特許第6386474号(P6386474)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6386474排ガス浄化装置およびパティキュレートフィルタ
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6386474
(24)【登録日】2018年8月17日
(45)【発行日】2018年9月5日
(54)【発明の名称】排ガス浄化装置およびパティキュレートフィルタ
(51)【国際特許分類】
   F01N 3/022 20060101AFI20180827BHJP
   F01N 3/28 20060101ALI20180827BHJP
   B01J 35/04 20060101ALI20180827BHJP
   B01D 53/94 20060101ALI20180827BHJP
   B01D 46/00 20060101ALI20180827BHJP
【FI】
   F01N3/022 Z
   F01N3/022 C
   F01N3/28 301P
   B01J35/04 301A
   B01J35/04 301E
   B01D53/94 222
   B01D53/94 241
   B01D53/94 245
   B01D53/94 280
   B01D46/00 302
【請求項の数】11
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2015-551503(P2015-551503)
(86)(22)【出願日】2014年12月1日
(86)【国際出願番号】JP2014081785
(87)【国際公開番号】WO2015083671
(87)【国際公開日】20150611
【審査請求日】2017年11月17日
(31)【優先権主張番号】特願2013-249170(P2013-249170)
(32)【優先日】2013年12月2日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000104607
【氏名又は名称】株式会社キャタラー
(74)【代理人】
【識別番号】100117606
【弁理士】
【氏名又は名称】安部 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100136423
【弁理士】
【氏名又は名称】大井 道子
(72)【発明者】
【氏名】尾上 亮太
(72)【発明者】
【氏名】坂神 新吾
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 毅
(72)【発明者】
【氏名】大橋 達也
【審査官】 堀内 亮吾
(56)【参考文献】
【文献】 特開2003−148127(JP,A)
【文献】 特表2010−510429(JP,A)
【文献】 特開2011−169156(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F01N 3/01、 3/02− 3/038
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃機関の排気通路に配置され、該内燃機関から排出される排ガス中の粒子状物質を捕集するパティキュレートフィルタが設けられた排ガス浄化装置であって、
前記パティキュレートフィルタは、
排ガス流入側の端部のみが開口した入側セルと、該入側セルに隣接し排ガス流出側の端部のみが開口した出側セルと、前記入側セルと前記出側セルとを仕切る多孔質の隔壁とを備えたウォールフロー部と、
排ガス流入側の端部および排ガス流出側の端部の双方が開口し、前記フィルタを軸方向に沿って貫通する貫通セルを備えたストレートフロー部と
を備え、
ここで前記フィルタの軸方向に直交する断面において、
該断面の外周領域と中央領域とに、前記貫通セルをそれぞれ複数備え、
該断面の外周領域に含まれる貫通セルの断面積は、該断面の中央領域に含まれる貫通セルの断面積よりも大きい、排ガス浄化装置。
【請求項2】
前記フィルタを通過する排ガスの総量を100%としたときに、
前記ストレートフロー部を通過する排ガスの量が0.1%〜10%となるように設定されている、請求項1に記載の排ガス浄化装置。
【請求項3】
前記ウォールフロー部は、複数の前記入側セルと複数の前記出側セルとが格子状に交互に配置されており、
前記貫通セルは、前記格子の対角線方向に沿った一の入側セルとそれに隣接する一の入側セルとの間および一の出側セルとそれに隣接する一の出側セルとの間に配置されている、請求項1または2に記載の排ガス浄化装置。
【請求項4】
前記貫通セルは、前記フィルタの軸方向に直交する断面が四角形であり、
前記入側セルおよび前記出側セルは、前記フィルタの軸方向に直交する断面が八角形である、請求項1〜3の何れか一つに記載の排ガス浄化装置。
【請求項5】
前記フィルタの軸方向に直交する断面は略円形であり、該断面における半径をRとしたときに、
前記中央領域は、前記断面の中心点から前記半径Rの少なくとも1/2Rまでの領域として規定され、
前記外周領域は、前記断面の外縁から前記半径Rの少なくとも1/5Rまでの領域として規定される、請求項1〜4の何れか一つに記載の排ガス浄化装置。
【請求項6】
前記中央領域を通過する排ガスの総量を100%としたときに、
前記中央領域のストレートフロー部を通過する排ガスの量が10%以下となるように設定されている、請求項1〜5の何れか一つに記載の排ガス浄化装置。
【請求項7】
前記外周領域を通過する排ガスの総量を100%としたときに、
前記外周領域のストレートフロー部を通過する排ガスの量が1%〜15%となるように設定されている、請求項1〜6の何れか一つに記載の排ガス浄化装置。
【請求項8】
前記外周領域に含まれる各貫通セルの断面積は略同じであり、かつ、前記中央領域に含まれる貫通セルの断面積よりも一様に大きい、請求項1〜7の何れか一つに記載の排ガス浄化装置。
【請求項9】
前記フィルタは、前記断面の中心点から外縁に向けて断面積が徐々に大きい貫通セルが形成されている、請求項1〜8の何れか一つに記載の排ガス浄化装置。
【請求項10】
前記内燃機関は、ガソリンエンジンである、請求項1〜9の何れか一つに記載の排ガス浄化装置。
【請求項11】
内燃機関の排気通路に配置され、該内燃機関から排出される排ガス中の粒子状物質を捕集するパティキュレートフィルタであって、
排ガス流入側の端部のみが開口した入側セルと、該入側セルに隣接し排ガス流出側の端部のみが開口した出側セルと、前記入側セルと前記出側セルとを仕切る多孔質の隔壁とを備えたウォールフロー部と、
排ガス流入側の端部および排ガス流出側の端部の双方が開口し、前記フィルタを軸方向に沿って貫通する貫通セルを備えたストレートフロー部と
を備え、
ここで前記フィルタの軸方向に直交する断面において、
該断面の外周領域と中央領域とに、前記貫通セルをそれぞれ複数備え、
該断面の外周領域に含まれる貫通セルの断面積は、該断面の中央領域に含まれる貫通セルの断面積よりも大きい、パティキュレートフィルタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内燃機関の排気通路に配置される排ガス浄化装置に関する。詳しくは、内燃機関から排出される排ガス中の粒子状物質を捕集するパティキュレートフィルタが設けられた排ガス浄化装置に関する。
なお、本国際出願は2013年12月2日に出願された日本国特許出願第2013−249170号に基づく優先権を主張しており、その出願の全内容は本明細書中に参照として組み入れられている。
【背景技術】
【0002】
一般に、内燃機関から排出される排ガスには、炭素を主成分とする粒子状物質(PM:Particulate Matter)、不燃成分からなるアッシュなどが含まれ、大気汚染の原因となることが知られている。そのため、粒子状物質の排出量について、排ガスに含まれる炭化水素(HC)、一酸化炭素(CO)、窒素酸化物(NOx)などの有害成分と共に年々規制が強化されている。そこで、これらの粒子状物質を排ガスから捕集して除去するための技術が提案されている。
【0003】
例えば、上記粒子状物質を捕集するためのディーゼルパティキュレートフィルタ(Diesel Particulate Filter:DPF)がディーゼルエンジンの排気通路内に設けられている。また、ガソリンエンジンは、ディーゼルエンジンよりは少ないものの一定量の粒子状物質を排ガスとともに排出するため、ガソリンエンジンにおいてもガソリンパティキュレートフィルタ(Gasoline Particulate Filter:GPF)が排気通路内に装着される場合がある。かかるパティキュレートフィルタとしては、基材が多孔質からなる多数のセルから構成され、多数のセルの入口と出口を交互に閉塞した、ウォールフロー型と呼ばれる構造のものが知られている。ウォールフロー型パティキュレートフィルタでは、セル入口から流入した排ガスは、仕切られた多孔質のセル隔壁を通過し、セル出口へと排出される。そして、排ガスが多孔質のセル隔壁を通過する間に、粒子状物質が隔壁表面や隔壁内部の細孔内に捕集されて除去される。この種の従来技術としては特許文献1が挙げられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003−210992号公報
【発明の概要】
【0005】
ところで、上述したウォールフロー型パティキュレートフィルタにおいては、セル隔壁に捕集できる粒子状物質の量には限界があり、これを超える量の粒子状物質がフィルタに堆積すると、フィルタが目詰まりを起こして圧力損失(以下、圧損)が大きくなる。これによって、燃料消費効率(燃費)の悪化やエンジンの故障などの弊害が生じるおそれがある。このため、例えばDPFでは、所定量の粒子状物質がフィルタに堆積すると、高温の排ガスを流して粒子状物質を燃焼させることで、フィルタを再生することが行われている。また、GPFでは、例えばフューエルカット時に粒子状物質を燃焼させることで、フィルタを再生することが行われている。
【0006】
しかしながら、例えば制御不良により適切な再生処理がなされなかった場合、あるいはエンジン始動時やアイドリングなどの排気温度が比較的低い運転状態が続いた場合などには、PMの異常堆積が起こり、フィルタが目詰まりを起こす結果、圧損が上昇するという問題があった。燃費の悪化やエンジンの故障などの弊害を防止すべく、圧損の上昇は出来るだけ小さく抑えたい。
【0007】
本発明はかかる点に鑑みてなされたものであり、その主な目的は、かかるパティキュレートフィルタならびに該パティキュレートフィルタを備えた排ガス浄化装置において、フィルタが目詰まりを起こしても圧損が大きくなることを回避し得る新規な構造を提供することである。
【0008】
本発明によって提供される排ガス浄化装置は、内燃機関の排気通路に配置され、該内燃機関から排出される排ガス中の粒子状物質を捕集するパティキュレートフィルタが設けられた排ガス浄化装置である。このパティキュレートフィルタは、典型的には白金属(PGM)からなる触媒部の下流側に設けられている。前記パティキュレートフィルタは、排ガス流入側の端部のみが開口した入側セルと、該入側セルに隣接し排ガス流出側の端部のみが開口した出側セルと、前記入側セルと前記出側セルとを仕切る多孔質の隔壁とを備えたウォールフロー部と、排ガス流入側の端部および排ガス流出側の端部の双方が開口し、前記フィルタを軸方向に沿って貫通する貫通セルを備えたストレートフロー部とを備えている。
【0009】
かかる構成によると、排ガスが導入されたウォールフロー部で粒子状物質(PM)の堆積が進行すると、ストレートフロー部に排ガスが優先的に流れるので、パティキュレートフィルタ全体として圧損の上昇を小さく抑えることができる。また、ウォールフロー部が完全に目詰まりした場合でも、ストレートフロー部では排ガスが流れるので、圧損の最大値を小さくすることができる。これにより、燃費の悪化やエンジンの故障などの弊害を防止することができる。したがって、より高性能な排ガス浄化装置を提供することができる。
【0010】
ここで開示される排ガス浄化装置の好ましい一態様では、前記フィルタを通過する排ガスの総量を100(体積)%としたときに、前記ストレートフロー部を通過する排ガスの量が0.1%〜10%(好ましくは1%以上10%以下、より好ましくは3%以上8%以下)となるように設定されている。換言すれば、前記ウォールフロー部を通過する排ガスの量が90%〜99.9%(好ましくは90%以上99%以下、より好ましくは92%以上97%以下)となるように設定されている。かかる構成によると、ストレートフロー部を通過する排ガスの量と、ウォールフロー部を通過する排ガスの量との比率が適切なバランスにあるので、ストレートフロー部を設けたことによるフィルタ性能向上効果(例えば、PMの堆積による圧損の上昇を抑える効果)を適切に発揮しつつ、ウォールフロー部で適量のPMを捕集することができる。したがって、より良好なフィルタ性能を確実に発揮することができる。
【0011】
ここで開示される排ガス浄化装置の好ましい一態様では、前記ウォールフロー部は、複数の前記入側セルと複数の前記出側セルとが格子状に交互に配置されている。そして、前記貫通セルは、前記入側セルおよび前記出側セルが形成する格子の対角線方向に沿った一の入側セルとそれに隣接する一の入側セルとの間および一の出側セルとそれに隣接する一の出側セルとの間に配置されている。かかる構成によると、ウォールフロー部から溢れ出た排ガスが貫通セルに速やかに流入するため、圧損の上昇をより良く抑えることができる。即ち、本発明の効果をより高いレベルで発揮させることができる。
【0012】
ここで開示される排ガス浄化装置の好ましい一態様では、前記貫通セルは、前記フィルタの軸方向に直交する断面が四角形であり、前記入側セルおよび前記出側セルは、前記フィルタの軸方向に直交する断面が八角形である。かかる構成によると、フィルタの限られたセル搭載スペースにおいて効率的なセル配置を実現できる。排ガス浄化装置の小型化にも寄与し得る。
【0013】
ここで開示される排ガス浄化装置の好ましい一態様では、前記フィルタの軸方向に直交する断面において、該断面の外周領域に含まれる貫通セルの断面積は、該断面の中央領域に含まれる貫通セルの断面積よりも大きい。かかる構成によると、内燃機関の高負荷運転領域において、フィルタ外周領域のストレートフロー部に流れる排ガスの流量が多くなる。そのため、高負荷運転領域での圧損の上昇を効果的に抑えることができる。
【0014】
ここで開示される排ガス浄化装置の好ましい一態様では、前記フィルタの軸方向に直交する断面は略円形であり、該断面における半径をRとしたときに、前記中央領域は、前記断面の中心点から前記半径Rの少なくとも1/2Rまでの領域として規定され、前記外周領域は、前記断面の外縁から前記半径Rの少なくとも1/5Rまでの領域として規定される。このように中央領域と外周領域とを規定することで、PMの堆積による圧損の上昇をより良く抑えることができる。
【0015】
好ましい一態様では、前記中央領域を通過する排ガスの総量を100(体積)%としたときに、前記中央領域のストレートフロー部を通過する排ガスの量が10%以下となるように設定されている。かかる構成によると、フィルタの中央領域において、ウォールフロー部を通過する排ガスの量と、ストレートフロー部を通過する排ガスの量との比率が適切なバランスにあるので、上述した効果をより良く発揮させることができる。
【0016】
また好ましい一態様では、前記外周領域を通過する排ガスの総量を100(体積)%としたときに、前記外周領域のストレートフロー部を通過する排ガスの量が1%〜15%となるように設定されている。かかる構成によると、フィルタの外周領域において、ウォールフロー部を通過する排ガスの量と、ストレートフロー部を通過する排ガスの量との比率が適切なバランスにあるので、PMの捕集効率を低下させることなく、圧損の上昇を抑えることができる。
【0017】
ここで開示される排ガス浄化装置の好ましい一態様では、前記外周領域に含まれる各貫通セルの断面積は略同じであり、かつ、前記中央領域に含まれる貫通セルの断面積よりも一様に大きい。このような排ガス浄化装置を用いた場合、圧損の上昇を簡便に抑えることができる。
【0018】
ここで開示される排ガス浄化装置の好ましい一態様では、前記フィルタは、前記断面の中心点から外縁に向けて断面積が徐々に大きい貫通セルが形成されている。このような排ガス浄化装置を用いた場合、フィルタ内で、断面の中心点から外縁に向かうにつれて、貫通セル(ストレートフロー部)を通過する排ガスの量をよりきめ細かく設定することができる。これにより、圧損の上昇をより確実に抑えることができる。
【0019】
また本発明によると、上記排ガス浄化装置に好ましく用いられるパティキュレートフィルタが提供される。即ち、内燃機関の排気通路に配置され、該内燃機関から排出される排ガス中の粒子状物質を捕集するパティキュレートフィルタである。このパティキュレートフィルタは、排ガス流入側の端部のみが開口した入側セルと、該入側セルに隣接し排ガス流出側の端部のみが開口した出側セルと、前記入側セルと前記出側セルとを仕切る多孔質の隔壁とを備えたウォールフロー部と、排ガス流入側の端部および排ガス流出側の端部の双方が開口し、前記フィルタを軸方向に貫通する貫通セルを備えたストレートフロー部とを備える。かかるパティキュレートフィルタを用いれば、ウォールフロー部が目詰まりした場合でも、燃費の悪化やエンジンの故障などの弊害を防止できる、高性能な排ガス浄化装置を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1図1は、一実施形態に係る排ガス浄化装置を模式的に示す図である。
図2図2は、一実施形態に係るフィルタを模式的に示す斜視図である。
図3図3は、一実施形態に係るフィルタの端面の要部を模式的に示す図である。
図4図4は、図3のIV−IV断面を模式的に示す図である。
図5図5は、PM堆積時間と圧損との関係を示すグラフである。
図6図6は、一実施形態に係る排ガス浄化装置のフィルタを模式的に示す斜視図である。
図7図7は、一実施形態に係るフィルタの端面の一部を模式的に示す図である。
図8図8は、一実施形態に係るフィルタの端面の一部を模式的に示す図である。
図9図9は、PM堆積時間と圧損との関係を示すグラフである。
図10図10は、一実施形態に係るフィルタを模式的に示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の好適な実施形態を図面に基づいて説明する。なお、本明細書において特に言及している事項以外の事柄であって本発明の実施に必要な事柄(例えばパティキュレートフィルタの自動車における配置に関するような一般的事項)は、当該分野における従来技術に基づく当業者の設計事項として把握され得る。本発明は、本明細書に開示されている内容と当該分野における技術常識とに基づいて実施することができる。
【0022】
先ず、本発明の一実施形態に係る排ガス浄化装置の構成について図1を参照しつつ説明する。ここで開示される排ガス浄化装置1は、該内燃機関の排気系に設けられている。図1は、内燃機関2と、該内燃機関2の排気系に設けられた排ガス浄化装置1を模式的に示す図である。
【0023】
本実施形態に係る内燃機関(エンジン)には、酸素と燃料ガスとを含む混合気が供給される。内燃機関は、この混合気を燃焼させ、燃焼エネルギーを力学的エネルギーに変換する。このときに燃焼された混合気は排ガスとなって排気系に排出される。図1に示す構成の内燃機関2は、自動車のガソリンエンジンを主体として構成されているが、ガソリンエンジン以外のエンジン(例えばディーゼルエンジン)を用いることもできる。
【0024】
上記エンジン2の排気系について説明する。上記エンジン2を排気系に連通させる排気ポート(図示せず)には、エキゾーストマニホールド3が接続されている。エキゾーストマニホールド3は、排ガスが流通する排気管4に接続されている。エキゾーストマニホールド3と排気管4とにより本実施形態の排気通路が形成されている。
【0025】
ここで開示される排ガス浄化装置1は、上記エンジン2の排気系に設けられている。この排ガス浄化装置1は、触媒部5とフィルタ部6とECU7を備え、上記排出される排ガスに含まれる有害成分(例えば、一酸化炭素(CO)、炭化水素(HC)、窒素酸化物(NO))を浄化するとともに、排ガスに含まれる粒子状物質(PM)を捕集する。
【0026】
ECU7は、エンジン2と排ガス浄化装置1との間の制御を行うユニットであり、一般的な制御装置と同様にデジタルコンピュータその他の電子機器を構成要素として含んでいる。典型的には、ECU7には入力ポートが設けられており、エンジン2や排ガス浄化装置1の各部位に設置されているセンサ(例えば圧力センサ8)と電気的に接続されている。これによって、各々のセンサで検知した情報が、入力ポートを経て電気信号としてECU7に伝達される。また、ECU7には出力ポートも設けられている。ECU7は、該出力ポートを介して、エンジン2および排ガス浄化装置1の各部位に接続されており、制御信号を送信することによって各部材の稼働を制御している。
【0027】
触媒部5は、排気ガス中に含まれる三元成分(NOx、HC、CO)を浄化可能なものとして構成されており、上記エンジン2に連通する排気管4に設けられている。具体的には図1に示すように、排気管4の下流側に設けられている。触媒部5の種類は特に限定されない。触媒部5は、例えば、白金(Pt)、パラジウム(Pd)、ロジウム(R)等の貴金属が担持された触媒であってもよい。なお、フィルタ部6の下流側の排気管4に下流側触媒部をさらに配置してもよい。かかる触媒部5の具体的な構成は本発明を特徴付けるものではないため、ここでは詳細な説明は省略する。
【0028】
フィルタ部6は、触媒部5の下流側に設けられている。フィルタ部6は、排ガス中に含まれる粒子状物質(以下、単に「PM」と称する)を捕集して除去可能なガソリンパティキュレートフィルタ(GPF)を備えている。以下、本実施形態に係るパティキュレートフィルタを詳細に説明する。
【0029】
図2は、パティキュレートフィルタ100の斜視図である。図2に示すように、パティキュレートフィルタ100は、フィルタ基材10と、該フィルタ基材10の内部に設けられ、規則的に配列したセル22、24とを備えている。ここで開示されるパティキュレートフィルタを構成する上記フィルタ基材10としては、従来のこの種の用途に用いられる種々の素材及び形態のものが使用可能である。例えば、コージェライト、炭化ケイ素(SiC)等のセラミックスまたは合金(ステンレス等)から形成されたハニカム構造を備えるハニカム基材を好適に採用することができる。一例として外形が円筒形状(本実施形態)であるハニカム基材が例示される。ただし、基材全体の外形については、円筒形に代えて、楕円筒形、多角筒形を採用してもよい。
【0030】
図3はパティキュレートフィルタ100の排ガス流入側の端面の一部を拡大した模式図であり、図4は、図3のIV−IV断面図である。図3に示すように、パティキュレートフィルタ100は、ウォールフロー部20とストレートフロー部30とを有している。
【0031】
<ウォールフロー部>
ウォールフロー部20は、図3および図4に示すように、フィルタ基材10の両端面において隣接するセル22、24が互いに反対側の端面を目封じされた部位であり、入側セル22と、出側セル24と、隔壁26とを有している。この実施形態では、複数の入側セル22と複数の出側セル24とが格子状に交互に配置されている。
【0032】
入側セル22は、排ガス流入側の端部のみが開口しており、出側セル24は、入側セル22に隣接し排ガス流出側の端部のみが開口している。この実施形態では、入側セル22は、排ガス流出側の端部が封止部22aで目封じされており、出側セル24は、排ガス流入側の端部が封止部24aで目封じされている。入側セル22および出側セル24は、フィルタ100に供給される排ガスの流量や成分を考慮して適当な形状および大きさに設定するとよい。例えば、入側セル22および出側セル24の形状は、正方形、平行四辺形、長方形、台形などの矩形、三角形、その他の多角形(例えば、六角形、八角形)、円形など種々の幾何学形状であってよい。この実施形態では、入側セル22および出側セル24は、フィルタ基材10の軸方向に直交する断面が八角形の八角セルである。また、上記断面において、入側セル22および出側セル24は、それぞれ同じ大きさ(断面積)のセルで形成されている。
【0033】
隣接する入側セル22と出側セル24との間には、隔壁26が形成されている。この隔壁26によって入側セル22と出側セル24とが仕切られている。隔壁26は、排ガスが通過可能な多孔質構造である。隔壁26の気孔率としては特に限定されないが、概ね50%〜70%にすることが適当であり、好ましくは55%〜65%である。隔壁26の気孔率が小さすぎると、PMがすすり抜けてしまうことがあり、一方、隔壁26の気孔率が大きすぎると、フィルタ100の機械的強度が低下傾向になるため、好ましくない。隔壁26の厚みとしては特に限定されないが、概ね200μm〜800μm程度であるとよい。このような隔壁の厚みの範囲内であると、PMの捕集効率を損なうことなく圧損の上昇を抑制する効果が得られうる。
【0034】
<ストレートフロー部>
ストレートフロー部30は、図3に示すように、フィルタ基材10の両端面において貫通セル32が目封じされていない部位であり、貫通セル32を備えている。この実施形態では、複数の貫通セル32が、入側セル22と出側セル24が形成する格子の対角線方向に沿った一の入側セル22とそれに隣接する一の入側セル22との間および一の出側セル24とそれに隣接する一の出側セル24との間に配置されている。
【0035】
貫通セル32は、フィルタ100を軸方向に沿って貫通している。換言すると、貫通セル32は、前述した入側セル22および出側セル24とは異なり、排ガス流入側の端部および排ガス流出側の端部の双方がいずれも開口している。貫通セル32は、フィルタ100に供給される排ガスの流量や成分を考慮して適当な形状および大きさに設定するとよい。例えば、貫通セル32の形状は、正方形、平行四辺形、長方形、台形などの矩形、三角形、その他の多角形(例えば、六角形、八角形)、円形など種々の幾何学形状であってよい。貫通セル32は、入側セル22および出側セル24と同じ形状であってもよく異なる形状であってもよい。この実施形態では、貫通セル32は、フィルタ100の軸方向に直交する断面が四角形の四角セルである。また、この実施形態では、上記断面において、貫通セル32の四角形の一辺が入側セル22および出側セル24の八角形の一辺と平行かつ対向するように配置されている。
【0036】
また、この実施形態では、上記断面において、貫通セル32は、入側セル22および出側セル24よりも断面積が小さいセルで形成されている。例えば、入側セル22および出側セル24のフィルタの軸方向に直交する断面の面積S1と、貫通セル32のフィルタの軸方向に直交する断面の面積S2との比(S2/S1)が、概ね1/10以下であることが適当であるが、3/100以下が好ましく、1/50以下が特に好ましい。ここで開示される貫通セル32、入側セル22および出側セル24としては、上記面積比(S2/S1)が、1/300≦(S2/S1)≦1/10を満足するものが好ましく、1/200≦(S2/S1)≦3/100を満足するものがより好ましく、1/100≦(S2/S1)≦1/50を満足するものが特に好ましい。この実施形態では、入側セル22および出側セル24は、断面積S1が何れも3.2mm程度である。一方、貫通セル32は、断面積S2が0.05mm程度である。このように、この実施形態では、入側セル22および出側セル24に比べて、貫通セル32の断面積を一様に小さくしている。なお、後述するように、貫通セル32、入側セル22および出側セル24は、その内壁表面に触媒コート層(図示せず)をさらに備えていてもよい。各セルが触媒コート層を備える場合、所定量コートされた状態での触媒コート層との合算において、上記面積比(S2/S1)を満足すればよい。
【0037】
上述したフィルタ100を製造するには、例えばコージェライト、炭化ケイ素(SiC)等のセラミックス粉末を主成分とするスラリーを調製し、それを押出し成形などで成形して焼成するとよい。その際、入側セル22の排ガス流出側の端部を封止部22aで目封じし、出側セル24の排ガス流入側の端部を封止部24aで目封じするとよい。多孔質の隔壁26は、上記スラリー中にカーボン粉末、澱粉、樹脂粉末などの可燃物粉末を混合しておき、該可燃物粉末を焼失させることにより形成するとよい。その際、可燃物粉末の粒径や添加量を変えることで隔壁26の気孔率を任意に制御することができる。
【0038】
この排ガス浄化装置は、図4に示すように、フィルタ100のウォールフロー部20に設けられた入側セル22から排ガスが流入する。入側セル22から流入した排ガスは、多孔質の隔壁26を通過して出側セル24に到達する。図4においては、入側セル22から流入した排ガスが隔壁26を通過して出側セル24に到達するルートを矢印で示している。このとき、隔壁26は多孔質構造を有しているので、排ガスがこの隔壁26を通過する間に、PMが隔壁26表面や隔壁26内部の細孔内に捕集される。隔壁26を通過して出側セル24に到達した排ガスは、排ガス流出側の開口からフィルタの外部へと排出される。
【0039】
この排ガス浄化装置は、フィルタ100のウォールフロー部20に設けられた入側セル22から排ガスが連続して流入する。上記のようにウォールフロー部20の隔壁26でPMの捕集が進むと、隔壁26表面や隔壁26内部の細孔内にPMが堆積する。そして、PMがウォールフロー部20に堆積すると、ウォールフロー部20の排気抵抗が上昇するので、ウォールフロー部20を通過する排ガスの量が減り、ウォールフロー部20から溢れ出た排ガスがストレートフロー部30に流入する。このように、この排ガス浄化装置では、ウォールフロー部20でPMの堆積が進行すると、ウォールフロー部20を通過する排ガスの量が減り、ストレートフロー部30に排ガスが優先的に流れるようになる。
【0040】
この場合、PMが堆積したウォールフロー部20では圧損が大きくなるものの、目封じされていないストレートフロー部30では圧損が小さく抑えられる。このため、フィルタ100全体として圧損の上昇を小さく抑えることができる。また、ウォールフロー部20が完全に目詰まりした場合でも、ストレートフロー部30では排ガスが流れるので、圧損の最大値を小さくすることができる。これにより、燃費の悪化やエンジンの故障などの弊害を防止することができる。したがって、より高性能な排ガス浄化装置を提供することができる。
【0041】
この場合、例えば平均流速3〜20m/minの条件において、フィルタ100を通過する排ガスの総量を100(体積)%としたときに、ストレートフロー部30を通過する排ガスの量が0.1%〜10%(さらには2%〜5%、特には3±1%)となるように設定されていることが好ましい。このような排ガスの流量比の範囲内であると、ストレートフロー部30を通過する排ガスの量と、ウォールフロー部20を通過する排ガスの量との比率が適切なバランスにあるので、ストレートフロー部30を設けたことによるフィルタ性能向上効果(例えば、PMの堆積による圧損の上昇を抑える効果)を適切に発揮しつつ、ウォールフロー部20で適量のPMを捕集することができる。したがって、より良好なフィルタ性能を確実に発揮することができる。
【0042】
また、本排ガス浄化装置1では、ウォールフロー部20は、複数の入側セル22と複数の出側セル24とが格子状に交互に配置されている。そして、貫通セル32は、前記格子の対角線方向に沿った一の入側セル22とそれに隣接する一の入側セル22との間および一の出側セル24とそれに隣接する一の出側セル24との間に配置されている。このように構成すれば、ウォールフロー部20から溢れ出た排ガスが貫通セル32に速やかに流入するため、圧損の上昇をより効果的に抑えることができる。
【0043】
なお、ウォールフロー部20およびストレートフロー部30は、触媒コート層(図示せず)をさらに備えていてもよい。例えば、ウォールフロー部20は、隔壁26表面および/または隔壁26内部の細孔に触媒コート層を備えることができる。ストレートフロー部30は、貫通セル32の内壁表面に形成された触媒コート層をさらに備えることができる。この場合、触媒コート層は、多孔質の担体と、該担体に担持された貴金属触媒とを含んでいるとよい。このような構成であると、ウォールフロー部20およびストレートフロー部30を通過する排ガス中の有害成分(例えば、一酸化炭素(CO)、炭化水素(HC)、NOx等)を適切に浄化することができる。
【0044】
上記触媒コート層に用いられる担体は、アルカリ金属元素(典型的にはアルカリ金属酸化物)、アルカリ土類金属元素(典型的にはアルカリ土類金属酸化物)、希土類元素(典型的には希土類酸化物)、Zr(典型的にはジルコニア)、Si(典型的にはシリカ)、Ti(典型的にはチタニア)およびAl(典型的にはアルミナ)などから選択される1種または2種以上の元素(典型的には酸化物)を含み得る。これら成分を含む担体を用いることにより、機械強度の増加、耐久性(熱安定性)の向上、触媒のシンタリング抑制、および触媒の被毒防止のうちの少なくとも一つ(好ましくは全部)を実現し得る。アルカリ土類金属元素としては、マグネシウム(Mg)、カルシウム(Ca)、ストロンチウム(Sr)、バリウム(Ba)、等が例示される。希土類金属元素としては、ランタン(La)、スカンジウム(Sc)、イットリウム(Y)、セリウム(Ce)、プラセオジム(Pr)、ネオジム(Nd)、サマリウム(Sm)、イッテルビウム(Yb)、等が例示される。例えば、アルミナ(Al)、セリア(CeO)、ジルコニア(ZrO)、チタニア(TiO)、シリカ(SiO)等の酸化物の一種または二種以上を好ましく用いることができる。
【0045】
上記触媒コート層に用いられる貴金属触媒は、白金属元素の中から選択される1種または2種以上の元素を含み得る。これら成分を含む貴金属触媒を用いることにより、ウォールフロー部20およびストレートフロー部30を通過する排ガス中の有害成分(例えば一酸化炭素(CO)、炭化水素(HC)、NOx等)をより確実に浄化することができる。好ましくは、パラジウム(Pd)または白金(Pt)と、ロジウム(Rh)とを併用するとよい。PdまたはPtと、Rhとを併用することによって、排ガス中の有害成分を一度に効率よく浄化することができる。貴金属触媒の担持量は特に限定されないが、フィルタの体積1L当たり0.5g〜20g程度(好ましくは1g〜10g)であることが好ましい。貴金属触媒の担持量が少なすぎると、十分な触媒活性が得られない場合があり、貴金属触媒の担持量が多すぎると、貴金属触媒を担持させることによる効果が鈍化することに加えて、コストアップの要因となるため好ましくない。
【0046】
触媒コート層の成形量は特に制限されないが、例えば、フィルタの体積1L当たり5g〜500g程度(好ましくは10g〜200g)であることが好ましい。フィルタの体積1L当たりの触媒コート層の量が少なすぎる場合は、触媒コート層としての機能が弱く、担持されている貴金属触媒の粒成長を招く虞がある。また、触媒コート層の量が多すぎると、ウォールフロー部20およびストレートフロー部30を排ガスが通過する際の圧損の上昇を招くおそれがある。
【0047】
触媒コート層をフィルタに担持する方法としては、例えば、触媒成分を分散させたスラリーに、フィルタ基材10を浸漬するとよい。スラリーをフィルタ基材10に含浸させた後、乾燥および焼成して、隔壁26や貫通セル32の内壁に触媒成分を固定担持するといった方法を用いることができる。
【0048】
また、触媒コート層は、フィルタ基材10の表面に近い方を下層とし相対的に遠い方を上層とする上下層を有する積層構造に形成されていてもよい。この場合、例えば、一方の層にPdまたはPtを、他方の層にRhをそれぞれ分離して担持させるとよい。このことにより、RhがPdまたはPtと合金化することによる触媒活性の低下を抑制するという効果が得られうる。二つの層に加えて他の層を有する三層以上の積層構造であってもよい。
【0049】
本発明者は、かかる排ガス浄化装置1について、図3に示すストレートフロー部30が設けられているフィルタ(実施例1)と、ストレートフロー部30が設けられていないフィルタ(比較例1)とを用意して、それぞれ同じ条件で排ガスを流し、PM堆積時間(Hr)と圧損(kPa)を測定した。具体的には、各例の排ガス浄化装置をガソリンエンジンの排気系に取り付け、定常運転を行い、排ガスを流通させた。フィルタの前後には圧力センサを取り付けた。そして、フィルタにPMを堆積させつつ、圧損を測定した。ここでは二つの圧力センサの測定値の差を圧損とした。結果を図5に示す。図5に示すように、ストレートフロー部30が設けられているフィルタを用いた排ガス浄化装置(実施例1)は、ストレートフロー部30が設けられていないフィルタを用いた排ガス浄化装置(比較例1)に比べて、PM堆積後の圧損が低くなっていた。この結果から、フィルタ100にストレートフロー部30を設けることにより、PM堆積後の圧損の上昇が抑えられることが確認された。
【0050】
以上、本発明の一実施形態に係る排ガス浄化装置1を説明したが、本発明に係る排ガス浄化装置は上記実施形態に限定されない。
【0051】
例えば、上述した実施形態では、フィルタの軸方向に直交する断面において、ストレートフロー部30に設けられた貫通セル32の断面積が一様に同じである。ストレートフロー部30に設けられた貫通セル32の断面積は、かかる形態に限定されない。例えば、図6に示すフィルタ200のように、フィルタ200の外周領域Bに含まれる貫通セルの断面積は、中央領域Aに含まれる貫通セルの断面積よりも大きくてもよい。
【0052】
例えば、図6に示す例では、フィルタ200の軸方向に直交する断面は略円形である。この場合、フィルタ200の該断面における半径をRとしたときに、例えば、中央領域Aは、フィルタ200の断面の中心点Cから半径Rの少なくとも1/2R(好ましくは2/3R、例えば3/4R、多くとも4/5R)までの領域として規定されるとよい。また、外周領域Bは、フィルタ200の断面の外縁Dから半径Rの少なくとも1/5R(好ましくは1/4R、例えば1/3R、多くとも1/2R)までの領域として規定されるとよい。この実施形態では、中央領域Aは、フィルタ200の断面の中心点Cから半径Rの4/5Rまでの領域として規定されている。また、外周領域Bは、フィルタ200の断面の外縁Dから半径Rの1/5Rまでの領域として規定されている。
【0053】
図7は、中央領域Aにおける排ガス流入側の端面の一部を示している。図8は、外周領域Bにおける排ガス流入側の端面の一部を示している。図7に示すように、中央領域Aに含まれる複数の貫通セル32Aは、それぞれ同じ断面積の四角セルで形成されている。また、図8に示すように、外周領域Bに含まれる複数の貫通セル32Bは、それぞれ同じ断面積の四角セルで形成されている。
【0054】
図7および図8に示すように、外周領域Bに含まれる貫通セル32Bは、中央領域Aに含まれる貫通セル32Aよりも断面積が大きい。例えば、中央領域Aに含まれる貫通セル32Aの断面積S3と、外周領域Bに含まれる貫通セル32Bの断面積S4との比(S3/S4)が、概ね2/3以下であることが適当であるが、1/2以下が好ましく、1/3以下が特に好ましい。ここで開示される貫通セル32A、32Bとしては、上記面積比(S3/S4)が、1/10≦(S3/S4)≦2/3を満足するものが好ましく、1/5≦(S3/S4)≦1/2を満足するものがさらに好ましく、1/4≦(S3/S4)≦1/3を満足するものが特に好ましい。また、外周領域Bに含まれる貫通セル32Bの断面積S4は、中央領域Aに含まれる貫通セル32Aの断面積S3よりも0.01mm以上大きいことが好ましく、0.03mm以上大きいことがさらに好ましい。ここに開示される技術は、例えば、外周領域Bに含まれる貫通セル32Bの断面積S4が中央領域Aに含まれる貫通セル32Aの断面積S3よりも0.05mmmm以上大きい態様で好ましく実施され得る。この実施形態では、中央領域Aに含まれる複数の貫通セル32Aは、何れも断面積S3が0.25mm程度である。一方、外周領域Bに含まれる複数の貫通セル32Bは、何れも断面積S4が0.30mm程度である。このように、この実施形態では、中央領域Aに含まれる貫通セル32Aに比べて、外周領域Bに含まれる貫通セル32Bの断面積を一様に大きくしている。なお、前述したように、貫通セル32A、32Bは、その内壁表面に触媒コート層をさらに備えていてもよい。各セルが触媒コート層を備える場合、所定量コートされた状態での触媒コート層との合算において、上記面積比(S3/S4)を満足すればよい。
【0055】
この実施形態では、図7および図8に示すように、外周領域Bに含まれる入側セル22Bおよび出側セル24Bの断面積は、中央領域Aに含まれる入側セル22Aおよび出側セル24Aの断面積よりも小さい。例えば、中央領域Aに含まれる入側セル22Aおよび出側セル24Aの断面積S5と、外周領域Bに含まれる入側セル22Bおよび出側セル24Bの断面積S6との比(S5/S6)が、概ね20/19以上であることが適当であるが、15/14以上が好ましく、10/9以上(例えば32/27以上)が特に好ましい。ここで開示される入側セル22A、22Bおよび出側セル24A、24Bとしては、上記面積比(S5/S6)が、20/19≦(S5/S6)≦2を満足するものが好ましく15/14≦(S5/S6)≦3/2を満足するものがさらに好ましく、10/9≦(S/S)≦4/3を満足するものが特に好ましい。また、中央領域Aに含まれる入側セル22Aおよび出側セル24Aの断面積S5は、外周領域Bに含まれる入側セル22Bおよび出側セル24Bの断面積S6よりも0.1mm以上大きいことが好ましく、0.3mm以上大きいことがさらに好ましい。ここに開示される技術は、例えば、中央領域Aに含まれる入側セル22Aおよび出側セル24Aの断面積S5が外周領域Bに含まれる入側セル22Bおよび出側セル24Bの断面積S6よりも0.5mm以上大きい態様で好ましく実施され得る。この実施形態では、中央領域Aに含まれる複数の入側セル22Aおよび出側セル24Aは、何れも断面積S5が3.2mm程度である。一方、外周領域Bに含まれる複数の入側セル22Bおよび出側セル24Bは、何れも断面積S6が2.7mm程度である。
【0056】
ここで開示される好ましい一態様では、中央領域Aにおいて、入側セル22Aおよび出側セル24Aの断面積S5と、貫通セル32Aの断面積S3との比(S5/S3)が、概ね6以上であることが適当であるが、10以上が好ましく、12以上が特に好ましい。中央領域Aに含まれる入側セル22A、出側セル24Aおよび貫通セル32Aとしては、上記面積比(S5/S3)が、6≦(S5/S3)≦20を満足するものが好ましく10≦(S5/S3)≦18を満足するものがさらに好ましく、12≦(S5/S3)≦15を満足するものが特に好ましい。また、中央領域Aに含まれる入側セル22Aおよび出側セル24Aの断面積S5は、中央領域Aに含まれる貫通セル32Aの断面積S3よりも2mm以上大きいことが好ましく、2.5mm以上大きいことがさらに好ましい。ここに開示される技術は、例えば、中央領域Aに含まれる入側セル22Aおよび出側セル24Aの断面積S5が中央領域Aに含まれる貫通セル32Aの断面積S3よりも2.9mm以上大きい態様で好ましく実施され得る。
【0057】
ここで開示される好ましい一態様では、外周領域Bにおいて、入側セル22Bおよび出側セル24Bの断面積S6と、貫通セル32Bの断面積S4との比(S6/S4)が、概ね5以上であることが適当であるが、6以上が好ましく、9以上が特に好ましい。外周領域Bに含まれる入側セル22B、出側セル24Bおよび貫通セル32Bとしては、上記面積比(S6/S4)が、5≦(S/S)≦20を満足するものが好ましく6≦(S6/S4)≦15を満足するものがさらに好ましく、9≦(S6/S4)≦12を満足するものが特に好ましい。また、外周領域Bに含まれる入側セル22Bおよび出側セル24Bの断面積S6は、外周領域Bに含まれる貫通セル32Bの断面積S4よりも1.5mm以上大きいことが好ましく、2mm以上大きいことがさらに好ましい。ここに開示される技術は、例えば、外周領域Bに含まれる入側セル22Bおよび出側セル24Bの断面積S6が外周領域Bに含まれる貫通セル32Bの断面積S4よりも2.4mm以上大きい態様で好ましく実施され得る。


【0058】
ここで、エンジンの高負荷運転領域(例えば2.0Lエンジンで吸入空気量が20g/sec以上の場合)では、排ガスの流量が多いため、フィルタ200全体に排ガスが流れる傾向がある。一方、エンジンの低負荷運転領域(例えば2.0Lエンジンで吸入空気量が20g/sec未満の場合)では、排ガスの流量が少ないため、フィルタ200の中央領域Aに排ガスが集中する傾向がある。この実施形態では、外周領域Bに含まれる貫通セル32Bの断面積は、中央領域Aに含まれる貫通セル32Aの断面積よりも大きい。そのため、フィルタ200の外周領域Bでは、中央領域Aに比べて、貫通セル32B(ストレートフロー部30B)に排ガスが流れやすくなる。かかるフィルタ200を用いた場合、エンジンの高負荷運転領域において、外周領域Bのストレートフロー部30Bに流れる排ガスの流量が多くなる。そのため、特にエンジンの高負荷運転領域において、圧損の上昇を効果的に抑えることができる。
【0059】
この場合、例えば平均流速15〜30m/minの条件において、中央領域Aを通過する排ガスの総量を100(体積)%としたときに、中央領域Aのストレートフロー部30Aを通過する排ガスの量が10%以下(さらには2%〜5%、特には3±1%)となるように設定されていることが好ましい。換言すれば、PMが堆積する前の状態において、中央領域Aを流れる排ガスの総量の90%以上(さらには95%〜98%、特には97±1%)がウォールフロー部20Aに流れるように設定されていることが好ましい。このような排ガスの流量比の範囲内であると、上述した効果がより高いレベルで発揮され得る。
【0060】
また、例えば平均流速15〜30m/minの条件において、外周領域Bを通過する排ガスの総量を100%としたときに、外周領域Bのストレートフロー部30Bを通過する排ガスの量が1%〜15%(さらには3%〜10%、特には5±1%)となるように設定されていることが好ましい。換言すれば、PMが堆積する前の状態において、外周領域Bを流れる排ガスの総量の85%〜99%(さらには90%〜97%、特には95±1%)がウォールフロー部20Bに流れるように設定されていることが好ましい。このような排ガスの流量比の範囲内であると、PMの捕集効率を低下させることなく、圧損の上昇を抑えることができる。
【0061】
図7および図8に示した実施形態では、中央領域Aに含まれる入側セル22Aおよび出側セル24Aの断面積S5は、3.2mmとした。中央領域Aに含まれる入側セル22Aおよび出側セル24Aの断面積S5は、これに限定されない。例えば、中央領域Aに含まれる入側セル22Aおよび出側セル24Aの断面積S5は、凡そ9mm以下(例えば3mm以上9mm以下)に設定され得る。
また、上述した実施形態では、外周領域Bに含まれる入側セル22Bおよび出側セル24Bの断面積S6は、2.7mmとした。外周領域Bに含まれる入側セル22Bおよび出側セル24Bの断面積S6は、これに限定されない。例えば、外周領域Bに含まれる入側セル22Bおよび出側セル24Bの断面積S6は、凡そ8.6mm以下(例えば2.8mm以上8.6mm以下)に設定され得る。
また、上述した実施形態では、中央領域Aに含まれる貫通セル32Aの断面積S3は、0.25mmとした。中央領域Aに含まれる貫通セル32Aの断面積S3は、これに限定されない。例えば、中央領域Aに含まれる貫通セル32Aの断面積S3は、凡そ1.5mm以下(例えば0.1mm以上1.5mm以下)に設定され得る。
また、上述した実施形態では、外周領域Bに含まれる貫通セル32Bの断面積S4は、0.3mmとした。外周領域Bに含まれる貫通セル32Bの断面積S4は、中央領域Aに含まれる貫通セル32Aの断面積S3よりも大きければよく、これに限定されない。例えば、外周領域Bに含まれる貫通セル32Bの断面積S4は、凡そ1.8mm以下(例えば0.11mm以上1.8mm以下)に設定され得る。
このような各セル22A、24A、22B、24B、32A、32Bの断面積S3〜S6の範囲内であると、上述した効果がより良く発揮され得る。
【0062】
本発明者は、かかる排ガス浄化装置について、図6図8に示すように中央領域Aの貫通セル32Aに比べて外周領域Bの貫通セル32Bの断面積を大きくしたフィルタ(実施例2)と、両領域の貫通セル32A、32Bを同じ大きさにしたフィルタ(実施例3)とを用意して、それぞれ同じ条件で排ガスを流し、PM堆積時間(Hr)と圧損(kPa)を測定した。具体的には、各例の排ガス浄化装置をガソリンエンジンの排気系に取り付け、定常運転を行い、排ガスを流通させた。フィルタの前後には圧力センサを取り付けた。そして、フィルタにPMを堆積させつつ、圧損を測定した。ここでは二つの圧力センサの測定値の差を圧損とした。結果を図9に示す。図9に示すように、中央領域Aの貫通セル32Aに比べて外周領域Bの貫通セル32Bの断面積を大きくしたフィルタを用いた排ガス浄化装置(実施例2)は、両領域の貫通セル32A、32Bを同じ大きさにしたフィルタを用いた排ガス浄化装置(実施例3)に比べて、PM堆積後の圧損がさらに低くなっていた。この結果から、中央領域Aの貫通セル32Aに比べて外周領域Bの貫通セル32Bの断面積を大きくすることにより、PM堆積後の圧損の上昇がより良く抑えられることが確認された。
【0063】
なお、図6図7および図8に示した例では、外周領域Bに含まれる貫通セル32Bの断面積が、中央領域Aに含まれる貫通セル32Aの断面積よりも一様に大きい。フィルタに形成される貫通セル32A、32Bの断面積は、かかる形態に限定されない。例えば、図10に示すフィルタ300のように、断面の中心点Cから外縁Dに向けて徐々に(段階的に)断面積の大きい貫通セルが形成されていてもよい。
【0064】
図10に示す例では、中央領域Aは、フィルタ300の断面の中心点Cから半径Rの1/2Rまでの領域として規定されている。また、外周領域Bは、フィルタ300の断面の外縁Dから半径Rの1/5Rまでの領域として規定されている。そして、外周領域Bと中央領域Aとを除く領域が中間領域Eとして規定されている。この場合、中央領域Aでは最も断面積が小さい貫通セルが形成されているとよい。また、中間領域Eでは中央領域Aに形成された貫通セルよりも断面積が大きい貫通セルが形成されているとよい。さらに、外周領域Bでは最も断面積が大きい貫通セルが形成されているとよい。このように、図10に示すフィルタ300では、断面の中心点Cから外縁Dに向けて段階的に断面積が大きい貫通セルが形成されている。
【0065】
かかるフィルタ300を用いた場合、フィルタ300内で、フィルタ300の断面の中心点Cから外縁Dに向かうにつれて、貫通セル(ストレートフロー部)を通過する排ガスの量をよりきめ細かく設定することができる。これにより、圧損の上昇をより確実に抑えることができる。また、この場合でも、中央領域A、中間領域Eおよび外周領域Bの貫通セルの断面積の大きさを適切に設定することによって、PMの捕集効率を損なくことなく、圧損の上昇を抑えることができる。
【0066】
なお、図10に示すフィルタ300では、フィルタ300の断面の中心点Cから外縁Dに向けて貫通セルを3段階の断面積の大きさに分けているが、かかる形態に限定されない。例えば、フィルタの断面の中心点Cから外縁Dにかけて複数列の貫通セルが形成されている場合、複数列の貫通セルを断面の中心点Cから外縁Dに向けて列毎に徐々に断面積を大きくしてもよい。
【0067】
また、他の形態として、フィルタの中央領域Aおよび中間領域Eの貫通セル(ストレートフロー部)は省略しても構わない。つまり、フィルタの外周領域Bにのみ、目封止されていない貫通セル(ストレートフロー部)を設けることができる。この場合でも、外周領域Bの貫通セルの断面積の大きさを適切に設定することによって、PMの捕集効率を損なくことなく、圧損の上昇を抑えることができる。
【0068】
以上、排ガス浄化装置1、特にパティキュレートフィルタについて種々の改変例を例示したが、排ガス浄化装置1およびパティキュレートフィルタの構造は、上述した何れの実施形態にも限定されない。また、排ガス浄化装置1の各部材、部位の形状や構造についても変更してもよい。この排ガス浄化装置1は、例えば、ガソリンエンジンなど、排気温度が比較的高い排ガスに含まれるPMを捕集する装置として特に好適である。ただし、本発明に係る排ガス浄化装置1は、ガソリンエンジンの排ガス中のPMを捕集する用途に限らず、他のエンジン(例えばディーゼルエンジン)から排出された排ガス中のPMを捕集する種々の用途にて用いることができる。
【産業上の利用可能性】
【0069】
本発明によれば、フィルタの圧損の上昇を抑制し得る排ガス浄化装置を提供することができる。
図1
図2
図3
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図7
図8
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図10