特許第6386495号(P6386495)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6386495農業用資材、食品包装材料及び化粧料・洗浄剤用容器
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6386495
(24)【登録日】2018年8月17日
(45)【発行日】2018年9月5日
(54)【発明の名称】農業用資材、食品包装材料及び化粧料・洗浄剤用容器
(51)【国際特許分類】
   A01G 13/02 20060101AFI20180827BHJP
   A01G 9/12 20060101ALI20180827BHJP
   B32B 27/20 20060101ALI20180827BHJP
   B65D 81/28 20060101ALI20180827BHJP
   C08K 3/26 20060101ALI20180827BHJP
   C08L 101/00 20060101ALI20180827BHJP
【FI】
   A01G13/02 D
   A01G13/02 101C
   A01G9/12 D
   B32B27/20 Z
   B65D81/28 A
   B65D81/28 C
   C08K3/26
   C08L101/00
【請求項の数】8
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2016-120571(P2016-120571)
(22)【出願日】2016年6月17日
(65)【公開番号】特開2017-221160(P2017-221160A)
(43)【公開日】2017年12月21日
【審査請求日】2016年11月29日
【審判番号】不服2017-15160(P2017-15160/J1)
【審判請求日】2017年10月11日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】312016595
【氏名又は名称】株式会社アースクリエイト
(74)【代理人】
【識別番号】100168583
【弁理士】
【氏名又は名称】前井 宏之
(72)【発明者】
【氏名】梁瀬 泰孝
(72)【発明者】
【氏名】西宮 祥行
【合議体】
【審判長】 小野 忠悦
【審判官】 住田 秀弘
【審判官】 西田 秀彦
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭63−132049(JP,A)
【文献】 特開2014−31212(JP,A)
【文献】 特開2000−154073(JP,A)
【文献】 特開2006−291509(JP,A)
【文献】 特開2001−115350(JP,A)
【文献】 特開2014−183806(JP,A)
【文献】 特開平10−225980(JP,A)
【文献】 特開2003−128085(JP,A)
【文献】 特開2000−15730(JP,A)
【文献】 特開2006−42656(JP,A)
【文献】 特開昭57−125233(JP,A)
【文献】 特開平3−136837(JP,A)
【文献】 特開平11−277623(JP,A)
【文献】 特開2005−295934(JP,A)
【文献】 特開2009−144287(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01G 9/12
B65D 67/00- 79/02
B65D 81/18- 81/30
B65D 81/38
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
両方の最外層が無機充填剤及び熱可塑性樹脂を含み、前記両方の最外層の間に位置する中間層が無機充填剤を含まない多層積層体であり、
全体として無機充填剤を50重量%以上70重量%未満含み、
無機充填剤は、純度97重量%以上の炭酸カルシウムであり、
フィルム・シート又はこれを切断したひもであることを特徴とする農業用資材包装袋ではない農業用資材。
【請求項2】
請求項1記載のフィルム・シートを切断したひもを複数本組み合わせてロープ状としたものである農業用資材。
【請求項3】
フィルム・シートである請求項1の農業用資材を貼りあわせて袋状の形状としたものであることを特徴とする果実保管用袋。
【請求項4】
フィルム・シートである請求項1記載の農業用資材からなることを特徴とする植物栽培用土壌フィルム・シート。
【請求項5】
フィルム・シートを切断したひもである請求項1記載の農業用資材又は請求項2記載の農業用資材からなる、植物を直立させるために使用する誘引ひも。
【請求項6】
フィルム・シートを切断したひもである請求項1記載の農業用資材又は請求項2記載の農業用資材からなる、植物を支柱又は誘引ひもに括りつけるために使用する結束ひも。
【請求項7】
両方の最外層が無機充填剤及び熱可塑性樹脂を含み、前記両方の最外層の間に位置する中間層が無機充填剤を含まない多層積層体であり、
全体として無機充填剤を50重量%以上70重量%未満含み、
無機充填剤は、純度97重量%以上の炭酸カルシウムであり、
フィルム・シート又はこれを切断したひもであることを特徴とする食品包装材料。
【請求項8】
両方の最外層が無機充填剤及び熱可塑性樹脂を含み、前記両方の最外層の間に位置する中間層が無機充填剤を含まない多層積層体であり、
全体として無機充填剤を50重量%以上70重量%未満含み、
無機充填剤は純度97重量%以上の炭酸カルシウムであり、
フィルム・シート形状を有するものを使用した化粧料・洗浄剤用容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、農業用資材、食品包装材料及び化粧料・洗浄剤用容器に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、農業用資材として多くの樹脂製のフィルム・シート、ひも等が使用されている(例えば、特許文献1等)。
しかしながら、このような樹脂製の農業用フィルム・シートは、それぞれの用途分野に対応して種々の問題を生じることがあり、改善が求められている。特に、樹脂と植物の茎・葉・果実等が直接触れることで生じるカビの害が問題視されている。また、イチゴ等の栽培においてはナメクジ等の有害生物による害の改善が求められている。更には、各種のハムシ、ハエ、チョウ、蛾等の飛来虫による害の改善も求められている。更には、農業用資材として使用された樹脂製のフィルム・シートは、通常可燃物として処理することができない。このため、植物の枯れた茎や葉、廃棄する果実等可燃物となる廃棄物と分別する必要が生じ、作業者にとって負担となっていた。
これらの農業用資材の主なものについて、以下、個別具体的に説明する。
【0003】
(果実保護用袋において)
例えば、デコポン、ミカン等の柑橘類の果実においては、収穫後出荷までの間に熟成させて味を良好なものとする。このために、数週間から数か月の間、熟成させることがある。この場合、通常は、果実をポリオレフィン製の保護袋に包み、これを保管することで熟成させる。このような保管においては、熟成期間中に一割程度の果実においてカビが発生する。カビの生じた果実は廃棄する必要が生じるため、生産効率の観点から好ましくない。
【0004】
よって、このようなカビの発生を防止できる果実保護用袋が求められている。更に、ここで使用する樹脂製フィルム・シートは、使用後廃棄されるものであるが、その際に、可燃物として廃棄できるものであると、生産者において廃棄物の分別の手間を生じることがない上に、廃棄のコストも安価になる点で好ましい。
【0005】
(農業用シートにおいて)
各種の野菜や果実の生産においては、ナメクジによる害が多く報告されている。特にイチゴ等のように土壌に近い位置に果実が生成する農産物においてこの問題は顕著である。通常、このような栽培においては、土壌を農業用フィルム・シートで覆って栽培するが、それでもナメクジは土中から発生し、果実に対する害を生じる。このため、ナメクジによる害を妨げることが望まれる。このような用途においても、使用されたシートは最終的に廃棄されるため、可燃物として廃棄でき、植物の枯れた茎や葉等との分別の必要を生じないものとすることが好ましい。
【0006】
更に、飛来虫による植物の食害も大きな課題として知られている。多くの植物において、飛来虫(ハムシ、ハエ、チョウ、蛾等)やその幼虫が植物の葉、花等を食することで植物の生育を大きく妨げることがある。このような飛来虫による被害は、広く多くの農産物において知られたものであることから、簡便な方法でこれを予防することができれば、非常に好ましいものである。
【0007】
(植物の誘引ひも、結束ひもにおいて)
トマト、ナス、キュウリ等は栽培に際して、支えとなる棒や誘引ひも等が使用される。すなわち、苗の枝をまっすぐ上に伸ばすことでより高い位置に結実させることができ、収穫の労力を低減することができる。このため、伸びた枝を誘引ひもによってまっすぐ上に伸ばし、何カ所かで結束ひもを用いて茎を誘引ひもに括り付けることで、まっすぐ上に延ばすことが行われている
従来、このような誘引ひもや結束ひもとしては、ポリオレフィン樹脂からなるものが広く使用されている。
しかし、このようなポリオレフィンからなる誘引ひも、結束ひもを使用した場合、実の重みによって茎がひもに食い込むことが頻発する。すると、このように食い込んだ箇所からカビが発生し、植物の生育が悪化してしまう。このため、防カビ性能を有する誘引ひも、結束ひもが求められている。
【0008】
このような誘引ひも、結束ひもは使用後に廃棄されるものであるが、その際に、植物の茎や葉と複雑にからみあった状態になっていることから、誘引ひも、結束ひもをこれらの植物から分別することは大きな労力を有する。このため、誘引ひもや結束ひもとして、可燃物として廃棄できるものを使用すると、分別の手間を要することなく、植物性の廃棄物とまとめて廃棄することができる。
【0009】
(果実用かさ袋)
ブドウ、りんご、桃、マンゴー、キウイ、みかん、びわ等の各種の種類の果物においては、生育中の果実にかさ袋をかけることがしばしば行われる。これは、風雨等から果実を保護し、肌を綺麗に仕上げることを目的とする。しかし、このような果実用かさ袋においても、ポリオレフィン樹脂を使用すると、かびが発生してしまう。更に、飛行虫よる植物の食害も大きな課題として知られている。多くの植物において、飛来虫(ハムシ、ハエ、チョウ、蛾等)やその幼虫が植物の葉、花等を食することで植物の生育を大きく妨げることがある。このような飛来虫による被害は、広く多くの農産物において知られたものであることから、簡便な方法でこれを予防することができれば、非常に好ましいものである。
【0010】
また、各種の植物は植物本来が有する抗菌性、防カビ性、有害生物忌避能によって、上述した問題を回避している場合も多い。しかしながら、農業を行う際の要請のため、樹脂製の農業用資材を使用して、この農業用資材が植物と接触することで、このような植物本来の機能が失われてしまう場合も多く存在する。このため、このような問題を生じることがない農業用資材が求められている。
【0011】
以上のような各農業用の分野において、上記問題を改善する方法については充分な検討が行われていなかった。
【0012】
一方炭酸カルシウムは、水と接触した際に塩基性を呈するものであることから、これによって防カビ性能を発揮することができる化合物として知られている。しかし、炭酸カルシウム自体は粉体であることから、これによってそのまま上述した目的を達成することはできない。
【0013】
ポリオレフィン樹脂に少量の炭酸カルシウムを配合することは多く行われている。しかし、炭酸カルシウムの配合量が50重量%未満であると、このような樹脂組成物は、可燃物として廃棄することができないため、上述した問題のすべてを解決することはできない。更に、上述した抗菌性・防カビ性・飛来虫忌避性等の性能を十分に得ることもできない。
【0014】
特許文献2においては、炭酸カルシウムを多量に含有する樹脂組成物をシート状に成形して得られた合成紙が開示されている。しかし、これらを農業分野において使用することについては、全く開示なされていない。
【0015】
本発明者らは、特許文献3において、無機鉱物粉末とポリエチレンと添加剤を配合した畳下敷シートを開示した。しかし、ここで使用される畳下敷シートは、湿気が特に溜まりやすい部位において使用される特殊な用途であり、農業用の分野における抗菌・防カビ・害虫忌避という課題とは大きく異なるものである。
【0016】
更に、特許文献4において、農業用資材包装袋を開示している。しかし、当該発明においては、農業用資材ではなく、農業用資材を包装するための袋が開示されているのみであり、本発明における抗菌・防カビ・害虫忌避という課題の解決が必要となる用途とは根本的に用途が相違するものである。すなわち、本発明においては、農業用資材包装袋ではなく、農業用資材として直接的に農業分野において使用するようなシートについて検討を行うものである。
【0017】
更に、食品包装容器においても同様の課題が存在する。食品は、カビや細菌が発生することは絶対に避ける必要があるため、食品と直接接触する包装容器においては、カビや細菌の発生を抑制できることは重要な機能となる。更に、外装容器においてカビが発生すると、容器内部の食品自体には悪影響を与えなかったとしても、購買意欲を著しく低減させてしまうため、防カビ性を有する素材を使用することが好ましい。
【0018】
更に、これらの食品包装容器においても、使用後に可燃ごみとして焼却できることが望まれている。
【0019】
また、化粧品や洗浄剤(練り歯磨き、ハンドソープ、洗顔フォーム等)の容器としても各種のものが知られている。これらの容器においても、内容物への防カビ性能や抗菌性の付与、容器自体における防カビ性能や抗菌性の付与が望まれる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0020】
【特許文献1】特開2010−75101号
【特許文献2】特開平11−277623号
【特許文献3】特開2014−62434号
【特許文献4】特開2014−31212号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0021】
本発明者らは上記現状に鑑み、高い防カビ性・抗菌性や有害生物忌避性能を有しつつ、可燃物としても処理することができ、これによって、農業の生産性を高め、作業者の労力を低減させることができるような農業用資材を提供することを目的とするものである。
更に、同様の素材を使用して高い防カビ性・抗菌性を発揮することができる食品包装容器及び化粧料・洗浄剤用容器を提供することも目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0022】
本発明は、全体として無機充填剤を50重量%以上70重量%未満含み、
無機充填剤は、一部又は全部が純度97重量%以上の炭酸カルシウムであり、
フィルム・シート又はこれを切断したひもであることを特徴とする農業用資材包装袋ではない農業用資材である。
【0023】
本発明は、上記フィルム・シートを切断したひもを複数本組み合わせてロープ状としたものである農業用資材でもある。
本発明は、フィルム・シートである上記農業用資材を貼りあわせて袋状の形状としたものであることを特徴とする果実保管用袋でもある。
本発明は、フィルム・シートである上記農業用資材からなることを特徴とする植物栽培用土壌フィルム・シートでもある。
【0024】
本発明は、フィルム・シートを切断したひも又は当該ひもを複数本組み合わせてロープ状とした上記農業用資材からなる、植物を直立させるために使用する誘引ひもでもある。
本発明は、フィルム・シートを切断したひも又は当該ひもを複数本組み合わせてロープ状とした上記農業用資材からなる、植物を支柱又は誘引ひもに括りつけるために使用する結束ひもでもある。
【0025】
本発明は、無機充填剤及び熱可塑性樹脂を含む単層積層体であるか両方の最外層が無機充填剤及び熱可塑性樹脂を含む層である多層積層体であり、
全体として無機充填剤を50重量%以上70重量%未満含み、
無機充填剤は、一部又は全部が純度97重量%以上の炭酸カルシウムであり、
フィルム・シート又はこれを切断したひもであることを特徴とする食品包装材料でもある。
【0026】
無機充填剤及び熱可塑性樹脂を含む単層積層体であるか両方の最外層が無機充填剤及び熱可塑性樹脂を含む層である多層積層体であり、
全体として無機充填剤を50重量%以上70重量%未満含み、
無機充填剤は、一部又は全部が純度97重量%以上の炭酸カルシウムであり、
フィルム・シート形状を有するものを少なくとも一部に使用した化粧料・洗浄剤用容器でもある。
【発明の効果】
【0027】
本発明の農業用資材は、防カビ性、抗菌性、有害生物忌避性能に優れ、可燃物として処理することができるものである。
本発明の食品包装材料及び化粧料・洗浄剤用容器は、防カビ性、抗菌性に優れ、可燃物として処理することができるものである。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1】多層構造を有する本発明のフィルム・シートの断面構造を示す模式図である。
図2】本発明の農業用資材のイチゴ栽培時の農業用シートとしての使用状態を示す写真である。
図3】本発明の農業用資材を使用した場合と使用しない場合のイチゴの生育状況を対比するための写真である。
図4】本発明の農業用資材のキュウリ栽培時の農業用シートとしての使用状態を示す写真である。
図5】比較例の農業用資材のキュウリ栽培時の農業用シートとしての使用状態を示す写真である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下に、本発明を詳細に説明する。
本発明は、無機充填剤及び熱可塑性樹脂を含む層からなる単層積層体であるか両方の最外層が無機充填剤及び熱可塑性樹脂を含む層である多層積層体で、全体として無機充填剤を50重量%以上含み、無機充填剤の一部又は全部が炭酸カルシウムであるむような素材の農業用資材や食品包装容器、化粧料・洗浄剤用容器としての用途に関する発明である。
【0030】
炭酸カルシウムを含有する樹脂は、水と接触したときに、少量の炭酸カルシウムが溶出することによって塩基性を呈し、これによって防カビ性能や有害生物忌避機能を発揮すると推測される。更に無機充填剤の含有量を50重量%以上とすることで、このような効果を高めつつ、可燃物としての処理を可能とするものである。
【0031】
また、炭酸カルシウムは白色度の優れたものであることから、炭酸カルシウムを多量に配合した樹脂組成物は白色を有するものとなる。飛来虫は、このような高い白色度を嫌う傾向にある。このため、農業用資材として上述したような本発明の農業用資材を使用すると、その白い色を嫌う飛来虫に対する忌避効果も発揮される。各種の飛行虫は、その幼虫が植物の葉、花、果実等を食することによって、植物の生育に大きな被害を与える。このため、このような観点からみても、本発明の農業用資材は優れた効果を有するものである。更に、このような試みは、従来ほとんどなされていない。
【0032】
上述したように熱可塑性樹脂からなり、炭酸カルシウムを含まない層は、植物の茎・葉・果実等と接触すると、カビを発生する原因となる場合がある。よって、最外層にこのような層が存在しないものであることが必要とされる。
【0033】
このように、本発明の農業用資材は、複数の作用に基づく効果を有するものである。更に、種々の観点からの効果が期待できるものであることから、樹脂フィルムの形態で使用される多くの分野において植物の生育・果実の保存等における問題を解決できるものである。
【0034】
本発明の農業用フィルム・シートは、単層であっても多層であってもよい。多層である場合、最外層の両面が炭酸カルシウムを含むものである。また、本発明の農業用フィルム・シートは、多層である場合、全体として無機充填剤を50重量%以上含有するものである。全体として無機充填剤を50重量%以上含有することによって、可燃物として処理できるものになる点で好ましい。
例えば、中間層としてポリオレフィン樹脂からなる層を有する場合、両面に設ける無機充填剤含有樹脂層が無機充填剤の含有量50重量%であると、全体として無機充填剤の重量を50重量%以上とすることはできない。よって、これらの配合を調整することで、全体として、無機充填剤の配合量を50重量%以上とすることが好ましい。
【0035】
多層構造とする場合の具体的な態様の例示として、図1を示す。図1は、中間層2を有するものであり、中間層2は、ポリオレフィン樹脂、ABS樹脂、ポリアミド樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリエステル樹脂(例えば、PET樹脂、PBT樹脂等)などの熱可塑性樹脂等であってもよいし、その他の素材からなる層であってもよい。そして、両面に無機充填剤及び熱可塑性樹脂を含む層1を有する。中間層2が熱可塑性樹脂層である場合、任意の樹脂を使用することができるが、例えば、無機充填剤を含まないか、含んでも30重量%以下である熱可塑性樹脂からなる層とすることができる。
なお、中間層2と無機充填剤及び熱可塑性樹脂を含む層1との接着性を得るため、接着層を設けるものであってもよい。
【0036】
また、本発明の樹脂成形体の多層構造は、4層以上の層からなるものであってもよい。すなわち、用途によっては、多層樹脂成形体に対して更に高度な機能を求められる場合がある。このような場合には、更に他の樹脂層を設け、これによって、その他の機能を付与し、多くの用途に使用することも期待される。このような他の樹脂層としては特に限定されず防水性層、ガスバリア層、耐衝撃層、耐摩擦層、意匠層等を挙げることができる。
【0037】
上述した無機充填剤及び熱可塑性樹脂を含む層以外の層は、通常使用される添加剤を更に配合するものであってもよい。それらの添加剤は当該分野において従来から使用されているもの、例えばカップリング剤、潤滑剤、分散剤、及び静電防止剤等を挙げることができる。
【0038】
上記無機充填剤及び熱可塑性樹脂を含む層を構成する熱可塑性樹脂は、特に限定されず、ポリオレフィン樹脂、ABS樹脂、ポリアミド樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリエステル樹脂(例えば、PET樹脂、PBT樹脂等)等を使用することができる。なかでも、ポリオレフィン樹脂が最も好ましい。
【0039】
上記ポリオレフィン樹脂として具体的には、高密度ポリエチレン(HDPE)、低密度ポリエチレン(LDPE)、中密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン(L−LDPE)、ポリプロピレン等の一般的に知られる公知のポリオレフィン樹脂を使用することができ、これらを2種類以上組み合わせた混合物であってもよい。
【0040】
上記ポリオレフィン樹脂は、少なくとも50重量%がポリエチレン樹脂であることが好ましい。このような割合でポリエチレン樹脂を使用することで、150〜200℃という幅広い温度領域で良好な成形加工性が得られるという点で好ましいものである。
【0041】
上記ポリエチレン樹脂は、高密度ポリエチレン、並びに、低密度ポリエチレン及び/又は直鎖状低密度ポリエチレンからなり、該ポリエチレン樹脂成分の少なくとも10重量%が低密度ポリエチレン及び/又は直鎖状低密度ポリエチレンからなるものであることが好ましい。すなわち、強度に優れる高密度ポリエチレンに対して、成形性を改善するために低密度ポリエチレン及び/又は直鎖状低密度ポリエチレンを併用して使用することが好ましい。このようなポリエチレン樹脂を使用することによって、特に製膜加工性、ヒートシール性に優れるという点で好ましいものである。なお、上記低密度ポリエチレン及び/又は直鎖状低密度ポリエチレンは、該ポリエチレン樹脂成分の50重量%以下であることが好ましい。
【0042】
また、ポリオレフィン樹脂の90重量%以上がポリプロピレン樹脂であるようなポリオレフィン樹脂も好適に使用することができる。
【0043】
本発明の無機充填剤及び熱可塑性樹脂を含む層は、無機充填剤を50重量%以上含むものである。但し、多層である場合は、無機充填剤の配合量を多量にすることによって、農業用資材等の全体としての無機充填剤の配合量を50重量%以上のものとするものである。
【0044】
上記無機充填剤の配合量の上限は特に限定されるものではないが、70重量%未満であることがより好ましい。無機充填剤が70重量%以上であると、成形性が悪化する、強度・ヒートシール性・折り加工性等のシート物性が低下するといった問題を生じるおそれがあるためである。
【0045】
上記無機充填剤は、その一部又は全部が炭酸カルシウムである。炭酸カルシウムを配合することで、防カビ性や抗菌性や有害生物忌避性能が得られる点で好ましい。炭酸カルシウムの配合量は、本発明の農業用資材,食品包装材料,化粧料・洗浄剤用容器の全量に対して、40重量%以上であることが好ましく、50重量%以上であることが更に好ましく、60重量%以上であることが最も好ましい。このような配合割合とすることで、良好な防カビ性や抗菌性や有害生物忌避性能が得られる点で好ましい。
【0046】
上記炭酸カルシウムは、高純度のものを使用することが好ましく、より具体的には炭酸カルシウムが90重量%以上であるものを使用することが好ましく、95重量%以上であることが好ましく、97重量%以上であることが最も好ましい。
【0047】
樹脂に対する添加剤として使用される炭酸カルシウムは、鉱物資源として得られたものをそのまま精製することなく使用することが多い。このため、産地によって純度が大きく異なり、炭酸カルシウムが70重量%程度の低品位のものから、高純度のものまで多くの種類のものが存在する。更に、食品用・医薬品用等の人体の体内に摂取される用途においては、高純度である合成品の炭酸カルシウムも知られている。
【0048】
本発明の農業用資材においては、樹脂添加剤の分野において従来一般的に使用されている低純度の炭酸カルシウムを使用するよりも、高純度の炭酸カルシウムを使用することが好ましい。高純度の炭酸カルシウムを使用すると、
(1)乱反射率が高いため白度が高くなり、飛来虫忌避能が高くなる。
(2)炭酸カルシウムの純度が高いことで、安定してpH調整を行うことができ、これによって抗菌性・防カビ性においても安定して優れた効果が得られる
(3)野菜・果実・穀物等と直接接触する用途において使用する場合、不純物として存在する他の金属化合物等が有する人体への悪影響を問題視する必要がない
(4)安全性が高い素材であることから、人体・環境への影響が少ない
といった顕著な効果を有するものである。
【0049】
特に、本発明の農業用資材においては、炭酸カルシウムは非常に高い濃度で配合されることから、不純物が多い炭酸カルシウムを使用すると、不純物に基づく悪影響も顕著なものとなりやすい。
【0050】
上記炭酸カルシウムは、表面処理を施したものであってもよい。上記表面処理としては特に限定されず、シランカップリング剤処理、ステアリン酸カルシウム等による金属石鹸処理等を挙げることができる。
【0051】
本発明の無機充填剤及び熱可塑性樹脂を含む層は、本発明の目的を阻害しない範囲で炭酸カルシウム以外の無機充填剤を含有するものであってもよい。
上記無機充填剤は、熱可塑性樹脂に配合される一般的な無機充填剤を使用することができ、例えば、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、カオリン、マイカ、酸化亜鉛、ドロマイト、ガラス繊維、中空ガラスミクロビーズ、シリカ、チョーク、タルク、ピグメント、二酸化チタン、二酸化ケイ素、ベントナイト、クレー、珪藻土、ゼオライト等を挙げることができる。
【0052】
本発明の無機充填剤及び熱可塑性樹脂を含む層は、上記熱可塑性樹脂及び無機充填剤以外に、通常使用される添加剤を更に配合するものであってもよい。それらの添加剤は当該分野において従来から使用されているもの、例えば、カップリング剤、潤滑剤、分散剤、静電防止剤、酸化防止剤、熱安定剤、紫外線吸収剤、耐候安定剤等を挙げることができる。
【0053】
特に、フィラー分散剤として、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム等の金属石鹸を使用することが好ましい。本発明においては、樹脂に対するフィラー配合量が多いため、このようなフィラー分散剤を使用することによって、分散性を高めることが好ましい。ステアリン酸カルシウム及び/又はステアリン酸マグネシウムを配合する場合、配合量は、組成物全量に対して0.5〜5.0重量%とすることが好ましい。
【0054】
本発明の農業用資材は、フィルム・シート又はこれをひも状に切断したものである。すなわち、上述した効果を好適に発現するものであれば、種々の用途に適用することができ、その用途に応じて、フィルム・シート形状、ひも状の形状とすることができる。
【0055】
本発明の農業用資材・食品包装材料であるフィルム・シートは、公知の単層又は多層押出成形によって製造することができる。単層又は多層押出成形は、低コストで安定して成形することができる点で好ましい。単層又は多層押出成形としては、インフレーション成形、Tダイ成形等の公知の方法を挙げることができ、目的とする形状や使用する樹脂の性質に応じて、これらのなかから好適な方法を選択することができる。
また、単層フィルム・シートをラミネートすることによって多層化する方法等によって得られたものとすることもできる。
【0056】
本発明の農業用資材・食品包装材料は、その厚みが7〜1500μmであることが好ましい。当該範囲内の厚みとすることで、強度を維持しつつ、上述した機能を好適に得ることができる。上記上限はより好ましくは、800μmであり更に好ましくは400μmである。上記下限は、より好ましくは30μmである。
【0057】
本発明の農業用資材・食品包装材料が、農業用のひもである場合、その製造方法・形状等を特に限定されるものではないが、例えば、フィルム・シート状に成形した後、これを所定の幅に切断して巻き取ったものであることが好ましい。
すなわち、インフレーション成型、Tダイ成型等の方法で厚み7〜1500μmのフィルム・シートに成形し、これを幅15〜150mmに切断することによって紐状の形状としたものを使用することができる。また、上述した方法で製造されたひもを複数本組み合わせてロープ状にしたものであってもよい。このようなロープ状のものは、強度が高まる点で好ましいものである。
【0058】
本発明の農業用資材は、防カビ性能・有害生物忌避能といった性能を必要とされる任意の用途において使用することができる。具体的には、
(1)柑橘類等の果実の熟成時における保護のための包装袋
(2)イチゴ等の果実や野菜の栽培においてナメクジや、飛来虫による害を防ぐための土壌上に敷設する植物栽培用土壌フィルム・シート
(3)トマト等のように苗の枝を上に延ばす必要がある植物において使用される誘引ひもや結束ひも
(4)ブドウ等の果実におけるかさ袋
等として使用することができる。
【0059】
これらの用途に使用する場合の具体的な使用方法は、特殊なものではなく、従来、これらの用途において使用されてきたフィルム・シートやひもと同様の方法で使用することができる。
【0060】
本発明の食品包装材料は、防カビ性能・有害生物忌避能といった性能を必要とされる任意の用途において使用することができる。具体的には、各種食品包装用トレイ、豆腐容器、食品包装容器用ひも等に使用することができる。これらのフィルム・シートやひもの具体的な構成は、上述した農業用資材と同様のものを好適に使用することができる。また、包装容器として使用する上で好ましい形状とするために、真空成形、圧空成形等の公知の成型方法によって、成形を行ったものであってもよい。
【0061】
本発明の化粧料・洗浄剤用容器は、防カビ性能・有害生物忌避能といった性能を必要とされる用途において使用することができる。例えば、練り歯磨き、洗顔フォーム等を充填するための各種チューブ容器等を挙げることができる。本発明の化粧料・洗浄剤用容器は、一部または全部が、上述したようなフィルム・シート形状のものを加工して得られたものである。これらのフィルム・シートの具体的な構成は、上述した農業用資材と同様のものを好適に使用することができる。また、包装容器として使用する上で好ましい形状とするために、公知の方法で成形を行ったものであってもよい。
【0062】
上記食品包装容器、化粧料・洗浄剤用容器といった用途においても、上記炭酸カルシウムは、高純度のものを使用することが好ましく、より具体的には炭酸カルシウムが90重量%以上であるものを使用することが好ましく、95重量%以上であることが好ましく、97重量%以上であることが最も好ましい。
【0063】
高純度の炭酸カルシウムを使用すると、
(1)炭酸カルシウムの純度が高いことで、安定してpH調整を行うことができ、これによって抗菌性・防カビ性においても安定して優れた効果が得られる
(2)食品包装容器、化粧料・洗浄剤用容器の最内層で内填物と直接接触するような状態で使用する場合、不純物として存在する他の金属化合物等が有する人体への悪影響を問題視する必要がない
といった点から、顕著な効果を有するものである。
【実施例】
【0064】
以下、本発明を実施例に基づいて説明する。なお、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0065】
(マスターバッチ1の製造)
直鎖状低密度ポリエチレン(L−LDPE)を使用し、炭酸カルシウム粒子を、樹脂/炭酸カルシウム=49/51の重量比となるように使用して、二軸混練機によって混練し、チップ化することで、マスターバッチ樹脂1を得た。
【0066】
(マスターバッチ2の製造)
高密度ポリエチレン(HDPE)を使用し、炭酸カルシウム粒子を、樹脂/炭酸カルシウム=49/51の重量比となるように使用して、二軸混練機によって混練し、チップ化することで、マスターバッチ樹脂2を得た。
【0067】
(マスターバッチ3の製造)
高密度ポリエチレンに代えて、高密度ポリエチレンと直鎖状低密度ポリエチレン(L−LDPE)とを85:15の重量比で混合した混合ポリエチレンを使用し、樹脂/炭酸カルシウム=47/53の重量比の重量比となるように使用して、二軸混練機によって混練し、チップ化することで、マスターバッチ樹脂3を得た。
【0068】
なお、上述したマスターバッチ1〜3の製造において使用した炭酸カルシウムは、炭酸カルシウム純度が95重量%のものである。
【0069】
(単層フィルム・シートの成型)
上述したマスターバッチ1〜3を使用して、インフレーション成形装置、Tダイを使用して、単層フィルム・シートを成形した。得られたフィルムの厚みについて、表1に示した。なお、実施例4については、得られたフィルムを切断して、ひも形状のものとした。また、実施例5については、Tダイ押出によって得られたシートを真空成形することによって、食品トレイの形状とした。
【0070】
また、実施例1〜5の樹脂組成に対応して、炭酸カルシウムを含有しない樹脂を使用した以外は、実施例1〜5と同様の製造方法・厚み・形状のポリエチレンフィルム、ひも、食品トレイを製造した。
【0071】
【表1】
【0072】
<防カビ性試験>
Penicillium pinophilum (NBRC 33285)及びPenicillium citrinum(NBRC 6352)を試験対象のかびとして、以下の方法によって防カビ性試験を行った。
【0073】
(1)混合胞子懸濁液の調製
各供試菌の胞子が充分に形成されたポテトデキストロース寒天斜面培地に、2.5mLの0.01%Tween80添加無機塩溶液(無機塩溶液の組成は、以下の表2に示した)を加え、滅菌した白金線で表面の胞子を静かに擦り、溶液中に胞子を分散させる。
この操作を同じカビの試験管で3回繰り返す。これらの溶液を滅菌済のフィルター付きストマッカー袋を用いてろ過し、菌糸を取り除く。この懸濁液を滅菌した試験管に移し、遠心分離後、上澄みを捨て、残留物を無機塩溶液に懸濁させる。この操作をさらに2回繰り返した後、1mLあたりの胞子数が約10個となるように希釈調製したものを単一胞子懸濁液とする。また各単一懸濁液を同量ずつ混合したものを混合胞子懸濁液とする。
【0074】
【表2】
【0075】
(2)試験片の調製
上述した実施例1のフィルムを約40mm×40mmに切り出したものを試料とし、これを5枚(No.1〜5)用意する。
【0076】
(3)試験操作
5mm厚の無機塩寒天培地(2%寒天含有無機塩溶液)が入ったペトリ皿(直径90mm)に試験片をのせ、混合胞子懸濁液0.1mLを試験片及び無機塩観点培地の表面に均等に塗りつける。
温度24±1℃、相対湿度95%以上で4週間培養する。
【0077】
(4)かび発育状態の評価
4週間培養後、肉眼および実体顕微鏡(倍率約50倍)で、試験片の表面に生じた菌糸の発育状態を調べる。
かびの発育状態は下記表3の基準に基づいて判断を行った。結果の解釈は表4のようなものである。
【0078】
【表3】
【0079】
【表4】
【0080】
上述した試験の結果、No1〜5のすべてのサンプルにおいて、評価結果は0であった。以上の結果より、本発明のフィルム・シートは、防カビ性を有することが明らかである。
【0081】
<抗菌性試験>
黄色ぶどう球菌(Staphylococcus aureus subsp.aureus (NBRC12732)、大腸菌(Escherichia coli (NBRC3972)を供試菌として使用した。
【0082】
(1)接種菌液の調製
供試菌を普通寒天培地に移植し、35℃で24時間培養(前々培養)した後、1白金耳を再度普通寒天培地に移植し、35℃で20時間培養(前培養)した。この金を1/500濃度普通ブイヨン培地に均一に分散させ調製した。
【0083】
(2)試験操作
実施例3のフィルム(50mm×50mm)に接種菌液0.4mLを接種し、その上に皮膜フィルム(40mm×40mm)をかぶせ、温度35℃、相対湿度90%以上で静置した。なお、比較例としてとして比較例2のフィルムで同様に試験を行った。
【0084】
(3)菌数測定
24時間静置後、SCDLPブイヨン培地10mLで試験片および皮膜フィルムに付着している菌液を充分に洗い出して試料とした。試料中の生菌数を標準寒天培地を用いて測定した。
結果を下記表5に示す。
【0085】

【表5】
【0086】
表5の結果より、本発明のフィルムが菌の繁殖を抑制する機能を有することは明らかである。
【0087】
更に、以下評価1〜5において、具体的な用途において、各種評価を行った結果を示す。
【0088】
<評価1 果実熟成時における保護のための包装袋>
(製造方法)
実施例1のフィルムを切断し、そのうちの2方向をヒートシールすることによって、デコポン用の包装袋を製造した。同様に、比較例1のフィルムによっても、デコポン用の包装袋を製造した。
【0089】
(評価方法)
上記実施例1及び比較例1の包装袋で12月に収穫したデコポンを包装した。そしてこれを2月の出荷時期までの間熟成した。
熟成後の果実について、カビの発生比率を算出した。結果を以下の表6に示す。
【0090】
【表6】
【0091】
上記表6の結果から、本発明の包装袋は、優れた防カビ性能を有することが明らかとなった。また、実施例2、比較例2のフィルムによっても同様の試験を行い、同様の結果を得ることができた。
【0092】
<評価2 イチゴ栽培用土壌シート>
上述した上述した方法によって得られた実施例3の単層フィルムを、イチゴ栽培の畝の全体を覆うようにかぶせ、イチゴの苗を植えた箇所にのみ孔を開けてイチゴ栽培を行った。同様の栽培を比較例3の単層フィルムについても行った。
【0093】
このような栽培を行い、その間に生じたナメクジによる害を生じた果実の数を計数し、これをイチゴの果実数中の割合として算出した。結果を表7に示す。
【0094】
【表7】
【0095】
上記表7の結果から、本発明の土壌シートは、優れた有害生物忌避能を有することが明らかとなった。
【0096】
本実施例の結果をより明確なものとするため、図2,3を参照する。図2は、本発明の農業用シートを土壌シートとしてイチゴの栽培を行っている状態を示す図である。イチゴの苗の根元に本発明の農業用シートが使用されていることが観察できる。更に図3において、本発明の農業用シートを使用して栽培したイチゴと、これを使用せずに栽培したイチゴにおいてナメクジによる食害が生じたものとを比較した写真を示す。図3上部のイチゴが比較例によって栽培されて食害を受けた果実であり、図3の下部のイチゴが本発明の農業用資材を使用して得られた食害を受けていない果実である。本発明の農業用資材を使用すると、図3に上部に示したような食害を受けたイチゴが全く発生しなかった。
【0097】
<評価3 トマト栽培用誘因ひも及び結束ひも>
実施例4及び比較例4のひもをハウスでのトマト栽培における誘因ひも及び結束ひもとして使用し、トマト栽培を行った。
その結果、比較例のひもを使用した栽培においては、ひもが果実の重みによってトマトの茎に食い込み、その部分からかびが発生するという問題が発生した。これに対して、実施例のひもを使用した栽培においてはこのような問題が発生しなかった。
【0098】
以上の結果から、本発明の誘引ひも及び結束ひもは、優れた有害生物忌避能を有することが明らかとなった。
【0099】
<評価4 キュウリに生じる飛来虫の忌避用土壌シート>
実施例3のフィルムをA4サイズに切断し、その中央部にキュウリの茎を貫通させるための孔を設けた。これを土壌シートとして使用し、中央部からキュウリの茎を出してキュウリの栽培を行った。
比較例として、このような土壌シートを使用せずに同じ条件でキュウリの栽培を行った。
【0100】
その結果、実施例においては、ほとんど、飛来虫による害が生じなかったが、比較例のキュウリにおいては、飛来虫であるウリハムシによるキュウリの葉の食害が多く発生した。実施例の結果を図4に示し、比較例の結果を図5に示した。図4,5を対比することで、本発明の土壌シートによってウリハムシによる食害を防げることが明らかである。
【0101】
<評価5 食品包装容器>
実施例5の食品トレイに、惣菜包装容器として使用した。その後、通常の冷蔵条件で保管をした。その結果、比較例5のトレイを使用した場合よりも、かびの発生が遅かった。
【産業上の利用可能性】
【0102】
本発明の農業用資材は、
(1)柑橘類等の果実の熟成時における保護のための包装袋
(2)イチゴ等の果実や野菜の栽培において、ナメクジや飛来虫による害を防ぐための土壌状に敷設するシート
(3)トマト等のように苗の枝を上に延ばす必要がある植物において使用される誘引ひもや結束ひも
(4)ブドウ等の果実におけるかさ袋
等の用途において好適に使用することができる。
【0103】
本発明の食品包装容器は、豆腐容器等の食品と直接接触する包装容器、食品と直接接触しない外層容器等において使用することができる。
【0104】
本発明の化粧料・洗浄剤剤用容器は、練り歯磨き、洗顔フォーム、クレンジング等のチューブ容器、パウチ容器等に使用することができる。
【符号の説明】
【0105】
1 無機充填剤及び熱可塑性樹脂を含む層
2 中間層

図1
図2
図3
図4
図5