特許第6386469号(P6386469)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6386469芳香を付けた食品又は飲料製品の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6386469
(24)【登録日】2018年8月17日
(45)【発行日】2018年9月5日
(54)【発明の名称】芳香を付けた食品又は飲料製品の製造方法
(51)【国際特許分類】
   A23F 5/48 20060101AFI20180827BHJP
   A23F 3/40 20060101ALI20180827BHJP
   A23L 5/00 20160101ALI20180827BHJP
   A23L 5/20 20160101ALI20180827BHJP
【FI】
   A23F5/48
   A23F3/40
   A23L5/00 H
   A23L5/20
【請求項の数】14
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2015-544473(P2015-544473)
(86)(22)【出願日】2013年11月29日
(65)【公表番号】特表2015-535433(P2015-535433A)
(43)【公表日】2015年12月14日
(86)【国際出願番号】EP2013075060
(87)【国際公開番号】WO2014083146
(87)【国際公開日】20140605
【審査請求日】2016年11月24日
(31)【優先権主張番号】61/732,041
(32)【優先日】2012年11月30日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】599132904
【氏名又は名称】ネステク ソシエテ アノニム
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100107456
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 成人
(74)【代理人】
【識別番号】100162352
【弁理士】
【氏名又は名称】酒巻 順一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100140453
【弁理士】
【氏名又は名称】戸津 洋介
(72)【発明者】
【氏名】ウェストフォール, スコット エー.
(72)【発明者】
【氏名】ウー, ウィリアム
(72)【発明者】
【氏名】バーチ, アネット ミシェル
(72)【発明者】
【氏名】スカーラトス, アンバー クリスティン
【審査官】 田名部 拓也
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許第03991223(US,A)
【文献】 特表平09−505993(JP,A)
【文献】 特開平04−252153(JP,A)
【文献】 米国特許第04430353(US,A)
【文献】 特開昭59−169464(JP,A)
【文献】 特開2001−238604(JP,A)
【文献】 Food Chemistry ,2008年,Vol.108, No.3,pp.1133-1141
【文献】 Food Chemistry,2008年,Vol.106, No.2,pp.787-796
【文献】 AIChE Journal,2001年,Vol.47, No.8,pp.1780-1793
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23F 3/00 − 5/50
A23L 5/00
A23L 5/20
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/FSTA/WPIDS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
芳香を付けた食品又は飲料製品を製造する方法であって、
a)芳香画分を、焙煎挽きコーヒー豆又はコーヒー抽出物から水蒸気を含むガスの形態で収集するステップと、
b)前記芳香画分を油と接触させて、次いで、接触させた前記油を前記芳香画分から除去することにより、フラン類、ピロール類及び/又はチオール類を含む芳香化合物を除去するステップと、
c)前記芳香画分を凝縮させて、水性芳香含有液を生成するステップと、
d)フラン類、ピロール類及び/又はチオール類を含む芳香化合物が除去された前記水性芳香含有液を、食品又は飲料組成物と合わせるステップとを含み、
ステップc)がステップb)の前又は後で行われ
ステップb)とステップd)との間に、前記水性芳香含有液を前記油又は別の油と接触させて、次いで、接触させた油を前記水性芳香含有液から除去することにより、芳香化合物を除去するステップを含まない、方法。
【請求項2】
前記芳香を付けた食品又は飲料製品を乾燥させて、芳香を付けた乾燥食品又は乾燥飲料製品を製造するステップをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
ステップc)がステップb)の前に行われ、ステップb)で前記水性芳香含有液及び前記油を接触させるのに多孔質疎水性膜が使用される、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
ステップc)がステップb)の後に行われ、ステップb)がガス−液体吸収カラム内で行われる、請求項1または2に記載の方法。
【請求項5】
フラン類、ピロール類及び/又はチオール類を含む芳香化合物が除去された前記水性芳香含有液を、ステップd)においてコーヒー抽出物と合わせて、芳香を付けたコーヒー抽出物を生成する、請求項1〜4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
フラン類、ピロール類及び/又はチオール類を含む芳香化合物が除去された前記水性芳香含有液を、ステップd)においてクリーマー組成物と合わせて、芳香を付けたクリーマー組成物を生成する、請求項1〜4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記芳香画分が、少なくとも5重量%のロブスタコーヒー豆を含む焙煎挽きコーヒー豆から収集される、請求項5または6に記載の方法。
【請求項8】
前記コーヒー抽出物は焙煎コーヒー豆の水性抽出物であって、ステップd)において前記焙煎コーヒー豆の水性抽出物が、フラン類、ピロール類及び/又はチオール類を含む芳香化合物が除去された前記水性芳香含有液と合わせる前に、少なくとも10%の固体含有率まで濃縮されている、請求項5に記載の方法。
【請求項9】
ステップc)を芳香画分の冷却及び/又は圧縮により行うことにより、水性芳香含有液を生成する、請求項1〜8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
ステップc)の後に残留する芳香画分からのガスを1回又は複数のさらなる凝縮ステップで処理して、1つ又は複数の芳香画分を生成する、請求項1〜9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記1つ又は複数の芳香画分の少なくとも1つが、ステップd)において、フラン類、ピロール類及び/又はチオール類を含む芳香化合物が除去された前記水性芳香含有液及び前記食品又は飲料組成物と合わせられる、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
ステップd)において、フラン類、ピロール類及び/又はチオール類を含む芳香化合物が除去された前記水性芳香含有液が、5重量%未満の油を含む、請求項1〜11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
ステップb)の油が、MCTオイル又はコーヒー油である、請求項1〜12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
ステップd)の、フラン類、ピロール類及び/又はチオール類を含む芳香化合物が除去された前記水性芳香含有液及び前記食品又は飲料組成物が、
i)芳香画分を、焙煎挽きコーヒー豆又はコーヒー抽出物から水蒸気を含むガスの形態で収集するステップと、
ii)前記芳香画分を凝縮させて、水性芳香含有液を生成するステップと
を含む方法により生成した第2の芳香含有液と、さらに合わせられる、請求項1〜13のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【発明の分野】
【0001】
本発明は、芳香を付けた食品又は飲料製品を製造する方法であって、望ましくない芳香化合物が除去される方法に関する。
【背景】
【0002】
植物材料由来の芳香化合物は、多くの食品及び飲料製品にとって重要な構成要素又は原材料である。植物材料由来の芳香化合物は、食品又は飲料製品の製造に使用される植物材料中に存在し、食品又は飲料製品中に直接持ち越されることもあり、若しくは植物材料から分離回収され、原材料として食品又は飲料組成物に添加されることもある。食品及び飲料産業にとって重要な周知の芳香化合物には、例えば、コーヒー、茶、及びココア由来の芳香化合物がある。植物材料の原材料中に存在する芳香化合物は、植物材料を食品又は飲料製品中に加工処理する間に失われることがあり、例えば、揮発性芳香化合物は、熱加工処理ステップ中に失われることがある。この損失を回避するために、例えば、芳香化合物の損失につながる加工処理ステップの前に、又は最初の加工処理の間に、芳香化合物を植物材料から回収することができ、さもなければ前記芳香化合物の損失につながる加工処理ステップの後に、添加し戻すことができる。これを行うための方法は、例えば可溶性コーヒーの製造において周知である。可溶性コーヒーの製造中、コーヒー豆は例えば最大120〜180℃の高温にて水で抽出されるが、通常これは、最終的な可溶性コーヒー製品にとって重要な揮発性芳香化合物の損失につながる。これらの芳香化合物は、例えばコーヒー豆の蒸気ストリッピングによって、高温抽出の前に、コーヒー豆から回収することができ、次いで、高温抽出の後にコーヒー抽出物に添加し戻すことができる。このような方法は、例えば国際公開第01/13735号パンフレット及び国際公開第99/52378号パンフレットに開示されている。しかし、場合によっては、このような方法は、最終製品に望ましくない芳香化合物も回収することがある。例えば、焙煎コーヒー豆、特に焙煎ロブスタコーヒー豆の揮発性芳香画分は、最終製品に望ましくないアロマノートを付与し得るいくつかの芳香化合物を含有する。焙煎ロブスタコーヒー豆の芳香の揮発性画分は、例えば、「不快な」又は「ゴムのような」、「木のような」、「土のような」、「化学物質のような」又は「フエノールのような」ノートとしてしばしば特徴付けられるノートを、最終的な可溶性コーヒー製品に付与することがある。したがって、このような望ましくない化合物を、植物材料の芳香から、特にコーヒーの芳香から選択的に除去する方法が必要とされている。このような方法により、植物材料由来の芳香を含む食品及び飲料製品の芳香の改良が可能となる。例えば、このような方法は、食品及び飲料製品、例えば、焙煎ロブスタコーヒー豆由来の芳香を含む可溶性コーヒー製品の芳香を改良するために用いられ得る。このような方法により、例えば、最終製品にロブスタコーヒーの望ましくないアロマノートを付与することなく、可溶性コーヒーの製造に使用されるコーヒーブレンド中に、より高い割合のロブスタコーヒー豆を使用することが可能となる。
【0003】
したがって、本発明の目的の一つは、芳香を付けた食品及び飲料製品を製造するための方法であって、望ましくない芳香画分が植物材料由来の芳香画分から除去される方法を提供することである。詳細には、コーヒーの芳香を含む芳香を付けた食品及び飲料製品を製造するための方法であって、望ましくない芳香化合物がコーヒーの芳香から除去される方法を提供することが目的である。さらなる目的は、食品又は飲料製品、例えば焙煎ロブスタコーヒー豆由来の芳香を含む可溶性コーヒー製品を製造するための方法であって、望ましくない化合物が焙煎ロブスタコーヒー豆の芳香から除去される方法を提供することである。
【発明の概要】
【0004】
本発明者らは、植物抽出物の芳香画分を油と接触させることにより、望ましくない芳香化合物を植物抽出物から除去し得ることを見出した。したがって、本発明は、芳香を付けた食品又は飲料製品を製造する方法であって、a)芳香画分を、植物材料から水蒸気を含むガスの形態で収集するステップと、b)前記芳香画分を油と接触させて、望ましくない芳香化合物を除去するステップと、c)前記芳香画分を凝縮させて、水性芳香含有液を生成するステップと、d)望ましくない芳香化合物が除去された前記水性芳香含有液を、食品又は飲料組成物と合わせるステップとを含み、ステップc)がステップb)の前又は後で行われる方法に関する。
【発明の詳細な説明】
【0005】
本明細書において理解されるように、植物材料は、芳香化合物の回収に使用され得る任意の植物からの任意の材料である。植物材料は、例えば、植物の茎、葉、根、花、花芽、果実及び/又は種子であってもよい。適切な植物は、例えば、コーヒー(コフィア(Coffea))、例えばアラビカコーヒー(コフィア・アラビカ(Coffea arabica))、ロブスタコーヒー(コフィア・カネフォラ(Coffea canephora));茶(カメリア・シネンシス(Camellia sinensis))、チコリ(チコリウム・インティブス(Cichorium intybus));及びココア(テオブロマ・カカオ(Theobroma cacao))である。植物材料は、例えば、コーヒー豆、コーヒー抽出物、茶葉、ココア、茶抽出物、果実、及び果汁から選択されてもよい。本発明の好ましい実施形態においては、植物材料はコーヒー植物に由来し、さらに好ましい実施形態においては、植物材料は、コーヒー豆、好ましくは焙煎挽きコーヒー豆である。焙煎挽きコーヒー豆は、例えば、アラビカコーヒー豆、ロブスタコーヒー豆、又はこれらのブレンドであってもよい。好ましい実施形態において、植物材料は、好ましくは約5重量%〜100重量%のロブスタコーヒー豆、より好ましくは約15重量%〜100重量%のロブスタコーヒー豆を含む焙煎アラビカコーヒー豆及び焙煎ロブスタコーヒー豆のブレンドである。
【0006】
本発明のプロセスによれば、芳香画分は植物材料から収集され、芳香画分は、水又は水蒸気を含むガス又は液体の形態である。芳香画分は、当業者に公知の任意の適切な方法、例えば植物材料のストリッピング、又は植物材料を例えば蒸気などのガスで抽出することによって収集することができる。植物材料を任意の適切な方法で処理して所望の芳香化合物の放出を容易にしてもよく、例えば、植物材料を切断したり、粉砕したり、挽いたりしてより小さな断片にすることによって、芳香化合物が放出され得る表面を増加させてもよく、及び/又は植物材料を液体、例えば水で抽出し、芳香画分を液体抽出物から回収してもよい。植物材料又はその抽出物を加熱処理に供し、減圧して、揮発性芳香化合物の放出を容易にしてもよい。植物材料が焙煎コーヒー豆である場合、芳香は、例えば、焙煎挽きコーヒー豆の水性スラリー又は抽出物から芳香をストリッピングすることによって、及び/又は例えば蒸気を用いた焙煎挽きコーヒー豆のストリッピングによって、焙煎コーヒー豆を挽いている間にグラインダーガス(grinder gas)として収集してもよい。焙煎挽きコーヒー豆から芳香をストリッピングするための方法は、例えば国際公開第01/13735号パンフレット及び国際公開第99/52378号パンフレットにより当技術分野で周知である。
【0007】
本発明の方法によれば、水蒸気を含むガスの形態の芳香画分を凝縮させて、水性芳香含有液を得る。凝縮によって、芳香画分中の水蒸気の全て又は一部が液状になる。得られた水性液は、水と一緒に凝縮されるガス状芳香画分の芳香化合物の一部を含むことになる。凝縮は、任意の適切な方法、例えば冷却及び/又は圧縮により行うことができる。凝縮は、芳香画分を油と接触させる前及び/又は後に行うことができる。ガスから水蒸気を凝縮させる方法は、当技術分野で周知であり、ガスを圧縮機内の加圧下に置くこと及び/又はガスを熱交換器で冷却することを含み得る。
【0008】
凝縮ステップの後、水蒸気を含むガス形態の芳香画分の一部は、凝縮されずにガス状態のままの場合もある。この残留ガスを1回又は複数のさらなる凝縮ステップで処理して、1つ又は複数のさらなる芳香画分を生成してもよい。これらのさらなる芳香画分は、最初の凝縮ステップで得られる水性芳香含有液と合わせてもよく、又は他の目的に用いてもよい。
【0009】
植物材料から収集した芳香画分を油と接触させて、望ましくない芳香化合物を除去する。油との接触は、芳香画分を凝縮させる前、芳香画分がガスの形態である時に行ってもよく、又は芳香画分を凝縮させた後、芳香画分が水性芳香含有液の形態である時に行ってもよい。このように、油との接触は、油とガス状芳香性画分との接触、及び/又は油と水性芳香含有液との接触として行うことができる。芳香画分を油と接触させることによって、望ましくない化合物を含む、画分中に存在する芳香化合物の一部が油に移動するため、芳香画分から除去されることになる。植物材料が焙煎挽きコーヒー豆である場合、除去され得る望ましくない化合物は、例えば、2−(2−フリルメチル)−5−メチルフラン、2,2’−メチレンジフラン、1−ベンゾフラン、1−エチル−1h−ピロール、チオフェン、2−[(メチルスルファニル)メチル]フラン、及び/又は2−メチルフラン等の、フラン類、ピロール類及び/又はチオール類などである。コーヒーの芳香、特に焙煎ロブスタコーヒー豆由来のコーヒーの芳香中の望ましくない芳香化合物は、「不快な」又は「ゴムのような」、「木のような」、「土のような」、「化学物質のような」又は「フエノールのような」ノートなど、望ましくないアロマノートを最終的な食品又は飲料製品に付与し得ることが見出されている。
【0010】
芳香画分を油と接触させるための任意の適切な方法を使用することができ、このような方法は、当技術分野で周知である。任意の適切な油を使用することができるが、食品グレードの油が好ましい。油は、植物油又は植物油の画分、例えば、コーヒー油、ダイズ油、トウモロコシ油、サフラワー油、ヤシ油、及び/若しくは中鎖トリグリセリド(MCT)オイル、又はこれらの画分などであることが好ましい。
【0011】
液状油と液状芳香含有画分との接触として接触を行う場合、従来の溶媒抽出技術を使用してもよい。種々のカラム装置、ミキサーセトラーなどは、当技術分野で公知であり、液体間の接触領域、及び液体の分離を最適化するために適用され得る。膜を使用して油と水性液との界面を固定化することができ、液相を分離する際の乳化及び他の困難などの問題を回避することができるので、膜に基づく技術も適用され得る。本発明の好ましい実施形態においては、ステップc)がステップb)の前に行われ、且つステップb)で水性芳香含有液及び油を接触させるのに多孔質疎水性膜が使用される。これは、例えば、油が中空繊維の内側に存在し、水性液が外側に存在して、接触が膜表面で起こる、疎水性膜材料の中空繊維を用いたシステムで行ってもよい。別の実施形態においては、水性液が中空繊維の内側に存在し、油が中空繊維の外側に位置する。接触は、向流方式又は並流方式のいずれかで水性芳香含有液及び油を流すことにより、連続的に行うことができる。流体流の混合を防止するのに適した孔径を有する疎水性膜材料を使用することができる。好ましい膜材料は、約0.01〜0.05μmの平均孔径を有するポリプロピレン膜である。膜を隔ててのわずかな圧力勾配を維持して、液体流の分散を防止するために、水流を油流よりわずかに高い圧力に維持することが好ましい。膜の疎水性及び水流の膜との表面張力により、水流は、わずかな圧力がかけられた場合でも膜を透過しない。こうして2つの液体流の分散は防止される。適切なシステムは、例えば、Baudotら、(2001):Liquid−Liquid Extraction of Aroma Compounds with Hollow Fiber Contactor.AIChE Journal 47、1780−1793において開示されている。
【0012】
油との接触を、芳香画分がガスの形態である時に行う場合、ガスを油と接触させて芳香化合物を移動させるための任意の適切な方法、例えばガス−液体吸収カラム、気泡散気装置及びスプレーカラムを使用することができる。好ましい実施形態においては、ステップc)がステップb)の後に行われ、ステップb)がガス−液体吸収カラム内で行われる。
【0013】
一実施形態においては、芳香画分の一部のみを油と接触させる。残りの部分は、例えば廃棄してもよく、又は例えば、油接触の後に油と接触させた部分と合わせてもよい。芳香画分の一部のみを油と接触させ、接触させた部分と接触させていない部分とを再度合わせることによって、除去される芳香化合物の量を制御することができる。
【0014】
本発明の一実施形態において、ステップd)の望ましくない芳香化合物が除去された水性芳香含有液及び食品又は飲料組成物は、i)芳香画分を、植物材料から水蒸気を含むガスの形態で収集するステップとii)前記芳香画分を凝縮させて水性芳香含有液を生成するステップとを含む方法により生成した第2の芳香含有液とさらに合わせられる。第2の芳香含有液は、望ましくない芳香化合物が除去された水性芳香含有液と同じ植物材料に由来することが好ましい。
【0015】
芳香画分を油と接触させて望ましくない化合物を除去し、芳香画分を凝縮させる結果として、望ましくない化合物が除去された水性芳香含有液が生成される。望ましくない化合物が除去された前記水性芳香含有液を、食品又は飲料組成物と合わせて、芳香を付けた食品又は飲料製品を製造する。望ましくない化合物が除去された水性芳香含有液は、食品又は飲料組成物と合わせる場合、油を含まないことが好ましい。本発明の一実施形態において、望ましくない化合物が除去された水性芳香含有液は、5重量%未満の油、好ましくは2重量%未満又は1重量%未満の油を含む。食品又は飲料組成物は、望ましくない化合物が除去された前記水性芳香含有液の添加によって芳香を付けた食品又は飲料製品を形成するのに適した任意の組成物が使用される。例えば、食品又は飲料組成物は、例えば可溶性コーヒー抽出物などのコーヒー製品、例えば可溶性茶抽出物などの茶製品、例えばコーヒー及び/若しくは茶のクリーマーなどのクリーマー組成物、例えばココア粉末、ココア懸濁液及び/若しくはココア抽出物などのココア製品、例えばミルク、ヨーグルト、クリーム、アイスクリーム及び/若しくはチーズなどの乳製品、例えばムース若しくはプディングなどのデザート製品、並びに/又は例えばパン若しくはケーキなどの焼成製品であってもよい。
【0016】
好ましい実施形態において、植物材料は焙煎挽きコーヒー豆であり、ステップb)において、望ましくない芳香化合物が除去された水性芳香含有液をコーヒー抽出物と合わせ、芳香を付けたコーヒー抽出物を生成する。
【0017】
一実施形態において、本発明の方法は、芳香を付けた食品又は飲料製品を乾燥させて、芳香を付けた乾燥食品又は乾燥飲料製品を製造するステップをさらに含む。乾燥は、当技術分野で公知の任意の適切な方法、例えば凍結乾燥、噴霧乾燥、又はローラー乾燥によって行うことができる。芳香を付けた食品又は飲料組成物が可溶性コーヒー抽出物である場合、乾燥は噴霧乾燥又は凍結乾燥によって行われることが好ましい。
【0018】
本発明の好ましい実施形態は、芳香を付けた可溶性コーヒー製品を製造するための方法であって、
i)芳香画分を、焙煎挽きコーヒー又はその抽出物から水蒸気を含むガスの形態で収集するステップと、
ii)前記芳香画分を凝縮させて、水性芳香含有液を生成するステップと、
iii)前記芳香含有液を油と接触させて、望ましくない芳香化合物を除去するステップと、
iv)望ましくない芳香化合物が除去された前記水性芳香含有液を、可溶性コーヒー抽出物と合わせるステップとを含み、
芳香を収集する焙煎挽きコーヒーが、少なくとも5重量%のロブスタコーヒーを含む、方法である。
【0019】
本発明の別の好ましい実施形態は、芳香を付けた可溶性コーヒー製品を製造するための方法であって、
i)芳香画分を、焙煎挽きコーヒー又はその抽出物から水蒸気を含むガスの形態で収集するステップと、
ii)前記ガス状芳香画分を油と接触させて、望ましくない芳香化合物を除去するステップと、
iii)油と接触させた前記ガス状芳香画分を凝縮させて、水性芳香含有液を生成するステップと、
iv)望ましくない芳香化合物が除去された前記水性芳香含有液を、食品又は飲料組成物と合わせるステップとを含み、
芳香を収集する焙煎挽きコーヒーが、少なくとも5重量%のロブスタコーヒーを含む、方法である。
【実施例】
【0020】
実施例1
国際公開第01/13735号パンフレットに開示されている方法を用いて、水性のコーヒー芳香を、湿潤焙煎挽き100%ロブスタコーヒーからストリッピングし、凝縮させた。芳香を取り出した後、2つの生成物流(ストリッピングされた湿潤コーヒー残渣及び水性芳香)を得た。
【0021】
ストリッピングされた湿潤焙煎挽きコーヒーを、欧州特許第0826308号に開示されている方法により水で抽出して、水性コーヒー抽出物を生成した。次いで、抽出物を、遠心分離機を用いて清澄化して、不溶性沈殿物を除去し、蒸発させて、可溶性固形コーヒー約49%の濃縮物を得た。
【0022】
コーヒーから収集した水性芳香を、2つのバッチに分割した。一方が乾燥焙煎挽きコーヒー重量の4.6%に相当し、他方が乾燥焙煎挽きコーヒー重量の8.4%に相当した。コーヒーの芳香の4.6%部分を、一連の2つの芳香接触器のシェル側に供給した。MCTオイルも、向流方式で、膜接触器の管腔側に、水性芳香供給量対油供給量が250:1の比率で供給した。芳香接触器は、0.3の平均孔径を有する約10,000本の多孔質ポリプロピレン管の束から構成されていた。水性芳香とMCTオイルとの接触領域は、約2.8mであった。コーヒーの芳香の接触器内での滞留時間は、約40秒間であった。コーヒー油の接触器内での滞留時間は、25分間であった。水性のコーヒーの芳香を、接触器を通して供給する時、水性のコーヒーの芳香に対して約0.5バールの背圧を維持した。
【0023】
処理の後、両方の芳香流を濃縮固形コーヒーに添加し、噴霧乾燥して、標準的な可溶性コーヒー加工処理技術を用いて可溶性コーヒー粉末を生成した。生成された可溶性コーヒーを、訓練された6人の官能検査員が味見をし、膜接触器で処理していない芳香を有する粉末よりも、コーヒーらしさ(Coffeeness)が強く、ロブスタの特徴(木及びゴムのようなノート)が弱いことが見出された。加えて、水性芳香の試料を、芳香油接触器における処理の前後に分析した。選択芳香化合物の結果を下記の表に要約する。
【表1】
【0024】
実施例2
水性のコーヒーの芳香を、湿潤焙煎挽きロブスタコーヒーからストリッピングし、凝縮させた。コーヒーを平均サイズ2.0〜2.2mmに挽き、湯で焙煎挽き重量の30%に湿潤させた。コーヒーを、約6〜8分間蒸気を用いてストリッピングした。蒸気をコーヒーベッドに供給し、コーヒーベッドを通過させた後収集した。次いで、蒸気及び水性のコーヒーの芳香を凝縮させ、約10℃に冷やした。凝縮の後、凝縮できないガスを、温度を20℃未満に維持しながら、液封圧縮機を用いて3.1baraまで圧縮した。この時点で、凝縮できない蒸気流は、ステンレス鋼構造化充填物を充填した吸収カラムを通過した。使用した吸収液は、コーヒー油であった。油カラムは、油が凍結しないのに十分な温度に維持した。いくらかの水性芳香を含有する蒸気及び芳香の豊かなコーヒー油を、さらなる加工処理のために吸収カラムから取り出した。
【0025】
ストリッピングされた湿潤焙煎挽きコーヒーを、欧州特許第0826308号に開示されている方法により一連のセル上で抽出して、乾燥焙煎挽きコーヒー重量の約57%に相当する可溶性固体を得た。次いで、抽出物を清澄化し、続いて蒸発させて、可溶性固形コーヒーの濃縮物を得た。
【0026】
最終的な芳香流を濃縮固形コーヒーに添加し、噴霧乾燥して、標準的な可溶性コーヒー加工処理技術を用いて可溶性コーヒー粉末を生成した。