAb 81.39及びmAb 39.18は、ヘマグルチニンH1のストーク上でmAb 39.29の結合と競合し、一方mAb 81.39及びmAb 36.89は、ヘマグルチニンH3上に同定されたストークエピトープに対するmAb 39.29による結合と競合する(図21B)。
【0453】
競合ELISAアッセイを使用することにより、モノクローナル抗体81.39、39.18、36.89、mAb 9,及びmAb 23は、構造解析により同定されたヘマグルチニンの高度に保存されたストークエピトープに結合することが確立された。具体的には、mAb 81.39とmAb 39.18は、グループ1のH1ヘマグルチニンのストーク上でmAb 39.29の結合と競合する。更に、mAb 81.39、mAb 36.89、mAb 9,及びmAb 23は、グループ2のH3ヘマグルチニン上に同定されたストークに対するmAb 39.29による結合と競合する。予想されるように、mAb 39.18は、グループ1のインフルエンザA型分離株のみ中和するので、グループ2のヘマグルチニン上のエピトープに対するmAb 39.29の結合と競合しない。同様に、mAb 36.89、mAb 9,及びmAb 23は、グループ2のインフルエンザA型分離株を中和するだけであり、従って、グループ1のH1ヘマグルチニンに対するmAb 39.29の結合と競合しない。これらの実験からのデータは、以下の表3に要約される。
【0454】
【0455】
実施例14:健常なボランティアにおける抗A型インフルエンザウイルス抗体の安全性及び薬物動態
年齢18歳以上の健常なヒト男性及び女性の被験者におけるmAb 39.29−NWPPの第1相単回用量漸増試験が実施された。健康な成人被験者における安全性、認容性、及び薬物動態を調べるための初回投薬は、mAb39.29の単一用量(1.5mg/kg、5mg/kg、15mg/kg、又は45mg/kg)の静脈内投与によって実施された。mAb39.29は、45mg/kgの用量レベルにおいて少なくとも58日間、及び1.5mg/kgの用量レベルにおいて120日間の追跡調査期間後に全ての用量レベルで安全であり、十分に許容された。試験薬物に関連する重篤な有害事象は報告されなかった。mAb 39.29の血清濃度は、初期の急速な分布相とその後の遅い排出相を伴う二相性の体内動態を示した。mAb39.29は、線形の薬物動態(PK)を実証した。Cmaxの平均値は、1.5mg/kgの用量群において33.5μg/mL、45mg/kgの用量群において1180μg/mLの用量に比例した様式で増加した。同様に、群の平均のAUC0−無限大は、1.5mg/kg及び15mg/kgの用量群に対してそれぞれ518及び5530μg/mL*日であって、およそ用量に比例している。健常な男性及び女性被験者において利用可能なPKデータに基づいて、mAb 39.29は、約20日の平均半減期(19.3から22.2の平均範囲)を有する典型的なIgG1のヒト抗体のものと一致したPKプロファイルを有するように見えた。
【0456】
実施例15:抗A型インフルエンザウイルスヘマグルチニン抗体の第2相試験
本発明の抗A型インフルエンザウイルスヘマグルチニン抗体の第2相臨床試験は以下のように実施される。A型インフルエンザウイルス感染に罹患している入院している個人に、本発明の抗A型インフルエンザウイルスヘマグルチニン抗体を、1.5mg/kg、5mg/kg、15mg/kg、又は45mg/kgの用量で、静脈内投与によって投与される。あるいは、個人は、120mg、400mg、1200mg、又は3600mgの固定用量で抗体を投与される。個体はまた、抗A型インフルエンザウイルスヘマグルチニン抗体の投与前、投与時、又は投与後に、オセルタミビル(タミフル(登録商標))(現在の標準治療)を投与される。一般的に、後続の用量が意図されるものの、抗体の一回の投薬レジメンが使用される。本発明のA型インフルエンザウイルスヘマグルチニン抗体の投与は、インフルエンザA型感染性の減少、入院期間の短縮、集中治療室の使用の必要性の低下又は阻止、補助装置付き又は機械的換気の必要性の低下又は阻止、酸素補給用途の必要性の低下又は阻止を含む、A型インフルエンザウイルス感染の治療に有効性を示す。本発明の結果の抗A型インフルエンザウイルスヘマグルチニン抗体の投与は、呼吸機能の正常化までの時間の短縮(例えば、呼吸数の正常化までの時間の短縮、又は酸素飽和度の正常化までの時間の短縮など)、補給酸素の投与を行わないで24時間にわたって測定される場合に、正常酸素飽和度、例えば約92%以上の酸素飽和度に戻るまでの時間の短縮、又は心拍数、血圧、呼吸数、及び体温などのバイタルサインの正常化までの時間の短縮によって、A型インフルエンザウイルス感染の治療における有効性を示している。
【0457】
統計解析
統計は、JMPバージョン9.0.2ソフトウェア(SAS Institute)を用いて計算された。生存実験は、ログランク検定を用いて比較された。P値<0.05は、有意と考えられた。IC50値曲線と値がプロットされ、Graphpad Prismバージョン5.0ソフトウェアを用いて計算された。
【0458】
前述の発明は、理解を明確にする目的のために例示及び実施例によってある程度詳細に説明してきたが、説明や例は、本発明の範囲を限定するものとして解釈されるべきではない。すべての特許及び本明細書に引用される科学文献の開示は、参照によりその全体が援用される。
図1
図2
図3
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図5
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図11
図12
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図20
図21
図22A
図22B
図23A
図23B
図24A
図24B
図25A
図25B
図26A
図26B
図27A
図27B
図28A
図28B
図29A
図29B
図30A
図30B
図31A
図31B
図32A
図32B
図33A
図33B
図34A
図34B
図35A
図35B
図36A
図36B
図37A
図37B
図38A
図38B
図39A
図39B
図40A
図40B
図41A
図41B
図42A
図42B
図43A
図43B
【配列表】
[この文献には参照ファイルがあります.J-PlatPatにて入手可能です(IP Forceでは現在のところ参照ファイルは掲載していません)]