【課題を解決するための手段】
【0009】
これらの目的は、特に経腸栄養用の液体を収容する容器、好ましくはミルク容器、例えばミルク瓶のキャップであって、該キャップは、前記容器、特にミルク容器に該キャップを締結するのに用いる保持具を備え、また、該キャップの貫通開口の形態で構成され、雄コネクタ要素に接続することを意図された雌コネクタ要素を備え、少なくとも該雌コネクタ要素は、少なくとも一部に抗菌表面を有する、キャップによって達成される。雌コネクタ要素は管を含み、この管は、少なくとも管の内側の部分に抗菌表面を有する。液体は、特に、経腸栄養用の液体、例えばミルクである。
【0010】
本発明に係るそのようなキャップの場合、雄コネクタ要素はシリンジの先端部とすることができる。本発明に係るキャップの場合、シリンジの先端部又は何らかの他の接続部材は、接続されるミルク容器とシリンジとの間に確実な無菌の接続部を形成するために、雌コネクタ要素に収容することができる。これにより、液体がキャップを通して導かれることを可能にする流体密接続部が提供されることが好ましい。
【0011】
キャップは、シリンジに取外し可能に接続することができる。本発明の枠組み内では、抗菌表面とは、抗菌物質を含むか又は抗菌物質からなる表面を意味し、抗菌物質は、特に、微生物が増殖する能力若しくは微生物の効力を低減するか、又は微生物を死滅させるか若しくは不活性化させるものと理解される。
【0012】
ここでは、広口瓶(wideneck-bottle)アダプター、細口瓶(narrowneck-bottle)アダプター、及び/又は差込み式接続部となる保持具を提供することができる。この保持具は、複数の可能な接続手段を含むことが好ましい。
【0013】
本発明に係る広口瓶アダプターを備えるキャップの場合、広口瓶アダプターは、直径2cm〜10cm、好ましくは直径3cm〜8cm、特に好ましくは直径4cm〜6cmとして提供することができる。
【0014】
広口瓶アダプターが保持具として使用される場合、市販のミルク瓶、特に哺乳瓶をミルク容器として用いることも可能である。これには、別個の貯留を必要としないという利点がある。可変式の多目的接続部を種々のミルク容器とともに使用することが可能である。
【0015】
本発明の更なる一形態によると、流体密及び/又は取外し可能に雄コネクタ要素に接続可能なキャップを提供することができる。凹部の内側側面は、全周が及び/又は表面領域にわたって、少なくとも部分的に適合する雄コネクタ要素と接続することができることが好ましい。ここでは、凹部の内側側面は、少なくとも部分的に適合するシリンジの先端部に形状嵌合式に(in a form-fitting manner)接続可能であるように提供することができることが特に好ましい。また、凹部の内側側面は、全周に及び表面領域にわたって、少なくとも部分的に適合するシリンジの先端部に好ましくは形状嵌合式に接続されるように提供することができる。
【0016】
接続部のシールにより、結果として母乳が失われるリスクが低減するとともに、母乳が汚染されるリスクが低減する。取外し可能なシリンジの先端部は、複数回の使用を可能にする。
【0017】
また、本発明によると、雌コネクタ要素は、少なくとも一部が円錐状であり、少なくとも部分的に円錐状の雄コネクタ要素が、雌コネクタ要素に収容されることが可能になるように提供することができる。雌コネクタ要素の凹部は円錐状であり、円錐状の雄コネクタ要素を内部に収容することができることが好ましい。また、本発明によると、雄コネクタ要素は、雌コネクタ要素若しくは凹部に収容されるか、又は雌コネクタ要素若しくは凹部内に締結される、好ましくは螺合されるように提供することができる。この円錐形状により、円錐状の雄コネクタ要素を凹部に形状嵌合式に差し込むことができるため、接続部のより良好なシールがもたらされる。
【0018】
1つの形態において、雌コネクタ要素及び/又は雄コネクタ要素は、経腸用途及び/又は経胃用途向けの雌コネクタ要素及び/又は雄コネクタ要素の形態で設計される。第1の変形形態では、雌コネクタ要素及び/又は雄コネクタ要素は、PGロック雄コネクタ要素及び/又はPGロック雌コネクタ要素の形態で設計される。上述のPGロック接続システムは、当業者には既知であり、また、ISO作業グループに対する原案ISO/CD80369−3「経腸用途及び経胃用途(Enteral and gastric applications)」として提出されており、そこで閲覧が可能である。第2の変形形態では、雌コネクタ要素及び/又は雄コネクタ要素は、ENロック雌コネクタ要素及び/又はENロック雄コネクタ要素の形態で設計される。このようなENロック接続システムは、当業者には既知であり、また、特に国際公開第2010/115598号に記載されている。さらに、ENロック接続システムは、ISO作業グループに対する原案TC210/JWG4、PG3「経腸コネクタ(enteral connectors)」として提出されており、閲覧が可能である。上述の特許出願の内容は、引用することにより全体が本特許出願の一部をなす。
【0019】
本発明の1つの形態において、抗菌表面には、抗菌コーティング及び/又は抗菌材料が施される。抗菌材料は、例えば完全に又は部分的に雌コネクタ要素の材料に埋め込まれる。抗菌表面は、凹部又は開口部の表面の抗菌コーティングとなるように提供することができる。コーティングは、重要な表面のみが抗菌活性物質を含む必要があり、全ての材料が抗菌活性物質を含む必要はないことを意味する。
【0020】
1つの実施形態において、抗菌表面は、銀、好ましくは特に平均直径が1μm未満である銀粒子を含むように提供される。
【0021】
例えば銀コーティング又はナノ銀コーティングを有するそのような抗菌表面は、長期の抗菌作用をもたらし、それにより殺菌剤の使用を低減することができる。これにより、患者の免疫系に対する負担を軽減し、患者がアレルギー反応に悩まされることを防ぐ。
【0022】
本発明の1つの実施形態によると、凹部は、雄ねじを有する雄コネクタ要素を締結する雌ねじを含むように提供される。雌ねじ及び/又は雄ねじは、一条のねじ山(single thread turn)によって提供することができる。
【0023】
また、本発明に係るキャップは、このキャップが流体密通気チャネルを有し、流体密通気チャネルは、好ましくは通気弁及び/又は通気フィルター、特にバクテリアフィルターを備えるという点で特徴付けることができる。通気弁及び/又は通気フィルターは、少なくとも或る特定の領域に疎水性表面を有することが好ましい。この手段は、可撓性の壁を一切有しないミルク瓶を使用することも可能にする。均圧は通気チャネルを介して起こる。疎水性表面は、キャップをミルク容器に付けた状態で冷蔵庫内に保管しても、冷蔵庫から取り出した後、空気(湿気)から水分が凝縮することによりフィルターが使用不可能になるか若しくは悪影響を受けるリスク、又は通気が妨害され、この場合、シリンジ内へと通過することのできる母乳がより少なくなり、ともすれば全くなくなるリスクを伴わないことを可能にする。
【0024】
本発明の更なる一形態は、キャップ、特に雌コネクタ要素が、雄コネクタ要素を締結する締結機構(fastening device)を備えるように意図する(provide for)ことができる。締結機構は、回転ロック要素、バヨネット式閉鎖部、又はねじの形態で構成されることが好ましい。締結機構は、相補的なコネクタ要素に解放可能に接続することができる。これにより、シリンジとミルク容器との間の好適な接続が可能になり、ひいては、上記接続が不所望に緩んで患者の健康を危険にさらすことがない。
【0025】
本発明の更なる一実施形態によると、雌コネクタ要素は、キャップの中心を通って及び/又はキャップの頂面を越えて延びることが好ましい。雌コネクタ要素は、閉鎖部によって覆うことができることが好ましい。凹部を有する開口は、特にキャップの中心を通って延びる管に形成されるように提供することができる。少なくとも雄コネクタ要素の導入側において、管は、キャップの頂面を越えて突出し、特に好ましくは閉鎖部によって覆うことができるか又は覆われていることが好ましい。
【0026】
管は、円筒状凹部とシリンジの先端部との間の接触面が、特に広い表面領域を有し、したがって安定してシールされるように構成することができることを意味する。したがって、「蓋部品」は、キャップの頂面が特に厚い構成である必要がなく、つまり、雄コネクタ要素とキャップとの間の接続部が十分に安定するように、薄い構成(厚さ4mm未満)とすることができる。
【0027】
キャップは、開口の領域、特に雌コネクタ要素において、逆止弁、好ましくはダックビル弁を有するように提供することもできる。これにより、ミルク容器内への流体の逆流を防止し、ひいては貴重な母乳が汚染されることを防止する。
【0028】
本発明はまた、そのようなキャップを備える経腸栄養用の液体容器、特にミルク瓶を包含し、この場合、キャップは、液体容器、特にミルク瓶に取外し可能に接続されるか、又は、液体容器、特にミルク瓶に固定され、好ましくは液体容器、特にミルク瓶とともに一部品として構成されている。
【0029】
本発明は、そのようなキャップを含むセットを更に包含する。このセットは、経腸栄養用の液体容器、特にミルク瓶を含む。加えてここでは、このセットは、雄コネクタ要素を有するシリンジを含むように提供することができる。加えて、このセットは、管又はホースの形態で設計されるとともに、キャップの雌コネクタ要素に接続することができる第1の端部と、雄コネクタ要素に接続する更なる雌コネクタ要素を有する第2の端部とを有する延長部を含むように提供することもできる。このセットは、管又は可撓性ホースを含むことができ、管又は可撓性ホースは、第1の端部が、開口に接続することができるか又は接続しており、他方の端部が、雄コネクタ要素に対する凹部を有する。この他方の端部には閉鎖部が構成されており、この閉鎖部により、ホース又は管は、覆うことができるか又は覆われていることが好ましい。このことは、不適切に位置決めされた(ill-positioned)シリンジでさえ、シリンジが困難を伴ってしか、ともすれば全く到達することができないミルク容器にキャップを介して接続することができることを意味する。
【0030】
本発明は、雄コネクタ要素を収容する凹部を有する単純なアダプター(キャップ)により、母乳を未熟児の経腸栄養に用いる場合にさえ市販のミルク瓶を使用することが可能になるという発見に基づいている。このことは、本発明に係るキャップの補助により、吸い口を用いて乳児に栄養を与えるのに使用するのと同じミルク瓶を使用して、未熟児の経腸栄養法を行うこともできることを意味する。抗菌表面、例えばコーティングにより、ここでは母乳の汚染がないことを確実にすることが可能になる。
【0031】
このように、本発明に係るミルク瓶キャップは、安全機能を提供し、バクテリア又は他の細菌による汚染が起こる可能性がない。加えて、シリンジとミルク容器との間の確実な接続が確保され、したがって、母乳が一切損失される可能性がない。ENロック接続システムに基づくコネクタ要素(雌ねじを有する雌コネクタ要素としての円錐状凹部、及び雄ねじを有する雄コネクタ要素としてのシリンジの円錐状の先端部)は、ルアー又はルアーロックシステム(この場合、雌コネクタ要素が雄ねじを有し、雄コネクタ要素が雌ねじを有する1つの管によって包囲される)に基づく静脈内処置用のシリンジの先端部に適合することを防止する。したがって、混同する機会がなくなり、更には誤った方向に接続するリスクが排除される。このシール接続は、母乳を一切損失しない貫通路を保証する。
【0032】
キャップは銀でコートすることができ、このコーティングは、バクテリア又は微生物に対して比較的長期間にわたって有効である。キャップは、ミルク瓶アダプター又はミルク瓶アタッチメントとして用いることができる。本発明によると、キャップは、バクテリアフィルターが統合されている通気弁を備えることができる。これにより、可撓性ミルク容器(袋等)又は非可撓性ミルク容器(容器又は哺乳瓶に適合するシリンジ等)から液体を引き出すことが可能になる。通気弁は、空気を流入させて、液体が流出することを防止する。
【0033】
統合されているダックビル弁は、キャップを通る一方向の流れを可能にすることができ、ここでは、(ミルク容器から出る)順流が可能であり、逆流による汚染が防止される。
【0034】
本発明に係るミルク容器は、時折、場合によってはキャップ付きで冷蔵庫に保管されることから、フィルターが結露により塞がれるか又は悪影響を受けることを防止するために、少なくともフィルターを疎水性材料から製造することが可能である。
【0035】
本発明に係るミルク容器の中身が漏れることを防止するために、上記容器が開口を下方向にして用いられる場合、本発明は、特に(ミルク容器に向いている)キャップの下部にキャップの自動閉鎖システムを提供することができる。
【0036】
開口の領域、特に凹部に抗菌コーティング(例えば銀又はナノ銀によるコーティング)を用いると、バクテリア及び真菌等の微生物を死滅させることが可能になる。加えて、それにより、殺菌剤の使用を低減することが可能になる。殺菌剤は、患者、特に乳幼児にアレルギー反応を引き起こす可能性があるため、抗菌コーティングの使用により、患者が更なる負担を受ける状況を回避することができる。
【0037】
キャップの内面の冠状キャップシート及びフィルム切断鋸歯は、必須ではないが可能である。キャップは、本質的にプラスチック射出成形によって製造することができる。複数の個別の部品を集めて、例えば接着する必要はない。
【0038】
キャップは、ミルク瓶と雄コネクタ要素を有するシリンジとの間に接続部を提供し、また、臨床分野及び在宅医療分野の双方において用いることができる。
【0039】
本発明の例示的な実施形態は、概略的に示されている7つの図を参照して以下で説明するが、本発明を一切限定しない。